説明

防眩フィルム用コーティング層およびこれを含む防眩フィルム

本発明は、ディスプレイ表面上の外部光の反射による眩しさを防止することができる防眩フィルム用コーティング層およびこれを含む防眩フィルムに関する。
本発明にかかる防眩フィルム用コーティング層は、バインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含み、前記有機微粒子および無機微粒子は、前記バインダー樹脂と屈折率の差がそれぞれ0.3以下であることを特徴とする。本発明にかかる防眩フィルム用コーティング層は、防眩特性のみならず、像鮮明度およびコントラストに優れた防眩フィルムを提供することができ、高解像度のディスプレイへの適用が可能で、薄膜のコーティング厚さにおいても優れた耐スクラッチ特性を有するため、偏光板の大型化が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ表面上の外部光の反射による眩しさを防止することができる防眩フィルム用コーティング層およびこれを含む防眩フィルムに関する。本出願は、2010年2月19日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2010−0014931号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
最近、情報伝達の高速化および高密度化、伝達媒体の多様化および多機能化に応え、消費者が大画面、高画質、多機能および高機能性などの高品質の製品を要求するに伴い、大画面の平板ディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)が登場するようになった。ディスプレイの大型化および薄型化とノートパソコンの需要の増加に伴い、LCDやPDP、リアプロジェクション(Rear−projection)テレビなどの多様な形態の平板ディスプレイが開発されて商用化されている。しかし、このようなディスプレイは、自然光などの外部光に露出する場合、表面反射光によって利用者の目に疲労感を与えたり頭痛も誘発したりし、ディスプレイの内部で作られるイメージが鮮明な像として認識されない問題などが発生している。
【0003】
このような欠点を解決するために、ディスプレイ表面に凹凸を形成して外部の光を表面で散乱させることにより、防眩効果を実現している。しかし、これにより、高解像度のディスプレイでは像鮮明度が低下する問題が発生した。これを改善するために、内部散乱を誘導する粒子をコーティング層に添加して内部ヘイズを誘導する方法を利用しているが、多くの問題を抱えている。
【0004】
大韓民国登録特許第10−046782号には、アクリレート系バインダー樹脂と屈折率の差が0.2〜0.5の平均直径0.05〜1μmの第1微粒子と、屈折率の差が0.1を超えない平均粒径0.5〜3μmの第2微粒子とを用いた高解像度用防眩コーティング層について記載されているが、バインダー樹脂と第1微粒子との屈折率の差が目立ち、コントラストが低下する欠点があった。
【0005】
一方、大韓民国登録特許第10−0378340号には、バインダー樹脂の内部に少なくとも2種類以上の透光性微粒子を含み、透光性微粒子の屈折率はバインダーと0.03以上0.2以下であり、各透光性微粒子は互いに異なる屈折率を有することを特徴とする防眩コーティング層について記載されているが、同一の像鮮明度およびヘイズ値対比の防眩特性が低下し、10%以上のヘイズによってコントラストが低下する欠点があり、有機粒子によって耐スクラッチが低下する欠点があった。
【0006】
また、大韓民国登録特許第10−0296369号には、バインダー樹脂の内部に透光性拡散剤を含み、表面の凹凸による外部ヘイズ値が7〜30であり、透光性拡散剤による内部ヘイズ値が1〜15であることを特徴とする防眩コーティング層について記載されているが、高い表面ヘイズ値によってコントラストが低下する欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、防眩フィルムに光散乱効果の発生を目的として含まれる微細粒子は、主に有機微粒子が多く用いられる。
【0008】
しかし、この場合、塗膜の強度が弱く、スクラッチが発生しやすい問題があり、これを防止するために塗膜の厚さを厚くコーティングすると、大型ディスプレイの偏光板製造過程において、コーティング塗膜に微細なクラックが発生して不良率が高くなるだけでなく、バインダー樹脂のつぶれる特性によって偏光板の裁断時に裁断面が壊れる現象が発生する問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、防眩特性のみならず、耐スクラッチ特性に優れ、特に、薄膜としても優れた耐擦傷性および鉛筆硬度の確保が可能で、大型偏光板の製造が容易な防眩コーティング組成物およびこれを用いて製造された高解像度ディスプレイ用防眩フィルムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決し、耐スクラッチ特性に優れた防眩フィルム用コーティング層を提供するためのものであって、バインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含み、前記有機微粒子および無機微粒子は、前記バインダー樹脂と屈折率の差がそれぞれ0.3以下であることを特徴とする防眩フィルム用コーティング層を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記防眩フィルム用コーティング層〔防眩(性)被覆層、防眩(性)層〕を含む防眩フィルムを提供する。
