説明

防錆剤および表面処理金属材

【課題】車載環境下などにおいて、高温、振動、冷熱サイクルに耐え、長期的に優れた防錆効果を維持できる防錆剤を提供すること。
【解決手段】分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、前記化合物の疎水基と相溶可能なワックスおよび/またはエチレン系共重合体とを含有する防錆剤とする。さらに粘着付与剤を含有していても良い。前記ワックス等の含有量は5〜70質量%の範囲内であることが好ましい。前記疎水基としては長鎖アルキル基や環状アルキル基を例示できる。前記キレート基としてはアミノカルボン酸、1,3−ジケトン、アセト酢酸(エステル)、ヒドロキシカルボン酸などを例示できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防錆剤および表面処理金属材に関し、さらに詳しくは、自動車用電線における導体や端子などの金属表面に塗布するものとして好適な防錆剤と、これを用いた表面処理金属材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野において金属材料が用いられており、産業上、金属材料は重要な役割を担っている。しかしながら、金属材料は、錆びやすい性質を有しており、長期にわたって安定してその役割を果たすためには、防錆処理を施す必要がある。そのため、従来より、種々の金属材料に対して、その金属種に応じた種々の防錆方法が提案されている。
【0003】
金属材料の防錆方法としては、例えば、金属表面にめっきを施す方法や、金属表面を塗装する方法などが良く知られている。これらの方法は、金属表面に皮膜を形成し、金属表面を物理的に覆うことにより、水や酸素等といった錆びの原因となる因子の侵入を防ぎ、これにより防錆効果を発揮している。しかしながら、めっきや塗装は、大がかりな方法になりやすい。
【0004】
これに対し、比較的簡易な防錆方法としては、防錆剤を金属表面に塗布する方法が知られている。例えば、各種ワセリンやグリース等を金属表面に塗布する方法が知られている。また、特許文献1には、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に防錆剤を塗布する方法であるが、特定のポリアミノ化合物を有機高分子樹脂マトリックスとした高分子キレート化剤による皮膜を金属表面に形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−166151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各種ワセリンやグリース、特許文献1に記載の防錆剤は、いずれも防錆剤を金属表面に塗布することにより金属表面に連続する皮膜を形成し、金属表面を物理的に覆うことにより、防錆効果を発揮する構成のものである。そのため、例えば車載環境下などで用いられた場合には、熱や溶剤等により容易に揮発、溶出するおそれがあった。これにより、防錆剤を塗布していた金属表面においては、表面欠陥部分などから局所的に腐食が起こり、錆が発生するおそれがあった。また、防錆剤を塗布していた部分が異種金属接触部である場合には、防錆剤の揮発、流出等により、異種金属接触腐食が起こりやすくなり、錆が発生するおそれがあった。
【0007】
さらに、車載環境下では、振動や冷熱サイクルが生じる。用いる防錆剤に柔軟性が乏しいと、振動や冷熱サイクルによって、塗布した防錆剤の表面に割れが生じ、防錆効果が低下するおそれがある。したがって、このような環境下に置かれる部材に塗布する防錆剤には柔軟性も求められる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、車載環境下などにおいて、高温、振動、冷熱サイクルに耐え、長期的に優れた防錆効果を維持できる防錆剤と、これを用いた表面処理金属材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る防錆剤は、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、前記化合物の疎水基と相溶可能な、ワックスおよび/またはエチレン系共重合体とを含有することを要旨とするものである。
【0010】
本発明に係る防錆剤においては、前記ワックスおよび/またはエチレン系共重合体の含有量が5〜70質量%の範囲内であることが望ましい。また、80℃における溶融粘度が1000mPa・s以上であることが望ましい。
【0011】
本発明に係る防錆剤においては、粘着付与剤を含有しているとさらに良い。このとき、前記粘着付与剤の含有量は、前記粘着付与剤を除く成分100質量部に対して1〜20質量部の範囲内であることが望ましい。
【0012】
本発明に係る防錆剤においては、前記疎水基としては、長鎖アルキル基および環状アルキル基から選択された1種または2種以上の基を好適に示すことができる。
【0013】
また、前記キレート基としては、ポリリン酸塩、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、アセト酢酸(エステル)、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基類、フェノール類、オキシム類、シッフ塩基、テトラピロール類、イオウ化合物、合成大環状化合物、ホスホン酸、および、ヒドロキシエチリデンホスホン酸から選択された1種または2種以上のキレート配位子に由来するものを好適に示すことができる。
