説明

防虫網付き天窓装置

【課題】 従来の防虫網付き天窓装置は、防虫網が開口部と天窓との間にわたるように設けられているために、防虫網が風に煽られやすく、ひいては防虫網が開口部と天窓との間に挟まれたまま前記閉状態となりやすく、防虫網が傷んだり破れたりするおそれがある。
【解決手段】 開口部52の全面を塞ぐ防虫網58を設け、天窓54を回動するための開閉用ロッド55を設け、防虫網58をその内部の連結位置59で開閉用ロッド55に連結し、前記開状態では開口部52の全周及び前記連結位置59から下側に弛むように防虫網58を開口部52の面積より広い面積で構成し、開閉用ロッド55が横方向で回動支点軸53側に移動しながら下側に移動することにより前記開状態から前記閉状態となるよう天窓54が下側へ回動し、前記閉状態では防虫網58の全面が開口部52の下側に収まる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば栽培温室や育苗ハウス等の建屋に設ける防虫網付き天窓装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
天窓が屋根に備える開口部に合致して閉状態となり、端部の回動支点軸により前記天窓が上側に回動して開状態となる防虫網付き天窓装置において、一端側を開口部に接続し他端側を天窓に接続して開口部と天窓との間にわたるように防虫網を設け、天窓の任意の位置に連結され天窓を回動するための開閉用ロッドを設け、防虫網をその内部の連結位置で開閉用ロッドに連結し、開閉用ロッドが横方向で回動支点軸側に移動しながら下側に移動することにより前記開状態から前記閉状態となるよう天窓が下側へ回動し、前記閉状態では防虫網の全面を開口部の下側に収めるようにしたものがある(特許文献1参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第3081599号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記背景技術によると、防虫網をその内部の連結位置で開閉用ロッドに連結しているので、天窓を下側へ回動させて閉状態とするとき、防虫網が開口部の下側へ誘導されるが、防虫網が開口部と天窓との間にわたるように設けられているために、防虫網が風に煽られやすく、ひいては防虫網が開口部と天窓との間に挟まれたまま前記閉状態となりやすく、防虫網が傷んだり破れたりするおそれがある。尚、防虫網が屋外に出たままになると、風雨にさらされて防虫網が傷みやすくなる。
【0004】
また、防虫網の一端側を開口部に接続し他端側を天窓に接続する構成であり、防虫網を開口部と天窓との2部品にわたって装着しなければならず、防虫網の装着が行いにくく面倒であると共に、メンテナンス等のために屋根から天窓を取り外す際に防虫網の接続を外す必要があり、メンテナンス性が悪い。
【0005】
そこで、防虫網を開口部より下側に設けて天窓の回動で移動しないように構成することが考えられるが、天窓を回動するための開閉用ロッドに干渉しないように防虫網を配置するためには、防虫網を開口部よりかなり下側に配置しなければならず、開口部の面積に対して防虫網の面積を極端に広くする必要があり、コストアップとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、天窓(54)が屋根(50)に備える開口部(52)に合致して閉状態となり、端部の回動支点軸(53)により前記天窓(54)が上側に回動して開状態となる防虫網付き天窓装置において、外縁部を開口部(52)の全周に接続して該開口部(52)の全面を塞ぐ防虫網(58)を設け、天窓(54)の任意の位置に連結され天窓(54)を回動するための開閉用ロッド(55)を設け、防虫網(58)をその内部の連結位置(59)で開閉用ロッド(55)に連結し、前記開状態では開口部(52)の全周及び前記連結位置(59)から下側に弛むように防虫網(58)を開口部(52)の面積より広い面積で構成し、開閉用ロッド(55)が横方向で回動支点軸(53)側に移動しながら下側に移動することにより前記開状態から前記閉状態となるよう天窓(54)が下側へ回動し、前記閉状態では防虫網(58)の全面が開口部(52)の下側に収まる構成とした防虫網付き天窓装置とした。
