説明

防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法

【課題】 防蟻薬剤のシラフルオフェンの添加量が僅少であるにも拘わらず、ポリスチレンビーズの一次発泡および二次発泡の熱履歴の際におけるシラフルオフェンの離脱が極めて僅かであって、シロアリによる建造物の食害を効果的に防止できる防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法を提供すること。
【解決手段】 揮発性発泡剤を含浸させたポリスチレンビーズに、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を付着させつゝ万遍に攪拌混合せしめることによって当該ポリスチレンビーズ全体にシラフルオフェンを浸透させて均一に含浸せしめる一方、この防蟻薬剤を含浸せしめたポリスチレンビーズを加熱することにより一次発泡させ、
次いで、この一次発泡したポリスチレンビーズを所要形状の型枠内に充填して加熱して二次発泡させることにより、当該ポリスチレンビーズおよび気泡内に前記防蟻薬剤を担持せしめて、板状またはブロック状に成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法の改良、更に詳しくは、防蟻薬剤のシラフルオフェンの添加量が僅少であるにも拘わらず、ポリスチレンビーズの一次発泡および二次発泡の熱履歴の際におけるシラフルオフェンの離脱が極めて僅かであって、シロアリによる建造物の食害を効果的に防止できる防蟻性発泡ポリスチレン断熱材を安価にかつ効率的に製造することができる新規な方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、嘗て、発泡剤を含むポリスチレン系樹脂組成物に、シラフルオフェンとイミダクロプリドと、更に難燃剤としてヘキサブロモシクロドデカンとを一定割合で溶融混練して押出発泡成形する防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体を提案し、好評を博している(特許文献1参照)。
【0003】
そして、本発明者が先に提案した「防蟻性ポリスチレン系樹脂発泡体」は、押出機(extruder)のバレルの内部において密封状態で発泡させながら、ダイより押出し、押出後には速やかに冷却されることになるので、たとえ、混練・成形の際に200〜220℃の成形温度を履歴しても、シラフルオフェンおよびイミダクロプリドが離脱したり、熱分解によって防蟻薬効が低下する度合いが無視できるほどに少なくて、十分に防蟻性発泡ポリスチレン成形品として実用に供することが可能であった。
【0004】
ところが、密閉されない金型においてビーズ発泡させるビーズ発泡成形法を利用して防蟻性の発泡ポリスチレン成形品(断熱材)を製造する場合には、一次発泡および二次発泡の際に履歴する温度こそ低い(約125℃)けれども、その加熱時の蒸気や成形時における発泡剤の膨張作用の影響によって、防蟻成分であるシラフルオフェンやイミダクロプリドが表面から離脱し易く、使用上要求される防蟻性能を発揮する発泡ポリスチレン断熱材を得るためには離脱量を見越して多量のシラフルオフェン、イミダクロプリド使用しなければならず、その分、製造コストは高くならざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−88185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のビーズ発泡成形法によってシラフルオフェンおよびイミダクロプリドを防蟻剤として併用して防蟻性発泡ポリスチレン断熱材を製造する場合、前述のごとき難点が避けられなかったことに鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、防蟻薬剤として使用する防蟻薬剤をシラフルオフェンのみに限定すると共に、その使用するシラフルオフェンの量も可能な限り少量に制限し、しかもポリスチレンビーズの一次発泡および二次発泡の際の加熱や発泡時の膨張剤による膨張作用を履歴してもシラフルオフェンの離脱が非常に少なく、かつ、シロアリの食害を効果的に防止できる防蟻性発泡ポリスチレン断熱材を安価かつ効率的に製造することができる方法を提供することにある。
【0007】
本発明者が上記課題を解決する至った発端について説明すると、次のとおりである。周知のとおり、シラフルオフェンは液状であると共に有機溶剤に易容であるため液剤という形態で提供されている一方、イミダクロプリドは無色ないし淡黄色の結晶(固体)で僅容であって、粉剤の形態で提供されている。
【0008】
そこで、本発明者は、試みに液状のシラフルオフェンを一次発泡の前後または二次発泡前の各タイミングにおいてポリスチレンビーズ(揮発性発泡剤を含有)の表面から内部に浸透させつゝ万遍に混合し当該ビーズ全体に均一に含浸させてから、一次発泡または二次発泡させてブロック形態の発泡ポリスチレンに成形してみたところ、投入したシラフルオフェンは殆ど離脱せずに発泡ポリスチレンに安定に保持されて予想外の優れた防蟻薬効を呈する事実を見い出した。
【0009】
