説明

防護盾

【課題】 警棒を回転自在なホルダーに着脱自在に装着することで、警棒の向きを自由に変えることができるとともに、警棒を補助的な把持部としても利用することができるようにした。
【解決手段】 盾本体の内面側に盾本体を取り扱う把持部と、警棒を着脱する回転自在なホルダーとを設けたことを特徴とする。前記ホルダーは、警棒を着脱できる構造であればよく、例えば、警棒を挟持するように略U字状に形成することができる。このように、略U字状ホルダーとした場合には、警棒を容易に着脱することができる。また、前記ホルダーは、伸縮可能な警棒を装着したとき警棒を引き抜くだけで伸長させることができるように、護身部を保持する護身部保持部と先端のトップボールを保持するトップボール保持部により形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、犯罪者、暴漢者等からの生命、身体に対する急迫した攻撃から身体を保護するための防護盾に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防護盾は、主に、機動隊、警察等によるデモなどの鎮圧、要人の警護等に使用されており、防護盾には、地面に立てて使うものや、手で持って使うものがある。手で持って使うものにも、両手で持つものと片手で持つものとがある。両手で持つ盾には、把持部が二箇所に設けられており、片手で持つ盾は、ほぼ中央に1つの把持部が設けられている。片手で持つ盾は、防護ばかりではなく必要に応じて反撃もするような状況下において使用される。
【0003】
両手で使う盾の把持部の配置は様々であって、2つの把持部を両側端部に設けたものや、1つの把持部を中央部に設け、もう1つの把持部を側端部に設けたものなどがある。例えば、2つの把持部を両側端部に設けたものに、特開2003−65698号公報記載の防護盾があり、1つの把持部を中央部に設け、もう1つの把持部を側端縁部に設けたものに、特開2005−283055号公報記載の防護盾がある。また、特開2007−100991号公報には、片手で持つ盾の内側に防御や攻撃の際に使用できるゴム棒を面ファスナーによって着脱自在に配設した防護盾が提案されている。
【特許文献1】特開2003−65698号公報
【特許文献2】特開2005−283055号公報
【特許文献3】特開2007−100991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
片手で持つ盾の場合には、もう一方の手に棒などの武器を持つことによって防護ばかりでなく、必要に応じて反撃することもできる。しかしながら、攻撃に対して防護するときは、盾を片手で持っているので自由に操作することが困難で、迅速な対応ができないという問題がある。
【0005】
一方、両手で持つ盾の場合は、比較的大型の盾が対象となるから、形状が大きくなるばかりでなく重くなり、大型の盾は片手で迅速に操作することは困難である。そこで、中央部の主把持部の他に右手で持つ補助の把持部が設けられている。しかしながら、片手に警棒を持つような場合には、重い盾を片手で支えることになり臨機応変に扱うことができない。
【0006】
また、両手で操作する場合にも、把持部の位置や方向は固定されているから、盾を斜め方向にしたり前に倒したりと向きを変えるときは、両手も盾と同じ方向に動かさなければならないし、大きく変えるときには身体全体を動かさなければならない。このように、迅速に操作することができない。さらに、両手で盾を使用するときは、警棒を腰のホルダーに収めるか、別の場所に置かなければならず、必要に応じて警棒を使用することができないという問題がある。
【0007】
さらに、上記特開2007−100991号公報に記載の防護盾においては、防護者は、盾本体部から取り外したゴム棒を振り回すことによって外敵からの攻撃を防御したり、攻撃することができる。また、ゴム棒はゴム材を用いて形成されているのでそのしなりを利用して攻撃力を増強させることができる。
【0008】
しかしながら、ゴム棒は、面ファスナーによって固定されているから、盾本体部に取り付けられた状態では、ゴム棒の向きを自由に変えることはできない。また、ゴム棒はしなりを利用して攻撃力を増強させるように形成されているから、柔らかすぎて盾本体部に取り付けた状態で把持部として安定した状態で利用することはできない。
【0009】
