説明

防草材及びポリマーチップを用いた防草方法

【課題】極めて容易に土壌に適用することができ、しかも風雨により劣化したり、流失することなく長期間に亘って防草効果を発揮する防草材及び防草方法を提供する。
【解決手段】土砂と、土砂と同等の又はそれ以上の嵩密度である0.9〜2.0g/cmのポリマーチップとを混合してなる防草材であって、ポリマーチップの含有率を15〜70重量%としたことを特徴とする防草材と、この防草材を、地表面を被覆するように散布することを特徴とする防草方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土砂と、ポリマーチップを予め混合してなる防草材及びポリマーチップを用いた防草方法に関する。
【背景技術】
【0002】
露出した地面には雑草が自然に生えて美観を害する。また、雑草は害虫の住処となり、虫害の原因ともなる。このような理由から定期的に刈り取りや草抜き、除草剤によって除草が行われている。刈り取り作業や、草抜き作業はかなりの重労働であるし、除草剤は環境汚染の原因となるという問題ある。
【0003】
このような問題を解決するために、歩行路、公園、庭などの地面をアスファルトやセメントで舗装したり、特許文献1のように土の上にシート、マットを敷いたり、砂利を敷き詰めるなどして、防草していた。しかし、アスファルトやセメントで舗装したり、砂利を敷き詰めたりしてしまうと衝撃吸収性がなく、転倒すると怪我をするおそれがあった。シートやマットを使用する場合は、メクレや浮き上がりが問題となるし、経時的にシート等が縮み、シート間に隙間が生じるという問題があった。シートの浮き上がりを固定ピンなどの固定具で防ごうとすると、転倒の原因になるなどして好ましくなかった。さらには、固定具を適用した箇所からシートが破断し、防草効果が損なわれるという問題があった。
【0004】
一方で、競馬場やグラウンドの土砂に高比重のゴムチップを混合することで、地面にクッション性を付与する技術が特許文献2に開示されている。特許文献2のゴムチップは硫酸バリウムを添加することにより、ゴムチップの比重を土砂の比重と近似させて分離し難くするものである。特許文献2には、防草効果に関しては記載されておらず、どの程度の量のゴムチップを土砂に混合するのかも不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−107353号公報
【特許文献2】特開2001−241008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、極めて容易に土壌に適用することができ、しかも風雨により劣化したり、流失することなく長期間に亘って防草効果を発揮する防草材及び防草方法を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、土砂と、土砂と同等の又はそれ以上の嵩密度である0.9〜2.0g/cmのポリマーチップとを混合してなる防草材であって、ポリマーチップの含有率を15〜70重量%としたことを特徴とする防草材と、この防草材を、地表面が被覆されるように散布することを特徴とする防草方法により上記の課題を解決する。
【0008】
上記の防草方法において、土砂とポリマーチップを予め混ぜるのではなく、適用する土壌中の土砂にポリマーチップを耕運機ですき込む方法によっても上記の課題を解決することができる。すなわち、土壌中の土砂と同等の又はそれ以上の嵩密度である0.9〜2.0g/cmのポリマーチップを、該ポリマーチップの含有率が15〜70重量%となるように地表面に散布して、耕運機ですき込むことにより土壌中の土砂と混合することを特徴とする防草方法である。
【0009】
本発明の防草材に使用するポリマーチップは、土砂と同等の又はそれ以上の嵩密度を持たせることにより、経時的に比重分離が生じないように構成する。ポリマーチップは、ポリマー成分と、充填剤とからなり、相対的に比重の小さいポリマー成分に、相対的に比重の大きい充填剤を加えて比重を調節する。土砂の種類によって嵩密度が変動するため、ポリマーチップの嵩密度を特定することは困難であるが、排水性に優れ運動場の土や庭土として多用される真砂土(嵩密度1.6程度)や、その他の土砂は嵩密度が概ね1.3〜2.0g/cmの範囲であるので、ポリマーチップの真密度を1.2〜3.0g/cm、好ましくは真密度を2.5〜3.0g/cmとし、粒子径や粒子の形状を変えることで、土砂とポリマーチップの嵩密度を同等にする。ここでいう同等とは、土砂の嵩密度1.3〜2.0g/cmに対して、ポリマーチップの嵩密度が0.9〜2.0g/cmの範囲であり、より好ましくは、1.3〜2.0g/cmの範囲である。嵩密度が0.9〜1.3g/cm未満の範囲では、一般的な土砂の嵩密度を下回るが、この程度の差であれば許容される。更に好ましくは、1.3〜2.0g/cmの範囲で土砂と、ポリマーチップの嵩比重が一致するようにするとよい。
【0010】