【0007】
従って、開閉用ロッド(55)を横方向で回動支点軸(53)とは反対側に移動させながら上側に移動させることにより天窓(54)が上側に回動して開状態となり、開閉用ロッド(55)を横方向で回動支点軸(53)側に移動させながら下側に移動させることにより天窓(54)が下側へ回動し閉状態となる。防虫網(58)は、その外縁部を開口部(52)の全周に接続する構成であるため、開口部(52)に対して装着すればよく、また天窓(54)には接続されていないので、屋根(50)から天窓(54)を取り外す際に防虫網(58)の接続を外す必要がない。そして、開閉用ロッド(55)すなわち防虫網(58)の内部の連結位置(59)が横方向で回動支点軸(53)側に移動しながら下側に移動することにより、防虫網(58)を天窓(54)の開閉による天窓(54)と開口部(52)との合わせ部分から離れる側へ誘導しながら開口部(52)の下側にうまく収納することができる。しかも、天窓(54)の開状態では開口部(52)の全周及び前記連結位置(59)から下側に弛むように防虫網(58)を構成しているので、防虫網(58)が風に煽られにくい。更に、防虫網(58)の外縁部を開口部(52)の全周に接続する構成であるので、開口部(52)の面積に対して防虫網(58)の面積を極端に広くする必要がない。
【発明の効果】
【0008】
よって、防虫網(58)は開口部(52)に対して装着すればよく、防虫網(58)の装着が容易である。また、屋根(50)から天窓(54)を取り外す際に、防虫網(58)の接続を外す必要がないため、メンテナンス性が良くなる。そして、防虫網(58)を天窓(54)の開閉による天窓(54)と開口部(52)との合わせ部分から離れる側へ誘導しながら開口部(52)の下側にうまく収納することができると共に、防虫網(58)が風に煽られにくいので、防虫網(58)が開口部(52)と天窓(54)との間に挟まれたまま前記閉状態となるようなことを防止でき、防虫網(58)が傷んだり破れたりするのを防止できる。更に、開口部(52)の面積に対して防虫網(58)の面積を極端に広くする必要がなく、コストダウンが図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
養液栽培ハウス1内に、苺の親株Aから伸びたランナーから発生した子株を育苗する育苗装置2と苺の養液栽培装置3とが設けられている。
【0010】
育苗装置2は、正面視で台形状に枠組した支持枠4に目抜き鋼板(多数の孔が開いている鋼板)よりなる載置台5…を6段固定し、最上段の載置台5上に苺の親株用プランター6…が一列に多数載置されている。そして、上から2段目〜6段面の載置台5…の各々の左右端部に内部にビニール製の内径が6〜9cmの育苗用ポット7(底面には給水及び排水用の孔があいている)を多数収納できる子株用トイ8a,8b,8c,8d,8eを載置している。
【0011】
9は苺の親株Aに灌水する為の小さな灌水孔を多数設けた灌水パイプであり、一列に並べられた親株用プランター6…の上面に沿って配置して設けてあり、養液栽培ハウス1内の土中に埋設された給水配管10より第1給水管11にて液肥入りの水(養液)が給水されて、一列に並べられた親株用プランター6…内に植えられた苺の各親株Aに養液を灌水するように構成されている。
【0012】
12は最上段の載置台5の下方に配置された排水用トイであって、各親株用プランター6…の底面に設けられた排水孔から排水される排出養液を受けて、第1排水管13にて排水配管14に使用済み養液を排水する構成となっている。
【0013】
15は子株用トイ8a…の各々に養液を給水する第2給水管であって、基部は給水配管10に連結され、各出水部15a…は各子株用トイ8a…内に臨んで設けられている。尚、15b…は、各子株用トイ8a…への養液を給水したり停止したりする為の給水バルブである。
【0014】
16は分岐した先端部16a…が各子株用トイ8a…の底面に連結され使用済みの養液を排水する第2排水管であって、基部は排水配管14に連結され、各子株用トイ8a…の使用済みの養液を排水するように設けられている。
【0015】
ここで、上記育苗装置2で苺の親株Aから伸びたランナーから発生した子株を育苗する方法を説明する。
