説明

防蟻剤およびそれを用いる防蟻方法

【課題】優れた防蟻効果を発現し、かつ、製造コストの低減を図ることのできる防蟻剤、および、その防蟻剤を用いる防蟻方法を提供する。
【解決手段】防蟻剤の有効成分として、下記一般式(1)で示されるアミド化合物を含有させる。一般式(1):


(式中、XおよびXのいずれか一方は、ハロゲン原子、アルキル基または置換基を有してもよいフェニル基を示し、他方は、水素原子を示す。または、XおよびXは、相互に結合して、置換基を有してもよい飽和または不飽和5〜6員環を形成してもよい。Yは、炭素数6〜14のアルキレン基を示す。Zは、メチル基、ビニル基または二つの置換基を含むアミド基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防蟻剤およびそれを用いる防蟻方法、詳しくは、木材などを白蟻の食害から保護するための防蟻剤、および、その防蟻剤を用いた防蟻方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般工業用材料や土木工業用材料などに使用される木材などを、白蟻の食害から保護するために、防蟻剤を用いることが広く知られている。
【0003】
このような防蟻剤としては、例えば、E−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(クロチアニジン)(例えば、特許文献1参照)、2−メチルビフェニル−3−イルメチル(Z)−(1RS,3RS)−3−(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロパ−1−エニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート(ビフェントリン)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206492号公報
【特許文献2】特開平8−225401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の防蟻剤は、その化学構造が複雑であり、このような防蟻剤を製造するには、多段階の合成工程が必要となるため、製造コストが増大するという不具合がある。
【0006】
そこで、本発明は、優れた防蟻効果を発現し、かつ、製造コストの低減を図ることのできる防蟻剤、および、その防蟻剤を用いる防蟻方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明者らは、防蟻剤として用いることができる有効成分について鋭意検討したところ、特定のアミド化合物が、簡単な構造でありながら、十分な防蟻効果を有する知見を見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)下記一般式(1)で示されるアミド化合物を含有することを特徴とする、防蟻剤、
一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、XおよびXのいずれか一方は、ハロゲン原子、アルキル基または置換基を有してもよいフェニル基を示し、他方は、水素原子を示す。また、XおよびXは、相互に結合して、置換基を有してもよい飽和または不飽和5〜6員環を形成してもよい。Yは、炭素数6〜14のアルキレン基を示す。Zは、メチル基、ビニル基または下記一般式(2)で示される置換基を示す。)
一般式(2):
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、XおよびXは、上記一般式(1)のXおよびXと同意義を示す。)
(2)前記一般式(1)において、XおよびXが、相互に結合して、飽和5〜6員環を形成することを特徴とする、前記(1)に記載の防蟻剤、
(3)前記一般式(1)において、Zが、ビニル基、または、上記一般式(2)で示され、XおよびXが、相互に結合して、飽和5〜6員環を形成する置換基であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の防蟻剤、
(4)前記一般式(1)において、Yが、炭素数8〜10のアルキレン基であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の防蟻剤、
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の防蟻剤を用いることを特徴とする、防蟻方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防蟻剤は、有効成分として、上記一般式(1)で示されるアミド化合物を含有している。上記一般式(1)で示されるアミド化合物は、十分な防蟻効果を有し、かつ、安価な原料から簡便な方法により合成することができる。そのため、本発明の防蟻剤は、優れた防蟻効果を発現することができることに加え、製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の防蟻剤は、下記一般式(1)で示されるアミド化合物を含有する。
【0015】
一般式(1):
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、XおよびXのいずれか一方は、ハロゲン原子、アルキル基または置換基を有してもよいフェニル基を示し、他方は、水素原子を示す。また、XおよびXは、相互に結合して、置換基を有してもよい飽和または不飽和5〜6員環を形成してもよい。Yは、炭素数6〜14のアルキレン基を示す。Zは、メチル基、ビニル基または下記一般式(2)で示される置換基を示す。)
一般式(2):
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、XおよびXは、上記一般式(1)のXおよびXと同意義を示す。)
上記一般式(1)および(2)において、XまたはXで示されるハロゲン原子としては、例えば、臭素、塩素、フッ素、ヨウ素などが挙げられる。
【0020】
上記一般式(1)および(2)において、XまたはXで示されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0021】
これらアルキル基のなかでは、好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0022】
