説明

防眩フィルム、偏光板、画像表示装置、及び防眩フィルムの製造方法

【課題】風ムラが抑制され、ヘイズが低く、かつ適度な防眩性と高いコントラストを有する防眩フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】透明プラスチックフィルム基材上に、表面に凹凸を有する膜厚が2μm以上5μm以下の防眩層を有する防眩フィルムであって、該防眩層は、少なくとも平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子とバインダー樹脂とを含有し、該防眩層の全固形分中に占める前記透光性樹脂粒子の割合は5質量%以上12質量%以下であり、前記透光性樹脂粒子の平均粒径に対する該防眩層の膜厚の比は1.0以上2.0以下であり、前記透光性樹脂粒子と前記バインダー樹脂との屈折率差は0.01以下であり、該防眩層における前記透光性樹脂粒子の凝集度が2.0以上5.0以下であり、該防眩フィルムのヘイズ値が0.5%以上5.0%以下である、防眩フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩フィルム、偏光板、画像表示装置、及び防眩フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明プラスチックフィルム基材に防眩層を積層した防眩フィルムは、例えば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置において、表面散乱により、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、ディスプレイの表面に配置される。
【0003】
フィルムに防眩性を持たせることは、フィルムの表面に凹凸を形成することで達成できる。フィルムの表面に凹凸を形成する方法としては、バインダー樹脂中にシリカ粒子や樹脂粒子などのフィラーを含有する防眩層を設ける方法が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。この場合、防眩層の厚みよりも粒子径の小さい粒子を用い、樹脂中で粒子を凝集させて表面凹凸を形成する方法が一般的である。
【0004】
また、特許文献3には、防眩層において、表面張力を低下させ、風ムラを防止するためのレベリング剤として、フルオロ脂肪族基含有共重合体を添加することが記載されている。
【0005】
上記のような防眩層においては、フィラーの粒径が膜厚より小さいため、フィラーが膜内に埋もれた状態になり、防眩性が発現しにくくなる。また、この現象は、1つのフィラーが形成する凹凸のサイズが小さくなるため、フィラーの粒径が小さくなるほど顕著になる。
防眩性を発現させるために、フィラーの粒径に対する防眩層の膜厚を小さくしたり、フィラーの添加量を多くしすぎると、ヘイズが大きくなり透明性が低下するとともに、防眩性が強くなりすぎ、白茶けが目立ってしまうという問題が生じる。
一方で、粒径の大きなフィラーを用い、かつ、膜厚を厚くすると、適度な防眩性は得られるものの、カールや脆性の悪化が起こるため、防眩層を薄膜化した上で防眩性を発現することが必要であった。
更に、近年、防眩性を強くしていくことよりも、ある程度の防眩性を有し、かつ白茶けを抑えたフィルムが好まれる傾向があるため、薄膜で適度な防眩性を有する低ヘイズの防眩フィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−18706号公報
【特許文献2】特開平10−20103号公報
【特許文献3】特開2004−163610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、風ムラが抑制され、ヘイズが低く、かつ適度な防眩性と高いコントラストを有する防眩フィルムを提供することを目的とする。更に、該防眩フィルムを用いた偏光板、及び画像表示装置、並びに該防眩フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、防眩層において、バインダーとなる硬化性化合物とフィラーとなる透光性樹脂粒子の屈折率差を0.01以下とすること、及び、膜厚と粒径の比を特定の範囲とすることで、ヘイズの増加を抑制し、更に、バインダーとなる硬化性化合物の含有量が多い状態でフルオロ脂肪族基含有共重合体を添加することで、フィラーの凝集度を高めることができ、その凝集度を2.0以上5.0以下とすることで防眩性を適切な範囲に制御できることを見出した。
また、このようなフィラーの凝集度が2.0以上5.0以下で、適度な防眩性を有し、かつ低ヘイズの防眩フィルムは、硬化性化合物、透光性樹脂粒子、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体を含む特定の硬化性組成物を、基材上に塗布し、加熱することで、製造できることを見出した。
前記したように、防眩層中にフルオロ脂肪族基含有共重合体を添加することで、塗布液の表面張力を低下させ、風ムラを防止することは特許文献3に記載されてはいるが、特許文献3の防眩層はジルコニアを多量に含有しており、樹脂バインダー比率は低いものであり、防眩層の全固形分中の樹脂バインダー比率が高い領域で樹脂粒子の凝集性を変化させることは本発明者らが新たに見出したものである。
本発明は、以下の手段により前記課題を解決できる。
【0009】
1.
透明プラスチックフィルム基材上に、表面に凹凸を有する膜厚が2μm以上5μm以下の防眩層を有する防眩フィルムであって、
該防眩層は、少なくとも平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子とバインダー樹脂とを含有し、
該防眩層の全固形分中に占める前記透光性樹脂粒子の割合は5質量%以上12質量%以下であり、
前記透光性樹脂粒子の平均粒径に対する該防眩層の膜厚の比は1.0以上2.0以下であり、
前記透光性樹脂粒子と前記バインダー樹脂との屈折率差は0.01以下であり、
該防眩層における前記透光性樹脂粒子の凝集度が2.0以上5.0以下であり、
該防眩フィルムのヘイズ値が0.5%以上5.0%以下である、防眩フィルム。
2.
前記防眩層は、少なくとも下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性組成物から形成された層であり、
該硬化性組成物の全固形分中に占める(A)成分の割合は80質量%以上である、上記1に記載の防眩フィルム。
(A)バインダー樹脂形成用硬化性化合物
(B)平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子
(C)フルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位、及び少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体
3.
前記(C)成分における、前記フルオロ脂肪族基含有モノマーが下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーであり、前記少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマーが下記一般式[2]で表されるモノマーである、上記2に記載の防眩フィルム。
一般式[1]
【0010】
【化1】

【0011】
(一般式[1]において、Rは水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上18以下の整数を表す。)
一般式[2]
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式[2]において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、Rは炭素数1以上20以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。)
4.
前記(C)成分における、前記フルオロ脂肪族基含有モノマーが下記一般式[3]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーであり、前記少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマーが下記一般式[2]で表されるモノマーである、上記2に記載の防眩フィルム。
一般式[3]
【0014】
【化3】

【0015】
(一般式[3]において、Rは水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上6以下の整数を表す。)
一般式[2]
【0016】
【化4】