他方、粉剤形態のイミダクロプリドについても、発泡剤を含むポリスチレンビーズに混合して一次発泡および二次発泡させて発泡ポリスチレンに成形して実験してみたのであるが、イミダクロプリドは一次発泡、二次発泡の際の加熱により粘状化すると共に発泡剤の膨張作用とによりポリスチレンビーズから離脱し、防蟻薬効が極端に低下することが判明した。
【0010】
このような知見に基づいて、本発明者は、予め揮発性発泡剤を含有加工したポリスチレンビーズの表面から液状のシラフルオフェンを付着させながら万遍に混合してシラフルオフェンを内部へと浸透含浸せしめ当該ビーズ全体を一次発泡、二次発泡させて成形したところ、家屋等の断熱施工に適した防蟻薬効を備えた防蟻性発泡ポリスチレン断熱材を量産できるであろうとの確信を得、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を説明すれば次のとおりである。
【0012】
即ち、本発明は、揮発性発泡剤を含浸させたポリスチレンビーズに、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を付着させつゝ万遍に攪拌混合せしめることによって当該ポリスチレンビーズ全体にシラフルオフェンを浸透させて均一に含浸せしめる一方、
この防蟻薬剤を含浸せしめたポリスチレンビーズを加熱することにより一次発泡させ、
次いで、この一次発泡したポリスチレンビーズを所要形状の型枠内に充填して加熱して二次発泡させることにより、当該ポリスチレンビーズおよび気泡内に前記防蟻薬剤を担持せしめて、板状またはブロック状に成形するという技術的手段を採用したことによって、防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法を完成させた。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決するために、揮発性発泡剤をポリスチレンビーズに含浸させる一方、
シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を付着させつゝ万遍に攪拌混合せしめることによって当該ポリスチレンビーズ全体にシラフルオフェンを浸透させて均一に含浸せしめながらこのポリスチレンビーズを加熱することにより一次発泡させ、
次いで、この一次発泡したポリスチレンビーズを所要形状の型枠内に充填して加熱して二次発泡させることにより、当該ポリスチレンビーズおよび気泡内に前記防蟻薬剤を担持せしめて、板状またはブロック状に成形するという技術的手段を採用することによっても、防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法を完成させた。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、揮発性発泡剤を含浸させたポリスチレンビーズを加熱することにより一次発泡させる一方、
この一次発泡したポリスチレンビーズにシラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を付着させつゝ万遍に攪拌混合せしめることによって当該ポリスチレンビーズ全体にシラフルオフェンを浸透させて均一に含浸せしめ、
次いで、この防蟻薬剤を含浸せしめたポリスチレンビーズを所要形状の型枠内に充填して加熱して二次発泡させることにより、当該ポリスチレンビーズおよび気泡内に前記防蟻薬剤を担持せしめて、板状またはブロック状に成形するという技術的手段を採用することによっても、防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法を完成させた。
【0015】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ポリスチレンビーズに対し、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を噴霧することによって、前記ポリエチレンビーズから防蟻薬剤を含浸せしめるという技術的手段を採用した。
【0016】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、一次発泡させたポリスチレンビーズを熟成サイロに移し、
発泡剤が充満した状態で内圧が高く水蒸気の中で濡れて軟化状態の一次発泡ビーズを、徐々に常圧に戻すことによって、熟成サイロの中で空気と十分に接触させビーズ内に空気を浸透せしめ、ビーズの気泡内圧を大気圧にまで高めるという技術的手段を採用した。
【0017】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、揮発性発泡剤を含浸させたポリスチレンビーズに対し、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤をシラフルオフェンとして0.02〜0.3重量%(好ましくは0.05〜0.2重量%)の割合で含浸させるという技術的手段を採用した。
【0018】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ポリスチレンビーズを30〜70倍に二次発泡させて、板状またはブロック状に成形するという技術的手段を採用した。
【0019】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、水蒸気加熱によってポリスチレンビーズを一次発泡させるという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0020】