【0014】
この際、前記疎水基とキレート基とは、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、および、アミド結合から選択された1種または2種以上の結合を介して結合されていると良い。
【0015】
ここで、前記化合物は中性化合物であることが望ましい。
【0016】
そして、上記防錆剤は、金属表面塗布用の防錆剤に好適である。
【0017】
一方、本発明に係る表面処理金属材は、上記防錆剤を金属材の表面に塗布してなることを要旨とするものである。
【0018】
この際、前記金属材としては、アルミニウム、鉄、銅、錫、金、ニッケル、クロム、亜鉛、アルミニウム合金、鉄合金、および、銅合金から選択された1種または2種以上の金属よりなるものを好適に示すことができる。そして、この金属材は、表面を、錫、金、ニッケル、クロム、亜鉛、および、銅から選択された1種または2種以上の金属によりめっきされたものであっても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る防錆剤は、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、前記化合物の疎水基と相溶可能なワックスおよび/またはエチレン系共重合体とを含有することにより、金属表面に密着して優れた防錆効果を発揮するとともに、高温に曝されても揮発、流出しにくく、さらに、柔軟性にも優れることで、振動や冷熱サイクルによっても表面に割れが生じにくい。これにより、例えば車載環境下においても、長期的に優れた防錆効果を維持できる。
【0020】
このとき、前記ワックスおよび/またはエチレン系共重合体の含有量が5〜70質量%の範囲内であると、防錆性能と柔軟性とのバランスに優れる。また、80℃における溶融粘度が1000mPa・s以上であると、車載環境下においても、確実に長期間防錆効果を維持できる。
【0021】
本発明に係る防錆剤においては、さらに粘着付与剤を含有していると、防錆剤の金属表面への密着性が向上し、また、防錆剤の柔軟性、粘性が高まるため、さらに防錆性能が向上する。この際、前記粘着付与剤の含有量が、前記粘着付与剤を除く成分100質量部に対して1〜20質量部の範囲内であると、防錆性能と柔軟性とのバランスに優れる。
【0022】
また、本発明に係る防錆剤において、前記疎水基が上記各種の基よりなると、確実に金属表面に撥水性を付与することができる。また、前記キレート基が上記各種の基よりなると、確実に金属表面と結合することができる。この際、前記疎水基とキレート基とが上記各種の結合を介して結合されているものは、合成が容易であり、広く用いることができる。
【0023】
ここで、前記化合物が中性化合物であると、例えば防錆剤が目的の塗布面以外の部分に付着したとしても、腐食あるいは人体への影響を抑えることができるため、安全性に優れる。また、前記化合物が中性化合物であると、環境の影響を受けにくく、保存安定性にも優れる。
【0024】
一方、本発明に係る表面処理金属材によれば、上記防錆剤を金属材の表面に塗布するため、長期間にわたって安定して防錆効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明に係る防錆剤は、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、この化合物の疎水基と相溶可能な、ワックスあるいはエチレン系共重合体とを含有するものからなる。本発明に係る防錆剤においては、ワックスおよびエチレン系共重合体のどちらか一方を含有していても良いし、両方を含有していても良い。また、本発明に係る防錆剤においては、上記成分以外に、優れた防錆性能や長期にわたって防錆性を維持する効果を損なわない範囲で、必要に応じて、他の添加剤を適宜配合することができる。他の添加剤としては、粘着付与剤、酸化防止剤、結晶化防止剤、導電性付与剤、色素などが挙げられる。
【0026】
本発明に係る防錆剤は、例えば、金属材料の金属表面に塗布するものとして好適に用いることができる。金属材料としては、例えば、自動車等の車両における電線、ケーブル、コネクタ、ボディ等や、高圧電力ケーブル、電気・電子機器部品などを好適に示すことができる。特に、高温に曝されやすく、また、振動、冷熱サイクルが生じる車載環境下おいて用いられる自動車用の電線、ケーブル、コネクタなどの金属材料を好適に示すことができる。金属種としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、金、ニッケル、クロム、亜鉛、アルミニウム合金、鉄合金、銅合金などを例示することができる。これらは、1種のみであっても良いし、2種以上組み合わされたものであっても良い。また、金属材料は、表面を錫、金、ニッケル、クロム、亜鉛、銅等によりめっきされたものであっても良い。
【0027】
