防虫効果を備えた植物栽培用照明装置および植物の照明栽培方法
【課題】キクなどの短日植物の開花抑制を制御しつつ、防蛾などの防虫効果を備えた植物栽培用照明装置、及び該照明装置を用いた植物の照明栽培方法を提供する。
【解決手段】植物栽培用照明装置は発光部と、該発光部に接続されるとともに、所定のパルス状の電力を供給する駆動部と、該駆動部へ電力を供給する電源部とを備え、前記発光部は複数のLEDチップを備える。前記発光部から出射する光は緑色から黄色の領域に発光ピーク波長を有し、前記駆動部は前記LEDチップを所定の明期幅と暗期幅との点滅パターンで点滅させ、前記点滅は、デューティ=明期幅/(明期幅+暗期幅)が9%以上50%以下であって、短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えることを特徴とする。
【解決手段】植物栽培用照明装置は発光部と、該発光部に接続されるとともに、所定のパルス状の電力を供給する駆動部と、該駆動部へ電力を供給する電源部とを備え、前記発光部は複数のLEDチップを備える。前記発光部から出射する光は緑色から黄色の領域に発光ピーク波長を有し、前記駆動部は前記LEDチップを所定の明期幅と暗期幅との点滅パターンで点滅させ、前記点滅は、デューティ=明期幅/(明期幅+暗期幅)が9%以上50%以下であって、短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫を忌避する効果を備えた植物の照明栽培方法(物を生産する方法)及び植物栽培用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花きを食害するオオタバコガやハスモンヨトウ等の夜蛾類は薬剤抵抗性を獲得したために、殺虫剤による防除が非常に難しい。カーネーションやバラでは、これに代わる防除法として、産卵のために圃場に飛来する成虫に対して、高い防蛾効果がある防蛾用黄色蛍光灯による夜間照明の利用が進んでいる。
【0003】
また、黄色蛍光灯に代わり黄色発光ダイオード(以下、黄色LEDと記載する)を備えた、黄色LED防虫灯システムであって、黄色LEDを点滅させることにより害虫忌避効果を高めたものがある(特許文献1)。
【0004】
また、キク、カランコエ、シャコバサボテン、ポインセチア、リーガースベゴニア、シュッコンカスミソウ、シソ、イチゴ等の短日植物に対して、赤色LED光を照射して開花時期を遅らせる技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−284482号公報
【特許文献2】特開平8−228599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような防蛾用照明は、短日植物に対して意図しない開花抑制を生じる場合がある。黄色LEDの出射光をキクに照射することにより害虫忌避効果が得られ、照射時間が長いほど効果は高い。一方、短日植物であるキクは、その照明によって開花が抑制され開花時期が遅延する問題があり、照射時間が長いほど開花抑制を招く度合いが高い。このように、害虫忌避効果と開花抑制効果とは、通常は伴って生じる関係にある。
【0007】
本発明の課題は、キクなどの短日植物の開花抑制を制御しつつ、防蛾などの防虫効果を備えた栽培方法を提供すること、及びそのような栽培に適した照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の植物栽培用照明装置は、発光部と、該発光部に接続されるとともに、所定のパルス状の電力を供給する駆動部と、該駆動部へ電力を供給する電源部とを備え、前記発光部は複数のLEDチップを備える植物栽培用照明装置であって、前記発光部から出射する光は緑色から黄色の領域に発光ピーク波長を有し、前記駆動部は前記LEDチップを所定の明期幅と暗期幅との点滅パターンで点滅させ、前記点滅は、デューティ=明期幅/(明期幅+暗期幅)が9%以上50%以下であって、短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えることを特徴とする植物栽培用照明装置である。
【0009】
本発明の植物栽培用照明装置は、前記デューティが30%以下であることが好ましい。
本発明の植物栽培用照明装置は、前記暗期幅が200ms以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の植物栽培用照明装置は、前記LEDチップはAlGaInP系LEDであることが好ましい。
【0011】
本発明の植物栽培用照明装置は、前記発光部は、窒化物半導体よりなるLEDチップと、前記LEDチップから出射される光の一部を吸収し、黄色光を出射する蛍光体とを備えることが好ましい。
【0012】
本発明の植物栽培用照明装置は、前記点滅パターンの波形は、前記明期幅内がさらにパルス幅変調されていることが好ましい。
【0013】
本発明の植物の照明栽培方法は、上記のいずれかの植物栽培用照明装置を用いて、夜間あるいは光の当たらない環境下において植物を照明する栽培方法であって、短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えた植物の照明栽培方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の栽培方法によれば、キク科の植物などの短日植物の照明栽培による開花抑制を制御しつつ、防蛾効果などの防虫効果を得ることができる。
【0015】
また、本発明の植物栽培用照明装置をキク科の植物などの短日植物の栽培に用いることにより、その開花抑制を制御しつつ、防蛾効果などの防虫効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】波長の異なる夜間照明に対するキクの開花反応特性を評価する方法を示す構成図である。
【図2】キクの開花に対する波長依存性を実験する照明装置の出射光のスペクトル分布図である。
【図3】分光分布の異なるLEDによる電照が秋ギクの到花日数に及ぼす影響を示す図である。
【図4】実施の形態1における黄色LED及び比較用の黄色蛍光灯の照明装置のスペクトル分布図である。
【図5】実施の形態1における照明装置の出射光のパルス波形を示す図である。
【図6】実施の形態1における照明装置の回路構成図である。
【図7】実施の形態1における発光部の上面図及び断面図である。
【図8】実施の形態1における黄色LEDによる夜間照明での点滅パターンと照度の違いが秋ギクの到花日数に及ぼす影響を示す図である。
【図9】実施の形態1における黄色LEDによる夜間照明でのデューティと到花日数の関係を示すグラフである。
【図10】実施の形態2におけるキクの栽培方法を示す図である。
【図11】実施の形態2におけるキクの栽培手順を示す図である。
【図12】実施の形態2における他のキクの栽培手順を示す図である。
【図13】実施の形態2における照明装置の回路構成図である。
【図14】実施の形態3における照明装置の発光パルスの波形を示す図である。
【図15】実施の形態4におけるキクの成長を表わす模式図である。
【図16】実施の形態4の照明装置の回路構成図である。
【図17】実施の形態4の照明装置における変換テーブルの説明図である。
【図18】実施の形態5における黄色蛍光LEDの上面図および断面図である。
【図19】実施の形態5における黄色蛍光LED及び比較用の黄色LEDのスペクトル分布図である。
【図20】実施の形態5における黄色蛍光LED及び比較用のAlGaInP系黄色LEDの出射光の応答特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(照明に対する蛾の視覚特性の評価)
蛾の照明に対する視覚特性として、以下の報告がなされている。夜蛾類成虫の複眼に光を照射すると微弱な電圧が発生する。この電圧を増幅して解析する網膜電位計測システムにより、夜蛾類成虫がその光を強く認識しているか否かを測定できる。この網膜電位計測システムにより、夜蛾類成虫の視認可能な波長及び視認可能な点滅の周波数を解析したところ、波長は450から600nm、周波数は40から60Hzであることが示されている(JSAM64(5):76−82,2002、植物環境工学19(1),2007)。