【0017】
(一般式[2]において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、Rは炭素数1以上20以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。)
5.
前記(C)成分における、前記少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位に対する前記フルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位の質量比が、0.25以上50以下である、上記2〜4のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
6.
前記(C)成分の含有量が、防眩層の全質量に対して0.001質量%以上5質量%以下である、上記1〜5のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
7.
前記(A)成分の含有量が、防眩層の全質量に対して80質量%以上95質量%未満である、上記1〜6のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
8.
前記防眩層上に、前記防眩層よりも低い屈折率を有する低屈折率層を更に有する、上記1〜7のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
9.
前記透明プラスチックフィルム基材がセルロースエステル系フィルムであり、かつ該セルロースエステル系フィルムの膜厚が30μm以上70μm以下である、上記1〜8のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
10.
上記1〜9のいずれか一項に記載の防眩フィルムを、偏光膜の保護フィルムの少なくとも一方に用いた偏光板。
11.
上記1〜9のいずれか一項に記載の防眩フィルムを、偏光膜の保護フィルムの一方に、光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板。
12.
上記1〜9のいずれか一項に記載の防眩フィルム、又は、上記10若しくは11に記載の偏光板が画像表示面に配置された画像表示装置。
13.
少なくとも下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性組成物を透明プラスチックフィルム基材上に塗布し、加熱して防眩層を形成する工程を有する上記1〜9のいずれか一項に記載の防眩フィルムの製造方法。
(A)バインダー樹脂形成用硬化性化合物
(B)平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子
(C)フルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位、及び少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体
ただし、該硬化性組成物の全固形分中に占める(A)成分の割合は80質量%以上であり、(B)成分の割合は5質量%以上12質量%以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、風ムラが抑制され、ヘイズが低く、かつ適度な防眩性と高いコントラストを有する防眩フィルムを提供することができる。また、該防眩フィルムを用いた偏光板、及び画像表示装置、並びに該防眩フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について以下に詳細に述べる。
本発明の防眩フィルムは、透明プラスチックフィルム基材上に、表面に凹凸を有する膜厚が2μm以上5μm以下の防眩層を有する防眩フィルムであって、
該防眩層は、少なくとも平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子とバインダー樹脂とを含有し、
該防眩層の全固形分中に占める前記透光性樹脂粒子の割合は5質量%以上12質量%以下であり、
前記透光性樹脂粒子の平均粒径に対する該防眩層の膜厚の比は1.0以上2.0以下であり、
前記透光性樹脂粒子と前記バインダー樹脂との屈折率差は0.01以下であり、
該防眩層における前記透光性樹脂粒子の凝集度が2.0以上5.0以下であり、
該防眩フィルムのヘイズ値が0.5%以上5.0%以下である。
【0020】
本発明の防眩フィルムの防眩層は、少なくとも下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性組成物から形成された層であり、該硬化性組成物の全固形分中に占める(A)成分の割合は80質量%以上であることが好ましい。
(A)バインダー樹脂形成用硬化性化合物
(B)平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子
(C)フルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位、及び少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体
【0021】
本発明における防眩層は、防眩層を形成する硬化性組成物の全固形分中の80質量%以上を前記(A)成分である硬化性化合物が占める状態において、前記(C)成分であるフルオロ脂肪族基含有共重合体を使用することで前記(B)成分である樹脂粒子の凝集が促進され、良好な防眩性を発現することができる。
通常、樹脂粒子の粒径が小さくなるほど粒子単体が形成する凹凸が小さくなってしまうため防眩性が発現しづらくなってしまうため、樹脂粒子を凝集させることで防眩性を発現させることが必要となる。本発明では、フルオロ脂肪族基含有共重合体を使用することで樹脂粒子の凝集を促進させているが、例えば他の無機フィラー等を併用し、樹脂バインダー比率が低下したような場合では、フルオロ脂肪族基含有共重合体による凝集促進効果は見られなくなってしまう。
【0022】
(A)バインダー樹脂形成用硬化性化合物
防眩層を形成するための硬化性組成物は少なくとも1種の(A)硬化性化合物を含有する。該硬化性化合物は硬化後に透光性樹脂となりバインダーのはたらきをすることが好ましい。
(A)硬化性化合物としては、電離放射線等による硬化後に飽和炭化水素鎖を主鎖として有する透光性ポリマー(バインダーポリマーともいう)となる化合物であることが好ましい。また、硬化後の主たるバインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
【0023】
硬化後に飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとなる硬化性化合物としては、下記に述べるエチレン性不飽和モノマー、又はその重合体が好ましい。
また、飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。防眩層を高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0024】
(A)硬化性化合物として用いることができる2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、(メタ)アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA、同PET−30、新中村化学工業(株)NKエステル A−TMMT、同A−TMPT等を挙げることができる。硬化収縮を低減してカールを抑制する観点からはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド、カプロラクトン付加して架橋点間距離を広げることが好ましく、例えば、エチレンオキサイド付加したトリメチロールプロパントリアクリレート(例えば大阪有機化学社製ビスコートV#360)、グリセリンプロピレンオキサイド付加トリアクリレート(例えば大阪有機化学社製V#GPT)、カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば日本化薬製DPCA−20、120)などが好ましく用いられる。2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーは2種以上併用することも好ましい。
【0025】
さらに、硬化性化合物としては、2個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂および多価アルコール等の、多官能化合物などのオリゴマー又はプレポリマー等も挙げられる。これらのオリゴマー又はプレポリマーは2種以上併用してもよい。
【0026】
2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物は硬化性化合物全量に対して10〜100質量%含有することが好ましい。
【0027】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル重合開始剤又は熱ラジカル重合開始剤、透光性樹脂粒子、フルオロ脂肪族基含有共重合体、分散溶媒、必要に応じて無機フィラー、塗布助剤、その他の添加剤等を含有する塗布液を調製し、該塗布液を透明基材上に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化して防眩層を形成する。電離放射線硬化と熱硬化を合わせて行うことも好ましい。光及び熱重合開始剤としては市販の化合物を利用することができる。
【0028】
本発明において用いられる硬化性化合物は1種でも2種以上でもよい。硬化性化合物の含有量は、フルオロ脂肪族基含有共重合体により凝集を促進させるという観点から、防眩層を形成するための硬化性組成物の全固形分に対して80質量%以上であり、80〜96質量%が好ましく、83〜93質量%がより好ましく、85〜90質量%が更に好ましい。
【0029】
本発明において、透光性粒子を除く防眩層の屈折率は1.46〜1.65であることが好ましく、1.49〜1.60であることがより好ましく、1.49〜1.53であることが特に好ましい。屈折率をこの範囲にすることで、塗布ムラ、干渉ムラを目立ちにくくした防眩層を得ることができる。
ここで、該透光性粒子を除く防眩層の膜の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。
【0030】
防眩層の厚さは2.0μm以上5.0μm以下であり、好ましくは2.5μm以上4.5μm以下であり、更に好ましくは3.0μm以上4.0μm以下である。
防眩層の膜厚は、例えば、防眩層の断面を走査型電子顕微鏡で観察し基材からの法線方向の厚みの平均値で表すことができる。
【0031】
(B)透光性樹脂粒子
本発明における防眩層を形成するための硬化性組成物は少なくとも1種の透光性樹脂粒子を含有する。
【0032】
透光性樹脂粒子の平均粒径は1.0μm以上3.0μm以下であり、好ましくは1.2μm以上2.8μm以下であり、更に好ましくは1.4μm以上2.6μm以下である。本発明においては、平均粒径は一次粒径を示す。平均粒径1.0μm以上であれば、粒子の凝集を制御することで表面凹凸を適度に大きくすることができ、防眩性が発現する。また、平均粒径3.0μm以下の粒子であれば所望の表面形状を形成しようとする場合、防眩層の厚みを厚くしすぎる必要がなく、カールや脆性の低下を抑制できる。
表面凹凸形状を、特定の範囲に調整する手段として、平均粒径が互いに異なる2種以上の粒子を使用することも好ましい。
【0033】
透光性樹脂粒子の粒子径の測定方法は、粒子の粒子径を測る測定方法であれば、任意の測定方法が適用できるが、粒子の粒度分布をコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算して得られた粒子分布から算出する方法や、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする方法がある。
なお、本発明において平均粒子径はコールターカウンター法によって得られた値を用いる。
【0034】
本発明の防眩層における表面凹凸形状を作るためには、透光性樹脂粒子の平均粒径に対する防眩層の膜厚の比(防眩層の膜厚/透光性樹脂粒子の平均粒径)を1.0〜2.0に設計する必要があり、好ましくは1.1〜1.9、より好ましくは1.2〜1.8である。この比率が1.0以上であると、膜表面の凹凸が大きくなりすぎず、黒締りや点欠陥の観点で優れる。一方、2.0以下であると、所望の防眩性を達成するために多量の粒子を添加する必要がなく、膜の硬度の観点で優れる。
【0035】
防眩層における表面凹凸形状は算術平均粗さRaを0.01〜0.25μmに設計することが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.20μm、更に好ましくは0.01〜0.15μmである。Raの値が0.01μm以上であると、明確な防眩性が得られ、一方、Raの値が0.25μm以下であると、高い黒締まりを示す。
本発明の防眩層におけるヘイズ値は0.5〜5.0%に設計され、1.5〜4.5%にすることが好ましく、2.5%〜4.0%にすることが更に好ましい。この範囲にヘイズを設計することで、優れた防眩性と黒締り性を両立する事ができる。
【0036】
透光性樹脂粒子の屈折率は、ヨウ化メチレン、1,2−ジブロモプロパン、n−ヘキサンから選ばれる任意の屈折率の異なる2種類の溶媒の混合比を変化させて屈折率を変化させた溶媒中に透光性粒子を等量分散して濁度を測定し、濁度が極小になった時の溶媒の屈折率をアッベ屈折計で測定することで測定される。
【0037】
透光性樹脂粒子は、バインダーとの屈折率差を制御することで内部散乱性を付与することができるが、内部散乱性が大きいとコントラストが低下してしまうため、透光性樹脂粒子を除く防眩層の屈折率との差を0.010以下に設計することが好ましく、前記(A)成分である硬化性化合物と(B)成分の平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子との屈折率差は0.01以下であり、好ましくは0.005以下であり、より好ましくは0である。屈折率差をこの範囲に規定することで、内部散乱に起因するコントラスト低下をほぼなくすことができる。
【0038】
透光性樹脂粒子の具体例としては、例えば架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋メチルメタアクリレート−メチルアクリレート共重合粒子、架橋アクリレート−スチレン共重合粒子、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子等の樹脂粒子が挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合粒子等が好ましい。さらにはこれらの樹脂粒子の表面にフッ素原子、シリコン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基、燐酸基等を含む化合物を化学結合させた表面修飾粒子やシリカやジルコニアなどのナノサイズの無機微粒子を表面に結合した粒子も例に挙げられる。
【0039】
本発明において用いられる透光性樹脂粒子は1種でも2種以上でもよい。透光性樹脂粒子の含有量は、防眩性付与と高い黒締まりの観点から、防眩層の全固形分(前記硬化性組成物の全固形分)に対して5〜12質量%であり、5〜11質量%が好ましく、6〜10質量%がより好ましい。
【0040】
[透光性樹脂粒子の凝集度]
防眩層における(B)成分である透光性樹脂粒子の凝集度は2.0以上5.0以下であり、2.0以上4.0以下であることが好ましく、2.0以上3.0以下であることがより好ましい。
透光性樹脂粒子の凝集度を2.0以上5.0以下とすることで適度な防眩性が得られ好ましい。
防眩層における透光性樹脂粒子の凝集度は、一定面積中の、(一次粒子数/二次粒子数)で表される。ここで、一次粒子とは透光性樹脂粒子を形成する最小単位であり、二次粒子とは接触し合っている一次粒子が形成する1つの集合体である。
本発明においては、防眩フィルムを、透過型の光学顕微鏡を用いて倍率1000倍で撮影し、得られた画像(280μm×210μm)中にある透光性樹脂粒子の(一次粒子数/二次粒子数)を凝集度と定義し、これは一つの二次粒子を形成している一次粒子の平均個数を意味する。
二次粒子を形成する一次粒子数の分布は、狭いほど面内でより均一な防眩性を得ることができ、標準偏差が2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。
【0041】
(C)フルオロ脂肪族基含有共重合体
本発明における防眩層を形成するための硬化性組成物には、(C)フルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位、及び少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する。
前記フルオロ脂肪族基含有共重合体を用いることで、透光性樹脂粒子の凝集を制御し、適度な防眩性を発現させることができる。
【0042】
前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が有するフルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位は、下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位であることが好ましく、少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位は、下記一般式[2]で表されるモノマー由来の繰り返し単位であることが、表面エネルギー調整の観点で好ましい。
一般式[1]
【0043】
【化5】

