説明

防錆クレヨン

【課題】溶融亜鉛めっき鋼板の切断端面を含む鉄板や鋼板の表面にレベリング性よく、すぐれた防錆塗膜を形成することができる防錆クレヨンを提供する。
【解決手段】有機溶媒、樹脂、鱗片状亜鉛粒子20〜75重量%、および/または、鱗片状アルミニウム粒子0.5〜10重量%及びジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のゲル化剤1〜20重量%を含有することを特徴とする防錆クレヨン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄板や鋼板の表面にレベリング性よく、すぐれた防錆塗膜を形成することができる防錆クレヨンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレヨンとして、着色剤、有機溶剤、樹脂及びゲル化剤を主成分としてなるものがよく知られている。一例を挙げれば、例えば、ジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール又はこれらの誘導体からなるゲル化剤と樹脂と着色剤を有機溶剤に溶解又は分散させた後、冷却し、固化させてなるクレヨンが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方において、防錆塗料は、種々のものが知られているが、鉄板や鋼板の表面にクレヨンにて筆記して、防錆性を有する筆跡、即ち、防錆塗膜を形成することができる防錆材料は、これまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭54−23619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板の切断端面を含む鉄板や鋼板の表面にレベリング性よく、すぐれた防錆塗膜を形成することができる防錆クレヨンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、有機溶媒、樹脂、鱗片状亜鉛粒子及びジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のゲル化剤を含有することを特徴とする防錆クレヨンが提供される。
【0007】
更に、本発明によれば、有機溶媒、樹脂、鱗片状亜鉛粒子、鱗片状アルミニウム粒子及びジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のゲル化剤を含有することを特徴とする防錆クレヨンが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防錆クレヨンによれば、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板の切断端面を含む鉄板や鋼板の表面にレベリング性よく、すぐれた防錆塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による防錆クレヨンは、有機溶媒、樹脂、鱗片状亜鉛粒子及びジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のゲル化剤を含有する。
【0010】
本発明による防錆クレヨンにおいて用いられる有機溶剤は、特に限定されるものではないが、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類及びグリコールエーテルエステル類よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。このような好ましい有機溶剤の具体例としては、アルコール類として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール等を挙げることができ、グリコール類として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等を挙げることができ、グリコールエーテル類として、例えば、上記グリコール類のメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、フェニルエーテル等を挙げることができ、グリコールエーテルエステル類として、例えば、上記グリコールエーテル類のアセテート等を挙げることができる。
【0011】
