説明

防草基材、及び防草基材を用いた緑化工法

【課題】多大な労力やコストをかけることなく、施工面を所望の植物で緑化すると共に、当該施工面における雑草の繁茂を防ぐ技術を提供することを目的とする。
【解決手段】雑草の生長を防除しつつ、所望の植栽植物により施工面を緑化するシート状の基材であって、扁平な糸1aと、扁平な糸1bとからなり、糸1aは、糸1bよりも厚手且つ幅広に構成され、糸1bは、糸1aよりも薄手且つ幅狭に構成され、糸1aと糸1bとが交互に交錯して編み込まれたことを特徴とする防草基材1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工面を緑化すると共に、雑草を防除する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、山地・平地を問わず、膨大な土地の管理が行われてきた。しかしながら、その労力並びに経済的負担は計り知れないものがあり、特に雑草の防除に費やされる労力やコスト等は甚大である。
そこで、雑草を防除するために、様々な技術が提供されてきたが、環境保護・コストや労力の削減等の問題は解消されていないままである。
【0003】
例えば、特許文献1では、所定厚さの矩形状の本体部と、前記本体部の隣接する2つの上面を所定幅だけ延設して形成された上面段差部と、前記上面段差部が形成された辺部以外の2つの辺部に前記上面段差部と同じ幅だけ下面を延設して形成された下面段差部とを備え、前記上面段差部及び下面段差部の厚さの合計値は前記本体部の厚さとほぼ同じとなるように設定された緑化用板状パネル材が提供されている。また、当該緑化用板状パネルを複数枚平面状に配列し、隣接する前記緑化用板状パネル材の上面段差部及び下面段差部が所定長だけずらして重合した状態となるように敷設されており、このようにずらすことで形成された空き領域を植栽領域とするパネル構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−307026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、緑化用板状パネルを隙間なく敷き詰めた場合には、雑草が生える余地はなくなるが、緑化するスペースまでなくなってしまう。一方、隙間を形成してこれを植栽領域とした場合には、当該隙間から雑草が生え、これを管理する必要があることから、緑化と雑草の防除という課題を何ら解決できない。
【0006】
この点に関し、本発明は、多大な労力やコストをかけることなく、施工面を所望の植物で緑化すると共に、当該施工面における雑草の繁茂を防ぐ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る防草基材は、雑草の生長を防除しつつ、所望の植栽植物により施工面を緑化するシート状の基材であって、扁平な第一の糸と、扁平な第二の糸とからなり、上記第一の糸は、上記第二の糸よりも厚手且つ幅広に構成され、上記第二の糸は、上記第一の糸よりも薄手且つ幅狭に構成され、上記第一の糸と上記第二の糸とが交互に交錯して編み込まれたことを特徴とする。
【0008】
また、上記第一の糸は緯方向に編み込まれ、上記第二の糸は経方向に編み込まれているものとしてもよい。
【0009】
また、本発明の別の観点に係る緑化工法は、上記防草基材により、施工面を緑化する工法であって、上記施工面上に、上記防草基材を敷設する工程と、上記防草基材に、上記植栽植物の種子又は生体を配する工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記防草基材上に、一定の間隙を形成、維持する間隙形成基材を敷設する工程、をさらに有し、上記植栽植物の種子又は生体は、上記防草基材上に敷設された上記間隙形成基材上に配するものとしてもよい。
【0011】
また、上記植栽植物の種子又は生体に密接して、水分を保持した吸水性担体を配置する工程、をさらに有するものとしてもよい。
【0012】
また、上記防草基材と上記施工面との間に、水分を保持した吸水性ポリマーを配する工程、をさらに有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、施工面の所望の植物で緑化することが出来ると共に、特段の労力やコストをかけずとも、雑草の繁茂を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る防草基材を示した外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る緑化工法に用いる基材の敷設の仕方を示した模式図である。