【0018】
夜蛾類は照明によって複眼が明適応すると活動が抑制され、逆に暗黒下では暗適応すると活動が活発になる。網膜電位計測システムにより、照明によって発生する網膜電位の大きさと、その持続時間に着目して、明適応状態を長く持続させるのに有効な照明方法について検討された。その結果、点滅パターンについては概ね20msの点灯期間、光強度については、1ルクス以上の照度という条件で効果が有ることが確認されている。
【0019】
さらにキャベツの露地圃場において黄色LEDを用いた夜間照明による防蛾効果を調査し、連続光及び7Hzの点滅光下において、オオタバコガ及びハスモンヨトウなどの夜蛾類の寄生幼虫数が、ともに無照明下の1/7から1/8に抑制されることが示されている(植物環境工学19(1),2007)。これが連続光と同様に点滅光でも夜蛾類の行動が抑制できる根拠となる知見である。
【0020】
(キクの開花反応特性の波長依存性評価)
波長の異なる夜間照明に対するキクの開花反応特性を評価する方法を図1に示す。秋ギク”神馬”60が定植されたプランター50上170cmの位置に照明装置100を設置し、照明装置100の放射照度及び波長がキクに及ぼす影響を調査した。
【0021】
実験のため照明装置100の波長を変化させた。図2はキクが有する波長依存性を実験する照明装置の出射光のスペクトル分布図である。各照明装置はLEDを光源とし、それぞれの発光色とピーク波長は、青(463nm)、緑(519nm)、黄緑(576nm)、黄(597nm)、赤(646nm)である。
【0022】
表1に示す各処理区毎に異なる条件で22時から2時までの間を夜間照明し、放射照度と波長が開花に及ぼす影響を調査した。
【0023】
表1に処理区の構成を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
処理区は、1区3株3反復、すなわち1プランター当たり3株のキクが定植されたもの3台一組を1区とし、無摘心栽培とした。なお、各プランター50の容積は6リットル(幅15cm×長さ32cm×深さ13cm)である。
【0026】
照明期間は2007年11月20日から2008年1月7日、定植8日後から夜間照明終了まで、毎週1回、生育に合わせて生長点直近が所定の放射照度になるように調節した。また比較評価するために、上記と同等のプランターを、夜間照明を行わず、自然日長下に置いたもの(無処理)を用意した。
【0027】
図3は、分光分布の異なるLEDによる電照が秋ギクの到花日数に及ぼす影響を示す図である。これによると、到花日数(夜間照明終了日から開花日までの日数)は、無処理と比べて、青−100および緑−10以外の全ての処理区で多く、放射照度の設定値が高いほど多かった。青を除くLEDでは、放射照度が同じであれば、概ね赤の到花日数が最も多く、次いで、黄、黄緑、緑の順に小さくなった。
【0028】
すなわち、キクの開花抑制作用は、赤が最も強く、次いで黄、黄緑、緑および青の順で弱いこと、また、青以外(緑色〜赤色)では、放射照度の設定値が大きいほど同作用が強いことが検証された。
【0029】
<実施の形態1>
本実施の形態は、キクの開花が制御された照明栽培方法およびそのための黄色LEDを用いた照明装置に関するものである。
【0030】
(キク照明装置)
波長の異なる夜間照明に対するキクの開花反応特性を評価する方法を図1に示す。秋ギク”神馬”60が定植されたプランター50上170cmの位置に、半導体発光装置として黄色LEDを備えた照明装置100を設置し、照明装置100の放射照度及びパルス点灯条件がキクに及ぼす影響を調査した。
【0031】
図4は本照明装置に用いたAlGaInP系黄色LED及び比較用の黄色蛍光灯の照明装置のスペクトル分布図である。以下、本実施の形態においては、AlGaInP系黄色LEDを単に黄色LEDと言う。これによると、黄色LEDの出射光はピーク波長が597nm、半値幅が20nm以下の狭帯域であって、キクの開花抑制作用が最も強いとされる、波長が600から700nmの赤色光成分が黄色蛍光灯に対し少ないため、開花の抑制が少ない。
【0032】
図5は、本照明装置の出射光のパルス波形を示す図である。本照明装置は黄色LEDを矩形波のパルス電流で駆動するが、出射光は駆動電流に追従して、明期幅と暗期幅からなる矩形波で点滅し、デューティは、明期幅/(明期幅+暗期幅)で表わされる。
【0033】
図6は、照明装置の回路構成図である。照明装置100は発光部110と、該発光部に接続されるとともに、所定のパルス状の電力を供給する駆動部120と、該駆動部へ電力を供給する電源部140を備え、発光部110よりパルス状の出射光が得られるように構成されている。駆動部120は電源部140から供給された電力を所定のパルス状の電力へ変換するパルス発生回路121と、リレー122とタイマ123とを備え、予めタイマ123に設定された時刻にリレー122の接点が開閉し、パルス発生回路121で生成された駆動電力を所定の期間、発光部110へ供給するように構成されている。
【0034】
図7は、発光部110の上面図及び断面図である。発光部110は基板111と、該基板上に縦8個、横4個の合計32個が格子状に実装された黄色LED112を備える。基板上には予め電極と配線パターン(図示しない)が形成されており、それぞれの黄色LED112は直列に接続されるように構成される。
【0035】
本照明装置によると、黄色LED112は防蛾に必要なスペクトルを主に発光し、不要なスペクトルの発光が少ない。
【0036】
なお、本実施形態に示す照明装置の構成は一例を示したものであって、上記の発光波長やパルス状の出射光が得られるものであれば良く、必ずしも上記の構成に限定されない。例えば、パルスやタイマの設定条件をマイクロコンピュータにより制御する構成や、リレー122やタイマ123は、無接点であるソリッドステートリレーを備える構成でもよい。黄色LED112の個数や配列方法、あるいは配線を適宜選択することができる。また発光パルスは、振幅やパルス幅を一定とせず、変化させるものであってもよい。また発光部に供給する電力の波形については、矩形波に限定されるものではなく、三角波や正弦波などを選択することができる。
【0037】
(夜間の点滅照明に対するキクの開花反応特性の評価)
次いで、表1に示す各処理区毎に異なる条件で16時半から7時半までの間を夜間照明栽培し、照度と暗期幅が開花に及ぼす影響を調査した。
【0038】
表2に処理区の構成を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
処理区は、1区3株3反復、すなわち1プランター当たり3株のキクが定植されたもの3台一組を1区とし、無摘心栽培とした。なお、各プランター50の容積は6リットル(幅15cm×長さ32cm×深さ13cm)である。
【0041】
照明期間は2007年11月20日から2008年3月4日、定植8日後から実験終了まで、毎週1回、生育に合わせて生長点直近が所定の照度になるように調節した。なお、照度は黄色LEDを一時的に連続点灯させ、照度計により測定した値である。また比較評価するために、上記と同等のプランターを、夜間照明を行わず、自然日長下に置いたもの(無処理)を用意した。
【0042】
図8は、黄色LEDによる夜間照明での点滅パターンと照度の違いが秋ギクの到花日数に及ぼす影響を示す図である。これによると、到花日数(定植日から開花日までの日数)は、無処理と比べて、全ての連続照明区(3−0、5−0、10−0)で多く、設定照度が高いほど多かった。また、定植日からの到花日数は、同一の設定照度内では、連続照明した区と比べて点滅させた区で減少した。点滅による到花日数の減少程度は、設定照度が最も高い10ルクスで最も大きく、次いで5ルクスとなり、3ルクスでは小幅な減少傾向となった。
【0043】
図9は、図8の結果において10ルクスの場合を横軸をデューティとしてまとめたグラフである。点線は無処理(照明なし)の到花日数である。この図より、デューティが100%の場合に比べ、50%以下で開花の抑制が少ないこと、デューティが30%以下であれば開花の抑制はほぼ生じないことがわかる。
【0044】
