説明

防虫カバー

【課題】 前面に大きなスペースを確保することができない場合であっても、衣類を容易に取り出すことができる防虫カバーを提供する。
【解決手段】 カバー本体11前面21に、中心Cより左側部側に上縁12から下縁27に渡って上下に延在するスリット61を形成し、カバー本体11内のハンガー2に掛けられた衣類を取り出す為の取出口62を形成できるように構成する。カバー本体11の前面21を、スリット61を境とする左方側の左方領域63と右方側の右方領域64とに区画し、左方領域63の幅寸法65を、右方領域64の幅寸法66より狭くなるように構成する。この取出口62にチャック75を設けて取出口62を開閉できるように構成し、内部への害虫の侵入を防止できるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーに掛けた衣類を覆う防虫カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンガーに掛けた衣類の虫食いを防止する際には、防虫カバーが用いられていた。
【0003】
この防虫カバーは、衣類を覆う袋状に形成されており、その中央には、上下に延在するスリットが設けられ衣類の取出口が形成されている。この取出口の開口縁部には、チャックが設けられており、衣類を取り出す際に開閉できるように構成されている。
【0004】
これにより、前記防虫カバーから衣類を取り出す際には、前記チャックを開けるとともに、防虫カバーの中央に設けられたスリットを左右に開くことによって、当該防虫カバー中央部に大きな取出口を形成できるように構成されている。
【0005】
このようなハンガーは、クローゼットに掛け渡されたパイプに掛けて使用することが多く、隣接したハンガー同士は、密接して配置されている。このため、ハンガーに掛けられた衣類を取り出す際には、隣接したハンガーとの間に大きなスペースを確保してから前記防虫カバーの中央部に取出口を開口しなければならなかった。
【0006】
一方、カバー前面に大きなスペースを確保すること無く、ハンガーからの衣類の取り出しを可能とした衣服用カバーが考案されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
この衣服用カバーは、カバー本体を構成する前面の側縁と背面の側縁との接続部分にチャックが設けられており、衣服用カバーの側部に取出口を形成できるように構成されている。
【0008】
これにより、カバー前面に大きなスペースを確保できない使用状態であっても、側部に形成される取出口から衣類を取り出せるように構成されている。
【特許文献1】特開平4−9183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の衣類用カバーにあっては、衣類を取り出す為の取出口が狭く、衣類を取り出しにくいという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、前面に大きなスペースを確保することができない場合であっても、衣類を容易に取り出すことができる防虫カバーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の防虫カバーにあっては、ハンガーに掛けられた衣類を覆うカバー本体に、上下に延在したチャックで開閉される取出口が設けられた防虫カバーにおいて、前記取出口を、前記カバー本体の前面であって、当該カバー本体の中央より一側部側に設け、当該取出口を境とする前記一側部側の幅寸法を他側部側の幅寸法より狭く設定した。
【0012】
すなわち、ハンガーに掛けられた衣類を取り出す際には、カバー本体に設けられたチャックを開放して当該カバー本体の前面に取出口を形成する。
【0013】
このとき、この取出口は、前記カバー本体の前面であって、当該カバー本体の中央より一側部側に設けられている。このため、当該ハンガーがクローゼットに掛けられた状態において、当該カバー本体の一側部側より前記取出口に手を容易に挿入することができる。
【0014】
また、前記取出口を境とする前記一側部側の幅寸法は、他側部側の幅寸法より狭く設定されている。このため、前記ハンガーに掛かられた衣類の側部、例えばハンガーに掛かられたジャケットの肩部を前記取出口より引き出して前記前面の前記一側部側より前方に露出した一部露出状態を形成することができ、この一部露出状態において、肩部をハンガーから外すことができる。
【0015】
次に、前記取出口は、前記カバー本体の前面に形成される。このため、この取出口より挿入した手を衣類の前面に挿入することができる。これにより、例えばジャケットなどの前開きの衣類の奥側の肩部を、その前側から前記ハンガーより容易に取り外すことができる。
【0016】
そして、前記ハンガーから取り外した衣類を前記取出口から取り出す。このとき、この取出口は、前記カバー本体の前面であって当該カバー本体の中央より一側部側に設けられている。このため、前記取出口は、当該カバー本体の厚み方向のみならず、前記前面の面方向にも広げられる。
【0017】
