説明

防腐殺菌剤及び人体施用組成物

【課題】 従来より用いられているパラベン、安息香酸等の防腐殺菌剤を排除或いは使用量を軽減することができ、しかも優れた抗菌力を有する防腐殺菌剤及び、従来の防腐殺菌剤の配合量が少ないか或いは全く配合されていない安全性の高い人体施用組成物の提供にある。
【解決手段】 1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールと、安息香酸及びその塩とが組み合わされてなることを特徴とする防腐殺菌剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防腐殺菌剤及び人体施用組成物に関し、その目的は、従来より用いられているパラベン、安息香酸等の防腐殺菌剤を排除或いは使用量を軽減することができ、しかも優れた抗菌力を有する防腐殺菌剤及び、従来の防腐殺菌剤の配合量が少ないか或いは全く配合されていない安全性の高い人体施用組成物を提供することにある。
尚、本明細書において、人体施用組成物とは、化粧品、医薬品、医薬部外品、食品などの人体の内部又は外部に直接施用する組成物のことである。
【背景技術】
【0002】
従来より化粧品や医薬品、医薬部外品、食品などの人体施用組成物には、防腐殺菌剤として、パラベン、安息香酸及びその塩類、サリチル酸及びその塩類、等が用いられている。
しかしながら、上記した従来の防腐殺菌剤は皮膚刺激性が高いなど安全性が低いため、使用濃度範囲が制限されやすいという欠点を有しており、例えば、パラベンや安息香酸塩
の使用制限濃度は1%、安息香酸やサリチル酸の使用制限濃度は0.2%とされている。また、pHによる影響を受けやすいため効果の安定性が悪く、更に、界面活性剤などの他の配合成分との併用により、その抗菌力が著しく低下する場合があるという問題点も有している。
また、近年これらの防腐殺菌剤に対しアレルギー反応を有する人が増えているため、安全性に対する指向がより高まり、防腐殺菌剤を全く配合していないか、或いはその配合量を軽減させた人体施用組成物の需要が高まっている。
【0003】
そこで、従来の防腐殺菌剤の欠点が克服され、且つ安全性の高い抗菌物質の探索や、防腐殺菌剤の効力を高めることにより防腐殺菌剤の使用量を軽減しようという試みが種々行われている。例えば、複数の防腐殺菌剤を使用し、その相乗効果を利用することにより防腐殺菌剤の使用量を軽減することが行われている。更に、従来の防腐殺菌剤は水相に存在する量により効力が左右されるが、水に対する溶解性が低いものが多いため、1,3−ブチレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリンなどの多価アルコールを添加することにより防腐殺菌剤の水相への分配を高め、防腐殺菌剤の効果を高めることも行われている。
【0004】
しかしながら、1,3−ブチレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリンなどの多価アルコールを従来の防腐殺菌剤と併用することによる、防腐殺菌剤の抗菌力を高める効果は顕著ではなく、また、これらの多価アルコール自体の防腐殺菌作用が発揮されるのは、多量に配合した場合、例えば1,3−ブチレングリコールやジプロピレングリコールでは10%以上配合した場合、グリセリンでは30%以上配合した場合であるため、従来の防腐殺菌剤の使用量の大幅な軽減には至っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、従来より用いられている防腐殺菌剤を排除或いは使用量を軽減することにより、安全性の高い人体施用組成物を提供することのできる、優れた抗菌力を有する防腐殺菌剤の創出が望まれている。
本発明者らは、防腐殺菌剤に関する鋭意研究を行った結果、従来より保湿剤として用いられている1,2−ペンタンジオールの他、1,2−ヘキサンジオールや1,2−オクタンジオールが優れた抗菌力を有しており、これを、防腐殺菌剤として人体施用組成物に使用することにより、従来より用いられている防腐殺菌剤の抗菌力を高めて防腐殺菌剤の使用量を大幅に軽減することができるとともに、従来の防腐殺菌剤の排除も可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、請求項1に係る発明は、1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールと、安息香酸及びその塩とが組み合わされてなることを特徴とする防腐殺菌剤に関し、請求項2に係る発明は、1,2−オクタンジオールと、安息香酸及びその塩、フェノキシエタノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノールのうちの1種以上とが組み合わされてなることを特徴とする防腐殺菌剤に関する。
【0007】
また請求項3に係る発明は、防腐殺菌剤として前記請求項1又は2に記載の防腐殺菌剤を配合したことを特徴とする人体施用組成物に関し、請求項4に係る発明は、前記フェノキシエタノールの配合量が、組成物中0.2重量%未満であることを特徴とする請求項3記載の人体施用組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
