説明

防虫薬剤散布装置及びこれを利用した防虫用エアーカーテン装置

【課題】高濃度の防虫薬剤含有ガスのまま防虫に有効な箇所に運搬散布して防虫効果を高め、加えて不快感を与えること無くエアーカーテンによる防虫効果を発揮し出来る防虫薬剤散布装置及びこれを利用した防虫用エアーカーテン装置を提供する。
【解決手段】
エアーカーテン装置22上に載せた防虫薬剤散布装置1から高濃度の防虫薬剤含有ガスの渦輪5を、エアーカーテン24よりも外側の位置から出入口21に対し外側に向けて発射し、渦輪5はそのまま進んだあと崩壊し、高濃度の防虫薬剤含有ガスが拡散し始め、虫は拡散した防虫薬剤含有ガスに対し忌避行動をしたり死ぬから、この防虫薬剤含有ガス拡散域を通過して出入口21に飛翔してくる虫自体が減り、出入口21に向かう虫がいても、途中の防虫薬剤含有ガスにより弱って、到達風速4m/秒未満のエアーカーテン24で阻止され、出入口21から建造物20内に虫が入ることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射できる防虫薬剤散布装置と、建造物の出入口を気流的に遮断するエアーカーテン装置と、の組み合わせで、建造物の出入口外側の近傍を防虫薬剤濃度の高い状態を保持して、これらの防虫薬剤とエアーカーテンとにより、出入口から建造物内部に虫が侵入しないようにした防虫薬剤散布装置及びこれを利用した防虫用エアーカーテン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の出入口を気流的に遮断するエアーカーテンにて虫の侵入を防止する技術は、既に多く実施されている。その一例としては、建造物の出入口に開閉扉が設けられてはいるが、この開閉扉が閉じていても、建造物内部の照明の光が屋外に透け出る場合に、開閉扉の透光部分に虫が視感出来る波長の光を選択的に吸収する防虫性透光材にて構成して、開閉扉近くに虫が集まらないようにし、さらに、出入口に上方から下方に向かうエアーカーテンを吹き下ろすエアーカーテン装置を設置することで、出入口の開閉扉が開いた状態でも虫の侵入を阻止するようにしたものである(例えば、特開平10−225255号公報参照)。
【0003】
さらに、エアーカーテンによる昆虫類侵入防止装置としては、建造物の出入口を開閉するシャッターを設け、このシャッターの両側前面に内部に送風機を備えた一対のハウジングを配置して、このハウジングとシャッターとで仕切る床面に捕虫ピットを設け、さらにシャッターの開閉とハウジング内の送風機から吹き出すエアー流とを制御する制御装置を有してなり、ハウジングは、互いに相対向する面に設けた吹出口及び外部に向けて開いた他面に設けた吸込口を有して、水平方向に吹き出すエアーカーテンを形成するエアーカーテン装置であり、このエアーカーテン装置の吹出口を制御装置にて移動させて、エアーカーテンの吹き出し方向を変えて、出入口のシャッターが開いた状態でも虫の侵入を阻止するようにしたものである(例えば、特開2003−161489号公報参照)。
【0004】
一方、防虫薬剤を使用して、建造物の開閉扉付の出入口から虫の侵入を防ぐものとしては、演算処理するコンピュータと、薬剤による有害生物防除装置と、これらを通信ケーブルにて接続してなり、この有害生物防除装置はコンピュータからの指令により薬剤を散布することで、出入口の開閉扉が開いた状態でも虫の侵入を阻止するようにしたものである(例えば、特開2004−344045号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平10−225255号公報
【特許文献2】 特開2003−161489号公報
【特許文献3】 特開2004−344045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のエアーカーテン利用の虫侵入防止は、開閉扉が閉じていると虫が開閉扉を通した建造物内部の光に反応しないから、開閉扉近くに虫が集まらず、開閉扉が開くと内部の光に反応して虫が集まり出入口から建造物内に入ろうとするが、それをエアーカーテンにて阻止するものである。しかしながら、開いた開閉扉が直ぐに閉じるのであれば効果が期待できるが、そうでない場合はエアーカーテンのみで虫の侵入を阻止することになり、エアーカーテンの風速をかなり増加させないと、例えば、到達風速を4m/秒以上にしないと、虫の侵入を阻止することが出来ないことになる。このため、出入口から建造物内に出入りする人に、到達風速4m/秒以上のエアーカーテンを吹き付けることになって、人に不快感を与えることになる。
【0007】
