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防錆塗料組成物
説明

防錆塗料組成物

【課題】クロムや鉛などの有害物質を含まず、特定の塗料系に限定されない、防錆性能を有する塗料組成物を提供する。
【解決手段】フミン酸化合物を塗料に添加して、アルカリ性雰囲気のカソード側では溶解してpH緩衝して、塗膜剥離を防止し、酸性雰囲気のアノード側では不溶化して膜を形成して鉄の溶出を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロムや鉛などの重金属系防錆顔料を含まず、防錆性能を有する塗料組成物に関し、特に、フミン酸を含有する防錆塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板などの被塗物の表面においては、種々の役割を有する塗膜を形成することによって、防錆性、耐食性などを向上させることが多い。従来、防錆性を被塗物に付与するために、塗料組成物に、重金属を含む無機系の防錆顔料を添加していた。非常に優れた防錆性を有する防錆顔料として、例えば鉛化合物およびクロム化合物が挙げられる。しかしながらこれらの重金属系防錆顔料は、非常に強い毒性を有しており、環境に対して多大な負荷を与える。
【0003】
近年、環境保護や公害防止の観点から、このような鉛化合物またはクロム化合物などの重金属系防錆顔料を含有しない防錆塗料組成物が開発されている。古くから、タンニン酸やクエン酸などの多価酸が環境にも優しい防錆剤として知られ、特に、特開2009−40929号公報(特許文献1)には、タンニン酸や没食子酸などのポリフェノール誘導体、亜リン酸塩、ステンレス合金粉末及びアクリル変性複合エマルションを含有してなることを特徴とする錆転換用水系塗料が開示されている。しかしながら、これらの多価酸は、配合量を多くするとその水溶性の高さから、溶剤系塗料においては膜物性の低下、水溶性塗料においても膜物性に加えて塗料の貯蔵安定性の低下、電着塗料においては、塗料液の電導度が上昇しすぎることより、析出時のガス発生が促進され、平滑性が損なわれるなどの問題が多数発生するため、塗料中に多くを配合することはできない。従って、厳しい条件下での試験では防錆性能を満足できないことがある。
【0004】
また、WO 2005/089071(特許文献2)には、縮合リン酸カルシウムを含むことを特徴とし、鉛や、クロムなどの有害重金属元素、亜鉛や水可溶性のイオンを含まず、かつ防錆性が優れた無公害防錆顔料組成物が開示されている。しかしながら、カチオン系エマルションに対しては、中和酸によりカルシウムが溶け出し、塗料の安定性が損なわれる。また、無機系の防錆顔料であるために比重が高く、凝集、沈降が起き易い等の欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−40929号公報
【特許文献2】WO 2005/089071
【特許文献3】WO 2010/035641
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、クロムや鉛などの重金属系防錆顔料を含まず、特定の塗料系に限定されない、防錆性能を有する塗料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、フミン酸の添加によりいかなる形態の塗料組成物に対しても防錆性能を向上させることを見出し、本発明を完成させた。フミン酸が防錆効果を発揮する塗料系は、限定されることがなく、カチオン電着塗料、アニオン電着塗料、水性のエマルション塗料やジンクリッチペイントなど、溶剤系塗料が含まれる。塗料に含まれる、樹脂系、硬化剤、添加剤、溶剤についても限定されない。
【0008】
塗膜による防食の対象となる金属の腐食とは、水と酸素の存在下で起こる現象である。このような腐食は、全面的に腐食が進行する均一腐食と局部的に腐食が進行する局部腐食に分類される。自動車の鋼板の防食において、最も重要なことは、局部腐食を防止することである。
【0009】
局部腐食は、溶存酸素の部分的差異などが要因となり局部電池が形成され、電気化学的にアノードとなる部分に集中的に発生する。
【0010】
図1に示すように、局部電池のアノード側では次式(1)で表される酸化反応が生じて酸性雰囲気となり、カソード側では次式(2)で表される還元反応が生じてアルカリ性雰囲気となり、アノード側からカソード側に電子が移動することにより、アノード側が酸性雰囲気になって鉄の溶出が起こり、一方、カソード側がアルカリ性雰囲気になって塗膜の剥離が起こる。
【0011】
【数1】

【0012】
上記の局部腐食の防食のため、膜形成による環境遮断、pH緩衝剤による腐食環境制御などの様々な手法がある。カソード側で発生するアルカリ性のpH緩衝性としては没食子酸、タンニン酸が有効であると考えられるが、これらの酸は水溶性であるため、塗膜の耐水性を低下させる。発明者らは、中性、酸性で不溶であり、アルカリ性で溶解し、pH緩衝性があるフミン酸の特性に着目し、塗料へ添加する防錆剤として検討を行った。
【0013】
上記検討の結果、本発明者らは、塗膜中にフミン酸を配合することで、塗膜の剥離を抑制すると共に、後続の腐食反応を効果的に抑制できることを見出した。