上記一般式(1)および(2)において、XまたはXで示されるフェニル基の置換基としては、例えば、アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、臭素、塩素、フッ素、ヨウ素などが挙げられる。
【0023】
これら置換基のなかでは、好ましくは、アルキル基、ハロゲン原子が挙げられ、さらに好ましくは、メチル基、塩素が挙げられる。
【0024】
このような置換基を有してもよいフェニル基としては、例えば、無置換のフェニル基、例えば、トリル基、エチルフェニル基などの炭素数1〜4のアルキル基が一置換するフェニル基、例えば、キシリル基、ジエチルフェニル基、メチルエチルフェニル基などの炭素数1〜4のアルキル基が二置換するフェニル基、例えば、トリメチルフェニル基などの炭素数1〜4のアルキル基が三置換するフェニル基などが挙げられる。
【0025】
これら置換基を有してもよいフェニル基のなかでは、好ましくは、トリル基、キシリル基が挙げられる。
【0026】
上記一般式(1)および(2)において、XおよびXは、相互に結合して、置換基を有してもよい飽和または不飽和5〜6員環を形成してもよい。
【0027】
飽和または不飽和5〜6員環は、XおよびXが結合する共通の窒素原子を含むヘテロ環であり、その他にヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子)を含んでもよく、また、置換基として、炭素数1〜4のアルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子を有してもよい。
【0028】
炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0029】
ハロゲン原子としては、例えば、臭素、塩素、フッ素、ヨウ素などが挙げられる。
【0030】
このような置換基は、飽和または不飽和5〜6員環に、例えば、1〜4置換される。
【0031】
このような置換基を有してもよい飽和または不飽和5〜6員環としては、例えば、ピロリジン環、ピロール環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、チアゾリジン環、オキサゾリジン環、2−メチルピロリジン環、3−クロロピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、2−メチルピペラジン環、3−クロロピペリジン環などが挙げられる。
【0032】
このような飽和または不飽和5〜6員環のなかでは、好ましくは、ピペリジン環が挙げられる。
【0033】
このような上記一般式(1)における、XおよびXのなかでは、好ましくは、置換基を有してもよいフェニル基、および、相互に結合して形成する飽和または不飽和5〜6員環が挙げられ、さらに好ましくは、相互に結合して形成する飽和5〜6員環が挙げられる。
【0034】
上記一般式(1)において、Yで示されるアルキレン基としては、例えば、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、2−エチルヘキシレン、ノニレン、デシレン、イソデシレン、ドデシレン、テトラデシレンなどの炭素数6〜14のアルキレン基が挙げられる。
【0035】
これらアルキレン基のなかでは、好ましくは、オクチレン、2−エチルヘキシレン、ノニレン、デシレン、イソデシレンなどの炭素数8〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0036】
上記一般式(1)において、Zは、メチル基、ビニル基または上記一般式(2)で示される官能基を示す。
【0037】
このような上記一般式(1)における、Zのなかでは、好ましくは、ビニル基、および、上記一般式(2)で示され、XおよびXが、相互に結合して形成する飽和5〜6員環である。
【0038】
このような上記一般式(1)で示されるアミド化合物としては、例えば、1−(ピペリジン−1−イル)ウンデック−10−エン−1−オン(下記化学式(3))、1,10−ジ(ピペリジン−1−イル)デカン−1,10−ジオン(下記化学式(4))、N−p−トリルデカンアミド(下記化学式(5))、N−(2,6−ジメチルフェニル)デカンアミド(下記化学式(6))、N−(2,3−ジメチルフェニル)デカンアミド(下記化学式(7))などが挙げられる。
化学式(3):
【0039】
【化5】

【0040】
化学式(4):
【0041】
【化6】

【0042】
化学式(5):
【0043】
【化7】

【0044】
化学式(6):
【0045】
【化8】

【0046】
化学式(7):
【0047】
【化9】

【0048】
次いで、上記一般式(1)で示されるアミド化合物の合成方法について説明する。
【0049】
上記一般式(1)で示されるアミドは、特に制限されないが、例えば、下記反応式(1)で示されるようにカルボン酸(8)と、ハロゲン化剤とを、反応させ、カルボン酸ハロゲン化物(9)を調製した後、カルボン酸ハロゲン化物(9)と、アミン(10)とを、縮合反応させることによって、合成される。
反応式(1):
【0050】
【化10】

【0051】
(式中、Rは、メチル基、ビニル基、または、カルボキシル基を示し、Rは、メチル基、ビニル基、または、ハロゲン化カルボニル基を示す。Xは、ハロゲン原子を示す。X、X2、YおよびZは、上記一般式(1)のX、X2、YおよびZと同意義を示す。)
上記一般式(1)で示されるアミドを合成するには、まず、カルボン酸(8)と、ハロゲン化剤とを、反応させ、カルボン酸ハロゲン化物(9)を調製する。
【0052】
カルボン酸(8)としては、例えば、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸などの炭素数8〜16の飽和モノカルボン酸、例えば、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、11−ドデセン酸、12−トリデセン酸、13−テトラデセン酸、14−ペンタデセン酸、15−ヘキサデセン酸、16−ヘプタデセン酸などの炭素数9〜17の不飽和モノカルボン酸、例えば、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸などの炭素数8〜16のジカルボン酸などが挙げられる。