【図3】本実施形態に係る緑化工法に用いる間隙形成基材を示した外観斜視図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る防草基材を示した外観斜視図である。
【図5】本発明の参考例に係る防草基材を示した(a)外観斜視図で、及び(b)側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る防草基材1を示した図である。
防草基材1は、緑化を施す施工面上において、植栽植物が根を生やして繁茂するのを許容する一方、施工面から伸長してくる雑草の繁茂を防除する基材である。
この防草基材1は、複数本の糸1aと糸1bとが、緯方向ないし経方向に格子状ないしは網目状に編み込まれると共に、交互に交錯している。
【0016】
糸1aは、糸1bに比して、厚手で、幅広な扁平糸である。
糸1aの素材としては例えば、ポリプロピレンなどの各種高分子材料を用いることができるが、とりわけポリ乳酸等の生分解性の高分子材料を用いれば、環境にやさしく好適である。
【0017】
糸1bは、糸1aに比して、薄手で幅狭な扁平糸である。
糸1bの素材も糸1aと同様に、ポリプロピレンなどの各種高分子材料を用いることができるが、とりわけポリ乳酸等の生分解性の高分子材料を用いれば、環境にやさしく好適である。
【0018】
このような糸1aと糸1bは、交互に交錯して織り込まれ、全体としてシート形状の防草基材1を形成する。ここで、糸1aと糸1bを編み込んで構成される防草基材1の網目の大きさは、例えば1mm程度である。
また、隣り合う糸1aないしは糸1b同士の間であって、一の糸1aないしは糸1bが、別の糸1aないしは糸1bに潜り込む部分には、水平方向に僅かな隙間が形成されている。
【0019】
以上の構成からなる防草基材1は、緑化を図る施工面上に敷設され、所望の植栽植物の生体又は種子が防草基材1上にまかれる。
施工面から伸び出る雑草は、真っ直ぐ直上に伸びようとするが、糸1aと糸1bとによって形成されたシート状の面にぶつかって、伸長を妨げられる。
一方、防草基材1上の植栽植物の根は、直下のみならず、水平方向など多方向に伸び出るため、糸1aと糸1bとによって形成された水平方向の隙間を介して、あるいはこの隙間を押し広げて、防草基材1下面へ伸長し、施工面に根を下ろすことができる。
【実施例2】
【0020】
本実施形態は、上述の防草基材1を用いた緑化工法である。
本実施形態に係る緑化工法は、緑化したい場所を施工面2として、この施工面2上に、ウールマット3、上述した防草基材1、間隙形成基材4を順次、積層させ、さらにその上に、植栽を所望する植物(以下、「植栽植物」という)の生体5を吹き付ける。
なお、植栽植物の生体5は適宜、吸水性ポリマー7と共に、シート6で挟み込む。
【0021】
施工面2は例えば、土壌、砂利や砕石等が堆積した地面等である。この施工面2には、本実施形態に係る緑化工法の実施により、最終的に、植栽植物の根が当該施工面2に根を伸長させる。
【0022】
ウールマット3は、植栽植物の成形培地である。このウールマット3は例えばロックウールマットであり、ケイ酸等を主成分とした岩石を高温溶融した後に繊維状にし、シート状に成型したものである。
【0023】
間隙形成基材4は、飛来してくる雑草の種子により、雑草が繁茂するのを防ぐために用いられるシート状の基材である。
この間隙形成基材4は、図3に示されるように、小さな孔4aが全面に設けられている。また、一定の厚みを有している。
【0024】
全面に設けられた孔4aは、飛来してくる各種の雑草の種子が貫通不可能な程度に、目が細かく作られている。
【0025】
間隙形成基材4は、保水性のない素材によって構成されている。具体的には、ナイロン系の樹脂が用いられる。
【0026】
このような構成からなる間隙形成基材4を敷設することで、間隙形成基材4上に、飛来してきた雑草の種子が着地した場合であっても、孔4aを通過して施工面2に到達しない。この結果、施工面2上で、当該飛来してきた種子により雑草が繁茂するのが防がれる。
また、間隙形成基材4が、一定の厚みを有し、保水性のない素材で構成されていることから、施工面2から毛管現象によって水が伝うことがない。そのため、間隙形成基材4上に着地した種子に、施工面2から水分が供給されず、種子の発芽が妨げられる。
【0027】
植栽植物の生体5は、生長した植物そのものや、当該植物の根や茎などであり、いわゆる株分けによって植栽植物を繁茂させる。
なお、本実施形態においては、植栽植物の繁茂は生体によるのが好適であるが、これに限らず、植栽植物の種子を用いることもできる。
