説明

防虫剤、これを含有する樹脂組成物および包装用資材

【課題】安全性および害虫に対する忌避効果に優れた防虫剤、これを含有する樹脂組成物および包装用資材を提供すること。
【解決手段】防虫剤は、貝殻を粉砕して得られる水酸化カルシウム粉末を含んでなることを特徴とする。この水酸化カルシウム粉末は、Ca含有量が41質量%以上54質量%以下であることが好ましい。該防虫剤は、コウチュウ目に属する害虫に対して有効であるため、食品用途に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫に対して忌避効果を有する防虫剤、これを含有する樹脂組成物および包装用資材に関する。
【背景技術】
【0002】
穀粉や乾燥物といった粉末食品を生産したり取り扱ったりする工場では、該粉末食品を餌に食品害虫が発生しやすい。食品害虫は包装材を外から穿孔する能力が高く、通常の食品包装では簡単に破袋して食品包装内部に混入するため、害虫の混入被害に悩まされている。なお、このような被害は工場に限られず、害虫は一般家庭にも飛来するため広い地域で食品被害が発生している。
【0003】
このような被害をもたらす食品害虫としては、例えば、コウチュウ目に属する害虫が挙げられる。具体的には、コクヌストモドキ、ヒラタコクヌストモドキ、コクゾウムシ、ノコギリヒラタムシ、コメノゴミムシダマシ、ジンサンシバンムシ、タバコシバンムシ、ヒメマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシ等である。
これらの害虫は、小麦粉などの穀粉を扱う製粉工場や飼料工場、ビスケット、チョコレート、パンなどを扱う製菓・製パン工場、および小麦粉、ヌカ、粉ミルク、煮干などを扱う一般家庭に発生しやすい。また、乾燥果物や乾燥野菜にも被害をもたらしている。
【0004】
害虫駆除を目的とした防虫剤には、有効成分として有機物を含んだものが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。特許文献1ではゴキブリに対して忌避効果を有し、特許文献2では植物や果実等が多種の食品害虫に効果を有することが記載されている。特許文献2においては、使用される植物や果実に含まれる有機成分が有効に働いているものと思料される。
一方、安全性と再資源化の観点から天然物であるホタテ等の貝殻資源が注目されている。このような貝殻に含まれるカルシウム成分を有効利用して抗菌作用の効果を得る技術がある(例えば、特許文献3、4および5参照)。特許文献3では貝殻を燃焼させて得られるカルシウム粉末を用い、特許文献4では貝殻を粉砕して得られる炭酸カルシウム粉末と酸化カルシウム粉末の混合物を用い、特許文献5では貝殻の焼成カルシウム粉末が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−15041号公報
【特許文献2】特開2006−151896号公報
【特許文献3】特開2003−26525号公報
【特許文献4】特開2001−199819号公報
【特許文献5】特開2009−102277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載の防虫剤が含んでいる有機成分には、特有の臭気を有するものもあるため、食品の包装材として使用すると食品への臭いが移ってしまうおそれがある。また、有機成分は光や熱による劣化で変色や性能低下を生じたり、毒性の強いものも含まれているため安全性に乏しかったり、特に食品の包装用資材として使用するには不適当であった。
【0007】
また、特許文献3〜5に記載されているカルシウム粉末は、いずれも炭酸カルシウムまたは酸化カルシウムである。これらの粉末は殺菌抗菌作用を示すものの、害虫を誘引しない忌避効果を有するものではないため、粉末食品に対する害虫被害を完全に防止することが困難であった。また、酸化カルシウム(CaO)は水(HO)と反応して消石灰(Ca(OH))となるときに発熱反応があり、袋詰製品の貯蔵および運搬時に漏水により発熱するなどして取り扱い上の問題がある。さらに、皮膚と長時間接触した場合には汗等により発熱し、肌被害を引き起こすおそれもある。
【0008】
本発明の目的は、安全性および害虫に対する忌避効果に優れた防虫剤、これを含有する樹脂組成物および包装用資材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の防虫剤は、貝殻を粉砕して得られる水酸化カルシウム粉末を含んでなることを特徴とする。