そこで、この発明は、かかる問題を解消するためになされたものであり、盾本体に把持部として利用しながら、その向きを自在に変えることができ、しかも瞬時に取り外して攻撃できるように、警棒を着脱自在に取り付けることができる防護盾を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上記目的を達成するために次のような構成とした。この発明に係る防護盾は、盾本体の内面側に盾本体を取り扱う把持部と、警棒を着脱する回転自在なホルダーとを設けたことを特徴とする。前記ホルダーは、警棒を挟持するように略U字状に形成することができる。このように、略U字状ホルダーとした場合には、警棒を容易に着脱することができる。また、前記ホルダーは、伸縮可能な警棒を装着したとき警棒を引き抜くだけで伸長させることができるように、護身部を保持する護身部保持部と先端のトップボールを保持するトップボール保持部により形成してもよい。そして、前記ホルダーは、警棒を着脱可能な構造であればよく、ゴム又は合成樹脂で形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明の防護盾は、内面側に警棒を着脱する回転自在なホルダーを設けたから、装着した警棒の角度を警棒のグリップ部を持って自由に変えることができる。従って、盾本体を自在な角度で使用することができ、状況に応じて臨機応変に対応することができる。また、ホルダーに装着した警棒を左右どちらの手でも扱うことができるから、盾本体の使用範囲が広がるとともに、左利き、右利きのどちらにも対応することができる。さらに、ホルダーに装着した警棒は、補助的な把持部として利用することができる。
【0012】
また、伸縮可能な警棒を着脱するホルダーにおいては、護身部を保持する護身部保持部とトップボールを保持するトップボール保持部とにより構成したから、護身部を引き抜いてもトップボールは保持されているから、引き抜くだけで警棒を伸長させることができ、瞬時に防御から攻撃に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明に係る防護盾のうち、第1実施形態の防護盾の裏面斜視図であって、防護盾1は、盾本体2の内面に把持部3と警棒を着脱自在に取り付ける回転自在なホルダー4とを備えており、周縁部はゴム状弾性体によって形成された縁枠5によって縁取られている。
【0014】
盾本体2は、外側面に向かって膨出する湾曲面2aに形成されており、その材質は特に限定されず、公知のように、アルミニウム材や合成樹脂材によって形成することができる。盾本体2の形状は、図示する実施形態では縦長の長方形状に形成したが、特に形状を限定するものではなく、横長の長方形状や、正方形、楕円形など任意の形状に形成することができる。
【0015】
盾本体2をアルミニウム材によって形成する場合には、表面に酸化皮膜層が形成され、厚さ約2mmmのものを使用することができる。また、盾本体2を合成樹脂材によって形成する場合には、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、あるいは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。なかでも、ポリカーボネートは、成形収縮率が低く、寸法安定性が良好であり、透明度及び耐衝撃性が高いために、より好ましい。また、盾本体2を合成樹脂材によって形成する場合には、2種以上の樹脂を積層した合成樹脂積層体とすることができる。
【0016】
把持部3は、横略U字状をなすように形成されており、図示する実施形態では、ボルトとナットによる固定具3aによって盾本体2の内面側に設けられている。把持部3は、使用者が手で握って盾本体2を操作するものであり、十分な強度を有する合成樹脂あるいは金属で形成することができる。把持部3の向きは、図示する実施形態では縦方向に設けられているが、横方向に設けてもよく、任意の方向とすることができる。
【0017】
次に、この発明の特徴であるホルダー4を図2に基づいて説明する。ホルダー4は、警棒を挟み込んで装着できるように、底部4aに立設した挟持板4b、4bによって略U字状に形成されている。前記挟持板4b、4bは、挟み込んだ警棒が抜け落ちないように形成されており、好ましくは、警棒を強い力で着脱するように形成する。
【0018】
挟持板4b、4bを形成する材質は、特に限定されない。例えば、ゴム、合成樹脂、金属等任意の材質のものを使用することができるが、挟持力を考慮すると弾性体であるゴム又は合成樹脂によって形成するのは好ましい。また、挟持板4b、4bの対向する内面には、先端部を外側に傾斜する傾斜面4c、4cとし、中央部に湾曲面4d、4dを形成することによって、警棒を挿入しやすくなり挿入した警棒を確実に挟持させることができる。
【0019】
ホルダー4は、盾本体2の面に対して水平に回動可能なように固定されている。ホルダー4は、図2に示すように、底部4aのボルト孔4eに盾本体2を貫通するボルト7をベアリング等の回転スペーサ8を介して挿通し、ワッシャ9とナット10によって固定してなる。ホルダー4は、ボルト7とナット10によって固定しても、回転スペーサ8を挟むことによって回転自在となり、向きを自在に変えることができる。なお、ホルダー4の固定方法は回動可能であればよく、必ずしも回転スペーサ8を用いることは必要ではない。例えば、ホルダー4が回動可能な程度にナットを締め付けることでもよい。
【0020】