先ず、各親株用プランター6…内に細粒状のロックウールを栽培用床として充填し、苺の親株Aを2列に植える。そして、各子株用トイ8a…内には、内部に細粒状のロックウールを育苗用床として充填した育苗用ポット7…を密着状にして並べて載置する。
【0016】
そして、灌水パイプ9にて各苺の親株Aに養液を灌水し、使用済み養液は排水用トイ12で受けて第1排水管13にて排水配管14に排水して、育苗する。この時点では、各子株用トイ8a…に対応する給水バルブ15b…は、全て閉じておく。
【0017】
苺の親株Aを育苗すると、やがてランナーが伸びてその先端に第1番目の子株a1ができる。そこで、その子株a1を2段目の載置台上の子株用トイ8a内の育苗用ポット7に植える。そして、2段目の載置台上の子株用トイ8aへの養液給水をする為に2段目の載置台上の子株用トイ8aに対応する給水バルブ15bを開け、各親株Aと同時に2段目の載置台上の子株用トイ8a内の育苗用ポット7に植えられた子株a1にも養液を給水し、育苗する。尚、子株用トイ8a内に養液を給水すると、養液は、育苗用ポット7の底面に開けた孔から育苗用ポット7内部に入り込み育苗用床(細粒状のロックウール)に植えられた子株a1は養液を吸収して成長する。そして、使用済み養液は、第2排水管16にて排水配管14に排水される。
【0018】
このようにして、親株Aと子株a1を育苗すると、今度は、子株a1からランナーが伸びてその先端に第2番目の子株a2ができる。そこで、その子株a2を3段目の載置台上の子株用トイ8b内の育苗用ポット7に植える。そして、3段目の載置台上の子株用トイ8bへの養液給水をする為に3段目の載置台上の子株用トイ8bに対応する給水バルブ15bを開け、各親株A・子株a1と同時に3段目の載置台上の子株用トイ8b内の育苗用ポット7に植えられた子株a2にも養液を給水し、育苗する。
【0019】
次に、親株A・子株a1・a2を育苗すると、今度は、子株a2からランナーが伸びてその先端に第3番目の子株a3ができる。そこで、その子株a3を4段目の載置台上の子株用トイ8c内の育苗用ポット7に植える。そして、4段目の載置台上の子株用トイ8cへの養液給水をする為に4段目の載置台上の子株用トイ8cに対応する給水バルブ15bを開け、各親株A・子株a1・a2と同時に4段目の載置台上の子株用トイ8c内の育苗用ポット7に植えられた子株a3にも養液を給水し、育苗する。
【0020】
次に、親株A・子株a1・a2・a3を育苗すると、今度は、子株a3からランナーが伸びてその先端に第4番目の子株a4ができる。そこで、その子株a4を5段目の載置台上の子株用トイ8d内の育苗用ポット7に植える。そして、5段目の載置台上の子株用トイ8dへの養液給水をする為に5段目の載置台上の子株用トイ8dに対応する給水バルブ15bを開け、各親株A・子株a1・a2・a3と同時に5段目の載置台上の子株用トイ8d内の育苗用ポット7に植えられた子株a4にも養液を給水し、育苗する。
【0021】
次に、親株A・子株a1・a2・a3・a4を育苗すると、今度は、子株a4からランナーが伸びてその先端に第5番目の子株a5ができる。そこで、その子株a5を6段目の載置台上の子株用トイ8e内の育苗用ポット7に植える。そして、6段目の載置台上の子株用トイ8eへの養液給水をする為に6段目の載置台上の子株用トイ8eに対応する給水バルブ15bを開け、各親株A・子株a1・a2・a3・a4と同時に6段目の載置台上の子株用トイ8e内の育苗用ポット7に植えられた子株a5にも養液を給水し、育苗する。
【0022】
このようにして、子株から順次発生していくランナー先端の子株を育苗用ポット7に植えて育苗する。
そして、一つの親株から4〜5本のランナーを伸ばして、1本のランナーに4〜5個の子株がつくようにして、育苗する。即ち、一つの親株で16個〜25個の子株を発生させて育苗すると、良質の子株の育成が行なえる。
【0023】
そして、成育した子株は、ランナーを切って、育苗用ポット7ごと子株用トイ8a(8b,8c,8d,8e)から取出して、後述の養液栽培装置3に持って行き、子株を育苗用ポット7から育苗用床(細粒状のロックウール)ごと取出し、そのまま養液栽培装置3の栽培培地に植える。従って、子株の根が育苗用床(細粒状のロックウール)にある状態のままで養液栽培装置3の栽培培地に植えることができるので、子株の根を傷めることがなく、子株の苗質が良いので、以後の苺栽培が良好に行なえて、良質の苺の収穫が行なえ、一株当りの収穫量も増加する。
