防蟻システムおよび防蟻処理方法
【課題】防蟻剤を無駄にせず、かつ防蟻剤を継目部分の全長に亘って適切に供給する。
【解決手段】防蟻システム10は、建物100の床下に用いられ、コンクリート構造体102,104の継目部分106に沿って設けられる遮液部材12を備えており、当該継目部分106から屋内への白蟻の侵入を防止する。遮液部材12は、コンクリート構造体102,104との間に閉空間18を形成し、この閉空間18には、防蟻剤を供給するためのフレキシブルホース20が挿通される。フレキシブルホース20のノズル22から継目部分106に向かう方向に噴射された防蟻剤は、直接或いはコンクリート構造体102,104をつたって継目部分106に供給される。一方、フレキシブルホース20のノズル22から継目部分に向かわない方向に噴射された防蟻剤は、遮液部材12によってとどめられ閉空間18内に保持され、継目部分106に供給される。
【解決手段】防蟻システム10は、建物100の床下に用いられ、コンクリート構造体102,104の継目部分106に沿って設けられる遮液部材12を備えており、当該継目部分106から屋内への白蟻の侵入を防止する。遮液部材12は、コンクリート構造体102,104との間に閉空間18を形成し、この閉空間18には、防蟻剤を供給するためのフレキシブルホース20が挿通される。フレキシブルホース20のノズル22から継目部分106に向かう方向に噴射された防蟻剤は、直接或いはコンクリート構造体102,104をつたって継目部分106に供給される。一方、フレキシブルホース20のノズル22から継目部分に向かわない方向に噴射された防蟻剤は、遮液部材12によってとどめられ閉空間18内に保持され、継目部分106に供給される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防蟻システムおよび防蟻処理方法に関し、特にたとえば、建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための、防蟻システムおよび防蟻処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の白蟻被害を防止するために、白蟻の主たる経路となっているコンクリート構造体の継目部分に防蟻剤を散布して、当該継目部分に生じている隙間からの白蟻の侵入を防止する防蟻処理が公知である。たとえば、特許文献1に記載された技術では、基礎と土間コンクリートとの継目部分近傍の地中に防蟻剤散布用パイプが配置される。そして、防蟻剤散布用パイプの上流端部に接続される防蟻剤注入パイプから注入された防蟻剤が、当該防蟻剤散布用パイプの管壁に形成されている無数の防蟻剤噴射用オリフィスを通って地中に散布される。
【特許文献1】特許第3791770号公報 [E04B 1/72]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、防蟻剤散布用パイプに形成されているオリフィスからは、限り定めることなく防蟻剤が噴射される。このため、基礎と土間コンクリートとの継目部分以外の方向の地中にも防蟻剤が拡がってしまい、防蟻剤に無駄が多いという問題があった。
【0004】
また、特許文献1の技術では、防蟻剤散布用パイプの上流端部で注入された防蟻剤が、地中に散布されていくことによって、当該防蟻剤散布用パイプの下流側に向かうにしたがって減少する。このため、防蟻剤の散布量が防蟻剤散布用パイプの上流側と下流側とで著しく不均一になってしまう。そして、防蟻剤散布用パイプの下流側に十分な量の防蟻剤が到達しなければ、当該防蟻剤散布用パイプの下流側の地中に適切な量の防蟻剤を散布することができない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、防蟻システムおよび防蟻処理方法を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、防蟻剤を無駄にせず、かつ防蟻剤を継目部分の全長に亘って適切に供給することができる、防蟻システムおよび防蟻処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、継目部分に沿って設けられ、防蟻剤を供給するフレキシブルホースを挿通するための閉空間をコンクリート構造体との間に形成する遮液部材を備える、防蟻システムである。
【0009】
第1の発明では、防蟻システム(10)は、建物(100)の床下に用いられ、コンクリート構造体(102,104)の継目部分(106)に沿って設けられる遮液部材(12)を備えており、当該継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止する。遮液部材は、コンクリート構造体との間に閉空間(18)を形成し、この閉空間には、防蟻剤を供給するためのフレキシブルホース(20)が挿通される。フレキシブルホースのノズル(22)から継目部分に向かう方向に噴射された防蟻剤は、直接或いはコンクリート構造体をつたって継目部分に供給される。一方、フレキシブルホースのノズルから継目部分に向かわない方向に噴射された防蟻剤は、遮液部材によってとどめられて、閉空間内に保持される。そして、閉空間内に保持されている防蟻剤が、継目部分に供給される。
【0010】
第1の発明によれば、たとえフレキシブルホースのノズルから継目部分に向かわない方向に噴射された防蟻剤であっても、遮液部材によってとどめて閉空間内に保持し、継目部分に供給することができる。したがって、無駄のない防蟻処理を行うことができる。
【0011】
また、その閉空間に挿通されたフレキシブルホースのノズルを遮液部材の始端と終端との間で移動させることによって、防蟻剤を継目部分の全長に亘って均一に供給することができる。したがって、防蟻剤を継目部分の全長に亘って適切に供給することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、遮液部材は、フレキシブルホースを上方から覆う被覆部、および被覆部とコンクリート構造体とを密着させる接合部を含む。
【0013】
第2の発明では、遮液部材(12)は、シート状に形成される被覆部(14)および当該被覆部とコンクリート構造体(102,104)とを密着させる接合部(16)を含む。たとえば、被覆部には、合成樹脂シートが用いられる。また、たとえば、接合部には、両面接着タイプのブチルゴム系テープが用いられる。
【0014】
第2の発明によれば、適切に密封された閉空間内に防蟻剤が保持されるため、防蟻剤の臭気が外部に漏れることがない。
【0015】
第3の発明は、第2の発明に従属し、コンクリート構造体は、第1コンクリート構造体と第2コンクリート構造体とを含み、接合部は、被覆部の一方端部と第1コンクリート構造体とを密着させるとともに、被覆部の他方端部と第2コンクリート構造体とを密着させる。
【0016】
第3の発明では、コンクリート構造体(102,104)は、布基礎などの第1コンクリート構造体(102)と土間コンクリートなどの第2コンクリート構造体(104)とを含む。たとえば、接合部(16)は、矩形のシート状に形成されて被覆部(14)の両端部に重ねて貼り合わされ、被覆部の一方端部と第1コンクリート構造体の屋内側の側面とを、ならびに当該被覆部の他方端部と第2コンクリート構造体の上面とを密着させる。
【0017】
第4の発明は、第1ないし3の発明に従属し、閉空間内に設けられる管部材をさらに備える。
【0018】
第4の発明では、遮液部材(12)がコンクリート構造体(102,104)との間に形成する閉空間(18)内に管部材(50)が設けられ、その管部材内にフレキシブルホース(20)が挿通される。たとえば、管部材は、可撓性を有するかつその管壁に無数の開口(52)が形成された円筒管であり、その内部に挿通されたフレキシブルホース(20)の移動を案内する。
【0019】
第4の発明によれば、フレキシブルホースが管部材内でこれに保護され、遮液部材に接触することがない。したがって、遮液部材に欠損等が生じない。さらに、フレキシブルホースの挿入抵抗および引き抜き抵抗も低減されるため、防蟻処理の作業性が向上する。
【0020】
第5の発明は、第1ないし4の発明に従属し、コンクリート構造体の隅角部分に設けられるコーナ部材をさらに備える。
【0021】
第5の発明では、防蟻システム(10)は、コンクリート構造体(102,104)の隅角部分(108)に設けられるコーナ部材(34)をさらに備える。コーナ部材は、たとえば中空直方体状に形成され、コンクリート構造体の隅角部分において、遮液部材(12)と他の遮液部材とを接続する。たとえば、コーナ部材は、その全面に亘って無数の開口(38)が形成される側部(36,36a)を含み、この開口を通ってフレキシブルホース(20)のノズル(22)から噴射された防蟻剤がコーナ部材(34)の外部に流出する。また、たとえば、側部(36,36b)には、2つの接続口(40)が形成され、コーナ部材の内部には、1つの接続口からもう1つの接続口へと連通してフレキシブルホースの移動を案内する通路部(46)が形成される。
【0022】
第5の発明によれば、フレキシブルホースの移動時に、当該フレキシブルホースのノズルの進行方向を変化させて、当該フレキシブルホースのノズルを円滑に移動させることができる。
【0023】
さらに、フレキシブルホースのノズルから噴射された防蟻剤は、コーナ部材の開口を通って継目部分に供給される。したがって、コンクリート構造体の隅角部分における継目部分にも、確実な防蟻処理を行うことができる。
【0024】
第6の発明は、第1ないし5の発明に従属し、遮液部材の始端と終端とが、一箇所でまとめて屋外側まで延設されて、ケーシングの内部に収容される。