求項1に係る発明は、1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールと、安息香酸及びその塩とが組み合わされてなることを特徴とする防腐殺菌剤に関し、請求項2に係る発明は、1,2−オクタンジオールと、安息香酸及びその塩、フェノキシエタノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノールのうちの1種以上とが組み合わされてなることを特徴とする防腐殺菌剤に関するものであるから、以下のような効果を奏する。
【0009】
即ち、1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールと、安息香酸及びその塩、或いは1,2−オクタンジオールと、安息香酸及びその塩、フェノキシエタノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノールのうちの1種以上とを組み合わせて防腐殺菌剤として使用することにより、相乗効果によりそれぞれの抗菌力が向上するので、従来より用いられている防腐殺菌剤の使用量を大幅に軽減することができる。
【0010】
更に請求項3に係る発明は、防腐殺菌剤として前記請求項1又は2に記載の防腐殺菌剤を配合したことを特徴とする人体施用組成物に関するものであるから、防腐殺菌性が高く、しかも安全性及び使用感においても優れているという効果を奏し、請求項4に係る発明は、前記フェノキシエタノールの配合量が、組成物中0.2重量%未満であることを特徴とする請求項3記載の人体施用組成物に関するものであるから皮膚に対する刺激性がなく、使用感が極めて良いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】試験例1における、混合菌の生菌数の変化を表す図である。
【図2】試験例1における、S.cerevisiaeの生菌数の変化を表す図である。
【図3】試験例1における、A.niger の生菌数の変化を表す図である。
【図4】試験例2における、混合菌の生菌数の変化を表す図である。
【図5】試験例2における、S.cerevisiaeの生菌数の変化を表す図である。
【図6】試験例2における、A.niger の生菌数の変化を表す図である。
【図7】試験例3における、混合菌の生菌数の変化を表す図である。
【図8】試験例3における、S.cerevisiaeの生菌数の変化を表す図である。
【図9】試験例3における、A.niger の生菌数の変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した如く、本発明者らは、人体施用組成物の防腐殺菌剤として、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールを用いることにより、従来より用いられている防腐殺菌剤を排除或いは使用量を軽減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
1,2−ペンタンジオールは従来より化粧品の基剤として広く用いられているポリオールの1種であり、安全性が高く水に易溶であるため、保湿剤,安定化剤,分散剤,溶剤などとして用いられている。
従って、1,2−ペンタンジオールを用いることにより保湿力も高められるため、しっとり感において優れた製剤とすることができる。また後記する試験例からも明らかなように、1,2−ヘキサンジオールや1,2−オクタンジオール等の他の多価アルコールを用いた場合にも、同様にしっとり感において優れた製剤とすることができる。
【0014】
1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールは、後記する安全性テストの結果からも明らかな如く、極めて安全性が高いため、人体施用組成物に20重量%まで配合することができる。但し、0.05重量%より少ないと、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール配合による防腐殺菌効果が十分発揮されないため、組成物中の配合率は0.05〜20重量%とされ、特に1,2−ペンタンジオールを用いる場合には1〜10重量%とするのが望ましい。
【0015】
1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールは、前述したように、優れた抗菌力を有しているが、その抗菌力はパラベン,安息香酸塩等の防腐殺菌剤に比べると小さい。
しかしながら、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールは、後記する安全性テストの結果からも明らかなように、安全性が極めて高いため、人体施用組成物中20重量%まで配合することができる。即ち、抗菌力が小さくても配合量を増すことで十分な抗菌力を発揮することができるので、結果的に、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールを用いることにより、従来より用いられている防腐殺菌剤の使用量を軽減することができるか、或いはこれを全く使用せずに人体施用組成物に十分な抗菌性を付与することが可能となり、安全性及び抗菌性において優れた人体施用組成物を提供することができる。
【0016】
本発明においては、前記1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールと、次式(化)で示される安息香酸及びその塩、或いは前記1,2−オクタンジオールと、前記安息香酸及びその塩、次式(化)で示される4−イソプロピル−3−メチルフェノール、次式(化)で示されるフェノキシエタノールなどの、従来より用いられている防腐殺菌剤とを組み合わせて使用する(但し、式中RはH又はNaを示す)。
【0017】
【化1】