また、請求項2の防虫カバーにおいては、前記カバー本体を、前面を形成する前面シート部材と背面を形成する背面シート部材とで構成するとともに、前記前面シート部材と前記背面シート部材との側縁が接合された側縁接合部を内側に谷折りにして前記カバー本体の厚み方向への展開を許容する襠部を設けた。
【0018】
すなわち、カバー本体には、当該カバー本体の厚み方向への展開を許容する襠部が設けられている。このため、襠部が形成されていない場合と比較して、取出口の厚み方向への開き量を拡大することができる。
【0019】
さらに、請求項3の防虫カバーでは、前記防虫カバーが、上縁が両側縁から中心に向かうにしたがって上方に傾斜している。
【0020】
これにより、中央部が上方へ突出した山形のハンガーを収容するハンガー収容部を形成することができる。
【0021】
加えて、請求項4の防虫カバーにあっては、前記カバー本体を、前面を形成する前面シート部材と背面を形成する背面シート部材とで構成し、前記前面シート部材の側縁と前記背面シート部材の側縁とを側縁接合部にて接合する一方、当該カバー本体の側縁部に、前記前面シート部材と前記背面シート部材とを接合するとともに、その一端が当該カバー本体の側縁に達する接合部を形成し、当該カバー本体の内側にポケットを形成した。
【0022】
すなわち、前面シート部材と背面シート部材とで構成されたカバー本体の側縁部に、前記前面シート部材と前記背面シート部材とを接合するとともに、その一端が当該カバー本体の側縁に達する接合部を形成することによって、当該カバー本体の内側にポケットを形成することができる。
【0023】
このため、このポケットによって小物収容空間が形成される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明の請求項1の防虫カバーにあっては、衣類を取り出す取出口がカバー本体の中央より一側部側に設けられている。このため、カバー本体の中央部に取出口が設けられた従来のように、クローゼットに掛けられたハンガー同士が密接して配置されている場合であっても、隣接したハンガーとの間に大きなスペースを確保すること無く、当該カバー本体の一側部側より前記取出口を開口し、当該取出口より衣類を容易に取り出すことができる。
【0025】
このとき、前記一側部側に設けられた前記取出口は、前記カバー本体の前面に設けられている。このため、前記取出口を、当該カバー本体の厚み方向のみならず、前記前面の面方向にも広げることができる。これにより、取出口をカバー本体の厚み方向にしか広げることができなかったカバー本体側縁に取出口が設けられた従来と比較して、前記取出口の開口面積を大きくすることができる。よって、衣類の取り出し性を向上することができる。
【0026】
また、請求項2の防虫カバーにおいては、カバー本体に当該カバー本体の厚み方向への展開を許容する襠部が設けられており、襠部が形成されていない場合と比較して、取出口の厚み方向への開き量を拡大することができる。
【0027】
これにより、衣類の取り出し性を、さらに向上することができる。
【0028】
さらに、請求項3の防虫カバーでは、前記防虫カバーの上縁を、両側縁から中心に向かうに従って上方に傾斜することによって、ハンガーを収容するハンガー収容部を形成することができる。
【0029】
加えて、請求項4の防虫カバーにあっては、前面シート部材と背面シート部材とで構成されたカバー本体の側縁部に、前記前面シート部材と前記背面シート部材とを接合するとともに、その一端が前記側縁に達する接合部を形成することによって、当該カバー本体の内側にポケットを形成することができる。
【0030】
これにより、このポケットによって小物収容空間を形成することができ、例えば衣類に付着した埃を吸着する粘着ローラを収容しておくことができ、利便性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一の実施の形態を図に従って説明する。図1は、本実施の形態にかかる防虫カバー1を示す図であり、該防虫カバー1は、ハンガー2に掛けた衣類を覆い害虫から保護するものである。
【0032】
この防虫カバー1のカバー本体11は、縦長の長方形状に形成されている。このカバー本体11の上縁12には、左側縁13及び右側縁14より当該カバー本体11の中心Cへ向かうに従って上方に傾斜した第1傾斜部15,15と、両第1傾斜部15,15より前記中心Cへ向かうに従ってさらに上方へ向けて傾斜した第2傾斜部16,16と、両第2傾斜部16,16を結ぶ水平部17とが形成されており、当該カバー本体11の上縁部には、前記ハンガー2が収容される中央部が上方へ突出した山形のハンガー収容部18が形成されている。
【0033】
このカバー本体11は、図2にも示すように、前面21を構成する前面シート部材22と背面23を構成する背面シート部材24とによって形成されており、両シート部材22,24または前面シート部材22及び背面シート部材24の少なくともいずれか一方の内面/または外側面には、防虫成分を含有した薬剤が印刷によって塗布されている。前記両シート部材22,24は、図1に示したように、周縁が熱圧着によって接合されることによって袋状に形成されており、この熱圧着部は、前記左側縁13に沿って延在する左側縁接合部25と、右側縁14に沿って延在する右側縁接合部26と、下縁27に沿って延在する下縁接合部28と、前記上縁12に沿って延在する上縁接合部29とによって構成されている。該上縁接合部29は、前記水平部17の中央部を除く部位に形成されており、この中央部には、前記ハンガー2の吊り下げ部31を挿通する挿通部32が設けられている。