【0025】
第6の発明では、遮液部材(12)の始端(12a)と終端(12b)とが、一箇所にまとめられ、たとえば第1コンクリート構造体(102)の上部に設けられた連通口(30)を通して屋外側まで延設されて、ケーシング(32)の内部に収容される。このため、たとえばフレキシブルホース(20)を遮液部材内に押し込むときに、このフレキシブルホースのノズル(22)が遮液部材の端に到達しているかどうかを作業場所で目視確認することができる。したがって、継目部分(106)の全長に亘って確実に防蟻処理を行うことができる。
【0026】
第7の発明は、コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻処理方法であって、(a)継目部分に沿って遮液部材を設け、(b)ステップ(a)で設けた遮液部材とコンクリート構造体との間に形成される閉空間内にフレキシブルホースを挿通し、(d)フレキシブルホースの先端部から防蟻剤を供給しながら、当該先端部を遮液部材の始端と終端との間で移動させる、防蟻処理方法である。
【0027】
第7の発明では、ステップ(a)において、コンクリート構造体(102,104)の継目部分(106)に沿って遮液部材(12)を設ける。ステップ(b)において、遮液部材がコンクリート構造体との間に形成する閉空間(18)にフレキシブルホース(20)を挿入する。ステップ(c)において、たとえばフレキシブルホースの先端部に設けられているノズル(22)から防蟻剤を噴射する。そして、フレキシブルホースのノズルから防蟻剤を噴射している状態のまま、当該ノズルを遮液部材の始端(12a)と終端(12b)との間で移動させる。
【0028】
第7の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏する。
【0029】
第8の発明は、第7の発明に従属し、ステップ(b)でフレキシブルホースを閉空間に挿通する際に、当該フレキシブルホースを遮液部材の始端から終端に向けて移動させるための牽引用治具を用いる。
【0030】
第8の発明では、フレキシブルホース(20)を閉空間(18)に挿通する際に、このフレキシブルホースを遮液部材(12)の始端(12a)から終端(12b)に向けて牽引移動させるための牽引用治具を用いる。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、継目部分に沿って遮液部材が設けられ、当該遮液部材がコンクリート構造体との間に形成する閉空間に防蟻剤を供給するフレキシブルホースが挿通される。したがって、防蟻剤を無駄にせず、かつ防蟻剤を継目部分の全長に亘って適切に供給することができる。
【0032】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
この発明の一実施例である防蟻処理方法は、建物100の床下に適用され、布基礎などの第1コンクリート構造体102と土間コンクリートなどの第2コンクリート構造体104との継目部分106に防蟻剤を供給することによって、当該継目部分106から屋内への白蟻の侵入を防止するものであり、たとえば図1に示すような防蟻システム10において用いられる。
【0034】
図1および図2に示すように、防蟻システム10は、継目部分106に沿って設けられる遮液部材12を備える。遮液部材12は、後述するフレキシブルホース20を上方から覆う被覆部14、および被覆部14とコンクリート構造体102,104とを密着させる接合部16を含み、コンクリート構造体102,104との間に閉空間18を形成する。
【0035】
ただし、この実施例における「閉空間」とは、遮液部材12と第1コンクリート構造体102と第2コンクリート構造体104とによって囲繞される空間を意味し、必ずしも閉ざされた空間であることを前提とするものではない。
【0036】
被覆部14には、たとえばフレキシブルホース20の径に応じたサイズに加工した合成樹脂シートが用いられる。また、接合部16には、たとえば両面接着タイプのブチルゴム系テープが用いられる。接合部16は、被覆部14の両端部に重ねて貼り合わされて、被覆部14の一方端部と第1コンクリート構造体102の屋内側の側面とを、ならびに当該被覆部14の他方端部と第2コンクリート構造体104の上面とを接合する。
【0037】
上述したように、遮液部材12は、コンクリート構造体102,104との間に閉空間18を形成する。そして、この閉空間18には、防蟻剤を供給するためのフレキシブルホース20が挿通される。
【0038】
図3に示すように、フレキシブルホース20は、たとえばゴム製の高圧ホースであるが、これに限定される必要はなく、防蟻剤の注入圧力に耐えることができる、かつ柔軟で自由自在に曲げることができる構造であればよい。フレキシブルホース20の呼び径は、たとえば15mmである。ただし、図面の都合上、フレキシブルホース20の径を実際よりも大きく図示していることに留意されたい。
【0039】
フレキシブルホース20の先端部には、防蟻剤を噴射するノズル22が設けられている。ノズル22の形状および形式は、特に限定されず、防蟻剤を供給する範囲などの適用条件によって適宜選択可能であるが、防蟻剤が放射状に噴射して噴射パターンが円形となるコーンパターンノズルが好適である。
【0040】
また、フレキシブルホース20の後端部には、当該フレキシブルホース20に防蟻剤を注入するためのポンプ(図示せず)が接続されている。
【0041】
フレキシブルホース20は、少なくともその両端部を除いて、ホースリール24に巻きつけられている。ホースリール24は、フレキシブルホース20を巻きつけるためのリールドラム26と、当該リールドラム26を回転させるためのハンドル28とを備えており、ハンドル28を把持してリールドラム26を回転させることによって、フレキシブルホース20を多列多段に巻き取ることができる。
【0042】
このような防蟻システム10を用いて、建物100の床下に防蟻処理を行う方法を以下に示す。
【0043】
先ず、継目部分106に沿って遮液部材12を設ける。具体的には、図4に示すように、継目部分106の全長に亘って遮液部材12を配置する。そして、遮液部材12の両端(始端12aと終端12b)を一箇所にまとめて上方に立ち上げ、第1コンクリート構造体102の上部に設けた壁板(図示せず)の連通口30を通して屋外側まで延設し、たとえば中空直方体状のケーシング32の内部に収容する。なお、ケーシング32には、幼児などによる誤使用を防止するために、防蟻処理以外の時には鍵を掛けておくと好適である。
【0044】
次に、遮液部材12がコンクリート構造体102,104との間に形成する閉空間18に、フレキシブルホース20を挿通する。具体的には、遮液部材12の始端12aからフレキシブルホース20を挿入して、当該フレキシブルホース20のノズル22(先端部)が遮液部材12の終端12bに到達していることが目視確認できるまで、フレキシブルホース20を遮液部材12内に押し込む。なお、この実施例における遮液部材12の「始端」とは、フレキシブルホース20が挿入される側の一方端を意味し、「終端」とは、当該遮液部材12における他方端を意味する。
【0045】
続いて、フレキシブルホース20の後端部に接続されているポンプを作動させる。すると、防蟻剤がフレキシブルホース20に注入される。この防蟻剤は、フレキシブルホース20を通ってノズル22まで導かれ、当該ノズル22から噴射される。なお、防蟻剤としては、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系、カーバメイト系、有機リン系等の周知の防蟻効果を有する薬液剤を使用することができる。
【0046】
次に、フレキシブルホース20のノズル22を遮液部材12の終端12bと始端12aとの間で移動させる(図1参照)。具体的には、ポンプを作動させた状態、すなわち防蟻剤を噴射している状態のまま、ハンドル28を把持してリールドラム26を回転させて、フレキシブルホース20をホースリール24に巻き取り、当該フレキシブルホース20のノズル22を遮液部材12の終端12bから始端12aに向かって移動させる。なお、フレキシブルホース20に防蟻剤を注入するポンプの圧力やノズル22を移動させる速度などは、遮液部材12の構造や配置状況などに応じて、適宜設定する。
【0047】
そして、フレキシブルホース20のノズル22が遮液部材12の始端12aに到達すると、ポンプを停止させて、作業を終了する。
【0048】
このような防蟻処理方法では、フレキシブルホース20のノズル22から継目部分106に向かう方向に噴射された防蟻剤は、直接或いはコンクリート構造体102,104をつたって継目部分106に供給される。一方、フレキシブルホース20のノズル22から継目部分106に向かわない方向に噴射された防蟻剤は、遮液部材12によってとどめられて、閉空間18内に保持される。そして、閉空間18内に保持されている防蟻剤が、継目部分106に供給される。
【0049】
このように、この実施例によれば、たとえフレキシブルホース20のノズル22から継目部分106に向かわない方向に噴射された防蟻剤であっても、閉空間18内に保持して、継目部分106に供給することができる。したがって、無駄のない防蟻処理を行うことができる。
【0050】
さらに、この実施例では、遮液部材12が継目部分106に沿って設けられ、当該遮液部材12がコンクリート構造体102,104との間に形成する閉空間18にフレキシブルホース20が挿通される。このため、フレキシブルホース20の移動時に、当該フレキシブルホース20のノズル22が継目部分106に沿うように案内される。そして、その閉空間18に挿通されたフレキシブルホース20のノズル22を遮液部材12の始端12aと終端12bとの間で移動させることによって、防蟻剤を継目部分106の全長に亘って均一に供給することができる。したがって、防蟻剤を継目部分106の全長に亘って適切に供給することができる。
