説明

防眩性フィルム、防眩性フィルムの製造方法、偏光板及び立体画像表示装置

【課題】本発明の目的は、防眩層自身の内部散乱によるクロストークの発生がないλ/4板機能を有する防眩性フィルム、また厚み方向のリターデーションRtを制御するため光学異方性層を設けたλ/4板上へ直接防眩層を設けても、湿熱耐久密着性劣化がない防眩性フィルムを提供することにある。
【解決手段】下記面内リターデーションRo(550)が100〜160nmの範囲内にあり、基材フィルム長手方向に対する配向角θが40〜50°の範囲内にある基材フィルム上に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、該防眩層が突起形状を有し、該突起形状が基材フィルムの長手方向に周期を持たず不規則な形状で不規則に配置されており、かつ防眩層の算術平均粗さRaが25〜300nmであり、かつ防眩層の内部散乱に起因するヘイズが0〜1.0%であることを特徴とする防眩性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性フィルム、防眩性フィルムの製造方法、偏光板及び立体画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の波長の直線偏光を円偏光に変換する機能を持つλ/4板は、近年、立体(3D)画像表示装置の分野で需要が出てきている。
【0003】
最初に立体画像表示装置について記載する。立体画像表示装置にはいくつかの方式が知られているが、その一つに液晶シャッター機能の付いた専用の立体画像視認用眼鏡を観測者が着用することで、2次元画像を立体画像として観測者に認識させる方式がある。この方式で現在有力視されているのが、画像を表示するディスプレイに視差画像である右眼用画像と左眼用画像とを時系列で交互に切り替えて映し出し、観測者は立体画像視認用眼鏡を着用して、液晶ディスプレイの画像を見るという方式である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような液晶ディスプレイと立体画像視認用眼鏡からなる立体画像表示装置では、首を傾けた際に、輝度低下や色味の変化(以下クロストークともいう)という問題がある。首を傾けた際の輝度低下の抑制及び色味変化の抑制ためには、液晶ディスプレイの視認側及び立体画像視認用眼鏡の目から遠い側の表面にそれぞれλ/4板を用いることが有効である。この場合、λ/4板がディスプレイや立体画像視認用眼鏡の最表面に配置されるため、防眩性などの視認性を改善するために、λ/4板機能を有する防眩性フィルム等の使用が好ましい(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
該λ/4板機能を有する防眩性フィルムはハードコート層に微粒子を含有させて防眩層としたものであるが、立体画像表示装置の表面反射を防止する為に上記防眩性フィルムを表示装置表面に設けると、防眩層自身の内部散乱によりクロストークが発生するという新たな問題があり改善が望まれていた。
【0006】
また、該クロストークは、λ/4板を作成する際に厚み方向のリターデーションRtが低減することにより、より強調されることが分かった。
【0007】
λ/4板として基材フィルム上に液晶性分子を塗布配向させた光学異方性層を設ける技術が知られているが(例えば、特許文献3参照)、この技術によれば面内方向のリターデーションRoと厚み方向のリターデーションRtをコントロール出来て好ましい。しかしながら該光学異方性層上に直接防眩層を塗設すると湿熱耐久密着性が劣化することが分かった。これを回避するには光学異方性層上に、防眩層が塗設された別の光学フィルムを接着剤で貼りつけることが考えられるが、工数やコスト面で不利である。あるいは、光学異方性層の裏面に表面加工を行って、光学異方性層側を接着剤で偏光子に貼りつける方法もあるが、偏光子と液晶の両方に接着することは容易ではなく、やはり工数やコストがかかる。
【0008】
防眩層自身の内部散乱によるクロストークの発生がないλ/4板機能を有する防眩性フィルム、及び厚み方向のリターデーションRtを制御するため光学異方性層を設けたλ/4板上へ直接防眩層を設けても、湿熱耐久密着性劣化がないλ/4板機能を有する防眩性フィルムの出現が望まれている状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−201942号公報
【特許文献2】特開2008−83307号公報
【特許文献3】特許3734211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、防眩層自身の内部散乱によるクロストークの発生がないλ/4板機能を有する防眩性フィルム、また厚み方向のリターデーションRtを制御するため光学異方性層を設けたλ/4板上へ直接防眩層を設けても、湿熱耐久密着性劣化がない防眩性フィルムを提供することにある。
【0011】
更には、上記防眩性フィルムの製造方法を提供することにあり、該防眩性フィルムを用いた偏光板、立体画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討した結果、従来の防眩層のように微粒子を用いて表面に凹凸をつけるのではなく、基材フィルムの長手方向に周期を持たず不規則な形状で不規則な突起形状を微粒子を用いずに形成することによって、内部散乱を低減しクロストークを改良できることを見出した。微粒子を用いると、微粒子と防眩層を形成する樹脂との屈折率が異なるため、両者の屈折率の違いや微粒子の凝集によって内部散乱に起因したヘイズ(内部ヘイズ)が発生し易い。
【0013】
尚、虹縞模様(干渉)の発生を避けるためには上記突起形状は不規則な形状でなくてはならず、エンボス型押しのような突起形状が規則的になる形成方法は好ましくない。
【0014】
また、本発明に係る微粒子を用いない防眩層であると光学異方性層上へ該防眩層を直接塗設することが可能となり、湿熱耐久密着性劣化がない防眩性フィルムを提供することできることも見出した。
【0015】
これは推測ではあるが、本発明の微粒子を用いない防眩層塗布液が、微粒子を含まないことに加え、防眩層成分である低粘度樹脂を高温乾燥させる工程により、塗設時に液晶層の配向を変えることなく樹脂が基材まで到達密着して、基材/光学異方性層の熱による剥れを抑制するものと考えられる。
【0016】
本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0017】
1.下記面内リターデーションRo(550)が100〜160nmの範囲内にあり、基材フィルム長手方向に対する配向角θが40〜50°の範囲内にある基材フィルム上に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、該防眩層が突起形状を有し、該突起形状が基材フィルムの長手方向に周期を持たず不規則な形状で不規則に配置されており、かつ防眩層の算術平均粗さRaが25〜300nmであり、かつ防眩層の内部散乱に起因するヘイズが0〜1.0%であることを特徴とする防眩性フィルム。
【0018】
Ro(550)=(nx−ny)×d (式中、nxはフィルム面内における遅相軸x方向における屈折率、nyはフィルム面内方向であり、x方向に直行するy方向における屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)を表す。屈折率は23℃・55%RHにおいて、測定波長550nmで測定する。)
2.前記防眩層が実質的に微粒子を含有しないことを特徴とする前記1に記載の防眩性フィルム。
【0019】
3.前記基材フィルムは液晶性分子から形成された光学異方性層を有し、該光学異方性層上に直接前記防眩層を設けたことを特徴とする前記1または2に記載の防眩性フィルム。
【0020】
4.偏光子の両側の面にλ/4板を有する偏光板であって、一方の面に前記1〜3の何れか1項に記載の防眩性フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【0021】
5.前記4に記載の偏光板を有することを特徴とする立体画像表示装置。
【0022】
6.バックライトとして有機EL素子を使用したことを特徴とする前記5に記載の立体画像表示装置。
【0023】
7.前記1〜3のいずれか1項に記載の防眩性フィルムを製造する防眩性フィルムの製造方法であって、25℃における粘度が30〜2500mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂を含有する防眩層を、少なくとも塗布工程、乾燥工程及び硬化工程を経由して形成し、かつ前記乾燥工程における減率乾燥区間の温度を90〜140℃の範囲内に維持した条件下で処理することを特徴とする防眩性フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、λ/4板上に設けられた防眩層自身の内部散乱によるクロストークの発生がない防眩性フィルム、また厚み方向のリターデーションRtを制御するため光学異方性層を設けたλ/4板上へ直接防眩層を設けても、湿熱耐久密着性劣化がない防眩性フィルムを提供することができる。
【0025】
更には、上記防眩性フィルムの製造方法を提供することができ、該防眩性フィルムを用いた偏光板、立体画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る防眩層の不規則な突起を示す概略図である。
【図2】突起の説明図である。
【図3】本発明の製造方法に用いるテンターのレールの軌道(レールパターン)を示す概略図である。
【図4】本発明に用いる斜め延伸テンターの模式図である。
【図5】防眩層表面の光学干渉式表面粗さ計による観察図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
<防眩性フィルム>
本発明でいう防眩性フィルムとは、基材フィルムの表面に反射した像や外光の輪郭をぼかす層を設けることで、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイといった画像表示装置等の使用時に、外光や反射像の映り込みが気にならないようにしたフィルムのことである。
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
(表面形状)
本発明の防眩性フィルムは、少なくとも防眩層と下記面内リターデーションRo(550)が100〜160nmの範囲内にあり、基材フィルム長手方向に対する配向角θが40〜50°の範囲内にある基材フィルムから構成され、該防眩層が表面凹凸を形成する突起形状を有し、その突起形状が長手方向に周期を持たず、不規則な形状の突起であり、その配置も不規則な配置であることを特徴とする。
【0031】
本発明の防眩性フィルムの防眩層が有する「長手方向に周期を持たない不規則な形状の突起」とは、表面凹凸が長手方向に周期性を持たず、形も大きさも定まらない様々な形状の突起をさす。従って、例えば5cm程度の直径を持つエンボスロール等を押し当てて長手方向に凹凸構造を形成した場合に形成される、15cm程度の周期性を有するような突起形状は本発明に係る突起形状には含まれない。
【0032】
具体的には、これらに限定はされないが、例えば、図1に示す幅も高さも異なる突起が、不規則な形状の突起として例示される。また、「不規則な配置」とは、前記不規則な傾向の突起が規則的に(例えば、等間隔などで)配置されているのではなく、ランダムな間隔で不規則に配置されており、等方的であっても、異方的であってもよいことをさす。
【0033】
本発明の防眩性フィルムは、防眩層の内部散乱に起因するヘイズ(以後、内部ヘイズとも記載する)が0〜1.0%であることを一つの特徴としている。前記した突起形状を形成する際、前記範囲の内部ヘイズにコントロールし、かつ突起形状の算術平均粗さRaを25〜300nmの範囲に制御することで、本発明の目的効果が良好に発揮される。好ましくは、内部ヘイズは0.60〜1.0%である。
【0034】
内部ヘイズは以下の手順で測定することができる。防眩性フィルムの表面および裏面にシリコーンオイルを数滴滴下し、厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)2枚で、裏表より挟む。表裏をガラスで挟み込んだ防眩性フィルムを、完全に2枚のガラス板と光学的に密着させ、この状態でヘイズ(Ha)をJIS−K7105及びJIS−K7136に準じて測定する。次に、ガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみ数滴滴下して挟みこんでガラスヘイズ(Hb)を測定する。そして、防眩性フィルムをガラスで挟み込んだヘイズ(Ha)から、ガラスヘイズ(Hb)を引きくことで、内部ヘイズ(Hi)は算出できる。また、表面ヘイズ(フィルムの表面散乱に起因するヘイズ)は0.50〜20%であることが好ましい。表面ヘイズは、全ヘイズから内部ヘイズを引くことで求められる。全ヘイズは0.50%〜20%であることが好ましい。
【0035】
本発明の防眩性フィルムは、防眩層の算術平均粗さRa(JIS B0601:1994)が25〜300nmで有ることをもう一つの特徴としている。算術平均粗さRaは、更に好ましくは25〜130nmnmであり、特に好ましくは65〜130nmである。前記範囲の算術平均粗さRaとするため突起形状の高さは、20nm〜4μm、が好ましい。また突起形状の幅は50nm〜300μm、好ましくは、50nm〜100μmである。上記突起形状の高さ、及び幅は断面観察から求めることができる。よりわかりやすくするために、図2に突起の説明図を示した。図2に示されているように、断面観察の画像に中心線aを引き、山の麓を形成する線b、cと中心線aとの2つの交点の距離を、突起サイズの幅tとした。また、山頂と中心線aまでの距離を突起サイズの高さhとして求められる。
【0036】
本発明の防眩性フィルムの防眩層の10点平均粗さRzは、中心線平均粗さRaの10倍以下、平均山谷距離Smは5〜150μmが好ましく、より好ましくは20〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差は0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面は10%以上が好ましい。このように設計することで、防眩層の白呆け抑制効果が得られる。前記した算術平均粗さRa、Sm、Rzは、JIS B0601:1994に準じて光学干渉式表面粗さ計(たとえば、RST/PLUS、WYKO社製、Zygo社製 New View 5030)で測定した値である。
【0037】
また、防眩層の尖度(Rku)は3以下が好ましい。尖度(Rku)とは、凹凸形状の凸状部分の形状を規定するパラメータであり、この尖度(Rku)の値が大きい程、凹凸形状の凸状部分の形状は、針のように尖った形状であることとなる。尖度(Rku)3を超えるものは、白ボケが発生しやすい。防眩層の尖度(Rku)は、更に好ましくは1.5〜2.8である。また、表面の歪度(Rsk)の絶対値は1以下であることが好ましい。前記歪度(Rsk)は、凹凸形状の平均面に対する凸状部分と凹状部分との割合を示すパラメータであり、凹凸形状が、平均面に対して凸状部分が多いとプラスに大きな値となり、平均面に対して凹状部分が多いとマイナスに大きな値となる。歪度(Rsk)の絶対値が1を超えるものは、白ボケが発生しやすい。歪度(Rsk)の絶対値は、好ましくは0.01〜0.5である。なお、尖度(Rku)及び歪度(Rsk)は、上記光学干渉式表面粗さ計を用いて計測できる。
【0038】
なお、上述したような特徴を有する防眩層の上記表面形状は、例えば、防眩層塗布組成物の乾燥工程における減率乾燥区間の処理温度を高温制御し、樹脂の塗膜対流を発生させ、防眩層表面に不均一な状態を作り、この不均一な表面状態で硬化し、塗膜を形成する方法などによって得ることができる。このような方法で塗膜を形成することで、防眩層の膜強度が向上する。また、防眩層塗布組成物の乾燥工程における減率乾燥区間の処理温度を高温条件に制御する方法は、本発明の目的効果に加えて、生産性にも優れる点で好ましい。