フミン酸は、腐食が起こるまでは単に塗膜中に存在し、不溶性なので塗膜への悪影響は少ない。
その一方で、図2に示すように、腐食反応が起こり、カソード側がアルカリ性雰囲気になると、フミン酸は塗膜中から溶出し(A)、アルカリ性雰囲気を緩衝して塗膜の剥離を抑制する。腐食が進み、その部位のアノード側が酸性雰囲気になったときには、溶出していたフミン酸が析出し、鋼表面に不溶性の皮膜を形成して(B)、後続の腐食反応を効果的に抑制する。特にこの傾向は塗膜がアルカリ性であるとフミン酸が溶出しやすくなり、効率的にフミン酸の不溶性皮膜を形成しやすくなり、腐食反応に対して効果的に作用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フミン酸の添加により、クロムや鉛などの重金属系防錆顔料を含まず、特定の塗料系に限定されない、防錆性能を有する塗料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】塗膜形成された鋼板上での錆発生のメカニズムを説明する概略図。
【図2】塗膜形成された鋼板上での錆発生の際に、塗膜中に存在するフミン酸の溶出および析出により腐食反応を抑制するメカニズムを説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<フミン酸>
フミン酸は動植物に由来する天然物質であり、土に埋もれた動植物が土壌中の微生物の働きにより複雑に分解や重合を繰り返して生成した有機化合物(フミン質)を構成する一成分である。フミン質は、フミン酸、フルボ酸およびフムス質から構成され、この中で、アルカリに溶けて酸に溶けない物質がフミン酸である。フミン酸は、天然フミン酸と再生フミン酸に分類され、天然フミン酸は、土壌フミン酸と石炭系フミン酸に分けられる。
【0017】
天然フミン酸のうち土壌フミン酸は、土に埋もれた枯れ葉や倒木、動物の死骸などが土壌中の微生物による分解、合成、大気中の酸素による酸化分解を繰り返すことで生成した物質であり、石炭のような炭化過程は経ていない。土壌フミン酸はアルコール性の水酸基を比較的多く含有することが知られている。
【0018】
天然フミン酸のうち石炭系フミン酸は、太古の植物の堆積物が炭化する過程で生成する亜炭や褐炭などの若年炭類に含まれるものと、太古の植物の堆積物が石炭化した後、風化して生成されるものとがある。石炭系フミン酸は、土壌フミン酸と比較して、ベンゼン環を多く含み、芳香族性が高く、より高分子である。その反面、水酸基、カルボキシル基の含有量は少なくなる。
【0019】
再生フミン酸は、亜炭や褐炭などの若年炭類を酸化分解して得られるものである。特に、若年炭を粉砕し、酸化剤として硝酸を用いて酸化分解して生成したものは、副反応としてニトロ化が起こるためニトロフミン酸と呼ばれる。
【0020】
フミン酸は動植物が生物学的、化学的、微生物的に分解合成を経て得られるため、特定の単一物質ではなく、平均数分子量(液体クロマトグラフィーで測定)が10〜10の範囲にある複雑な構造を有する高分子化合物の混合物であり、おおよそ、炭素:50〜67%、水素:3〜6%、酸素:28〜45%、窒素:1.5〜3%および、それぞれ、1%未満の硫黄やリンを含む。
【0021】
フミン酸の基本骨格は、ベンゼン環、ナフタリン環、アントラセン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、インドール環などの芳香族環を含み、メチレン基や窒素、酸素、硫黄を含む一重または二重結合を有する基により架橋されて三次元網目構造をとっている。また、これらの芳香族環は水酸基やカルボキシル基のような酸性基を1または複数個有しているため、フミン酸はポリフェノール型カルボン酸に分類される。
【0022】
風乾した土壌試料をアルカリ水溶液(例えば、0.1MのNaOH水溶液)に浸漬し、室温にて十分浸透した後、試料を遠心分離する。遠心分離により得られた上澄み液をろ過し、得られたろ液に酸(例えば、HCl)を添加して、ろ液のpHを2以下に下げる。酸性化したろ液を遠心分離する。沈殿を分画して、透析を行った後、凍結乾燥して、フミン酸を得る。
【0023】
上記したいずれのフミン酸も、動植物から得られるものであるから、化学的、物理的性質は非常に似通っている。したがって、特に明確に区分する必要はなく、本発明においていずれのフミン酸も用いることができる。
また、本発明において、Na、K、Ca、Co、Bi、Ce、Zn、Mgのような金属イオンまたはNHで表されるアンモニウムイオンが結合したフミン酸塩を用いることができる。
さらに、本発明において、亜炭や褐炭などの若年炭類を硝酸などの酸化剤によって酸化分解して製造される再生フミン酸も用いることができる。
【0024】
本発明において、土壌フミン酸、石炭系フミン酸を含む天然フミン酸、ニトロフミン酸を含む再生フミン酸、これらのフミン酸の塩およびエスエルなどのフミン酸誘導体を用いることができる。これらのフミン酸およびフミン酸誘導体を総称して「フミン酸化合物」ということがある。
【0025】
本発明において、単位「部」とは、特に断りがない限り、「質量部」を意味する。
【0026】