【0044】
(一般式[1]において、Rは水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上18以下の整数を表す。)
一般式[2]
【0045】
【化6】

【0046】
(一般式[2]において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、Rは炭素数1以上20以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。)
【0047】
一般式[1]においてRは、水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。
nは1以上18以下の整数を表し、4〜12がより好ましく、6〜8が更に好ましく、6であることが最も好ましい。
Lは2価の連結基を表し、具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル結合、エステル結合、アミド結合)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基、内部に連結基を有する炭素数3〜10のアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルまたはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルまたはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
本発明におけるフルオロ脂肪族基含有共重合体には、一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの由来の繰り返し単位は1種でも2種類以上含まれていてもよい。
【0048】
一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの具体例としては、特開2006−117915号公報の[0053]〜[0056]に記載のF−1〜F−85が挙げられる。
【0049】
一般式[2]において、Rは水素原子、メチル基を表し、Yは2価の連結基を表す。2価の連結基としては、酸素原子、イオウ原子、−N(R)−、等が好ましい。ここでRは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が好ましい。Rのより好ましい形態は水素原子及びメチル基である。Yは、酸素原子がより好ましい。Rは炭素数1以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
【0050】
本発明におけるフルオロ脂肪族基含有共重合体には、一般式[2]で表されるフルオロ脂肪族基を含有しないモノマーの由来の繰り返し単位は1種でも2種類以上含まれていてもよい。
【0051】
一般式[2]で表されるフルオロ脂肪族基を含有しないモノマーの具体例としては、特開2006−117915号公報の[0036]〜[0044]に記載のA−1〜A−126が挙げられる。
【0052】
また、前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が有するフルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位が、下記一般式[3]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位であることが好ましく、少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位が、前記一般式[2]で表されるモノマー由来の繰り返し単位であることが、表面エネルギー調整の観点で好ましい。
一般式[3]
【0053】
【化7】

【0054】
(一般式[3]において、Rは水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上6以下の整数を表す。)
【0055】
一般式[3]においてRは、水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。
nは1以上6以下の整数を表し、4〜6がより好ましく6であることが最も好ましい。
は2価の連結基を表し、具体例及び好ましい範囲は、前記一般式[1]におけるLの具体例及び好ましい範囲と同様である。
本発明におけるフルオロ脂肪族基含有共重合体には、一般式[3]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの由来の繰り返し単位は1種でも2種類以上含まれていてもよい。
【0056】
一般式[3]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの具体例としては、特開2006−117915号公報の[0046]〜[0049]に記載のF−1〜F−64が挙げられる。
【0057】
前記フルオロ脂肪族基含有共重合体における、少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位に対するフルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位の質量比は、表面エネルギー調整の観点で0.25以上50以下であることが好ましく、0.5以上30以下であることがより好ましく、1以上15以下であることが更に好ましい。
【0058】
前記フルオロ脂肪族基含有共重合体の好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000であり、5,000〜80,000がより好ましい。
前記フルオロ脂肪族基含有共重合体の好ましい添加量は、表面エネルギー調整の観点から、硬化性組成物(好ましくは塗布液)100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲であり、より好ましくは0.005〜3質量部の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。フルオロ脂肪族基含有共重合体の添加量が硬化性組成物100質量部に対して0.001質量部以上であればフルオロ脂肪族基含有共重合体を添加した効果が充分得られ、また5質量部以下であれば、塗膜の乾燥が十分に行うことができ、塗膜としての性能(例えば反射率、耐擦傷性)も優れるため好ましい。
【0059】
以下、本発明におけるフルオロ脂肪族基含有共重合体の具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお式中の数字は各モノマー成分の質量比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0060】
【化8】