このように、黄色LEDによる夜間照明において、キクの生長点直近の照度を3、5、10ルクスとした場合、何れも点滅照明とすることにより、連続照明と比べて到花日数への影響を低減できることが明らかとなった。
【0045】
発明者らは、前述したような知見に基づき、LEDの備える有利な特性のひとつである、高速に点滅駆動させることが容易である点に着目し、本照明栽培方法および照明装置の発明に至った。
【0046】
なお、従来の黄色蛍光灯による照明によって,生育に悪影響が認められなかったカーネーション、バラ、トルコギキョウ、トマト等の植物にも、本照明栽培方法は適応可能である。
【0047】
<実施の形態2>
本実施の形態は、圃場を幾つかのエリアに分割し、各エリア毎に異なる照射条件のもとで夜間照明をする栽培方法およびそのための照明装置に関するものである。キクは短日植物で、日の長さが短くならないと開花しない。この性質を利用して、キクの出荷日に合わせて開花日を制御する電照栽培が行われている。本実施の形態は、この電照栽培の夜間照明を黄色LEDにより行い、開花制御と蛾に対する防虫効果の両方の効果を兼ね備えた照明を提供するものであって、LEDは点滅制御が容易である点に着目してなされたものである。
【0048】
以下、電照栽培の例を説明する。キクは定植後より所定の期間、夜間照明され、輪ギクでは背丈が50から60cmまで成長したところで、スプレーギクでは背丈が20から25cmまで成長したところで照明を止める。さらに50日程度、無処理の条件(短日条件)で栽培が継続され、背丈が90cm程度に成長したところで開花し、収穫される。従って、実際の栽培においては、先ず開花日が決定され、ここから逆算して定植日が決定されている。
【0049】
図10は、本実施の形態であるキクの栽培方法を示す図である。圃場70の3列の畝にキクが定植されており、それぞれの畝をエリアA、B、Cと名付ける。各エリアに対応して、キクを上方から照射するように照明装置200A,200B,200Cの発光部210A、210B,210Cが設置される。LEDの出射光の指向性は蛍光灯に比べ強い為、各照明装置200A,200B,200Cは、それぞれのエリアA、B、Cを独立に照射することができる。
【0050】
図11はキクの栽培手順を示す図である。通常は、定植後、夜間照明を実施し、開花予定日の約50日前に無処理とする。無処理の場合は開花抑制がされないため、その約50日後に開花する。
【0051】
本実施の形態においては、定植後、第1の照明栽培期間において後述の開花制御モードによる照明栽培を行った後、第2の照明栽培期間において開花非抑制モード(後述)に切り替えることにより開花・収穫する。その際、エリアA,B,Cのそれぞれについて第1の照明栽培期間における開花抑制の程度をデューティを変えることにより変化させ、開花・収穫時期をずらすことができる。
【0052】
ここで、開花制御モードと開花非抑制モードについて説明する(広義の開花制御モードには開花非抑制モードも含まれる)。図9に示すように、キクの到花日数はデューティによって異なり、デューティが大きい程、開花抑制効果が高い傾向がある。この特性に着目し、エリア毎に異なるデューティを設定することにより、開花日を分散させることができる。
【0053】
図10の照明装置200においては、夜間照明のデューティを切り替え可能な構成とする。例えば各照明装置200は照度を10ルクスとし、第1の照明栽培期間における開花制御モードの暗期幅はそれぞれ照明装置200Aが0(連続点灯)、照明装置200Bが20ms(デューティ50%)、照明装置200Cが100ms(デューティ17%)に設定する。なお何れの照明装置も明期幅は20msとする。こうすると図9に示すように、暗期幅の短い方、すなわちデューティが大きい方が到花日数が長くなるため、エリア毎に開花日を変えることができる。
【0054】
または、各エリア毎で、夜間照明のモードを切り替える時期を順次後送りすることによっても開花日を後送りすることができる。図12(a)に示すように、後述する照明装置400により夜間照明を実施し、開花予定日の約50日前に開花制御モード(連続点灯)から開花非抑制モード(暗期幅200ms(デューティ9%))に切り替える。このとき、モード切り替えの時期をエリアA、B、Cの順で時期をずらして行うことにより、エリア毎に開花日を後送りさせることができる。
【0055】
また、単に定植日をエリア毎に後送りさせることによっても開花日を分散させることが出来る。図12(b)に示すように、各エリア毎の開花制御モードと開花非抑制モードの条件(明期幅、暗期幅、照明期間)を同一としておき、定植日を数日ずつ後送りすることにより、開花日も数日ずつ後送りすることができる。
【0056】
開花日がエリア毎に制御可能になると、開花日が分散されるため、収穫時の利便性が高い。従来のように開花日が集中し収穫に多忙を極めるといった問題が解消される。
【0057】
また従来は、夜間照明期間終了から開花までの期間は無処理であったため、夜蛾類成虫の飛来が避けられなかったが、本実施の形態によると、この期間であっても開花非抑制モードの照明により防蛾効果を得ることができる。また従来は、開花制御を行うために、各エリア間を遮光幕で仕切る等の煩雑な作業を伴っていたが、本実施の形態によると、照明装置の設定切替えで済むため、利便性が高い。
【0058】
図13は照明装置400の回路構成図である。照明装置400は発光部410A、410B、410Cを備え、それぞれスイッチ401A,401B,401Cを介して駆動部120に接続される。駆動部120は、開花制御モード用の駆動部120Aと開花非抑制モード用の駆動部120Bとを備え、駆動部120Aは連続点灯駆動、駆動部120Bの明期幅は20ms、暗期幅は200ms(デューティ9%)とする。この構成によれば、スイッチの切替により、モードを切り替えることができる。また、発光部を増設した場合であっても駆動部は2つで済み、照明装置の製造コスト低減において有利である。
【0059】
なお、開花制御モードは連続点灯としたが、その照度を調整するため、実施の形態3で述べるように、連続点灯期間中においても防虫の対象となる虫及び栽培する植物にとって連続点灯と感じられるようなパルス幅変調を行ってもよい。
【0060】
<実施の形態3>
本実施の形態は発光パルスの波形を明期幅内においてさらにパルス幅変調としたものである。
【0061】
本実施の形態における発光パルスの波形は図14に示すように、明期幅は20msであって、この間は例えば1msの明期幅内点灯期間と1msの明期幅内消灯期間が交互に10回繰返してなる、すなわち明期幅内デューティを50%とするものである。なお、明期幅内デューティとは明期幅内点灯期間/(明期幅内点灯期間+明期幅内消灯期間)のことを言う。
【0062】
これによると夜蛾類成虫は明期幅において、明期幅内点灯期間と明期幅内消灯期間とを点滅として認識し難く、あたかも連続光のごとく認識するものと推定される。
【0063】
本実施の形態によると、夜蛾類成虫の明適応状態を長く持続させるのに有効な明期幅を、その下限値である20msを維持しつつ、トータルの点灯時間を小さくすることができる。従って、防蛾効果を大きく損なうことなく、消費電力の低減を図るとともに、キクの開花抑制効果を低くすることができる。
【0064】
<実施の形態4>
本実施の形態はキクの高さにより照明の強度を変化させる構成を備えるものである。
【0065】
図15にキクの成長を表わす模式図を示す。床面から発光部110までの高さを一定とすると、キクが成長するに従ってキクの生長点から発光部110までの距離hは次第に接近する。この時、照明装置100の出射光強度を一定とすると、前述の理由により、不必要に光量が高くなるおそれがある。この問題に鑑み、キクが成長するに従ってキクの生長点から発光部110までの距離hが接近した場合に照明装置100の明期幅内デューティを小さくさせる手段を備え、光量が一定の範囲内に維持されるように構成したものである。
【0066】
図16は照明装置300の回路構成図である。照明装置300は、明期幅内デューティが可変であるパルス発生回路121と、発光部110の出射面からキクの生長点まで距離hを測定する距離センサ310と、距離hに応じて適切な明期幅内デューティを算出する、距離−明期幅内デューティ変換テーブル311(以下、変換テーブルと言う)を備え、距離hに対応した明期幅内デューティのパルスを出力するように構成されている。