【0053】
これらカルボン酸(8)のなかでは、好ましくは、デカン酸、10−ウンデセン酸、デカン二酸(セバシン酸)が挙げられる。
【0054】
ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニール、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、三臭化リンなどが挙げられる。
【0055】
これらハロゲン化剤のなかでは、好ましくは、塩化チオニールが挙げられる。
【0056】
ハロゲン化剤の使用量は、例えば、カルボン酸(8)1質量部に対して、1〜8質量部、好ましくは、2〜4質量部である。
【0057】
カルボン酸(8)と、ハロゲン化剤との反応条件としては、常圧下、温度が、例えば、20〜120℃、好ましくは、60〜80℃、時間が、例えば、0.5〜5時間、好ましくは、1〜3時間である。
【0058】
また、カルボン酸(8)と、ハロゲン化剤との反応は、還流下で実施してもよい。
【0059】
また、大気雰囲気または不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)雰囲気のいずれにおいても実施できる。
【0060】
このように調製されるカルボン酸ハロゲン化物(9)としては、例えば、オクタン酸クロリド、ノナン酸クロリド、デカン酸クロリド、ウンデカン酸クロリド、ドデカン酸クロリド、トリデカン酸クロリド、テトラデカン酸クロリド、ペンタデカン酸クロリド、ヘキサデカン酸クロリドなどの炭素数8〜16の飽和モノカルボン酸塩化物、例えば、8−ノネン酸クロリド、9−デセン酸クロリド、10−ウンデセン酸クロリド、11−ドデセン酸クロリド、12−トリデセン酸クロリド、13−テトラデセン酸クロリド、14−ペンタデセン酸クロリド、15−ヘキサデセン酸クロリド、16−ヘプタデセン酸クロリドなどの炭素数9〜17の不飽和モノカルボン酸塩化物、例えば、オクタン二酸ジクロリド、ノナン二酸ジクロリド、デカン二酸ジクロリド(セバシン酸ジクロリド)、ウンデカン二酸ジクロリド、トリデカン二酸ジクロリド、テトラデカン二酸ジクロリド、ペンタデカン二酸ジクロリド、ヘキサデカン二酸ジクロリドなどの炭素数8〜16のジカルボン酸ジクロリドなどが挙げられる。
【0061】
次いで、必要により、過剰のハロゲン化剤を、例えば、減圧下で留去した後、調製されたカルボン酸ハロゲン化物(9)と、アミン(10)とを、反応溶媒中で、縮合反応させることによって、上記一般式(1)で示されるアミド化合物が合成される。
【0062】
より具体的には、例えば、カルボン酸ハロゲン化物(9)と、アミン(10)とをそれぞれ反応溶媒に溶解して、カルボン酸ハロゲン化物溶液およびアミン溶液を調製し、アミン溶液に、カルボン酸ハロゲン化物溶液を滴下する。
【0063】
アミン(10)は、一級または二級のアミンであって、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、アニリン、トルイジン、エチルアニリン、キシリジン、ジエチルアニリン、メチルエチルアニリン、トリメチルアニリンなどの炭素数1〜18の一級アミン、例えば、ピロリジン、ピロール、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピラゾール、イミダゾール、チアゾリジン、オキサゾリジン、2−メチルピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、2−メチルピペラジンなどの炭素数4〜18の二級アミンが挙げられる。
【0064】
これらアミン(10)のなかでは、好ましくは、トルイジン、キシリジン、ピペリジンが挙げられ、さらに好ましくは、ピペリジンが挙げられる。
【0065】
反応溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレンなどの低極性溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
【0066】
これら反応溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0067】
また、これら反応溶媒のなかでは、好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。
【0068】
カルボン酸ハロゲン化物溶液に対する反応溶媒の使用量は、カルボン酸ハロゲン化物の原料となるカルボン酸(8)1molに対して、例えば、300〜4000mL、好ましくは、500〜2000mLである。
【0069】
アミン溶液に対する反応溶媒の使用量は、アミン(10)1molに対して、例えば、200〜4000mL、好ましくは、300〜2000mLである。
【0070】
また、アミン溶液の濃度は、例えば、0.1〜5mmol/mL、好ましくは、0.5〜3mmol/mLである。
【0071】
カルボン酸ハロゲン化物溶液およびアミン溶液に対する反応溶媒の使用量は、例えば、カルボン酸(8)およびアミン(10)の総和100質量部に対して、100〜4000質量部、好ましくは、300〜2000質量部である。
【0072】
カルボン酸ハロゲン化物(9)とアミン(10)との反応条件としては、常圧下、温度が、例えば、20〜120℃、好ましくは、50〜80℃、時間が、例えば、0.5〜5時間、好ましくは、1〜4時間である。
【0073】
また、カルボン酸ハロゲン化物(9)と、アミン(10)との縮合反応は、還流下で実施してもよい。また、大気雰囲気または不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス)雰囲気のいずれにおいても実施できる。
【0074】
カルボン酸(8)とアミン(10)との配合割合は、例えば、カルボン酸(8)100質量部に対して、アミン(10)が、40〜300質量部、好ましくは、50〜200質量部である。
【0075】
また、カルボン酸が有するカルボキシル基とアミン(10)との割合は、例えば、カルボキシル基1当量に対して、アミン(10)が、1〜4当量、好ましくは、1〜2当量である。
【0076】