【0051】
さらにまた、この実施例では、遮液部材12の始端12aと終端12bとが、一箇所でまとめられて、屋外側まで延設される。このため、フレキシブルホース20を遮液部材12内に押し込むときに、このフレキシブルホース20のノズル22が遮液部材12の終端12bに到達しているかどうかを作業場所で目視確認することができる。したがって、継目部分106の全長に亘って確実に防蟻処理を行うことができる。
【0052】
なお、上述の実施例では、遮液部材12の被覆部14として合成樹脂シートが用いられたが、これに限定される必要はなく、コンクリート構造体102,104との間にフレキシブルホース20を挿通するための閉空間18を形成し、かつこのフレキシブルホース20の移動を案内することができるのであれば、任意の形状および材質の被覆部14を用いることができる。
【0053】
たとえば、図5に示すように、矩形の板状に形成される被覆部14を斜めに傾けて配置し、その一方端部と第1コンクリート構造体102の屋内側の側面とを接合部16によって密着させるとともに、その他方端部と第2コンクリート構造体104の上面とを接合部16によって密着させてもよい。この場合には、遮液部材12は、コンクリート構造体102,104との間に断面略三角形状の閉空間18を形成する。
【0054】
また、たとえば、図6に示すように、断面略L字の板状に形成される被覆部14を配置し、その一方端部と第1コンクリート構造体102の屋内側の側面とを接合部16によって密着させるとともに、その他方端部と第2コンクリート構造体104の上面とを接合部16によって密着させてもよい。この場合には、遮液部材12は、コンクリート構造体102,104との間に断面略正方形状の閉空間18を形成する。
【0055】
さらに、上述の実施例では、フレキシブルホース20をホースリール24に巻き取ることによってノズル22を移動させたが、これに限定される必要はなく、フレキシブルホース20を作業員が直接把持して引き抜くことによってノズル22を移動させてもよい。
【0056】
さらにまた、上述の実施例では、フレキシブルホース20の後端部に設けられたポンプから防蟻剤が注入され、そのフレキシブルホース20の先端部に設けられたノズル22から防蟻剤が供給されたが、これに限定される必要ない。たとえば、ポンプを接続せずに、フレキシブルホース20の後端部に直接防蟻剤を注入してもよい。また、ノズル22を設けずに、フレキシブルホース20の先端部から直接防蟻剤を放出させてもよい。
【0057】
さらに、上述の実施例では、防蟻剤を噴射しているノズル22を遮液部材12の終端12bから始端12aに向けて移動させたが、これに限定される必要はない。たとえば、防蟻剤を噴射している状態のまま、フレキシブルホース20を遮液部材12内に押し込み、そのノズル22を遮液部材12の始端12aから終端12bに向けて移動させてもよい。
【0058】
さらに、フレキシブルホース20を閉空間18に挿通する場合には、フレキシブルホース20を遮液部材12の始端12aから終端12bに向けて牽引移動させるための牽引用治具を用いることもできる。たとえば、予め、閉空間18内にワイヤ(図示せず)などを引き込んでおき、当該ワイヤをフレキシブルホース20の先端に固定して、フレキシブルホース20を牽引する。また、たとえば、前回防蟻処理を行った際に用いたフレキシブルホース20を閉空間18内に残置しておき、当該残置したフレキシブルホース20によって新しいフレキシブルホース20を牽引する。
【0059】
さらにまた、上述の実施例では、遮液部材12の始端12aと終端12bとが、一箇所でまとめて屋外側まで延設されたが、これに限定される必要はない。たとえば、遮液部材12の終端12bを屋内に配置し、かつ封止してもよい。この場合には、フレキシブルホース20のノズル22が遮液部材12の終端12bに到達したかどうかを目視確認することができないため、ノズル22が遮液部材12の終端12bに到達するときのフレキシブルホース20の挿入寸法をケーシング32などに記載しておき、その記載に基づいてフレキシブルホース20を挿入するとよい。また、遮液部材12の始端12aを建物100における玄関の下駄箱の内部などに配置して、そこからフレキシブルホース20を挿入してもよい。
【0060】
さらに、上述の実施例では、1つの遮液部材12を継目部分106の全長に亘って配置した(図4参照)が、これに限定される必要はなく、複数の遮液部材12を適宜接続して配置してもよい。そして、この場合には、コンクリート構造体102,104の隅角部分108において、遮液部材12と他の遮液部材12とをコーナ部材34によって接続することもできる。
【0061】
図7および図8に示すように、コーナ部材34は、たとえば合成樹脂によって中空直方体状に形成され、コンクリート構造体102,104の隅角部分108において、遮液部材12と他の遮液部材12とを接続する。
【0062】
コーナ部材34は、当該コーナ部材34の側壁面を構成する側部36を備える。側部36は、第1側部36aおよび第2側部36bを含み、第1側部36aと第2側部36bとによって角筒状に形成される。
【0063】
第1側部36aは、上面視で略L字形状を有する板状に形成され、第1コンクリート構造体102の屋内側の側面のそれぞれに当接する。第1側部36aには、その全面に亘って無数の開口38が形成されており、フレキシブルホース20のノズル22から噴射された防蟻剤がこの開口38を通ってコーナ部材34の外部に流出する。
【0064】
また、第2側部36bは、上面視で略L字形状を有する板状に形成され、第1コンクリート構造体102の屋内側の側面のそれぞれに同時に対向する。第2側部36bには、2つの接続口40が形成される。
【0065】
さらに、側部36の上部には、蓋部42が設けられる。蓋部42は、矩形の板状に形成され、側部42を上方から塞いでいる。
【0066】
側部36の内側には、底部44が一体的に形成される。底部44の上面は、継目部分106に向かう下り勾配を有しており、たとえば、その一方端が第2側部36bの上端部に位置し、その他方端が第1側部36aの下端部に位置している。
【0067】
また、コーナ部材34の内部には、1つの接続口40からもう1つの接続口40へと連通する通路部46が形成されており、当該通路部46によってフレキシブルホース20の移動が案内される。たとえば、通路部46としては、その管壁に無数の孔48が形成された有孔管が用いられる。
【0068】
このように、この実施例では、コンクリート構造体102,104の隅角部分108にコーナ部材34が設けられ、コーナ部材34は、コンクリート構造体102,104の隅角部分108において、遮液部材12と他の遮液部材12とを接続する。
【0069】
ここで、コンクリート構造体102,104の隅角部分108では、たとえばフレキシブルホース20のノズル22が第1コンクリート構造体102の屋内側の側面に突き当たってしまうなどして、当該フレキシブルホース20のノズル22の進行方向を変化させることが困難である。このため、フレキシブルホース20のノズル22を円滑に移動させることができない可能性がある。
【0070】
また、コンクリート構造体102,104の隅角部分108では、フレキシブルホース20の急角度での曲げが制限されてしまうため、フレキシブルホース20の曲げが制限されない程度に遮液部材12を継目部分106から離さねばならず、この場合には、コンクリート構造体102,104の隅角部分108における継目部分106に確実な防蟻処理を行うことができない。
【0071】
しかしながら、この実施例では、コンクリート構造体102,104の隅角部分108において、コーナ部材34(通路部46)にフレキシブルホース20の移動が案内される。このため、フレキシブルホース20の移動時に、当該フレキシブルホース20のノズル22の進行方向を変化させて、当該フレキシブルホース20のノズル22を円滑に移動させることができる。
【0072】
さらに、フレキシブルホース20のノズル22から噴射された防蟻剤は、コーナ部材34の内部で拡散し、その後重力によって緩やかに底部44の上面に流れ落ちる。そして、底部44に沿って継目部分106に向けて流れる防蟻剤が、開口38を通って継目部分106に供給される。したがって、コンクリート構造体102,104の隅角部分における継目部分106に確実な防蟻処理を行うことができる。
【0073】
なお、上述の実施例では、コーナ部材34は、合成樹脂によって形成されたが、これに限定される必要はなく、スポンジ等の吸水性に優れる材料、およびフィルタ等の通水性と遮水性とを有する材料によってコーナ部材34を形成することもできる。
【0074】
また、中空直方体状に形成されたコーナ部材34に限定される必要もなく、コンクリート構造体102,104の隅角部分108の形状に対応させた任意の形状のコーナ部材34を形成することができる。
【0075】
たとえば、コーナ部材34に第1側部36aを形成しなくてもよい。この場合には、底部44の上面に沿って流れる防蟻剤が、そのまま継目部分106に供給される。
【0076】
また、たとえば、底部44が継目部分106に向かう下り勾配を有していなくてもよく、さらにコーナ部材40に底部44を形成しなくてもよい。この場合でも、フレキシブルホース24のノズル26から噴射された防蟻剤が、コーナ部材40の内部に保持され、その後コンクリート構造体102,104をつたって継目部分106に供給される。