また、本発明の防虫剤において、前記水酸化カルシウム粉末は、Ca含有量が41質量%以上54質量%以下であることが好ましい。
さらに、本発明の防虫剤において、前記水酸化カルシウム粉末は、平均粒径が2μm以上12μm以下、最大粒径が45μm以下であることが好ましい。
そして、本発明の防虫剤において、Zn、K、Ca、Cr、Se、Fe、Cu、Na、Mg、Mn、I、Pから選択される少なくとも一種の金属がさらに含まれることが好ましい。
また、本発明の防虫剤は、コウチュウ目に属する害虫用途で用いられることが好ましい。
さらに、本発明の防虫剤は、食品用途で用いられることが好ましい。
【0010】
本発明の樹脂組成物は、前述の防虫剤を樹脂に練りこんで得られたことを特徴とする。
また、本発明の樹脂組成物において、前記水酸化カルシウム粉末は、樹脂組成物全量基準で2質量%以上含有されていることが好ましい。
本発明の包装用資材は、前述の樹脂組成物で成形されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、貝殻を粉砕して得られる天然物由来の水酸化カルシウムを用いるので安全性に優れている。また、水酸化カルシウムは炭酸カルシウムに比べて溶解度が高く、害虫が接触した際に害虫の体液等と反応して強アルカリ性を示しやすいため、害虫の忌避効果(侵入防止効果)に優れている。したがって、害虫の混入被害を防止することができる。特に穀粉等の粉末食品用防虫剤として有効に利用することができる。
また、貝殻を原料として得られる無機系の水酸化カルシウムは、半永久的に継続して害虫に対する忌避効果を持続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の防虫剤は、貝殻を粉砕して得られる水酸化カルシウム粉末を含んでなることを特徴とする。
水酸化カルシウム粉末の原料となる貝殻としては、ホタテ貝、かき、あこや貝、あさり貝、バカ貝、赤貝等が挙げられる。これらのなかでも、大規模に地引養殖が行われ、加工工場等から貝殻を入手しやすく、貝殻表面に海藻やフジツボ等の不純物の付着が少ないホタテ貝殻を用いることが好ましい。特に、オホーツク海で地引養殖されたホタテ貝は砒素やカドミウム等の汚染の懸念が少なく安全性が高い。このような貝殻は通常廃棄処分されるため、本発明で利用することにより、廃棄物の有効利用を図ることができる。
【0013】
ここで、貝殻から水酸化カルシウム粉末を得る方法について説明する。
まず、貝殻を水で洗浄する。洗浄は通常の方法を用いればよく、貝殻表面に付着した不純物を可能な限り除去する。
次に、温度が850℃以上1200℃以下の炉内で貝殻を加熱および焼成する。これにより、炭酸カルシウム(CaCO)を主成分とする貝殻から、生石灰(CaO)を得る。温度が850℃未満であると、焼成が不十分となり未反応の炭酸カルシウムが残るため好ましくない。一方、温度が1200℃を超えると、過焼となり熱エネルギー的に不経済であるため好ましくない。このような炉としては、ベッケンバッハ炉、メルツ炉、ロータリーキルン、流動焼成炉等を使用することができる。
【0014】
次に、焼成により得られた生石灰(CaO)を篩にかけ、細かい砂等の不純物を除去する。これにより、次工程における水和反応を均一に行うことができる。篩としては、目開きサイズ5mmの網を装着した振動フルイ等を用いることができる。
次に、生石灰(CaO)に対して50%の水を加えて水和する。これにより、水酸化カルシウム(Ca(OH))が得られる。
次に、得られた水酸化カルシウム(Ca(OH))を細かく粉砕する。粉砕は通常の方法を用いればよいが、粒径をより小さくかつ磨耗により粉砕機の材質が汚染されるのをできるだけ少なくでき、ジェットエアーの威力により粉砕可能なジェットミルを用いることが好ましい。
【0015】
このようにして得られた水酸化カルシウム粉末におけるCa含有量は、41質量%以上54質量%以下であることが好ましい。Ca含有量が41質量%未満の場合には、害虫に対する忌避効果が十分に発揮されない可能性がある。また、54質量%を超えると、酸化カルシウムが水和する際の発熱等の問題を生じるおそれがありあまり好ましくない。特に食品用防虫剤として使用する場合には、51質量%以上54質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
