説明

防護用衣料

防護用衣料10は、空気中に浮遊する微粒子をろ過し除去するように構成されたマスク部分12とボデイ部分14を組み合わせている。防護用衣料10は、外向きには、普通のシャツ、セーター、又はジャケットの外観を有するが、装着者が常に利用可能であり瞬間的警告により即使用可能状態にある、便宜的で、使い易く、扱い容易なマスクを組み合わせている。マスク部分12は、使用しないときには、折り畳まれた状態の襟21として着用され、防護用衣料10の一部として使用されるときには、折り畳まれた状態から引き上げられて装着者の鼻と口そして実質的に装着者の首の部分の全体を覆うように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、概略、防護用衣料の分野に関し、より詳細には、ほこり、煙、有毒ガス、並びに、車及びトラックの排気、塗料微粒子、伝染性生物因子のような空気中に浮遊する他のいずれかの形態の汚染物質から人体を保護するための衣料の中に含まれ且つその一部をなす折り畳み可能なマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、空気中に浮遊する微粒子の形での汚染に長期にわたってさらされる有害な影響に対する公共の安全に関してかなりの懸念が存在している。空気中に浮遊する汚染であって標準的な個々人が遭遇する最も一般的な形態は、自動車の排気、近隣の工業施設からの煙又は火災から生ずる煙、並びに、自動車及びトラックの通過、建設用機械の作動によって、及び、まれではないが、大衆的な四輪駆動車両等のオフロード走行及びマウンテンバイキングのようなほこりをまきあげる娯楽的活動の続行から空気中に混入されたチリ及びほこりである。
【0003】
遭遇することは、まれではあるが、テロリスト又は他の犯罪分子による生物的攻撃からの防御に関する関心も公衆の間に起こっている。予想される生物的攻撃は、主に、空気中に浮遊する化学物質又は生物学的因子の形態であると考えられる。公衆の関心が集中している他の分野は、SARS又は潜在的なインフルエンザ感染爆発のような空気伝染性疾患によってもたらされる脅威である。
【0004】
上述の関心に対処するべく設計された各種形式の安全マスクは、当業界において古くから知られている。例えば、塗装作業中に生ずる空気中に浮遊する有毒塗料微粒子から塗装工を保護すべく一般的な塗装工用のマスクが古くから使用されている。同様に、庭師及び野外作業者のような戸外作業者を空気中に浮遊するチリ及びほこりから保護するため庭師用マスクが古くから存在している。同様に、空気伝染性細菌及びウイルスへの接触から防護するべく、医師及びその医療スタッフによって外科医用マスクが古くから使用されている。
【0005】
上述のものに加え、他のより複雑なマスク装置が開発されている。そのような1例は、2003年8月26日付けにてホランダー等に発行された「SMOKE ESCAPE MASK」との名称の米国特許第6609516号(特許文献1)である。このホランダーの装置は、使用者の鼻と口を覆う寸法の呼吸用フィルターを含み、また、透明な目シールド部分を含み、この目シールド部分は、装置の周辺縁部に配置された使用者の顔にマスクを固定するための感圧粘着部と同様に、呼吸用フィルターに取り付けられる。このホランダーの装置は、1回限りの使用のため密封パッケージ内に入れられており、火災から生ずる煙の吸入の危険性が高いエリアに備えることを意図している。
【0006】
一方、このホランダーの装置は、緊急の場合に、煙吸入の可能性を低減するのには有効であるが、上述した比較的シンプルなマスクと同様に、重大な欠点からの問題を抱えている。すなわち、このマスクは、公衆によって、特に公共の場所で、普通に装着され又は携行されていない。このマスクの公衆による使用が無いのは、部分的には、多くの人が人前でこのようなマスクを装着することが世間的に又はファッション的に受け入れられないと思っているとの事実に帰することができよう。さらに、公共の場所に出かける場合には、このようなマスクは、そのためのこん包が必要な特別な身の回り品となる。そのようなマスクのこん包及び/又は購入は、かなり多くの人が意識しておらず、そのため、このようなマスクの必要時の際の即座な利用は行なわれていない。すなわち、当技術には、改良の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6609516号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、必要なのは、シャツのような日常的に身に着けている衣料に組み込むことが可能なマスクである。このマスクは、使用しない時には邪魔にならない状態にとどまり、反対に、空気中に浮遊する微粒子から自己を防護すべき必要(例えば、火災又は生物学的因子による脅威の場合)又は願望(例えば、刺激性のほこり又は自動車の排気からの防護)の生じた時には容易に引き出しが可能に構成される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の防護用衣料は、便宜的であって、使い易く、且つ取り扱い容易な一体的な顔マスクと首マスクを提供することによって従来技術の欠点を克服する。