説明

防着板、スパッタリング装置および薄膜太陽電池の製造装置

【課題】成膜時における防着板の変形を抑制する。
【解決手段】本発明に係る除電シールド6は、基板にターゲットの微粒子を堆積して薄膜を形成するスパッタリング装置に用いられ、対向状態にある基板とターゲットとの間に配置されると共に、ターゲットの微粒子を基板に向けて通過させるための開口部6aが形成された除電シールド6であって、開口部6aの全周に沿って補強リブ61が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に薄膜を形成するスパッタリング装置に用いられる防着板に関し、より詳細には、成膜時に発生する熱などの影響による変形を抑制可能な防着板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に薄膜を形成するスパッタリング装置において、成膜時に電界励起したターゲットの微粒子が、チャンバの側面などに付着・堆積することを防止するために、薄膜が形成される基板の被処理面以外の部分を覆うための防着板が用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
図5は、従来の防着板106を備えたスパッタリング装置101の要部構成を示す断面図であり、図6は、図5に示される防着板106を示す平面図である。
【0004】
図5に示されるように、スパッタリング装置101では、基板Sは、搬送ローラ103によってターゲットTの下方に搬送方向Xの向きで搬送される。また、図6に示されるように、防着板106にはターゲットTの微粒子を通過させるための開口部106aが形成されており、対向状態にあるターゲットTと基板Sとの間に、この開口部106aが位置するように防着板106が配置される。
【0005】
このように、ターゲットTと基板Sとの間に、基板Sの被処理面S1以外の部分を覆うように防着板106を配置することにより、成膜時に電界励起したターゲットTの微粒子が、基板S以外の部分に付着・堆積することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−226965号公報(2002年08月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、成膜時において、チャンバ102は高温となるので、その影響により防着板106が変形して、下方に垂れ下がることがある。
【0008】
また、成膜処理の回数を重ねることで、防着板106にターゲットTの微粒子が付着・堆積していく。特に、防着板106中心に近い、開口部106aの長辺に沿った防着板106の面の中央部分(図6に示される破線部分)により多くのターゲットTの微粒子が堆積する。そのため、防着板106の当該中央部分の重量が増えて、その重みで防着板106が変形して、下方に垂れ下がることがある。
【0009】
図7は、図5に示される従来の防着板106が変形した状態を示す概略図である。なお、図7では、図5および図6に示される搬送方向Xの方向から見たときの、防着板106の状態を示している。図7に示されるように、防着板106は、その長辺が搬送方向Xに対して直交する向きで基板Sの上方に配置されると共に、短辺側両端部の下面を支持部107によって支持されている。
【0010】
上述した成膜時に発生する熱やターゲットTの微粒子の付着・堆積など影響によって、図6に示される破線部分が変形して、防着板106が下方に垂れ下がった場合、防着板106の直下を通過する基板Sの被処理面S1に、垂れ下がった防着板106が接触することがある。その結果、従来の防着板106を用いたスパッタリング装置101では、基板Sの被処理面S1に形成された薄膜の膜面に傷が付き、外観不良が連続して発生するという課題を有している。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、成膜時における変形を抑制して、基板との接触による薄膜の損傷を防止することが可能な防着板を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る防着板は、上記従来の課題を解決するために、基板にターゲット材の微粒子を堆積して薄膜を形成するスパッタリング装置に用いられ、対向状態にある前記基板と前記ターゲット材との間に配置されると共に、前記ターゲット材の微粒子を前記基板に向けて通過させるための開口部が形成された防着板であって、前記開口部の全周に沿って補強リブが設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記の構成では、防着板の開口部の全周に沿って補強リブが設けられているので、成膜時に発生する熱や、ターゲット材の微粒子の付着・堆積などによって、防着板が変形することを抑制することが可能となる。