本発明に係る防錆剤において、ワックスあるいはエチレン系共重合体は、防錆剤に柔軟性や増粘性などを付与する成分である。これにより、熱による流出や、振動、冷熱サイクルによる割れを防止できる。さらに、塗布等しやすくするための性状を調整する役割も担うことができる。また、上記化合物の疎水基と相溶するものであるため、上記化合物との混ざりが良く、かつ、上記化合物のキレート基との相互作用を抑制してキレート基の機能を妨げにくいものである。ワックスやエチレン系共重合体は、それ自体が防錆性能を有するものであっても良いし、防錆性能を有しないものであっても良い。
【0028】
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、合成パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、塩素化炭化水素等を示すことができる。エチレン系共重合体としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体等を示すことができる。これらは、1種のみ用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
上記ワックスの含有量は、5〜70質量%の範囲内であることが好ましい。また、上記エチレン系共重合体の含有量は、5〜70質量%の範囲内であることが好ましい。なお、本発明に係る防錆剤がワックスとエチレン系共重合体とを含有する場合には、両者を併せた量が5〜70質量%の範囲内であることが好ましい。上記ワックス等の含有量が5質量%未満では、防錆剤に柔軟性や増粘性を付与する効果が低下しやすい。一方、上記ワックス等の含有量が70質量%超では、上記化合物による防錆効果が低下しやすい。上記ワックス等の含有量は、より好ましくは10〜50質量%の範囲内である。
【0030】
本発明に係る防錆剤において、粘着付与剤は、防錆剤に粘着性を付与する成分である。粘着付与剤により、防錆剤を塗布する金属表面との密着性を向上させることができる。また、防錆剤の柔軟性を高める効果もある。粘着付与剤は、ゴム、プラスチック等のポリマに粘着性を付与するために配合剤として用いられるものであればいずれであっても良い。具体的には、例えばロジンおよびロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂等を挙げることができる。これらは、1種のみ用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
粘着付与剤の含有量は、粘着付与剤を除く成分100質量部に対して1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、粘着付与剤を除く成分100質量部に対して5〜15質量部の範囲内である。粘着付与剤の含有量が1質量部未満では、金属表面との密着性を向上させる効果や防錆剤の柔軟性を高める効果が低くなりやすい。一方、粘着付与剤の含有量が20質量部超では、上記化合物による防錆効果が低下しやすい。
【0032】
本発明に係る防錆剤において、上記化合物は、防錆性能を発揮する有効成分となるものである。上記化合物において、キレート基は、防錆する金属表面と結合形成する部位である。キレート基が金属表面と結合することにより、防錆剤が熱や溶剤等により容易に揮発や溶出しないようになる。これにより、長期間にわたって安定して防錆効果を発揮することが可能である。キレート基が金属表面と結合形成してキレート結合に変化していることは、例えば多重全反射赤外吸収法(ATR−IR)や顕微IRなどで確認することができる。
【0033】
本発明に係る防錆剤において、疎水基は、金属表面と結合形成しているキレート基から外側に張り出すように配置される。疎水基は、金属表面への水の侵入を防ぐために、金属表面と結合形成しているキレート基の上に撥水性を持たせるものである。すなわち、単に金属表面を物理的に覆うことにより防錆効果を発揮するだけではなく、疎水基の撥水効果により金属表面への水の侵入を防ぐことによっても防錆効果を発揮する。
【0034】
上記疎水基とキレート基とは、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、アミド結合などの結合を介して結合されていることが好ましい。これらの結合を介して疎水基とキレート基とが結合されている構造のものは、縮合反応等により容易に合成することができる。
【0035】
上記疎水基とキレート基とを有する化合物は、酸性、アルカリ性、中性のいずれであっても良い。好ましくは中性である。上記化合物が中性である場合には、例えば防錆剤が目的の塗布面以外の部分に付着したとしても、防錆剤による付着部分の腐食は発生しにくい。また、仮に防錆剤が人体の皮膚等に付着した場合にも、肌荒れ等の人体への影響も少ない。すなわち、安全性に優れる。また、上記化合物が中性である場合には、酸性化合物やアルカリ性化合物と比較しても環境の影響を受けにくい。そのため、保存安定性にも優れる。
【0036】
中性化合物としては、分子構造中に酸構造および塩基構造を有しない化合物(この場合には、キレート基中にも酸構造および塩基構造を有していない。)や、分子構造中に酸構造および塩基構造を有しているが、中性に保っている化合物などを挙げることができる。
【0037】