【0039】
(防眩層)
本発明に係る防眩層は活性線硬化樹脂を含有すること、すなわち、紫外線や電子線のような活性線(活性エネルギー線ともいう)照射により、架橋反応を経て硬化する樹脂を主たる成分とする層であることが好ましい。
【0040】
活性線硬化樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性線を照射することによって硬化させて活性線硬化樹脂層が形成される。
【0041】
活性線硬化樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する樹脂が機械的膜強度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れる点から好ましい。
【0042】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリレート系樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。中でも紫外線硬化型アクリレート系樹脂が好ましい。
【0043】
紫外線硬化型アクリレート系樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、およびジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体等が好ましく挙げられる。
【0044】
活性エネルギー線硬化型のイソシアヌレート誘導体としては、イソシアヌル酸骨格に1個以上のエチレン性不飽和基が結合した構造を有する化合物であればよく、特に制限はないが、同一分子内に3個以上のエチレン性不飽和基及び1個以上のイソシアヌレート環を有する化合物が好ましい。具体的には、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0045】
これらの市販品としては、アデカオプトマーNシリーズ((株)ADEKA製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);アロニックスM−6100、M−8030、M−8060、アロニックスM−215、アロニックスM−315、アロニックスM−313、アロニックスM−327(東亞合成(株)製);NK−エステルA−TMM−3L、NK−エステルAD−TMP、NK−エステルATM−35E、NKエステルA−DOG、NKエステルA−IBD−2E、A−9300、A−9300−1CL(新中村化学工業(株));ライトアクリレートTMP−A、PE−3A(共栄社化学)などが挙げられる。
【0046】
また、上記活性線硬化樹脂を単独または2種以上混合した活性線硬化型樹脂組成物(活性線硬化樹脂と溶剤以外の添加剤からなる)の25℃における粘度は、好ましくは30mPa・s以上、2500mPa・s以下である。このような低粘度の樹脂組成物を用いることで、前述した突起形状と算術平均粗さRaが得られやすい。また、樹脂組成物の粘度が30mPa・s以上の粘度であれば高官能数のモノマーを用いることが出来て、十分高い硬化性が得られ、2500mPa・s以下の粘度であれば、乾燥工程において樹脂組成物の十分な流動性が得られやすい。
【0047】
なお、上記粘度は、B型粘度計を用いて25℃の条件にて測定した値である。
【0048】
また、単官能アクリレートを用いても良い。単官能アクリレートとしては、イソボロニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、マレイミドアクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどが挙げられる。このような単官能アクリレートは、日本化成工業株式会社、新中村化学工業株式会社、大阪有機化学工業株式会社、東亞合成株式会社等から入手できる。
【0049】
単官能アクリレートを用いる場合には、多官能アクリレートと単官能アクリレートの含有質量比で、多官能アクリレート:単官能アクリレート=80:20〜99:2で含有することが好ましい。
【0050】
また、本発明の防眩層は、前記活性線硬化型樹脂に対し非相溶性である樹脂を実質的に含有していないことが、本発明の効果を得られ易いこと、内部ヘイズの低下によるコントラスト向上のために好ましい。
【0051】
なお、本発明において、「非相溶性」とは、二種類以上の樹脂の溶融混合物の融解温度Tm又はガラス転移点Tgを測定・観察したときに、当該溶融混合物を構成する樹脂それぞれ単独のピークが観察されるものをいう。また、透過型電子顕微鏡観察においてそれぞれの相が実質的に観察されるものをいう。一方、「相溶性」とは、同種又は二種類以上の樹脂の溶融混合物の融解温度Tm又はガラス転移点Tgを測定・観察したときに、当該溶融混合物のピークが1個以下観察されるものをいう。
【0052】
本発明において、活性線硬化型樹に対し非相溶性である樹脂としては、(メタ)アクリル系やアクリル系の単量体を重合又は共重合して得られる樹脂やポリエステル樹脂、更に、後述する基材フィルムにおいて用いられる熱可塑性アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂などが挙げられる。
【0053】
非相溶性樹脂を実質的に含有しないとは、防眩層中の含有量が、フィルム基材からの抽出物成分を除き、0.01質量%以下をいう。
【0054】
また、防眩層には活性線硬化樹脂の硬化促進のため、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤量としては、質量比で、光重合開始剤:活性線硬化樹脂=20:100〜0.01:100で含有することが好ましい。光重合開始剤としては、具体的には、具体的には、アルキルフェノン系、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等および、これらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0055】
このような光重合開始剤は市販品を用いてもよく、例えば、例えば、BASFジャパン(株)製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア651などが好ましい例示として挙げられる。
【0056】
また防眩層は、本発明の目的効果が得られにくいことや、内部ヘイズの上昇によりコントラストの低下を招くことから、無機微粒子や有機微粒子といった微粒子を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、微粒子を実質的に含有しないとは、防眩層中に含まれる微粒子の含有量が、0.01質量%以下を言う。また防眩層には、帯電防止性を付与するために導電剤が含まれていても良い。好ましい導電剤としてはπ共役系導電性ポリマーが挙げられる。また、イオン液体も導電性化合物として好ましく用いられる。
【0057】
防眩層には、塗布性の観点から、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤或いはポリオキシエーテル等の非イオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、及びフッ素−シロキサングラフト化合物を含有させても良い。
【0058】
フッ素−シロキサングラフト化合物とは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/またはオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/またはオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体の化合物をいう。このようなフッ素−シロキサングラフト化合物は、後述の実施例に記載されているような方法で調製することができる。あるいは、市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またこれら成分は、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0059】
防眩層は、上記した防眩層を形成する成分を、溶剤で希釈して防眩層組成物(または防眩層塗布組成物とも言う)として、この防眩層組成物を以下の方法でフィルム基材上に塗布、乾燥、硬化して防眩層を設けることが好ましい。
【0060】
溶剤としては、ケトン類(メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど)、アルコール類(エタノール、メタノール、ブタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール)、炭化水素類(トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン)、グリコールエーテル類(プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルなど)などを好ましく用いることが出来る。また、これら溶剤の中でもエステル類、ケトン類、グリコールエーテル類或いはアルコール類が好ましい。前記活性線硬化樹脂100質量部に対して、20〜200質量部の範囲でこれら好ましい溶剤を用いることで、防眩層塗布組成物を基材フィルムに塗布後、防眩層塗布組成物の溶剤が蒸発しながら、防眩層を形成していく過程で、樹脂の対流が生じやすく、その結果、防眩層で、不規則な表面粗れが発現しやすく、前記算術平均粗さRaに制御しやすいため好ましい。
【0061】
防眩層の塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm、特に好ましくは6〜15μmである。
【0062】
防眩層の塗布方法は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等の公知の方法を用いることが出来る。これら塗布方法を用いて防眩層を形成する防眩層組成物を塗布し、塗布後、乾燥し、活性線を照射(UV硬化処理とも言う)し、更に必要に応じて、UV硬化後に加熱処理することで形成できる。UV硬化後の加熱処理温度としては80℃以上が好ましく、更に好ましくは100℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。このような高温でUV硬化後の加熱処理を行うことで、鉛筆硬度に優れた防眩層を得ることができる。
【0063】
本発明の防眩性フィルムは、前述したように25℃における粘度が30〜2500mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂を含有する防眩層を、少なくとも塗布工程、乾燥工程及び硬化工程を経由して形成し、かつ前記乾燥工程における減率乾燥区間の温度を90〜140℃の範囲内に維持した条件下で処理して本発明に係る突起形状を形成することが好ましい。
【0064】
減率乾燥区間の温度を90℃以上、140℃以下とすることで、防眩層の形成時に塗膜樹脂中で対流が生じるため、その結果、防眩層表面に不規則な表面粗れが発現しやすく、前記算術平均粗さRaの範囲内に制御できるものである。
【0065】
一般に乾燥プロセスは、乾燥が始まると、乾燥速度が一定の状態から徐々に減少する状態へと変化していくことが知られており、乾燥速度が一定の区間を恒率乾燥区間、乾燥速度が減少していく区間を減率乾燥区間と呼ぶ。恒率乾燥区間においては流入する熱量はすべて塗膜表面の溶媒蒸発に費やされており、塗膜表面の溶媒が少なくなると蒸発面が表面から内部に移動して減率乾燥区間に入る。これ以降は塗膜表面の温度が上昇し熱風温度に近づいていくため、活性線硬化型樹脂組成物の温度が上昇し、樹脂粘度が低下して流動性が増すと考えられる。
【0066】
UV硬化処理の光源としては、紫外線を発生する光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0067】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、活性線の照射量は、通常50〜1000mJ/cm、好ましくは50〜300mJ/cmである。
【0068】
活性線を照射する際には、フィルムの搬送方向に張力を付与しながら行うことが好ましく、更に好ましくは幅方向にも張力を付与しながら行うことである。付与する張力は30〜300N/mが好ましい。張力を付与する方法は特に限定されず、バックロール上で搬送方向に張力を付与してもよく、テンターにて幅方向、または2軸方向に張力を付与してもよい。これによって更に平面性の優れたフィルムを得ることができる。
【0069】
また防眩層は、後述する基材フィルムで説明する紫外線吸収剤をさらに含有しても良い。紫外線吸収剤を含有する場合のフィルムの構成としては、防眩層が2層以上で構成され、かつ基材フィルムと接する防眩層に紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【0070】
紫外線吸収剤の含有量としては質量比で、紫外線吸収剤:防眩層構成樹脂=0.01:100〜10:100で含有することが好ましい。2層以上設ける場合、基材フィルムと接する防眩層の膜厚は、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。2層以上の積層は同時重層で形成しても良い。同時重層とは、乾燥工程を経ずに基材上に2層以上の防眩層をwet on wetで塗布して、防眩層を形成することである。第1防眩層の上に乾燥工程を経ずに、第2防眩層をwet on wetで積層するには、押し出しコーターにより逐次重層するか、若しくは複数のスリットを有するスロットダイにて同時重層を行えばよい。
【0071】
なお、本発明での防眩性フィルムは、硬度の指標で有る鉛筆硬度がH以上、より好ましくは3H以上である。3H以上であれば、液晶表示装置の偏光板化工程で、傷が付きにくいばかりではなく、屋外用途で用いられることが多い、大型の液晶表示装置や、デジタルサイネージ用液晶表示装置の表面保護フィルムとして用いた際も優れた機械特性を示す。鉛筆硬度は、作製した防眩性フィルムを温度23℃、相対湿度55%の条件で2時間以上調湿した後、加重500g条件でJIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
【0072】
次いで、基材フィルムについて説明する。
【0073】
<λ/4板機能>
本発明に係る基材フィルムはλ/4板機能を有することが特徴である。
【0074】
λ/4板とはある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有するものをいう。λ/4板は、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、層の面内の位相差値Roが約1/4となるように設計されている。
【0075】
本発明に係るλ/4板は、波長550nmで測定した面内方向のリターデーションRo(550)が100〜160nmの範囲である。
【0076】
本発明に係るλ/4板は、可視光の波長の範囲においてほぼ完全な円偏光を得るため、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4のリターデーションを有する位相差板(樹脂フィルム)であることが好ましい。
【0077】
「可視光の波長の範囲において概ね1/4のリターデーション」とは、波長400から700nmにおいて長波長ほどリターデーションが大きく、波長450nmで測定した下記式(i)で表されるリターデーション値であるRo(450)と波長590nmで測定したリターデーション値であるRo(590)が、1<Ro(590)/Ro(450)≦1.6 を満たすことが好ましい。さらにλ/4板として有効に機能するためには、代表的には、Ro(550)が100〜160nmの範囲内である位相差フィルムであることがより好ましい。