【0061】
【化9】

【0062】
【化10】

【0063】
【化11】

【0064】
【化12】

【0065】
【化13】

【0066】
【化14】

【0067】
【化15】

【0068】
【化16】



【0069】
本発明における防眩層を形成するための硬化性組成物には、前記フルオロ脂肪族基含有共重合体の他にも、更に塗布ムラ等の面状均一性を確保するために、フッ素系の界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を併用することもできる。
【0070】
(D)光重合開始剤
本発明における防眩層を形成するための硬化性組成物は光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤として、具体的にはアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキサイド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類(特開2001−139663号等)、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0071】
前記アセトフェノン類の例には、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−ジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシ−ジメチル−p−イソプロピルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、が含まれる。
【0072】
前記ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン及びp−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、3,3’、4、4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0073】
前記ホスフィンオキサイド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどが含まれる。
【0074】
前記ボレート塩としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proceeding April 19〜22頁,1998年,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩が挙げられる。例えば、前記特開2002−116539号明細書の段落番号[0022]〜[0027]記載の化合物が挙げられる。
また、その他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、及び特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられ、具体例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
【0075】
前記活性エステル類の例には、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物などが含まれる。
具体的には、特開2000−80068号公報記載の実施例記載化合物1〜21が特に好ましい。
また、オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
【0076】
前記活性ハロゲン類としては、具体的には、若林 等の“Bull Chem.Soc Japan”42巻、2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開平5−27830号、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1巻(3号),(1970年)等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。
より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0077】
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、BASF製のイルガキュア(651,184,500,907,369,1173,1870,2959,4265,4263,127,819など)、DAROCUR(1173,TPO)、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT)等及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
本発明において用いられる光重合開始剤は1種でも2種以上でもよい。
【0078】
本発明において用いられる光重合開始剤の含有量は、高い膜硬度を達成するための観点から、防眩層を形成するための硬化性組成物における硬化性化合物100質量部に対して、総量として0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましく、1〜6質量部の範囲で使用することが最も好ましい。
【0079】
(E)溶剤
防眩層を形成するための硬化性組成物(塗布組成物)に用いられる溶剤としては、各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。
溶媒は2種類以上のものを混合して用いることができる。特に、乾燥負荷の観点から、常圧室温における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶剤を少量含有することが好ましい。
【0080】
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル(90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0081】
沸点が100℃を以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(メチルイソブチルケトンと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0082】
防眩層を形成するための硬化性組成物の固形分濃度は、20質量%以上50質量%以下が好ましく、25質量%以上45質量%以下がより好ましい。
【0083】
(F)有機高分子増粘剤
本発明における防眩層を形成するための硬化性組成物は、有機高分子増粘剤を含むことができる。
ここでいう増粘剤とは、それを添加することにより液の粘度が増大するものを意味し、添加することにより塗布液の粘度が上昇する大きさとして好ましくは0.05〜50cPであり、更に好ましくは0.10〜20cPであり、最も好ましくは0.10〜10cPである。
【0084】
有機高分子増粘剤としてはセルロースエステルが好ましい。中でも、セルロースアセテートブチレートが特に好ましい。有機高分子増粘剤の例としては以下のものが挙げられる。
【0085】
ポリ−ε−カプロラクトン
ポリ−ε−カプロラクトン ジオール
ポリ−ε−カプロラクトン トリオール
ポリビニルアセテート
ポリ(エチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン アジペート)
ポリ(1,4−ブチレン グルタレート)
ポリ(1,4−ブチレン スクシネート)
ポリ(1,4−ブチレン テレフタレート)
ポリ(エチレンテレフタレート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(2−メチル−1,3−プロピレン グルタレート)
ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)
ポリ(ネオペンチルグリコール セバケート)
ポリ(1,3−プロピレンアジペート)
ポリ(1,3−プロピレン グルタレート)
ポリビニルブチラール
ポリビニルホルマール
ポリビニルアセタール
ポリビニルプロパナール
ポリビニルヘキサナール
ポリビニルピロリドン
ポリアクリル酸エステル
ポリメタクリル酸エステル
セルロースアセテート
セルロースプロピオネート
セルロースアセテートブチレート
【0086】
有機高分子増粘剤の分子量は数平均分子量で0.3万〜40万が好ましく、0.4万〜30万がより好ましく、0.5万〜20万が特に好ましい。
有機高分子増粘剤の添加量は防眩層を形成するための硬化性組成物の全固形分に対して0.5〜10質量%が好ましく、1.0〜7.0質量%がより好ましく、2.0〜5.0質量%が特に好ましい。
【0087】
(G)無機フィラー
本発明の防眩層には、上記の透光性樹脂粒子に加えて、屈折率の調整、膜強度の調整、硬化収縮減少、更に、防眩層上に低屈折率層を設けた場合の反射率低減の目的に応じて、無機フィラー使用することもできる。無機フィラーとしては、例えば、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する酸化物からなり、一次粒子の平均粒子径が、一般に0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下1nm以上である微細な高屈折率無機フィラーを含有することも好ましい。
透光性樹脂粒子との屈折率差を調整するために、マトリックスの屈折率を低くする必要が生じた場合は、無機フィラーとして、シリカ微粒子、中空シリカ微粒子等の微細な低屈折率無機フィラーを用いることができる。好ましい粒径は、前記の微細な高屈折率無機フィラーと同じである。
無機フィラーは、表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
無機フィラーを使用する場合、無機フィラーの添加量は、防眩層の全質量の1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜13質量%であり、特に好ましくは5〜10質量%である。
なお、無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分短いために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質の性質を有する。
【0088】
[透明プラスチックフィルム基材]
本発明における透明プラスチックフィルム基材(支持体)としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートやなど、特に限定は無い。透明樹脂フィルムとしては、セルロースアシレートフィルム(例えば、セルローストリアセテートフィルム(屈折率1.48)、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム等が使用できる。
【0089】
その中でも、透明性が高く、光学的に複屈折が少なく、製造が容易であり、偏光板の保護フィルムとして一般に用いられているセルロースアシレートフィルムが好ましく、セルローストリアセテートフィルムが更に好ましい。又、透明基材の厚さは通常25μm〜1000μm程度とする。本発明においては、透明プラスチックフィルム基材がセルロースエステル系フィルムであり、かつ該セルロースエステル系フィルムの膜厚が30μm以上70μm以下であることが特に好ましい。
【0090】
本発明における透明プラスチックフィルム基材は透明性が高いほどよく、可視光の透過率が80%以上であるものが好ましい。