本発明方法によれば、発泡剤を含浸したポリスチレンビーズから液状で含浸性の良いシラフルオフェンを防蟻薬剤として万遍に含浸せしめ当該ビーズ全体をシラフルオフェンが偏在しないようにして、防蟻薬剤の含浸したポリスチレンビーズを加熱することにより一次発泡させ、次いで、一次発泡を経た前記ポリスチレンビーズを型枠内に充填して加熱し二次発泡させて防蟻性発泡ポリスチレン断熱材に成形するという工程を経て製造することができるので、シラフルオフェンは気泡内部に閉じ込められた状態となるので離脱量は極めて僅少であって、安価かつ効率的に防蟻性発泡ポリスチレン断熱材を製造可能である。
【0021】
また、本発明方法にて製造した防蟻性発泡ポリスチレン断熱材は、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を使用し、このシラフルオフェンを、出発材料の段階で発泡剤を含浸させてあるポリスチレンビーズから浸透させて万遍に混合して含浸せしめ当該ビーズ全体に均一に保持させたうえで、一次発泡、二次発泡を履歴させて製造されることになるので、結晶(固体)の防蟻剤とは違い含浸性および定着性に極めて優れ、当該断熱材におけるシラフルオフェンの分布は全体にわたって一様であり、断熱材の何処においても要求される防蟻薬効を呈し、安心して家屋などの防蟻対策に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法のプロセスを概略的に表したブロック図である。
【図2】本発明に係る防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の構造を表した拡大断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法のプロセスを概略的に表したブロック図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法のプロセスを概略的に表したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を適用して防蟻性発泡ポリスチレン断熱材を製造する方法を、図1から図4に基づいて説明する。
【0024】
『第1実施形態』
まず、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、図1のビーズ・防蟻薬剤含浸槽Aに、発泡剤(例えば、n−ペンタン)を含浸したポリスチレンビーズを投入し、本実施形態では、本プロセスにおいて、このポリスチレンビーズを攪拌しながらシラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を散布してポリスチレンビーズ全体に万遍に防蟻剤であるシラフルオフェンを浸透させて内部にまで含浸せしめる(以下、第1プロセスと略称)。
【0025】
次いで、シラフルオフェン液剤を含浸させたポリスチレンビーズを一次発泡機Bに投入し、(本実施形態では水蒸気で)加熱して発泡させる。このとき、均一に発泡させるために適宜スクリーンを介してビーズの粒径を略一様に整えるのが好ましい(以下、第2プロセスと略称)。
【0026】
そして、一次発泡機Bにおいて一次発泡された一次発泡ビーズは、熟成サイロCに移されて熟成処理する。熟成サイロCに移された一次発泡ビーズは、はじめは発泡剤が充満した状態で内圧は高く水蒸気の中で濡れて軟化状態であるが、徐々に常圧に戻す。しかし、このまゝ冷却させてしまうと、次の工程の二次発泡の際に発泡力が減退するので、熟成サイロCの中では空気と十分に接触させてビーズ内に空気を浸透せしめて、ビーズの気泡内圧を大気圧にまで高める。本実施形態では、熟成サイロCでは、一次発泡ビーズを通常12〜24時間ねかせる(以下、第3プロセスと略称)。
【0027】
然る後、熟成サイロCの中で熟成された一次発泡ビーズを、任意形状(主に板状またはブロック状)の二次発泡型枠Dに投入し、再度、水蒸気などで加熱することにより当該ビーズを軟化させる。すると、個々のビーズは互いに融着されると共に型枠内で必要な形状に成形する(以下、第4プロセスと略称)。
【0028】
即ち、図1に示される発泡ポリスチレンの製造プロセス(第1〜第4)を通じて製造される発泡ポリスチレン断熱材は、図2に示すように、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤2がポリスチレンビーズ1に浸透した状態で万遍に含浸されているので、発泡ポリスチレンの表面および内部に形成されたオープンセル(連続気泡)構造の気泡11内にシラフルオフェンが閉じ込められた状態の断熱材となって、長期にわたり防蟻薬効を発揮する優れた防蟻断熱材としての機能を帯有することになる。
【0029】
『第2実施形態』
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、図3に示すように、第1プロセスにおいて揮発性発泡剤をポリスチレンビーズに含浸させる一方、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤2を付着させつゝ万遍に攪拌混合せしめることによって当該ポリスチレンビーズ全体にシラフルオフェンを浸透させて均一に含浸せしめながらこのポリスチレンビーズ1を加熱することにより一次発泡させて(第2プロセス)、ポリスチレンビーズ1および気泡内に防蟻薬剤2を担持せしめるものである。