【0078】
式(i):Ro=(nx−ny)×d
式中、nx、nyは、23℃・55%RH、550nmの屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう。)、ny(フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率)であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。
【0079】
Roは自動複屈折率計を用いて測定することができる。自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、550nmでの複屈折率測定によりRoを算出する。
【0080】
λ/4板の遅相軸の角度と偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。即ちλ/4板の基材フィルム長手方向に対する前記遅相軸の角度(即ち配向角θ)が「実質的に45°」であると、偏光フィルムの長手方向に平行な方向に透過軸がある偏光子と長手方向を合わせて積層貼合することで、生産性よく円偏光板が形成できる。
【0081】
従って本発明に係る基材フィルムのフィルム長手方向に対する配向角θは「実質的に45°」であり、「実質的に45°」とは、40〜50°であることを意味する。
【0082】
より詳細には、本発明に係る基材フィルムの前記配向角θは、41〜49°であることが好ましく、42〜48°であることがより好ましく、43〜47°であることが更に好ましく、44〜46°であることが最も好ましい。
【0083】
<基材フィルム>
本発明に係る基材フィルムは熱可塑性樹脂を主に含有するλ/4板であることが好ましく、該基材フィルムは製造が容易であること、防眩層と接着し易いこと、光学的に等方性であることが好ましい。また、λ/4板が熱可塑性樹脂を含有する基材フィルムであると偏光板保護フィルムとして使用することもできる。
【0084】
上記性質を有した基材フィルムであれば何れでもよく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を使用することができる。
【0085】
これらの内、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、およびKC12UR(以上、コニカミノルタオプト(株)製))、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエステルフィルムが好ましく、本発明においては、セルロースエステルフィルムが防眩層で上記した突形状が得られやすいこと、製造性、コスト面から特に好ましい。
【0086】
基材フィルムの屈折率は、1.30〜1.70であることが好ましく、1.40〜1.65であることがより好ましい。屈折率は、アタゴ社製 アッペ屈折率計2Tを用いてJIS K7142の方法で測定する。
【0087】
(セルロースエステルフィルム)
次に基材フィルムとして特に好ましいセルロースエステルフィルムについてより詳細に説明する。
【0088】
セルロースエステルフィルムは上記特徴を有するものであれば特に限定はされないが、セルロースエステル樹脂(以下、セルロースエステルともいう)は、セルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えば、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。
【0089】
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルはセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。
【0090】
セルロースジアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)51.0%〜56.0%が好ましく用いられる。また、市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
【0091】
セルローストリアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
【0092】
平均酢化度が小さいと寸法変化が大きく、また偏光板の偏光度が低下する。平均酢化度が大きいと溶剤に対する溶解度が低下し生産性が下がる。
【0093】
セルローストリアセテートとしては、アセチル基置換度が、2.80〜2.95であって数平均分子量(Mn)が125000以上、155000未満、重量平均分子量(Mw)は、265000以上310000未満、Mw/Mnが1.9〜2.1であるセルローストリアセテートA、アセチル基置換度が2.75〜2.90であって数平均分子量(Mn)が155000以上、180000未満、Mwは290000以上360000未満、Mw/Mnは、1.8〜2.0であるセルローストリアセテートBを含有することが好ましい。
【0094】
さらに、セルローストリアセテートAとセルローストリアセテートBを併用する場合には、質量比でセルローストリアセテートA:セルローストリアセテートB=100:0〜20:80までの範囲であることが好ましい。セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)および(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
【0095】
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。
【0096】
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw)は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できる。測定条件は以下の通りである。
【0097】
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G
(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)
Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0098】
(セルロースエステル樹脂・熱可塑性アクリル樹脂含有フィルム)
また、基材フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含有し、熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50であるフィルムを用いても良い。
【0099】
アクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。アクリル樹脂としては、特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して用いることができる。
【0100】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。また、重量平均分子量(Mw)は80000〜500000であることが好ましく、更に好ましくは、110000〜500000の範囲内である。
【0101】
アクリル樹脂の重量平均分子量は、測定条件含めて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。アクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。また、市販品も使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。また、アクリル樹脂には、(メタ)アクリル系ゴムと芳香族ビニル化合物の共重合体に(メタ)アクリル系樹脂がグラフトされたグラフト共重合体を用いてもよい。前記グラフト共重合体は、(メタ)アクリル系ゴムと芳香族ビニル化合物の共重合体がコア(core)を構成し、その周辺に前記(メタ)アクリル系樹脂がシェル(shell)を構成するコア−シェルタイプのグラフト共重合体であることが好ましい。
【0102】
基材フィルムにおけるアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量は、基材フィルムの55質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上である。基材フィルムは、熱可塑性アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂以外の樹脂や添加剤を含有して構成されていても良い。
【0103】
(アクリル粒子)
基材フィルムは脆性の改善に優れる点から、アクリル粒子を含有しても良い。アクリル粒子とは、前記熱可塑性アクリル樹脂及びセルロースエステル樹脂を相溶状態で含有する基材フィルム中に粒子の状態(非相溶状態ともいう)で存在するアクリル成分を表す。
【0104】
アクリル粒子は特に限定されるものではないが、多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”およびクラレ社製“パラペットSA”などが挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。基材フィルムにアクリル粒子を添加する場合は、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂との混合物の屈折率とアクリル粒子の屈折率が近いことが、透明性が高いフィルムを得る点では好ましい。具体的には、アクリル粒子とアクリル樹脂の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
【0105】
アクリル微粒子は、該フィルムを構成するアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量に対して、含有質量比でアクリル微粒子:アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂総質量=0.5:100〜30:100の範囲で含有させることで、目的効果がより良く発揮される点から好ましく、更に好ましくは、アクリル微粒子:アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量=1.0:100〜15:100の範囲である。
【0106】
〔微粒子〕
本実施形態に係る基材フィルムには、取扱性を向上させる為、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましく用いられる。
【0107】
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
【0108】
(その他の添加剤)
基材フィルムには、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することもできる。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れる。用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0109】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。またポリエステル系可塑剤の好ましくは、芳香族末端エステル系可塑剤である。芳香族末端エステル系可塑剤としては、フタル酸、アジピン酸、少なくとも一種のベンゼンモノカルボン酸および少なくとも一種の炭素数2〜12のアルキレングリコールとを反応させた構造を有するエステル化合物が好ましく、最終的な化合物の構造としてアジピン酸残基およびフタル酸残基を有していればよく、エステル化合物を製造する際には、ジカルボン酸の酸無水物またはエステル化物として反応させてもよい。
【0110】
ベンゼンモノカルボン酸成分としては、例えば、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸等があり、安息香酸であることが最も好ましい。また、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0111】
炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等が挙げられる。これらの中では特に1,2−プロピレングリコールが好ましい。これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用してもよい。
【0112】
芳香族末端エステル系可塑剤は、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは350〜3000の範囲である。また酸価は、1.5mgKOH/g以下、水酸基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.5mgKOH/g以下、水酸基価は15mgKOH/g以下のものである。
【0113】
可塑剤は基材フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。具体的には以下に示す化合物(2−1〜2−6、および2−20〜2−23)などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0114】
【化1】

【0115】
【化2】

【0116】
更に、基材フィルムには、糖エステル化合物が含有されていても良い。糖エステル化合物とは、下記単糖、二糖、三糖またはオリゴ糖などの糖のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した化合物であり、より具体的な例示としては、一般式(1)で表わされる化合物などをあげることができる。
【0117】
【化3】

【0118】
(式中、R〜Rは、置換又は無置換の炭素数2〜22のアルキルカルボニル基、或いは、置換又は無置換の炭素数2〜22のアリールカルボニル基を表し、R〜Rは、同じであっても、異なっていてもよい。)
以下に一般式(1)で示される化合物をより具体的(化合物1−1〜化合物1−23)に示すが、これらに限定はされない。
【0119】
【化4】

【0120】
【化5】

【0121】
【化6】

【0122】
基材フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系またはサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0123】
なお、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0124】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0125】
これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類を好ましく使用できる。
【0126】
さらに、基材フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、基材フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0127】
基材フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
【0128】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。基材フィルムは、「延性破壊が起こらないフィルム」であることが好ましい。ここで、延性破壊とは、ある材料が有する強度よりも、大きな応力が作用することで生じる破断のことであり、最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊と定義される。その破面には、ディンプルと呼ばれる窪みが無数に形成される特徴がある。