【0091】
本発明ではセルロースアシレートフィルムに、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。
酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算に従う。セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることが更に好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0092】
一般に、セルロースアシレートの2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。更にセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
本発明ではセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落「0043」〜「0044」[実施例][合成例1]、段落「0048」〜「0049」[合成例2]、段落「0051」〜「0052」[合成例3]に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
【0093】
本発明では、ポリエチレンテレフタレートフィルムも、透明性、機械的強度、平面性、耐薬品性及び耐湿性共に優れており、その上安価であり好ましく用いられる。透明プラスチックフィルムとその上に設けられるハードコート層との密着強度をより向上させるため、透明プラスチックフィルムは易接着処理が施されたされたものであることが更に好ましい。市販されている光学用易接着層付きPETフィルムとしては東洋紡績社製コスモシャインA4100、A4300等が挙げられる。
【0094】
[防眩フィルムの層構成]
本発明の防眩フィルムは、一般に、最も単純な構成では、透明基材上に防眩層を塗設した構成である。
【0095】
本発明の防眩フィルムの好ましい層構成の例を下記に示すが、特にこれらの層構成のみに限定されるわけではない。
【0096】
・支持体/防眩層
・支持体/ハードコート層/防眩層
・支持体/防眩層/ハードコート層
・支持体/防眩層/低屈折率層
・支持体/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
・支持体/防眩層/ハードコート層/低屈折率層
【0097】
[防眩フィルムの製造方法]
本発明の防眩フィルムの製造方法は、少なくとも下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性組成物を透明プラスチックフィルム基材上に塗布し、加熱して防眩層を形成する工程を有する。
(A)バインダー樹脂形成用硬化性化合物
(B)平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子
(C)フルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位、及び少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体
ただし、該硬化性組成物の全固形分中に占める(A)成分の割合は80質量%以上であり、(B)成分の割合は5質量%以上12質量%以下である。
【0098】
硬化性組成物の塗布は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法により行なうことが好ましく、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法(米国特許2681294号明細書、特開2006−122889号明細書参照)がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
【0099】
硬化性組成物は塗布された後、40℃以上100℃以下で30秒以上加熱されることが好ましい。該加熱により、溶媒を揮散させる効果がある。該加熱温度は、50℃以上90℃以下であることがより好ましく、60℃以上80℃以下であることが更に好ましい。加熱温度が40℃以上であると溶媒が揮散しやすくなるため好ましく、100℃以下であると塗膜に必要な固形分成分の揮散が抑えられるため好ましい。
【0100】
本発明の防眩フィルムの製造方法は、硬化性組成物の塗布と加熱とを連続的に行なってもよいし、塗布と加熱の間に他の工程を含んでもよい。
【0101】
[防眩層の硬化条件]
本発明における防眩層の硬化方法に関して、好ましい例を以下に述べる。
本発明では、電離放射線による照射と、照射の前、照射と同時又は照射後の熱処理とを組み合わせることにより、硬化することが有効である。
以下にいくつかの製造工程のパターンを示すが、これらに限定されるものではない。
照射前→ 照射と同時 → 照射後(−は熱処理を行っていないことを示す。)
(1)熱処理→ 電離放射線硬化→ −
(2)熱処理→ 電離放射線硬化→ 熱処理
(3) − → 電離放射線硬化→ 熱処理
その他、電離放射線硬化時に同時に熱処理を行う工程も好ましい。
【0102】
本発明においては、上記のとおり、電離放射線による照射と組み合わせて熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、防眩フィルムの支持体、防眩層を含めた構成層を損なうものでなければ特に制限はないが、好ましくは60〜200℃、更に好ましくは80〜130℃、最も好ましくは80〜110℃である。
【0103】
熱処理に要する時間は、使用成分の分子量、その他成分との相互作用、粘度などにより異なるが、15秒〜1時間、好ましくは30秒〜30分、最も好ましくは45秒〜5分である。
【0104】
電離放射線の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が広く用いられる。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm〜1000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して各層を硬化するのが好ましい。照射の際には、前記エネルギーを一度に当ててもよいし、分割して照射することもできる。特に塗膜の面内での性能ばらつきを少なくする点や、面状、表面のざらつき感を良化させるという観点からは、2回以上に分割して照射することが好ましく、初期に150mJ/cm以下の低照射量の紫外光を照射し、その後、50mJ/cm以上の高照射量の紫外光を照射し、かつ初期よりも後期の方で高い照射量を当てることが好ましい。
【0105】
[低屈折率層]
本発明では、防眩層の上に低屈折率層を形成することもできる。低屈折率層は防眩層よりも低い屈折率を有し、厚さは50〜200nmであることが好ましく、70〜150nmであることがさらに好ましく、80〜120nmであることが最も好ましい。
【0106】
低屈折率層の屈折率は、直下の層の屈折率より低く、1.20〜1.55であることが好ましく、1.25〜1.46であることがより好ましく、1.30〜1.40であることが特に好ましい。低屈折率層は低屈折率層形成用の硬化性組成物を硬化して得ることが好ましい。
好ましい低屈折率層の硬化性物組成の態様としては、
(1)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物を含有する組成物、
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物、
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと無機微粒子(特に中空構造を有する無機微粒子が好ましい。)を含有する組成物、
などが挙げられる。
(1)及び(2)に関しても、無機微粒子を含有することが好ましく、さらに屈折率の低い中空構造を有する無機微粒子用いると、低屈折率化や無機微粒子添加量と屈折率の調整などの観点で特に好ましい。
【0107】
(1)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素化合物
架橋性または重合性の官能基を有する含フッ素化合物としては、含フッ素モノマーと架橋性または重合性の官能基を有するモノマーの共重合体を挙げることができる。これら含フッ素ポリマーの具体例は、特開2003−222702号公報、特開2003−183322号公報等に記載されている。
【0108】
上記のポリマーに対しては特開2000−17028号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、特開2002−145952号に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、上記の2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。また、特開2004−170901号公報に記載のオルガノランの加水分解縮合物も好ましく、特に(メタ)アクリロイル基を含有するオルガノシランの加水分解縮合物が好ましい。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
【0109】
ポリマー自身が単独で十分な硬化性を有しない場合には、架橋性化合物を配合することにより、必要な硬化性を付与することができる。例えばポリマー本体に水酸基含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用いることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。これら化合物の硬化には、有機酸又はその塩を用いるのが好ましい。
【0110】
(2)含フッ素のオルガノシラン材料の加水分解縮合物を主成分とする組成物
含フッ素のオルガノシラン化合物の加水分解縮合物を主成分とする組成物も屈折率が低く、塗膜表面の硬度が高く好ましい。フッ素化アルキル基に対して片末端又は両末端に加水分解性のシラノールを含有する化合物とテトラアルコキシシランの縮合物が好ましい。具体的組成物は、特開2002−265866号公報、特許317152号公報に記載されている。
【0111】
(3)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーと中空構造を有する無機微粒子を含有する組成物
更に別の好ましい態様として、低屈折率の粒子とバインダーからなる低屈折率層が挙げられる。低屈折率粒子としては、有機でも無機でも良いが、内部に空孔を有する粒子が好ましい。中空粒子の具体例は、特開2002−79616号公報に記載のシリカ系粒子に記載されている。粒子屈折率は1.15〜1.40が好ましく、1.20〜1.30が更に好ましい。バインダーとしては、上記防眩層の頁で述べた二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。
【0112】
本発明に用いられる低屈折率層用の組成物には、前述の光ラジカル重合開始剤または熱ラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。ラジカル重合性化合物を含有する場合には、該化合物に対して1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部の重合開始剤を使用できる。
【0113】
本発明に用いられる低屈折率層には、無機粒子を併用することができる。耐擦傷性を付与するために、低屈折率層の厚みの15%〜150%、好ましくは30%〜100%、更に好ましくは45%〜60%の粒径を有する微粒子を使用することができる。