このマスクは、一般的に良く着られているTシャツのようなシャツに組み込むことが可能である。マスクをTシャツのような衣料に組み込むことにより、マスクは常に利用可能で且つ即座に使用できるので、従来技術の多くの不都合な点が克服される。このマスクは、使用されない時には、シャツの襟部分又は首部分の中に邪魔にならないように格納されるように設計される。このマスクは、「イアーループ」として知られたこの発明の特徴構造をつかむことによって容易に引き出す(deployed)ことができる。このイアーループは、マスクが容易に引き出されることを可能とし、さらに、装着者の耳に掛けることによってマスクを適所に固定することを可能とする。このマスクは、シャツの布地に組み込まれたフィルター要素を含む。このフィルター要素は、引き出されたときに装着者の口と鼻を覆う。以下の段落においてより詳細に説明するように、フィルター要素は、空気中に浮遊する微粒子又はガスをろ過するものとして当業界において知られた各種の材料から製作することができる。このマスクは、さらに、装着者の首の部分を完全に被覆する、すなわち、このマスクは、首の全体を覆う。
【0010】
この発明のこれらの側面及び他の側面は、添付図面及び以下の発明の詳細な説明の検討から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】装着者上の引き出し位置にあるこの発明の防護マスク及びシャツの1実施例を示す前向き左側透視図である。
【図2】図1の実施例の後ろ向き左側透視図である。
【図3】装着者上の格納位置にあるこの発明の防護マスク及びシャツの1実施例を示す前向き左側透視図である。
【図4】装着者上の引き出し位置にあるこの発明の防護マスク及びシャツの1実施例を示す前向き透視図である。
【図5】図4の実施例の後ろ向き透視図である。
【図6】図4の実施例の左側透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明のいくつかの実施例が、概ね、図1−6に図解するように、防護用衣料を参照して詳細に説明される。この発明の追加的な実施例、特徴、及び/又は、利点は、後続の説明から明白となろう、又は、この発明を実施することによって理解可能である。添付図面中、図は、実寸ではなく、図面と詳細な説明の両者を通して同一の符合は同一の部位を参照する。
【0013】
ここで、図1−6、特に図4−6を参照するに、この発明に従うマスク部分12とボデイ部分14を含む防護用衣料10が概略的に図示されている。ボデイ部分14は、フロントパネル部16と該フロントパネル部に周辺縁部分20の周りで取り付けられたリアパネル部18を含み、マスク部分12が格納位置にある時には(図3)、首用の開口22と折り畳まれた状態の襟21が形成される(図3)。ボデイ部分14は、また、フロントパネル部とリアパネル部16、18の周辺縁の接合部に形成された下方の開口30と同様に、腕用の開口24と26を含む。
【0014】
添付図面のいくつかの構造を検討するに、フロントパネル部16とリアパネル部18が、ボデイ部分14を画定するように、又は、装着者の胴体上部32を覆うための同様の上方ボデイ衣料を画定するべく寸法取りされ且つ構成されていることは、容易に理解できる。図面に表されているように、ボデイ部分14は、典型的なTシャツの外観を有する。しかしながら、この発明の範囲は、Tシャツに限定されることを意図していない。当業者が理解されるであるように、ボデイ部分は、シャツ、又は、例えば、セーター、ジャケット、及びコートを含む他の上体用衣料のいずれかの形態のほとんどのものを含み得る。
【0015】
再度、図1−6を参照するに、特に、図4−6を参照するに、ボデイ部分14から上方へと延びているのは、この発明のマスク部分12である。このマスク部分は、装着者の顔と首に適合するように設計されたマスクボデイ34を含み、該マスクボデイ34は、衣料製造業界において知られているように標準的な顔及び首の寸法に適合するように切断され且つ合わされた多重パネル材又は単一パネル材で製作され得る。このマスクボデイに組み込まれるものが、フィルター要素36である。このフィルター要素は、マスクボデイ内へ縫い込むことも可能であり、また、接着剤又は衣料製造業界において知られている他の任意の方法で取り付けることも可能である。マスク部分12の別の特徴は、一対のイアーループ38である(図2及び4中に最適に見られる)。このイアーループは、マスクボデイ34と一体的に形成することも可能であり、又は、縫込みにより衣料に取り付けるか、若しくは別の方法で衣料に組み込むことが可能である。
【0016】