【0030】
このタイミングにおける防蟻薬剤2の混合であっても、液状である防蟻薬剤2をポリスチレンビーズ1に確実に含浸させることができ、前記同様の第3および第4プロセスを経ることによって、優れた防蟻効果を有する断熱材を製造することができる。
【0031】
『第3実施形態』
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、図4に示すように、第1プロセスおよび第2プロセスにおいて揮発性発泡剤を含浸させたポリスチレンビーズを加熱することにより一次発泡させる一方、
一次発泡したポリスチレンビーズを所要形状の型枠内に充填して、加熱して二次発泡させる直前のタイミングで(第4プロセス前)、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤2を、万遍に攪拌混合せしめることによってポリスチレンビーズ全体にシラフルオフェンを浸透させて均一に含浸せしめることにより、ポリスチレンビーズ1および気泡内に防蟻薬剤2を担持せしめるものである。
【0032】
このタイミングにおける防蟻薬剤2の混合であっても、液状である防蟻薬剤2をポリスチレンビーズ1に確実に含浸させることができ、前記同様の第4プロセスを経ることによって、優れた防蟻効果を有する断熱材を製造することができる。
【実施例】
【0033】
本発明者が、上記実施形態の各製造プロセスを施す方法によって、本発明の防蟻性発泡ポリスチレン断熱材(実施例1、実施例2)と;
シラフルオフェンをポリスチレンビーズに対し、0.02重量%未満の割合で添加して製造した発泡ポリスチレン断熱材(比較例1)と;
シラフルオフェンを全く含まない発泡ポリスチレン断熱材(比較例2)とをそれぞれ試作して、これらの防蟻性能と各々の効力持続性を比較したところ、次のとおりであった。
【0034】
(1)実施例1
発泡剤(n−ペンタン)を含むポリスチレンビーズ((株)カネカ:カネパールVF−L)5kgとシラフルオフェンを15重量%含有する防蟻薬剤(大日本除虫菊(株):金鳥シロネン乳剤)50gとを、図1に示すポリスチレン発泡設備のビーズ・防蟻薬剤含浸槽Aにおいて、第1プロセスを施し、次いで、第2プロセス、第3プロセス、第4プロセスを施し、発泡倍率が30倍と50倍と70倍の板状の発泡ポリスチレン断熱材(厚さ:5cm、幅:20cm、長さ:50cm)を5個成形した。
【0035】
(2)実施例2
発泡剤(n−ペンタン)を含むポリスチレンビーズ((株)カネカ:カネパールVF−L)5kgとシラフルオフェンを15重量%含有する防蟻薬剤(大日本除虫菊(株):金鳥シロネン乳剤)25gとを、図1に示すポリスチレン発泡設備のビーズ・防蟻薬剤含浸槽Aにより第1プロセスを施し、次いで、第2プロセス、第3プロセス、第4プロセスを施し、発泡倍率が30倍と50倍と70倍の板状の発泡ポリスチレン断熱材(厚さ:10cm、幅:20cm、長さ:50cm)を5個成形した。
【0036】
(3)比較例1
発泡剤(n−ペンタン)を含むポリスチレンビーズ((株)カネカ:カネパールVF−L)5kgとシラフルオフェンを15重量%含有する防蟻薬剤(大日本除虫菊(株):金鳥シロネン乳剤)5gとを、図1に示すポリスチレン発泡設備のビーズ・防蟻薬剤含浸槽Aにより第1プロセスを施し、次いで、第2プロセス、第3プロセス、第4プロセスを施し、発泡倍率が30倍と50倍と70倍の板状の発泡ポリスチレン断熱材(厚さ:10cm、幅:20cm、長さ:50cm)を5個成形した。
【0037】
(4)比較例2
発泡剤(n−ペンタン)を含むポリスチレンビーズ((株)カネカ:カネパールVF−L)5kgを、図1に示すポリスチレン発泡設備のビーズ・防蟻薬剤含浸槽Aに投入して、第1プロセスを施し、次いで、第2プロセス、第3プロセス、第4プロセスを施して、発泡倍率が30倍と50倍と70倍の板状の発泡ポリスチレン断熱材(厚さ:10cm、幅:20cm、長さ:50cm)を5個成形した。
【0038】
まず、上記「実施例1」、「実施例2」、および「比較例1」、「比較例2」で得た試料(30×30×20cm)を、直方体形に切り抜いて、シャーレーの中に置き、各シャーレーにイエシロアリの職蟻を 300頭と兵蟻30頭を入れ、21日間にわたり観察したところ、次のような結果が得られた。
【0039】
【表1】

【0040】
次に、「実施例1」、「実施例2」、および「比較例1」の直方体形の試料(20×30×30cm)を、加温器の中に30日間入れて60℃の温度で加温してシラフルオフェンの揮散促進試験(常温下における30年経過に相当する)をして、これら各試料を用いて上記防蟻試験をしたところ、次のような結果になった。
【0041】
【表2】

【0042】