【0129】
基材フィルムはより高温の環境下での使用に耐えられることが求められており、基材フィルムは張力軟化点が、105℃〜145℃であれば、十分な耐熱性を示すものと判断でき好ましく、特に110℃〜130℃が好ましい。
【0130】
張力軟化点の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、光学フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
【0131】
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
【0132】
液晶表示装置の偏光板用保護フィルムとして基材フィルムが用いられる場合は、吸湿による寸法変化によりムラや位相差値の変化が発生してしまい、コントラストの低下や色むらといった問題を発生させる。特に屋外で使用される液晶表示装置に用いられる偏光板保護フィルムであれば、上記の問題は顕著となる。このため、寸法変化率(%)は0.5%未満が好ましく、更に、0.3%未満であることが好ましい。基材フィルムは、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
【0133】
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
【0134】
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
【0135】
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
【0136】
また、目視で確認できない場合でも、該フィルム上にハードコート層などを形成したときに、塗剤が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)を言う。
【0137】
また、基材フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
【0138】
破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
【0139】
基材フィルムの厚みは、20μm以上であることが好ましい。より好ましくは30μm以上である。
【0140】
厚みの上限は特に限定される物ではないが、溶液製膜法でフィルム化する場合は、塗布性、発泡、溶媒乾燥などの観点から、上限は250μm程度である。なお、フィルムの厚みは用途により適宜選定することができる。
【0141】
基材フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ロールなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
【0142】
(基材フィルムの製膜)
次に、基材フィルムの製膜方法の例を説明するが、これに限定されるものではない。基材フィルムの製膜方法としては、インフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できる。
【0143】
本発明に係る基材フィルムは溶液流延法でも溶融流延法のどちらで製膜してもよい。
【0144】
セルロースエステル樹脂やアクリル樹脂を溶解に用いた溶媒の残留抑制の点からは溶融流延法で作製する方法が好ましい。溶融流延によって形成される方法は、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度などに優れるフィルムが得られる、溶融押出し法が好ましい。また、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点からは流延法による溶液流延法が好ましい。
【0145】
〔有機溶媒〕
基材フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。
【0146】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0147】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0148】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル粒子の3種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0149】
炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0150】
〔溶液流延法〕
基材フィルムは、溶液流延法によって製造することが出来る。溶液流延法では、樹脂および添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープをベルト状もしくはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
【0151】
ドープ中のセルロースエステル、およびセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂の濃度は、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
【0152】
キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤が沸騰して発泡しない温度以下に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高すぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。
【0153】
好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃が更に好ましい。または、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
【0154】
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
【0155】
特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度および乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
【0156】
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
【0157】
残留溶媒量は下記式で定義される。
【0158】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
【0159】
また、セルロースエステルフィルム或いはセルロースエステル樹脂・アクリル樹脂フィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
【0160】
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールにウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
【0161】
〔延伸工程〕
本発明に係る基材フィルムは、波長550nmで測定した面内方向のリターデーションRo(550)が100〜160nmの範囲であるが、該リターデーションはフィルム延伸によって付与することが好ましい。
【0162】
延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろんこれ等の方法は、組み合わせて用いてもよい。すなわち、製膜方向に対して横方向に延伸しても、縦方向に延伸しても、両方向に延伸してもよく、さらに両方向に延伸する場合は同時延伸であっても、逐次延伸であってもよい。なお、いわゆるテンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
【0163】
本発明においては特に、延伸はフィルム搬送ロールの周速差を利用して搬送方向に行うか、若しくは搬送方向と直交方向(幅手方向又はTD方向ともいう)にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で行うことが好ましく、更に左右把持手段によってウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できるテンターを用いることも好ましい。
【0164】
また、本発明では本発明に係る基材フィルムを、延伸工程でフィルム搬送方向に対して45°方向に延伸することがフィルム長手方向に対する配向角θを40〜50°にする上で好ましい。
【0165】
これは、遅相軸が長手方向と平行な方向に透過軸があるロール状の偏光フィルムと、配向角が実質的に45°である基材フィルムとを長手方向を合わせてロール トゥ ロールで貼合すると、ロール状長尺状のλ/4板を容易に製造できるので、フィルムのカットロスが少なく生産上有利なことによる。
【0166】
以下、45°の方向に延伸する方法を説明する。
【0167】
セルロースエステルフィルムを長手方向に対して実質的に45°の方向に斜め延伸するためには、図3で示されるテンターを用いることが好ましい。図3は、テンターによる斜め延伸を示す模式図である。
【0168】
延伸フィルムの製造は、テンターを用いて行う。このテンターは、フィルムロール(繰出しロール)から繰り出されるフィルムを、オーブンによる加熱環境下で、その進行方向(フィルム幅方向の中点の移動方向)に対して斜め方向に拡幅する装置である。このテンターは、オーブンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。フィルムロールから繰り出され、テンターの入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、オーブン内にフィルムを導き、テンターの出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
【0169】
なお、テンターのレール形状は、製造すべき延伸フィルムに与える配向角、延伸倍率等に応じて、左右で非対称な形状となっており、手動で又は自動で微調整できるようになっている。本発明においては、長尺の熱可塑性樹脂フィルムを延伸し、配向角θが延伸後の巻取り方向に対して、40°〜80°の範囲内で、任意の角度に設定できるようになっている。本発明において、テンターの把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。
【0170】
図3は、斜め延伸するために用いるテンターのレールの軌道(レールパターン)を示している。セルロースエステルフィルムの繰出し方向DR1は、延伸後のフィルムの巻取り方向(MD方向)DR2と異なっており、これにより、比較的大きな配向角をもつ延伸フィルムにおいても広幅で均一な光学特性を得ることが可能となっている。繰出し角度θiは、延伸前のフィルムの繰出し方向DR1と延伸後のフィルムの巻取り方向DR2とのなす角度である。本発明においては、上述のように40°〜80°の配向角を持つフィルムを製造するため、繰出し角度θiは、10°<θi<60°、好ましくは15°<θi<50°で設定される。繰出し角度θiを前記範囲とすることにより、得られるフィルムの幅方向の光学特性のバラツキが良好となる(小さくなる。)。
【0171】
フィルムロール(繰出しロール)から繰出されたセルロースエステルフィルムは、テンター入口(符号aの位置)において、その両端(両側)を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。テンター入口(符号aの位置)で、フィルム進行方向(繰り出し方向DR1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具CL,CRは、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーンを有するオーブンを通過する。ここで、略垂直とは、前述の向かい合う把持具CL,CR同士を結んだ直線とフィルム繰出し方向DR1とがなす角度が、90±1°以内にあることを示す。
【0172】
予熱ゾーンとは、オーブン入口部において、両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、再び一定となるまでの区間をさす。また、冷却ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg℃以下に設定される区間をさす。
【0173】
各ゾーンの温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg+5〜Tg+20℃、延伸ゾーンの温度はTg〜Tg+20℃、冷却ゾーンの温度はTg−30〜Tg℃に設定することが好ましい。
【0174】
延伸工程における延伸倍率R(W/Wo)は、好ましくは1.3〜3.0倍、より好ましくは1.5〜2.8倍である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向厚さムラが小さくなるので好ましい。テンター延伸機の延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差を付けると幅方向厚さムラをさらに良好なレベルにすることが可能になる。なお、Woは延伸前のフィルムの幅、Wは延伸後のフィルムの幅を表す。
【0175】
上記斜め方向に延伸する工程は、製膜工程内(オンライン)で行ってもよく、また一度フィルムを巻き取った後に繰り出して上記テンターにて延伸を行ってもよい(オフライン)。
【0176】
フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
【0177】
フィルムの乾燥工程における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点−5℃以下、100℃以上で10分以上60分以下の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は100〜200℃、更に好ましくは110〜160℃で乾燥が行われる。
【0178】
所定の熱処理の後、巻き取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。更に、幅手両端部にはナーリング加工をすることが好ましい。
【0179】
ナーリング加工は、加熱されたエンボスロールを押し当てることにより形成することができる。エンボスロールには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
【0180】
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの幅手両端部のナーリングの高さは4〜20μm、幅5〜20mmが好ましい。
【0181】
また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜工程において乾燥終了後、巻き取りの前に設けることが好ましい。
【0182】
〔溶融製膜法〕
基材フィルムは、溶融製膜法によって製膜しても良い。溶融製膜法は、樹脂および可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を示す温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延することをいう。
【0183】