また、水酸化カルシウム粉末は、平均粒径が2μm以上12μm以下、最大粒径が45μm以下であることが好ましく、より好ましくは平均粒径2μm以上4μm以下、最大粒径8μm以下である。平均粒径が2μm未満であると、空気中の水分により凝集しやすく取り扱いが困難となる。一方、平均粒径が12μmを超えると、フィルム等に配合された場合にピンホールを形成して防湿性能を低下させるなど好ましくない。
【0017】
さらに、貝殻から上記の方法で得られた水酸化カルシウム粉末には、微量の金属が含有されている。金属の種類としては、Zn、K、Ca、Cr、Se、Fe、Cu、Na、Mg、Mn、I、Pから選択される少なくとも一種である。
そして、得られた水酸化カルシウム粉末における砒素の含有量は1質量%以下、鉛の含有量は10ppm以下である。砒素の含有量が1質量%を超えるか、鉛の含有量が10ppmを超えると、人体に悪影響を及ぼすため好ましくない。特に、食品用途で用いられる場合、食品添加物認可を取得していることが好ましい。
【0018】
水酸化カルシウム粉末の水に対する溶解度は25℃において0.15質量%であり、炭酸カルシウム(CaCO)に比べて水に対する溶解度が高い。なお、溶解度は温度上昇とともに低下する。また、水酸化カルシウム粉末の飽和pHは12.4である。
このような水酸化カルシウム粉末は害虫に対する忌避効果に優れている。特に、コウチュウ目に属する害虫に対する効果が高い。コウチュウ目に属する害虫としては、例えば、コクヌストモドキ、ヒラタコクヌストモドキ、コクゾウムシ、ノコギリヒラタムシ、コメノゴミムシダマシ、ジンサンシバンムシ、タバコシバンムシ、ヒメマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシが挙げられる。
【0019】
次に、上述の水酸化カルシウム粉末を含有するフィルムを成形し、包装用資材を製造する方法について説明する。
まず、水酸化カルシウム粉末を50質量%以上配合した樹脂マスターバッチ(樹脂組成物)を作製する。使用する樹脂は、包装用資材の用途や内容物に応じて適宜選定すればよく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等を用いることができる。
【0020】
次に、樹脂マスターバッチを樹脂でさらに希釈して、T−ダイ成形やインフレーション成形等の通常用いられているフィルム成形方法によりフィルムを作製する。このとき、フィルムにおける水酸化カルシウム粉末の含有量は、2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、3質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。フィルムにおける水酸化カルシウム粉末の含有量が2質量%未満であると、害虫に対する忌避効果を十分に発揮することができない。一方、水酸化カルシウム粉末の含有量が10質量%を超えると、フィルムに配合した場合にフィルムの強度低下につながるため好ましくない。フィルムの強度低下を防止するには、粒径をより小さく、1μm以下に調整することで強度低下を抑制できるが、パウダー凝集等により混練作業が煩雑になり好ましくない。
フィルムは、単層でも複数層でもよい。また、紙やアルミフィルム等との積層体であってもよい。この場合、水酸化カルシウム粉末を紙やアルミフィルムとの積層面側のフィルム層に配合することにより、食品害虫の侵入を効率よく防止することができる。
【0021】
次に、得られたフィルムを用いて、通常用いられる方法により包装用資材を作製する。例えば、小麦粉の一般消費者向け包装用資材にはラミネートフィルムが用いられており、表基材はポリエステルやナイロンのフィルム、裏基材(シーラント材)はLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)またはこれらの多層フィルムが使用されている。また、裏基材には三層フィルムが使用される場合もある。また、米の包装用資材としては、LLDPEの単層、またはLLDPEおよびLDPEの二層ないし三層フィルムが使用されており、ガス抜きのための小さな穴が設けられている場合がある。
【0022】
このようにして得られた包装用資材は、小麦粉や米などの穀粉、ビスケット、チョコレート、パン、ヌカ、粉ミルク、煮干、乾燥果物、および乾燥野菜などの食品の包装用資材となる。特に、食品工場内で食品を保管する際に使用する養生用フィルムやストレッチフィルム等として使用することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制約されるものではない。