【0014】
従って、上記の構成によれば、成膜時における変形を抑制して、基板との接触による薄膜の損傷を防止することが可能な防着板を実現することができる。
【0015】
また、本発明に係る防着板では、前記補強リブは、前記開口部を規定する各辺に対応してそれぞれ設けられており、かつ、対応する前記各辺と前記補強リブとは、並列に設けられていることが好ましい。
【0016】
上記の構成では、補強リブは、開口部を規定する各辺に対応してそれぞれ設けられており、かつ、対応する前記各辺と前記補強リブとは、並列に設けられているため、開口部を形成したことによって強度が低下した防着板の部位を、効果的に補強することが可能となる。
【0017】
従って、上記の構成によれば、補強リブによって、防着板の変形を効果的に抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る防着板では、前記開口部を規定する1つの辺に対応する前記補強リブは、当該辺に隣接する他の辺に対応する補強リブと連結されていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、開口部を規定する1つの辺に対応する補強リブは、当該辺に隣接する他の辺に対応する補強リブと連結されているため、防着板の強度をより一層向上させることができる。
【0020】
また、本発明に係る防着板では、前記開口部は、長手方向を有する矩形形状であり、少なくとも前記開口部の長手方向に沿った面に設けられた前記補強リブは、梯子状または格子状であることが好ましい。
【0021】
上記の構成では、開口部の長手方向に沿った面に、補強リブが梯子状または格子状に設けられている。ここで、長手方向を有する矩形形状の開口部が形成された防着板では、通常、開口部の長手方向に沿った防着板の面の中央部が最も変形し易い。そのため、当該面上に補強リブを梯子状または格子状に設けることにより、この部位の強度を大きく向上させることができる。
【0022】
従って、上記の構成によれば、長手方向を有する矩形形状の開口部が形成された防着板の変形を効果的に抑制することができる。
【0023】
本発明に係るスパッタリング装置は、上記の課題を解決するために、上記防着板を備えることを特徴としている。
【0024】
上記の構成によれば、成膜時における防着板の変形を抑制して、防着板と基板との接触による薄膜の損傷を防止することが可能なスパッタリング装置を実現することができる。
【0025】
また、本発明に係るスパッタリング装置では、前記ターゲット材は、銀であることが好ましい。
【0026】
一般的に、銀(Ag)は、酸化亜鉛(ZnO)などの物質に比べて、防着板の表面に付着・堆積し易く、さらに、回り込みも大きい性質を有するので、ターゲット材として、銀(Ag)を用いた場合、防着板の両面に銀(Ag)の微粒子が付着・堆積することで、防着板の重みと厚みとが増すことになる。そのため、銀(Ag)の薄膜を形成するスパッタリング装置において、防着板の変形が特に起こり易く、その結果、防着板と基板との接触による薄膜の損傷が多発する。
【0027】
従って、ターゲット材に銀(Ag)を用いて、基板に銀(Ag)の薄膜を形成するスパッタリング装置に、上記の防着板を適用することにより、成膜時における防着板の変形を抑制して、防着板と基板との接触による薄膜の損傷を防止することができるので特に有効である。
【0028】
本発明に係る薄膜太陽電池の製造装置は、上記の課題を解決するために、上記スパッタリング装置を備えることを特徴としている。
【0029】
一般的に、薄膜太陽電池の製造には、各辺が1.0m以上のサイズの基板が使用されるので、基板のサイズに対応した開口部を形成するために、大型の防着板が用いられる。これに伴い、防着板の自重が増すので、成膜時に発生する熱や、ターゲット材の微粒子の付着・堆積などによって、防着板が変形し易くなる。
【0030】
そこで、薄膜太陽電池の製造装置に、上記の防着板を適用することにより、成膜時における防着板の変形を抑制して、防着板と基板との接触による薄膜の損傷を防止することができるので特に有効である。
【0031】
従って、上記の構成によれば、成膜時における防着板の変形を抑制して、防着板と基板との接触による薄膜の損傷を防止することが可能な薄膜太陽電池の製造装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明に係る防着板は、基板にターゲット材の微粒子を堆積して薄膜を形成するスパッタリング装置に用いられ、対向状態にある前記基板と前記ターゲット材との間に配置されると共に、前記ターゲット材の微粒子を前記基板に向けて通過させるための開口部が形成された防着板であって、前記開口部の全周に沿って補強リブが設けられている構成である。