【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールと従来の防腐殺菌剤を併用した場合には、相乗効果によりそれぞれの抗菌力が高められ、一般細菌,真菌の種類を問わず、あらゆる種類の菌に対して優れた防腐殺菌作用が発揮される。
例えば、1,2−ペンタンジオールは、単独で用いた際には、一般細菌に対しては優れた防腐殺菌作用を発揮するものの、真菌に対しては防腐殺菌作用を殆ど発揮しないが、従来の防腐殺菌剤を併用した場合には、真菌に対しても優れた防腐殺菌作用が発揮される。従って、従来より用いられている防腐殺菌剤の使用量を大幅に軽減することができ、安全性に優れた人体施用組成物を提供することができる。
【0021】
安息香酸及びその塩やフェノキシエタノール,4−イソプロピル−3−メチルフェノールといった従来の防腐殺菌剤と、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールとを組み合わせて使用する場合、安息香酸及びその塩やフェノキシエタノール,4−イソプロピル−3−メチルフェノールの配合量は特に限定されず、使用制限濃度以下とすればよい。
但し、人体施用組成物に配合した際に、フェノキシエタノールの配合量が組成物中0.2重量%以上になると、皮膚に対する刺激性が強くなり、使用感が劣化するので、フェノキシエタノールの配合量は、組成物中0.2重量%未満とするのが好ましい。
尚、フェノキシエタノールの配合量を、組成物中0.2重量%未満としても、1,2−オクタンジオールとの併用により、それぞれの防腐力が高められているので、十分に優れた防腐殺菌効果を発揮することができる。
【0022】
本発明に係る人体施用組成物は、防腐殺菌剤として、1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールと、安息香酸及びその塩が配合されてなる組成物、或いは1,2−オクタンジオールと、安息香酸及びその塩、フェノキシエタノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノールのうちの1種以上が配合されてなる組成物である。
例えば、洗顔料,化粧水,乳液,クリーム,シャンプー,ヘアトリートメントなどの皮膚用及び毛髪用化粧品、しみやそばかすの予防など特定の使用目的を有した薬用化粧品(医薬部外品)、にきびの治療などを目的とした医薬品、更には食品などに上記防腐殺菌剤を配合し、本発明に係る人体施用組成物とすることができる。
【0023】
本発明において用いられる1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールは、前述した如く、極めて安全性の高い物質である。以下、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールの安全性について、テスト結果に基づいて説明する。
【0024】
(毒性テスト)雌雄5匹ずつ、計10匹のラットを用いて、1,2−ペンタンジオールの経口急性毒性テスト及び経皮急性毒性テストを行った結果、50%致死量(LD50)は、経口投与の場合で5000mg/Kg、経皮投与の場合で2000mg/Kgであった。
【0025】
(刺激性テスト)1,2−ペンタンジオール,1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールそれぞれの急性皮膚刺激性テストを、各試料に対して雌雄3匹ずつ、計6匹のウサギを用いて行い、急性眼刺激性テストを、各試料に対して6匹の雄のウサギ及び3匹の雌のウサギを用いて行った結果、いずれの試料についても皮膚及び眼に対する刺激は殆どなかった。
また、雌雄10匹ずつ、計20匹のモルモットによる皮膚感作テストにおいても、皮膚に対する刺激は殆どなかった。
【0026】
更に、1,2−ペンタンジオール,1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールに関する、ヒトによる皮膚適合性テスト,変異原性試験,パッチテストの結果は全て陰性であった。
以上の安全性テストの結果から、1,2−ペンタンジオール,1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールは極めて安全性の高い物質であると言える。
【0027】
<試験例>以下、本発明を試験例に基づき詳細に説明する。
〔試験例1;製剤中における防腐力試験1
実施例1及び比較例1〜3のクリームを調製し、チャレンジテストにより、1,2−オクタンジオールとフェノキシエタノールを併用した場合の防腐力を評価した。
【0028】
(試験方法)
先ず、表1の処方により実施例1及び比較例1〜3のクリームを調整した。
【0029】
【表1】

