説明

防虫剤組成物および常温揮散性ピレスロイドの吸着防止方法

【課題】
密封状態での保存期間などにおいて、容器への有効成分の吸着が少なく、有効成分の減少を防止することができ、防虫剤の効力を長期間にわたって持続させることができる防虫剤組成物を提供すること。
【解決手段】
常温揮散性ピレスロイドおよびシリコーン化合物を含有することを特徴とする吸着抑制型防虫剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋服ダンス、押入れ等の衣類の収納場所に設置し、衣類害虫を防虫する防虫剤に関し、詳しくは有効成分である常温揮散性ピレスロイドが樹脂容器に吸着されることを抑制することができるため、防虫効力が長期間に渡って持続することが可能な防虫剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、衣類等を害虫の被害から守るため、パラジクロロベンゼン、樟脳、ナフタリン等の繊維製品の防虫剤が使われていた。これらの薬剤は防虫剤特有の臭いがあるため、最近ではこれらに代わり、防虫薬剤として臭いがない常温揮散性ピレスロイド用いた無臭性の防虫剤が広く使用されるようになっている。この無臭性防虫剤では、常温揮散性ピレスロイドを含浸させた含浸体を、揮散孔を有する容器に収納した形態とされており、この容器の材料には、主にポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が用いられている。
【0003】
ところで、ピレスロイド系の化合物は、オレフィン系樹脂との親和性が高く、前記防虫剤が、流通時および保存時に、プラスティック等の袋により密封された状態で長期間保存されると、有効成分である常温揮散性ピレスロイドが容器に吸着されてしまうことがあった。しかも吸着された常温揮散性ピレスロイドは、ほとんど放出されないため実質的な有効成分が減少してしまい、結果として使用期間中に十分な防虫効果が発揮できないという問題点を有していた。
【0004】
そこでこのような問題点を解決するために、常温揮散性ピレスロイドが吸着されにくい防虫剤容器が種々提案されている。例えば、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニールと塩化ビニリデンの共重合体等の樹脂を用いた通気性プラスティックケースが提案されている(特許文献1参照)。また、容器の材料として非晶性環状オレフィンポリマーを用いたものや(特許文献2参照)、脂肪族ポリケトンを用いたもの(特許文献3参照)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を用いたもの(特許文献4参照)、ポリエチレンナフタレートを用いたもの(特許文献5参照)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂を用いたもの(特許文献6参照)などが提案されている。
【0005】
しかし、これらの材料を使用した防虫剤容器の強度は十分ではなく、落下等の衝撃により割れてしまったり、特に、防虫剤の容器の形態として、洋服ダンス等のバーに吊り下げるフックを有する形態とした場合には、フックに掛ける際フック部分が割れてしまったり、ヒンジ構造を採用することが困難であるといった問題点を有していた。さらにこれらの樹脂は、従来のポリエチレンやポリプロピレン等に比べ成形性に劣り、また高価なため容器自体のコストが高くなってしまうといった問題点を有していた。そこで、本出願人は、既にJISK7203の曲げ弾性試験による曲げ弾性率が1400MPa以上の材料で構成されている防虫剤容器を提案している(特許文献7参照)。
【0006】
一方、揮散性ピレスロイドの容器への吸着を、容器の材料ではなく、揮散性ピレスロイドと併用する成分の工夫により抑制しようとする提案もなされており、例えば、ピレスロイド系化合物及びクエン酸トリエチルを特定の重合割合で含有する防虫剤組成物をポリオレフィン系樹脂を基材とする枠体に収納してなる防虫材が提案されている(特許文献8参照)。
【0007】
しかしながら、クエン酸トリエチルは特異臭があるため、無臭性の防虫剤に用いた場合はその商品特性を損ねてしまうといった問題点を有していた。
【0008】
【特許文献1】特開平2−275805
【特許文献2】特開平9−1187797
【特許文献3】特開平9−1187798
【特許文献4】特開2004−2314
【特許文献5】特開2004−254598
【特許文献6】特開2004−254599
【特許文献7】特開2003−274835
【特許文献8】特開2004−168671
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、密封状態での保存期間中などにおいても、有効成分であるピレスロイド系化合物のオレフィン系樹脂容器に対する吸着が少なく、有効成分の減少を防止することができ、防虫剤の効力を長期間にわたって持続することができる防虫剤の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは常温揮散性ピレスロイドを含有する防虫剤組成物の樹脂への吸着について鋭意研究を行った結果、シリコーン化合物を常温揮散性ピレスロイドと組み合わせて用いることにより、容器への常温揮散性ピレスロイドの吸着を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、常温揮散性ピレスロイドおよびシリコーン化合物を含有することを特徴とする吸着抑制型防虫剤組成物である。
【0012】