本発明においては、特に、これらのなかでも、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0012】
本発明において、防錆クレヨンにおける上記有機溶剤の量は、その他の成分との関係において適宜に定められるが、クレヨンの重量に基づいて、通常、10〜70重量%、好ましくは、20〜50重量%の範囲である。有機溶剤の量が多すぎるときは、クレヨンの製造時に所要の各成分をまとめてゲル化することが困難となるおそれがある。他方、有機溶剤が少なすぎるときは、クレヨンの製造時に所要の各成分をこれに溶解させ、分散させることが困難となり、均一なゲルが形成できないおそれがある。
【0013】
本発明において、ゲル化剤は、各成分を一体に固体にまとめるための成分であり、そのようなゲル化剤としては、ジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
【0014】
ジベンジリデンソルビトールの誘導体としては、例えば、ジベンジリデンソルビトールのベンジリデン基中のベンゼン核が任意の位置にて炭素数1〜3のアルキル基やハロゲン原子で置換された化合物を例示することができ、具体例としては、〔ジ(p−メチルベンジリデン)〕ソルビトール、〔ジ(m−エチルベンジリデン)〕ソルビトール、〔ジ(p−クロルベンジリデン)〕ソルビトール等を挙げることができる。
【0015】
トリベンジリデンソルビトールの誘導体としては、例えば、トリベンジリデンソルビトールのベンジリデン基中のベンゼン核が任意の位置にて炭素数1〜3のアルキル基やハロゲン原子で置換された化合物を例示することができ、具体例としては、〔トリ(p−メチルベンジリデン)〕ソルビトール、〔トリ(m−エチルベンジリデン)〕ソルビトール、〔トリ(p−クロルベンジリデン)〕ソルビトール等を挙げることができる。上記例示したゲル化剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明によるクレヨンにおいて、ゲル化剤の含有量は、クレヨンの重量に基づいて、通常、1〜20重量%の範囲であり、好ましくは、2〜8重量%の範囲である。クレヨンにおいて、ゲル化剤が多すぎるときは、用いる有機溶剤の量にもよるが、有機溶剤に溶解させることが困難となるおそれがあるほか、得られるクレヨンのゲル硬度が高すぎて、鉄 板や鋼板の表面への筆記性に劣って、防錆塗膜を形成することが困難となるおそれがある。ゲル化剤が少なすぎるときは、各成分をまとめて一体に固形化することが困難となる。
【0017】
本発明による防錆クレヨンは、防錆顔料を含有しており、これによって、鉄板や鋼板の表面に筆記して防錆性にすぐれる塗膜を形成することができる。
【0018】
本発明によれば、この防錆顔料として、鱗片状亜鉛粒子が用いられる。本発明において、この鱗片状亜鉛粒子は、走査型電子顕微鏡写真による測定において、通常、平均粒子径が10〜30μmの範囲にあり、厚みが0.3〜5μmの範囲にあり、好ましくは、平均粒子径が10〜20μmの範囲にあり、厚みが0.5〜3μmの範囲にある。
【0019】
本発明において、クレヨンにおける上記鱗片状亜鉛粒子の割合は、クレヨンの重量に基づいて、通常、20〜75重量%の範囲であり、好ましくは、30〜65重量%の範囲である。クレヨンにおける亜鉛粒子の量が20重量%よりも少ないときは、クレヨンが鉄板や鋼板の表面に形成した塗膜が十分な防錆性をもたない。しかし、亜鉛粒子の量が75重量%を超えるときは、得られるクレヨンが硬すぎて、レベリング性が悪い。
【0020】
更に、好ましくは、本発明によれば、防錆顔料として、上記鱗片状亜鉛粒子と共に鱗片状アルミニウム粒子を併用することによって、クレヨンが鉄板や鋼板の表面に形成する塗膜に一層、高い防錆性を与えることができる。本発明において、この鱗片状アルミニウム粒子は、走査型電子顕微鏡写真による測定において、通常、平均粒子径が5〜25μmの範囲にあり、厚みが0.3〜5μmの範囲にあり、好ましくは、平均粒子径が8〜20μmの範囲にあり、厚みが0.5〜3μmの範囲にある。
【0021】
本発明において、クレヨンにおける鱗片状アルミニウム粒子の割合は、クレヨンの重量に基づいて、通常、0.5〜10重量%の範囲であり、好ましくは、0.6〜5重量%の範囲である。クレヨンにおける鱗片状アルミニウム粒子の量が0.5重量%よりも少ないときは、鱗片状アルミニウム粒子を鱗片状亜鉛粒子と併用しても、クレヨンが形成する塗膜の防錆性を更に高める効果が殆どない。しかし、鱗片状アルミニウム粒子の量が10重量%を越えるときは、得られるクレヨンが硬すぎて、レベリング性が悪い。