本発明の防錆塗料組成物において、フミン酸化合物の添加量は、塗料組成物の固形分100部に対して、0.05〜8部、好ましくは、0.1〜8部、より好ましくは、0.2〜6部である。フミン酸化合物の添加量が0.05部未満であると防錆効果が小さく、8部を超えると耐水性が悪化するため、好ましくない。
【0027】
<塗料組成物>
本発明が対象とする、塗料組成物は、特に限定されず、カチオン電着塗料、アニオン電着塗料、電着塗料以外の水性塗料、粉体塗料、ジンクリッチペイント、有機溶剤系塗料などが含まれる。
【0028】
[電着塗料以外の水性塗料]
ここで示した電着塗料以外の水性塗料とは、主に防錆の機能を有する水溶性および/または水分散性のバインダーを用いた水性防錆用塗料である。代表的な塗料系として、2液ウレタン塗料、エポキシエステルディスパージョン塗料、エポキシ樹脂−ポリアミン塗料、アミノ基含有樹脂−マイケル硬化型塗料、アクリルエマルジョン塗料などの室温硬化型塗料;およびアクリル−メラミン塗料、酸エポキシ硬化型塗料などの熱硬化型塗料などがあげられ、その中でも本発明の塗料組成物としては、防錆性能が高いエポキシエステルディスパージョン塗料が好ましく、カチオン性基を有するエポキシ樹脂−ポリアミン塗料やアミノ基含有樹脂−マイケル硬化型塗料がより好ましい。
塗膜がアミノ基を含有すれば、アミノ基由来の塩基性官能基の存在により、塗膜中の環境がアルカリ性雰囲気になるため、腐食環境に曝された際(水分が塗膜中に侵入してきた時)にフミン酸化合物が溶出しやすくなり、より高い防錆性能が期待できる。
【0029】
低温硬化性にも優れているアミノ基含有樹脂−マイケル硬化型塗料が、本発明の塗料系として、さらに好ましい。アミノ基含有樹脂−マイケル硬化型塗料とは、分子内に1つ以上の第1アミン基および/または第2アミン基を有する水溶性または水分散型のアミノ基含有樹脂と、分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを含む、常温硬化型の水性塗料組成物であり、前記アミノ基含有樹脂と前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物との反応により硬化する。アミノ基含有樹脂−マイケル硬化型塗料は、主に防錆性能を目的とする塗料として用いられる。
【0030】
アミノ基含有樹脂−マイケル硬化型塗料におけるアミノ基含有樹脂として、アミノ基含有エポキシ樹脂が好ましい。アミノ基含有エポキシ樹脂は防錆性能が高く、フミン酸化合物が持つ防錆性能との相乗効果が期待できる。
【0031】
アミノ基含有エポキシ樹脂−マイケル硬化型塗料におけるアミノ基含有エポキシ樹脂のアミン当量は、100〜3000(g/mol)が好ましく、より好ましくは200〜2500(g/mol)、さらに好ましくは300〜2000(g/mol)である。この範囲であれば、水溶性または水分散性を有し、十分な硬化性が確保できる上に、塗膜中でのアミン由来の塩基性官能基の存在により、フミン酸化合物の溶出が起こりやすくなり、防錆性能の向上が期待できる。
【0032】
上記アミノ基含有エポキシ樹脂の数平均分子量は、好ましくは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算で500〜20000であり、さらに好ましくは1000〜3000である。この範囲であれば、防食等において優れた物性を保持することができる。
【0033】
上記アミノ基含有エポキシ樹脂のガラス転移温度は、所望の塗膜物性に応じて、任意の適切なガラス転移温度を採用し得る。好ましくは−50〜100℃、さらに好ましくは0〜50℃である。
【0034】
上記アミノ基含有エポキシ樹脂は、アミン基を酢酸、ギ酸、乳酸等の酸で中和することにより、水性化したものを用いることができる。水性化前のアミノ基含有エポキシ樹脂のアミン基に対する中和率は、好ましくは10〜70%である。
【0035】
上記アミノ基含有エポキシ樹脂としては、例えば、第1アミン基含有ポリアミンをエポキシ樹脂に付加する方法、ケチミン化したアミン基含有化合物をエポキシ樹脂に付加する方法が挙げられ、一部の官能基をエポキシ基、酸無水物基、イソシアネート基等の官能基を有する化合物を反応させてもよい。これらの方法の詳細はWO 2010/035641(特許文献3)に記載されている。
【0036】
上記エポキシ樹脂は、任意の適切なものが使用され得る。好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂であり、特に好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは180〜2000、さらに好ましくは400〜1500である。このような範囲であれば、耐水性、防食性、付着性に優れる塗膜を得ることができる。
【0037】
上記エポキシ樹脂は、エポキシ基と反応し得る活性水素含有化合物とエポキシ基との反応を利用して鎖延長して、分子量を増加させることや、変性させることができる。上記活性水素含有化合物としては、例えば、ダイマー酸、ジアミン、ポリエーテルポリオールなどの2官能性の化合物が挙げられる。
【0038】