【0024】
次に、養液栽培装置3について説明する。
パイプ材にて構成された高設架台20が、養液栽培ハウス1内に、作業者が栽培作業(苗に対する点検や防除や収穫等の各種作業)を行ないながら歩行できる間隔をあけて、複数列設けられている。
【0025】
各高設架台20上には発砲スチロールよりなる水耕ベッド21を載置し、該水耕ベッド21の凹部22内に不織布よりなる水耕シート23を敷き、その上に根切りシート24(細かい目あいの樹脂製網状ネット)を敷いてその中に細粒状のロックウールよりなる栽培培地25を充填している。
【0026】
そして、水耕ベッド21の凹部22内の側壁部に所定間隔をあけて、板状の水耕シート受け部材26…を配設している。該水耕シート受け部材26は図に示すように上部が緩やかな円弧面を形成する構成となっており、水耕ベッド21の左右両側より垂れ下がるように設けた水耕シート23を下方より受けて、該水耕シート23が緩やかな円弧状面を形成するように作用する。
【0027】
27は栽培培地25上面に配置された灌水用パイプであって、所定間隔に小さな孔が形成されており、栽培培地25に2列に植えられた苺の苗に養液を灌水する構成となっている。苺の苗は苺がなる方向が決まっているので、水耕ベッド21に苺の苗を植えるときに、苺が水耕ベッド21の外側方に向けてなるように植える。
【0028】
すると、苺は水耕ベッド21の左右両外側に垂れ下がるようにして実る。この時、水耕シート受け部材26にて水耕シート23が下方より受けられて、水耕シート23が緩やかな円弧状面を形成して水耕ベッド21の左右両側で下方に垂れ下がっているので、苺のなっている茎は、この緩やかな円弧状面に受けられているから折れたり傷ついたりすることが防止されて、苺は良好に成育し良質の苺を収穫することができる。
【0029】
28は水耕ベッド21の凹部22左右中央部の底面部に設けた排水用の溝で、使用済みの養液を排水する為に設けられている。
29は自走式の防除装置であって、正面視で門型状の防除パイプ30と高設架台20の左右両側方に固定されたレール31を電動モーターの駆動で自走する走行輪32とで構成されている。そして、防除パイプ30には、薬液散布ノズル33…が正面視で苗に上方及び左右両側方及び左右下方から薬液を散布できるように設けられており、また、薬液パイプ34にて薬液供給機(図示せず)に連結されている。
【0030】
よって、防除装置29は、レール31を走行輪32が自走して、養液栽培装置3の栽培培地に植えられた苺苗の葉の表側及び裏側の両面に適正に薬液を散布し、養液栽培装置3の栽培培地に2列に植えられた全ての苺苗に対して適正な薬液散布作業が自動で行える。そして、1つの養液栽培装置3の薬剤散布が終われば、その養液栽培装置3のレール31から防除装置29を取り外し、隣の養液栽培装置3のレール31に防除装置29を乗せて、同様にして薬剤散布作業を行なう。従って、少ない労力で効率良く、然も、苺苗の葉の表側及び裏側の両面に適正に薬液を散布できる。
【0031】
尚、養液栽培装置3に設けたレール31を防除装置29が自走する形態に代えて、養液栽培装置3の上方にワイヤーを張って、該ワイヤーに正面視で門型状の防除パイプ30を装備する防除装置29を吊り下げて、防除装置29をワイヤーに沿って動力で移動させるか人が引っ張って移動させながら薬剤散布作業を行なうようにしても良い。
【0032】
以上の育苗装置2及び養液栽培装置3により、苺栽培する過程を総合して説明すると、前記育苗装置2で育成した良質の子株を育苗用ポット7から育苗用床(細粒状のロックウール)ごと取出し、そのまま養液栽培装置3の栽培培地に植える。従って、子株の根が育苗用床(細粒状のロックウール)にある状態のままで養液栽培装置3の栽培培地25に植えられる。そして、灌水用パイプ27にて苗に養液を灌水し、使用済みの養液は排水用の溝28にて排水して苗を栽培する。すると、子株の根を傷めることがなく、子株の苗質が良いので、苺栽培が良好に行なえる。然も、苺は水耕ベッド21の左右両外側に垂れ下がるようにして実り、水耕シート受け部材26にて水耕シート23が下方より受けられて、水耕シート23が緩やかな円弧状面を形成して水耕ベッド21の左右両側で下方に垂れ下がっているので、苺のなっている茎は、この緩やかな円弧状面に受けられているから折れたり傷ついたりすることが防止されて、苺は良好に成育し良質の苺を収穫することができ、一株当りの収穫量も増加する。