【0114】
本発明の低屈折率層には、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のポリシロキサン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することができる。
【0115】
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン{例えば“ KF−100T”,“X−22−169AS”,“KF−102”,“X−22−3701IE”,“X−22−164B”,“X−22−5002”,“X−22−173B”,“X−22−174D”,“X−22−167B”,“X−22−161AS”(商品名)、以上、信越化学工業(株)製;“AK−5”,“AK−30”,“AK−32”(商品名)、以上東亜合成(株)製;、「サイラプレーンFM0725」,「サイラプレーンFM0721」(商品名)、以上チッソ(株)製等}を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。
【0116】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば−CFCF、−CH(CFH、−CH(CFCF、−CHCH(CFH等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF、CHCF(CF、CH(CH)CFCF、CH(CH)(CFCFH等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCHOCHCFCF、CHCHOCHH、CHCHOCHCH17、CHCHOCFCFOCFCFH等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
【0117】
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R−2020、M−2020、R−3833、M−3833、オプツールDAC(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF−171、F−172、F−179A、ディフェンサMCF−300、MCF−323 (以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらのポリシロキサンフッ素系化合物やポリシロキサン構造を有する化合物は低屈折率層全固形分の0.1〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0118】
[ハードコート層]
本発明の防眩フィルムには、フィルムの物理的強度を更に付与するために、防眩層に加えてハードコート層を設けることができる。ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
【0119】
防眩フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、ハードコート層の厚さは通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、更に好ましくは2μm〜10μm、最も好ましくは3μm〜7μmである。また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0120】
ハードコート層は、電離放射線硬化性樹脂化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明プラスチックフィルム基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0121】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
【0122】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。
【0123】
[偏光板]
本発明の防眩フィルムは、偏光膜とその両側に配置された保護フィルムとからなる偏光板の、その保護フィルムの一方又は両方に使用して、防眩性を有する偏光板とすることができる。
【0124】
一方の保護フィルムとして本発明の防眩フィルムを用い、他方の保護フィルムには、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよいが、その他方の保護フィルムには、溶液製膜法で製造され、かつ10〜100%の延伸倍率でロールフィルム形態における幅方向に延伸したセルロースアセテートフィルムを用いることが好ましい。
【0125】
また、偏光膜の2枚の保護フィルムのうち、本発明の防眩フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい態様である。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されている光学補償フィルムが好ましい。
【0126】
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
【0127】
また偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作製される。
すなわち、連続的に供給されるポリビニルアルコール系フィルムなどのポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸して、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内で、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するように、フィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0128】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落番号0020〜0030に詳しい記載がある。
【0129】
[画像表示装置]
本発明の防眩フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に用いられる。特に液晶表示装置に用いることが好ましい。
【実施例】
【0130】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0131】
(防眩層用塗布液の調製)
以下の組成で各成分を添加し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用塗布液1を調製した。
<防眩層用塗布液1の組成>
DPHA 35.6g
イルガキュア907 1.2g
平均粒径2.5μm架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合粒子(屈折率1.525)分散液(固形分濃度30質量%) 10.7g
フルオロ脂肪族基含有共重合体P−108 0.1g
MIBK(メチルイソブチルケトン) 34.5g
MEK(メチルエチルケトン) 17.9g
【0132】
防眩層用塗布液1において、透光性樹脂粒子を除いた硬化後のマトリックスの屈折率は1.525であった。
【0133】
透光性樹脂粒子の分散液は攪拌しているMIBK溶液中に透光性樹脂粒子を分散液の固形分濃度が30質量%になるまで徐々に加え、30分間攪拌して作製した。透光性樹脂粒子は積水化成品工業(株)製の「2.5μm架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合粒子(屈折率1.525)」を用いた。
【0134】
硬化性化合物、透光性樹脂粒子、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の種類、並びに、硬化性化合物、及び透光性樹脂粒子の添加量、更にシリカ分散液(MEK−ST)の添加量を表1のように変更した以外は防眩層用塗布液1と同様にして塗布液2〜19を作製した。表1中の粒子、硬化性化合物、シリカの添加量は硬化性組成物の全固形分中におけるそれぞれの比率(質量%)である。
【0135】
(防眩層の塗設)
60μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルムをロール形態で巻き出して、防眩層用塗布液1を使用し防眩フィルム試料1を作製した。
特開2006−122889号公報実施例1記載のスロットダイを用いたダイコート法で、搬送速度30m/分の条件で、2.4ml/mの塗布量で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、更に窒素パージ下酸素濃度約0.1%で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量150mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ巻き取った。
防眩層の膜厚(硬化後の平均膜厚)は1μm、得られた防眩層の屈折率は1.525であった。
【0136】
上記と同様の方法を用い、塗布液2〜19を使用して、表1に示したような膜厚(硬化後の平均膜厚)となるように塗布量を変えて防眩層塗布液を塗布し、防眩フィルム試料2〜25を作製した。このとき、塗布液中の固形分濃度はどれも一定となるようにした。
【0137】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
イルガキュア907:アセトフェノン系光重合開始剤[BASF製]
MEK−ST:MEK分散シリカ溶液[日産化学製]
【0138】
表1中記載の透光性樹脂粒子としては、架橋メチルメタアクリレート−スチレン共重合粒子を用いた。また、アクリルとスチレンの比率を変えることで屈折率を調整した。
【0139】
(防眩フィルムの鹸化処理)
得られた防眩フィルムを次の条件で鹸化処理・乾燥した。
アルカリ浴:1.5mol/dm水酸化ナトリウム水溶液、55℃で120秒。
第1水洗浴:水道水、60秒。
中和浴:0.05mol/dm硫酸、30℃−20秒。
第2水洗浴:水道水、60秒。
乾燥:120℃、60秒。
【0140】
(フロント用偏光板の作製)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗したトリアセチルセルロースフィルムと、鹸化処理済みの防眩フィルム試料1〜28に、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面を接着、保護してフロント用偏光板を作製した。このとき、トリアセチルセルロースフィルムの膜厚は対応する防眩フィルムの支持体と同じものを使用した。
【0141】
(リア用偏光板の作製)
防眩フィルムを下記に示す光学補償フィルムに変更したこと以外は、前記フロント用偏光板と同様にして、リア用偏光板を作製した。
【0142】
(光学補償フィルムの作製)
下記の組成の内層用及び外層用ドープをそれぞれ調製した。
内層用ドープの組成:
・セルロースアセテートC−1 100質量部
(アセチル置換度2.81、数平均分子量88000)
・下記レターデーション発現剤 7質量部
・下記の重合体Q 9.0質量部
・下記染料(ブルーイング染料) 0.000078質量部
・ジクロロメタン 423.9質量部
・メタノール 63.3質量部
【0143】
レターデーション発現剤
【0144】
【化17】