【0033】
それゆえ、本発明に係る防着板によれば、成膜時における変形を抑制して、基板との接触による薄膜の損傷を防止することが可能な防着板を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態に係るスパッタリング装置の要部構成を示す断面図である。
【図2】薄膜太陽電池の膜構造を示す断面図である。
【図3】図1に示される除電シールドの外観構成を示す平面図である。
【図4】比較実験に用いた除電シールドの外観構成を示す平面図である。
【図5】従来の防着板を備えたスパッタリング装置の要部構成を示す断面図である。
【図6】図5に示される従来の防着板を示す平面図である。
【図7】図5に示される従来の防着板が変形した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係る防着板の実施形態の一例について、図1〜図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施形態では、本発明に係る防着板を備えたスパッタダウン方式のスパッタリング装置について説明する。
【0036】
<スパッタリング装置1の構成>
まず、本実施形態に係るスパッタリング装置1の要部構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るスパッタリング装置1の要部構成を示す断面図である。
【0037】
図1に示されるように、スパッタリング装置1は、チャンバ2と、複数の搬送ローラ3と、ヘッド4と、ヒータ5と、除電シールド(防着板)6とを備えている。以下、スパッタリング装置1が備える各構成について、順に説明する。
【0038】
(チャンバ2)
チャンバ2は、搬送ローラ3によって搬入された基板Sの被処理面(上面)S1に対して、成膜処理を行うための空間である。チャンバ2は、高真空排気装置(図示省略)などによって、大気圧より減圧され、真空状態に維持されている。
【0039】
チャンバ2の側面の一つには、図中の矢印で示される搬送方向Xに向けて搬送される基板Sを、チャンバ2内に搬入するための搬入口21が形成されている。また、搬入口21が形成された側面と対向するチャンバ2の側面には、基板Sを搬出するための搬出口22が形成されている。搬入口21および搬出口22には、搬入用扉23または搬出用扉24がそれぞれ取り付けられており、搬入用扉23および搬出用扉24によって、チャンバ2と外部とが、室間的に分離されている。
【0040】
なお、チャンバ2は、チャンバ2内を真空状態に維持して大気に開放しないために、搬入口21および搬出口22が、それぞれロードロックチャンバ(図示省略)に連結されていてもよい。チャンバ2をロードロックチャンバに連結し、ロードロックチャンバ内が真空になった状態で、搬入用扉23または搬出用扉24の開閉を行うことで、チャンバ2内を真空状態に維持したまま、チャンバ2への基板Sの搬入、またはチャンバ2からの搬出を行うことができる。
【0041】
また、チャンバ2は、エッチング処理を施すためのエッチング装置、或いは、他のスパッタリング装置に連結されていてもよい。
【0042】
(搬送ローラ3)
搬送ローラ3は、チャンバ2に搬入された基板Sを、被処理面S1を上方に向けた状態で載置して、搬送方向Xに向かって搬送する水平搬送型の搬送機構である。各搬送ローラ3は、水平方向に並んで平行に配設されており、搬入口21から搬出口22に向けて基板Sを搬送する。
【0043】
また、搬送ローラ3は、搬送ローラ3を回転駆動させるモータなどの駆動部(図示省略)に接続されており、その回転が制御される。
【0044】
なお、本実施形態では、基板Sを搬送する搬送機構を、複数の搬送ローラ3を用いて実現しているが、搬送ローラ3以外にも、例えば、基板Sを下方から担持する搬送アーム、ベルトコンベアなどを用いて搬送機構を実現してもよい。
【0045】
(ヘッド4)
ヘッド4は、ターゲット(ターゲット材)Tを構成する原子または分子などの微粒子を、下方に配置された基板Sの被処理面S1に向けて放出するものである。ターゲットTには、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、銀(Ag)などが用いられる。ヘッド4は、チャンバ2の上面に設けられており、電極シールド41と、磁石42とを備えている。
【0046】
電極シールド41は、スパッタリング時の放電空間を、基板Sが配置される空間に制限するためのものであり、ターゲットTの側面側に設けられている。
【0047】