【0034】
前記左側縁接合部25及び前記右側縁接合部26は、当該カバー本体11の内側へ谷折りされており、その上端部及び下端部が前記上縁接合部29及び前記下縁接合部28で接合されることによって、この谷折り状態が維持されている。これにより、このカバー本体11には、図2に示したように、当該カバー本体11の厚みW方向への展開を許容する襠部41が左側部及び右側部に形成されている。
【0035】
また、前記カバー本体11の左側部の下側には、図1に示したように、前記前面シート部材22と前記背面シート部材24とを熱圧着して接合するとともに、その一端が前記左側縁13に接続された接合部51が形成されている。この接合部51は、前記襠部41の左側縁13に平行して設けられるとともに前記左側縁接続部25より内側に設定された直線状の縦線部52と、該縦線部52の下端より前記襠部41の左側縁13へ向けて延出し該左側縁13に達する横線部53とによってL字状に形成されており、当該カバー本体11の内側には、前記接合部51と前記左側縁接合部25との間に、上方開口状のポケット54が形成されている。
【0036】
前記カバー本体11の前面21には、当該カバー本体11の中心Cより左側部側に上縁12から下縁27に渡って上下に延在するスリット61が形成されており、図3に示すように、当該カバー本体11内のハンガー2に掛けられた衣類を取り出す為の取出口62を開口できるように構成されている。この取出口62を形成する前記スリット61は、図1に示したように、前記上縁12の前記第1傾斜部15の中央部近傍に設定されており、当該カバー本体11に前記ハンガー2を収容した状態で、該ハンガー2の左端部が位置する部位に設けられている。これにより、当該カバー本体11の前面21は、前記取出口62を形成する前記スリット61を境とする左方側の左方領域63と右方側の右方領域64とに区画されており、前記左方領域63の幅寸法65は、前記右方領域64の幅寸法66より狭くなるように構成されている。
【0037】
なお、このスリット61の位置は、当該カバー本体11の中心Cより左側部側に設定すれば良いが、当該カバー本体11の中心Cより左側の左側領域71において、当該左側領域71の中央より左側縁13寄りに設定することが望ましく、さらには前述したように前記ハンガー2の左端部が位置する部位に設けることによって衣類の取り出し性を向上できることが実験により求められている。
【0038】
そして、この取出口62には、チャック75が設けられており、当該取出口62を開閉できるように構成されている。これにより、衣類取り出し時に開閉することで、内部への害虫の侵入を防止できるように構成されている。
【0039】
すなわち、前記取出口62を形成する前記スリット61の対向した開口縁部には、互いに係脱自在に係合する帯状部材81,81が熱圧着で固定されており、両帯状部材81,81のチャック部には、両チャック部を係脱する為の操作部82が設けられている。この操作部82は、上下移動できるように構成されており、当該操作部82を上動した際には、前記両帯状部材81,81のチャック部を係合して前記取出口62を閉鎖する一方、前記操作部82を下動した際には、前記両帯状部材81,81のチャック部の係合を解除して前記取出口62を開放できるように構成されている。
【0040】
以上の構成にかかる本実施の形態において、クローゼットに掛け渡されたパイプに掛けられたハンガーから、図4に示すように、衣類としてのジャケット91を取り出す際には、カバー本体11に設けられたチャック75を開放して当該カバー本体11の前面21に取出口62を形成する。
【0041】
このとき、この取出口62は、前記カバー本体11の前面21であって、当該カバー本体11の中心Cより左側部側に設けられている。このため、当該ハンガー2がクローゼットに掛けられた状態において、当該カバー本体11の左側部側より前記取出口62に手を容易に挿入することができる。
【0042】
また、前記取出口62を境とする前記左側部側の左方領域63の幅寸法65は、右側部側の右方領域64の幅寸法66より狭く設定されている。このため、前記ハンガー2に掛かられたジャケット91側部の肩部95を前記取出口62より引き出して前記前面21の前記左側部側より前方に露出した一部露出状態96を形成することができ、この一部露出状態96において、前記肩部95を前記ハンガー2から外すことができる。
【0043】
次に、前記取出口62は、前記カバー本体11の前面21に形成されている。このため、この取出口62より挿入した手を前記ジャケット91の前面側に挿入することができる。これにより、前開きのジャケット91の奥側の肩部97を、その前側から前記ハンガー2より容易に取り外すことができる。