【0067】
距離センサ310としては例えば発光素子とPSD(位置検出用受光素子)を備え、三角測距により距離を測定するものなど、公知のセンサを用いることができる。また、発光部110からの出射光がキクに照射されて反射されて戻ってくる光の強度を測定する受光素子を備えたセンサなどを用いることができる。
【0068】
図17は変換テーブルの説明図である。予め発光部110から測定位置までの距離hと、これに対する測定位置での光量とを散布図にプロットしておき、その相関を求めておく。例えば図17(a)に示すように、距離hがa,b,cの順に、徐々に減少した場合に対応して、光量がA,B,Cの順に、徐々に増加したとする。この相関を基に、図17(b)に示すように、距離hがa,b,cの場合に対応して、明期幅内デューティをA,A/B,A/Cと設定する。
【0069】
これによると、キクの生長点から発光部110まで距離hは、キクの定植当初はaであるが、成長するに従ってb、cという具合に徐々に小さくなったとしても、光量を一定の範囲内に維持することができる。
【0070】
キクの成長に合わせて光量を調節する際、人間が照度計を用いて調整する必要があり、また圃場内において一律に調整することが一般的と考えられるが、本実施の形態によると、圃場内のそれぞれのキクの成長に合わせて照明装置の光量を自動的に調整することが容易であるため、省エネルギー効果及び利便性が高い。
【0071】
<実施の形態5>
本実施の形態は、実施の形態1における照明装置100中のAlGaInP系黄色LED112を黄色蛍光LED115に置き換えた植物栽培用照明装置に関するものである。
【0072】
図18は実施の形態5における黄色蛍光LED115の上面図および断面図である。黄色蛍光LED115は青色光を出射する窒化物半導体よりなるLEDチップ116と、BOSE(Ba、O、Sr、Si、Eu)よりなる蛍光体118が分散されるとともに、LEDチップ116を封止する封止樹脂117を備える。蛍光体118は青色光の一部を吸
収し、大量の黄色光を出射する。従って、この黄色蛍光LED115によると、LEDチップ116が出射する青色光と蛍光体118が出射する大量の黄色光とが混合されることにより、黄色光を出射することができる。
【0073】
表3に黄色蛍光LED及び実施の形態1に用いたAlGaInP系黄色LEDの特性の比較を示す。
【0074】
【表3】
【0075】
なお、比較用のAlGaInP系黄色LEDは蛍光体を含まず、チップ自体が黄色光を出射するものである。表3の発光効率を比較すると、黄色蛍光LEDの発光効率がAlGaInP系黄色LEDに比べて優れていることがわかる。
【0076】
図19は本実施の形態における黄色蛍光LED及び比較用のAlGaInP系黄色LEDのスペクトル分布図である。なお、黄色蛍光LED及び比較用の黄色LEDは、ともに同一の電流値で駆動している。
【0077】
図19中、夜蛾類が視認可能である波長、すなわち450から600nmの領域において黄色蛍光LED115及び比較用のAlGaInP系黄色LEDの発光効率を比較すると、黄色蛍光LED115の発光効率が高い。従って、照明装置100が黄色蛍光LED115を備えることにより、省エネルギー化の効果を一層高くすることができる。
【0078】
なお、図19のスペクトル分布における約500nm以下の青色光成分は夜蛾類の種類によっては誘引効果を生じる場合がある。この影響を除くため、この青色光成分の透過を抑制するフィルタ、例えば500nm以下をカットするフィルタを、照明装置100と秋キク60との間に設けることが好ましい。
【0079】
また、蛍光体118としてはBOSEの他、SOSE(Sr、Ba、Si、O、Eu)、YAG(Ce賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、αサイアロン((Ca)、Si、Al、O、N、Eu)等を好適に用いることができる。また、LEDチップ116を青色発光のものから例えば発光ピーク波長が390nmから420nmの紫外(近紫外)LEDとすることにより、さらなる発光効率の向上を図ることができる。
【0080】
図20(a)は黄色蛍光LEDの出射光の応答特性を示す図であり、横軸は時間(1ms/div)、縦軸は発光強度である。図20(a)に示すように、明期幅20ms、暗期幅20ms(デューティ50%)の場合はもとより、明期幅1ms、暗期幅1msの場合であっても、出射光はパルス駆動電流に追従する。蛍光体は励起光が消灯して暫くの期間は残光を発し、経過時間とともに徐々に減衰する性質を備えるが、暗期幅が1msより長ければ、駆動パルス電流の波形に対して蛍光体の残光時間が極めて短いため、出射光は駆動パルス電流に追従可能であると考えられる。
【0081】
このように、黄色蛍光LEDを用い、実施の形態1に示すような点滅周期(明期幅20ms、暗期幅20ms(デューティ50%)以上)において、所定の点滅を正確に得ることができる。
【0082】
図20(b)は比較用のAlGaInP系黄色LEDの出射光の応答特性を示す図である。AlGaInP系黄色LEDについても、黄色蛍光LEDと同等(理論上はそれよりも高速応答)の応答波形が得られており、所定の点滅が正確に得られることはいうまでもない。
【0083】
なお、本願記載の各実施の形態において照明装置の光源としてLEDを搭載しているが、少なくとも出射光の発光スペクトル、高速応答性がLEDと同等の特性を備える光源であれば、LEDの場合と同様に、防虫、開花制御の効果を得ることができる。そのような光源として例えば放電ランプ、EL(エレクトロルミネセンス)などの光源を用いることができる。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
100,300,400 照明装置、401A,401B,401C スイッチ、110,410A,410B,410C 発光部、310 距離センサ、311 変換テーブ
ル、112 黄色LED、115 黄色蛍光LED、116 LEDチップ、117 封止樹脂、118 蛍光体、120,120A,120B 駆動部、121 パルス発生回路、122 リレー、123 タイマー、140 電源部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫を忌避する効果を備えた植物の照明栽培方法(物を生産する方法)及び植物栽培用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花きを食害するオオタバコガやハスモンヨトウ等の夜蛾類は薬剤抵抗性を獲得したために、殺虫剤による防除が非常に難しい。カーネーションやバラでは、これに代わる防除法として、産卵のために圃場に飛来する成虫に対して、高い防蛾効果がある防蛾用黄色蛍光灯による夜間照明の利用が進んでいる。
【0003】
また、黄色蛍光灯に代わり黄色発光ダイオード(以下、黄色LEDと記載する)を備えた、黄色LED防虫灯システムであって、黄色LEDを点滅させることにより害虫忌避効果を高めたものがある(特許文献1)。
【0004】
また、キク、カランコエ、シャコバサボテン、ポインセチア、リーガースベゴニア、シュッコンカスミソウ、シソ、イチゴ等の短日植物に対して、赤色LED光を照射して開花時期を遅らせる技術が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−284482号公報
【特許文献2】特開平8−228599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような防蛾用照明は、短日植物に対して意図しない開花抑制を生じる場合がある。黄色LEDの出射光をキクに照射することにより害虫忌避効果が得られ、照射時間が長いほど効果は高い。一方、短日植物であるキクは、その照明によって開花が抑制され開花時期が遅延する問題があり、照射時間が長いほど開花抑制を招く度合いが高い。このように、害虫忌避効果と開花抑制効果とは、通常は伴って生じる関係にある。
【0007】