ポリマーチップは混合する土砂と同等の平均粒径とすることが好ましい。土砂の種類によって平均粒径が変動するため、ポリマーチップの平均粒径を特定することは困難であるが、排水性に優れ運動場や庭土として多用される真砂土を想定した場合、0.1〜20mmの間で調節することが好ましい。混合する土砂と同等の粒子径とすることで混合が容易となり、また分離も起きにくい。さらに景観上も土砂の粒子径とそろえることで違和感がなくなる。
【0011】
上記のポリマー成分としては、チップ形状に成形することができる高分子化合物を使用する。高分子化合物の中でも、ゴム、熱可塑性エラストマー、及び熱可塑性樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の混合物は成形が容易であるので、これらを使用することが好ましい。中でも熱可塑性エラストマーはクッション性に富み、しかも再溶融によるポリマーチップの再利用が容易であるので特に好ましい。
【0012】
本発明のポリマーチップは、土砂と混合するものであるから、原則として老化防止剤は必要ない。しかし、地表付近のポリマーチップを紫外線等から保護するために老化防止剤を添加してもよい。また、ポリマーチップがゴムである場合は、硫黄や過酸化物を含む加硫を添加する。加硫を行う場合は、加硫時間を短縮させるための加硫促進剤及び加硫促進助剤を添加してもよい。
【0013】
上記の充填剤は、ポリマーチップよりも相対的に比重が大きい物質を使用する。そのような物質の中でも酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムは2.4〜5.5g/cmと密度が大きく、土中に埋設しても有害成分が出ないので、これらの化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上の混合物を充填剤として使用することが好ましい。このような物質により土砂とポリマーチップの嵩密度を同等又はそれ以上とすることで、土砂とポリマーチップが分離したり、雨水などによりポリマーチップが流失してしまうことを防ぐことができる。上記酸化マグネシウムは水と反応して水酸化マグネシウムとなることで、親水性を高め雨水によるポリマーチップの流失を防ぐ効果が特に高く好ましい。したがって、充填剤の主成分を酸化マグネシウムとすることが好ましい。
【0014】
上記のポリマーチップは、その含有率が15〜70重量%となるように、予め土砂と混ぜ合わせて防草材とし、それを地表面に散布するようにしてもよいし、上記のポリマーチップの含有率が15〜70重量%となるように地表面に撒いて、土壌の土砂と混合してもよい。後者の場合は、土砂とポリマーチップの混合は耕運機で行うと簡便かつ、確実に土砂とポリマーチップを混合することができる。耕運機を使用すれば、回転刃(ロータリー)の深さを変えることで容易にポリマーチップの埋設深度を容易に調整することができる。ポリマーチップの埋設深度は1cm以上、より好ましくは3cm以上とすることが好ましい。これより埋設深度が小さいと、防草効果が十分でなくなるためである。防草効果の観点からは特に埋設深度の上限はないが、埋設深度を深くし過ぎると、コスト増となるので、12cmまでとするのが好ましい。ポリマーチップと土砂を予め混合してなる防草材の場合も同様に地表面から1〜12cm、より好ましくは3〜12cmの厚みとなるように防草材を散布することが好ましい。
【0015】
本発明のポリマーチップに顔料等を添加して着色してもよい。緑や赤色等に着色することにより土地を用途毎に区画したり、目印としたり、また、敷設箇所に意匠性を持たせることができる。
【0016】
本発明の防草方法において、土砂とポリマーチップの混合比率が互いに異なる層を複数設け、下層のポリマーチップの混合比率よりも、上層におけるポリマーチップの混合比率を高めに設定する防草方法としてもよい。これにより、単一層の場合と比較して、より少ないポリマーの添加量で同等の防草効果を得ることが可能になる。結果、ポリマーチップの混合量が少なくて済むため、コスト低減を図ることが可能である。上述のように嵩密度を0.9〜1.3g/cm未満とすると、自然に比重分離が進むため、この範囲では下層のポリマーチップの混合比率よりも、上層におけるポリマーチップの混合比率を高めにすることができる。しかも、この嵩密度の範囲内であれば、ポリマーチップと土砂は完全に分離することなく、表層付近ではポリマーチップと土砂の混合比率が高めに、地中では、混合比率が低めとなった状態が維持されるので、風雨によりポリマーチップが流失し難く、また、紫外線の影響も受け難い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防草材は、土砂と分離し難く、長期間に亘って防草効果を維持することができる。すなわち、ポリマーチップと土砂が混合された状態を維持することができるので、ポリマーチップが地表に浮き上がることがない。したがって、雨水によりポリマーチップが流失してしまうことがないし、直射日光によりポリマーチップが劣化してしまうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例の防草効果の確認試験方法を模式的に示した図である。