また、スパッタリング装置1では、成膜速度を向上させるために、ターゲットTの表面に磁界を作用させるマグネトロンスパッタ方式を採用しており、ターゲットTの上部には、磁石42が取り付けられている。
【0048】
さらに、ヘッド4には、スパッタリングに必要な放電を発生させるための高周波の電源43が、配線44を介して接続されており、ヘッド4と電源43との間には、ノイズカットのためのローパスフィルタ45が設けられている。
【0049】
(ヒータ5)
ヒータ5は、ヘッド4の下方に搬送された基板Sを、所定の温度まで加熱するものである。ヒータ5は、使用されるターゲットTの種類に応じて、適宜、最適な温度に設定可能であり、基板Sの被載置面(下面)S2側から、基板Sを加熱できるように配置されている。
【0050】
(除電シールド6)
除電シールド6は、成膜時に電界励起したターゲットの微粒子が、チャンバ2の側面など基板S以外の部分に付着・堆積することを防止すると共に、ターゲットTの近傍に発生するプラズマ放電の広がりを抑制するものである。
【0051】
除電シールド6には、ターゲットTの微粒子を基板Sの被処理面S1に向けて通過させるための開口部6a(図3を参照)が形成されており、対向状態にあるターゲットTと基板Sとの間に、この開口部6aが位置するように配置される。具体的には、除電シールド6は、その長辺が搬送方向Xに対して直交する向きで配置されており、短辺側両端部の下面を支持部(図示省略によって支持されている。
【0052】
除電シールド6によって、基板Sの被処理面S1以外の部分を覆うように除電シールド6を配置することにより、成膜時に電界励起したターゲットTの微粒子が基板S以外の部分に付着・堆積することを防止することができる。
【0053】
また、除電シールド6を、アルマイト(アルミニウム表面陽極酸化)やステンレス合金などの金属から構成することで、ターゲットTの近傍に発生するプラズマ放電の広がりを抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、除電シールド6は、ターゲットTから3.0cm以上、5.0cm以下程度の間隔をおいて、支持部(図示省略)によって支持されている。また、除電シールド6は、基板Sの被処理面S1から1.0cm以上、2.0cm以下程度の間隔をおいて、支持部によって支持されている。
【0055】
ここで、スパッタリング装置1を、例えば、薄膜太陽電池の製造に用いた場合を例にして説明する。図2は、薄膜太陽電池30の膜構造を示す断面図である。図2に示されるように、薄膜太陽電池30は、基板S上に、表面電極31と、光電変換層32と、透明導電層33と、裏面電極層34とが、この順で積層された構造である。
【0056】
このような膜構造を有する薄膜太陽電池30の製造にスパッタリング装置1を用いた場合、成膜時において、チャンバ2は高温となり、除電シールド6は、130℃以上、1600℃以下程度まで加熱される。そのため、この熱による影響で除電シールド6が膨張し、自重によって下方に垂れ下がるように変形することがある。
【0057】
特に、薄膜太陽電池の製造では、各辺が1.0m以上のサイズの基板Sが一般的に使用される。従って、このようなサイズの基板Sに対応した開口部6aの長辺も1.0m以上となり、当該開口部6aを形成できる大型の除電シールド6を用いる必要がある。そのため、除電シールド6の自重が増すので、成膜時に発生する熱などによって、除電シールド6が変形し易くなる。
【0058】
また、成膜処理の回数を重ねることで、除電シールド6にターゲットTの微粒子が付着・堆積する。特に、裏面電極層34の成膜に用いられる銀(Ag)は、透明導電層33の成膜に用いられる酸化亜鉛(ZnO)などの物質と比べて除電シールド6に付着・堆積し易く、さらに、回り込みも大きい性質を有する。
【0059】
そのため、裏面電極層34を成膜する場合、除電シールド6の両面に銀(Ag)の微粒子が付着・堆積することで、除電シールド6の重みと厚みとが増すことになる。これに伴い、上述した除電シールド6の変形が助長される。
【0060】
このように、成膜時に発生した熱や、銀(Ag)などの微粒子の付着・堆積の影響によって除電シールド6が変形して、下方に垂れ下がった場合、除電シールド6の直下(1.0cm以上、2.0cm以下程度)を通過する基板Sの被処理面S1に、垂れ下がった除電シールド6が接触する。そのため、基板Sに形成された銀(Ag)の薄膜の膜面に傷が付き、外観不良が連続して発生する現象が起こる。
【0061】
そこで、本実施形態に係る除電シールド6では、成膜時における熱や、ターゲットTの微粒子の付着・堆積などによって生じる除電シールド6の変形を防止するために、除電シールド6の開口部6aの全周に沿って補強リブ61を設けている。