上記特許文献2のエアーカーテン利用の虫侵入防止は、エアーカーテン装置からのエアーカーテンの吹き出し方向を変えて、出入口のシャッターが開いた状態でも虫の侵入を阻止するようにしたものである。しかしながら、エアーカーテンの吹き出し方向を変えるだけでは、虫の飛翔力に打ち勝てず、結局のところ特許文献1の場合と同様にエアーカーテンの風速をかなり増加させないと、虫の侵入を阻止することが出来ないことになる。したがって、同じように、出入口から建造物内に出入りする人に、風速を増したエアーカーテンの影響が及び、不快感を与えることになる。
【0008】
上記特許文献3の防虫薬剤利用の虫侵入防止は、状況に応じて細かく対応し、防虫薬剤を散布して、出入口の開閉扉が開いた状態でも虫の侵入を阻止するものである。しかしながら、虫の光に対する反応は思いの外強く、しかも虫の飛翔力もかなりあるので、出入口近傍に防虫薬剤を散布したゾーンがあっても、虫に防虫薬剤の効果が及ぶ間もなく、一瞬にして防虫薬剤散布ゾーンを突き抜け、建造物内に虫が侵入してしまうことになる。
【0009】
したがって、有害生物防除装置により建造物の出入口の外部に、常時かなり高い濃度の防虫薬剤散布ゾーンを形成且つ保持して、出入口に虫を寄せ付けないようにしておく必要がある。しかしながら、有害生物防除装置からの距離が増すにつれて防虫薬剤の濃度が低下し、ついには防虫効果が期待出来ないことになるから、虫を寄せ付けない防虫薬剤散布ゾーンを広範囲に形成且つ保持するには、防虫薬剤の使用量が増えることになり、且つ、有害生物防除装置も大型化せざるを得ない。
【0010】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エアーカーテンが有する虫侵入防止機能と、防虫薬剤が有する殺虫ないし虫忌避機能とを組み合わせ、エアーカーテンによる不快感を与えることなく、さらに、防虫薬剤を防虫効果のある濃度に保持した状態のまま、防虫に有利な箇所に運搬散布して、広範囲に防虫効果を高めることの出来る防虫薬剤散布装置及びこれを利用した防虫用エアーカーテン装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、請求項1記載の発明は、防虫薬剤を貯留するタンクと、該タンク内の防虫薬剤を防虫薬剤含有ガスにするガス化部と、発射口を有し前記ガス化部からの防虫薬剤含有ガスを受け入れて前記発射口から防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射する渦輪発射部と、この渦輪発射部に発射圧力を必要に応じて与える発射圧力付与部と、を有してなり、前記渦輪発射部に発射圧力を前記発射圧力付与部により与えることで、前記発射口から防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射することを特徴とする防虫薬剤散布装置である。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、建造物の出入口の外側に設けて、その出入口を気流的に遮断するエアーカーテン装置と、該エアーカーテン装置に付帯し、防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射する請求項1に記載の1以上の防虫薬剤散布装置と、からなり、1以上の前記防虫薬剤散布装置からの防虫薬剤含有ガスの渦輪を、前記エアーカーテン装置からのエアーカーテンよりも外側の位置から、且つ前記出入口に対し外側に向けて、発射することを特徴とする防虫用エアーカーテン装置である。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、前記防虫薬剤散布装置の渦輪発射部における発射口の軸線方向を、全方向に0度ないし90度の範囲で可変出来るようにしたことを特徴とする防虫用エアーカーテン装置である。
【0014】
また、請求項4記載の発明は、前記エアーカーテン装置からのエアーカーテンは、その到達風速が4m/秒未満であることを特徴とする防虫用エアーカーテン装置である。
【0015】
また、請求項5記載の発明は、前記建造物の出入口は開閉扉付であることを特徴とする防虫用エアーカーテン装置である。
【0016】
上記請求項1の発明による作用は次の通りである。すなわち、タンクからガス化部に移動した防虫薬剤を防虫薬剤含有ガスにし、この防虫薬剤含有ガスの入った渦輪発射部に対し、発射圧力付与部にて発射圧力を与えることで、発射口から防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射する。発射口から発射された防虫薬剤含有ガスの渦輪は、その状態のまま発射口の軸線方向に進行して行き、ある程度の距離まで到達したあと崩壊し、その渦輪が崩壊した場所で防虫薬剤含有ガスが拡散し始め、虫は現に拡散している防虫薬剤含有ガスが充満しているゾーンに対し忌避行動をしたり、死んだりする。