【0077】
図9および図10に示すこの発明の他の一実施例である防蟻システム10は、閉空間18内に設けられる管部材50をさらに備える。以下、図1の実施例における防蟻システム10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0078】
図9および図10に示すように、管部材50は、ポリエチレンなどの合成樹脂によって形成され、コンクリート構造体102,104の継目部分106に沿って、閉空間18内に設けられる。管部材50は、可撓性を有するかつその管壁に無数の開口52が形成された網状管であり、その呼び径は、たとえば30mmである。このような、網状管の具体例として、たとえば市販品では、大日本プラスチック(株)製のネトロンパイプ(商品名)等が用いられ得る。
【0079】
このような防蟻システム10を用いて、建物100の床下に防蟻処理を行う方法を以下に示す。
【0080】
先ず、1本の長尺の管部材50を用意する。そして、管部材50が継目部分106に沿うように、当該管部材50を継目部分106の全長に亘って配置し、配管用固定具(図示せず)などによって第1コンクリート構造体102ないし第2コンクリート構造体104に固定する。それから、管部材50の両端部を一箇所にまとめて上方に立ち上げ、第1コンクリート構造体102の上部に設けた壁板(図示せず)の連通口30通して屋外側まで延設して、たとえば中空直方体状のケーシング32の内部に収容する。
【0081】
そして、管部材50を上方から覆うように、継目部分106の全長に亘って遮液部材12を設ける。
【0082】
次に、管部材50内にフレキシブルホース20を挿通する。具体的には、管部材50の一方開口(遮液部材12の始端12a)からフレキシブルホース20を挿入して、当該フレキシブルホース20のノズル22が管部材50の他方開口(遮液部材12の終端12b)に到達していることが目視確認できるまで、フレキシブルホース20を管部材50内に押し込む。なお、ノズル22から空気を放出しながらフレキシブルホース20を管部材50内に押し込むと、開口52に目詰まりしている異物等を除去することができるため、好適である。
【0083】
続いて、フレキシブルホース20の後端部に接続されているポンプを作動させて、当該フレキシブルホース20のノズル22から防蟻剤を噴射する。それから、フレキシブルホース20のノズル22を管部材50の他方開口(遮液部材12の終端12b)から管部材50の一方開口(遮液部材12の始端12a)に向かって移動させる。
【0084】
そして、フレキシブルホース20のノズル22が管部材50の一方開口(遮液部材12の始端12a)に到達すると、ポンプを停止させて、作業を終了する。
【0085】
このような防蟻処理方法では、フレキシブルホース20のノズル22から噴射された防蟻剤が、管部材50の開口52および当該開口52を除いた管壁のいずれか一方に到達する。管部材50の開口52に到達した防蟻剤は、開口52を通過し、管部材50の外部に流出して、継目部分106に供給される。一方、管部材50の管壁に到達した防蟻剤は、当該管壁にとどめられ、その後重力によって管部材50の下方へ流れ落ちる。そして、管部材50の下方に位置している開口52を通過した防蟻剤が、管部材14の外部に緩やかに流出して、継目部分106に供給される。
【0086】
このように、この実施例では、閉空間18内に管部材50が設けられる。管部材50は、その内部空間が断面一定の円形であり、その内部に挿通されたフレキシブルホース20の移動を案内する。このため、フレキシブルホース20は、管部材50内でこれに保護されて、遮液部材12に接触することがない。したがって、遮液部材12に欠損等が生じない。さらに、フレキシブルホース20の挿入抵抗および引き抜き抵抗も低減されるため、防蟻処理の作業性が向上する。
【0087】
なお、上述の実施例では、管部材50として、その管壁に無数の開口52が形成された網状管が用いられたが、これに限定される必要はない。たとえば、図11および図12に示すように、管部材50として、その管壁に無数の孔54が形成された有孔管を用いることもできる。このような管部材50では、この孔54が管部材50の内部から外部へと防蟻剤を通すための開口52として機能する。
【0088】
さらに、図13に示すように、管部材50の管壁における周方向の一部にのみ孔54を形成し、この孔54が継目部分106に対向するように管部材14を配置することもできる。この場合には、管部材50の外部に流出する防蟻剤は、全て継目部分106或いはその近傍に供給される。したがって、防蟻剤をより無駄なく継目部分106に供給することができる。
【0089】
また、たとえば、図示は省略するが、管部材50の管壁に、周方向に間隔を隔てた複数のスリットを形成し、このスリットを開口52として機能させてもよい。
【0090】
さらにまた、この実施例における遮液部材12と他の遮液部材12とを、上述したコーナ部材34によって接続することもできる。この場合には、コンクリート構造体102,104の隅角部分においても、管部材50がフレキシブルホース20の移動を案内するため、コーナ部材34に通路部46を設けなくてもよい。
【0091】
なお、上述の各実施例ではいずれも、コンクリート構造体102,104の継目部分106に防蟻剤を供給し、この継目部分106から屋内への白蟻の侵入を防止したが、これに限定される必要はない。たとえば、図示は省略するが、たとえば第2コンクリート構造体104を上下方向に貫通する配管がある場合には、継目部分106に加えて、配管が第2コンクリート構造体104になす配管貫通部分を囲繞するように遮液部材12を設け、この配管貫通部分から屋内への白蟻の侵入を防止してもよい。
【0092】
さらに、配管が第2コンクリート構造体104になす配管貫通部分に限定される必要はなく、たとえばベタ基礎における地表面を覆う部分や防湿コンクリートに形成されている配管貫通部分、或いはそれらを含むコンクリート構造体102,104に生じている亀裂でも同様である。
【0093】
また、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】この発明の一実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図2】図1の防蟻システムを示す断面図である。
【図3】図1のフレキシブルホースをホースリールに巻きつけた状態を示す斜視図である。
【図4】図1の遮液部材を継目部分の全長に亘って配置した状態を示す図解図である。
【図5】この発明の別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図6】この発明の別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図7】この発明の別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図8】図7の防蟻システムを示す断面図である。
【図9】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図10】図9の防蟻システムを示す断面図である。
【図11】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図12】図11の防蟻システムを示す断面図である。
【図13】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10 …防蟻システム
12 …遮液部材
14 …被覆部
16 …接合部
18 …閉空間
20 …フレキシブルホース
22 …ノズル
34 …コーナ部材
50 …管部材
100 …建物
102 …第1コンクリート構造体
104 …第2コンクリート構造体
106 …継目部分
【技術分野】
【0001】
この発明は、防蟻システムおよび防蟻処理方法に関し、特にたとえば、建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための、防蟻システムおよび防蟻処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の白蟻被害を防止するために、白蟻の主たる経路となっているコンクリート構造体の継目部分に防蟻剤を散布して、当該継目部分に生じている隙間からの白蟻の侵入を防止する防蟻処理が公知である。たとえば、特許文献1に記載された技術では、基礎と土間コンクリートとの継目部分近傍の地中に防蟻剤散布用パイプが配置される。そして、防蟻剤散布用パイプの上流端部に接続される防蟻剤注入パイプから注入された防蟻剤が、当該防蟻剤散布用パイプの管壁に形成されている無数の防蟻剤噴射用オリフィスを通って地中に散布される。
【特許文献1】特許第3791770号公報 [E04B 1/72]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、防蟻剤散布用パイプに形成されているオリフィスからは、限り定めることなく防蟻剤が噴射される。このため、基礎と土間コンクリートとの継目部分以外の方向の地中にも防蟻剤が拡がってしまい、防蟻剤に無駄が多いという問題があった。
【0004】