【0012】
さらに、本発明は、バインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含み、前記有機微粒子および無機微粒子は、前記バインダー樹脂と屈折率の差がそれぞれ0.3以下であることを特徴とする防眩フィルム用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、1)基材上にバインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含み、前記有機微粒子および無機微粒子は、前記バインダー樹脂と屈折率の差がそれぞれ0.3以下の防眩フィルム用組成物をコーティングするステップと、2)硬化させるステップとを含む防眩フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる防眩フィルム用コーティング層は、防眩特性のみならず、像鮮明度およびコントラストに優れた防眩フィルムを提供することができ、高解像度のディスプレイへの適用が可能で、薄膜のコーティング厚さにおいても優れた耐スクラッチ特性を有するため、偏光板の大型化が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明にかかる防眩フィルム用コーティング層は、バインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含み、前記有機微粒子および無機微粒子は、前記バインダー樹脂と屈折率の差がそれぞれ0.3以下であることを特徴とする。
【0017】
前記有機微粒子および無機微粒子の総含有量は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の範囲以内に含まれることが好ましい。つまり、前記有機微粒子および無機微粒子を含んで構成された微粒子の総量を合算し、バインダー樹脂100重量部に対して1〜30重量部以下を含むことが好ましい。前記有機微粒子および無機微粒子の総含有量が、前記バインダー樹脂100重量部に対して、1重量部未満であれば、内部散乱によるヘイズ値が十分に実現されず、30重量部を超えると、コーティング性が不良になり、内部散乱によるヘイズ値が過度に大きくなり、明暗コントラスト比(contrast ratio)が低下して好ましくない。
【0018】
前記無機微粒子の含有量は、有機微粒子100重量部に対して、20〜80重量部の範囲以内であることが好ましい。無機微粒子の量が、有機微粒子100重量部に対して、20重量部未満であれば、表面に突出する有機微粒子によって耐スクラッチ特性が弱くなり、80重量部を超えると、面が粗くなり、コーティング面にクラック不良が発生して好ましくない。
【0019】
前記有機微粒子は、前記バインダー樹脂との平均屈折率の差が0.3以下であることが好ましく、0.02〜0.2であることがより好ましい。前記屈折率の差が前記下限に達していなければ、内部散乱による十分なヘイズ値を得にくく、前記上限を超えると、内部散乱が増加してヘイズ値が増加するのに対し、透過度が減少して明暗コントラスト比が低下して好ましくない。
【0020】
前記有機微粒子は、球形であり、粒子直径が1〜7μmの範囲以内であることが好ましい。直径が1μm未満であれば、散乱特性が低下して十分なヘイズ値を得ることができず好ましくなく、7μmを超えると、コーティング塗膜の厚さが厚くなるため、壊れたりつぶれる特性が目立って好ましくない。
【0021】
前記有機微粒子は、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリレート−co−スチレン、ポリメチルアクリレート−co−スチレン、ポリメチルメタクリレート−co−スチレン、ポリカーボネート、ポリビニルクロライド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、エポキシレジン、フェノールレジン、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアミン、ポリジビニルベンゼン、ポリジビニルベンゼン−co−スチレン、ポリジビニルベンゼン−co−アクリレート、ポリジアリルフタレートおよびトリアリルイソシアヌレートポリマーの中から選択された1つ以上またはこれらの2以上のコポリマー(copolymer)を使用することができる。
【0022】
前記無機微粒子は、球形であり、粒子直径が2〜10μmの範囲以内であることが好ましい。直径が2μm未満であれば、粒子がバインダー樹脂の内部に埋め込まれて外部ヘイズを実現することができず、10μmを超えると、コーティングフィルムの厚さが厚くなるため好ましくない。
【0023】
前記無機微粒子は、前記バインダー樹脂との平均屈折率の差が0.3以下であることが好ましく、0.02〜0.2であることがより好ましい。前記屈折率の差が前記下限に達していなければ、内部散乱による十分なヘイズ値を得にくく、前記上限を超えると、内部散乱が増加してヘイズ値が増加するのに対し、透過度が減少して明暗コントラスト比が低下して好ましくない。
【0024】