【図2】土砂とポリマーチップの混合物中のポリマーチップの含有率を変化させたときの防草効果の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
本発明の防草材は、土砂と、土砂と同等の又はそれ以上の嵩密度を有するポリマーチップとを混合してなるものである。ポリマーチップは、ポリマー成分と、土砂と密度を同等又はそれ以上にさせる充填剤とからなる。
【0021】
土砂とポリマーチップを予め混合する場合において、混合する土砂としては、砂、礫、粘土、団粒土(腐葉土)又はそれらの混合物等あらゆる土砂が利用可能である。これらのうち、花崗岩が風化してできた真砂土、特に粘土分の少ないものが排水性に優れ、ポリマーチップと土砂との分離が生じにくく好ましい。
【0022】
ポリマー成分としては、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂の何れか又はそれらの2種以上の混合物を使用することが好ましい。
【0023】
ゴムとしては、加硫可能であるゴムを使用することが好ましい。加硫することによってその弾性が向上するとともに強度が向上するためである。加硫可能なゴムとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、エチレンプロピレン共重合体(EPM)、エチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)、クロロスロホン化ポリエチレン(CSM)が挙げられる。これらのうち少なくともいずれか1種類だけを採用してもよいし、あるいは任意の複数種類を組み合わせてもよい。
【0024】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系(TPS)、オレフィン系(TPO)、ポリ塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、ポリウレタン系(TPU)及びアミド系(TPA)の熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0025】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド等の汎用樹脂が挙げられる。
【0026】
ゴムを加硫させるための加硫剤は、硫黄や過酸化物等を用いることができ、これらのうち1種類だけを採用してもよいし、あるいは任意の複数種類を組み合わせてもよい。
【0027】
加硫促進剤としては、グアニジン系、アルデヒドアンモニア系、アルデヒドアミン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系を加硫促進助剤としてステアリン酸などの脂肪酸、酸化亜鉛などの金属酸化物を用いることができ、これらのうち1種類だけを採用してもよいし、あるいは任意の複数種類を組み合わせてもよい。
【0028】
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、ワックスなどを用いることができ、これらのうち1種類だけを採用してもよいし、あるいは任意の複数種類を組み合わせてもよい。
【0029】
ポリマー成分としてゴムを使用する場合は、例えば次の要領でポリマーチップを製造する。ゴムに、加硫剤及び充填剤を添加してバンバリーミキサー、ニーダー又はロール等を用いて混練りした後、粉砕しやすい形状にし、加熱することにより加硫ゴムを得る。その加硫ゴムの成形体を回転式粉砕機などで粉砕し、メッシュなどを用いてふるい分けして任意の粒子径のポリマーチップを得る。
【0030】
ポリマー成分として熱可塑性エラストマー又は熱可塑性樹脂を使用する場合は、例えば次の要領でポリマーチップを製造する。熱可塑性エラストマー又は熱可塑性樹脂と充填剤を押し出し機に投入し、粉砕しやすい形状に押し出し成形する。その後、その成形体を回転式粉砕機などで粉砕し、メッシュなどを用いてふるい分けして任意の粒子径のポリマーチップを得る。
【0031】
上記ポリマーチップを直接敷設箇所に散布した後、耕耘機(トラクターを含む)などで直接土壌と混合するか、ポリマーチップの含有率が15〜70重量%となるようにポリマーチップをあらかじめ混合しておいて、敷設箇所に敷き詰めることで防草することができる。
【実施例】
【0032】
次に実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
【0033】
ポリマー成分と充填剤を表1に示す比率で配合して実験例1〜5に係るポリマーチップを作製した。
【0034】