また本発明は、常温揮散性ピレスロイドをシリコーン化合物と混合することを特徴とする常温揮散性ピレスロイドの樹脂への吸着抑制方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防虫剤組成物は、有効成分である常温揮散性ピレスロイドが、汎用のオレフィン系樹脂容器へ吸着することを抑制できるため、長期間流通保存された場合でも有効成分である常温揮散性ピレスロイドの減少を防止することができ、その結果として防虫効力が長期間にわたって持続するものである。
【0014】
よって、本発明品の防虫剤は、洋服ダンス、引き出し、クローゼット、衣装ケース、人形ケース等の使用環境下で、イガ、コイガ、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ等の衣類害虫に対し、長期間にわたって高い防虫効果を発揮することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の吸着抑制型防虫剤組成物は、常温揮散性ピレスロイドおよびシリコーン化合物を必須成分とするものである。
【0016】
本発明に用いられる常温揮散性ピレスロイドは、従来より用いられている常温で揮散するピレスロイド系化合物であれば特に限定されないが、例えば、エンペントリン、トランスフルスリン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。またこれらの化合物において光学異性体または幾何異性体が存在する場合は、当該化合物には各種異性体の1種または2種以上が混合されたものも含まれる。このうち、揮散性、防虫効力の点でエンペントリン、トランスフルスリン、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラートが好ましく用いられる。
【0017】
また、本発明に用いられるシリコーン化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化2】

【0018】
[式中、Rはメチル基またはフェニル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜10の
アルキル基または基−0−Si(CHを示し、nは0〜100の自然数を示す]
【0019】
この式(1)で表される具体的な化合物としては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等をあげることができる。これらの具体的な商品名としては、SH200C−1CS、SH200C−1.5CS、SH200C−2CS、SH200C−5CS、SH200C−6CS、SH200C−10CS、SH200C−20CS、SH200C−30CS、SH200C−50CS、SH200C−100CS 、SH200C−200CS、SH200C−500CS、SH556、FZ−3196、SS−3408等(いずれも東レ・ダウコーニングシリコーン(株)社製)をあげることができる。
【0020】
本発明に用いられるシリコーン化合物の具体例としては、上記式(1)で表されるシリコーン化合物の他に、3,3−ジフェニルポリシロキサン、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルメチコンコポリオール、アミノメチルアミノプロピルシロキサンジメチルシロキサン共重合体、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルペンタフェニルシクロペンタシロキサン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等を挙げることができる。
【0021】
これらのシリコーン化合物のうち、上記式(1)で表される化合物を用いることが常温揮散性ピレスロイド化合物との相溶性の点で好ましい。
【0022】
また上記一般式(1)で表される化合物の中でも、常温において非揮散性ないし難揮散性のシリコーン化合物を用いることがさらに好ましく、常温で非揮散性ないし難揮散性のシリコーン化合物を用いれば、シリコーン化合物自体が揮散して常温揮散性のピレスロイド化合物の樹脂への吸着抑制効果が低下してしまうことを防止することができる。このような常温非揮散性ないし難揮散性のシリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等を挙げることができ、具体的な商品名としては、SH200C−5CS、SH200C−6CS、SH200C−10CS、SH200C−20CS、SH200C−30CS、SH200C−50CS、SH200C−100CS 、SH200C−200CS、SH200C−500CS、SH556等(いずれも東レ・ダウコーニングシリコーン(株)社製)を挙げることができる。
【0023】
ここでシリコーン化合物についての常温非揮散性ないし難揮散性とは、縦320mm、横430mm、高さ180mmのダンボール箱の底部にアルミ箔を敷き、その上にシリコーン化合物1.0gを含浸させた縦125mm、横55mm、厚さ1.05mmの濾紙(パルプ100%、目付け600g/m)を設置して蓋をし、40℃で濾紙の片面から揮散させた時の2週間経過後の揮散量が0.20g以下であることをいう。
【0024】
本発明の防虫剤組成物に用いられる上記常温揮散性ピレスロイドとシリコーン化合物の混合割合は特に限定されないが、常温揮散性ピレスロイド:シリコーン化合物が好ましくは20:1〜1:9、さらに好ましくは9:1〜1:1である。この範囲よりもシリコーン化合物の配合割合が少ないと、吸着防止効果を発揮することができない場合があり、この範囲よりもシリコーン化合物の配合割合が多い場合は、常温揮散性ピレスロイド化合物の揮散を妨げ適切な防虫効果が発揮できない場合がある。
【0025】
本発明の防虫剤組成物には、上記常温揮散性ピレスロイドおよびシリコーン化合物の他に、必要に応じ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤、殺菌剤、色素、消臭剤、香料、金属不活性剤、効力増強剤、他の防虫剤等を配合することができる。