中性化合物とは、pHが6〜8程度の範囲内にあるものとすることができる。化合物のpHは、一般的なpH測定器を用いて測定したものであっても良いし、pH試験紙を用いて測定したものであっても良い。pH測定条件は、通常の測定条件に従うことができる。
【0038】
上記疎水基としては、例えば、長鎖アルキル基、環状アルキル基等を例示することができる。これらは、1種のみ有していても良いし、2種以上が組み合わされて有していても良い。この際、長鎖アルキル基や環状アルキル基にフッ素原子が導入されていれば、より撥水効果に優れる。
【0039】
長鎖アルキル基は、直鎖状でも良いし、分岐していても良い。長鎖アルキル基の炭素数は、特に限定されるものではないが、好ましくは、5〜100の範囲内、より好ましくは、8〜50の範囲内である。環状アルキル基は、単環から形成されていても良いし、複数の環から形成されていても良い。環状アルキル基の炭素数は、特に限定されるものではないが、好ましくは、5〜100の範囲内、より好ましくは、8〜50の範囲内である。長鎖アルキル基や環状アルキル基中には、炭素−炭素不飽和結合や、アミド結合、エーテル結合、エステル結合などを含んでいても良い。
【0040】
上記キレート基は、各種キレート配位子を用いて導入可能である。このようなキレート配位子としては、例えば、1,3−ジケトン(β−ジケトン)や3−ケトカルボン酸エステル(アセト酢酸エステル等)などのβ−ジカルボニル化合物、ポリリン酸塩、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基類、フェノール類、オキシム類、シッフ塩基、テトラピロール類、イオウ化合物、合成大環状化合物、ホスホン酸、ヒドロキシエチリデンホスホン酸などを例示することができる。これらの化合物は、配位結合可能な非共有電子対を複数有している。これらは、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。このうち、1,3−ジケトンおよび3−ケトカルボン酸エステルは、分子構造中に酸構造および塩基構造を有しておらず、中性化合物であるため、安全性、保存安定性に優れるなどの観点から、より好ましい。
【0041】
各種キレート配位子としては、より具体的には、ポリリン酸塩としては、トリポリリン酸ナトリウムやヘキサメタリン酸などを例示することができる。アミノカルボン酸としては、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、エチレンジアミン四酢酸、N−ヒドロキシメチルエチレンジアミン三酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジアミノシクロヘキシル四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸、ヘキサメチレンジアミンN,N,N,N−四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ポリ(p−ビニルベンジルイミノ二酢酸)などを例示することができる。
【0042】
1,3−ジケトンとしては、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、テノイルトリフルオロアセトンなどを例示することができる。また、アセト酢酸エステルとしては、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸tert−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸ヒドロキシプロピルなどを例示することができる。ヒドロキシカルボン酸としては、N−ジヒドロキシエチルグリシン、エチレンビス(ヒドロキシフェニルグリシン)、ジアミノプロパノール四酢酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸などを例示することができる。ポリアミンとしては、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、トリアミノトリエチルアミン、ポリエチレンイミンなどを例示することができる。アミノアルコールとしては、トリエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ポリメタリロイルアセトンなどを例示することができる。
【0043】
芳香族複素環式塩基としては、ジピリジル、o−フェナントロリン、オキシン、8−ヒドロキシキノリンなどを例示することができる。フェノール類としては、5−スルホサリチル酸、サリチルアルデヒド、ジスルホピロカテコール、クロモトロプ酸、オキシンスルホン酸、ジサリチルアルデヒドなどを例示することができる。オキシム類としては、ジメチルグリオキシム、サリチルアドキシムなどを例示することができる。シッフ塩基としては、ジメチルグリオキシム、サリチルアドキシム、ジサリチルアルデヒド、1,2−プロピレンジミンなどを例示することができる。
【0044】