【0030】
供試菌には、一般細菌としてEscherichia coli IFO3972(大腸菌)、Staphylococcus aureus IFO13276(黄色ブドウ状球菌)、Bacillus subtilis IFO12210(枯草菌)の混合菌液を用いた。また、酵母としてSaccharomyces cerevisiae IFO0234(ビール酵母)を、カビとしてAspergillus niger IFO9455 (クロカビ)を用いた。これらの菌を予め前培養した培養液を、一般細菌の混合菌は約10cells/ml に、S.cerevisiaeは約10cells/ml に、A.niger は約10cells/ml に希釈したものを菌懸濁液とした。尚、菌数はコロニーカウント法により確認した。
【0031】
乾熱滅菌済みのガラス容器に、実施例1〜3或いは比較例1〜3のクリームを20g入れ、上記菌懸濁液を0.2ml接種して、混合菌は35℃で、S.cerevisiae及びA.nigerは25℃で培養を行った。混合菌、S.cerevisiaeについては接種後1,7日後に、A.nigerについては7,14,21日後に、各試料を1gずつ抜き取り、生理食塩水で希釈したものを寒天培地に混釈して48時間培養し、試料中の残存菌数を算出した。尚、A.nigerに関しては、完全に死滅したことを確認した後の測定は省略した。
【0032】
結果を表及び図〜図に示す。
尚、比較例については多価アルコールを配合していないため、成分が分散せず、結果を得ることができなかったので、実施例及び比較例のクリームについての結果を示す。
【0033】
【表2】

尚、表2中1,2−ODは1,2−オクタンジオールを示し、*は測定を省略したことを示す。(以下、表4,6に関しても同じ)
図1は混合菌の生菌数の変化を表す図、図2はS.cerevisiaeの生菌数の変化を表す図、図3はA.nigerの生菌数の変化を表す図である。但し、図中△印の折れ線が実施例1の結果、■印の折れ線が比較例1の結果、●印の折れ線が比較例2の結果である。
【0034】
及び図〜図の結果より、比較例及びのようにグリセリンとフェノキシエタノールを併用した場合には、フェノキシエタノールを0.5重量%配合しても、一般細菌に対しては殆ど防腐効果を発揮しない。
また実施例のように、1,2−オクタンジオールとフェノキシエタノールを併用すると、一般細菌,酵母,カビの全ての菌種に対して防腐力の向上が見られ、比較例のようにフェノキシエタノールを0.5重量%配合した場合よりも顕著に防腐力が勝っていることがわかる。
【0035】
〔試験例;製剤中における防腐力試験
次に、表の処方により実施例及び比較例のクリームを調製し、上記試験例と同様のチャレンジテストを行って、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールと安息香酸ナトリウムを併用した場合の防腐力を評価した。
【0036】
【表3】