【0017】
上記請求項2の発明による作用は、エアーカーテンよりも外側の位置にある1以上の防虫薬剤散布装置から、防虫薬剤含有ガスの渦輪を出入口に対し外側に向けて発射すると、防虫薬剤含有ガスの渦輪は、その状態のまま出入口の外側を進行して行き、ある程度の距離まで到達したあと崩壊し、その渦輪が崩壊した場所で防虫薬剤含有ガスが拡散し始め、虫は現に拡散して防虫薬剤含有ガスが充満しているゾーンに対し忌避行動をしたり死んだりするが、そのゾーンを越えて出入口に向かって来る虫に対しては、エアーカーテン装置からのエアーカーテンにより、出入口から建造物内に侵入するのを阻止する。
【0018】
上記請求項3の発明による作用は、防虫薬剤散布装置の渦輪発射部における発射口からの防虫薬剤含有ガスの渦輪を全方向に発射出来るから、建造物の出入口の状況に即した方向に防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射出来る。
【0019】
上記請求項4の発明による作用は、エアーカーテンの到達風速が4m/秒未満であるから、建造物の出入口を通過する人にエアーカーテンの影響を軽減する。
【0020】
上記請求項5の発明による作用は、建造物の出入口の開閉扉が閉じているときは虫の侵入がなく、開いているときだけ虫の侵入に対する対応を取ればよい。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
請求項1記載の発明は、防虫薬剤を防虫効果のある濃度に保持した状態のまま、防虫に有利な箇所まで運搬し散布して、防虫効果を高めることが出来る効果がある。
【0022】
請求項2記載の発明は、上記の効果に加えて、エアーカーテンが有する虫侵入防止機能を発揮でき、さらに、防虫薬剤が有する殺虫ないし虫忌避機能と、エアーカーテンが有する虫侵入防止機能との相乗効果により、出入口から虫が建造物内に入り込めないようにする効果がある。
【0023】
請求項3記載の発明は、上記の効果に加えて、建造物の出入口の状況に即した方向に防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射して、出入口から虫が建造物内に入り込めないようにする効果をなお一層顕著にすることが出来る。
【0024】
請求項4記載の発明は、上記の効果に加えて、エアーカーテンによる不快感を軽減できる効果がある。
【0025】
請求項5記載の発明は、上記の効果に加えて、出入口の開閉扉が開いている時に、1以上の防虫薬剤散布装置から、防虫薬剤含有ガスの渦輪を出入口に対し外側に向けて発射したり、エアーカーテン装置からのエアーカーテンを吹き出せば良く、エアーカーテンが有する虫侵入防止機能と、防虫薬剤が有する殺虫ないし虫忌避機能との相乗効果を利かせて、出入口から虫が建造物内に入り込まないようにでき、運転コストを逓減することが出来る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態を示す防虫薬剤散布装置の模式図である(実施例1)。
【図2】本発明の他の実施の形態を示す防虫薬剤散布装置の模式図である(実施例1)。
【図3】本発明の実施の形態を示す防虫用エアーカーテン装置を、建造物の開閉扉のある出入口に設置した状態の斜視図である(実施例1)。
【図4】図3の防虫用エアーカーテン装置の正面図である(実施例1)。
【図5】防虫用エアーカーテン装置の一部を断面した側面図である(実施例1)。
【図6】図3の出入口の開閉扉を開けた状態における防虫用エアーカーテン装置の作動を示す断面図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
【実施例1】
【0028】
図において、防虫薬剤散布装置1は、防虫薬剤を貯留するタンク2と、このタンク2内の防虫薬剤を防虫薬剤含有ガスにするガス化部3と、発射口4を有しガス化部3からの防虫薬剤含有ガスを受け入れて発射口4から防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射する渦輪発射部6と、この渦輪発射部6に発射圧力を必要に応じて与える発射圧力付与部7と、を有してなり、渦輪発射部6に発射圧力を発射圧力付与部7により与えることで、発射口4から防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射するものである。
【0029】
防虫薬剤は、浮遊状態の微細ミスト状態やガス状態になり、エアーと混合して防虫薬剤含有ガスを構成できて、防虫薬剤含有ガスの渦輪5を形成出来るものであれば、特に限定がなく、殺虫剤でも、虫が忌避したくなるような薬剤でも良い。