【0022】
鱗片状アルミニウム粒子は、これを、例えば、65重量%の割合で有機溶剤に分散させた所謂アルミニウムペーストとして入手することができる。アルミニウムペーストにおける有機溶剤は、通常、本発明によるクレヨンにおいて用いる有機溶剤と同じであるので、アルミニウムペーストにおける有機溶剤の量は、便宜上、本発明によるクレヨンにおいて用いる有機溶剤の量に含めることとする。必要ならば、市販のアルミニウムペーストにおける有機溶媒を本発明において用いる有機溶媒に置換して用いることもできる。
【0023】
本発明によれば、必要に応じて、防錆顔料と共に、従来からクレヨンにおける着色材として用いられている一般的な着色顔料が併用される。このような着色顔料は、有機顔料でもよく、無機顔料でもよい。用い得る顔料は、例えば、銅フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系顔料、スレン系、アゾ系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、インドレノン系、アゾ−アゾメチン系等のほか、酸化チタンやカーボンブラックを含む。更に、必要に応じて、酸化鉄、弁柄、酸化クロム、炭酸カルシウム、クレイ、タルク等のような無機顔料、蛍光顔料、着色した樹脂粒子、所謂パール顔料等も用いられる。これら着色顔料は、必要に応じて、クレヨンの重量に基づいて、20重量%までの範囲で用いられる。
【0024】
また、必要に応じて、種々の体質顔料も、クレヨンの重量に基づいて、20重量%までの範囲で用いられる。
【0025】
本発明による防錆クレヨンにおいて、樹脂は、一般的には、クレヨンの製造に際して、各成分をまとめる役割を果たすと共に、得られるクレヨンにおいて、鉄板又は鋼板の表面に筆記したとき、形成された塗膜の定着剤としての役割を果たす。本発明による防錆クレヨンにおいては、このような樹脂として、所謂接着性樹脂が用いられるが、必要に応じて接着性樹脂は、所謂フィルム形成性樹脂と併用される。
【0026】
接着性樹脂は、得られるクレヨンによって形成される塗膜の鉄板や鋼板の表面への付着性を高めるためのものであって、そのような性質を有する限り、特に限定されるものではないが、通常、例えば、ケトン樹脂、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、マレイン樹脂、テルペンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等が用いられる。更に、ロジンエステルや水添ロジンエステルも接着性樹脂と同等に用いられる。ケトン樹脂としては、例えば、シクロヘキサンとホルムアルデヒドとの縮合物を例示することができる。キシレン樹脂としては、例えば、メタキシレンとホルムアルデヒドとの縮合物を例示することができる。ポリアミド樹脂としては、例えば、ダイマー酸とジ−又はポリアミンの縮重合によって得られる熱可塑性樹脂であって、分子量4000〜9000程度のものを例示することができる。アクリル樹脂としては、例えば、熱可塑性のポリアクリル酸エステルを例示することができる。これらの接着性樹脂も、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
フィルム形成性樹脂は、得られるクレヨンの硬度を高めると共に、筆記面に形成された塗膜を強固にするためのものであって、そのような性質を有するものであれば、特に限定されるものではないが、なかでも、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂等のビニル樹脂等が好ましく用いられる。これらフィルム形成性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明において、上記接着性樹脂とフィルム形成性樹脂を併用するときは、通常、フィルム形成性樹脂 : 接着性樹脂の重量比が1:0.1〜5程度、好ましくは、1:0.2〜3程度となるように用いられる。
【0029】