また、植栽植物の種類は特に限定されるものではないが、いわゆるグランドカバーとしては、生長が早く耐踏性に優れたリピアが好適である。
【0028】
シート6は、植栽植物の生体5を吸水性ポリマー7と共に挟み込む遮水性のシートである。このシート6としては例えば、ゴムシートあるいは塩ビシート、ポリエステル製の不織布などを用いることができる。
この吸水性ポリマー7を敷設することで、吸水性ポリマー7に保持された水分は、シート6間にのみにとどまり、シート6に挟み込まれた植栽植物の生体5のみに利用される。また併せて、吸水性ポリマー7に保持された水分が漏れ出て、雑草の繁茂を助長するのを防ぐことができる。
なお、シート6には、植栽植物の芽が外部へ伸長するのを妨げないように、あるいは、他の箇所において成長した植栽植物のランナー(匍匐枝)が施工面2に根を生やせるように、適所に複数の小さな孔を設けておいてもよい。
また、シート6は、植栽植物の生体5の生長を阻害する紫外線を遮断する性能を有するものとしてもよい。紫外線の遮断のみを要する場合には、植物の生体5を上下から挟み込まなくとも、植物の生体5の上側のみを、紫外線を遮断するシート6で覆うものとすればよい。この場合においても、シート6の適所に複数の小さな孔を設け、植栽植物の芽が外部へ伸長するのを妨げないように、あるいは、他の箇所において成長した植栽植物のランナー(匍匐枝)が施工面2に根を生やせるようにしておくとよい。
【0029】
吸水性ポリマー7は、水溶性モノマーの重合体であって、例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、カルボキシメチルセルロース架橋体、架橋ポリアクリル酸(塩)、アクリル酸(塩)−ビニルアルコール共重合体および架橋ポリエチレンオキシド等である。
この吸水性ポリマー7により水分を保持して、植栽植物の生体5の生長を促すことが出来る。
【0030】
以上の各基材を積層させた緑化工法によれば、植栽植物の生体5は、吸水ポリマー7から水分の供給を受けて根を生やすと、防草基材1の下面へ根を伸ばして、ウールマット3及び施工面2上において根を繁茂させ、生長する。これに対して、雑草は、防草基材1に伸長を妨げられて、繁茂が抑制される。
【実施例3】
【0031】
また、上述した防草基材1の他の例を図4に示す。
以下、本発明の実施形態について図を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る防草基材8を示した図である。
防草基材8は、緑化を施す施工面上において、植栽植物が根を生やして繁茂するのを許容する一方、施工面から伸長してくる雑草の繁茂を防除する基材である。
この防草基材8は、前述した防草基材1と異なり、複数本の緯糸8aと経糸8bとが夫々、緯方向ないし経方向に格子状ないしは網目状に編み込まれると共に、交互に交錯している。
【0032】
緯糸8aは、経糸8bに比して、厚手で、幅広な扁平糸であり、緯方向に編み込まれている。
緯糸8aの素材としては例えば、ポリプロピレンなどの各種高分子材料を用いることができるが、とりわけポリ乳酸等の生分解性の高分子材料を用いれば、環境にやさしく好適である。
【0033】
経糸8bは、糸1aに比して、薄手で幅狭な扁平糸であり、経方向に編み込まれている。
経糸8bの素材も緯糸8aと同様に、ポリプロピレンなどの各種高分子材料を用いることができるが、とりわけポリ乳酸等の生分解性の高分子材料を用いれば、環境にやさしく好適である。
【0034】
このような緯糸8aと経糸8bは、交互に交錯して織り込まれ、全体としてシート形状の防草基材8を形成する。ここで、緯糸8aと経糸8bを編み込んで構成される防草基材8の網目の大きさは、例えば1mm程度である。
また、隣り合う緯糸8aないしは経糸8b同士の間であって、一の緯糸8aないしは経糸8bが、別の経糸8bないしは緯糸8aに潜り込む部分には、水平方向に僅かな隙間が形成されている。
【0035】
以上の構成からなる防草基材8は、緑化を図る施工面上に敷設され、所望の植栽植物の生体又は種子が防草基材8上にまかれる。
施工面から伸び出る雑草は、真っ直ぐ直上に伸びようとするが、緯糸8aと経糸8bとによって形成されたシート状の面にぶつかって、伸長を妨げられる。
一方、防草基材8上の植栽植物の根は、直下のみならず、水平方向など多方向に伸び出るため、緯糸8aと経糸8bとによって形成された水平方向の隙間を介して、あるいはこの隙間を押し広げて、防草基材8下面へ伸長し、施工面に根を下ろすことができる。
【0036】
<参考例>