上記第1アミン基含有ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記ケチミン化したアミン基含有化合物は、第1アミン基含有化合物とケトンとを反応させて得ることができる。上記第1アミン基含有化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の第1アミン基含有ポリアミン、アミノエチルエタノールアミン、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。上記ケトンとしては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0040】
上記アミノ基含有樹脂は、さらに、アミノ基含有アクリル樹脂を含んでもよい。アミノ基含有アクリル樹脂は、上記アミノ基含有エポキシ樹脂と同様にして得ることができる。
【0041】
アミノ基含有アクリル樹脂を得るために用いるアクリル樹脂は、好ましくはエポキシ基および/またはグリシジル基を有するラジカル重合性モノマーを含むモノマー組成物を共重合して得られるアクリル樹脂であり、ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、メチルグリシジルアクリレート、等が挙げられる。
【0042】
分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、25℃における粘度が3000m・Pas以下、より好ましくは50〜2200m・Pasである。この粘度の領域であれば、上記アミノ基含有エポキシ樹脂およびフミン酸化合物の添加時の攪拌を効率よく行うことができる。
【0043】
前記分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、具体的には、多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エステル(エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等)、エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体とカルボキシル基含有エチレン性不飽和基単量体との付加物(グリシジルアクリレートやグリシジルメタアクリレートとアクリル酸の反応物等)、多価アミンの重合性不飽和モノカルボン酸アミド化合物(エチレンジアミンジアクリレート等)等が挙げられる。
【0044】
前記アミノ基含有エポキシ樹脂の固形分としての含有量は、水性塗料組成物の全固形分量に対して、好ましくは5〜95重量%であり、より好ましくは10〜90重量%であり、さらに好ましくは20〜80重量%である。
【0045】
前記分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有量は、水性塗料組成物の全固形分量に対して、好ましくは2〜40重量%であり、さらに好ましくは5〜30重量%である。
【0046】
前記アミノ基含有エポキシ樹脂が有するアミン基の個数と前記分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が有する(メタ)アクリロイル基の個数の比(アミン基:アクリロイル基)は、好ましくは1:0.5〜1:1.5であり、さらに好ましくは1:0.75〜1:1.25である。
【0047】
[カチオン性電着塗料]
カチオン性電着塗料は、少なくともアミノ基含有エポキシ樹脂およびイソシアネート硬化剤を含有する塗料であり、導電可能な金属、例えば、鉄、鋼、アルミニウム、錫、亜鉛、およびこれらの金属を含む合金基材の上に直接または脱脂や表面処理上に塗装し、熱硬化することで塗膜を形成する。塗膜が、アミノ基などのカチオン性水和官能基由来の塩基性官能基を有することで、フミン酸化合物が溶出しやすくなることから、フミン酸化合物とのより高い防錆性能が期待できる。
【0048】
前記アミノ基含有エポキシ樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得るが、アミンで変性されたエポキシ樹脂が特に好ましい。
【0049】
前記アミノ基含有エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部を、アミノ基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、あるいは、一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環にアミノ基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
【0050】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例としては、ビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、エピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同社製、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同社製、エポキシ当量3000〜4000)が挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としてはエピコート807(同社製、エポキシ当量170)が挙げられる。