本発明の課題は、キクなどの短日植物の開花抑制を制御しつつ、防蛾などの防虫効果を備えた栽培方法を提供すること、及びそのような栽培に適した照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の植物栽培用照明装置は、発光部と、該発光部に接続されるとともに、所定のパルス状の電力を供給する駆動部と、該駆動部へ電力を供給する電源部とを備え、前記発光部は複数のLEDチップを備える植物栽培用照明装置であって、前記発光部から出射する光は緑色から黄色の領域に発光ピーク波長を有し、前記駆動部は前記LEDチップを所定の明期幅と暗期幅との点滅パターンで点滅させ、前記点滅は、デューティ=明期幅/(明期幅+暗期幅)が9%以上50%以下であって、短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えることを特徴とする植物栽培用照明装置である。
【0009】
本発明の植物栽培用照明装置は、前記デューティが30%以下であることが好ましい。
本発明の植物栽培用照明装置は、前記暗期幅が200ms以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の植物栽培用照明装置は、前記LEDチップはAlGaInP系LEDであることが好ましい。
【0011】
本発明の植物栽培用照明装置は、前記発光部は、窒化物半導体よりなるLEDチップと、前記LEDチップから出射される光の一部を吸収し、黄色光を出射する蛍光体とを備えることが好ましい。
【0012】
本発明の植物栽培用照明装置は、前記点滅パターンの波形は、前記明期幅内がさらにパルス幅変調されていることが好ましい。
【0013】
本発明の植物の照明栽培方法は、上記のいずれかの植物栽培用照明装置を用いて、夜間あるいは光の当たらない環境下において植物を照明する栽培方法であって、短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えた植物の照明栽培方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の栽培方法によれば、キク科の植物などの短日植物の照明栽培による開花抑制を制御しつつ、防蛾効果などの防虫効果を得ることができる。
【0015】
また、本発明の植物栽培用照明装置をキク科の植物などの短日植物の栽培に用いることにより、その開花抑制を制御しつつ、防蛾効果などの防虫効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】波長の異なる夜間照明に対するキクの開花反応特性を評価する方法を示す構成図である。
【図2】キクの開花に対する波長依存性を実験する照明装置の出射光のスペクトル分布図である。
【図3】分光分布の異なるLEDによる電照が秋ギクの到花日数に及ぼす影響を示す図である。
【図4】実施の形態1における黄色LED及び比較用の黄色蛍光灯の照明装置のスペクトル分布図である。
【図5】実施の形態1における照明装置の出射光のパルス波形を示す図である。
【図6】実施の形態1における照明装置の回路構成図である。
【図7】実施の形態1における発光部の上面図及び断面図である。
【図8】実施の形態1における黄色LEDによる夜間照明での点滅パターンと照度の違いが秋ギクの到花日数に及ぼす影響を示す図である。
【図9】実施の形態1における黄色LEDによる夜間照明でのデューティと到花日数の関係を示すグラフである。
【図10】実施の形態2におけるキクの栽培方法を示す図である。
【図11】実施の形態2におけるキクの栽培手順を示す図である。
【図12】実施の形態2における他のキクの栽培手順を示す図である。
【図13】実施の形態2における照明装置の回路構成図である。
【図14】実施の形態3における照明装置の発光パルスの波形を示す図である。
【図15】実施の形態4におけるキクの成長を表わす模式図である。
【図16】実施の形態4の照明装置の回路構成図である。
【図17】実施の形態4の照明装置における変換テーブルの説明図である。
【図18】実施の形態5における黄色蛍光LEDの上面図および断面図である。
【図19】実施の形態5における黄色蛍光LED及び比較用の黄色LEDのスペクトル分布図である。
【図20】実施の形態5における黄色蛍光LED及び比較用のAlGaInP系黄色LEDの出射光の応答特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(照明に対する蛾の視覚特性の評価)
蛾の照明に対する視覚特性として、以下の報告がなされている。夜蛾類成虫の複眼に光を照射すると微弱な電圧が発生する。この電圧を増幅して解析する網膜電位計測システムにより、夜蛾類成虫がその光を強く認識しているか否かを測定できる。この網膜電位計測システムにより、夜蛾類成虫の視認可能な波長及び視認可能な点滅の周波数を解析したところ、波長は450から600nm、周波数は40から60Hzであることが示されている(JSAM64(5):76−82,2002、植物環境工学19(1),2007)。
【0018】
夜蛾類は照明によって複眼が明適応すると活動が抑制され、逆に暗黒下では暗適応すると活動が活発になる。網膜電位計測システムにより、照明によって発生する網膜電位の大きさと、その持続時間に着目して、明適応状態を長く持続させるのに有効な照明方法について検討された。その結果、点滅パターンについては概ね20msの点灯期間、光強度については、1ルクス以上の照度という条件で効果が有ることが確認されている。
【0019】
さらにキャベツの露地圃場において黄色LEDを用いた夜間照明による防蛾効果を調査し、連続光及び7Hzの点滅光下において、オオタバコガ及びハスモンヨトウなどの夜蛾類の寄生幼虫数が、ともに無照明下の1/7から1/8に抑制されることが示されている(植物環境工学19(1),2007)。これが連続光と同様に点滅光でも夜蛾類の行動が抑制できる根拠となる知見である。
【0020】
(キクの開花反応特性の波長依存性評価)
波長の異なる夜間照明に対するキクの開花反応特性を評価する方法を図1に示す。秋ギク”神馬”60が定植されたプランター50上170cmの位置に照明装置100を設置し、照明装置100の放射照度及び波長がキクに及ぼす影響を調査した。
【0021】
実験のため照明装置100の波長を変化させた。図2はキクが有する波長依存性を実験する照明装置の出射光のスペクトル分布図である。各照明装置はLEDを光源とし、それぞれの発光色とピーク波長は、青(463nm)、緑(519nm)、黄緑(576nm)、黄(597nm)、赤(646nm)である。
【0022】
表1に示す各処理区毎に異なる条件で22時から2時までの間を夜間照明し、放射照度と波長が開花に及ぼす影響を調査した。
【0023】
表1に処理区の構成を示す。
【0024】
【表1】
【0025】
処理区は、1区3株3反復、すなわち1プランター当たり3株のキクが定植されたもの3台一組を1区とし、無摘心栽培とした。なお、各プランター50の容積は6リットル(幅15cm×長さ32cm×深さ13cm)である。
【0026】
照明期間は2007年11月20日から2008年1月7日、定植8日後から夜間照明終了まで、毎週1回、生育に合わせて生長点直近が所定の放射照度になるように調節した。また比較評価するために、上記と同等のプランターを、夜間照明を行わず、自然日長下に置いたもの(無処理)を用意した。
【0027】
図3は、分光分布の異なるLEDによる電照が秋ギクの到花日数に及ぼす影響を示す図である。これによると、到花日数(夜間照明終了日から開花日までの日数)は、無処理と比べて、青−100および緑−10以外の全ての処理区で多く、放射照度の設定値が高いほど多かった。青を除くLEDでは、放射照度が同じであれば、概ね赤の到花日数が最も多く、次いで、黄、黄緑、緑の順に小さくなった。
【0028】
すなわち、キクの開花抑制作用は、赤が最も強く、次いで黄、黄緑、緑および青の順で弱いこと、また、青以外(緑色〜赤色)では、放射照度の設定値が大きいほど同作用が強いことが検証された。
【0029】
<実施の形態1>
本実施の形態は、キクの開花が制御された照明栽培方法およびそのための黄色LEDを用いた照明装置に関するものである。
【0030】