本発明において、クレヨンにおける上記接着性樹脂の割合、フィルム形成性樹脂と併用するときは、クレヨンにおける両者の合計量の割合は、クレヨンの重量に基づいて、通常、3〜40重量%の範囲、好ましくは、6〜25重量%の範囲で用いられる。クレヨンにおける樹脂成分の量が多すぎるときは、得られるクレヨンの硬度が高すぎて、レベリング性が悪く、他方、樹脂成分の量が少なすぎるときは、クレヨンの製造において、各成分を一体にまとめてゲル化することが困難となり、また、得られるクレヨンが十分な定着性や強度を有しない。
【0030】
本発明によるクレヨンは、上述した成分に加えて、必要に応じて、従来から知られている防錆剤のほか、種々の充填剤、レベリング剤、粘度調節剤、構造粘性付与剤、乾燥性付与剤等、従来より、クレヨンにおける添加剤として知られているものを適宜に含有していてもよい。また、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、エポキシヘキサヒドロフタル酸2−エチルヘキシル、セバシン酸2−エチルヘキシル、トリクレジルホスフェート等の可塑剤も適宜に含有していてもよい。
【0031】
本発明によるクレヨンは、その製造方法において、何ら限定されるものではない。基本的には、上述した各成分を均一に混合し、一体にゲル化すればよい。好ましい製造方法の一例を挙げる。即ち、有機溶剤を、必要に応じて、100〜150℃の温度に加熱し、撹拌しながら、これに樹脂を加え、溶解させ、次いで、得られた樹脂溶液を150℃程度の温度に加熱し、撹拌しながら、これにゲル化剤を加え、溶解させる。次いで、得られた溶液を150℃程度の温度に加熱し、撹拌しながら、これに鱗片状亜鉛粒子を加え、分散させ、このようにして原料溶液を得る。必要に応じて、引き続き、この原料溶液を加熱して、ゲル化剤の原料溶液への溶解を維持しつつ、この原料溶液を所望の形状を有する成形容器に注入し、冷却し、ゲル化させれば、そのような形状を有するクレヨンを得ることができる。
【0032】
鱗片状亜鉛粒子と鱗片状アルミニウム粒子を併用する場合には、有機溶剤に樹脂を溶解させる前に、有機溶剤を、必要に応じて、100℃までの温度に加熱し、撹拌しながら、鱗片状アルミニウムペーストを加え、鱗片状アルミニウム粒子を有機溶剤中に分散させた後、上述したように、樹脂、ゲル化剤及び鱗片状亜鉛粒子をこの順序にて加えればよい。
【0033】
本発明によれば、クレヨンの硬度は、用いる有機溶剤、ゲル化剤、樹脂、鱗片状亜鉛粒子や鱗片状アルミニウム粒子等の種類や配合量によって任意に調節することができ、その用途等に応じて適宜に設定されるが、通常、5〜50kg/cm2程度、好ましくは、7〜30km/cm2の範囲である。
【実施例】
【0034】
以下に本発明の実施例と共に比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、亜鉛粒子及びアルミニウム粒子の平均粒子径及び厚みは、次のようにして測定した。即ち、亜鉛粒子及びアルミニウム粒子のそれぞれについて、倍率800倍の走査型電子顕微鏡写真を5画像撮影し、各画像において10個の粒子について長径と短径を測定して、その平均値を粒子径として求め、これを5画像について行い、かくして、合計50個の粒子の粒子径を求めて、その平均値を平均粒子径とした。また、亜鉛粒子及びアルミニウム粒子のそれぞれについて、倍率3000倍の走査型電子顕微鏡写真を5画像撮影し、各画像において10個の粒子について、粒子の厚みを測定し、これを5画像について行い、かくして、合計50個の粒子の厚みの平均値を平均厚みとした。
【0035】
球状亜鉛粒子の平均粒子径は、倍率800倍の走査型電子顕微鏡写真を5画像撮影し、各画像において10個の粒子の粒子径として求め、これを5画像について行い、かくして、合計50個の粒子の粒子径を求めて、その平均値を平均粒子径とした。
【0036】
実施例1〜7
表1に示す成分を表1に示す量にて用いて、それぞれクレヨンを得た。
【0037】
比較例1〜5
表1に示す成分を表1に示す量にて用いて、それぞれクレヨンを得た。
【0038】
以上のようにしてそれぞれのクレヨンの製造時の成分の固化性又はゲル化剤の溶解性について調べると共に、得られたそれぞれのクレヨンについて、レベリング性と塗膜の防錆性を調べた。
【0039】
製造時の成分の固化性又はゲル化剤の溶解性
固形分(亜鉛粒子)が多すぎて、成分が固化しないときをB1、ゲル化剤が少なすぎて、成分が固化しないときをB2、ゲル化剤が多すぎて、ゲル化剤が有機溶媒に溶解しないときをB3とした。
【0040】
レベリング性