【0030】
防虫薬剤散布装置1における防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射する機構は、特に限定がないが、少なくとも、発射口4を有した渦輪発射部6と、この渦輪発射部6に圧力や衝撃を与える発射圧力付与部7が必要となる。渦輪発射部6の容量、発射口4の口径、渦輪発射部6に対する発射圧力の与え方などにより、渦輪発射部6の発射口4から発射される防虫薬剤含有ガスの渦輪5を如何様にも制御することが可能であるから、防虫目的に合わせて、これらの渦輪発射部6の容量、発射口4の口径、渦輪発射部6に対する発射圧力の与え方などが設定される。
【0031】
いずれにしても、この防虫薬剤散布装置1における渦輪発射部6の発射口4から発射された防虫薬剤含有ガスの渦輪5は、そのままの状態を保持して移動し、防虫薬剤散布装置1の設置場所から離れた所で崩壊して、その崩壊場所で渦輪5を形成していた防虫薬剤含有ガスの自然拡散が始まるので、防虫薬剤含有ガス中の防虫薬剤を高濃度にしておけば、防虫薬剤散布装置1から離れた崩壊場所周辺の防虫薬剤濃度を高く保持でき、崩壊場所周辺で防虫効果を充分に発揮出来ることになる。
【0032】
また、図2に示す防虫薬剤散布装置1Aでもよく、この防虫薬剤散布装置1Aは、防虫薬剤の貯留タンクと防虫薬剤をガス化するガス化部とが合体したガス化貯留タンク8と、シリンダー形状の渦輪発射部6Aと、ピストン形状の発射圧力付与部7Aとからなる。この発射圧力付与部7Aのクランク9を回転させることで、クランクシャフト10に回動自在のロッド11によりピストン12を往復動させ、ピストン12が矢線A方向に移動した時に、ガス化貯留タンク8から防虫薬剤含有ガスを渦輪発射部6A内に呼び込み、ピストン12が矢線B方向に移動した時に、渦輪発射部6Aの発射口4から防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射する。
【0033】
そして、上記した防虫薬剤散布装置1あるいは1A(以下、防虫薬剤散布装置1の場合として説明する。)は、建造物20の出入口21の外側21aに設けられ、その出入口21を気流的に遮断するエアーカーテン装置22と組み合わされて、防虫用エアーカーテン装置23が形成される。すなわち、この防虫用エアーカーテン装置23は、エアーカーテン装置22上に1以上の防虫薬剤散布装置1を付帯させ、1以上の防虫薬剤散布装置1から防虫薬剤含有ガスの渦輪5を、エアーカーテン装置22からのエアーカーテン24よりも外側の位置から、且つ出入口21に対し外側21aに向けて発射することで構成されたものである。なお、建造物20の出入口21には開閉扉25が設けられ、この開閉扉25は手動でも自動でも良い。この開閉扉25があれば、「開」の時に防虫用エアーカーテン装置23を運転し、「閉」の時に停止する形態をとり、運転コストの削減を図ることも可能である。
【0034】
前記エアーカーテン装置22は、偏平な箱体である機体26に吸込口27とエアーカーテン24を吹き出す吹出口28とを備え、これら吸込口27と吹出口28との間の機体26内に送風機29を配設したものであり、吹出口28から吹き出されたエアーカーテン24は、出入口21を気流的に遮断し且つ虫の侵入を防ぐものであるから、遮断するのに充分な到達距離と風速とを有しなければならない。したがって、吹出口28の内側に整流板30を平行に配設して、エアーカーテン24を整流するための助走スペースを与えることで、遮断するために必要な到達距離を効率的に得ることが出来るようにしてある。
【0035】
また、このエアーカーテン装置22は、吹出口28から吹き出されたエアーカーテン24が、出入口21を気流的に遮断し且つ虫の侵入を防ぐものであるから、風速及び風量が大である方が有利であるが、到達風速が4m/秒以上になると、出入口21を通過する人にかなりの不快感を与えることになるので、到達風速が4m/秒未満、好ましくは、2m/秒ないし3.5m/秒の範囲の到達風速が推奨される。
【0036】
なお、この実施例において、防虫用エアーカーテン装置23における防虫薬剤散布装置1は、エアーカーテン装置22の機体26上に載置されているから、防虫薬剤散布装置1の発射口4からの防虫薬剤含有ガスの渦輪5は、エアーカーテン24の外側で、出入口21に対し外側21aに向けられて発射されることになる。そして、防虫薬剤散布装置1の発射口4の軸線方向(L)は、全方向に0度ないし90度の範囲で可変出来るようにしている。これは発射口4に自在継手を繋げることで容易に実現でき、発射口4の軸線方向(L)を0度ないし90度の範囲で可変出来ることは、いかなる方向にも発射口4から防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射できることになる。