【0062】
図3は、図1に示される除電シールド6の外観構成を示す平面図である。図3に示されるように、除電シールド6は、長方形の板状部材であり、ターゲットTの微粒子を基板Sの被処理面S1に向けて通過させるための開口部6aが中央部に形成されている。本実施形態では、基板Sの被処理面S1が長方形であることに対応して、ほぼ同じサイズの長方形形状(長手方向を有する矩形形状)の開口部6aが形成されている。
【0063】
また、上述した成膜時における熱や、ターゲットTの微粒子の付着・堆積などによって生じる除電シールド6の変形を防止するために、除電シールド6には、開口部6aの全周に沿って補強リブ61が設けられている。
【0064】
本実施形態では、除電シールド6全体を囲むように、除電シールド6の外縁部に連続した補強リブ61が設けられている。
【0065】
また、除電シールド6の面上には、開口部6aを規定する各辺と並列に、当該各辺に対応する補強リブ61がそれぞれ設けられている。補強リブ61は、それぞれが隣接する補強リブ61に連結されることで、開口部6aを囲う枠状の補強リブ61を形成している。
【0066】
このような補強リブ61を設けることにより、開口部6aを形成したことによって強度が低下した除電シールド6の部位を効果的に補強して、除電シールド6の変形を抑制することができる。
【0067】
また、除電シールド6には、開口部6aを規定する2つの長辺に沿って、補強リブ61が梯子状にそれぞれ設けられている。ここで、本実施形態のように、長方形形状の開口部6aが形成された除電シールド6では、通常、開口部6aの長辺に沿った面の中央部に最も荷重がかかるので、当該中央部が最も変形し易い。そのため、当該中央部を含む面上に補強リブ61を梯子状または格子状に設けることにより、この部位の強度を大きく向上させることができる。
【0068】
従って、上記の構成によれば、長手方向を有する矩形形状の開口部が形成された除電シールド6の変形を効果的に抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態のように、除電シールド6に設けられた補強リブ61を、それぞれ連結することにより、除電シールド6の強度を向上させることができる。
【0070】
なお、除電シールド6に設けられた補強リブ61の配置は、特に限定されず、開口部6aの全周に沿った除電シールド6上に補強リブ61がそれぞれ設けられていればよい。従って、除電シールド6の形状、サイズ、材質、形成される開口部6aの形状などの各種の要素に基づいて、適宜変更可能である。
【0071】
<比較実験>
次に、本実施形態に係る除電シールド6を用いた比較実験について、図4を参照して説明する。
【0072】
図4は、比較実験に用いた除電シールド16の外観構成を示す平面図である。図3に示される本実施形態に係る除電シールド6は、開口部6aの全周に沿って補強リブ61が設けられた構成である。これに対して、比較実験で用いた除電シールド16は、図4に示されるように、開口部16aを規定する各辺のうち、開口部16aの対向する2つの長辺のみに沿って補強リブ62が設けられており、対向する2つの長2つの短辺に沿って補強リブ62が設けられていない点で、本実施形態に係る除電シールド6と大きく異なる。
【0073】
具体的には、除電シールド16には、除電シールド16の外縁部のうち、長辺側に補強リブ62がそれぞれ設けられており、短辺側には補強リブ62が設けられていない。
【0074】
また、開口部16aの対向する2つの長辺に沿った除電シールド16の面上には、開口部16aの長辺と直交する方向に並んだ3つの補強リブ62がそれぞれ設けられており、除電シールド16の外縁部に設けられた補強リブ61に連結されている。
【0075】
なお、除電シールド6と比較例である除電シールド16とは、補強リブ61が配置構成のみが異なっており、その他の構成は同一である。
【0076】
本比較実験では、比較例である除電シールド16を備えた薄膜太陽電池の製造装置(スパッタリング装置)、および本実施形態に係る除電シールド6を備えた薄膜太陽電池の製造装置(スパッタリング装置)を用いて、図2に示される裏面電極層34を実際に形成した。
【0077】
比較例である除電シールド16を備えた薄膜太陽電池の製造装置に用いて、基板Sに銀(Ag)の薄膜を形成した場合、一定時間が経過した時点で除電シールド16の膨張および銀(Ag)の微粒子の付着・堆積が確認され、その後、成膜処理の回数を重ねるにつれて、除電シールド16が下方に垂れ下がるように徐々に変形した。
【0078】
その結果、比較例である除電シールド16を備えた薄膜太陽電池の製造装置では、所定時間が経過した時点で、除電シールド16と基板Sとが接触して、基板Sに形成された薄膜の膜面に傷が付き、外観不良が連続して発生する現象が起こった。