加熱溶融する成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの成形法の中では、機械的強度および表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出しに用いる複数の原材料は、通常予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0184】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥セルロースエステルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷または空冷し、カッティングすることでできる。
【0185】
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。
【0186】
粒子や酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
【0187】
押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0188】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出し機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0189】
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度を200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップされ、冷却ロール上で固化させる。
【0190】
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。
【0191】
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し接触箇所を焼結し一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
【0192】
可塑剤や粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
【0193】
冷却ロールと弾性タッチロールでフィルムをニップする際のタッチロール側のフィルム温度はフィルムのTg以上Tg+110℃以下にすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有するロールは、公知のロールが使用できる。
【0194】
弾性タッチロールは挟圧回転体ともいう。弾性タッチロールとしては、市販されているものを用いることもできる。
【0195】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0196】
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ロールに接する工程を通過後、前記延伸操作により延伸することが好ましい。
【0197】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0198】
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
【0199】
(基材フィルムの物性)
本実施形態における基材フィルムの膜厚は、特に限定はされないが10〜250μmが用いられる。特に膜厚は10〜100μmであることが特に好ましい。更に好ましくは30〜60μmである。
【0200】
本発明に係る基材フィルムは、幅1〜4mのものが用いられる。特に幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.6〜3mである。4mを超えると搬送が困難となる。
【0201】
また、基材フィルムの算術平均粗さRaは、好ましくは2.0nm〜4.0nm、より好ましくは2.5nm〜3.5nmである。
【0202】
<機能性層>
本発明に係る防眩性フィルムは、基材フィルム上に光学異方性層を設けることが好ましく、また基材フィルムの防眩層とは反対側の面にバックコート層を設けることが好ましく、更に防眩層の上に反射防止層等の機能性層を設けることが好ましい。
【0203】
(光学異方性層)
本発明ではλ/4板機能を光学異方性層によっても付与することができる。基材フィルムの上に配向膜を形成し、ラビング処理を施した後さらに光学異方性層を付与することで形成される。
【0204】
本発明の防眩性フィルムは、防眩層に微粒子を用いないことにより、光学異方性層上へ前記防眩層を直接塗設することが可能となり、湿熱耐久密着性劣化がない防眩性フィルムを提供することができる。
【0205】
[配向膜]
前記表面処理した基材フィルム上に配向膜を設ける。
【0206】
この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。
【0207】
しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。
【0208】
即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して偏光板を作製することも可能である。
【0209】
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。
【0210】
更に、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
【0211】
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
【0212】
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
【0213】
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
【0214】
前記ポリマーとしては、例えば特開平8−338913号公報中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリアシレート、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。
【0215】
水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0216】
重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
【0217】
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。
【0218】
具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。
【0219】
例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。
【0220】
変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。
【0221】
これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
【0222】
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。
【0223】
その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
【0224】
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、前記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
【0225】
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。
【0226】
二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報中の段落番号[0023]〜[024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0227】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。
【0228】
配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0229】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である前記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥し(架橋させ)、ラビング処理することにより形成することができる。
【0230】
架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行って良い。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。
【0231】
その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0232】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。
【0233】
また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行うことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行うことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
【0234】
配向膜は、透明支持体上又は前記下塗層上に設けられる。配向膜は、前記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
【0235】
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリアシレート繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。
【0236】
一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0237】
工業的に実施する場合、搬送している偏光層のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90°が好ましい。
【0238】
ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
【0239】
フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましい。45°が特に好ましい。
【0240】
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。
【0241】
その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
【0242】
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0243】
(棒状液晶性分子)
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルアシレート類、安息香酸アシレート類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルアシレート類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0244】
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
【0245】
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
【0246】
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
【0247】
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。
【0248】
重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報中の段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
【0249】
(円盤状液晶性分子)
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0250】
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。
【0251】
分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
【0252】
円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。
【0253】
円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
【0254】
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。
【0255】
円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことが出来る。
【0256】
例えば、特開2000−155216号公報中の段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
【0257】
ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。
【0258】
さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。
【0259】
角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
【0260】
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。
【0261】
また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
【0262】
円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。
【0263】
長軸配向方向の変化の程度も、前記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
【0264】
(光学異方性層の他の成分)
前記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することが出来る。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
【0265】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、前記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。
【0266】
例えば、特開2002−296423号公報中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。前記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0267】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。
【0268】
具体的には、例えば特開2001−330725号公報中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0269】
円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
【0270】