上記の合成反応により得られた反応生成物(粗生成物)は、上記一般式(1)で示されるアミド化合物の他、不純物を含むが、そのまま用いることができ、また、単離精製を経た上で用いることもできる。
【0077】
反応生成物は、例えば、濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、溶媒抽出、液性変換、転溶、クロマトグラフィー、結晶化、再結晶などの公知の分離手段により(必要に応じて、単一の分離手段による分離精製を繰り返し、または、2以上の分離手段による分離精製を組み合わせることにより)、単離精製することができる。
【0078】
このように合成されたアミド化合物の収率は、反応に使用されたカルボン酸(8)に対して、例えば、60〜100%、好ましくは、70〜100%である。
【0079】
そして、このように合成された、上記一般式(1)で示されるアミド化合物は、防蟻効果を発現するため、本発明の防蟻剤の有効成分として用いることができる。
【0080】
このようなアミド化合物を、本発明の防蟻剤の有効成分として用いる場合には、特に限定されず、上記したアミド化合物を単独で配合してもよく、2種以上を併用して配合してもよい。
【0081】
また、本発明の防蟻剤は、公知の方法により、適宜製剤化されていてもよい。
【0082】
製剤形態としては、例えば、溶液剤、水和剤、懸濁剤、分散剤、乳化用油製剤、油性製剤、ローションなどの液剤、例えば、粉末状または粒状の担体の表面に付着、担持させた粉剤、粒剤などの固形剤、例えば、マイクロカプセル剤、例えば、ペースト剤、クリームなどの半固形剤、例えば、噴霧剤、エアゾール剤などが挙げられる。
【0083】
例えば、本発明の防蟻剤を液剤(溶液剤、水和剤、懸濁剤、分散剤、乳化用油製剤、油性製剤、ローションなど)として調製するには、例えば、上記アミド化合物を、後述する含有割合となるように、溶媒中に配合し、必要により、液剤の形態に合わせて、分散安定剤、乳化剤などを配合し、さらに必要により、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、防かび剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合すればよい。
【0084】
液剤の調製に用いられる溶媒は、上記アミド化合物を溶解、または、分散することができるものであればよく、特に限定されないが、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類などが挙げられる。これら溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0085】
これら溶媒のなかでは、好ましくは、アセトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0086】
また、防蟻剤を乳化用油製剤、油性製剤、ローションなどに調製する場合の溶媒には、例えば、アジピン酸ジアルキルエステル(具体的に、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジドデシル、アジピン酸ジテトラデシル、アジピン酸ジヘキサデシル、アジピン酸ジオクタデシル、アジピン酸デシルイソオクチルなど。)、クエン酸エステル(具体的に、例えば、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリエチル)、酢酸アルキルエステル(具体的に、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど。)などのカルボン酸アルキルエステル類、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのアルキレングリコール系エステル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、例えば、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類、例えば、ヘキサノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコールなどのアルコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール類、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物類、例えば、アルキルシクロパラフィン類などの石油系溶媒、なたね油などの油類、例えば、エクソンナフサNo.7、エクソンナフサNo.6、エクソールD80、アイパ−L、アイパ−M、アイパ−H(以上、エクソン化学社製)などの脂肪族系有機溶剤類、例えば、ソルベッソ150、ソルベッソ200(以上、エクソン化学社製)、日石ハイゾールSAS296(「日石ハイゾール」は登録商標)、日石ハイゾールSAS−LH、アルケンL(以上、日本石油化学社製)、PAD(日鉱石油社製)などの芳香族系有機溶剤類などが挙げられる。これら溶媒は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0087】
これら溶剤のなかでは、好ましくは、アジピン酸ジイソノニル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、アルケンL、なたね油が挙げられ、さらに好ましくは、アジピン酸ジイソノニル、エチレングリコールモノメチルエーテル、および、アルケンLまたはなたね油の併用が挙げられる。
【0088】
懸濁剤、分散剤、乳化用油製剤などの調製に用いられる分散安定剤、乳化剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤などの、従来公知の界面活性剤が挙げられる。
【0089】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、商品名:レオドールTW−O120V(「レオドール」は登録商標)、花王社製)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、商品名:ナロアクティーCL100(「ナロアクティー」は登録商標)、三洋化成社製)、ポリエチレンオキサイド・ポリプロピレンオキサイド共重合体(例えば、商品名:ナロアクティーNH100、三洋化成社製)、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル(例えば、商品名:ニューカルゲンCP80(「カルゲン」は登録商標)、ニューカルゲンCP120、竹本油脂社製)、脂肪族多価アルコールエステル、脂肪族多価アルコールポリオキシエチレン、ショ糖脂肪酸エステル、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロック共重合体などが挙げられる。