実験例1は、ポリマー成分としてゴム(天然ゴム)を使用し、ゴムチップとしたものである。ゴムチップの製造は、以下のようにして行った。バンバリーミキサーに表1に示した天然ゴム、それぞれの充填剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、及び顔料を投入し混練りし、成形装置でシート状に成形した。これを加硫窯に入れて120℃にて60分間加硫した。これを回転式粉砕機で粉砕し、篩にかけて平均粒径が3mmのゴムチップを得た。ゴムチップの嵩密度をJIS K7365の試験法で計測したところ1.7g/cmであった。加硫剤としては硫黄を使用し、加硫促進剤としては2−メルカプトベンゾチアゾールを使用し、加硫促進助剤としてはステアリン酸を使用し、老化防止剤としては2−6ジターシャリブチル−4−メチルフェノールを使用し、顔料としてはフタロシアニングリーンを使用した。
【0035】
実験例2は、ポリマー成分として熱可塑性エラストマー(SEPS)を使用し、エラストマーチップとしたものである。エラストマーチップの製造は、以下のようにして行った。樹脂成型用の押し出し機に、表1に示したそれぞれの充填剤、老化防止剤、及び顔料を投入し230℃で加熱しながらダイスから押し出して、シート状に成形した。これを回転式粉砕機で粉砕し、篩にかけて平均粒径が3mmのエラストマーチップを得た。エラストマーチップの嵩密度をJIS K7365の試験法で計測したところ1.5g/cmであった。老化防止剤としては2−6ジターシャリブチル−4−メチルフェノールを使用し、顔料としてはフタロシアニングリーンを使用した。
【0036】
実験例3は、ポリマー成分として熱可塑性樹脂(PP)を使用し、プラスチックチップとしたものである。プラスチックチップの製造は、以下のようにして行った。樹脂成型用の押し出し機に、表1に示したそれぞれの充填剤、老化防止剤、及び顔料を投入し210℃で加熱しながらダイスから押し出して、シート状に成形した。これを回転式粉砕機で粉砕し、篩にかけて平均粒径が3mmのプラスチックチップを得た。プラスチックチップの嵩密度をJIS K7365の試験法で計測したところ1.5g/cmであった。老化防止剤としては2−6ジターシャリブチル−4−メチルフェノールを使用し、顔料としてはフタロシアニングリーンを使用した。
【0037】
実験例4は、実験例1のゴムチップにおいて硫酸バリウムに代えて酸化マグネシウムを増量した以外は、実験例1と同じ組成及び製造方法で製造したゴムチップである。ゴムチップの嵩密度をJIS K7365の試験法で計測したところ1.5g/cmであった。
【0038】
実験例5は、対象実験のために用意した比較例であり、比重を調整する充填剤を全く添加していない汎用のゴムチップである。顔料及び補強材としてのカーボンブラックを60重量部、添加してある。加硫剤として硫黄、加硫促進剤として2−メルカプトベンゾチアゾールを、加硫促進助剤として酸化亜鉛、ステアリン酸を、老化防止剤としてN-1,3ジメチルブチル−N’−フェニル−P−フェニレンジアミンを、軟化剤としてナフテン系プロセスオイルを使用した。ゴムチップの嵩密度をJIS K7365の試験法で計測したところ0.8g/cmであった。
【0039】
【表1】

【0040】
[実施例1]
園芸用の真砂土(嵩密度1.5g/cm)を用意し、この真砂土に実験例1のゴムチップを5〜100%の割合で混合して防草材とした。
【0041】
上記の防草材の防草効果を以下の要領で検討した。まず、図1の模式図に示したように圃場を50cm×50cmの大きさに区画し、各区画1に同量のシロイヌナズナの種子2を撒いた。各区画に上記の5〜100%の割合でポリマーチップの含有率を変化させた防草材を撒いてシロイヌナズナを栽培した。防草材は地表に厚み5cmの防草材の層ができる程度に撒いた。3ヶ月が経過した時点で刈り取り、区画ごとにシロイヌナズナの生重量を計測した。測定結果を図2のグラフに示す。実験は実験例1〜4のポリマーチップを用いた防草材について独立に行った。比較のために実験例5についても実験例1と同様の条件で実験を行った。測定結果を図2のグラフに示す。
【0042】
図2のグラフから明らかなように、ゴムチップの含有率が15重量%程度でシロイヌナズナの防草効果が増大し、70重量%で防草効果が飽和状態に達した。グラフの見やすさを考慮して図示は省略するが、実験例2のエラストマーチップ、実験例3のプラスチックチップ、及び実験例4のゴムチップでも同様の変曲点が観察された。この結果から、土砂に対してポリマーチップを15〜70重量%配合することが好ましく、より好ましくは30〜70重量%配合することが好ましいことが分かった。70重量%以上ポリマーチップを配合してもよいが、防草効果が飽和するためゴムチップの敷設に要するコストに見合う防草効果が得られない。
【0043】
比較対象の実験例5では、雨にさらされるうちにゴムチップが地表に現れて、流失したり、風に吹かれて失われたりして、十分な防草効果が得られなかった(図2)。
【0044】
[実施例2]
次に、実験例1〜5のポリマーチップを直接、土壌に散布して耕運機ですき込む方法により防草効果が得られるか否かを確認した。まず、試験を行う空き地の土壌の嵩密度を確認したところ1.3g/cmであった。次に空き地に生えている雑草を引き抜き、実験例1〜5のポリマーチップを散布するために50×50cmに区画した。各区画の雑草は抜き去ったが、土壌は入れ替えず雑草の種子が残存するようにした。次に、ポリマーチップの含有率が60重量%となるように実験例1〜5のポリマーチップを各区画に24.375kgずつ散布した。本例では耕運機のすき込み深さを5cmに設定し、1区画は50×50cmであるから、土壌の容量は約16.25kgである。各区画に撒かれたポリマーチップを耕運機でそれぞれの区画にすき込んだ。