前記無機微粒子は、シリカ、シリコン粒子、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、ジルコニア、チタニアの中から選択された1つの単一物またはこれらの2以上を共に使用することができ、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0025】
前記バインダー樹脂は、アクリル系バインダー樹脂を使用することができる。前記アクリル系バインダー樹脂は、その種類が特に限定されるものではなく、当該技術分野において公知のものであれば特に制限なく選択して使用することができる。前記アクリル系バインダー樹脂の例としては、アクリレート単量体、アクリレートオリゴマー、またはこれらの混合物などを使用することができる。この時、前記アクリレート単量体またはアクリレートオリゴマーは、硬化反応に参加可能なアクリレート官能基を少なくとも1つ以上含むことが好ましい。
【0026】
前記アクリレート単量体およびアクリレートオリゴマーは、その種類が特に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野において通常使用されるものを制限なく選択して使用することができる。
【0027】
前記アクリレートオリゴマーとしては、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレートまたはこれらの混合物などが使用できる。前記アクリレート単量体としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチレンプロピルトリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレートまたはこれらの混合物などが好適に用いられるが、必ずしもこれらの例にのみ限定されるものではない。
【0028】
特に、本発明にかかる防眩フィルム用コーティング層は、単一コーティング層内に有機微粒子および無機微粒子を共に含むことにより、防眩特性のみならず、像鮮明度およびコントラストに優れた防眩フィルムを提供することができ、これにより、高解像度のディスプレイへの適用が可能で、薄膜のコーティング厚さにおいても優れた耐スクラッチ特性を有するため、偏光板の大型化が容易であるという特徴がある。
【0029】
また、本発明にかかる防眩フィルム用コーティング層は、コーティング層内に含まれる有機微粒子および無機微粒子の分散度が優れるため、前記有機微粒子と無機微粒子とが互いに重なる現象なしに単一粒子層を形成できるという特徴がある。
【0030】
本発明にかかる防眩フィルム用コーティング層は、防眩性に優れ、像鮮明度およびコントラストに優れ、最終的なフィルムの機械的強度および耐スクラッチ性に優れるという特徴がある。
【0031】
前記防眩フィルム用コーティング層の厚さは、1〜20μmであることが好ましく、1〜4μmの範囲以内であることがより好ましい。コーティング層が薄いほどクラックが発生する確率が低くなるからである。ただし、コーティング層が形成された目的を十分に実現しなければならないため、前記厚さ範囲は、この目的を考慮して当業者が前記範囲以内で適切に調節することができる。
【0032】
また、本発明にかかる防眩フィルムは、前記防眩フィルム用コーティング層を含む。
【0033】
さらに、本発明にかかる防眩フィルム用組成物は、バインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含み、前記有機微粒子および無機微粒子は、前記バインダー樹脂と屈折率の差がそれぞれ0.3以下であることを特徴とする。
【0034】
本発明にかかる防眩フィルム用組成物において、前記バインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子に対する内容は前述したのと同様であるので、これに関する具体的な説明は省略する。
【0035】
本発明にかかる防眩フィルム用組成物は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、溶媒が50〜500重量部さらに含まれ得る。
【0036】
前記溶媒は、種類において特に限定はないが、通常有機溶媒が使用可能である。
【0037】
前記溶媒は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、50〜500重量部を使用することが好ましい。前記溶媒の含有量が50重量部未満の場合、コーティング組成物の粘度が過度に大きく、コーティング性が不良になり得、500重量部を超える場合、コーティングフィルムの膜強度が低下し、厚膜として製造しにくくなり得る。
【0038】
前記溶媒は、C〜Cの低級アルコール類、アセテート類、ケトン類、セロソルブ類、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、およびキシレンの中から選択された1つの単一物またはこれらの混合物であり得る。
【0039】
ここで、前記低級アルコール類は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコールおよびジアセトンアルコールの中から選択された1つの物質であり、前記アセテート類は、メチルアセテート、エチルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテートおよびセロソルブアセテートの中から選択された1つの物質であり、前記ケトン類は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンおよびアセトンの中から選択された1つの物質であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0040】