また、特許文献1の技術では、防蟻剤散布用パイプの上流端部で注入された防蟻剤が、地中に散布されていくことによって、当該防蟻剤散布用パイプの下流側に向かうにしたがって減少する。このため、防蟻剤の散布量が防蟻剤散布用パイプの上流側と下流側とで著しく不均一になってしまう。そして、防蟻剤散布用パイプの下流側に十分な量の防蟻剤が到達しなければ、当該防蟻剤散布用パイプの下流側の地中に適切な量の防蟻剤を散布することができない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、防蟻システムおよび防蟻処理方法を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、防蟻剤を無駄にせず、かつ防蟻剤を継目部分の全長に亘って適切に供給することができる、防蟻システムおよび防蟻処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、継目部分に沿って設けられ、防蟻剤を供給するフレキシブルホースを挿通するための閉空間をコンクリート構造体との間に形成する遮液部材を備える、防蟻システムである。
【0009】
第1の発明では、防蟻システム(10)は、建物(100)の床下に用いられ、コンクリート構造体(102,104)の継目部分(106)に沿って設けられる遮液部材(12)を備えており、当該継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止する。遮液部材は、コンクリート構造体との間に閉空間(18)を形成し、この閉空間には、防蟻剤を供給するためのフレキシブルホース(20)が挿通される。フレキシブルホースのノズル(22)から継目部分に向かう方向に噴射された防蟻剤は、直接或いはコンクリート構造体をつたって継目部分に供給される。一方、フレキシブルホースのノズルから継目部分に向かわない方向に噴射された防蟻剤は、遮液部材によってとどめられて、閉空間内に保持される。そして、閉空間内に保持されている防蟻剤が、継目部分に供給される。
【0010】
第1の発明によれば、たとえフレキシブルホースのノズルから継目部分に向かわない方向に噴射された防蟻剤であっても、遮液部材によってとどめて閉空間内に保持し、継目部分に供給することができる。したがって、無駄のない防蟻処理を行うことができる。
【0011】
また、その閉空間に挿通されたフレキシブルホースのノズルを遮液部材の始端と終端との間で移動させることによって、防蟻剤を継目部分の全長に亘って均一に供給することができる。したがって、防蟻剤を継目部分の全長に亘って適切に供給することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、遮液部材は、フレキシブルホースを上方から覆う被覆部、および被覆部とコンクリート構造体とを密着させる接合部を含む。
【0013】
第2の発明では、遮液部材(12)は、シート状に形成される被覆部(14)および当該被覆部とコンクリート構造体(102,104)とを密着させる接合部(16)を含む。たとえば、被覆部には、合成樹脂シートが用いられる。また、たとえば、接合部には、両面接着タイプのブチルゴム系テープが用いられる。
【0014】
第2の発明によれば、適切に密封された閉空間内に防蟻剤が保持されるため、防蟻剤の臭気が外部に漏れることがない。
【0015】
第3の発明は、第2の発明に従属し、コンクリート構造体は、第1コンクリート構造体と第2コンクリート構造体とを含み、接合部は、被覆部の一方端部と第1コンクリート構造体とを密着させるとともに、被覆部の他方端部と第2コンクリート構造体とを密着させる。
【0016】
第3の発明では、コンクリート構造体(102,104)は、布基礎などの第1コンクリート構造体(102)と土間コンクリートなどの第2コンクリート構造体(104)とを含む。たとえば、接合部(16)は、矩形のシート状に形成されて被覆部(14)の両端部に重ねて貼り合わされ、被覆部の一方端部と第1コンクリート構造体の屋内側の側面とを、ならびに当該被覆部の他方端部と第2コンクリート構造体の上面とを密着させる。
【0017】
第4の発明は、第1ないし3の発明に従属し、閉空間内に設けられる管部材をさらに備える。
【0018】
第4の発明では、遮液部材(12)がコンクリート構造体(102,104)との間に形成する閉空間(18)内に管部材(50)が設けられ、その管部材内にフレキシブルホース(20)が挿通される。たとえば、管部材は、可撓性を有するかつその管壁に無数の開口(52)が形成された円筒管であり、その内部に挿通されたフレキシブルホース(20)の移動を案内する。
【0019】
第4の発明によれば、フレキシブルホースが管部材内でこれに保護され、遮液部材に接触することがない。したがって、遮液部材に欠損等が生じない。さらに、フレキシブルホースの挿入抵抗および引き抜き抵抗も低減されるため、防蟻処理の作業性が向上する。
【0020】
第5の発明は、第1ないし4の発明に従属し、コンクリート構造体の隅角部分に設けられるコーナ部材をさらに備える。
【0021】
第5の発明では、防蟻システム(10)は、コンクリート構造体(102,104)の隅角部分(108)に設けられるコーナ部材(34)をさらに備える。コーナ部材は、たとえば中空直方体状に形成され、コンクリート構造体の隅角部分において、遮液部材(12)と他の遮液部材とを接続する。たとえば、コーナ部材は、その全面に亘って無数の開口(38)が形成される側部(36,36a)を含み、この開口を通ってフレキシブルホース(20)のノズル(22)から噴射された防蟻剤がコーナ部材(34)の外部に流出する。また、たとえば、側部(36,36b)には、2つの接続口(40)が形成され、コーナ部材の内部には、1つの接続口からもう1つの接続口へと連通してフレキシブルホースの移動を案内する通路部(46)が形成される。
【0022】
第5の発明によれば、フレキシブルホースの移動時に、当該フレキシブルホースのノズルの進行方向を変化させて、当該フレキシブルホースのノズルを円滑に移動させることができる。
【0023】
さらに、フレキシブルホースのノズルから噴射された防蟻剤は、コーナ部材の開口を通って継目部分に供給される。したがって、コンクリート構造体の隅角部分における継目部分にも、確実な防蟻処理を行うことができる。
【0024】
第6の発明は、第1ないし5の発明に従属し、遮液部材の始端と終端とが、一箇所でまとめて屋外側まで延設されて、ケーシングの内部に収容される。
【0025】
第6の発明では、遮液部材(12)の始端(12a)と終端(12b)とが、一箇所にまとめられ、たとえば第1コンクリート構造体(102)の上部に設けられた連通口(30)を通して屋外側まで延設されて、ケーシング(32)の内部に収容される。このため、たとえばフレキシブルホース(20)を遮液部材内に押し込むときに、このフレキシブルホースのノズル(22)が遮液部材の端に到達しているかどうかを作業場所で目視確認することができる。したがって、継目部分(106)の全長に亘って確実に防蟻処理を行うことができる。
【0026】
第7の発明は、コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻処理方法であって、(a)継目部分に沿って遮液部材を設け、(b)ステップ(a)で設けた遮液部材とコンクリート構造体との間に形成される閉空間内にフレキシブルホースを挿通し、(d)フレキシブルホースの先端部から防蟻剤を供給しながら、当該先端部を遮液部材の始端と終端との間で移動させる、防蟻処理方法である。
【0027】
第7の発明では、ステップ(a)において、コンクリート構造体(102,104)の継目部分(106)に沿って遮液部材(12)を設ける。ステップ(b)において、遮液部材がコンクリート構造体との間に形成する閉空間(18)にフレキシブルホース(20)を挿入する。ステップ(c)において、たとえばフレキシブルホースの先端部に設けられているノズル(22)から防蟻剤を噴射する。そして、フレキシブルホースのノズルから防蟻剤を噴射している状態のまま、当該ノズルを遮液部材の始端(12a)と終端(12b)との間で移動させる。
【0028】
第7の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏する。
【0029】
第8の発明は、第7の発明に従属し、ステップ(b)でフレキシブルホースを閉空間に挿通する際に、当該フレキシブルホースを遮液部材の始端から終端に向けて移動させるための牽引用治具を用いる。
【0030】
第8の発明では、フレキシブルホース(20)を閉空間(18)に挿通する際に、このフレキシブルホースを遮液部材(12)の始端(12a)から終端(12b)に向けて牽引移動させるための牽引用治具を用いる。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、継目部分に沿って遮液部材が設けられ、当該遮液部材がコンクリート構造体との間に形成する閉空間に防蟻剤を供給するフレキシブルホースが挿通される。したがって、防蟻剤を無駄にせず、かつ防蟻剤を継目部分の全長に亘って適切に供給することができる。
【0032】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
この発明の一実施例である防蟻処理方法は、建物100の床下に適用され、布基礎などの第1コンクリート構造体102と土間コンクリートなどの第2コンクリート構造体104との継目部分106に防蟻剤を供給することによって、当該継目部分106から屋内への白蟻の侵入を防止するものであり、たとえば図1に示すような防蟻システム10において用いられる。
【0034】
図1および図2に示すように、防蟻システム10は、継目部分106に沿って設けられる遮液部材12を備える。遮液部材12は、後述するフレキシブルホース20を上方から覆う被覆部14、および被覆部14とコンクリート構造体102,104とを密着させる接合部16を含み、コンクリート構造体102,104との間に閉空間18を形成する。
【0035】