【0037】
防虫薬剤散布装置1の発射口4から、全方向に防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射できれば、この防虫用エアーカーテン装置23は、防虫薬剤散布装置1の発射口4から高濃度の防虫薬剤含有ガスが、渦輪5の状態で防虫薬剤散布装置1の設置場所から、いかなる方向でも運ばれ得ることになり、そのあと渦輪5が自然崩壊してその崩壊場所で渦輪5の高濃度の防虫薬剤含有ガスの自然拡散が始まり、防虫薬剤散布装置1から離れた崩壊場所周辺の防虫薬剤濃度を高く保持でき、防虫効果を充分に発揮出来ることが可能になる。したがって、防虫用エアーカーテン装置23の設置場所の条件や虫の種類などにより、防虫薬剤散布装置1の発射口4の軸線方向(L)を任意に設定し、防虫薬剤含有ガスの渦輪5による防虫効果を最大限に引き出すことができる。
【0038】
前記送風機29は、出入口21を気流的に遮断し且つ虫の侵入を防ぐのに必要な風量と風圧とがあれば特に限定がないが、幅広の空間を分断するには貫流式の送風機がベターである。
【0039】
次に、上記構成になる防虫薬剤散布装置1あるいは1Aないし防虫用エアーカーテン装置23を使用した防虫状況を説明する。
防虫薬剤散布装置1あるいは1Aを単独で使用して防虫を図る場合を説明する。
まず、防虫を図りたい場所に防虫薬剤散布装置1を設置する。その場所に適した防虫薬剤を選択して、その防虫薬剤をタンク2に貯留し、防虫薬剤散布装置1をオンする。タンク2からガス化部3に移動した防虫薬剤を高濃度の防虫薬剤含有ガスにし、この防虫薬剤含有ガスの入った渦輪発射部6対し、発射圧力付与部7にて発射圧力を与えることで、発射口4から高濃度の防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射する。発射口4から発射された防虫薬剤含有ガスの渦輪5は、その状態のまま発射口4の軸線方向に進行して行き、ある程度の距離まで到達したあと崩壊し、その渦輪5が崩壊した場所で高濃度の防虫薬剤含有ガスが拡散し始め、虫は現に拡散している防虫薬剤含有ガスに対し忌避行動をしたり、防虫薬剤により死ぬことになる。
【0040】
一方、防虫薬剤散布装置1Aの場合も、ガス化貯留タンク8に選択した防虫薬剤を貯留し、防虫薬剤散布装置1Aをオンする。発射圧力付与部7Aのクランク9を回転させ、ピストン12が矢線A方向に移動した時に、ガス化貯留タンク8から防虫薬剤含有ガスを渦輪発射部6A内に呼び込み、ピストン12が矢線B方向に移動した時に、渦輪発射部6Aの発射口4から高濃度の防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射することになる。
【0041】
さらに、防虫用エアーカーテン装置23による防虫状況について説明する。
図3に示す出入口21の開閉扉25が閉じている状態の防虫用エアーカーテン装置23において、まず、防虫薬剤散布装置1のタンク2に防虫薬剤を充填した後、防虫用エアーカーテン装置23全体を作動状態にする。エアーカーテン装置22の送風機29が作動するから、吸込口27からエアーを吸い込み吹出口28から到達風速4m/秒未満、好ましくは、2m/秒ないし3.5m/秒の範囲の到達風速のエアーカーテン24を吹き出す。
【0042】
一方、防虫薬剤散布装置1あるいは1Aも作動するから、渦輪発射部6あるいは6A内に防虫薬剤含有ガスが入り、発射圧力付与部7あるいは7Aにより、渦輪発射部6あるいは6Aの発射口4から防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射する。発射口4から発射された高濃度の防虫薬剤含有ガスの渦輪5は、その状態のまま発射口4の軸線方向に進行して行き、出入口21の外側21aからある程度離れた場所まで到達したあと、渦輪5が崩壊しその場所で高濃度の防虫薬剤含有ガスが拡散し始め、虫は現に拡散している防虫薬剤含有ガスに対し忌避行動をしたり、防虫薬剤により死ぬことになる。したがって、出入口21の外側ゾーンは、虫の忌避行動や殺虫を維持する防虫薬剤含有ガス濃度が保持出来ることになり、それにもかかわらず、出入口21の開閉扉25に向かって飛翔する虫の存在も否定できないが、開閉扉25が閉じているので、出入口21から建造物20内に虫が入ることが出来ない
【0043】
図6に示す出入口21の開閉扉25が開いている状態の防虫用エアーカーテン装置23において、まず、防虫薬剤散布装置1のタンク2に防虫薬剤を充填した後、防虫用エアーカーテン装置23全体を作動状態にすると、図3の開閉扉25が「閉」の時と同様に、エアーカーテン装置22の吹出口28から到達風速4m/秒未満の風速のエアーカーテン24を吹き出すことになる。