【0037】
結果を表及び図に示す。
尚、比較例については多価アルコールを配合していないため、成分が分散せず、結果を得ることができなかったので、実施例及び比較例のクリームについての結果を示す。
【0038】
【表4】

尚、表4中1,2−PDは1,2−ペンタンジオールを、1,2−HDは1,2−ヘキサンジオールを示す。
また図は混合菌の生菌数の変化を表す図、図はS.cerevisiaeの生菌数の変化を表す図、図はA.nigerの生菌数の変化を表す図であり、図中○印の折れ線が実施例の結果、□印の折れ線が実施例の結果、△印の折れ線が実施例の結果、■印の折れ線が比較例の結果、●印の折れ線が比較例の結果である。
【0039】
及び図〜図の結果より、比較例及びのようにグリセリンと安息香酸ナトリウムを併用した場合には、安息香酸ナトリウムを0.3重量%配合しても、一般細菌,酵母,カビのいずれの菌種に対しても防腐効果を示さなかったのに対し、実施例2のように1,2−ペンタンジオールと安息香酸ナトリウムを併用すると、安息香酸ナトリウムの使用量を軽減しても、一般細菌に対して優れた防腐力を発揮することがわかる。
また、実施例及びのように、1,2−ヘキサンジオール又は1,2−オクタンジオールと安息香酸ナトリウムを併用すると、一般細菌,酵母,カビの全ての菌種に対して防腐力の向上が見られ、比較例のように安息香酸ナトリウムを0.3重量%配合した場合よりも顕著に防腐力が勝っていることがわかる。
【0040】
〔試験例;製剤中における防腐力試験
の処方により実施例及び比較例のクリームを調製し、上記試験例と同様のチャレンジテストを行い、1,2−オクタンジオールと4−イソプロピル−3−メチルフェノールとを併用した場合の防腐力を評価した。
【0041】
【表5】

【0042】
結果を表及び図〜図に示す。
尚、比較例については多価アルコールを配合していないため、成分が分散せず、結果を得ることができなかったので、実施例及び比較例のクリームについての結果を示す。
【0043】
【表6】