ポリマーの例としては、セルロースアシレートを挙げることができる。セルロースアシレートの好ましい例としては、特開2000−155216号公報中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。
【0271】
液晶性分子の配向を阻害しないように、前記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
【0272】
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0273】
(光学異方性層の形成)
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
【0274】
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。
【0275】
有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、アシレート(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0276】
塗布液の塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0277】
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
【0278】
(液晶性分子の配向状態の固定)
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。
【0279】
固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
【0280】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
【0281】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0282】
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
【0283】
照射エネルギーは、20mJ/cm〜50J/cmの範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cmの範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cmの範囲にあることがさらに好ましい。
【0284】
また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよく、保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
【0285】
(バックコート層)
本発明の防眩性フィルムは、基材フィルムの防眩層を設けた側と反対側の面に、カールや防眩性フィルムを巻き状で保管した際のくっつき防止の為に、バックコート層を設けてもよい。
【0286】
バックコート層は、上記目的のため、微粒子を含有することが好ましく、微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。また、前記微粒子を分散する目的や後述するバインダーを溶解して塗布組成物とするために、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、機能性層で説明した溶剤が好ましい。バックコート層に含まれる粒子は、バインダーに対して0.1〜50質量%が好ましい。バックコート層を設けた場合のヘイズの増加は1.5%以下であることが好ましく、0.5%以下である。またバインダーとして、ジアセチルセルロース等のセルロースエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0287】
(反射防止層)
本発明の防眩性フィルムは、防眩層の上層に反射防止層を塗設して、外光反射防止機能を有する反射防止フィルムとして用いることができる。
【0288】
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましい。反射防止層は、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層、もしくは支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と低屈折率層を組み合わせて構成されていることが好ましい。特に好ましくは、3層以上の屈折率層から構成される反射防止層であり、支持体側から屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましく用いられる。または、2層以上の高屈折率層と2層以上の低屈折率層とを交互に積層した4層以上の層構成の反射防止層も好ましく用いられる。反射防止フィルムの層構成としては下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0289】
基材フィルム/防眩層/低屈折率層
基材フィルム/防眩層/中屈折率層/低屈折率層
基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
基材フィルム/防眩層/高屈折率層(導電性層)/低屈折率層
(低屈折率層)
反射防止フィルムには必須である低屈折率層は、シリカ系微粒子を含有することが好ましく、その屈折率は、支持体である基材フィルムの屈折率より低く、23℃、波長550nm測定で、1.30〜1.45の範囲であることが好ましい。
【0290】
低屈折率層の膜厚は、5nm〜0.5μmであることが好ましく、10nm〜0.3μmであることが更に好ましく、30nm〜0.2μmであることが最も好ましい。
【0291】
低屈折率層形成用組成物については、シリカ系微粒子として、特に外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子を少なくとも1種類以上含むことが好ましい。特に該外殻層を有し内部が多孔質または空洞である粒子が、中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
【0292】
なお、低屈折率層形成用組成物には、下記一般式(OSi−1)で表される有機珪素化合物もしくはその加水分解物、或いは、その重縮合物を併せて含有させても良い。
【0293】
一般式(OSi−1):Si(OR)
前記一般式で表される有機珪素化合物は、式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等が好ましく用いられる。
【0294】
他に溶剤、必要に応じて、シランカップリング剤、硬化剤、界面活性剤等を添加してもよい。
【0295】
(高屈折率層)
高屈折率層の屈折率は、23℃、波長550nm測定で、屈折率を1.4〜2.2の範囲に調整することが好ましい。また、高屈折率層の厚さは5nm〜1μmが好ましく、10nm〜0.2μmであることが更に好ましく、30nm〜0.1μmであることが最も好ましい。屈折率を調整する手段は、金属酸化物微粒子等を添加することで達成できる。金属酸化また、用いる金属酸化物微粒子の屈折率は1.80〜2.60であるものが好ましく、1.85〜2.50であるものが更に好ましい。
【0296】
金属酸化物微粒子の種類は特に限定されるものではなく、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を用いることができ、これらの金属酸化物微粒子はAl、In、Sn、Sb、Nb、ハロゲン元素、Taなどの微量の原子をドープしてあっても良い。また、これらの混合物でもよい。本発明においては、中でも酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム−スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、及びアンチモン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物微粒子を主成分として用いることが特に好ましい。特にアンチモン酸亜鉛粒子を含有することが好ましい。
【0297】
これら金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は10nm〜200nmの範囲であり、10〜150nmであることが特に好ましい。金属酸化物微粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)等による電子顕微鏡写真から計測することができる。動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等によって計測してもよい。粒径が小さ過ぎると凝集しやすくなり、分散性が劣化する。粒径が大き過ぎるとヘイズが著しく上昇し好ましくない。金属酸化物微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、針状或いは不定形状であることが好ましい。
【0298】
金属酸化物微粒子は有機化合物により表面処理してもよい。金属酸化物微粒子の表面を有機化合物で表面修飾することによって、有機溶媒中での分散安定性が向上し、分散粒径の制御が容易になるとともに、経時での凝集、沈降を抑えることもできる。このため、好ましい有機化合物での表面修飾量は金属酸化物粒子に対して0.1質量%〜5質量%、より好ましくは0.5質量%〜3質量%である。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤及びチタネートカップリング剤が含まれる。この中でもシランカップリング剤が好ましい。二種以上の表面処理を組み合わせてもよい。また高屈折率層は、π共役系導電性ポリマーを含有しても良い。π共役系導電性ポリマーとは、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用することができる。例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアニリン類、ポリフェニレン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体が挙げられる。重合の容易さ、安定性点からは、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類が好ましい。
【0299】
π共役系導電性ポリマーは、無置換のままでも十分な導電性やバインダー樹脂への溶解性が得られるが、導電性や溶解性をより高めるために、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を導入してもよい。
【0300】
また、イオン性化合物を含有しても良い。イオン性化合物としては、イミダゾリウム系、ピリジウム系、脂環式アミン系、脂肪族アミン系、脂肪族ホスホニウム系の陽イオンとBF−、PF−等の無機イオン系、CFSO−、(CFSON−、CFCO−等のフッ素系の陰イオンとからなる化合物等が挙げられる。該ポリマーとバインダーの比率はポリマー100質量部に対して、バインダーが10〜400質量部が好ましく、特に好ましくは、ポリマー100質量部に対して、バインダーが100〜200質量部である。
【0301】
<偏光板>
本発明の防眩性フィルムを用いた本発明の偏光板について述べる。偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の防眩性フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した防眩性フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
【0302】
もう一方の面に該防眩性フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。本発明の防眩性フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは、前述した基材フィルムであるセルローストリアセテートフィルムや熱可塑性アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の含有質量比が、熱可塑性アクリル樹脂:セルロースエステル樹脂=95:5〜50:50である保護フィルムを用いることが好ましい。構成の詳細は前述の通りであり、具体的には、リターデーションRoが590nmで0〜5nm、Rtが−20〜+20nmの無配向フィルムが一例として挙げられる。
【0303】
また、市販の偏光板保護フィルムを用いることも好ましく、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC4UEW、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4FR−1、KC4FR−2、KC8UE、KC4UE(コニカミノルタオプト(株)製)等が挙げられる。
【0304】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがあるがこれのみに限定されるものではない。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光膜の膜厚は5〜30μm、好ましくは8〜15μmの偏光膜が好ましく用いられる。
【0305】
該偏光膜の面上に、本発明の防眩性フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0306】
(粘着層)
液晶セルの基板と貼り合わせるために保護フィルムの片面に用いられる粘着剤層は、光学的に透明であることはもとより、適度な粘弾性や粘着特性を示すものが好ましい。
【0307】
具体的な粘着層としては、例えばアクリル系共重合体やエポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーン系ポリマー、ポリエーテル、ブチラール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、合成ゴムなどの接着剤もしくは粘着剤等のポリマーを用いて、乾燥法、化学硬化法、熱硬化法、熱熔融法、光硬化法等により膜形成させ、硬化せしめることができる。なかでも、アクリル系共重合体は、最も粘着物性を制御しやすく、かつ透明性や耐候性、耐久性などに優れていて好ましく用いることができる。
【0308】
<液晶表示装置>
本発明の防眩性フィルムを用いて作製した本発明の偏光板を表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。
【0309】
本発明の防眩性フィルムは偏光板に組み込まれ、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置またはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型、OCB型等の各種駆動方式の液晶表示装置で好ましく用いられる。
【0310】
(立体画像表示装置)
また、本発明の防眩性フィルムは、立体画像表示装置において、種々の態様において用いることができる。例えば、液晶表示装置と液晶シャッタメガネとからなる立体画像表示装置であって、当該液晶シャッタメガネが、(1)λ/4板(本発明の防眩性フィルム)、液晶セル、及び偏光子がこの順に設けられている、又は(2)λ/4板(本発明の防眩性フィルム)、偏光子、液晶セル、及び偏光子がこの順に設けられている液晶シャッタメガネであることを特徴とする態様の立体画像表示装置において用いることができる。
【0311】
なお、いずれの態様の場合も、液晶表示装置の前側偏光板は、λ/4板(本発明の防眩性フィルム)、偏光子、及び光学フィルムセル、及び偏光子がこの順に設けられている構成になっている。
【0312】