【0145】
ブルーイング染料
【0146】
【化18】

【0147】
外層用ドープの組成:
・セルロースアセテートC−1 100質量部
(アセチル置換度2.81、数平均分子量88000)
・前記レターデーション発現剤 7質量部
・下記の重合体Q 9.0質量部
・前記染料(ブルーイング染料) 0.000078質量部
・平均粒径16nmのシリカ粒子 0.14質量部
(「AEROSIL R972」日本アエロジル(株)製)
・ジクロロメタン 424.5質量部
・メタノール 63.4質量部
【0148】
重合体Q:TPA/PA/SA/AA(=45/5/30/20(モル%))のジカルボン酸残基と、エチレングリコール(100モル%)のジオール残基とからなる重縮合体であって、両末端がアセチルエステル残基で封止されている、数平均分子量が900の重縮合体(ここで、TPAはテレフタル酸、PAはフタル酸、SAはセバシン酸、AAはアジピン酸である。)
【0149】
上記組成の外層及び内層ドープ液をバンド流延装置を用い、支持体面側外層、内層、空気界面側外層の3層構造となるように、2000mm幅でステンレスバンド支持体上に均一に同時積層共流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が40質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離の際に張力をかけて縦(MD)延伸倍率が1.02倍となるように延伸し、ついで、テンターで両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.22倍となるように、45%/分の速度で横方向に延伸(横延伸)した。延伸開始時の残留溶剤量は30質量%であった。延伸後に搬送しながら115℃の乾燥ゾーンで35分間乾燥させた。乾燥後に1340mm幅にスリットし、各層の膜厚比が支持体面側外層:内層:空気界面側外層=3:94:3で、総膜厚60μmと40μmセルロースアシレート光学補償フィルムを得た。
【0150】
(液晶表示装置の作製)
VA型液晶表示装置(LC−37GS10、シャープ(株)製)に設けられているフロント、及びリアの偏光板及び位相差膜を剥がし、代わりに上記で作製したそれぞれの偏光板を、フロントはトリアセチルセルロースフィルムが、リアは光学補償フィルムが液晶セル側になるように配置し、透過軸が製品に貼られていた偏光板と一致するように貼り付けて、防眩フィルムを有する液晶表示装置を作製した。なお、リアの偏光板は、フロントの防眩フィルムで使用したトリアセチルセルロースフィルムの膜厚と同じ膜厚光学補償フィルムを用いたものを使用した。
【0151】
(防眩フィルム及び液晶表示装置の評価)
<1>凝集度
作製した防眩フィルムを、透過型の光学顕微鏡を用いて倍率1000倍で撮影し、得られた画像(280μm×210μm)中にある透光性樹脂粒子の一次粒子数/二次粒子数を凝集度と定義した。
一次粒子とは透光性樹脂粒子を形成する最小単位であり、二次粒子とは接触し合っている一次粒子が形成する1つの集合体である。
【0152】
<2>ヘイズ
JIS−K7136に準じて、得られた防眩フィルムの全ヘイズ値(H)を測定した。装置には日本電色工業(株)製ヘーズメーターNDH4000を用いた。
【0153】
<3>風ムラ
得られた防眩フィルムを、塗布面をルーバーありの三波長蛍光灯拡散光下で観察して風ムラの評価を行った。ここで、風ムラとは透明支持体の進行方向と略平行な方向に形成されるスジ状の模様のことである。
未塗布面を黒く塗っても風ムラが全くない:A
未塗布面を黒く塗ると風ムラがあるが、黒塗りしないとわからない:B
未塗布面を黒塗りしなくてもわずかに風ムラがわかる:C
未塗布面を黒塗りしなくても強い風ムラがわかる:D
【0154】
<4>防眩性
むき出しの三波長蛍光灯を45度の角度から映し、−45度の方向から観察した際の反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
蛍光灯の輪郭がわずかにわかる:A
蛍光灯はぼやけているが、輪郭は識別できる:B
蛍光灯の輪郭が全くわからない(防眩性が強すぎて白茶けが目立つ):C
蛍光灯がほとんどぼけない(防眩性がない):D
なお、本発明で目的とする防眩性はA又はBである。
【0155】
<5>暗室コントラスト
作製した防眩フィルムを、液晶テレビ(SHARP LC46−SE1)に実装し、測定機(TOPCON SR−UL1R)を用いた。防眩層を設けていないトリアセチルセルロースフィルムを用いて測定した際の値を100とし、各防眩フィルムでのコントラスト値を算出し、以下の基準で評価した。
97以上:A
95以上97未満:B
93以上95未満:C
93未満:D
なお、本発明で目的とするコントラストはB以上である。
【0156】
【表1】