(キク照明装置)
波長の異なる夜間照明に対するキクの開花反応特性を評価する方法を図1に示す。秋ギク”神馬”60が定植されたプランター50上170cmの位置に、半導体発光装置として黄色LEDを備えた照明装置100を設置し、照明装置100の放射照度及びパルス点灯条件がキクに及ぼす影響を調査した。
【0031】
図4は本照明装置に用いたAlGaInP系黄色LED及び比較用の黄色蛍光灯の照明装置のスペクトル分布図である。以下、本実施の形態においては、AlGaInP系黄色LEDを単に黄色LEDと言う。これによると、黄色LEDの出射光はピーク波長が597nm、半値幅が20nm以下の狭帯域であって、キクの開花抑制作用が最も強いとされる、波長が600から700nmの赤色光成分が黄色蛍光灯に対し少ないため、開花の抑制が少ない。
【0032】
図5は、本照明装置の出射光のパルス波形を示す図である。本照明装置は黄色LEDを矩形波のパルス電流で駆動するが、出射光は駆動電流に追従して、明期幅と暗期幅からなる矩形波で点滅し、デューティは、明期幅/(明期幅+暗期幅)で表わされる。
【0033】
図6は、照明装置の回路構成図である。照明装置100は発光部110と、該発光部に接続されるとともに、所定のパルス状の電力を供給する駆動部120と、該駆動部へ電力を供給する電源部140を備え、発光部110よりパルス状の出射光が得られるように構成されている。駆動部120は電源部140から供給された電力を所定のパルス状の電力へ変換するパルス発生回路121と、リレー122とタイマ123とを備え、予めタイマ123に設定された時刻にリレー122の接点が開閉し、パルス発生回路121で生成された駆動電力を所定の期間、発光部110へ供給するように構成されている。
【0034】
図7は、発光部110の上面図及び断面図である。発光部110は基板111と、該基板上に縦8個、横4個の合計32個が格子状に実装された黄色LED112を備える。基板上には予め電極と配線パターン(図示しない)が形成されており、それぞれの黄色LED112は直列に接続されるように構成される。
【0035】
本照明装置によると、黄色LED112は防蛾に必要なスペクトルを主に発光し、不要なスペクトルの発光が少ない。
【0036】
なお、本実施形態に示す照明装置の構成は一例を示したものであって、上記の発光波長やパルス状の出射光が得られるものであれば良く、必ずしも上記の構成に限定されない。例えば、パルスやタイマの設定条件をマイクロコンピュータにより制御する構成や、リレー122やタイマ123は、無接点であるソリッドステートリレーを備える構成でもよい。黄色LED112の個数や配列方法、あるいは配線を適宜選択することができる。また発光パルスは、振幅やパルス幅を一定とせず、変化させるものであってもよい。また発光部に供給する電力の波形については、矩形波に限定されるものではなく、三角波や正弦波などを選択することができる。
【0037】
(夜間の点滅照明に対するキクの開花反応特性の評価)
次いで、表1に示す各処理区毎に異なる条件で16時半から7時半までの間を夜間照明栽培し、照度と暗期幅が開花に及ぼす影響を調査した。
【0038】
表2に処理区の構成を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
処理区は、1区3株3反復、すなわち1プランター当たり3株のキクが定植されたもの3台一組を1区とし、無摘心栽培とした。なお、各プランター50の容積は6リットル(幅15cm×長さ32cm×深さ13cm)である。
【0041】
照明期間は2007年11月20日から2008年3月4日、定植8日後から実験終了まで、毎週1回、生育に合わせて生長点直近が所定の照度になるように調節した。なお、照度は黄色LEDを一時的に連続点灯させ、照度計により測定した値である。また比較評価するために、上記と同等のプランターを、夜間照明を行わず、自然日長下に置いたもの(無処理)を用意した。
【0042】
図8は、黄色LEDによる夜間照明での点滅パターンと照度の違いが秋ギクの到花日数に及ぼす影響を示す図である。これによると、到花日数(定植日から開花日までの日数)は、無処理と比べて、全ての連続照明区(3−0、5−0、10−0)で多く、設定照度が高いほど多かった。また、定植日からの到花日数は、同一の設定照度内では、連続照明した区と比べて点滅させた区で減少した。点滅による到花日数の減少程度は、設定照度が最も高い10ルクスで最も大きく、次いで5ルクスとなり、3ルクスでは小幅な減少傾向となった。
【0043】
図9は、図8の結果において10ルクスの場合を横軸をデューティとしてまとめたグラフである。点線は無処理(照明なし)の到花日数である。この図より、デューティが100%の場合に比べ、50%以下で開花の抑制が少ないこと、デューティが30%以下であれば開花の抑制はほぼ生じないことがわかる。
【0044】
このように、黄色LEDによる夜間照明において、キクの生長点直近の照度を3、5、10ルクスとした場合、何れも点滅照明とすることにより、連続照明と比べて到花日数への影響を低減できることが明らかとなった。
【0045】
発明者らは、前述したような知見に基づき、LEDの備える有利な特性のひとつである、高速に点滅駆動させることが容易である点に着目し、本照明栽培方法および照明装置の発明に至った。
【0046】
なお、従来の黄色蛍光灯による照明によって,生育に悪影響が認められなかったカーネーション、バラ、トルコギキョウ、トマト等の植物にも、本照明栽培方法は適応可能である。
【0047】
<実施の形態2>
本実施の形態は、圃場を幾つかのエリアに分割し、各エリア毎に異なる照射条件のもとで夜間照明をする栽培方法およびそのための照明装置に関するものである。キクは短日植物で、日の長さが短くならないと開花しない。この性質を利用して、キクの出荷日に合わせて開花日を制御する電照栽培が行われている。本実施の形態は、この電照栽培の夜間照明を黄色LEDにより行い、開花制御と蛾に対する防虫効果の両方の効果を兼ね備えた照明を提供するものであって、LEDは点滅制御が容易である点に着目してなされたものである。
【0048】
以下、電照栽培の例を説明する。キクは定植後より所定の期間、夜間照明され、輪ギクでは背丈が50から60cmまで成長したところで、スプレーギクでは背丈が20から25cmまで成長したところで照明を止める。さらに50日程度、無処理の条件(短日条件)で栽培が継続され、背丈が90cm程度に成長したところで開花し、収穫される。従って、実際の栽培においては、先ず開花日が決定され、ここから逆算して定植日が決定されている。
【0049】
図10は、本実施の形態であるキクの栽培方法を示す図である。圃場70の3列の畝にキクが定植されており、それぞれの畝をエリアA、B、Cと名付ける。各エリアに対応して、キクを上方から照射するように照明装置200A,200B,200Cの発光部210A、210B,210Cが設置される。LEDの出射光の指向性は蛍光灯に比べ強い為、各照明装置200A,200B,200Cは、それぞれのエリアA、B、Cを独立に照射することができる。
【0050】
図11はキクの栽培手順を示す図である。通常は、定植後、夜間照明を実施し、開花予定日の約50日前に無処理とする。無処理の場合は開花抑制がされないため、その約50日後に開花する。
【0051】
本実施の形態においては、定植後、第1の照明栽培期間において後述の開花制御モードによる照明栽培を行った後、第2の照明栽培期間において開花非抑制モード(後述)に切り替えることにより開花・収穫する。その際、エリアA,B,Cのそれぞれについて第1の照明栽培期間における開花抑制の程度をデューティを変えることにより変化させ、開花・収穫時期をずらすことができる。
【0052】
ここで、開花制御モードと開花非抑制モードについて説明する(広義の開花制御モードには開花非抑制モードも含まれる)。図9に示すように、キクの到花日数はデューティによって異なり、デューティが大きい程、開花抑制効果が高い傾向がある。この特性に着目し、エリア毎に異なるデューティを設定することにより、開花日を分散させることができる。
【0053】