本発明においては、上記の態様・構成により、立体(3D)画像観賞時に首を傾けた際のクロストーク若しくは輝度低下及び色味変化を低減でき、使用環境に対して優れた視認性を保つことが可能で、使用環境に対してより耐久性が高い立体画像表示装置とすることができる。
【0313】
(有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたバックライト)
本発明は、液晶表示装置のバックライトとして有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)を使用することが、薄型の立体画像表示装置を作成する観点から好ましい。
【0314】
本発明に係る有機EL素子を使用したバックライトについては、特開2006−269515号公報に詳細に記載されている仕様を好ましく用いることができる。
【実施例】
【0315】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0316】
実施例1
<基材フィルム1の作製>
(エステル化合物1の調製)
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、エステル化合物1を得た。酸価0.10mgKOH/g、数平均分子量450であった。
【0317】
(二酸化珪素分散液の調製)
・アエロジルR812(日本アエロジル(株)製、一次粒子の平均径7nm)
10質量部
・エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化珪素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化珪素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
【0318】
〈基材フィルム1の作製〉
(ドープ組成物)
・セルローストリアセテート 90質量部
(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート、アセチル基置換度2.88、Mn=140000)
・エステル化合物1 10質量部
・チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 2.5質量部
・二酸化珪素分散希釈液 4質量部
・メチレンクロライド 432質量部
・エタノール 38質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープ液を調製した。
【0319】
次に、ベルト流延装置を用い、ステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。セルロースエステルフィルムのウェブを35℃で溶剤を蒸発させ、1.65m幅にスリットし、テンターでTD方向(フィルムの幅手方向)に1.3倍、MD方向の延伸倍率は1.01倍で延伸しながら、160℃の乾燥温度で乾燥させた。乾燥を始めたときの残留溶剤量は20%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.49m幅にスリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、基材フィルム1を得た。基材フィルムの残留溶剤量は0.2%であり、膜厚は40μm、巻数は3900mであった。
【0320】
基材フィルム1の配向角θは、王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した結果、フィルム長手方向に対して90°±1°の範囲にあった。
【0321】
<基材フィルム2の作製>
<原反(ロール状の長尺フィルム)の作製>
(エステル化合物2の調製)
窒素雰囲気下、テレフタル酸ジメチル4.85g、1,2−プロピレングリコール4.4g、p−トルイル酸6.8g、テトライソプロピルチタネート10mgを混合し、140℃で2時間攪拌を行った後、更に210℃で16時間攪拌を行った。次に、170℃まで降温し、未反応物の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、比較ポリエステルBを得た。
【0322】
酸価 :0.1
数平均分子量:490
分散度 :1.4
分子量300〜1800の成分含有率:90%
ヒドロキシル(水酸基)価:0.1
水酸基含有量:0.04%
エステル化合物3はジカルボン酸に対してモノカルボン酸が2倍モル使用されているので末端がトルイル酸エステルになっている。
【0323】
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0324】
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
【0325】
メチレンクロライド 50質量部
微粒子分散液1 50質量部
下記組成の主ドープ液を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステル、糖エステル化合物、ポリエステルA、TINUVIN928、微粒子添加液1を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
【0326】
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基0.9、総置換度2.4;重量平均分子量19万) 100質量部
エステル化合物1 5.0質量部
エステル化合物2 5.0質量部
TINUVIN928(BASFジャパン社製) 1.5質量部
微粒子添加液1 3.5質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープ液を温度33℃、2000mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
【0327】
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力110N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
【0328】
剥離したセルロースエステルフィルムを、160℃の熱をかけながらテンターを用いて幅方向に1%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
【0329】
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。
【0330】
以上のようにして、乾燥膜厚102μmのロール状の基材フィルム2を得た。
【0331】
ロール状の基材フィルム2を、スライド可能な繰出装置にセットし、図4の装置の斜め延伸機に供給した。そのとき、斜め延伸装置の入口部に最も近いガイドロールの主軸と斜め延伸装置の把持具(クリップつかみ部)との距離を80cmとした。クリップは搬送方向の長さが2インチのものを、上記ガイドロールは直径10cmのものを使用した。テンターで延伸温度185℃、延伸倍率1.8倍で巾手方向に延伸を行い、その後、レールが45°屈曲する際に延伸と垂直方向に0.71倍に収縮した。延伸後のフィルムは、斜め延伸テンター出口側第一ロールで測定した張力の変動を引取モーター回転数に反映させるフィードバック制御を行って、引取張力の変動が3%未満となるように制御した。その後、フィルム両端をトリミングして、エアーフローロールからなる搬送方向変更装置で搬送方向を変更し、スライド可能な巻取装置で巻き取り、2000mm幅のロール状の長尺状基材フィルム2を得た。
【0332】
基材フィルム1の配向角θは、王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した結果、フィルム長手方向に対して45°±1°の範囲にあった。
【0333】
<基材フィルム3〜10の作製>
基材フィルム2の原反膜厚、延伸温度と倍率を表1のように変化させて、基材フィルム3〜10を作製した。
【0334】
<基材フィルム11の作製>
基材フィルム2の〈主ドープ液の組成〉からTINUVIN928(BASFジャパン社製)を除いた以外は、フィルム2と同様にしてフィルム11を作製した。
【0335】
<基材フィルム12の作製>
トリアセチルセルロースフィルム(膜厚60μm、Ro=0nm、Rt=55nm)の上にステロイド変性ポリアミック酸の希釈液を、バーコーターを用いて1μmの厚さに塗布した。塗布層を、60℃の温風で2分間乾燥し、その表面をトリアセチルセルロースフィルムの搬送方向との角度が45°の方向にラビング処理して、下記の変性ポリイミドからなる垂直配向膜を形成した。
【0336】
垂直配向膜の上に、下記の組成の塗布液を塗布し、ディスコティック液晶性分子をホモジニアスに垂直配向させた。形成された層の厚さは、1.3μmであった。次に、500w/cmの照度の水銀ランプで紫外線を1秒間照射してディスコティック液晶性分子を重合させた。このようにして光学異方性層を形成した。
【0337】
(光学異方性層塗布液)
ディスコティック液晶性化合物(1) 41.01質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製) 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製) 0.90質量部
セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)
0.23質量部
光重合開始剤(イルガキュア907、BASFジャパン(株)製) 1.35質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.45質量部
メチルエチルケトン 102質量部
【0338】
【化7】

【0339】
得られた基材フィルムの屈折率異方性、波長550nmにおける面内のリターデーションRo550、波長550nmにおける厚み方向のリタデーショRt550、配向角θは、王子計測器社製KOBRA−21ADHを用いて測定した。表1に示す。
【0340】
Ro(550)=(nx−ny)×d
Rt(550)={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxはフィルム面内における遅相軸x方向における屈折率、nyはフィルム面内方向であり、x方向に直行するy方向における屈折率、nzはフィルム厚み方向の屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)を表す。屈折率は23℃・55%RHにおいて、測定波長550nmで測定する。)
【0341】
【表1】

【0342】
<防眩性フィルム1−1の作製>
上記作製した基材フィルム2上に孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した下記防眩層組成物1を、押出しコーターを用いて塗布し、恒率乾燥区間温度95℃、減率乾燥区間温度95℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cmで、照射量を0.25J/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚6μmの防眩層を形成した。防眩層を形成後、巻き取り、防眩性フィルム1−1を作製した。
【0343】
[防眩層組成物1]
〈フッ素−シロキサングラフトポリマーの調製〉
フッ素−シロキサングラフトポリマーの調製に用いた素材の市販品名を示す。
・ラジカル重合性フッ素樹脂(A):セフラルコートCF−803(水酸基価60、平均分子量15,000;セントラル硝子(株)製)
・片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):サイラプレーンFM−0721
(数平均分子量5,000;チッソ(株)製)
・ラジカル重合開始剤:パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)
・硬化剤:スミジュールN3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住化バイエルウレタン(株)製)
(ラジカル重合性フッ素樹脂の合成)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(1554質量部)、キシレン(233質量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3質量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50質量%のラジカル重合性フッ素樹脂を得た。
【0344】
(フッ素−シロキサングラフトポリマーの調製)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(26.1質量部)、キシレン(19.5質量部)、酢酸n−ブチル(16.3質量部)、メチルメタクリレート(2.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8質量部)、ラウリルメタクリレート(1.8質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、FM−0721(5.2質量部)、及びパーブチルO(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171,000である35質量%フッ素−シロキサングラフトポリマーの溶液を得た。重量平均分子量はGPCにより求めた。また、フッ素−シロキサングラフトポリマーの質量%はHPLC(液体クロマトグラフィー)により求めた。
・ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート 90質量部
(NKエステルA−TMM−3L、新中村化学工業(株)製)
・4−ヒドロキシブチルアクリレート 10質量部
(日本化成工業(株)製)
・イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
・フッ素−シロキサングラフトポリマー(35質量%) 2質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
・酢酸メチル 55質量部
・メチルエチルケトン 55質量部
上記防眩層組成物1の活性線硬化型樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、440mPa・sであった。
【0345】
また、防眩性フィルム1−1の防眩層表面を光学干渉式表面粗さ計(Zygo社製 New View 5030)で観察した結果、図5のように不規則な突起形状が不規則に長手方向及び幅方向に配列していることが分かった。
【0346】
<防眩性フィルム1−2〜8の作製>
防眩性フィルム1−1の作製において、減率乾燥区間の温度を表2に記載したように条件変更した以外は、防眩性フィルム1−1と同様にして、防眩性フィルム1−2〜8を作製した。
【0347】
<防眩性フィルム1−9の作製>
防眩性フィルム1−1の作製において、防眩層組成物1を下記防眩層組成物2とし、かつ乾燥工程における減率乾燥区間の温度を100℃に変更した以外は、同様にして防眩性フィルム1−9を作製した。
【0348】
[防眩層組成物2]
・ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート 70質量部
(NKエステルAD−TMP、新中村化学工業(株)製)
・エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート 30質量部
(NKエステルATM−35E、新中村化学工業(株)製)
・イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5質量部
・フッ素−シロキサングラフトポリマー(35質量%) 2質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 10質量部