本発明の組成物は、UV照射を通した硬化を目的として添加されるUV硬化開始剤をさらに含むことができる。
【0041】
前記UV硬化開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシジメチルアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインブチルエーテルの中から選択された1つの単一物または2以上の混合物であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0042】
前記UV硬化開始剤は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部で添加されることが好ましい。0.1重量部未満の場合、十分な硬化が起きないこともあり、10重量部を超える場合、防眩フィルムの膜強度が低下する恐れがある。
【0043】
本発明にかかる防眩フィルム用組成物は、レベリング剤、湿潤剤、および消泡剤の中から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0044】
前記添加剤は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部で添加可能である。
【0045】
前記レベリング剤は、本発明にかかる防眩フィルム用組成物を用いてコーティングしたコーティング膜の表面を均一にすることができる。
【0046】
前記湿潤剤は、本発明にかかる防眩フィルム用組成物の表面エネルギーを低下させる役割を果たすことにより、防眩フィルム用組成物を透明基材層にコーティングする時、均一な塗布を可能にする。
【0047】
前記消泡剤は、本発明にかかる防眩フィルム用組成物内の気泡を除去するために添加可能である。
【0048】
また、本発明にかかる防眩フィルムの製造方法は、1)基材上にバインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含み、前記有機微粒子および無機微粒子は、前記バインダー樹脂と屈折率の差がそれぞれ0.3以下の防眩フィルム用組成物をコーティングするステップと、2)硬化させるステップとを含む。
【0049】
本発明にかかる防眩フィルムの製造方法において、前記ステップ1)の基材は、その構成が特に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野において通常使用されるものを使用することができる。
【0050】
例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)およびノルボルネン系ポリマーの中から選択された物質で形成できる。しかし、これらに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野において一般的に使用される他の物質を使用できることはもちろんである。
【0051】
ここで、本発明にかかる防眩フィルムが高解像度ディスプレイ用偏光板に適用される場合、前記基材は、トリアセチルセルロースを含むことが好ましい。
【0052】
前記基材は、透過率が少なくとも85%であり、ヘイズ値が1%以下であり、厚さが30〜120μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0053】
本発明にかかる防眩フィルムの製造方法において、前記ステップ1)の防眩フィルム用組成物のコーティング方法は、湿式コーティング法を用いることができ、ロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、およびスピンコーティング法を挙げることができる。コーティング法はこれに限定されるものではなく、当該技術分野において用いられる多様な他のコーティング法を使用できることはもちろんである。
【0054】
本発明にかかる防眩フィルムの製造方法において、前記ステップ2)では、乾燥ステップおよび硬化ステップに分けて進行してもよく、1つのステップで進行してもよい。ここで、硬化ステップは、UVを利用することが適当である。
【0055】
硬化条件は、配合比や成分に応じてやや差があるが、一般的には、電子ビームまたは紫外線硬化の場合には、その照射量を200〜1,000mJ/cmとして1秒〜10分硬化させれば好ましい。
【0056】
電子ビームまたは紫外線硬化において、硬化時間が1秒未満の場合、バインダー樹脂が十分に硬化せず、耐摩耗性のような機械的物性が不良になり得、硬化時間が10分を超える場合、透明基材層に黄変が発生し得る。
【0057】
本発明の防眩フィルムは、前記基材層およびコーティング層のほか、他の目的の別の層をさらに具備できることはもちろんである。
【0058】
例えば、ディスプレイ表面の汚染を防止するための内汚染防止層などがさらに具備でき、それ以外の多様な目的の層が制限なくさらに具備できる。
【0059】
本発明にかかる防眩フィルムは、高解像度平板ディスプレイの前面に介在して防眩用途に使用でき、ディスプレイの種類に限定されず全て適用可能である。本発明にかかるディスプレイは、前述した防眩コーティングフィルムを除いては、当該技術分野において公知の構造を有することができる。前記防眩コーティングフィルムは、観測者が接するディスプレイの最外角に配置可能である。