【0051】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適切な樹脂で変性してもよい。また、エポキシ樹脂は、エポキシ基とジオールまたはジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0052】
これらのエポキシ樹脂は、好ましくは開環後のアミン当量は100〜3000(g/mol)が好ましく、より好ましくは200〜2500(g/mol)、さらに好ましくは500〜2000(g/mol)である。さらに好ましくはそのうちの5〜50%を1級アミノ基が占めるようにして活性水素化合物で開環される。この範囲であれば、フミン酸化合物の防錆性能がより発揮されやすい。
【0053】
アミノ基を導入し得る活性水素化合物としては、例えば、1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩が挙げられる。具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数の種類を併用して用いてもよい。
【0054】
前記アミノ基含有エポキシ樹脂は、カチオン性電着塗料の固形分100質量部に対して、好ましくは10〜90重量部、より好ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは30〜60質量部の割合で含有される。
【0055】
カチオン電着塗料組成物は、ブロックイソシアネート硬化剤を含む。ブロックイソシアネートとしては、特に限定はなく、例えば、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックすることにより調製されるブロックイソシアネートが挙げられる。
【0056】
ポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとして、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0057】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
【0058】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
【0059】
ブロックイソシアネートは、上記ポリイソシアネートをブロック剤でブロック化することによって調製される。ここでブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得る化合物である。
【0060】
ブロックイソシアネートの調製に用いるブロック剤として、ラクタム系ブロック剤またはグリコールエーテル系ブロック剤を含むブロック剤を用いてもよい。
【0061】
ラクタム系ブロック剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムおよびβ−プロピオラクタムなどを挙げることができる。
【0062】
また、グリコールエーテル系ブロック剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル系ブロック剤;および、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル系ブロック剤などを挙げることができる。
【0063】
ブロック剤として、上記のラクタム系ブロック剤またはグリコールエーテル系ブロック剤以外にも、他の活性水素含有ブロック剤(以下、単に「活性水素含有ブロック剤」という場合もある)を併用することができる。これらの活性水素含有ブロック剤として、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノールおよびエチルフェノールなどのフェノール系ブロック剤;アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチルおよび乳酸エチル、2−エチルヘキサノールなどのアルコール系ブロック剤;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノールなどのメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミドなどの酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミドおよびマレイン酸イミドなどのイミド系ブロック剤;イミダゾール、2−エチルイミダゾールなどのイミダゾール系ブロック剤;ピラゾール系ブロック剤;及びトリアゾール系ブロック剤等を挙げることができる。
【0064】
ブロックイソシアネートの調製に使用されるこれらのブロック剤は、一般にポリイソシアネートのイソシアネート基と等当量で使用される。
【0065】