テトラピロール類としては、フタロシアニン、テトラフェニルポルフィリンなどを例示することができる。イオウ化合物としては、トルエンジチオール、ジメルカプトプロパノール、チオグリコール酸、エチルキサントゲン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジチゾン、ジエチルジチオリン酸などを例示することができる。合成大環状化合物としては、テトラフェニルポルフィリン、クラウンエーテル類などを例示することができる。ホスホン酸としては、エチレンジアミンN,N−ビスメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸などを例示することができる。
【0045】
上記キレート配位子には、適宜ヒドロキシル基やアミノ基などを導入することも可能である。上記キレート配位子は、塩として存在可能なものもある。この場合、塩の形態で用いても良い。また、上記キレート配位子またはその塩の水和物や溶媒和物を用いても良い。さらに、上記キレート配位子には、光学活性体のものも含まれているが、任意の立体異性体、立体異性体の混合物、ラセミ体などを用いても良い。
【0046】
上記長鎖アルキル基は、長鎖アルキル化合物を用いて導入可能である。長鎖アルキル化合物としては、特に限定されないが、例えば、長鎖アルキルカルボン酸や、長鎖アルキルカルボン酸エステル、長鎖アルキルカルボン酸アミドなどの長鎖アルキルカルボン酸誘導体、長鎖アルキルアルコール、長鎖アルキルチオール、長鎖アルキルアルデヒド、長鎖アルキルエーテル、長鎖アルキルアミン、長鎖アルキルアミン誘導体、長鎖アルキルハロゲンなどを例示することができる。これらのうち、キレート基を導入しやすい点などから、長鎖アルキルカルボン酸、長鎖アルキルカルボン酸誘導体、長鎖アルキルアルコール、長鎖アルキルアミンが好ましい。
【0047】
長鎖アルキル化合物としては、より具体的には、例えば、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラドコサン酸、ヘキサドコサン酸、オクタドコサン酸、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラドコサノール、ヘキサドコサノール、オクタドコサノール、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ドデシルカルボン酸クロリド、ヘキサデシルカルボン酸クロリド、オクタデシルカルボン酸クロリドなどを例示することができる。これらのうち、入手が容易である点などにおいては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸、ドコサン酸、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノール、ドコサノール、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、ドデシルカルボン酸クロリド、オクタデシルカルボン酸クロリドが好適である。
【0048】
上記環状アルキル基は、環状アルキル化合物を用いて導入可能である。環状アルキル化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素数が3〜8のシクロアルキル化合物や、ステロイド骨格を有する化合物、アダマンタン骨格を有する化合物などを例示することができる。この際、これら各種化合物には、上記キレート配位子との結合形成が可能であるなどの観点から、カルボン酸基、水酸基、酸アミド基、アミノ基、チオール基などが導入されていることが好ましい。
【0049】
環状アルキル化合物としては、より具体的には、コール酸、デオキシコール酸、アダマンタンカルボン酸、アダマンタン酢酸、シクロヘキシルシクロヘキサノール、シクロペンタデカノール、イソボルネオール、アダマンタノール、メチルアダマンタノール、エチルアダマンタノール、コレステロール、コレスタノール、シクロオクチルアミン、シクロドデシルアミン、アダマンタンメチルアミン、アダマンタンエチルアミンなどを例示することができる。これらのうち、入手が容易である点などにおいては、アダマンタノール、コレステロールが好適である。
【0050】
本発明に係る防錆剤は、上記疎水基とキレート基とを有するものであるため、例えば、疎水基を有する化合物と、キレート基を有するキレート配位子とを接触させることにより得ることができる。より具体的には、疎水基を有する化合物と、キレート基を有するキレート配位子とを縮合反応させることにより得ることができる。このとき、溶媒を用いても良いし、撹拌させても良い。また、反応速度を上げるなどの目的で、加熱しても良いし、触媒を添加しても良い。さらに、副生物を除去するなどして、平衡反応を生成系に偏らせて、高収率で目的物が得られるようにしても良い。疎水基を有する化合物としては、上記する長鎖アルキル化合物、環状アルキル化合物などが挙げられる。
【0051】
例えば、上記疎水基を有する化合物がカルボキシル基またはヒドロキシル基を有し、上記キレート配位子がヒドロキシル基またはカルボキシル基を有している場合には、上記疎水基とキレート基とがエステル結合を介して結合されているものを得ることができる。また、例えば、上記疎水基を有する化合物がカルボキシル基またはアミノ基を有し、上記キレート配位子がアミノ基またはカルボキシル基を有している場合には、上記疎水基とキレート基とがアミド結合を介して結合されているものを得ることができる。
【0052】