【0033】
尚、養液栽培ハウス1内の天井部位には、遮光カーテン60が開閉自在に設けられている。そして、該遮光カーテン60の下方には、ハウス内の空気を循環させて室温を均一にする循環ファン61が設けられている。そして、特に、この実施例の養液栽培ハウス1においては、循環ファン61による送風が遮光カーテン60に直接当たらないように、遮光カーテン60の下方に防風ネット62が設けられている。従って、ハウス内の空気を循環させて室温を均一にする為に循環ファン61にて送風しても、防風ネット62により風は弱められるので、遮光カーテン60に強い風が当たることが防止されて、遮光カーテン60が風により破れたて破損することが防止できる。尚、遮光カーテン60に風が当たらないように循環ファン61の風を下方に向けることが考えられるが、風を下方に向けると、養液栽培装置3の苗に強い風が当たるので、苗の成育に支障をきたしてしまい良くない。
【0034】
図6は、養液栽培ハウス1の屋根50を示すものであり、各棟の屋根50は両側が下位となる三角形状の傾斜面で構成され、各棟の屋根50の間の谷部には雨水等を排水するための樋51を設けている。屋根50には、該屋根50の頂上部から下側に適宜広さの長方形状の開口部52を備えている。開口部52における屋根50の頂上側の端部には回動支点軸53を設け、該回動支点軸53回りに上下に回動する天窓54を設けている。この天窓54は、前記開口部52と略同じ長方形状であり、開口部52に合致する閉状態から上側に回動する開状態に切替できる構成となっている。天窓54の回動支点軸53とは反対側の位置に開閉用ロッド55の一端が連結され、前記開閉用ロッド55の他端はラチス56の上側で水平方向に延びる開閉駆動用軸57に連結されている。そして、前記開閉駆動用軸57は、図示しないモータの駆動により該軸57方向にスライド移動する構成となっている。従って、前記モータを駆動すると、開閉駆動用軸57が水平移動(横移動)し、開閉用ロッド55が上下に移動して天窓54を上下に回動する構成となっている。
【0035】
天窓54を全開位置(最上位置)にするとき、接触式の全開位置センサが天窓54が全開位置(最上位置)に到達したことを検出するまで制御装置により前記モータを駆動して、天窓54を上側へ回動させる。また、天窓54を全閉位置(最下位置)にするとき、接触式の全閉位置センサが天窓54が全閉位置(最下位置)に到達したことを検出するまで前記モータを駆動して、天窓54を下側へ回動させる。そして、天窓54を任意の開度にするときは、制御装置により、全開位置センサ及び全閉位置センサの検出に基づいて天窓54が全開位置(最上位置)と全閉位置(最下位置)との間を回動するのに要するモータの全駆動量を制御装置が演算し、該全駆動量に基づいて所望の開度とするのに必要なモータの必要駆動量を演算し、該必要駆動量に基づいてモータを駆動する。尚、制御装置は、全開位置センサ又は全閉位置センサが検出するたびにモータの全駆動量を演算して更新し、天窓54の開度を目標開度に精度良く制御できる構成としている。尚、開度が所定開度以下(例えば5%以下)となるよう天窓54を回動させるときは、一旦天窓54を全閉にして全閉位置センサに検出させ、全閉状態から所望の開度となるよう天窓54を上側へ回動させる構成としている。これにより、特にハウス1内で温度や湿度等の微妙な環境制御が必要なときに天窓54の目標開度を小さく設定するが、この目標開度が小さいときの天窓54の開度を高精度で制御でき、ハウス1内の環境を良好に制御できる。
【0036】
開口部52には該開口部52の全面を塞ぐ防虫網58を設けており、この防虫網58の外縁部を開口部52の全周に接続した構成となっている。前記防虫網58は、その内部の連結位置59で開閉用ロッド55を貫通させて連結している。そして、天窓54の開状態では開口部52の全周及び前記連結位置59から下側に弛むように防虫網58を開口部52の面積より広い面積で構成し、開閉用ロッド55が横方向で回動支点軸53側に移動しながら下側に移動することにより前記開状態から閉状態となるよう天窓54が下側へ回動し、前記閉状態では前記連結部分59が開口部52から離れる側に移動して防虫網58が下側に引っ張られ、防虫網58の全面が開口部52の下側に収納される構成としている。尚、天窓54の開状態において、前記連結位置59は、開口部52の開口面上に位置しており、防虫網58が前記開口面より上側に突出しないようにしている。これにより、防虫網58が風で煽られにくく、また天窓54の開閉で天窓54と開口部52との間に防虫網58が挟まれるようなことを防止している。