上記ホルダー4は、回転自在であるから警棒を装着したときには、警棒のグリップ部を持って警棒をどのような角度にでも自由に変えることができる。従って、ホルダー4を盾本体のほぼ中央部に固定した場合には、警棒を盾本体2の左右どちら側にも向けられるから、警棒を持つ手が右利き、左利きのいずれの使用者であっても使用することができる。また、ホルダー4に装着した警棒の角度を自由に変えることができるということは、警棒に対しては盾本体の角度を自由に変えられることであるから、状況に応じて臨機応変な対応をとることができる。
【0021】
縁枠5は、省略することが可能である。例えば、盾本体2をアルミニウム材によって形成した場合には、縁枠5を省略しても周縁部を湾曲させてフランジ部を形成することによって十分な耐衝撃強度を備えることができる。盾本体2が合成樹脂材によって形成した場合には、盾本体2を手に持ったとき衝撃の反動を少なくし、強度を向上させるために縁枠5を固着することが好ましい。
【0022】
図3及び図4は、この発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態の防護盾は、盾本体の形状が異なるだけであるから、第1実施形態と同じ構成については同一の符号を付してその説明は簡略化のために省略すする。防護盾1Aは、盾本体2Aの内面に把持部3と警棒を着脱自在に取り付ける回転自在なホルダー4とを備え、内側面に向かって膨出する湾曲面2a′に形成されている。この実施形態では、盾本体2Aの内面が湾曲面2a′に形成されていることから、ホルダー4に狭着された警棒を水平に回動させるために支持杆11を設けてなる。
【0023】
前記支持杆11は、脚部11aと脚部11bと脚部11cにより略コ字状に形成されている。前記脚部11a、11bの長さは、盾本体2Aに前記脚部11aを外向きに、脚部11bを内向きになるように固着したとき、支持部11cが水平になるように形成されており、ホルダー4装着した警棒を前記支持部11c上を水平に回動することができる。また、支持部11cは、回動する警棒を支持するように、盾本体2Aの縁部に対して斜め方向に固着されている。
【0024】
支持杆11は、ホルダー4に装着した警棒を支持するだけではなく、補助的な把持部として利用することができるような形状としてもよい。図3及び図4に示す実施形態の支持杆11は、略コ字状に形成されているから、把持部としても利用することができる。また、支持杆11は、警棒を水平に回動して支持することができる構造であれば実施形態に限定されるものではなく、任意の形状とすることができるのはもちろんである。
【0025】
また、支持杆11は、第1実施形態の防護盾1に固着してもよい。防護盾1に固着する場合には、盾本体2は外側面に膨出した湾曲面2aに形成されているから、盾本体2Aに固着する場合とは反対に、脚部11aを内向きに固着し、脚部11bを外向きに固着すればよい。支持杆11を固着することによって、ホルダー4に装着した警棒のグリップ部を持ちながら支持部11c上を水平に回動させることができる。
【0026】
図5は、さらにこの発明の第3実施形態を示す内面斜視図である。この第3実施形態の防護盾は、ホルダー4の他に第2ホルダー4A,4Aを設けた点において第1実施形態と異なる。即ち、防護盾1Bは、防護盾1とは盾本体の形状が異なるだけであるから、第1実施形態と同じ構成については同一の符号を付してその説明は簡略化のために省略すする。
【0027】
防護盾1Bは、盾本体2の内面の下部に警棒を着脱自在に取り付ける第2ホルダー4A,4Aを設けてなる。前記第2ホルダー4A,4Aは、ホルダー4と同様に警棒を着脱自在に取り付けることができる形状であればよく、ホルダー4と異なり回転しない構成であってもよい。また、前記第2ホルダー4A,4Aのうち、一方を回転するホルダーとし、他方を回転しないホルダーとしてもよい。
【0028】
なお、第2ホルダー4Aは、盾本体2の任意の位置に設けることができ、ホルダー4と対向する位置に設けてもよい。さらに、ホルダー4及び第2ホルダー4Aは、警棒を保持できる構成であればよく、必ずしも警棒を挟持するように形成した略U字状ホルダーに限定されるものではない。例えば、図示するのを要略したが、警棒を挿通するようにリング状に形成したものであってもよい。前記リング状ホルダーをホルダー4に代えて設ける場合には、ホルダー4と同様に回転自在とする。
【0029】
次に、ホルダー4に装着する警棒として、警官やガードマン等が護身用、制圧用として用いる伸縮式の警棒を装着するのに好適なホルダーの他の実施形態について説明する。図6は、伸縮可能な警棒の一例を示す縮小した状態の斜視図である。伸縮可能な警棒20は、元筒21に中筒と先端筒が収納されており、先端筒にはトップボール22が装着されている。元筒21に取り付けた鍔23より先端部が護身部24となる。
【0030】
図7は、上記伸縮可能な警棒20を装着するホルダー14であって、前記護身部24を挟持する挟持部15と、前記挟持部15と底部において連結されており、トップボール22を嵌入する嵌入部16とによって形成されている。ホルダー14は、ホルダー4と同様に、盾本体2、2Aに対して水平に回転可能なように設けられている。また、前記挟持部15は、ホルダー4と同じ構成であるから、同一符号を付してその説明については省略する。