【0060】
[実施例]
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて説明する。
【0061】
本発明にかかる実施例は、発明のより詳細な説明のためのものであって、後述して説明したもの以外の他の多様な形態で変形可能であり、本発明の権利範囲が以下に詳述する実施例に限定しようとするものではない。
【0062】
<実施例>
<実施例1>
バインダー樹脂としてウレタンアクリレートオリゴマー10g、多官能性アクリレートモノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)20g;有機微粒子として平均粒径が3.5μmで屈折率1.59のポリアクリレート−co−スチレン粒子2g;無機微粒子として平均粒径が4μmで屈折率が1.43のシリコン粒子2g;有機溶媒としてメチルエチルケトン30gおよびトルエン30g;UV硬化開始剤2gを均一に混合し、防眩フィルム製造用組成物を製造した。ここで、前記バインダー樹脂の屈折率は、約1.51〜1.53程度であった。
【0063】
トリアセチルセルロースからなる透明基材層(厚さ80μm)の上に、ロールコーティングを利用し、前記方法で製造した液状の防眩フィルム製造用組成物を乾燥厚さが4μmとなるように塗布した後、280mJ/cmのUVを照射して硬化させ、フィルムを得た。
【0064】
<実施例2>
前記実施例1において、無機微粒子として平均粒径は5μmで屈折率が1.46のシリカ粒子に代替して用いたことを除いては、前記実施例1で記述したのと同様に実施して防眩フィルム製造用組成物を製造した後、これを前記実施例1と同様の方法で硬化させ、防眩フィルムを製造した。
【0065】
<比較例1>
前記実施例1において、有機微粒子として平均粒径が3.5μmで屈折率1.59のポリアクリレート−co−スチレン粒子4gを使用し、無機微粒子は使用しないことを除いては、前記実施例1で記述したのと同様に実施し、防眩フィルムを製造した。
【0066】
<比較例2>
前記実施例1において、有機微粒子として平均粒径が3.5μmで屈折率1.59のポリアクリレート−co−スチレン粒子4gを使用し、無機微粒子は使用せず、製造された組成物の乾燥厚さが10μmとなるように塗布したことを除いては、前記実施例1で記述したのと同様に実施し、防眩フィルムを製造した。
【0067】
<比較例3>
前記実施例1において、有機微粒子として平均粒径が3.5μmで屈折率1.59のポリアクリレート−co−スチレン粒子3.5g、無機微粒子として平均粒径が4μmで屈折率が1.43のシリコン粒子0.5gを使用したことを除いては、前記実施例1で記述したのと同様に実施し、防眩フィルム製造用組成物を製造した後、これを用いて防眩フィルムを製造した。
【0068】
<実験例>
前記実施例1〜2および比較例1〜3により製造された防眩フィルムの物性を下記のような条件によって測定した後、その各々の結果を下記表1に示した。
【0069】
A.透過率(%)
株式会社村上色彩技術研究所(Murakami Color Research Laboratory)のHR−100を用い、透過率を測定した。
【0070】
B.ヘイズ値(%)
株式会社村上色彩技術研究所(Murakami Color Research Laboratory)のHR−100を用い、ヘイズ値を測定した。
【0071】
C.60°反射光沢度(Gloss)
ビッグガードナー(BYK Gardner)社のマイクロ−トリ−グロス(micro−TRI−gloss)を用い、60°反射光沢度(Gloss)を測定した。
【0072】
D.像鮮明度(%)
スガ試験機株式会社(Suga Test Instrument Co.,Ltd.)のICM−1Tを用い、像鮮明度を測定した。
【0073】
E.耐スクラッチ性
鋼鉄綿(#0000)を1kgのハンマーに縛り、防眩フィルムに10回擦った後観察した。
【0074】
◎:スクラッチ個数:0個
○:スクラッチ個数:1cm以下の細いスクラッチ5個以下
△:スクラッチ個数:1cm以下の細いスクラッチ5個超過または1cm以上の長いスクラッチ1個以上3個以下
×:スクラッチ個数:1cm以上の長いスクラッチ3個超過
F.鉛筆硬度
ASTMD3363に基づき、500gの荷重で鉛筆硬度毎に3回ずつテストし、硬度を測定した。
【0075】
G.耐クラック性
マンドレルテスト(1.0mm)によりクラック(crack)の長さを観察した。
【表1】

【0076】
実験の結果、前記表1に示すように、有機微粒子と無機微粒子とから構成された実施例1および2の場合、防眩特性と像鮮明度、鉛筆硬度および耐クラック性に優れていることが分かる。
【0077】
反面、有機微粒子のみを用いた比較例1の場合、耐スクラッチ特性が低下することを確認することができ、有機微粒子のみを用いて乾燥厚さを増加させた比較例2の場合、耐スクラッチ特性が一部向上するが、耐クラック性が低下することが分かった。また、無機微粒子が有機微粒子の含有量に比べて、実施例1および2対比、十分に入っていない比較例3の場合にも、耐スクラッチ特性が低下することを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防眩フィルム用コーティング層であって、
バインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含んでなり、