【0090】
これらノニオン界面活性剤のなかでは、好ましくは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(例えば、商品名:ナロアクティーCL100、三洋化成社製)が挙げられる。
【0091】
カチオン界面活性剤としては、主として四級アンモニウム塩が挙げられ、具体的には、例えば、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアルキル(C8〜C18)トリメチルアンモニウムハライド類、例えば、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルドデシルジメチルアンモニウムクロライドなどのジアルキル(C8〜C18)ジメチルアンモニウムハライド類などが挙げられる。
【0092】
また、油脂に由来する混合アルキル基を有する混合物、例えば、アルキル(C8〜C18)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(C8〜C18)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(C8〜C18)ジメチルベンジルアンモニウム塩(例えば、商品名:サニゾールC(「サニゾール」は登録商標)、花王社製)なども挙げられる。
【0093】
アニオン界面活性剤としては、例えば、金属石鹸類、硫酸アルキルナトリウムなどの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルナフタレンスルホン酸塩、2−スルホコハク酸ジアルキルナトリウムなどの2−スルホコハク酸ジアルキル塩、ポリカルボン酸型界面活性剤、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カリウムなどが挙げられる。
【0094】
上記の界面活性剤は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0095】
界面活性剤の配合割合は、特に限定されないが、例えば、上記防蟻剤100質量部に対して、50質量部以下、好ましくは、10〜30質量部である。
【0096】
増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0097】
増粘剤の配合割合は、特に限定されないが、例えば、上記防蟻剤100質量部に対して、50質量部以下、好ましくは、10〜30質量部である。
【0098】
凍結防止剤、防腐剤、防かび剤、比重調節剤などは、特に限定されず、それぞれの用途に用いられている公知の添加剤が挙げられる。
【0099】
上記防蟻剤を固形剤(粉剤、粒剤など)として調製するには、例えば、上記アミド化合物を、後述する含有割合となるように、粉状または粒状の担体と攪拌混合する。または、上記アミド化合物を、後述する含有割合となるように、溶媒中に配合し、さらに必要により、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合して、懸濁液を調製後、得られた懸濁液を乾燥する。また、上記懸濁液をスプレードライによって粉剤化、粒剤化してもよい。
【0100】
粉末または粒状の担体としては、例えば、樹脂微粒子(例えば、ガンツ化成社製の合成樹脂微粒子「ガンツパール」シリーズ(「ガンツパール」は登録商標)など。)、微粉末シリカ、パーライト(黒曜石や真珠岩を高温で熱処理して生成する白色粒状の発泡体)、ゼオライト、珪藻土、クレー、タルク、酸性白土、活性炭、炭酸カルシウム、木粉、粉末セルロース、デンプン、糖類などが挙げられる。
【0101】
また、上記防蟻剤をマイクロカプセル剤として調製するには、上記アミド化合物を、例えば、界面重合法、in situ重合法(界面反応法)、コアセルベーション法、液中乾燥法、融解分散冷却法、液中硬化皮膜法、コーティング法(気中懸濁法)、スプレードライ法、静電合体法、真空蒸着法などの方法により、マイクロカプセル化すればよい(例えば、特開昭61−249904号公報、特公平6−92282号公報、特公平6−92283号公報、特開平10−114608号公報、特開2000−247821号公報参照)。
【0102】
こうして得られたマイクロカプセルを含む分散液に、必要により、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合することにより、マイクロカプセルを含有する液剤またはペーストとしての防蟻剤を得ることができる。また、マイクロカプセルを含む分散剤を乾燥させることにより、マイクロカプセルからなる粉剤または粒剤としての防蟻剤を得ることができる。
【0103】
上記防蟻剤を半固形剤(ペースト剤、クリームなど)として調製するには、上記アミド化合物を、後述する含有割合となるように、ペーストやクリームを形成するための賦形剤中に配合し、さらに必要により、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合すればよい。
【0104】
上記防蟻剤を噴霧剤として調製するには、上記アミド化合物を、後述する含有割合となるように、溶媒中に配合し、さらに必要により、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、比重調節剤などの公知の添加剤を適宜配合して、噴霧器、スプレー容器などの容器に収容すればよい。
【0105】
上記防蟻剤をエアゾール剤として調製するには、上記アミド化合物と、さらに必要により、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、比重調節剤などの公知の添加剤とを、溶媒中に配合し、噴射剤とともに、エアゾール容器に収容すればよい。
【0106】