本発明に係る防錆剤の有効成分となる上記化合物の分子量としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、100〜1500の範囲内であり、より好ましくは、200〜800の範囲内である。
【0053】
本発明に係る防錆剤の有効成分となる上記化合物の一例を構造式で表すと、例えば、以下のようになる。
【0054】
【化1】

【0055】
ただし、式(1)において、Rは、上記長鎖アルキル基または上記環状アルキル基を示し、Xは、エステル結合部位、エーテル結合部位、チオエステル結合部位、または、アミド結合部位を示し、Yは、上記キレート基を示している。すなわち、上記長鎖アルキル基または上記環状アルキル基と上記キレート基とが、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、または、アミド結合を介して結合されている。
【0056】
本発明に係る防錆剤の有効成分となる上記化合物のうち好適な化合物としては、より具体的には、例えば、エチレンジアミン四酢酸二無水物とオクタデシルアルコールとの縮合反応生成物、ジエチレントリアミン五酢酸二無水物とドコサノールとの縮合反応生成物、tert−ブチルアセトアセテートとオクタデシルアルコールとの縮合反応生成物、tert−ブチルアセトアセテートとドコサノールとの縮合反応生成物、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸とステアロイルクロライドとの縮合反応生成物、N−(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸とステアロイルクロライドとの縮合反応生成物、ジアミノプロパノール四酢酸とステアロイルクロライドとの縮合反応生成物、1−ヒドロキシエタン−1,1−ビスホスホン酸とステアロイルクロライドとの縮合反応生成物、エチレンジアミン四酢酸二無水物とコレステロールとの縮合反応生成物、ジエチレントリアミン五酢酸二無水物と1−アダマンタノールとの縮合反応生成物、tert−ブチルアセトアセテートとコレステロールとの縮合反応生成物、tert−ブチルアセトアセテートと1−アダマンタノールとの縮合反応生成物などを挙げることができる。
【0057】
本発明に係る防錆剤を、例えば金属表面に塗布して用いる場合には、上述する各成分の混合物を直接金属表面に塗布する。この際、塗布方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法等の任意の方法を採用できる。また、スクイズコーター等による塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。塗布する場合、密着性、耐食性を向上させるため、必要に応じて加温または圧縮などの処理を施すことができる。
【0058】
本発明に係る防錆剤は、熱等により容易に流出しないために、所定の粘度を有することが好ましい。例えば車載用の部材に塗布するものとしては、80℃における溶融粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。80℃における防錆剤の溶融粘度が1000mPa・s以上であるためには、上記ワックスの含有量は5〜70質量%の範囲内であることが好ましい。同様に、上記エチレン系共重合体の含有量は5〜70質量%の範囲内であることが好ましい。また、上記粘着付与剤の含有量は1〜20質量部の範囲内であることが好ましい。
【0059】
本発明に係る防錆剤は、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物の化学的作用(キレート基による密着性や疎水基による撥水性など)と、塗布等により容易に形成できる厚膜の物理的作用により、例えば自動車用電線の端子圧着部のような複雑な構造においても優れた防錆効果を得ることができる。
【0060】
次に、本発明に係る表面処理金属材について説明する。本発明に係る表面処理金属材は、上記本発明に係る防錆剤を金属材の表面に塗布したものからなる。金属材は、アルミニウム、鉄、銅、錫、ニッケル、金、クロム、亜鉛、アルミニウム合金、鉄合金、銅合金などの金属よりなるものであることが好ましい。金属材は、上記金属のうちの1種よりなるものであっても良いし、2種以上よりなるものであっても良い。また、金属材は、上記金属よりなる母材の表面を、錫、ニッケル、金、クロム、亜鉛、銅などの金属によりめっきされたものであっても良い。めっき材は、上記金属の1種であっても良いし、2種以上であっても良い。防錆剤の塗布方法としては、上記する塗布方法であれば良い。
【0061】
本発明に係る表面処理金属材としては、例えば、自動車等の車両における電線、ケーブル、コネクタ、ボディ等の金属部分や、高圧電力ケーブル、電気・電子機器部品などの金属部分を好適に示すことができる。コネクタにおいては、例えば端子圧着部などを示すことができる。端子圧着部では、端子と電線とが同種の金属であっても良いし、異種の金属であっても良い。
【実施例】
【0062】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0063】
(供試材料および製造元など)