【0037】
以上により、この防虫網付き天窓装置は、天窓54が屋根50に備える開口部52に合致して閉状態となり、端部の回動支点軸53により前記天窓54が上側に回動して開状態となり、外縁部を開口部52の全周に接続して該開口部52の全面を塞ぐ防虫網58を設け、天窓54の回動先端側の位置に連結され天窓54を回動するための開閉用ロッド55を設け、防虫網58をその内部の連結位置59で開閉用ロッド55に連結し、前記開状態では開口部52の全周及び前記連結位置59から下側に弛むように防虫網58を開口部52の面積より広い面積で構成し、開閉用ロッド55が横方向で回動支点軸53側に移動しながら下側に移動することにより前記開状態から前記閉状態となるよう天窓54が下側へ回動し、前記閉状態では防虫網58の全面が開口部52の下側に収まる構成としている。
【0038】
従って、モータの駆動で開閉駆動用軸57をスライド移動させて、開閉用ロッド55を横方向で回動支点軸53とは反対側に移動させながら上側に移動させることにより天窓54が上側に回動して開状態となり、開閉用ロッド55を横方向で回動支点軸53側に移動させながら下側に移動させることにより天窓54が下側へ回動し閉状態となる。防虫網58は、その外縁部を開口部52の全周に接続する構成であるため、開口部52に対して装着すればよく、防虫網58の装着が容易である。また、天窓54には接続されていないので、屋根50から天窓54を取り外す際に、防虫網58の接続を外す必要がないため、メンテナンス性が良くなる。そして、開閉用ロッド55すなわち防虫網58の内部の連結位置59が横方向で回動支点軸53側に移動しながら下側に移動することにより、防虫網58を天窓54の開閉による天窓54と開口部52との合わせ部分から離れる側(回動支点軸53側)へ誘導しながら開口部52の下側にうまく収納することができる。しかも、天窓54の開状態では開口部52の全周及び前記連結位置59から下側に弛むように防虫網58を構成しているので、防虫網58が風に煽られにくい。よって、防虫網58が開口部52と天窓54との間に挟まれたまま前記閉状態となるようなことを防止でき、防虫網58が傷んだり破れたりするのを防止できる。更に、防虫網58の外縁部を開口部52の全周に接続する構成であるので、開口部52の面積に対して防虫網58の面積を極端に広くする必要がなく、コストダウンが図れる。
【0039】
尚、上述した防虫網58は、天窓54の開状態で開口部52の全周及び連結位置59から下側に弛むので、下側に弛む凹部に枯葉等のごみがたまりやすくなる。そこで、例えば回動支点軸53と前記連結位置59との間及び前記連結位置59と開口部52の回動支点軸53とは反対側の端部との間等、防虫網58の適宜位置を開閉用ロッド55の上端あるいは天窓54に連結される吊り紐で吊り上げ、防虫網58が上側に膨らむようにして下側に弛まないようにし、防虫網58に枯葉等のごみがたまらないようにできる。尚、前記吊り紐をゴム等の弾性体で適宜に伸縮可能に構成すれば、天窓54の開度(回動量)の広範囲にわたって防虫網58が下側に弛まないように設定できる。
【0040】
ところで、防虫網の一端側を開口部52に接続し防虫網の他端側を天窓54に接続して開口部52と天窓54との間にわたるように防虫網を設け、防虫網をその内部の連結位置で開閉用ロッド55に連結した構成の場合、天窓54の開状態で防虫網が天窓54の外側に弛むように構成すれば、防虫網に枯葉等のごみがたまりにくく、天窓54を閉じるときには前記連結位置が横方向で回動支点軸53側に移動しながら下側に移動して防虫網をハウス1内に引っ張りながら収納することができる。また、開口部52と天窓54との間にわたるように防虫網を設ける場合、開口部52と天窓54との中間となる防虫網の中間部を縫製し、天窓54の開状態で該中間部が天窓54の外側に膨らむように構成してもよい。これにより、防虫網に枯葉等のごみがたまりにくくなるのに加えて、開状態で防虫網による開口面積が増大するので、ハウス1内の換気能力を高めることができる。尚、開口部52の端縁と天窓54の端縁とを繋ぐゴム紐等の弾性体からなる押出具を防虫網の内側(ハウス1側、開口部52側)に設け、天窓54を開いたとき、前記押出具が緊張して防虫網を外方へ押し出すようにし、防虫網を天窓54の外側に膨らませるようにしてもよい。