固形剤、マイクロカプセル剤、エアゾール剤などの調製に用いられる溶媒としては、例えば、液剤の調製に用いられる溶媒として、上記した溶媒と同様の溶媒が挙げられる。
【0107】
分散安定剤、乳化剤、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、防かび剤、比重調節剤などは、特に限定されず、それぞれの用途に用いられている公知の添加剤が挙げられる。
【0108】
また、上記防蟻剤を担持剤として調製するには、上記のアミド化合物と、粉末または粒状の担体と、さらに必要により、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、比重調節剤などの公知の添加剤とを、上記アミド化合物が後述する含有割合となるように配合し、これら配合成分を、攪拌、混合すればよい。
【0109】
上記防蟻剤において、アミド化合物の含有量は、特に限定されないが、防蟻剤全体の0.1質量%以上、好ましくは、0.1〜80質量%、より好ましくは、1〜20質量%である。
【0110】
上記防蟻剤には、アミド化合物とともに、他のシロアリ防除成分が配合されていてもよい。
【0111】
他のシロアリ防除成分としては、例えば、ネオニコチノイド系化合物、ピレスロイド系化合物、有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カルバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾ−ル系化合物、オキサジアジン系化合物、セミカルバゾン系化合物、植物またはその処理物もしくはその誘導体などが挙げられる。
【0112】
これら他のシロアリ防除成分なかでは、好ましくは、ネオニコチノイド系化合物が挙げられる。
【0113】
ネオニコチノイド系化合物としては、例えば、(E)−1−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)、N−アセチル−N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、N−(2−クロロチアゾール−5−イル)メチル−N−メ(トキシカルボニル−N’−メチル−N”−ニトログアニジン、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリン−2−イリデンアミン(一般名:イミダクロプリド)、3−(2−クロロ−チアゾール−5−イルメチル)−5−[1,3,5]オキサジアジナン−4−イルインデン−N−ニトロアミン(一般名:チアメトキサム)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)などが挙げられる。
これらネオニコチノイド系化合物は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
【0114】
有機塩素系化合物、有機リン系化合物、カルバメート系化合物、ピロール系化合物、フェニルピラゾ−ル系化合物、オキサダイアジン系化合物、およびセミカルバゾン系化合物としては、防蟻剤として公知の各種化合物が挙げられる。
【0115】
植物またはその処理物あるいはその誘導体としては、例えば、特開2002−307406号公報、特開2003−252708号公報、特開2005−74776号公報に記載されたものが挙げられる。
【0116】
上記防蟻剤は、シロアリの駆除およびシロアリによる被害(食害など)の予防などの用途に広く使用できる。
【0117】
シロアリを防除する部位としては、特に限定されないが、例えば、土壌(地盤面など)、例えば、木材、例えば、建物(建築物;すなわち、家屋、倉庫、門扉、塀およびこれらの付属設備など。)における基礎構造部、上部構造部および地下構造部、例えば、建物の付属設備としての地下埋設物、例えば、シロアリの生息・発生域などが挙げられる。
【0118】
さらに、土壌用の処理剤として、または、一般工業用や土木工業用に用いられる各種木材用の処理剤として使用できる。
【0119】
液剤、固形剤、マイクロカプセル剤、半固形剤、噴霧剤、エアゾール剤または担持剤として製剤化された防蟻剤の使用方法は、特に限定されるものではないが、例えば、公知の散布方法によって、例えば、処理対象である木材などに散布すればよい。
【0120】
より具体的には、例えば、有効成分としての上記アミド化合物が1〜20質量%の割合で含有され、液剤として調製された防蟻剤の場合、動力噴霧器または手動噴霧器を用いて、木材の表面に対して50〜500g/mで散布すればよい。
【0121】
有効成分としての、上記アミド化合物が1〜20質量%の割合で含有された固形剤、マイクロカプセル剤、半固形剤、噴霧剤、エアゾール剤または担持剤を、木材の表面に散布する場合も、上記した分量で散布すればよい。
【0122】
防蟻剤を土壌に散布する場合には、散布状況と製剤形態により異なるが、全面散布の場合は、約0.5〜5L/mで、帯状散布の場合は、約3〜10L/mで散布すればよい。
【0123】
上記防蟻剤による防除対象は、シロアリ(等翅)目に属する昆虫であること以外は特に限定されないが、具体的には、例えば、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)などのミゾガシラシロアリ科に属するもの、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリなどのレイビシロアリ科に属するものなどが挙げられる。
【0124】
なお、シロアリに対する防除(シロアリの駆除およびシロアリによる被害の予防)とは、殺蟻(殺シロアリ)のみならず、忌避、摂食阻害なども含まれる。
【0125】
本発明の防蟻剤は、有効成分として、上記一般式(1)で示されるアミド化合物を含有している。
【0126】
上記一般式(1)で示されるアミド化合物は、例えば、カルボン酸を、カルボン酸ハロゲン化物に誘導後、単離精製することなく、カルボン酸ハロゲン化物とアミンとを縮合反応させることにより、合成される。
【0127】
すなわち、上記一般式(1)で示されるアミド化合物は、中間生成物の単離精製することなく、一段階の合成工程により簡便に合成することができる。
【0128】
そのため、容易に合成することができ、かつ、中間生成物の単離精製に伴う収率の低下が発生せず、収率の向上を図ることができる。