本実施例および比較例において使用した供試材料を製造元、商品名などとともに示す。また、一部のものについては、実験室にて合成したものを用いた。合成品については、以下に、その合成方法と、構造式、および、同定データを示す。
【0064】
(A)防錆成分
・St−AA(式(2)の化合物)の合成
tert−ブチルアセトアセテート5g(31.6mmol)とステアリルアルコール8.5g(31.4mmol)をトルエン50mLに溶解し、攪拌しながら110℃まで加温し、副生成物のtert−ブタノールをDean−Starkトラップにて除きながら2時間反応させる。反応終了後、減圧濃縮し、白色のワックス状組成物を得る。そこに冷水20mLを加え固化させ、ろ取し目的物を得た(収率75%)。1H−NMR(CDCl)σppm(TMS):0.89(t,3H)、1.26(m,32H)、1.64(m,2H)、2.27(s,3H)、3.44(s,2H)、4.13(t,2H)。IR(cm−1):2924(C−H伸縮)、1745、1720(βジケトン、エノール体)、1642(βジケトン、エノール体)、1420(カルボン酸のC−O伸縮)。
【0065】
【化2】

但し、R2はオクタデシル基である。
【0066】
・Chol−AA(式(3)の化合物)の合成
ステアリルアルコールに代えて、コレステロール12.1g(31.3mmol)を用いたこと以外、上記St−AAと同様にして合成した。(収率48%)。1H−NMR(CDCl)σppm(TMS):0.5〜2.0(m,41H)、2.28(m,2H)、2.26(s,3H)、3.41(s,2H)、3.52(m,1H)、5.35(m,1H)。IR(cm−1):2925(C−H伸縮)、1745、1720(βジケトン、エノール体)、1642(βジケトン、エノール体)、1440(カルボン酸のC−O伸縮)。
【0067】
【化3】

但し、R3はコレステリル基である。
【0068】
(B)柔軟・増粘成分
・ワックス<1>[三井化学社製、商品名「ハイワックス 1105A」]
・ワックス<2>[三井化学社製、商品名「ハイワックス 2203A」]
・ワックス<3>[三井化学社製、商品名「ハイワックス 1140H」]
・ワックス<4>[三井化学社製、商品名「ハイワックス 400P」]
・エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)[Aldrich社製、試薬」]
(C)粘着成分
・粘着付与剤[荒川化学工業社製、商品名「アルコンP125」]
【0069】
(防錆剤の調製)
表1に記載の組成となるように、上記(A)〜(C)成分を120℃加熱条件下で攪拌子を用いて15分間攪拌して混合した。これにより、実施例に係る防錆剤を調製した。また、上記(A)成分のみを含有し、(B)成分および(C)成分を含有しないものを参考例に係る防錆剤とした。ただし、(A)防錆成分と(B)柔軟・増粘成分の含量は質量%で示しており、両者を併せて100質量%となっている。また、(C)粘着成分の含量は、(A)防錆成分と(B)柔軟・増粘成分の合計100質量部に対する質量部の値で示している。
【0070】
(防錆試験)
上記方法により調製した各防錆剤6mgを、スズメッキを施した銅端子を圧着したアルミ電線(0.75mm)の端子圧着部に塗布した。110℃程度に加熱した端子圧着部に、防錆剤の塊を乗せて溶融し、塗布した。各防錆剤を塗布した端子圧着部を、5%塩化ナトリウム水溶液(液温19℃)に1分浸漬した後、温度24℃、湿度22%RHで8時間乾燥させることを1サイクルとし、繰り返した。サイクルごとに表面のアルミ腐食の発生に伴い発生する水素ガスの有無をマイクロスコープを用いて表面を観察することで調べ、ガス発生が見られた場合に腐食していると判断した。最大20サイクルまで試験を行ない、水素ガスの発生が見られたときのサイクル数を示した。(B)成分および(C)成分を添加していない参考例と比較して防錆性能が向上したものを合格とした。すなわち、防錆成分にSt−AAを用いた場合には8サイクル以上、Chol−AAを用いた場合には12サイクル以上を合格とした。
【0071】
(粘度測定)
上記各防錆剤について、80℃における粘度を測定した。測定には、ジャスコインタナショナル社製の平行円盤型レオメータ「Rheoexplorar」を用いた。
【0072】
(曲げ試験)
厚さ0.5mmのアルミ板に防錆剤を厚さ約2μmで塗布した後に塗布部分が表面となるように半径5mmのマンドレルに沿わせてアルミ板を曲げ、曲げた部分において防錆剤の表面に割れが発生するか否かを顕微鏡観察にて調べた。割れがなかったものを「○」、割れが有ったものを「×」とした。
【0073】
【表1】

【0074】
各実施例および各参考例では、分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物を防錆成分として用いている。そのため、防錆性能に優れることが確認できた。
【0075】
参考例1では、防錆成分にSt−AAを用いている。これに対し、実施例1〜16では、防錆成分にSt−AAを用い、これに柔軟・増粘成分を添加している。防錆試験より、実施例1〜16は参考例1と同等以上の防錆性能を有することが確認できた。また、80℃における粘度が十分に高まったため、例えば車載環境下においても防錆剤が流出・揮発しにくいことが確認できた。さらに、曲げ試験において割れの発生が無く、柔軟性にも優れることが確認できた。そのため、例えば車載環境下において振動や冷熱サイクルが生じたときにも防錆剤表面に割れは発生しにくいと推察される。