【0041】
この防虫網を収納するにあたり、前記中間部と開閉用ロッド55の下端とをロープで連結し、該ロープにより防虫網をハウス1内に引っ張りながら収納することができる。尚、前記押出具を設けた場合には、ロープにより防虫網と共に前記押出具がハウス1内に引っ張られて収納されることになる。また、前記ロープを、前記中間部と開口部52の回動支点軸53とは反対側の端部に近い屋根50の裏面とを連結する構成とすると共に、開閉用ロッド55の中途部に設けた横軸をくぐらせて配索すれば、天窓54を閉じる際に、ロープによる防虫網の引っ張り量を大きく設定でき、防虫網のハウス1内への収納を良好に行うことができる。尚、これらのロープを弾性体により構成してもよい。
【0042】
尚、前記押出具を中途部で屈曲する屈曲軸で構成し、天窓54の開閉で前記屈曲軸を屈伸させる構成としてもよい。このとき、屈曲軸の屈曲部と防虫網の天窓54を開いたときに外側へ膨らむ位置をロープで繋ぎ、天窓54を閉じるときに前記ロープで防虫網がハウス1内へ引っ張られて収納される構成とするとよい。尚、前記ロープを介さずに、防虫網の適宜位置を屈曲軸の中途部に直接連結した構成としてもよい。
【0043】
また、開口部52と天窓54との間にわたるように防虫網を設ける場合、例えば防虫網の天窓54の回動先端部と開口部52とを繋ぐ部分や防虫網の中間部等、防虫網の適宜位置に形状記憶合金(単なる金属でも可)を編み込み、天窓54を開くと前記形状記憶合金の復元力により防虫網を天窓54の外側に膨らませる構成としてもよい。尚、上述の形状記憶合金に代えて防虫網に縫い目を入れ、該縫い目に復元力をもたせる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】養液栽培ハウスの全体正面断面図である。
【図2】(a)は育苗装置の正面図、(b)は背面図である。
【図3】育苗装置の側面図である。
【図4】(a)は育苗装置の平面図、(b)は作用説明用平面図である。
【図5】(a)は養液栽培装置の正面断面図、(b)は一部拡大断面図である。
【図6】養液栽培ハウスの上部断面図である。
【符号の説明】
【0045】
50:屋根、52:開口部、53:回動支点軸、54:天窓、55:開閉用ロッド、58:防虫網、59:連結位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天窓(54)が屋根(50)に備える開口部(52)に合致して閉状態となり、端部の回動支点軸(53)により前記天窓(54)が上側に回動して開状態となる防虫網付き天窓装置において、外縁部を開口部(52)の全周に接続して該開口部(52)の全面を塞ぐ防虫網(58)を設け、天窓(54)の任意の位置に連結され天窓(54)を回動するための開閉用ロッド(55)を設け、防虫網(58)をその内部の連結位置(59)で開閉用ロッド(55)に連結し、前記開状態では開口部(52)の全周及び前記連結位置(59)から下側に弛むように防虫網(58)を開口部(52)の面積より広い面積で構成し、開閉用ロッド(55)が横方向で回動支点軸(53)側に移動しながら下側に移動することにより前記開状態から前記閉状態となるよう天窓(54)が下側へ回動し、前記閉状態では防虫網(58)の全面が開口部(52)の下側に収まる構成とした防虫網付き天窓装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−330132(P2007−330132A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164572(P2006−164572)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】