【0044】
そして、前記ハンガー2から取り外した前記ジャケット91を前記取出口62から取り出す。このとき、この取出口62は、前記カバー本体11の前面21であって当該カバー本体11の中心Cより左側部側に設けられている。このため、前記取出口62は、図3に示したように、当該カバー本体11の厚み方向101のみならず、前記前面21の平面方向102にも広げることができる。
【0045】
このように、前記ジャケット91を取り出す取出口62が前記カバー本体11の中央より左側部側に設けられているので、前記カバー本体11の中央部に取出口62が設けられた従来のように、クローゼットに掛けられたハンガー2同士が密接して配置されている場合であっても、隣接したハンガー2との間に大きなスペースを確保すること無く、当該カバー本体11の左側部側より前記取出口62を開口し、当該取出口62より前記ジャケット91を容易に取り出すことができる。
【0046】
このとき、前記左側部側に設けられた前記取出口62は、前記カバー本体11の前面21に設けられている。このため、前記取出口62を、当該カバー本体11の厚み方向101のみならず、前記前面21の平面方向102にも広げることができる。これにより、取出口62をカバー本体11の厚み方向101にしか広げることができなかったカバー本体側縁に取出口が設けられた従来と比較して、前記取出口62の開口面積を大きくすることができる。よって、ジャケット91の取り出し性を向上することができる。
【0047】
また、前記カバー本体11には、当該カバー本体11の厚み方向101への展開を許容する襠部41が設けられており、この襠部41が形成されていない場合と比較して、前記取出口62の厚み方向101への開き量を拡大することができる。
【0048】
これにより、前記ジャケット91の取り出し性を、さらに向上することができる。
【0049】
そして、前面シート部材22と背面シート部材24とで構成されたカバー本体11の側縁部に、前記前面シート部材22と前記背面シート部材24とを接合するとともに、その一端が左側縁13に達する接合部51を形成することによって、当該カバー本体11の内側にポケット54を形成することができる。
【0050】
これにより、このポケット54によって小物収容空間を形成することができるため、例えば衣類に付着した埃を吸着する粘着ローラを当該ポケット54に収容しておくことができ、利便性を向上することができる。
【0051】
このとき、このポケット54は、前記取出口62が設けられた前記カバー本体11の左側部に設けられている。このため、前記ポケット54に収容した小物の前記取出口62からの取り出しを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】同実施の形態を示す側面図である。
【図3】同実施の形態の使用形態を示す斜視図である。
【図4】同実施の形態の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1 防虫カバー
2 ハンガー
11 カバー本体
13 左側縁
14 右側縁
21 前面
22 前面シート部材
24 背面シート部材
25 左側縁接合部
26 右側縁接合部
41 襠部
51 接合部
54 ポケット
62 取出口
75 チャック
91 ジャケット
101 厚み方向
102 平面方向
C 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンガーに掛けられた衣類を覆うカバー本体に、上下に延在したチャックで開閉される取出口が設けられた防虫カバーにおいて、
前記取出口を、前記カバー本体の前面であって、当該カバー本体の中央より一側部側に設け、当該取出口を境とする前記一側部側の幅寸法を他側部側の幅寸法より狭く設定したことを特徴とする防虫カバー。
【請求項2】
前記カバー本体を、前面を形成する前面シート部材と背面を形成する背面シート部材とで構成するとともに、前記前面シート部材と前記背面シート部材との側縁が接合された側縁接合部を内側に谷折りにして前記カバー本体の厚み方向への展開を許容する襠部を設けたことを特徴とする請求項1記載の防虫カバー。
【請求項3】
前記防虫カバーが、上縁が両側縁から中心に向かうにしたがって上方に傾斜していることを特徴とする請求項1項又は2項いずれかの項記載の防虫カバー。
【請求項4】
前記カバー本体を、前面を形成する前面シート部材と背面を形成する背面シート部材とで構成し、前記前面シート部材の側縁と前記背面シート部材の側縁とを側縁接合部にて接合する一方、
当該カバー本体の側縁部に、前記前面シート部材と前記背面シート部材とを接合するとともに、その一端が当該カバー本体の側縁に達する接合部を形成し、当該カバー本体の内側にポケットを形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の防虫カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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