ただし、この実施例における「閉空間」とは、遮液部材12と第1コンクリート構造体102と第2コンクリート構造体104とによって囲繞される空間を意味し、必ずしも閉ざされた空間であることを前提とするものではない。
【0036】
被覆部14には、たとえばフレキシブルホース20の径に応じたサイズに加工した合成樹脂シートが用いられる。また、接合部16には、たとえば両面接着タイプのブチルゴム系テープが用いられる。接合部16は、被覆部14の両端部に重ねて貼り合わされて、被覆部14の一方端部と第1コンクリート構造体102の屋内側の側面とを、ならびに当該被覆部14の他方端部と第2コンクリート構造体104の上面とを接合する。
【0037】
上述したように、遮液部材12は、コンクリート構造体102,104との間に閉空間18を形成する。そして、この閉空間18には、防蟻剤を供給するためのフレキシブルホース20が挿通される。
【0038】
図3に示すように、フレキシブルホース20は、たとえばゴム製の高圧ホースであるが、これに限定される必要はなく、防蟻剤の注入圧力に耐えることができる、かつ柔軟で自由自在に曲げることができる構造であればよい。フレキシブルホース20の呼び径は、たとえば15mmである。ただし、図面の都合上、フレキシブルホース20の径を実際よりも大きく図示していることに留意されたい。
【0039】
フレキシブルホース20の先端部には、防蟻剤を噴射するノズル22が設けられている。ノズル22の形状および形式は、特に限定されず、防蟻剤を供給する範囲などの適用条件によって適宜選択可能であるが、防蟻剤が放射状に噴射して噴射パターンが円形となるコーンパターンノズルが好適である。
【0040】
また、フレキシブルホース20の後端部には、当該フレキシブルホース20に防蟻剤を注入するためのポンプ(図示せず)が接続されている。
【0041】
フレキシブルホース20は、少なくともその両端部を除いて、ホースリール24に巻きつけられている。ホースリール24は、フレキシブルホース20を巻きつけるためのリールドラム26と、当該リールドラム26を回転させるためのハンドル28とを備えており、ハンドル28を把持してリールドラム26を回転させることによって、フレキシブルホース20を多列多段に巻き取ることができる。
【0042】
このような防蟻システム10を用いて、建物100の床下に防蟻処理を行う方法を以下に示す。
【0043】
先ず、継目部分106に沿って遮液部材12を設ける。具体的には、図4に示すように、継目部分106の全長に亘って遮液部材12を配置する。そして、遮液部材12の両端(始端12aと終端12b)を一箇所にまとめて上方に立ち上げ、第1コンクリート構造体102の上部に設けた壁板(図示せず)の連通口30を通して屋外側まで延設し、たとえば中空直方体状のケーシング32の内部に収容する。なお、ケーシング32には、幼児などによる誤使用を防止するために、防蟻処理以外の時には鍵を掛けておくと好適である。
【0044】
次に、遮液部材12がコンクリート構造体102,104との間に形成する閉空間18に、フレキシブルホース20を挿通する。具体的には、遮液部材12の始端12aからフレキシブルホース20を挿入して、当該フレキシブルホース20のノズル22(先端部)が遮液部材12の終端12bに到達していることが目視確認できるまで、フレキシブルホース20を遮液部材12内に押し込む。なお、この実施例における遮液部材12の「始端」とは、フレキシブルホース20が挿入される側の一方端を意味し、「終端」とは、当該遮液部材12における他方端を意味する。
【0045】
続いて、フレキシブルホース20の後端部に接続されているポンプを作動させる。すると、防蟻剤がフレキシブルホース20に注入される。この防蟻剤は、フレキシブルホース20を通ってノズル22まで導かれ、当該ノズル22から噴射される。なお、防蟻剤としては、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系、カーバメイト系、有機リン系等の周知の防蟻効果を有する薬液剤を使用することができる。
【0046】
次に、フレキシブルホース20のノズル22を遮液部材12の終端12bと始端12aとの間で移動させる(図1参照)。具体的には、ポンプを作動させた状態、すなわち防蟻剤を噴射している状態のまま、ハンドル28を把持してリールドラム26を回転させて、フレキシブルホース20をホースリール24に巻き取り、当該フレキシブルホース20のノズル22を遮液部材12の終端12bから始端12aに向かって移動させる。なお、フレキシブルホース20に防蟻剤を注入するポンプの圧力やノズル22を移動させる速度などは、遮液部材12の構造や配置状況などに応じて、適宜設定する。
【0047】
そして、フレキシブルホース20のノズル22が遮液部材12の始端12aに到達すると、ポンプを停止させて、作業を終了する。
【0048】
このような防蟻処理方法では、フレキシブルホース20のノズル22から継目部分106に向かう方向に噴射された防蟻剤は、直接或いはコンクリート構造体102,104をつたって継目部分106に供給される。一方、フレキシブルホース20のノズル22から継目部分106に向かわない方向に噴射された防蟻剤は、遮液部材12によってとどめられて、閉空間18内に保持される。そして、閉空間18内に保持されている防蟻剤が、継目部分106に供給される。
【0049】
このように、この実施例によれば、たとえフレキシブルホース20のノズル22から継目部分106に向かわない方向に噴射された防蟻剤であっても、閉空間18内に保持して、継目部分106に供給することができる。したがって、無駄のない防蟻処理を行うことができる。
【0050】
さらに、この実施例では、遮液部材12が継目部分106に沿って設けられ、当該遮液部材12がコンクリート構造体102,104との間に形成する閉空間18にフレキシブルホース20が挿通される。このため、フレキシブルホース20の移動時に、当該フレキシブルホース20のノズル22が継目部分106に沿うように案内される。そして、その閉空間18に挿通されたフレキシブルホース20のノズル22を遮液部材12の始端12aと終端12bとの間で移動させることによって、防蟻剤を継目部分106の全長に亘って均一に供給することができる。したがって、防蟻剤を継目部分106の全長に亘って適切に供給することができる。
【0051】
さらにまた、この実施例では、遮液部材12の始端12aと終端12bとが、一箇所でまとめられて、屋外側まで延設される。このため、フレキシブルホース20を遮液部材12内に押し込むときに、このフレキシブルホース20のノズル22が遮液部材12の終端12bに到達しているかどうかを作業場所で目視確認することができる。したがって、継目部分106の全長に亘って確実に防蟻処理を行うことができる。
【0052】
なお、上述の実施例では、遮液部材12の被覆部14として合成樹脂シートが用いられたが、これに限定される必要はなく、コンクリート構造体102,104との間にフレキシブルホース20を挿通するための閉空間18を形成し、かつこのフレキシブルホース20の移動を案内することができるのであれば、任意の形状および材質の被覆部14を用いることができる。
【0053】
たとえば、図5に示すように、矩形の板状に形成される被覆部14を斜めに傾けて配置し、その一方端部と第1コンクリート構造体102の屋内側の側面とを接合部16によって密着させるとともに、その他方端部と第2コンクリート構造体104の上面とを接合部16によって密着させてもよい。この場合には、遮液部材12は、コンクリート構造体102,104との間に断面略三角形状の閉空間18を形成する。
【0054】
また、たとえば、図6に示すように、断面略L字の板状に形成される被覆部14を配置し、その一方端部と第1コンクリート構造体102の屋内側の側面とを接合部16によって密着させるとともに、その他方端部と第2コンクリート構造体104の上面とを接合部16によって密着させてもよい。この場合には、遮液部材12は、コンクリート構造体102,104との間に断面略正方形状の閉空間18を形成する。
【0055】
さらに、上述の実施例では、フレキシブルホース20をホースリール24に巻き取ることによってノズル22を移動させたが、これに限定される必要はなく、フレキシブルホース20を作業員が直接把持して引き抜くことによってノズル22を移動させてもよい。
【0056】
さらにまた、上述の実施例では、フレキシブルホース20の後端部に設けられたポンプから防蟻剤が注入され、そのフレキシブルホース20の先端部に設けられたノズル22から防蟻剤が供給されたが、これに限定される必要ない。たとえば、ポンプを接続せずに、フレキシブルホース20の後端部に直接防蟻剤を注入してもよい。また、ノズル22を設けずに、フレキシブルホース20の先端部から直接防蟻剤を放出させてもよい。
【0057】
さらに、上述の実施例では、防蟻剤を噴射しているノズル22を遮液部材12の終端12bから始端12aに向けて移動させたが、これに限定される必要はない。たとえば、防蟻剤を噴射している状態のまま、フレキシブルホース20を遮液部材12内に押し込み、そのノズル22を遮液部材12の始端12aから終端12bに向けて移動させてもよい。
【0058】
さらに、フレキシブルホース20を閉空間18に挿通する場合には、フレキシブルホース20を遮液部材12の始端12aから終端12bに向けて牽引移動させるための牽引用治具を用いることもできる。たとえば、予め、閉空間18内にワイヤ(図示せず)などを引き込んでおき、当該ワイヤをフレキシブルホース20の先端に固定して、フレキシブルホース20を牽引する。また、たとえば、前回防蟻処理を行った際に用いたフレキシブルホース20を閉空間18内に残置しておき、当該残置したフレキシブルホース20によって新しいフレキシブルホース20を牽引する。