【0026】
また、本発明の防虫剤組成物は、上記常温揮散性ピレスロイドおよびシリコーン化合物と、さらに必要に応じて前記任意成分を常法により混合することによって得られるが、さらにこれらの成分を適当な溶媒に溶解させてもよい。
【0027】
上記溶媒としては特に限定されるものではなく、従来公知の溶媒を用いることができる。具体的には、水;ヘキサン、パラフィン等の炭化水素系化合物;メタノール、エタノール、デカノール等のアルキルアルコール類;アリルアルコール等のアルケニルアルコール類;ベンジルアルコール等の芳香族環含有アルコール類;オイゲノール等のフェノール類;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物;ジエチルエーテル等のエーテル化合物;アセトン等のケトン系化合物;酢酸、オレイン酸等の脂肪族化合物;酢酸エステル等のエステル化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系化合物;2−フェノキシエタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール等のグリコールエーテル系化合物;リノール油等の植物油等が挙げられこれらの1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。溶媒に混合するに際して、必要により界面活性剤を用いることもできる。使用できる界面活性剤は陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤等の1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
かくして得られた本発明の防虫剤組成物は、そのまま液剤として用いることもできるが、適当な含浸体に含浸させて用いることもできる。この含浸体としては、常温揮散性ピレスロイドを含浸可能なものであれば特に限定されないが、具体的にはパルプ、紙、木片、シリカゲル、織布、不織布等を粒状、球状、板状、マット状、フィルム状に成形したものが挙げられる。
【0029】
また、本発明の防虫剤組成物を公知のゲル化剤によりゲル化させたゲルとして用いることもできる。このゲル化剤としては、カラギーナン、ジェランガム、寒天、ゼラチンなどが挙げられる。
【0030】
上記のようにして液剤、含浸体、ゲルなどの形態に調製された本発明の防虫剤組成物を、容器に収納して本発明の防虫剤を得ることができる。この容器に用いられる材質は特に限定されるものではないが、オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。このオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテンポリマー、エチレン−プロピレン共重合体等のホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、オルタネイティングコポリマー、グラフトコポリマー等が挙げられ、これらに少量の添加剤を含有してもよい。これらのうち、成形性、加工性、ヒンジ特性、耐衝撃性の点でポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0031】
またこの容器の形状は、従来公知の形状のものが使用でき特に限定されないが、揮散孔などの開口部を備えていることが好ましい。
【0032】
本発明の防虫剤は、使用開始前はバリヤー性のフィルムに密封保存され、使用時にはこれを開封し取り出した後、洋服ダンス、引き出し、衣装ケース等の収納容器内に設置することにより、有効成分が効率的に揮散し、イガ、コイガ、ヒメカツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ等の衣類害虫に対し収納容器内で防虫効果を発揮するものである。
【0033】
本発明の防虫剤は、長期間密封保存されていても常温揮散性ピレスロイドが容器へ吸着することを抑制できるため、その効力が長期間持続できるものである。
【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
実 施 例 1
(吸着試験)
下記の表1の組成の常温揮散性ピレスロイドとシリコーン化合物を混合して防虫剤組成物を得た(本発明品1ないし3)。この防虫剤組成物1.0gをパルプ製含浸紙(12.5×5.5cm)に含浸させ、揮散孔を有する図1のようなポリプロピレン製の容器に収納した防虫剤を作製した。この防虫剤をポリエチレンテレフタレートのバリヤー袋に収納し密封し、40℃の恒温槽に入れ一定期間ごとにエンペントリンの含浸紙への残量を測定し、下記の式により常温揮散性ピレスロイドの残存率を求めた。比較品1としてエンペントリン0.5gのみを含浸させた物を用いた。結果を表2に示す。
残存率(%)=(含浸体の残存量(g)/初期含浸量(g))×100
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
この結果から明らかなようにエンペントリンとシリコーン化合物を併用した本発明品はいずれもエンペントリン単独の比較品1と比べエンペントリンの容器への吸着抑制効果を示した。
【0039】
実 施 例 2
下記の表3の組成の常温揮散性ピレスロイドとシリコーン化合物を混合して防虫剤組成物を得た(本発明品4ないし6)。実施例1と同様にして、常温揮散性ピレスロイドの残存率を求めた。比較品としてエンペントリン0.2gのみを含浸させた物を用いた。結果を表4に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