本発明者は、以上の〔表1〕および〔表2〕の防蟻試験の結果からみて、本発明に係る「実施例1」と「実施例2」の発泡ポリスチレン断熱材の防蟻性能は木造家屋を30年にわたってシロアリの食害から防護することが可能であると判断した。なお、「実施例1」に係る試料の発泡倍率(30倍、50倍、70倍)による差異も、殆どないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上、実施例を挙げて説明したとおり、本発明の方法によって提供される防蟻性発泡ポリスチレン断熱材は、木材を使用して構築した家屋など建造物を効果的に断熱施工することが可能であるだけに止まらず、当該建造物を長期にわたりシロアリによる食害から防護することが可能であって、しかも防蟻性能に有効成分として使用するシラフルオフェンも僅少であるので、安価かつ効率的に製造することができる。
【符号の説明】
【0044】
A ビーズ・防蟻薬剤含浸槽
B 一次発泡機
C 熟成サイロ
D 二次発泡型枠
1 ポリスチレンビーズ
11 気泡
2 防蟻薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性発泡剤を含浸させたポリスチレンビーズに、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を付着させつゝ万遍に攪拌混合せしめることによって当該ポリスチレンビーズ全体にシラフルオフェンを浸透させて均一に含浸せしめる一方、
この防蟻薬剤を含浸せしめたポリスチレンビーズを加熱することにより一次発泡させ、
次いで、この一次発泡したポリスチレンビーズを所要形状の型枠内に充填して加熱して二次発泡させることにより、当該ポリスチレンビーズおよび気泡内に前記防蟻薬剤を担持せしめて、板状またはブロック状に成形することを特徴とする防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法。
【請求項2】
揮発性発泡剤をポリスチレンビーズに含浸させる一方、
シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を付着させつゝ万遍に攪拌混合せしめることによって当該ポリスチレンビーズ全体にシラフルオフェンを浸透させて均一に含浸せしめながらこのポリスチレンビーズを加熱することにより一次発泡させ、
次いで、この一次発泡したポリスチレンビーズを所要形状の型枠内に充填して加熱して二次発泡させることにより、当該ポリスチレンビーズおよび気泡内に前記防蟻薬剤を担持せしめて、板状またはブロック状に成形することを特徴とする防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法。
【請求項3】
揮発性発泡剤を含浸させたポリスチレンビーズを加熱することにより一次発泡させる一方、
この一次発泡したポリスチレンビーズにシラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を付着させつゝ万遍に攪拌混合せしめることによって当該ポリスチレンビーズ全体にシラフルオフェンを浸透させて均一に含浸せしめ、
次いで、この防蟻薬剤を含浸せしめたポリスチレンビーズを所要形状の型枠内に充填して加熱して二次発泡させることにより、当該ポリスチレンビーズおよび気泡内に前記防蟻薬剤を担持せしめて、板状またはブロック状に成形することを特徴とする防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法。
【請求項4】
ポリスチレンビーズに対し、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤を噴霧することによって、前記ポリエチレンビーズから防蟻薬剤を含浸せしめることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法。
【請求項5】
一次発泡させたポリスチレンビーズを熟成サイロに移し、
発泡剤が充満した状態で内圧が高く水蒸気の中で濡れて軟化状態の一次発泡ビーズを、徐々に常圧に戻すことによって、熟成サイロの中で空気と十分に接触させビーズ内に空気を浸透せしめ、ビーズの気泡内圧を大気圧にまで高めることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法。
【請求項6】
揮発性発泡剤を含浸させたポリスチレンビーズに対し、シラフルオフェンを有効成分として含有する液状の防蟻薬剤をシラフルオフェンとして0.02〜0.3重量%の割合で含浸させることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法。
【請求項7】
ポリスチレンビーズを30〜70倍に二次発泡させて、板状またはブロック状に成形することを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法。
【請求項8】
水蒸気加熱によってポリスチレンビーズを一次発泡させることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の防蟻性発泡ポリスチレン断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−184298(P2012−184298A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47174(P2011−47174)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000196750)
【出願人】(000154727)株式会社片山化学工業研究所 (82)
【Fターム(参考)】