【0076】
参考例2では、防錆成分にChol−AAを用いている。Chol−AAは80℃に加熱しても固体であった。また、参考例2では曲げ試験により割れが発生した。そのため、参考例2では柔軟性にやや劣っている。これに対し、実施例17〜28では、防錆成分にChol−AAを用い、これに柔軟・増粘成分を添加している。防錆試験より、実施例17〜28は参考例2と同等以上の防錆性能を有することが確認できた。また、80℃に加熱しても固体であるため、例えば車載環境下においても防錆剤が流出・揮発しにくいことが確認できた。さらに、80℃に加熱しても固体であるが、曲げ試験において割れの発生が無く、柔軟性にも優れることが確認できた。そのため、例えば車載環境下において振動や冷熱サイクルが生じたときにも防錆剤表面に割れは発生しにくいと推察される。
【0077】
以上より、実施例に係る防錆剤によれば、例えば車載環境下において、防錆剤の流出や振動・冷熱サイクルによる割れは生じにくいと推察されるため、長期間、優れた防錆性能を維持できるものと推察される。
【0078】
そして、実施例13〜16を比較すると、さらに粘着成分を添加することにより、防錆性能がさらに向上することも確認できた。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造中に疎水基とキレート基とを有する化合物と、
前記化合物の疎水基と相溶可能な、ワックスおよび/またはエチレン系共重合体とを含有することを特徴とする防錆剤。
【請求項2】
前記ワックスおよび/またはエチレン系共重合体の含有量は、5〜70質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の防錆剤。
【請求項3】
80℃における溶融粘度が1000mPa・s以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の防錆剤。
【請求項4】
さらに粘着付与剤を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防錆剤。
【請求項5】
前記粘着付与剤の含有量は、前記粘着付与剤を除く成分100質量部に対して1〜20質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の防錆剤。
【請求項6】
前記疎水基は、長鎖アルキル基および環状アルキル基から選択された1種または2種以上の基であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の防錆剤。
【請求項7】
前記キレート基は、ポリリン酸塩、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、アセト酢酸(エステル)、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、アミノアルコール、芳香族複素環式塩基類、フェノール類、オキシム類、シッフ塩基、テトラピロール類、イオウ化合物、合成大環状化合物、ホスホン酸、および、ヒドロキシエチリデンホスホン酸から選択された1種または2種以上のキレート配位子に由来するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の防錆剤。
【請求項8】
前記疎水基とキレート基とは、エステル結合、エーテル結合、チオエステル結合、チオエーテル結合、および、アミド結合から選択された1種または2種以上の結合を介して結合されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の防錆剤。
【請求項9】
前記化合物は中性化合物であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の防錆剤。
【請求項10】
金属表面塗布用であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の防錆剤。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の防錆剤を金属材の表面に塗布してなることを特徴とする表面処理金属材。
【請求項12】
前記金属材は、アルミニウム、鉄、銅、錫、ニッケル、金、クロム、亜鉛、アルミニウム合金、鉄合金、および、銅合金から選択された1種または2種以上の金属よりなることを特徴とする請求項11に記載の表面処理金属材。
【請求項13】
前記金属材は、表面を、錫、ニッケル、金、クロム、亜鉛、および、銅から選択された1種または2種以上の金属によりめっきされたものであることを特徴とする請求項11または12に記載の表面処理金属材。

【公開番号】特開2010−174340(P2010−174340A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19298(P2009−19298)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】