【0045】
7か月経過後、区画された空き地の様子を目視で確認し、雑草の生え具合を確認した。実験例1〜4のポリマーチップを撒いた何れの区画においても、雑草はほとんど生えておらず、耕運機によるすき込みによっても本発明の防草効果が発揮されることが確認された。なかでも充填剤として酸化マグネシウムを使用した実験例4は、雨水によってポリマーチップが地表面に浮き上がることが最も少なく、防草効果が優れていた。それに対して、実験例5では雑草が茂り、防草効果が発揮されなかった。土壌を調べたところ、風雨によりゴムチップの大半が流失しているのが確認された。
【0046】
本発明の防草材は、土砂と混合されているので、直射日光にさらされることがない。したがって、従来公知のゴムシートや、マルチング材のように紫外線による劣化の問題が生じることがない。現に実施例2における実験例1〜4のポリマーチップの様子を確認したところ、実験例1、2及び4においては弾力性が維持されていた。実験例3においては樹脂の健全性が維持されていた。一方、土壌表面にわずかに残っていた実験例5のゴムチップを確認したところ、紫外線で劣化していた。
【0047】
実施例1で示した予め土砂とポリマーチップを混合してなる防草材は、防草したい土壌に撒くだけであるので手軽であり、ホームセンター等の一般消費者用に最適である。実施例2で示したポリマーチップの防草方法は、単位体積当たりの重量が小さく、ポリマーチップの輸送コストが抑えられるため業務用に最適である。
【0048】
[実施例3]
実施例1と同様の方法により、ポリマー成分としてゴム(天然ゴム)を使用して、表2の組成の加硫ゴムシートを得た。これを粉砕し、篩にかけて平均粒径が3mmの本発明に係るゴムチップを得た(実験例6)。ゴムチップの嵩密度をJIS K7365の試験法で計測したところ1.1g/cmであった。
【0049】
【表2】

【0050】
このゴムチップの含有率が50重量%となるように、園芸用の真砂土(嵩密度1.5g/cm)と混合して防草材とした。この防草材を、実施例2と同様の方法で、いったん雑草を除去した空き地に撒いて、防草効果を確認した。防草材は地表に厚み2cmの層ができる程度に捲いた。
【0051】
実験例6のゴムチップは、真砂土よりも嵩密度が低いため、時間が経過するにしたがってゴムチップが地表付近に移動した。しかし、地表付近でゴムチップの含有率は約70重量%程度に維持されており、ゴムチップと真砂土が完全に分離するには至らず、防草効果が発揮された。地表面付近でゴムチップの含有率が高まるため、結果として少ないゴムチップの混合量で十分な防草効果が得られた。ゴムチップの状態を確認したところ、弾力が維持されており、紫外線により劣化したような様子はなかった。
【符号の説明】
【0052】
1 区画
2 種子




【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂と、土砂と同等の又はそれ以上の嵩密度である0.9〜2.0g/cmのポリマーチップとを混合してなる防草材であって、ポリマーチップの含有率を15〜70重量%としたことを特徴とする防草材。
【請求項2】
ポリマーチップは、ゴム、熱可塑性エラストマー、及び熱可塑性樹脂からなる群より選ばれた1種又は2種以上の混合物からなるポリマー成分と、
酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムからな
る群より選ばれた1種又は2種以上の混合物からなる充填剤と、からなる請求項1に記載
の防草材。
【請求項3】
土砂と、土砂と同等の又はそれ以上の嵩密度である0.9〜2.0g/cmのポリマー
チップとを混合してなる防草材であって、ポリマーチップの含有率を15〜70重量%と
した防草材を、
地表面が被覆されるように散布することを特徴とするポリマーチップを用いた防草方法。
【請求項4】
土壌中の土砂と同等の又はそれ以上の嵩密度である0.9〜2.0g/cmのポリマーチップを、該ポリマーチップの含有率が15〜70重量%となるように地表面に散布して、耕運機ですき込むことにより土壌中の土砂と混合することを特徴とするポリマーチップを用いた防草方法。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−36322(P2013−36322A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153059(P2012−153059)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【出願人】(300091669)株式会社ニチマンラバーテック (2)
【Fターム(参考)】