この発明のフィルター要素36は、1種類以上の空気中に浮遊する微粒子、ガス、又は生物的因子をろ過して除去するのに適した任意の素材となし得る。このフィルター用素材は、織物材又は不織材となし得る。このフィルター用素材は、綿又はウールのような天然繊維から製作することもでき、ポリエステル及びポリウレタンのような合成繊維及び/又は合成発泡材料から製作することもできる。このフィルター用素材は、機械的な機構により(例えば、織密度及び/又は素材の厚さを変えることにより、また、発泡材料の場合では、発泡密度を変えることにより)及び/又は化学的な機構により(例えば、素材及び/又は発泡材料の中に埋設された吸収性木炭微粒子を含有することにより、及び/又は素材及び/又は発泡材料を吸収性木炭で処理することにより)空気中に浮遊する微粒子及び/又はガスをろ過するように設計することができる。上述のように構成されたフィルターは、煙、チリ、及びほこりのような一般的な空気中に浮遊する汚染物質の多くのものをろ過し除去することが可能である。一般的に、空気中の細菌及び/又はウイルスを除去するには、1乃至2ミクロンほどの小ささの微粒子をろ過することが可能なフィルターが必要である。そのようなフィルターは当業界において知られており(ある種類の外科医用マスクがその一例である)、この発明での使用に適している。そのようなフィルターを備えているならば、この発明は軍事的利用にも適する。
【0017】
使用しない時には、防護用衣料10のマスク部分12は、巻かれて又は折り畳まれて格納位置に下げられ(図3)、該格納位置で、マスク部分12は、実質的に、折り畳まれた状態の襟21を形成する(図3)。あるいは、マスク部分12は、防護用衣料10のフロントパネル部16とバックパネル部18の裏に隠れるように畳み込むことも可能である。マスク部分の格納のための他の変形構成も可能である。防護用衣料10の装着者は、シャツ部分の下に手を伸ばしてイアーループ38によってマスク部分12をつかむことによってマスク部分12を容易に引き出すことができる(図2)。マスク部分12は、装着者の顔を覆うように引き上げられ、イアーループ38を装着者の耳に掛けることによって装着者の頭部に対して固定される。
【0018】
日常的な使用において、装着者が、この発明の衣料10のマスク部分12の引き出しを望むであろうと考えられる多くの可能な例の1つは、バス停でバス待ちをしている状況である。バス停でバス待ちをしている際には、装着者は、通過車両が、車両の排気より生ずる汚染物質に加え、かなりの量のチリとほこりを空気中に「まき上げる」であろう数分間の待ち時間を経験する。そのような状況においては、装着者は、イアーループ38によってマスク部分を格納位置から引き上げてマスク部分を引き出すことによってそのような汚染物質から自身を保護する選択が容易に可能である。その後、バスが到着し、装着者がバスに乗車したならば、マスク部分は、容易に格納位置に戻すことができ、いつでも再度の引き出しに即応し得る。
【0019】
上述の詳細な説明及び添付図面は、この発明の現時点における好実施例の説明を企図したものであり、この発明が構成され及び/又は利用される唯一の形態を表現することを企図したものではない。当業者は、上述の明細書及び図面の範囲及び精神を逸脱することなく、この発明の防護用顔マスクの改良及び代替的実施例が可能であり且つ実用的であることを理解されるであろう。請求項は、そのような改良及び代替的実施例の全てを包含することを企図している。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明の防護用衣料は、それが空気中に浮遊する微粒子、ガス、及び/又は他の汚染物質をろ過し除去するように構成されたマスク部分とボデイ部分を組み込んでいる点で広範囲の産業上利用性を有している。
【符号の説明】
【0021】
10 防護用衣料
12 マスク部分
14 ボデイ部分
16 フロントパネル部
18 リアパネル部
20 周辺縁部分
21 折り畳まれた状態の襟
22 首用の開口
24 腕用の開口
26 腕用の開口
30 下方の開口
32 胴体上部
34 マスクボデイ
36 フィルター要素
38 イアーループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデイ部分と、
前記ボデイ部分から延びるマスク部分であって、該マスク部分が折り畳まれた状態の襟を形成する格納位置から引き出された時には装着者の顔と首に適合するように構成され、前記折り畳まれた状態の襟は実質的に丸い首用の開口を形成する該マスク部分と、
前記マスク部分に組み込まれた少なくとも1つのフィルター要素であって、前記マスク部分が引き出された時に装着者の口と鼻を覆うように構成された該フイルター要素とより成り、
前記引き出されたマスク部分は、前記首用の開口から離れた少なくとも1つの箇所で装着者の頭部の位置に固定されるように構成されることを特徴とする防護用衣料。
【請求項2】
前記引き出されたマスク部分は、少なくとも1つのイアーループを含むことを特徴とする請求項1に記載の防護用衣料。
【請求項3】