【0044】
一方、防虫薬剤散布装置1あるいは1Aも作動するから、図3の開閉扉25が「閉」の時と同様に、渦輪発射部6あるいは6Aの発射口4から防虫薬剤含有ガスの渦輪5を発射し、その状態のまま出入口21の外側21aからある程度離れた場所まで到達して渦輪5が崩壊しその場所で高濃度の防虫薬剤含有ガスが拡散し始め、虫は現に拡散している防虫薬剤含有ガスに対し忌避行動をしたり、防虫薬剤により死ぬことになる。出入口21の外側ゾーンは、虫の忌避行動や殺虫を維持する防虫薬剤含有ガス濃度が保持されているので、出入口21に向かって飛翔する虫は少なく、仮に出入口21に向かって飛翔する虫がいたとしても、途中の防虫薬剤含有ガスにより弱っているから、到達風速4m/秒未満のエアーカーテン24により阻止されて、開閉扉25が開いていても出入口21から建造物20内に虫が入ることがなくなる。
【0045】
なお、ここでは、出入口4に開閉扉25がある場合について説明したが、開閉扉25が無い場合は、出入口4が常時開放状態になるので、上記した図6に示す出入口21の開閉扉25が開いている状態と同じなので、同じ運転をすることになる。
【0046】
以上、本発明の実施例1を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更・追加、各請求項における他の組み合わせにかかるものも、適宜可能であることが理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の防虫薬剤散布装置及びこれを利用した防虫用エアーカーテン装置は、建造物の出入口で開閉扉の有無に係わらず、さらに、エアーカーテンによる不快感を与えることなく、防虫薬剤の使用量を削減出来るのに、虫が出入口から建造物内に入り込まないようにしたい場合に、その利用可能性が極めて高くなる。
【符号の説明】
【0048】
1、1A 防虫薬剤散布装置
2 建造物
3 ガス化部
4 発射口
5 防虫薬剤含有ガスの渦輪
6、6A 渦輪発射部
7、7A 発射圧力付与部
8 ガス化貯留タンク
9 クランク
10 クランクシャフト
11 ロッド
12 ピストン
20 建造物
21 出入口
21a 外側
22 エアーカーテン装置
23 防虫用エアーカーテン装置
24 エアーカーテン
25 開閉扉
26 機体
27 吸込口
28 吹出口
29 送風機
30 整流板
L 発射口の軸線方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防虫薬剤を貯留するタンクと、該タンク内の防虫薬剤を防虫薬剤含有ガスにするガス化部と、発射口を有し前記ガス化部からの防虫薬剤含有ガスを受け入れて前記発射口から防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射する渦輪発射部と、この渦輪発射部に発射圧力を必要に応じて与える発射圧力付与部と、を有してなり、前記渦輪発射部に発射圧力を前記発射圧力付与部により与えることで、前記発射口から防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射することを特徴とする防虫薬剤散布装置。
【請求項2】
建造物の出入口の外側に設けて、その出入口を気流的に遮断するエアーカーテン装置と、該エアーカーテン装置に付帯し、防虫薬剤含有ガスの渦輪を発射する請求項1に記載の1以上の防虫薬剤散布装置と、からなり、1以上の前記防虫薬剤散布装置からの防虫薬剤含有ガスの渦輪を、前記エアーカーテン装置からのエアーカーテンよりも外側の位置から、且つ前記出入口に対し外側に向けて、発射することを特徴とする防虫用エアーカーテン装置。
【請求項3】
前記防虫薬剤散布装置の渦輪発射部における発射口の軸線方向を、全方向に0度ないし90度の範囲で可変出来るようにした請求項2記載の防虫用エアーカーテン装置。
【請求項4】
前記エアーカーテン装置からのエアーカーテンは、その到達風速が4m/秒未満である請求項2または3記載の防虫用エアーカーテン装置。
【請求項5】
前記建造物の出入口は開閉扉付である請求項2、3または4記載の防虫用エアーカーテン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−22015(P2013−22015A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173393(P2011−173393)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000228028)株式会社トルネックス (25)
【Fターム(参考)】