この結果から明らかなようにエンペントリンとシリコーン化合物を併用した本発明品はいずれもエンペントリン単独の比較品2と比べエンペントリンの容器への吸着抑制効果を示した。
【0043】
実 施 例 3
(防虫試験)
実施例1で得た本発明品1ないし3の防虫剤組成物1.0gをパルプ製含浸紙(12.5×5.5cm)に含浸させ、揮散孔を有する図1に示すポリプロピレン製の容器1に収納した防虫剤1ないし3を作製した。図1は容器1の正面図、図2は図1のA−A’断面図である。この防虫剤をポリエチレンテレフタレートのバリヤー袋に収納し密封し、40℃の恒温槽に入れた。60日間経過後このバリヤー袋を開封し、下記方法により防虫試験を行った。比較として比較品1の防虫剤組成物0.5gを含浸させた物を用いた。結果を表5に示す。
【0044】
(防虫試験方法)
パルプ製含浸紙を1cm×1cmに切り、直径4cmの金属製かごの中に入れた。これを容積0.5リットルのガラス製蓋つき容器のほぼ中央に置き、その底部に産卵後1日の衣類害虫であるイガの卵20個を置いた1辺2.5cmの正方形のサージを置いた。温度25℃、相対湿度60%RHの条件下に14日間保存した後、容器の蓋を開け、孵化した卵の数を数え、孵化していた場合には、孵化直後の若齢幼虫の生死を判別した。防虫率を「孵化しなかった卵の数+死んでいた若齢幼虫の数」の全体の卵の数に対する百分率として下記式により求めた。
防虫率(%)=100×(20−N)/20
N:生存していた若齢幼虫の数
【0045】
【表5】

【0046】
以上の結果から明らかなように、本発明の防虫剤は比較品に比べ、長期間保存後も長期間にわたって防虫効力を発揮することが示された。
【0047】
実 施 例 4
(洋ダンス用の形態例)
図3に示すフック付き洋ダンス用防虫剤容器2(ポリプロピレン製)を作成し、12cm×5.5cmの濾紙に2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル−3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート500mg及びメチルフェニルポリシロキサン※3500mgを含浸させて容器内に収納し本発明の防虫剤を作成した。図3は容器2の正面図、図4はその容器を開いた図である。この容器をPET/CPの包装袋に入れて、40℃で1ヶ月保存した後、開封し洋服ダンスに設置した。このものは約6ヶ月間防虫効果を有した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の防虫剤組成物は、有効成分である常温揮散性ピレスロイドの容器への吸着を抑制できるため、長期間密封保存してもその効力が長期間持続でき有利に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の防虫剤を構成する容器1の正面図である。
【図2】図1の容器1のA−A’方向の断面図である。
【図3】本発明の防虫剤を構成する容器2の正面図である。
【図4】図3の容器2の本体を開いた状態の図である。
【符号の説明】
【0050】
1 防虫剤
2 容器
2a 右容器体
2b 左容器体
2c 上容器体
2d 下容器体
3 揮散孔
4 薬剤含浸体
5 ヒンジ部
6 フック部
6a 右容器体のフック部
6b 左容器体のフック部
7 支持ピン
8 容器内面部
9 嵌合孔
10 嵌合ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温揮散性ピレスロイドおよびシリコーン化合物を含有することを特徴とする吸着抑制型防虫剤組成物。
【請求項2】
シリコーン化合物が下記式(1)
【化1】

[式中、Rはメチル基またはフェニル基を示し、Rは水素原子、炭素数1〜10のア
ルキル基または基−0−Si(CHを示し、nは0〜100の自然数を示す]
で表される化合物である請求項第1項記載の吸着抑制型防虫剤組成物。
【請求項3】
シリコーン化合物が常温非揮散性ないし常温難揮散性である請求項第1項または第2項記載の吸着抑制型防虫剤組成物。
【請求項4】
常温揮散性ピレスロイドとシリコーン化合物の混合比率が20:1〜1:9である請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の吸着抑制型防虫剤組成物。
【請求項5】
請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載の吸着抑制型防虫剤組成物を、オレフィン系樹脂を用いて構成された容器に収納することを特徴とする防虫剤。
【請求項6】
容器が揮散孔を有するものである請求項第5項記載の防虫剤。
【請求項7】
常温揮散性ピレスロイドをシリコーン化合物と混合することを特徴とする常温揮散性ピレスロイドの樹脂への吸着抑制方法。
【請求項8】
シリコーン化合物が前記式(1)で表される化合物である請求項第7項記載の常温揮散性ピレスロイドの樹脂への吸着抑制方法。
【請求項9】
シリコーン化合物が常温非揮散性ないし常温難揮散性である請求項第7項または第8項記載の常温揮散性ピレスロイドの樹脂への吸着抑制方法。
【請求項10】
常温揮散性ピレスロイドとシリコーン化合物を混合する比率が20:1〜1:9である請求項第7項ないし第9項の何れかの項記載の常温揮散性ピレスロイドの樹脂への吸着抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−56605(P2008−56605A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235006(P2006−235006)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】