また、上述した防草基材1の他の例を図5に示す。
図5(a)及び(b)に示されるように、防草基材9は、幅方向に湾曲した略平板長尺状の構成部材91を複数、側端部を幅方向に順次重ね合わせてなる。
側端部には、縫着孔91aが設けられており、縫着孔91aを介して、隣り合う構成部材91同士が糸92で縫着されている。なお、各構成部材91は、凸面側ないし凹面側を同一の方向に向けて縫着されている。
【0037】
防草基材9は、各構成部材91の湾曲凸面側を施工面2に向けて敷設され、また、各構成部材91の湾曲凹面側に、間隙形成基材4を介して植栽植物の生体5がまかれる。
このように敷設された防草基材9によれば、施工面2から伸び出る雑草は、各構成部材91の凸面側にぶつかるが、雑草が構成部材91を押し上げる力は、各構成部材91内において圧縮応力に変わる。この結果、施工面2から伸び出した雑草は施工面2へ押し戻される。
一方、各構成部材91に凹面側にまかれた植栽植物の根は、水平方向から各構成部材91の間を押し広げて防草基材9の下面へ伸び出し、施工面2へ到達する。
以上により、雑草が繁茂を防ぎつつ、所望の植栽植物により施工面2を緑化することができる。
【0038】
なお、上記防草基材9は、略平板長尺状の構成部材91を用いたが、これに限らず、中心部に向かって一面側に凹部を形成し、他面側に凸部を形成するように湾曲した略楕円形の舌片状の構成部材を用いるものとしてもよい。このような構成部材を複数、千鳥格子状に端部を順次重ね合わせることにより、防草基材9と同様に、一面側が凸部からなり、他面側が凹部からなる防草基材を構成することができ、防草基材9と同様の効果を奏することができる。
【0039】
<付記>
雑草の生長を防除しつつ、所望の植栽植物により施工面を緑化する防草基材であって、施工面に向けられる湾曲凸面と、上記植栽植物の種子又は生体が配される湾曲凹面とを備え、幅方向に湾曲した略平板長尺状の構成部材、を複数有し、上記構成部材は、側端部を幅方向に順次重ね合わせてなる、ことを特徴とする防草基材。
また、上記構成部材は、側端部同士が縫着されているものとしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 防草基材
1a 緯糸
1b 経糸
2 施工面
3 ウールマット
4 間隙形成基材
4a 孔
5 植栽植物の生体
6 シート
7 吸水性ポリマー
8 防草基材
8a 緯糸
8b 経糸
9 防草基材
91 構成部材
91a 縫着孔
92 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑草の生長を防除しつつ、所望の植栽植物により施工面を緑化するシート状の基材であって、
扁平な第一の糸と、扁平な第二の糸とからなり、
上記第一の糸は、上記第二の糸よりも厚手且つ幅広に構成され、
上記第二の糸は、上記第一の糸よりも薄手且つ幅狭に構成され、
上記第一の糸と上記第二の糸とが交互に交錯して編み込まれた、
ことを特徴とする防草基材。
【請求項2】
上記第一の糸は緯方向に編み込まれ、
上記第二の糸は経方向に編み込まれている、
請求項1記載の防草基材。
【請求項3】
上記請求項1又は2記載の防草基材により、施工面を緑化する工法であって、
上記施工面上に、上記防草基材を敷設する工程と、
上記防草基材に、上記植栽植物の種子又は生体を配する工程と、を有する、
ことを特徴とする緑化工法。
【請求項4】
上記防草基材上に、一定の間隙を形成、維持する間隙形成基材を敷設する工程、をさらに有し、
上記植栽植物の種子又は生体は、上記防草基材上に敷設された上記間隙形成基材上に配する、
請求項3記載の緑化工法。
【請求項5】
上記植栽植物の種子又は生体に密接して、水分を保持した吸水性担体を配置する工程、をさらに有する、
請求項3又4記載の緑化工法。
【請求項6】
上記防草基材と上記施工面との間に、水分を保持した吸水性ポリマーを配する工程、をさらに有する、
請求項3乃至5いずれかの項に記載の緑化工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−10613(P2012−10613A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147921(P2010−147921)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(399039719)東日本電気エンジニアリング株式会社 (30)
【出願人】(500549261)株式会社ガーデン二賀地 (11)
【Fターム(参考)】