【0059】
さらにまた、上述の実施例では、遮液部材12の始端12aと終端12bとが、一箇所でまとめて屋外側まで延設されたが、これに限定される必要はない。たとえば、遮液部材12の終端12bを屋内に配置し、かつ封止してもよい。この場合には、フレキシブルホース20のノズル22が遮液部材12の終端12bに到達したかどうかを目視確認することができないため、ノズル22が遮液部材12の終端12bに到達するときのフレキシブルホース20の挿入寸法をケーシング32などに記載しておき、その記載に基づいてフレキシブルホース20を挿入するとよい。また、遮液部材12の始端12aを建物100における玄関の下駄箱の内部などに配置して、そこからフレキシブルホース20を挿入してもよい。
【0060】
さらに、上述の実施例では、1つの遮液部材12を継目部分106の全長に亘って配置した(図4参照)が、これに限定される必要はなく、複数の遮液部材12を適宜接続して配置してもよい。そして、この場合には、コンクリート構造体102,104の隅角部分108において、遮液部材12と他の遮液部材12とをコーナ部材34によって接続することもできる。
【0061】
図7および図8に示すように、コーナ部材34は、たとえば合成樹脂によって中空直方体状に形成され、コンクリート構造体102,104の隅角部分108において、遮液部材12と他の遮液部材12とを接続する。
【0062】
コーナ部材34は、当該コーナ部材34の側壁面を構成する側部36を備える。側部36は、第1側部36aおよび第2側部36bを含み、第1側部36aと第2側部36bとによって角筒状に形成される。
【0063】
第1側部36aは、上面視で略L字形状を有する板状に形成され、第1コンクリート構造体102の屋内側の側面のそれぞれに当接する。第1側部36aには、その全面に亘って無数の開口38が形成されており、フレキシブルホース20のノズル22から噴射された防蟻剤がこの開口38を通ってコーナ部材34の外部に流出する。
【0064】
また、第2側部36bは、上面視で略L字形状を有する板状に形成され、第1コンクリート構造体102の屋内側の側面のそれぞれに同時に対向する。第2側部36bには、2つの接続口40が形成される。
【0065】
さらに、側部36の上部には、蓋部42が設けられる。蓋部42は、矩形の板状に形成され、側部42を上方から塞いでいる。
【0066】
側部36の内側には、底部44が一体的に形成される。底部44の上面は、継目部分106に向かう下り勾配を有しており、たとえば、その一方端が第2側部36bの上端部に位置し、その他方端が第1側部36aの下端部に位置している。
【0067】
また、コーナ部材34の内部には、1つの接続口40からもう1つの接続口40へと連通する通路部46が形成されており、当該通路部46によってフレキシブルホース20の移動が案内される。たとえば、通路部46としては、その管壁に無数の孔48が形成された有孔管が用いられる。
【0068】
このように、この実施例では、コンクリート構造体102,104の隅角部分108にコーナ部材34が設けられ、コーナ部材34は、コンクリート構造体102,104の隅角部分108において、遮液部材12と他の遮液部材12とを接続する。
【0069】
ここで、コンクリート構造体102,104の隅角部分108では、たとえばフレキシブルホース20のノズル22が第1コンクリート構造体102の屋内側の側面に突き当たってしまうなどして、当該フレキシブルホース20のノズル22の進行方向を変化させることが困難である。このため、フレキシブルホース20のノズル22を円滑に移動させることができない可能性がある。
【0070】
また、コンクリート構造体102,104の隅角部分108では、フレキシブルホース20の急角度での曲げが制限されてしまうため、フレキシブルホース20の曲げが制限されない程度に遮液部材12を継目部分106から離さねばならず、この場合には、コンクリート構造体102,104の隅角部分108における継目部分106に確実な防蟻処理を行うことができない。
【0071】
しかしながら、この実施例では、コンクリート構造体102,104の隅角部分108において、コーナ部材34(通路部46)にフレキシブルホース20の移動が案内される。このため、フレキシブルホース20の移動時に、当該フレキシブルホース20のノズル22の進行方向を変化させて、当該フレキシブルホース20のノズル22を円滑に移動させることができる。
【0072】
さらに、フレキシブルホース20のノズル22から噴射された防蟻剤は、コーナ部材34の内部で拡散し、その後重力によって緩やかに底部44の上面に流れ落ちる。そして、底部44に沿って継目部分106に向けて流れる防蟻剤が、開口38を通って継目部分106に供給される。したがって、コンクリート構造体102,104の隅角部分における継目部分106に確実な防蟻処理を行うことができる。
【0073】
なお、上述の実施例では、コーナ部材34は、合成樹脂によって形成されたが、これに限定される必要はなく、スポンジ等の吸水性に優れる材料、およびフィルタ等の通水性と遮水性とを有する材料によってコーナ部材34を形成することもできる。
【0074】
また、中空直方体状に形成されたコーナ部材34に限定される必要もなく、コンクリート構造体102,104の隅角部分108の形状に対応させた任意の形状のコーナ部材34を形成することができる。
【0075】
たとえば、コーナ部材34に第1側部36aを形成しなくてもよい。この場合には、底部44の上面に沿って流れる防蟻剤が、そのまま継目部分106に供給される。
【0076】
また、たとえば、底部44が継目部分106に向かう下り勾配を有していなくてもよく、さらにコーナ部材40に底部44を形成しなくてもよい。この場合でも、フレキシブルホース24のノズル26から噴射された防蟻剤が、コーナ部材40の内部に保持され、その後コンクリート構造体102,104をつたって継目部分106に供給される。
【0077】
図9および図10に示すこの発明の他の一実施例である防蟻システム10は、閉空間18内に設けられる管部材50をさらに備える。以下、図1の実施例における防蟻システム10と同様である部分に関しては、詳細な説明は省略する。
【0078】
図9および図10に示すように、管部材50は、ポリエチレンなどの合成樹脂によって形成され、コンクリート構造体102,104の継目部分106に沿って、閉空間18内に設けられる。管部材50は、可撓性を有するかつその管壁に無数の開口52が形成された網状管であり、その呼び径は、たとえば30mmである。このような、網状管の具体例として、たとえば市販品では、大日本プラスチック(株)製のネトロンパイプ(商品名)等が用いられ得る。
【0079】
このような防蟻システム10を用いて、建物100の床下に防蟻処理を行う方法を以下に示す。
【0080】
先ず、1本の長尺の管部材50を用意する。そして、管部材50が継目部分106に沿うように、当該管部材50を継目部分106の全長に亘って配置し、配管用固定具(図示せず)などによって第1コンクリート構造体102ないし第2コンクリート構造体104に固定する。それから、管部材50の両端部を一箇所にまとめて上方に立ち上げ、第1コンクリート構造体102の上部に設けた壁板(図示せず)の連通口30通して屋外側まで延設して、たとえば中空直方体状のケーシング32の内部に収容する。
【0081】
そして、管部材50を上方から覆うように、継目部分106の全長に亘って遮液部材12を設ける。
【0082】
次に、管部材50内にフレキシブルホース20を挿通する。具体的には、管部材50の一方開口(遮液部材12の始端12a)からフレキシブルホース20を挿入して、当該フレキシブルホース20のノズル22が管部材50の他方開口(遮液部材12の終端12b)に到達していることが目視確認できるまで、フレキシブルホース20を管部材50内に押し込む。なお、ノズル22から空気を放出しながらフレキシブルホース20を管部材50内に押し込むと、開口52に目詰まりしている異物等を除去することができるため、好適である。
【0083】
続いて、フレキシブルホース20の後端部に接続されているポンプを作動させて、当該フレキシブルホース20のノズル22から防蟻剤を噴射する。それから、フレキシブルホース20のノズル22を管部材50の他方開口(遮液部材12の終端12b)から管部材50の一方開口(遮液部材12の始端12a)に向かって移動させる。
【0084】
そして、フレキシブルホース20のノズル22が管部材50の一方開口(遮液部材12の始端12a)に到達すると、ポンプを停止させて、作業を終了する。
【0085】
このような防蟻処理方法では、フレキシブルホース20のノズル22から噴射された防蟻剤が、管部材50の開口52および当該開口52を除いた管壁のいずれか一方に到達する。管部材50の開口52に到達した防蟻剤は、開口52を通過し、管部材50の外部に流出して、継目部分106に供給される。一方、管部材50の管壁に到達した防蟻剤は、当該管壁にとどめられ、その後重力によって管部材50の下方へ流れ落ちる。そして、管部材50の下方に位置している開口52を通過した防蟻剤が、管部材14の外部に緩やかに流出して、継目部分106に供給される。
【0086】
このように、この実施例では、閉空間18内に管部材50が設けられる。管部材50は、その内部空間が断面一定の円形であり、その内部に挿通されたフレキシブルホース20の移動を案内する。このため、フレキシブルホース20は、管部材50内でこれに保護されて、遮液部材12に接触することがない。したがって、遮液部材12に欠損等が生じない。さらに、フレキシブルホース20の挿入抵抗および引き抜き抵抗も低減されるため、防蟻処理の作業性が向上する。