前記ボデイ部分は、シャツ、セーター、ジャケット、及びコートより成る衣服類から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の防護用衣料。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフィルター要素は、空気中に浮遊する微粒子、ガス、又は生物学的因子の1種類以上をろ過して除去するのに適した素材で製作されることを特徴とする請求項1に記載の防護用衣料。
【請求項5】
前記フイルター用の素材は、織物材又は不織材から製作されることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項6】
前記フィルター用の素材は、天然繊維で製作されることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項7】
前記フィルター用の素材は、合成繊維で製作されることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項8】
前記フィルター用の素材は、天然繊維と合成繊維で製作されることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項9】
前記フィルター用の素材は、空気中に浮遊する微粒子を機械的にろ過するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項10】
前記フィルター用の素材は、ガスを機械的にろ過するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項11】
前記フィルター用の素材は、空気中に浮遊する微粒子を化学的にろ過するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項12】
前記フィルター用の素材は、ガスを化学的にろ過するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項13】
前記フィルター用の素材は、空気中に浮遊する細菌の少なくとも1種類をろ過して除去するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項14】
前記フィルター用の素材は、空気中に浮遊するウイルスの少なくとも1種類をろ過して除去するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項15】
前記フィルター用の素材は、煙をろ過して除去するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項16】
前記フィルター用の素材は、空気中に浮遊するチリの微粒子をろ過して除去するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項17】
前記フィルター用の素材は、空気中に浮遊するほこりの微粒子をろ過して除去するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の防護用衣料。
【請求項18】
前記首用の開口から離れた少なくとも1つの一体のイアーループをつかんで引くことによって前記マスク部分を前記格納位置から引き出すことを特徴とする請求項2に記載の防護用衣料。
【請求項19】
前記ボデイ部分が、各周辺縁に沿って接合されたフロントパネル部とリアパネル部を含むことを特徴とする請求項1に記載の防護用衣料。
【請求項20】
前記ボデイ部分が、さらに、腕用の開口を含むことを特徴とする請求項19に記載の防護用衣料。
【請求項21】
前記ボデイ部分が、さらに、前記各周辺縁の接合部に形成された下方の開口を含むことを特徴とする請求項19に記載の防護用衣料。
【請求項22】
前記フロントパネル部とリアパネル部が、使用者の胴体上部を覆うように構成されることを特徴とする請求項19に記載の防護用衣料。
【請求項23】
前記少なくとも1つのフィルター要素が、前記マスク部分内に縫い込まれることを特徴とする請求項1に記載の防護用衣料。
【請求項24】
前記少なくとも1つのフィルター要素が、接着剤で前記マスク部分に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の防護用衣料。
【請求項25】
前記少なくとも1つのイアーループが、前記マスク部分の一体的な部分として形成されることを特徴とする請求項2に記載の防護用衣料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−510831(P2010−510831A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538377(P2009−538377)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/045495
【国際公開番号】WO2008/066510
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(509147536)
【Fターム(参考)】