本発明の電着塗料組成物は、電着塗料組成物において通常用いられる顔料を含んでもよい。使用できる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラックおよびベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、およびリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料など、が挙げられる。電着塗料組成物中にこれらの顔料が含まれる場合の顔料の量は、電着塗料組成物の樹脂固形分に対して1〜30質量%であるのが好ましい。
【0066】
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性溶媒に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
【0067】
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性溶媒中に分散させて調製する。顔料分散樹脂として、4級アンモニウム基、3級スルホニウム基および1級アミン基から選択される少なくとも1種またはそれ以上を有する変性エポキシ樹脂などの、カチオン基を有する顔料分散樹脂を用いることができる。水性溶媒としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水などを用いる。一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂と顔料とを混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミルなどの通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得ることができる。
【0068】
カチオン電着塗料組成物は、アミノ基含有エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤および必要に応じた他の塗膜形成樹脂成分を中和酸により分散させた樹脂エマルション、そして必要に応じた顔料分散ペーストなどを加えて混合することによって調製することができる。
【0069】
カチオン電着塗料組成物の調製において、上記アミノ基含有エポキシ樹脂を、中和酸を用いて中和することによって分散性を向上させエマルションを形成させる。アミノ基含有エポキシ樹脂の中和に用いる中和酸として、ギ酸、酢酸、乳酸などの有機酸が用いられる。
【0070】
使用される中和酸の量は、アミノ基含有エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤および必要に応じた塗膜形成樹脂を含む樹脂固形分100gに対して、10〜35mg当量の範囲であるのが好ましい。
【0071】
アミノ基含有エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との混合比(固形分重量基準)は、90/10〜40/60、好ましくは85/15〜45/55、より好ましくは80/20〜50/50(アミノ基含有エポキシ樹脂/ブロックイソシアネート硬化剤)である。
【0072】
[有機溶剤系塗料]
ここで示した有機溶剤系塗料とは、主に防錆の機能を有する溶剤系防錆用塗料であり、塗料に含有される溶媒中に占める有機溶剤の量が80質量%を超えるものである。有機溶剤としては、特に限定されることはないが、トルエン、キシレン、アノンなどの非極性溶媒;ブチルセルソルブ、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンなどの極性溶媒を用いることができる。代表的な塗料として、エポキシ樹脂塗料、塩化ゴム塗料、アルキッド樹脂塗料、フェノール樹脂塗料、合成ゴム塗料などがあげられる。
【0073】
本発明の塗料組成物は、上記フミン酸化合物以外のものは、それら単独で塗料として成立するものである。本発明の塗料組成物は、通常、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などのバインダー成分を含んでいる。
【0074】
本発明の塗料組成物は、上記バインダー成分が有する官能基に応じて、硬化剤を適量含んでいてもよい。このような硬化剤としては、メラミン、ブロック化されていてもよいポリイソシアネート、多価カルボン酸、ポリエポキシ化合物などを挙げることができる。さらに、必要に応じて着色顔料や体質顔料などの顔料成分、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤などの各種添加剤成分を所定量含むことができる。また、フミン酸化合物以外の防錆剤として、タンニン酸や没食子酸などのポリフェノール誘導体や、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム等の重金属を含まない防錆顔料等を併用することができる。
【0075】
得られた塗料組成物は刷毛、スプレー、電気泳動、ローラー、コーターなどの通常の方法により、種々の基材に対して塗布された後、所定の乾燥条件で塗料を乾燥または硬化させることにより、約5〜200μmの膜厚の塗膜を得ることができる。
【0076】
<フミン酸化合物の配合方法>