【0024】
[実施例1]
ホタテ貝殻を水で洗浄後、900℃にて4時間焼成した後、目開き5mmの篩を用いて細かい砂等の不純物を除去し、焼成ホタテ貝殻1kgを得た。
次に、焼成ホタテ貝殻に水を0.5kg加えて水和し、得られた水酸化カルシウムに対してジェットミルSTJ200(株式会社セイシン企業製)を用い、平均粒径10μm、最大粒径45μmの微粉末とした。このときの水酸化カルシウムのカルシウム含有量は51質量%であった。
得られた微粉末をIDEMITSU LLDPE(出光興産株式会社製の直鎖状低密度ポリエチレン、メルトフローレート1.2g/10分)に50%配合したマスターバッチを、混練用40mmφ押出機にて200℃の混練温度で作製した。
該マスターバッチをIDEMITSU LLDPE 0134(出光興産株式会社製の直鎖状低密度ポリエチレン、メルトフローレート:1.2g/10分)にて25倍に希釈(最終微粉末配合量2%)し、成形機温度200℃にて総厚90μmの単層インフレーションフィルムを作製した。
該単層インフレーションフィルムを用いて、小麦粉50gを内容物とする4隅が完全にシールされた小麦粉入り袋を作製し、テストサンプルとした。
【0025】
[実施例2]
実施例1で作成したマスターバッチをIDEMITSU LLDPE 0134にて10倍に希釈(最終微粉末配合量5%)した以外は、実施例1と同様にしてテストサンプルを作製した。
【0026】
[実施例3]
ホタテ貝殻を水で洗浄後、1100℃にて4時間焼成した後、目開き5mmの篩を用いて細かい砂等の不純物を除去し、焼成ホタテ貝殻1kgを得た。
次に、焼成ホタテ貝殻に水を0.5kg加えて水和し、得られた水酸化カルシウムに対してジェットミルSTJ200(株式会社セイシン企業製)を用い、ジェットミル粉砕を2回行い、平均粒径2μm、最大粒径8μmの微粉末とした。このときの水酸化カルシウムのカルシウム含有量は53.5質量%であった。
得られた微粉末をIDEMITSU LLDPEに50%配合したマスターバッチを、混練用40mmφ押出機にて200℃の混練温度で作製した。
該マスターバッチをIDEMITSU LLDPE 0134にて5倍に希釈(最終微粉末配合量10%)し、成形機温度200℃にて総厚90μmの単層インフレーションフィルムを作製した。
該単層インフレーションフィルムを用いて、小麦粉50gを内容物とする4隅が完全にシールされた小麦粉入り袋を作製し、テストサンプルとした。
【0027】
[比較例1]
IDEMITSU LLDPE 0134を用い、成形機温度200℃にて総厚90μmの水酸化カルシウムが配合されていない単層インフレーションフィルムを作製した。
該単層インフレーションフィルムを用いて、小麦粉50gを内容物とする4隅が完全にシールされた小麦粉入り袋を作製し、テストサンプルとした。
【0028】
[比較例2]
実施例1で作製したマスターバッチをIDEMITSU LLDPE 0134にて50倍に希釈(最終微粉末配合量1%)した以外は、実施例1と同様にしてテストサンプルを作製した。
【0029】
[比較例3]
ホタテ貝殻を水で洗浄後、焼成および水和せずに、ジェットミルSTJ200(株式会社セイシン企業製)を用い、平均粒径11μm、最大粒径45μmの微粉末とした。このときの炭酸カルシウムのカルシウム含有量は38質量%であった。
この後は実施例1と同様の手順で、得られた微粉末を配合した単層インフレーションフィルムを作成後、小麦粉を入れた袋を作製し、テストサンプルとした。
【0030】
[比較例4]
ホタテ貝殻を水で洗浄後、1100℃にて4時間焼成した後、目開き5mmの篩を用いて細かい砂等の不純物を除去し、焼成ホタテ貝殻1kgを得た。
次に、水和せずに、ジェットミルSTJ200(株式会社セイシン企業製)を用いて平均粒径3.5μm、最大粒径8μmの微粉末とした。このときの酸化カルシウムのカルシウム含有量は70質量%であった。
この後は実施例1と同様の手順で、得られた微粉末を配合した単層インフレーションフィルムを作成後、小麦粉を入れた袋を作製し、テストサンプルとした。
【0031】
[比較例5]
比較例3で作製したマスターバッチをIDEMITSU LLDPE 0134にて10倍に希釈(最終微粉末配合量5%)した以外は、実施例1と同様にしてテストサンプルを作製した。
【0032】
[比較例6]
比較例3で作製したマスターバッチをIDEMITSU LLDPE 0134にて5倍に希釈(最終微粉末配合量10%)した以外は、実施例1と同様にしてテストサンプルを作製した。