【0031】
前記嵌入部16のトップボール受け穴16aは、トップボール22を強く押し込んで嵌入したとき、強い力で引き抜かない限り抜き取れない程度の挟持力を有しており、ゴム又は合成樹脂等の弾性体によって形成されている。トップボール受け穴16aの内面には、挟持力を高めるために、突起又は環状突起16bが形成されている。トップボール受け穴16aの挟持力は、挟持部15の挟持力よりも強く、警棒20の護身部24を挟持部15から引き抜いた後に、トップボール22をトップボール受け穴16aから引き出すことができるように形成されている。
【0032】
即ち、護身部24を引き抜いてもトップボール22はトップボール受け穴16aに挟持されているから、そのまま引き抜くことにより警棒20の全体を伸長させることができる。警棒20が伸長した後に、トップボール受け穴16aからトップボールが引き出されることになる。なお、前記ホルダー14は、ホルダー4に代えて設けられるものであり、あるいは、ホルダー4とともに設けられるものである。ホルダー14は、伸縮可能な警棒に限らず非伸縮警棒を装着することができることはもちろんである。
【0033】
図8及び図9に基づいて、上記伸縮可能な警棒20をホルダー14に装着した場合の使用方法について説明する。図8に示すように、縮小した状態で警棒20の先端部がホルダー14に装着されると、護身部24が挟持部15に挟持され、トップボール22がトップボール受け穴16aに嵌入される。この状態で警棒20を回動させると、ホルダー14は回転自在に固着されているから、図1及び図3に示す実施形態の場合と同様に警棒の角度を自由に変えることができる。警棒の角度を変えることができるということは、盾本体の角度も自由に変えることができることになり、盾本体を状況に応じて容易に扱うことができる。
【0034】
また、必要に応じて反撃する場合には、元筒21の把持部を持って引き出せば、護身部24が挟持部15から引き抜かれ、中筒及び先端部が完全に伸長した後にトップボール22がトップボール受け穴16aから引き出されるから、そのまま伸長した警棒を使用することができる。また、トップボール22をトップボール受け穴16aから引き出さずに伸長させた状態でも使用することができ、この場合にも伸長した警棒の角度は自由に変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の第1実施形態に係る防護盾の内面斜視図である。
【図2】ホルダーの実施形態を示す拡大断面図である。
【図3】この発明の第2実施形態に係る防護盾の内面斜視図である。
【図4】支持杆の一部を断面した正面図である。
【図5】この発明の第3実施形態に係る防護盾の内面斜視図である。
【図6】伸縮可能な警棒の縮小した状態の説明用斜視図である。
【図7】伸縮可能な警棒を装着するホルダーを示し、図7(a)は一部断面斜視図、図7(b)は一部断面平面図である。
【図8】伸縮可能な警棒を装着した状態の一部断面平面図である。
【図9】伸縮可能な警棒を伸長した状態の一部断面平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1,1A,1B:防護盾
2,2A:盾本体
2a:湾曲面
3:把持部
4,14:ホルダー
5:縁枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盾本体の内面側に盾本体を取り扱う把持部と、警棒を着脱する回転自在なホルダーとを設けたことを特徴とする防護盾。
【請求項2】
ホルダーは、警棒を挟持するように略U字状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の防護盾。
【請求項3】
ホルダーは、伸縮可能な警棒を装着したとき警棒を引き抜くだけで伸長させることができるように、護身部を保持する護身部保持部と先端のトップボールを保持するトップボール保持部により形成したことを特徴とする請求項1に記載の防護盾。
【請求項4】
ホルダーは、ゴム又は合成樹脂で形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれに1項に記載の防護盾。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−107057(P2010−107057A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276353(P2008−276353)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(302011560)株式会社 動研 (8)
【出願人】(391005248)三力工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】