【0079】
これに対して、本実施形態に係る除電シールド6を備えた薄膜太陽電池の製造装置を用いて、同条件で基板Sに銀(Ag)の薄膜を形成した場合、一定時間が経過した時点で、除電シールド6の膨張および銀(Ag)の微粒子の付着・堆積が確認されたが、その後、成膜処理の回数を重ねても、基板Sと接触するほどの除電シールド6の変形は見られなかった。
【0080】
その結果、本実施形態に係る除電シールド6を備えた薄膜太陽電池の製造装置では、除電シールド6の変形が抑制され、所定時間が経過しても、基板Sに形成された薄膜の膜面に傷が付き、外観不良が連続して発生する現象を回避することができた。
【0081】
この比較実験により、除電シールド6によれば、成膜時における変形を抑制して、除電シールド6と基板Sとの接触による薄膜の損傷を防止することが可能であることが確認された。
【0082】
<実施形態の総括>
以上のように、本実施形態に係る除電シールド6は、基板SにターゲットTの微粒子を堆積して薄膜を形成するスパッタリング装置1に用いられ、対向状態にある基板SとターゲットTとの間に配置されると共に、ターゲットTの微粒子を基板Sに向けて通過させるための開口部6aが形成された除電シールド6であって、開口部6aの全周に沿って補強リブ61が設けられている。
【0083】
この構成では、除電シールド6の開口部6aの全周に沿って補強リブ61が設けられているので、成膜時に発生する熱や、ターゲットTの微粒子の付着・堆積などによって、除電シールド6が変形することを抑制することが可能となる。
【0084】
従って、本実施形態によれば、成膜時における変形を抑制して、除電シールド6と基板Sとの接触による薄膜の損傷を防止することが可能な除電シールド6を実現することができる。
【0085】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法などの成膜装置に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 スパッタリング装置
2 チャンバ
3 搬送ローラ
4 ヘッド
5 ヒータ
6 除電シールド(防着板)
6a 開口部
16 除電シールド(防着板)
30 薄膜太陽電池
61 補強リブ
62 補強リブ
S 基板
S1 被処理面
S2 被載置面
T ターゲット(ターゲット材)
X 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にターゲット材の微粒子を堆積して薄膜を形成するスパッタリング装置に用いられ、対向状態にある前記基板と前記ターゲット材との間に配置されると共に、前記ターゲット材の微粒子を前記基板に向けて通過させるための開口部が形成された防着板であって、
前記開口部の全周に沿って補強リブが設けられていることを特徴とする防着板。
【請求項2】
前記補強リブは、前記開口部を規定する各辺に対応してそれぞれ設けられており、かつ、対応する前記各辺と前記補強リブとは、並列に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防着板。
【請求項3】
前記開口部を規定する1つの辺に対応する前記補強リブは、当該辺に隣接する他の辺に対応する補強リブと連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の防着板。
【請求項4】
前記開口部は、長手方向を有する矩形形状であり、
少なくとも前記開口部の長手方向に沿った面に設けられた前記補強リブは、梯子状または格子状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の防着板。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の防着板を備えることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項6】
前記ターゲット材は、銀であることを特徴とする請求項5に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のスパッタリング装置を備えることを特徴とする薄膜太陽電池の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104128(P2013−104128A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251055(P2011−251055)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】