前記有機微粒子および無機微粒子が、前記バインダー樹脂との屈折率の差がそれぞれ0.3以下であることを特徴とする、防眩フィルム用コーティング層。
【請求項2】
前記有機微粒子および無機微粒子の総含有量が、前記バインダー樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の範囲以内であることを特徴とする、請求項1に記載の防眩フィルム用コーティング層。
【請求項3】
前記無機微粒子の含有量が、有機微粒子100重量部に対して、20〜80重量部の範囲以内であることを特徴とする、請求項1に記載の防眩フィルム用コーティング層。
【請求項4】
前記有機微粒子が、球形であり、その粒子直径が1〜7μmの範囲以内であることを特徴とする、請求項1に記載の防眩フィルム用コーティング層。
【請求項5】
前記有機微粒子が、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリレート−co−スチレン、ポリメチルアクリレート−co−スチレン、ポリメチルメタクリレート−co−スチレン、ポリカーボネート、ポリビニルクロライド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアセタール、エポキシレジン、フェノールレジン、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアミン、ポリジビニルベンゼン、ポリジビニルベンゼン−co−スチレン、ポリジビニルベンゼン−co−アクリレート、ポリジアリルフタレートおよびトリアリルイソシアヌレートポリマーの中から選択された1つ以上またはこれらの2以上のコポリマー(copolymer)であることを特徴とする、請求項1に記載の防眩フィルム用コーティング層。
【請求項6】
前記無機微粒子が、球形であり、その粒子直径が2〜10μmの範囲以内であることを特徴とする、請求項1に記載の防眩フィルム用コーティング層。
【請求項7】
前記無機微粒子が、シリカ、シリコン粒子、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ、ジルコニアおよびチタニアからなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の防眩フィルム用コーティング層。
【請求項8】
前記バインダー樹脂が、アクリル系バインダー樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の防眩フィルム用コーティング層。
【請求項9】
前記アクリル系バインダー樹脂が、アクリレート単量体およびアクリレートオリゴマーからなる群より選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項8に記載の防眩フィルム用コーティング層。
【請求項10】
前記防眩フィルム用コーティング層の厚さが、1〜20μmの範囲以内であることを特徴とする、請求項1に記載の防眩フィルム用コーティング層。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の防眩フィルム用コーティング層を含むことを特徴とする、防眩フィルム。
【請求項12】
バインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含んでなり、
前記有機微粒子および無機微粒子が、前記バインダー樹脂との屈折率の差がそれぞれ0.3以下であることを特徴とする、防眩フィルム用組成物。
【請求項13】
前記バインダー樹脂100重量部に対して、溶媒を50〜500重量部でさらに含んでなることを特徴とする、請求項12に記載の防眩フィルム用組成物。
【請求項14】
UV硬化開始剤をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の防眩フィルム用組成物。
【請求項15】
前記UV硬化開始剤の含有量が、前記バインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部であることを特徴とする、請求項14に記載の防眩フィルム用組成物。
【請求項16】
レベリング剤、湿潤剤および消泡剤からなる群より選択される1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載の防眩フィルム用組成物。
【請求項17】
防眩フィルムの製造方法であって、
1)基材上に、防眩フィルム用組成物をコーティングするステップと、
2)前記防眩フィルム用組成物を硬化させるステップとを含んでなり、
前記防眩フィルム用組成物が、バインダー樹脂、有機微粒子および無機微粒子を含んでなるものであり、
前記有機微粒子および無機微粒子が、前記バインダー樹脂との屈折率の差がそれぞれ0.3以下であることを特徴とする、防眩フィルムの製造方法。

【公表番号】特表2013−519915(P2013−519915A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552817(P2012−552817)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001050
【国際公開番号】WO2011/102650
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】