・酢酸メチル 55質量部
・メチルエチルケトン 55質量部
上記防眩層組成物2の活性線硬化型樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、800mPa・sであった。
【0349】
<防眩性フィルム1−10〜15の作製>
防眩性フィルム1−7の作製において、減率乾燥区間の温度を表2に記載したように条件変更した以外は、防眩性フィルム1−7と同様にして、防眩性フィルム1−10〜15を作製した。
【0350】
<防眩性フィルム1−16の作製>
防眩性フィルム1−7の作製において、防眩層組成物2を特開2006−106290号公報の実施例1を参考にして調製した防眩層組成物3に変更し、更に乾燥温度を特開2006−106290号公報の実施例1と同じ70℃とした以外は同様にして防眩層を作製した。次に、防眩層上に押出しコーターを用いて、熱硬化性含フッ素化合物塗工液(日産化学(株)製、LR−202B、固形分1質量%)を、乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗布し、90℃で5分間乾燥させることで熱硬化させ、防眩性フィルム1−16を作製した。
【0351】
[防眩層組成物3]
・サイクロマーP(ACA)320(不飽和基含有アクリル樹脂混合物、ダイセル化学工業(株)製) 5.04質量部
・セルロースアセテートプロピオネート(CAP−482−20、イーストマンケミカル社製) 0.9質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセル・サイテック(株)製) 6.4質量部
・イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 0.2質量部
・メチルエチルケトン 20質量部
・シクロヘキサノン 5質量部
上記防眩層組成物3の活性線硬化型樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、10600mPa・sであった。尚、セルロースアセテートプロピオネートは本発明でいう非相溶性樹脂である。
【0352】
<防眩性フィルム1−17の作製>
防眩性フィルム1−7の作製において、防眩層組成物2を特開2008−225195号公報の実施例1を参考にして調整した防眩層組成物4に変更し、更に乾燥温度を特開2008−225195号公報の実施例1と同じ70℃とした以外は同様にして、防眩性フィルム1−17を作製した。
【0353】
[防眩層組成物4]
・サイクロマーP(ACA)320(不飽和基含有アクリル樹脂混合物、ダイセル化学工業(株)製) 5.65質量部
・ポリメタクリル酸メチル(重量平均分子量480000;三菱レイヨン(株)製、BR88) 0.9質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセル・サイテック(株)製) 6.3質量部
・イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 0.5質量部
・メチルエチルケトン(MEK) 0.1質量部
・1−ブタノール 5.4質量部
・1−メトキシ−2−プロパノール 1.89質量部
上記防眩層組成物4の活性線硬化型樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、10500mPa・sであった。
【0354】
<防眩性フィルム1−18の作製>
防眩性フィルム7の作製において、防眩層組成物2を特開2007−58204号公報の実施例3を参考にして調整した防眩層組成物5に変更し、更に乾燥温度を特開2007−58204号公報の実施例3と同じ80℃に変更した以外は同様にして、防眩性フィルム1−18を作製した。
【0355】
[防眩層組成物5]
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、ダイセル・サイテック(株)製) 92質量部
・メタアクリレート共重合ポリマー(サフトマーST3600,三菱化学株式会社製)
15質量部
・イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 4質量部
・エタノール 45質量部
・トルエン 15質量部
上記防眩層組成物5の活性線硬化型樹脂だけをディスパーにて撹拌混合して、25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定したところ、樹脂粘度は、6000mPa・sであった。
【0356】
<防眩性フィルム1−19の作製>
特開2006−53371号公報の実施例1を参考にして凹凸付きロールを作製した。次に、特開2006−53371号公報の実施例1を参考にして、基材フィルム1上に防眩層組成物1を塗布後、80℃で乾燥し、更に防眩層表面にロールの凹凸を押し当て、防眩層とロールを密着させた。この密着した状態で、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cmで、照射量を0.25J/cmとして塗布層を硬化させ、ドライ膜厚6μmの防眩層を形成した。防眩層を形成後、巻き取り、防眩性フィルム1−19を作製した。
【0357】
防眩性フィルム1−19の防眩層表面を光学干渉式表面粗さ計(Zygo社製 New View 5030)で観察した結果、防眩性フィルム1−19のみ規則的な突起形状が規則的に長手方向及び幅方向に配列していることが分かった。
【0358】
<防眩性フィルム1−20〜27の作製>
防眩性フィルム1−1〜8の作製において、基材フィルムを12に変更した以外は、同様にして、防眩性フィルム1−20〜27を作製した。
【0359】
<防眩性フィルム1−28の作製>
防眩性フィルム1−4の作製において、基材フィルムを1に変更した以外は、同様にして、防眩性フィルム1−28を作製した。
【0360】
<防眩性フィルムの評価>
得られた防眩性フィルム1〜28について、以下の項目を評価した。結果を表2に示す。
【0361】
a.内部ヘイズ測定
以下の測定により、上記作製した防眩性フィルム1〜28の内部ヘイズ(Hi)を測定した。得られた結果を表2に示した。
【0362】
<内部ヘイズ測定方法>
防眩性フィルムの表裏面にシリコーンオイルを数滴滴下した。次にシリコーンオイルを滴下した防眩性フィルムを厚さ1mmのガラス板(ミクロスライドガラス品番S 9111、MATSUNAMI製)2枚で裏表より挟み、完全に2枚のガラス板と得られた防眩性フィルムを光学的に密着させた。この光学的に密着させ、表面ヘイズを除去したサンプルのヘイズ(Ha)を測定した。次いで、ガラス板2枚の間にシリコーンオイルのみを挟みこんでガラスヘイズ(Hb)測定した。Haから、Hbを引き、防眩性フィルムの内部ヘイズ(Hi)を算出した。
【0363】
b.算術平均粗さRa測定
上記作製した防眩性フィルム1〜28の防眩層の算術平均粗さRaを光学干渉式表面粗さ計(RST/PLUS、WYKO社製)を用いて10回測定し、その測定結果の平均から各防眩性フィルムの算術平均粗さRaを求め、表2に示した。
【0364】
<湿熱耐久密着>
上記作製した防眩性フィルム1−1〜28を80℃90%RHの環境下に100時間保管後、JIS D 0202−1988の規格に従い、実施した。碁盤目テープ剥離試験により、セロハンテープ(ニチバン株式会社製)を用いて、指の腹でフィルムに密着させた後、剥離した。判定は100マスのうち、剥離しないマス目の数で表わす。得られた結果を表2に示した。
【0365】
<防眩性>
耐久性試験後の防眩性フィルムについて目視による官能評価で防眩性を評価し、結果を表2に示した。判定基準は以下の通り。
【0366】
○ :蛍光灯の輪郭が僅かに認められるがあまり気にならない
△ :蛍光灯の輪郭が認められるが許容できる
× :蛍光灯の輪郭がはっきり分かり、写り込みが気になる
以下の方法で偏光板を作成し、立体画像に於けるクロストークと色相を評価した。
【0367】
<偏光板1−1〜28の作製>
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。
【0368】
これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
【0369】
次いで、下記工程1〜5に従って表2のλ/4板と、裏面側フィルムを貼り合わせて偏光板1−1〜1−28を作製した。
【0370】
工程1:表2のλ/4板と、裏面側フィルムを60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗、乾燥して、鹸化したフィルムを得た。
【0371】
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0372】
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したλ/4板の上にのせて配置した。
【0373】
工程4:工程3で積層したλ/4板と偏光子と裏面側フィルムを圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0374】
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とλ/4板と裏面側フィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板1−1〜28を作製した。
【0375】
<液晶表示装置の作製>
視野角測定を行う液晶パネルを以下のようにして作製し、液晶表示装置としての特性を評価した。
【0376】
SONY製60型ディスプレイBRAVIA LX900の予め貼合されていた前面板を剥がして、パネル前面の偏光板と前面板の間にあった充填剤を除去し、予め貼合されていたパネル前側の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板1−1〜1−28をそれぞれ液晶セルのガラス面の前面に貼合した。その際、バックライトとして特開2006−269515号公報に記載の有機EL素子を用いたバックライトに変更した。
【0377】
また、上記偏光板の貼合の向きは、本発明の防眩性フィルムの面が、視認側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように行い、それぞれの偏光板に対応する液晶表示装置を各々作製した。
【0378】
<3Dメガネ>
SONY性3DメガネTDG−BR100のパネル側に実施例1で作製した防眩性フィルム1−1を貼合した。
【0379】
作製した液晶表示装置について3D映像視聴時のクロストーク、黒表示の色相について評価した。
【0380】
<クロストークの評価>
23℃・55%RHの環境で、各々の液晶表示装置を点灯させ、3Dメガネをかけて、メガネが25°傾いた状態になるよう首を傾けた状態で3D映像を視聴し、クロストークを下記基準で評価し、結果を表2に示した。
【0381】
◎:クロストークがまったくない。
【0382】
○:非常に弱いクロストークがに見える。
【0383】
△:弱いクロストークが見える。
【0384】
×:クロストークがはっきり見える。
【0385】
<色相の評価>
23℃・55%RHの環境で、各々の液晶表示装置を点灯させ、3Dメガネをかけて、メガネが25°傾いた状態になるよう首を傾けた状態で3D映像を視聴し、黒表示の色相を下記基準で評価し、結果を表2に示した。
【0386】
◎:黒がクリアに見える。
【0387】
○:黒が僅かにボケて見える。
【0388】
△:わずかに赤みがかっている。
【0389】
×:明らかに赤みがかっている。
【0390】
【表2】

【0391】
本発明の防眩性フィルムは、内部ヘイズが小さく、3D画像に於ける防眩性と視認性を両立させる。特に、基材フィルム12を使用してRtを低減した防眩性フィルムは視認性が優れている。
【0392】
実施例2
<防眩性フィルム2−1〜18の作製>
防眩性フィルム1−4の作製において、基材フィルムを表3のように変更した以外は、同様にして防眩性フィルム2−1〜18を作製した。
【0393】
<偏光板2−1〜18の作製>
偏光板1−4の作製において、基材フィルムと裏面側フィルムを表3のように変更した以外は、同様にして偏光板2−1〜18を作製した。
【0394】
実施例1と同様にして液晶表示装置を作製し、クロストークと色相を評価した。結果を表3に示す。
【0395】
【表3】

【0396】
裏面側にもλ/4板機能を有するフィルムを用いた本発明の偏光板は、特に視認性が優れている。
【符号の説明】
【0397】
DR1 繰出し方向
DR2 巻取り方向
θi 繰出し角度(繰出し方向と巻取り方向のなす角度)
CR,CL 把持具
Wo 延伸前のフィルムの幅
W 延伸後のフィルムの幅
1 未延伸フィルム
2−1 右側のフィルム保持開始点
2−2 左側のフィルム保持開始点
3−1 右側のフィルム保持手段の軌跡
3−2 左側のフィルム保持手段の軌跡
4 テンター
5−1 右側のフィルム保持終了点
5−2 左側のフィルム保持終了点
6 斜め延伸フィルム
7−1 フィルムの送り方向
8−1 テンター入り口側のガイドロール
8−2 テンター出口側のガイドロール
9 フィルムの延伸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記面内リターデーションRo(550)が100〜160nmの範囲内にあり、基材フィルム長手方向に対する配向角θが40〜50°の範囲内にある基材フィルム上に、防眩層を有する防眩性フィルムであって、該防眩層が突起形状を有し、該突起形状が基材フィルムの長手方向に周期を持たず不規則な形状で不規則に配置されており、かつ防眩層の算術平均粗さRaが25〜300nmであり、かつ防眩層の内部散乱に起因するヘイズが0〜1.0%であることを特徴とする防眩性フィルム。
Ro(550)=(nx−ny)×d (式中、nxはフィルム面内における遅相軸x方向における屈折率、nyはフィルム面内方向であり、x方向に直行するy方向における屈折率、dはフィルムの膜厚(nm)を表す。屈折率は23℃・55%RHにおいて、測定波長550nmで測定する。)
【請求項2】
前記防眩層が実質的に微粒子を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の防眩性フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムは液晶性分子から形成された光学異方性層を有し、該光学異方性層上に直接前記防眩層を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の防眩性フィルム。
【請求項4】
偏光子の両側の面にλ/4板を有する偏光板であって、一方の面に請求項1〜3の何れか1項に記載の防眩性フィルムを有することを特徴とする偏光板。
【請求項5】
請求項4に記載の偏光板を有することを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項6】
バックライトとして有機EL素子を使用したことを特徴とする請求項5に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の防眩性フィルムを製造する防眩性フィルムの製造方法であって、25℃における粘度が30〜2500mPa・sの範囲内にある活性線硬化型樹脂を含有する防眩層を、少なくとも塗布工程、乾燥工程及び硬化工程を経由して形成し、かつ前記乾燥工程における減率乾燥区間の温度を90〜140℃の範囲内に維持した条件下で処理することを特徴とする防眩性フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24964(P2013−24964A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157616(P2011−157616)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】