【0129】
また、上記一般式(1)で示されるアミド化合物の原料は、いずれも安価な、カルボン酸、ハロゲン化剤およびアミンである。
【0130】
従って、本発明の防蟻剤は、優れた防蟻効果を発現することができることに加え、製造コストの低減を図ることができる。
【実施例】
【0131】
次に、合成例、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの合成例および実施例により限定されるものではない。
【0132】
合成例1
10−ウンデセン酸(3.7g、0.02mol)に、塩化チオニール(8mL)を加え、水浴上で2時間還流した。その後、過剰の塩化チオニールを減圧下で留去し、10−ウンデセン酸クロリドを得た。
【0133】
次いで、10−ウンデセン酸クロリドを、テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解し、カルボン酸クロライド溶液を調製した。
【0134】
一方、ピペリジン(3.4g、0.04mol)を、THF(30mL)に溶解した。
【0135】
そして、ピペリジン溶液を、カルボン酸クロライド溶液に滴下し、反応液とした。
【0136】
反応液は水浴上で3時間還流された後、減圧下において、反応液中のTHFが留去された。
【0137】
次いで、反応液に水と酢酸エチルを加えて分配し、酢酸エチル層を分取した。酢酸エチル層を、一度水洗した後、酢酸エチルを留去することにより、粗生成物を得た。
【0138】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製して、1−(ピペリジン−1−イル)ウンデック−10−エン−1−オン(C1629NO)(上記化学式3に相当)を、淡褐色油状物質として得た。
【0139】
分子量(MW):251、収量:4.2g、収率:84%
電子衝突質量スペクトル(EIMS) m/z(%):251(M,13)、210(8)、140(27)、127(100)、84(23)
合成例2
デカン二酸(セバシン酸)(3g、0.015mol)に、塩化チオニール(5mL)を加え、水浴上で2時間還流した。その後、過剰の塩化チオニールを減圧下で留去し、デカン二酸ジクロリドを得た。
【0140】
次いで、デカン二酸ジクロリドを、テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解し、カルボン酸クロライド溶液を調製した。
【0141】
一方、ピペリジン(5.1g、0.06mol)を、THF(30mL)に溶解した。
【0142】
そして、ピペリジン溶液を、カルボン酸クロライド溶液に滴下し、反応液とした。
【0143】
反応液は水浴上で3時間還流された後、減圧下において、反応液中のTHFが留去された。
【0144】
次いで、反応液に水と酢酸エチルを加えて分配し、酢酸エチル層を分取した。酢酸エチル層を、一度水洗した後、酢酸エチルを留去することにより、粗生成物を得た。
【0145】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製して、1,10−ジ(ピペリジン−1−イル)デカン−1,10−ジオン(C2036)(上記化学式4に相当)を、無色結晶として得た。
【0146】
分子量(MW):336、収量:4.1g、収率:76%、融点:50〜53℃
EIMS m/z(%):336(M,21)、252(19)、210(96)、140(41)、127(57)、84(100)
合成例3
デカン酸(3.5g、0.02mol)に、塩化チオニール(8mL)を加え、水浴上で2時間還流した。その後、過剰の塩化チオニールを減圧下で留去し、デカン酸クロリドを得た。
【0147】
次いで、デカン酸クロリドを、テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解し、カルボン酸クロライド溶液を調製した。
【0148】
一方、p−トルイジン(2.1g、0.02mol)を、THF(30mL)に溶解した。
【0149】
そして、p−トルイジン溶液を、カルボン酸クロライド溶液に滴下し、反応液とした。
【0150】
反応液は水浴上で3時間還流された後、減圧下において、反応液中のTHFが留去された。
【0151】
次いで、反応液に水と酢酸エチルを加えて分配し、酢酸エチル層を分取した。酢酸エチル層を、一度水洗した後、酢酸エチルを留去することにより、粗生成物を得た。
【0152】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製して、N−p−トリルデカンアミド(C1727NO)(上記化学式5に相当)を、無色針状晶として得た。
【0153】
分子量(MW):261、収量:4.0g、収率:77%、融点:74〜75℃
EIMS m/z(%):261(M,12)、149(10)、107(100)
合成例4
デカン酸(3.5g、0.02mol)に、塩化チオニール(8mL)を加え、水浴上で2時間還流した。その後、過剰の塩化チオニールを減圧下で留去し、デカン酸クロリドを得た。
【0154】
次いで、デカン酸クロリドを、テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解し、カルボン酸クロライド溶液を調製した。
【0155】
一方、2,6−キシリジン(3.6g、0.03mol)を、THF(30mL)に溶解した。
【0156】
そして、2,6−キシリジン溶液を、カルボン酸クロライド溶液に滴下し、反応液とした。
【0157】
反応液は水浴上で3時間還流された後、減圧下において、反応液中のTHFが留去された。
【0158】
次いで、反応液に水と酢酸エチルを加えて分配し、酢酸エチル層を分取した。酢酸エチル層を、一度水洗した後、酢酸エチルを留去することにより、粗生成物を得た。
【0159】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製して、N−(2,6−ジメチルフェニル)デカンアミド(C1829NO)(上記化学式6に相当)を、無色針状晶として得た。
【0160】
分子量(MW):275、収量:4.5g、収率:82%、融点:83〜85℃
EIMS m/z(%):275(M,11)、163(9)、121(100)
合成例5