【0087】
なお、上述の実施例では、管部材50として、その管壁に無数の開口52が形成された網状管が用いられたが、これに限定される必要はない。たとえば、図11および図12に示すように、管部材50として、その管壁に無数の孔54が形成された有孔管を用いることもできる。このような管部材50では、この孔54が管部材50の内部から外部へと防蟻剤を通すための開口52として機能する。
【0088】
さらに、図13に示すように、管部材50の管壁における周方向の一部にのみ孔54を形成し、この孔54が継目部分106に対向するように管部材14を配置することもできる。この場合には、管部材50の外部に流出する防蟻剤は、全て継目部分106或いはその近傍に供給される。したがって、防蟻剤をより無駄なく継目部分106に供給することができる。
【0089】
また、たとえば、図示は省略するが、管部材50の管壁に、周方向に間隔を隔てた複数のスリットを形成し、このスリットを開口52として機能させてもよい。
【0090】
さらにまた、この実施例における遮液部材12と他の遮液部材12とを、上述したコーナ部材34によって接続することもできる。この場合には、コンクリート構造体102,104の隅角部分においても、管部材50がフレキシブルホース20の移動を案内するため、コーナ部材34に通路部46を設けなくてもよい。
【0091】
なお、上述の各実施例ではいずれも、コンクリート構造体102,104の継目部分106に防蟻剤を供給し、この継目部分106から屋内への白蟻の侵入を防止したが、これに限定される必要はない。たとえば、図示は省略するが、たとえば第2コンクリート構造体104を上下方向に貫通する配管がある場合には、継目部分106に加えて、配管が第2コンクリート構造体104になす配管貫通部分を囲繞するように遮液部材12を設け、この配管貫通部分から屋内への白蟻の侵入を防止してもよい。
【0092】
さらに、配管が第2コンクリート構造体104になす配管貫通部分に限定される必要はなく、たとえばベタ基礎における地表面を覆う部分や防湿コンクリートに形成されている配管貫通部分、或いはそれらを含むコンクリート構造体102,104に生じている亀裂でも同様である。
【0093】
また、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】この発明の一実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図2】図1の防蟻システムを示す断面図である。
【図3】図1のフレキシブルホースをホースリールに巻きつけた状態を示す斜視図である。
【図4】図1の遮液部材を継目部分の全長に亘って配置した状態を示す図解図である。
【図5】この発明の別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図6】この発明の別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図7】この発明の別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図8】図7の防蟻システムを示す断面図である。
【図9】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図10】図9の防蟻システムを示す断面図である。
【図11】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す図解図である。
【図12】図11の防蟻システムを示す断面図である。
【図13】この発明のさらに別の実施例の防蟻システムを示す断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10 …防蟻システム
12 …遮液部材
14 …被覆部
16 …接合部
18 …閉空間
20 …フレキシブルホース
22 …ノズル
34 …コーナ部材
50 …管部材
100 …建物
102 …第1コンクリート構造体
104 …第2コンクリート構造体
106 …継目部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、
前記継目部分に沿って設けられ、防蟻剤を供給するフレキシブルホースを挿通するための閉空間を前記コンクリート構造体との間に形成する遮液部材を備える、防蟻システム。
【請求項2】
前記遮液部材は、
前記フレキシブルホースを上方から覆う被覆部、および
前記被覆部と前記コンクリート構造体とを密着させる接合部を含む、請求項1記載の防蟻システム。
【請求項3】
前記コンクリート構造体は、第1コンクリート構造体と第2コンクリート構造体とを含み、前記接合部は、前記被覆部の一方端部と前記第1コンクリート構造体とを密着させるとともに、前記被覆部の他方端部と前記第2コンクリート構造体とを密着させる、請求項2記載の防蟻システム。
【請求項4】
前記閉空間内に設けられる管部材をさらに備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の防蟻システム。
【請求項5】
前記コンクリート構造体の隅角部分に設けられるコーナ部材をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の防蟻システム。
【請求項6】
前記遮液部材の始端と終端とが、一箇所でまとめて屋外側まで延設されて、ケーシングの内部に収容される、請求項1ないし5のいずれかに記載の防蟻システム。
【請求項7】
コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻処理方法であって、
(a)前記継目部分に沿って遮液部材を設け、
(b)前記ステップ(a)で設けた遮液部材が前記コンクリート構造体との間に形成する閉空間に前記フレキシブルホースを挿通し、
(d)前記フレキシブルホースの先端部から防蟻剤を供給しながら、当該先端部を前記遮液部材の始端と終端との間で移動させる、防蟻処理方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)で前記フレキシブルホースを前記閉空間に挿通する際に、当該フレキシブルホースを前記遮液部材の始端から終端に向けて移動させるための牽引用治具を用いる、請求項7記載の防蟻処理方法。
【請求項1】
建物の床下に用いられて、コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻システムであって、
前記継目部分に沿って設けられ、防蟻剤を供給するフレキシブルホースを挿通するための閉空間を前記コンクリート構造体との間に形成する遮液部材を備える、防蟻システム。
【請求項2】
前記遮液部材は、
前記フレキシブルホースを上方から覆う被覆部、および
前記被覆部と前記コンクリート構造体とを密着させる接合部を含む、請求項1記載の防蟻システム。
【請求項3】
前記コンクリート構造体は、第1コンクリート構造体と第2コンクリート構造体とを含み、前記接合部は、前記被覆部の一方端部と前記第1コンクリート構造体とを密着させるとともに、前記被覆部の他方端部と前記第2コンクリート構造体とを密着させる、請求項2記載の防蟻システム。
【請求項4】
前記閉空間内に設けられる管部材をさらに備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の防蟻システム。
【請求項5】
前記コンクリート構造体の隅角部分に設けられるコーナ部材をさらに備える、請求項1ないし4のいずれかに記載の防蟻システム。
【請求項6】
前記遮液部材の始端と終端とが、一箇所でまとめて屋外側まで延設されて、ケーシングの内部に収容される、請求項1ないし5のいずれかに記載の防蟻システム。
【請求項7】
コンクリート構造体の継目部分から屋内への白蟻の侵入を防止するための防蟻処理方法であって、
(a)前記継目部分に沿って遮液部材を設け、
(b)前記ステップ(a)で設けた遮液部材が前記コンクリート構造体との間に形成する閉空間に前記フレキシブルホースを挿通し、
(d)前記フレキシブルホースの先端部から防蟻剤を供給しながら、当該先端部を前記遮液部材の始端と終端との間で移動させる、防蟻処理方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)で前記フレキシブルホースを前記閉空間に挿通する際に、当該フレキシブルホースを前記遮液部材の始端から終端に向けて移動させるための牽引用治具を用いる、請求項7記載の防蟻処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−106441(P2010−106441A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276527(P2008−276527)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(596037460)株式会社エプコ (14)
【出願人】(390039295)株式会社コシイプレザービング (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(596037460)株式会社エプコ (14)
【出願人】(390039295)株式会社コシイプレザービング (16)
【Fターム(参考)】
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