【0033】
[比較例7]
比較例4で作製したマスターバッチをIDEMITSU LLDPE 0134にて10倍に希釈(最終微粉末配合量5%)した以外は、実施例1と同様にしてテストサンプルを作製した。
【0034】
[比較例8]
比較例4で作製したマスターバッチをIDEMITSU LLDPE 0134にて5倍に希釈(最終微粉末配合量10%)した以外は、実施例1と同様にしてテストサンプルを作製した。
【0035】
[食品害虫による小麦粉包装袋の穿孔試験]
実施例1〜3および比較例1〜8で作製したテストサンプルを直径6cmの濾紙上に設置した試験検体を各2組ずつ用意し、これらの試験検体をプラスチック容器(直径30cm×高さ15cm)内に重ならないように同心円状に配置した。
次に、プラスチック容器の中央部にコクヌストモドキ成虫100頭を放し、放虫24時間後の各試験検体に集まった成虫数と袋の穿孔数を試験した。評価内容は以下の通りである。
【0036】
◎:穿孔数0 ・穿孔跡0 ・サンプル袋上の成虫数0
○:穿孔数0 ・穿孔跡0 ・サンプル袋上の成虫数1以上
△:穿孔数0 ・穿孔跡1以上・サンプル袋上の成虫数1以上
×:穿孔数1以上・穿孔跡1以上・サンプル袋上の成虫数1以上
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示すように、実施例1〜3では、害虫による被害はなく、害虫の忌避効果に優れている。一方、水酸化カルシウムを含有しない比較例1では穿孔があり、害虫被害を受けていた。また、水酸化カルシウムの配合量の少ない比較例2および水酸化カルシウムの代わりに炭酸カルシウムを含む比較例3、5、6および水酸化カルシウムの代わりに酸化カルシウムを含む比較例4、7、8では、サンプル袋に穿孔跡および害虫が確認されており、害虫を完全に忌避できていないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、防虫剤として、食品等の保管用の包装袋や害虫による破袋を防ぐための養生シート等のように食品防虫剤として使用するほか、衣料用防虫剤や人体用防虫剤として広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻を粉砕して得られる水酸化カルシウム粉末を含んでなることを特徴とする防虫剤。
【請求項2】
請求項1に記載の防虫剤において、
前記水酸化カルシウム粉末は、Ca含有量が41質量%以上54質量%以下であることを特徴とする防虫剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の防虫剤において、
前記水酸化カルシウム粉末は、平均粒径が2μm以上12μm以下、最大粒径が45μm以下であることを特徴とする防虫剤。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の防虫剤において、
Zn、K、Ca、Cr、Se、Fe、Cu、Na、Mg、Mn、I、Pから選択される少なくとも一種の金属がさらに含まれることを特徴とする防虫剤。
【請求項5】
コウチュウ目に属する害虫用途で用いられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防虫剤。
【請求項6】
食品用途で用いられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の防虫剤。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の防虫剤を樹脂に練りこんで得られたことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂組成物において、
前記水酸化カルシウム粉末は、樹脂組成物全量基準で2質量%以上含有されていることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の樹脂組成物で成形されたことを特徴とする包装用資材。

【公開番号】特開2011−111437(P2011−111437A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272165(P2009−272165)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(500242384)出光テクノファイン株式会社 (55)
【Fターム(参考)】