デカン酸(3.5g、0.02mol)に、塩化チオニール(8mL)を加え、水浴上で2時間還流した。その後、過剰の塩化チオニールを減圧下で留去し、デカン酸クロリドを得た。
【0161】
次いで、デカン酸クロリドを、テトラヒドロフラン(THF)(20mL)に溶解し、カルボン酸クロライド溶液を調製した。
【0162】
一方、2,3−キシリジン(3.6g、0.03mol)を、THF(30mL)に溶解した。
【0163】
そして、2,3−キシリジン溶液を、カルボン酸クロライド溶液に滴下し、反応液とした。
【0164】
反応液は水浴上で3時間還流された後、減圧下において、反応液中のTHFが留去された。
【0165】
次いで、反応液に水と酢酸エチルを加えて分配し、酢酸エチル層を分取した。酢酸エチル層を、一度水洗した後、酢酸エチルを留去することにより、粗生成物を得た。
【0166】
粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)により精製して、N−(2,3−ジメチルフェニル)デカンアミド(C1829NO)(上記化学式7に相当)を、無色針状晶として得た。
【0167】
分子量(MW):275、収量:3.9g、収率:71%、融点:86〜87℃
EIMS m/z(%):275(M,12)、163(9)、121(100)
実施例1
合成例1で合成された1−(ピペリジン−1−イル)ウンデック−10−エン−1−オンを、アセトンで希釈して、濃度が、10mg/mL(10000ppm)となるように調製し、防蟻剤(液剤)を得た。
【0168】
実施例2
合成例2で合成された1,10−ジ(ピペリジン−1−イル)デカン−1,10−ジオンを、アセトンで希釈して、濃度が、10mg/mL(10000ppm)となるように調製し、防蟻剤(液剤)を得た。
【0169】
実施例3
合成例3で合成されたN−p−トリルデカンアミドを、アセトンで希釈して、濃度が、10mg/mL(10000ppm)となるように調製し、防蟻剤(液剤)を得た。
【0170】
実施例4
合成例4で合成されたN−(2,6−ジメチルフェニル)デカンアミドを、アセトンで希釈して、濃度が、10mg/mL(10000ppm)となるように調製し、防蟻剤(液剤)を得た。
【0171】
実施例5
合成例5で合成されたN−(2,3−ジメチルフェニル)デカンアミドを、アセトンで希釈して、濃度が、10mg/mL(10000ppm)となるように調製し、防蟻剤(液剤)を得た。
【0172】
試験例(防蟻抗力試験)
実施例1〜5で調製された防蟻剤を、それぞれ、直径12mmのろ紙(2種(No.2:JIS P3801−1995))に対して、40μLずつ滴下し、風乾後、ろ紙の重量を測定した。
【0173】
次いで、含水率12%のケイ砂5号が、50g充填されたガラス瓶に、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)50頭と、実施例1〜5で調製された防蟻剤が、それぞれ染み込んだろ紙とを投入して、防蟻抗力試験を開始した。その際、イエシロアリが、外部に抜け出さないようにガラス瓶に蓋をした。
【0174】
防蟻抗力試験の開始(上記ガラス瓶内へのイエシロアリと上記ろ紙との投入)から、21日間放置し、試験開始から21日経過後に、ガラス瓶内のイエシロアリの挙動を観察した。
【0175】
また、対照として、防蟻剤が染み込んだろ紙に代えて、防蟻剤を染み込ませていないろ紙(直径12mm、2種(No.2:JIS P3801−1995))を用いた以外は、上記の防蟻抗力試験と同様にして、ガラス瓶内のイエシロアリの挙動を観察した。
【0176】
防蟻抗力試験開始から21日経過後の死虫率と、ろ紙の食害率とを測定して、それぞれ、防蟻抗力試験結果を表1に示す。
【0177】
なお、死虫率は、防蟻抗力試験開始前のイエシロアリの頭数(50頭)に対する、防蟻抗力試験開始前のイエシロアリの頭数(50頭)から、防蟻抗力試験終了後のイエシロアリの頭数を減じた値の百分率である。
【0178】
また、ろ紙の食害率は、防蟻抗力試験開始前のろ紙の質量(g)に対する、防蟻抗力試験開始前のろ紙の質量(g)から、防蟻抗力試験終了後のろ紙の質量(g)を減じた値の百分率である。
【0179】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアミド化合物を含有することを特徴とする、防蟻剤。
一般式(1):
【化1】

(式中、XおよびXのいずれか一方は、ハロゲン原子、アルキル基または置換基を有してもよいフェニル基を示し、他方は、水素原子を示す。または、XおよびXは、相互に結合して、置換基を有してもよい飽和または不飽和5〜6員環を形成してもよい。Yは、炭素数6〜14のアルキレン基を示す。Zは、メチル基、ビニル基または下記一般式(2)で示される置換基を示す。)
一般式(2):
【化2】

(式中、XおよびXは、上記一般式(1)のXおよびXと同意義を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、XおよびXが、相互に結合して、飽和5〜6員環を形成することを特徴とする、請求項1に記載の防蟻剤。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Zが、ビニル基、または、上記一般式(2)で示され、XおよびXが、相互に結合して、飽和5〜6員環を形成する置換基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の防蟻剤。
【請求項4】
前記一般式(1)において、Yが、炭素数8〜10のアルキレン基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防蟻剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の防蟻剤を用いることを特徴とする、防蟻方法。

【公開番号】特開2012−111715(P2012−111715A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262159(P2010−262159)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(503140056)日本エンバイロケミカルズ株式会社 (95)
【Fターム(参考)】