クレヨンを用いて鋼板上に筆記したとき、レベリング性がよく、亜鉛粒子が鋼板に載るときをAとし、レベリング性が少し悪いか、亜鉛粒子が鋼板に載るとき(即ち、下記塗膜の防錆性の試験において、塗膜に錆びが全くみられないとき)をBとし、レベリング性が悪く、亜鉛粒子が鋼板上に載らないときをCとした。ここに、亜鉛粒子が鋼板上に載るということは、クレヨンによる塗膜中に亜鉛粒子が均一に分散されていることをいい、亜鉛粒子が鋼板上に載らないということは、クレヨンによる塗膜中に亜鉛粒子が線状に偏在することをいう。
【0041】
塗膜の防錆性
アルミニウム6重量%、マグネシウム3重量%、残部亜鉛からなる溶融亜鉛めっき鋼板の切断端面(5.0mm×140mm、溶融亜鉛めっきされていない。)にクレヨンを塗って、塗膜を形成した。このような塗膜の表面に濃度5重量%、温度35℃の塩化ナトリウム水溶液を2時間にわたって噴霧し、温度60℃で4時問乾燥し、温度50℃の湿潤環境下に2時間放置する工程を180回繰返した後、塗膜上の錆の発生の有無を調べた。錆が全くみられないときをAとし、錆の兆候がみられたときをBとし、錆が(ほぼ)全面にわたってみられたときをCとした。
【0042】
結果を表1に示す。表1において用いた樹脂、ゲル化剤、亜鉛粒子及びアルミニウム粒子の詳細は以下のとおりである。
【0043】
【表1】

【0044】
有機溶媒:エチレングリコールモノブチルエーテル
樹脂1:三菱レイヨン(株)製アクリル樹脂「ダイヤナールBR−107」
樹脂2:荒川化学(株)製ポリアミド樹脂「バーサミド335」
樹脂3:(株)クラレ製ポリビニルブチラール樹脂「MOWITAL B−30H」
樹脂4:日立化成(株)製ケトン樹脂「ハイラック111」
亜鉛粒子1:本荘ケミカル(株)製鱗片亜鉛末(平均粒子径12.7μm、平均厚み1.14μm)
亜鉛粒子2:本荘ケミカル(株)製球状亜鉛末「F−2000」、平均粒子径4.0μm)
アルミニウム粒子:エカルト製アルミニウムペースト「HYDROLAC BGH CHROM」(鱗片状アルミニウム粒子(平均粒子径10.0μm、平均厚み0.63μm)65重量%、残部有機溶媒エチレングリコールモノブチルエーテル)
【0045】
表1に示す結果から明らかなように、本発明に従って、鱗片状亜鉛粒子(と鱗片状アルミニウム粒子)を含むクレヨンは、鋼板の表面に防錆性にすぐれる塗膜を形成する。しかし、鱗片状亜鉛粒子に代えて、球状亜鉛粒子を用いるクレヨンが鋼板の表面に形成する塗膜は、防錆性をもたない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明による防錆クレヨンは、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板の切断端面に塗付して、錆の発生を防止するために有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒、樹脂、鱗片状亜鉛粒子20〜75重量%及びジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のゲル化剤1〜20重量%を含有することを特徴とする防錆クレヨン。
【請求項2】
有機溶媒、樹脂、鱗片状亜鉛粒子20〜75重量%、鱗片状アルミニウム粒子0.5〜10重量%及びジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール及びこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のゲル化剤1〜20重量%を含有することを特徴とする防錆クレヨン。
【請求項3】
有機溶媒がアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類及びグリコールエーテルエステル類よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の防錆クレヨン。
【請求項4】
樹脂を3〜40重量%の範囲で含む請求項1又は2に記載の防錆クレヨン。


【公開番号】特開2011−26407(P2011−26407A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172167(P2009−172167)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】