図10の照明装置200においては、夜間照明のデューティを切り替え可能な構成とする。例えば各照明装置200は照度を10ルクスとし、第1の照明栽培期間における開花制御モードの暗期幅はそれぞれ照明装置200Aが0(連続点灯)、照明装置200Bが20ms(デューティ50%)、照明装置200Cが100ms(デューティ17%)に設定する。なお何れの照明装置も明期幅は20msとする。こうすると図9に示すように、暗期幅の短い方、すなわちデューティが大きい方が到花日数が長くなるため、エリア毎に開花日を変えることができる。
【0054】
または、各エリア毎で、夜間照明のモードを切り替える時期を順次後送りすることによっても開花日を後送りすることができる。図12(a)に示すように、後述する照明装置400により夜間照明を実施し、開花予定日の約50日前に開花制御モード(連続点灯)から開花非抑制モード(暗期幅200ms(デューティ9%))に切り替える。このとき、モード切り替えの時期をエリアA、B、Cの順で時期をずらして行うことにより、エリア毎に開花日を後送りさせることができる。
【0055】
また、単に定植日をエリア毎に後送りさせることによっても開花日を分散させることが出来る。図12(b)に示すように、各エリア毎の開花制御モードと開花非抑制モードの条件(明期幅、暗期幅、照明期間)を同一としておき、定植日を数日ずつ後送りすることにより、開花日も数日ずつ後送りすることができる。
【0056】
開花日がエリア毎に制御可能になると、開花日が分散されるため、収穫時の利便性が高い。従来のように開花日が集中し収穫に多忙を極めるといった問題が解消される。
【0057】
また従来は、夜間照明期間終了から開花までの期間は無処理であったため、夜蛾類成虫の飛来が避けられなかったが、本実施の形態によると、この期間であっても開花非抑制モードの照明により防蛾効果を得ることができる。また従来は、開花制御を行うために、各エリア間を遮光幕で仕切る等の煩雑な作業を伴っていたが、本実施の形態によると、照明装置の設定切替えで済むため、利便性が高い。
【0058】
図13は照明装置400の回路構成図である。照明装置400は発光部410A、410B、410Cを備え、それぞれスイッチ401A,401B,401Cを介して駆動部120に接続される。駆動部120は、開花制御モード用の駆動部120Aと開花非抑制モード用の駆動部120Bとを備え、駆動部120Aは連続点灯駆動、駆動部120Bの明期幅は20ms、暗期幅は200ms(デューティ9%)とする。この構成によれば、スイッチの切替により、モードを切り替えることができる。また、発光部を増設した場合であっても駆動部は2つで済み、照明装置の製造コスト低減において有利である。
【0059】
なお、開花制御モードは連続点灯としたが、その照度を調整するため、実施の形態3で述べるように、連続点灯期間中においても防虫の対象となる虫及び栽培する植物にとって連続点灯と感じられるようなパルス幅変調を行ってもよい。
【0060】
<実施の形態3>
本実施の形態は発光パルスの波形を明期幅内においてさらにパルス幅変調としたものである。
【0061】
本実施の形態における発光パルスの波形は図14に示すように、明期幅は20msであって、この間は例えば1msの明期幅内点灯期間と1msの明期幅内消灯期間が交互に10回繰返してなる、すなわち明期幅内デューティを50%とするものである。なお、明期幅内デューティとは明期幅内点灯期間/(明期幅内点灯期間+明期幅内消灯期間)のことを言う。
【0062】
これによると夜蛾類成虫は明期幅において、明期幅内点灯期間と明期幅内消灯期間とを点滅として認識し難く、あたかも連続光のごとく認識するものと推定される。
【0063】
本実施の形態によると、夜蛾類成虫の明適応状態を長く持続させるのに有効な明期幅を、その下限値である20msを維持しつつ、トータルの点灯時間を小さくすることができる。従って、防蛾効果を大きく損なうことなく、消費電力の低減を図るとともに、キクの開花抑制効果を低くすることができる。
【0064】
<実施の形態4>
本実施の形態はキクの高さにより照明の強度を変化させる構成を備えるものである。
【0065】
図15にキクの成長を表わす模式図を示す。床面から発光部110までの高さを一定とすると、キクが成長するに従ってキクの生長点から発光部110までの距離hは次第に接近する。この時、照明装置100の出射光強度を一定とすると、前述の理由により、不必要に光量が高くなるおそれがある。この問題に鑑み、キクが成長するに従ってキクの生長点から発光部110までの距離hが接近した場合に照明装置100の明期幅内デューティを小さくさせる手段を備え、光量が一定の範囲内に維持されるように構成したものである。
【0066】
図16は照明装置300の回路構成図である。照明装置300は、明期幅内デューティが可変であるパルス発生回路121と、発光部110の出射面からキクの生長点まで距離hを測定する距離センサ310と、距離hに応じて適切な明期幅内デューティを算出する、距離−明期幅内デューティ変換テーブル311(以下、変換テーブルと言う)を備え、距離hに対応した明期幅内デューティのパルスを出力するように構成されている。
【0067】
距離センサ310としては例えば発光素子とPSD(位置検出用受光素子)を備え、三角測距により距離を測定するものなど、公知のセンサを用いることができる。また、発光部110からの出射光がキクに照射されて反射されて戻ってくる光の強度を測定する受光素子を備えたセンサなどを用いることができる。
【0068】
図17は変換テーブルの説明図である。予め発光部110から測定位置までの距離hと、これに対する測定位置での光量とを散布図にプロットしておき、その相関を求めておく。例えば図17(a)に示すように、距離hがa,b,cの順に、徐々に減少した場合に対応して、光量がA,B,Cの順に、徐々に増加したとする。この相関を基に、図17(b)に示すように、距離hがa,b,cの場合に対応して、明期幅内デューティをA,A/B,A/Cと設定する。
【0069】
これによると、キクの生長点から発光部110まで距離hは、キクの定植当初はaであるが、成長するに従ってb、cという具合に徐々に小さくなったとしても、光量を一定の範囲内に維持することができる。
【0070】
キクの成長に合わせて光量を調節する際、人間が照度計を用いて調整する必要があり、また圃場内において一律に調整することが一般的と考えられるが、本実施の形態によると、圃場内のそれぞれのキクの成長に合わせて照明装置の光量を自動的に調整することが容易であるため、省エネルギー効果及び利便性が高い。
【0071】
<実施の形態5>
本実施の形態は、実施の形態1における照明装置100中のAlGaInP系黄色LED112を黄色蛍光LED115に置き換えた植物栽培用照明装置に関するものである。
【0072】
図18は実施の形態5における黄色蛍光LED115の上面図および断面図である。黄色蛍光LED115は青色光を出射する窒化物半導体よりなるLEDチップ116と、BOSE(Ba、O、Sr、Si、Eu)よりなる蛍光体118が分散されるとともに、LEDチップ116を封止する封止樹脂117を備える。蛍光体118は青色光の一部を吸
収し、大量の黄色光を出射する。従って、この黄色蛍光LED115によると、LEDチップ116が出射する青色光と蛍光体118が出射する大量の黄色光とが混合されることにより、黄色光を出射することができる。
【0073】
表3に黄色蛍光LED及び実施の形態1に用いたAlGaInP系黄色LEDの特性の比較を示す。
【0074】
【表3】
【0075】
なお、比較用のAlGaInP系黄色LEDは蛍光体を含まず、チップ自体が黄色光を出射するものである。表3の発光効率を比較すると、黄色蛍光LEDの発光効率がAlGaInP系黄色LEDに比べて優れていることがわかる。
【0076】
図19は本実施の形態における黄色蛍光LED及び比較用のAlGaInP系黄色LEDのスペクトル分布図である。なお、黄色蛍光LED及び比較用の黄色LEDは、ともに同一の電流値で駆動している。
【0077】
図19中、夜蛾類が視認可能である波長、すなわち450から600nmの領域において黄色蛍光LED115及び比較用のAlGaInP系黄色LEDの発光効率を比較すると、黄色蛍光LED115の発光効率が高い。従って、照明装置100が黄色蛍光LED115を備えることにより、省エネルギー化の効果を一層高くすることができる。