【0157】
表1中の粒子、硬化性化合物、シリカの添加量は硬化性組成物の全固形分中におけるそれぞれの比率(質量%)である。
【0158】
表1より、フルオロ脂肪族基含有共重合体を用いずに作製した防眩フィルムでは、必要な凝集性が得られず、十分な防眩性が得られないことがわかる(防眩フィルム試料19)。また、バインダー樹脂形成用硬化性化合物の割合が硬化性組成物の全固形分に対して80質量%に満たないものは、フルオロ脂肪族基含有共重合体を用いても凝集性が低く、十分な防眩性が得られず、フルオロ脂肪族基含有共重合体を用いないものと変わらない(防眩フィルム試料20、21と、23、24との比較)。
また、本発明における二次粒子を形成する一次粒子数の分布は、どれも標準偏差が1以下であった。
本発明における粒径や膜厚、粒子量の範囲で作製した防眩フィルムでは、フルオロ脂肪族基含有共重合体を用いることで凝集性が高まり、さらに本発明の範囲に屈折率を制御することで、低ヘイズであり、かつ目的とする防眩性と、高いコントラストを有した防眩フィルムを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルム基材上に、表面に凹凸を有する膜厚が2μm以上5μm以下の防眩層を有する防眩フィルムであって、
該防眩層は、少なくとも平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子とバインダー樹脂とを含有し、
該防眩層の全固形分中に占める前記透光性樹脂粒子の割合は5質量%以上12質量%以下であり、
前記透光性樹脂粒子の平均粒径に対する該防眩層の膜厚の比は1.0以上2.0以下であり、
前記透光性樹脂粒子と前記バインダー樹脂との屈折率差は0.01以下であり、
該防眩層における前記透光性樹脂粒子の凝集度が2.0以上5.0以下であり、
該防眩フィルムのヘイズ値が0.5%以上5.0%以下である、防眩フィルム。
【請求項2】
前記防眩層は、少なくとも下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性組成物から形成された層であり、
該硬化性組成物の全固形分中に占める(A)成分の割合は80質量%以上である、請求項1に記載の防眩フィルム。
(A)バインダー樹脂形成用硬化性化合物
(B)平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子
(C)フルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位、及び少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体
【請求項3】
前記(C)成分における、前記フルオロ脂肪族基含有モノマーが下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーであり、前記少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマーが下記一般式[2]で表されるモノマーである、請求項2に記載の防眩フィルム。
一般式[1]
【化1】


(一般式[1]において、Rは水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上18以下の整数を表す。)
一般式[2]
【化2】


(一般式[2]において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、Rは炭素数1以上20以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記(C)成分における、前記フルオロ脂肪族基含有モノマーが下記一般式[3]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーであり、前記少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマーが下記一般式[2]で表されるモノマーである、請求項2に記載の防眩フィルム。
一般式[3]
【化3】


(一般式[3]において、Rは水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上6以下の整数を表す。)
一般式[2]
【化4】


(一般式[2]において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは2価の連結基を表し、Rは炭素数1以上20以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記(C)成分における、前記少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位に対する前記フルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位の質量比が、0.25以上50以下である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項6】
前記(C)成分の含有量が、防眩層の全質量に対して0.001質量%以上5質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項7】
前記(A)成分の含有量が、防眩層の全質量に対して80質量%以上95質量%未満である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項8】
前記防眩層上に、前記防眩層よりも低い屈折率を有する低屈折率層を更に有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項9】
前記透明プラスチックフィルム基材がセルロースエステル系フィルムであり、かつ該セルロースエステル系フィルムの膜厚が30μm以上70μm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の防眩フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の防眩フィルムを、偏光膜の保護フィルムの少なくとも一方に用いた偏光板。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の防眩フィルムを、偏光膜の保護フィルムの一方に、光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の防眩フィルム、又は、請求項10若しくは11に記載の偏光板が画像表示面に配置された画像表示装置。
【請求項13】
少なくとも下記(A)〜(C)成分を含有する硬化性組成物を透明プラスチックフィルム基材上に塗布し、加熱して防眩層を形成する工程を有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の防眩フィルムの製造方法。
(A)バインダー樹脂形成用硬化性化合物
(B)平均粒径が1.0μm以上3.0μm以下の透光性樹脂粒子
(C)フルオロ脂肪族基含有モノマー由来の繰り返し単位、及び少なくとも1種のフルオロ脂肪族基を含有しないモノマー由来の繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体
ただし、該硬化性組成物の全固形分中に占める(A)成分の割合は80質量%以上であり、(B)成分の割合は5質量%以上12質量%以下である。

【公開番号】特開2013−79994(P2013−79994A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218511(P2011−218511)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】