は混合菌の生菌数の変化を表す図、図はS.cerevisiaeの生菌数の変化を表す図、図はA.nigerの生菌数の変化を表す図である。但し、図中△印の折れ線が実施例の結果、■印の折れ線が比較例の結果、●印の折れ線が比較例の結果である。
【0044】
及び図〜図の結果より、比較例のようにグリセリンと4−イソプロピル−3−メチルフェノールを併用した場合には、4−イソプロピル−3−メチルフェノールを0.1重量%配合しても、一般細菌,酵母,カビのいずれの菌種に対しても防腐効果を示さなかったのに対し、実施例5のように、1,2−オクタンジオールと4−イソプロピル−3−メチルフェノールを併用すると、一般細菌,酵母,カビの全ての菌種に対して防腐力の向上が見られ、比較例のように4−イソプロピル−3−メチルフェノールを0.1重量%配合した場合よりも顕著に防腐力が勝っていることがわかる。
更に4−イソプロピル−3−メチルフェノールと1,2−オクタンジオールとを併用した場合には、比較例のように4−イソプロピル−3−メチルフェノールを単独で使用する場合よりも4−イソプロピル−3−メチルフェノールの使用量を軽減しても、より優れた防腐力を発揮できることがわかる。
【0045】
以上試験例の結果から、1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールと安息香酸及びその塩、或いは1,2−オクタンジオールと、安息香酸及びその塩、フェノキシエタノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノールを組み合わせて用いることにより、従来より用いられている防腐殺菌剤を排除或いは使用量を軽減しても、人体施用組成物に十分な抗菌性を付与することができることは明らかであり、安全性及び抗菌性において優れた人体施用組成物を提供することができる。
【0046】
〔試験例;使用感評価〕
次に、整髪用クリーム及びマッサージクリームを用いて使用感の評価を行った。
(しっとり感について)
以下の処方に従い、多価アルコールとして、1,2−ペンタンジオール,1,2−ヘキサンジオール,1,2−オクタンジオール,或いはグリセリンが配合された整髪用クリームを、常法により調製した。
整髪用クリーム (重量%)
メチルポリシロキサン 5.00
パラフィン 10.00
モノステアリン酸POEソルビタン 3.30
カルボキシビニルポリマー 0.22
トリエタノールアミン 0.20
多価アルコール 5.00
安息香酸 0.10
香料 適量
紫外線吸収剤 適量
精製水 残部
合 計 100.00
【0047】
また、以下の処方に従い、多価アルコールとして、1,2−ペンタンジオール,1,2−ヘキサンジオール,1,2−オクタンジオール,或いはグリセリンが配合されたマッサージクリームを、常法により調製した。
マッサージクリーム (重量%)
ミツロウ 15.00
流動パラフィン 30.00
モノステアリン酸POEソルビタン 3.30
モノステアリン酸ソルビタン 3.30
カルボキシビニルポリマー 0.02
トリエタノールアミン 0.15
多価アルコール 3.00
流動イソパラフィン 30.00
安息香酸 0.10
香料 適量
精製水 残部
合 計 100.00
【0048】
上記処方により調製された整髪用クリーム及びマッサージクリームをそれぞれ女性10名に使用してもらい、使用感について、しっとり感の観点から官能評価してもらった。官能評価の結果に基づき、以下に示す基準で判定した。
◎;10名中8名以上がしっとり感があると判定
○;10名中5〜7名がしっとり感があると判定
×;10名中4名以下がしっとり感があると判定
【0049】
結果を表7に示す。
【0050】
【表7】

【0051】
<処方例>
以下、本発明に係る人体施用組成物の処方例を示す。
(処方例1)
化粧水 (重量%)
ポリエチレングリコール1500 2.00
1,2−ヘキサンジオール 2.00
ポリオキシエチレン
オレイルエーテル(25E.O) 1.50
香料 適量
安息香酸ナトリウム 0.10
紫外線吸収剤 適量
精製水 残部
合 計 100.00
【0052】
(処方例2)
にきび予防用洗顔剤 (重量%)
ステアリン酸 10.00
パルミチン酸 10.00
ミリスチン酸 12.00
ラウリン酸 4.00
ヤシ油 1.50
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 2.00
グリセロールモノステアリン酸エステル 2.00
1,2−オクタンジオール 1.00
グリセリン 10.00
感光素201号 0.001
安息香酸 0.10
キレート剤 適量
香料 適量
色素 適量
精製水 残部
合 計 100.00

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式1(化1)で示される1,2−ペンタンジオール又は次式2(化2)で示される1,2−ヘキサンジオールと、次式3(化3)で示される安息香酸及びその塩とが組み合わされてなることを特徴とする防腐殺菌剤(但し、式中RはH又はNa)。
【化1】

【化2】

【化3】

【請求項2】
次式4(化4)で示される1,2−オクタンジオールと、次式(化)で示される安息香酸及びその塩、次式(化)で示されるフェノキシエタノール、次式(化)で示される4−イソプロピル−3−メチルフェノールのうちの1種以上とが組み合わされてなることを特徴とする防腐殺菌剤(但し、式5中RはH又はNa)。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【請求項3】
防腐殺菌剤として前記請求項1又は2に記載の防腐殺菌剤を配合したことを特徴とする人体施用組成物。
【請求項4】
前記フェノキシエタノールの配合量が、組成物中0.2重量%未満であることを特徴とする請求項3記載の人体施用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−180213(P2010−180213A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38006(P2010−38006)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【分割の表示】特願平11−45504の分割
【原出願日】平成11年2月23日(1999.2.23)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【出願人】(598033147)株式会社感光社 (3)
【Fターム(参考)】