【0078】
なお、図19のスペクトル分布における約500nm以下の青色光成分は夜蛾類の種類によっては誘引効果を生じる場合がある。この影響を除くため、この青色光成分の透過を抑制するフィルタ、例えば500nm以下をカットするフィルタを、照明装置100と秋キク60との間に設けることが好ましい。
【0079】
また、蛍光体118としてはBOSEの他、SOSE(Sr、Ba、Si、O、Eu)、YAG(Ce賦活イットリウム・アルミニウム・ガーネット)、αサイアロン((Ca)、Si、Al、O、N、Eu)等を好適に用いることができる。また、LEDチップ116を青色発光のものから例えば発光ピーク波長が390nmから420nmの紫外(近紫外)LEDとすることにより、さらなる発光効率の向上を図ることができる。
【0080】
図20(a)は黄色蛍光LEDの出射光の応答特性を示す図であり、横軸は時間(1ms/div)、縦軸は発光強度である。図20(a)に示すように、明期幅20ms、暗期幅20ms(デューティ50%)の場合はもとより、明期幅1ms、暗期幅1msの場合であっても、出射光はパルス駆動電流に追従する。蛍光体は励起光が消灯して暫くの期間は残光を発し、経過時間とともに徐々に減衰する性質を備えるが、暗期幅が1msより長ければ、駆動パルス電流の波形に対して蛍光体の残光時間が極めて短いため、出射光は駆動パルス電流に追従可能であると考えられる。
【0081】
このように、黄色蛍光LEDを用い、実施の形態1に示すような点滅周期(明期幅20ms、暗期幅20ms(デューティ50%)以上)において、所定の点滅を正確に得ることができる。
【0082】
図20(b)は比較用のAlGaInP系黄色LEDの出射光の応答特性を示す図である。AlGaInP系黄色LEDについても、黄色蛍光LEDと同等(理論上はそれよりも高速応答)の応答波形が得られており、所定の点滅が正確に得られることはいうまでもない。
【0083】
なお、本願記載の各実施の形態において照明装置の光源としてLEDを搭載しているが、少なくとも出射光の発光スペクトル、高速応答性がLEDと同等の特性を備える光源であれば、LEDの場合と同様に、防虫、開花制御の効果を得ることができる。そのような光源として例えば放電ランプ、EL(エレクトロルミネセンス)などの光源を用いることができる。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
100,300,400 照明装置、401A,401B,401C スイッチ、110,410A,410B,410C 発光部、310 距離センサ、311 変換テーブ
ル、112 黄色LED、115 黄色蛍光LED、116 LEDチップ、117 封止樹脂、118 蛍光体、120,120A,120B 駆動部、121 パルス発生回路、122 リレー、123 タイマー、140 電源部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、該発光部に接続されるとともに、所定のパルス状の電力を供給する駆動部と、該駆動部へ電力を供給する電源部とを備え、前記発光部は複数のLEDチップを備える植物栽培用照明装置であって、
前記発光部から出射する光は緑色から黄色の領域に発光ピーク波長を有し、
前記駆動部は前記LEDチップを所定の明期幅と暗期幅との点滅パターンで点滅させ、
前記点滅は、デューティ=明期幅/(明期幅+暗期幅)が9%以上50%以下であって、短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えることを特徴とする植物栽培用照明装置。
【請求項2】
前記デューティが30%以下である、請求項1に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項3】
前記暗期幅が200ms以下である、請求項1または2に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項4】
前記LEDチップはAlGaInP系LEDであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項5】
前記発光部は、窒化物半導体よりなるLEDチップと、前記LEDチップから出射される光の一部を吸収し、黄色光を出射する蛍光体とを備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項6】
前記点滅パターンの波形は、前記明期幅内がさらにパルス幅変調されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の植物栽培用照明装置を用いて、夜間あるいは光の当たらない環境下において植物を照明する栽培方法であって、
短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えた植物の照明栽培方法。
【請求項1】
発光部と、該発光部に接続されるとともに、所定のパルス状の電力を供給する駆動部と、該駆動部へ電力を供給する電源部とを備え、前記発光部は複数のLEDチップを備える植物栽培用照明装置であって、
前記発光部から出射する光は緑色から黄色の領域に発光ピーク波長を有し、
前記駆動部は前記LEDチップを所定の明期幅と暗期幅との点滅パターンで点滅させ、
前記点滅は、デューティ=明期幅/(明期幅+暗期幅)が9%以上50%以下であって、短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えることを特徴とする植物栽培用照明装置。
【請求項2】
前記デューティが30%以下である、請求項1に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項3】
前記暗期幅が200ms以下である、請求項1または2に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項4】
前記LEDチップはAlGaInP系LEDであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項5】
前記発光部は、窒化物半導体よりなるLEDチップと、前記LEDチップから出射される光の一部を吸収し、黄色光を出射する蛍光体とを備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項6】
前記点滅パターンの波形は、前記明期幅内がさらにパルス幅変調されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の植物栽培用照明装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の植物栽培用照明装置を用いて、夜間あるいは光の当たらない環境下において植物を照明する栽培方法であって、
短日植物の開花抑制をほぼ生じないで防虫効果を備えた植物の照明栽培方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−152226(P2012−152226A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115439(P2012−115439)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2008−239716(P2008−239716)の分割
【原出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(591079487)広島県 (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2008−239716(P2008−239716)の分割
【原出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(591079487)広島県 (101)
【Fターム(参考)】
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