本発明においては、フミン酸化合物を防錆剤として塗料の成分として用いる場合、あらかじめフミン酸化合物のみを分散したフミン酸化合物分散ペーストを作製し、それを塗料に添加してもよいし、他の顔料と同時にフミン酸化合物を分散した分散ペーストを塗料に添加してもよい。
また、フミン酸化合物は、アルカリ性条件下では、水に溶解するので、アニオン電着塗料やアルカリ性の水性塗料などアニオン系の塗料では、フミン酸化合物をトリエタノールアミン水などのアルカリ水に溶かして添加することもできる。
【0077】
フミン酸化合物分散ペーストは、フミン酸化合物を分散樹脂と共に水性溶媒中に分散させて調製する。フミン酸化合物分散ペーストを製造するための分散樹脂は、目的の形態の塗料に用いる顔料分散樹脂に適宜合わせることができ、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂など樹脂系を使用することができ、特に制限されるものではない。例えば、カチオン電着塗料用の分散ペーストであれば、分散樹脂として、4級アンモニウム基、3級スルホニウム基および1級アミン基から選択される少なくとも1種またはそれ以上を有する変性エポキシ樹脂などの、カチオン基を有する分散樹脂を用いることができる。
【0078】
分散樹脂は、他にも市販の分散剤を使用することができる。例えば、水性塗料用であれば、ビックケミー社製のDisperbyk 180、Diperbyk 184、Disperbyk 190、EFKA社製のEFKAPOLYMER4550、アビシア社製のソルスパース27000、ソルスパース41000、ソルスパース53095等をあげることができる。溶剤系塗料であれば、ビックケミー社製のディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、アビシア社製のソルスパース24000、ソルスパース28000などをあげることができる。
【0079】
一般に、分散樹脂は、フミン酸化合物100部に対して固形分比20〜100部の量で用いる。分散樹脂とフミン酸化合物とを混合した後、その混合物中のフミン酸化合物の粒径が20μm以下、好ましくは10μmの粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミルなどの通常の分散装置を用いて分散させて、防錆剤分散ペーストを得ることができる。
【0080】
<被塗物>
本発明の防錆塗料組成物の被塗物は金属表面に直接塗装しても表面処理の上に塗装しても構わない。金属表面としては鉄、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム、アルミニウム合金、トタン鋼板、ブリキ鋼板、ボンデ鋼板、ガルバリウム鋼板、黒皮鋼板、亜鉛アルミ鋼板、亜鉛合金およびステンレス鋼などがある。表面処理としては、リン酸亜鉛処理、リン酸鉄処理、リン酸カルシウム処理、ジルコニウム処理などがある。
【実施例】
【0081】
<分散樹脂A>
製造例1:分散樹脂(1N型)の製造
ビスフェノールA型エポキシ樹脂385部、ビスフェノールA120部、オクチル酸95部、2−エチル−4−メチルイミダゾール1%溶液1部を撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えたセパラブルフラスコに加え、窒素雰囲気下160〜170℃で1時間反応させ、ついで120℃まで冷却後、2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液(固形分95%)198部を加えた。反応混合物を120〜130℃で1時間保持した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル157部を加えた。そして85〜95℃に冷却して均一化させた。つぎにジエチレントリアミンジケチミンのMIBK溶液(固形分73%)277部を加え120℃で1時間撹拌しエチレングリコールモノn−ブチルエーテル13部を添加し、アミン化樹脂を製造した。ついで18部の脱イオン交換水とギ酸8部を仕込み上記アミン化樹脂を混合し15分撹拌し、脱イオン交換水200部を混合して、分散樹脂の溶液(固形分25%)を得た。
【0082】
<分散ペースト>
製造例2:フミン酸分散ペーストの製造
上記の分散樹脂A(1N型)100部に対し、脱イオン交換水15部、土壌フミン酸(和光純薬工業株式会社製、実施例中ではフミン酸と略す。)50部を、サンドグラインドミルで分散し、グラインドゲージで測定した粒度が10μm以下になるまで粉砕し、フミン酸分散ペーストを得た。
【0083】
製造例3:ニトロフミン酸分散ペーストの製造
フミン酸に代えて、ニトロフミン酸(東京化成工業株式会社製)を用いたこと以外は製造例2と同様の分散を行うことで、ニトロフミン酸分散ペーストを得た。
【0084】
製造例4:リン酸カルシウム分散ペーストの製造
フミン酸に代えて、オルトリン酸カルシウム(添川理化学株式会社製)を用いたこと以外は製造例2と同様の分散を行うことで、リン酸カルシウム分散ペーストを得た。
【0085】
製造例5:タンニン酸分散ペーストの製造
比較物質のタンニン酸(和光純薬工業株式会社製)については、水溶性であるため、サンドグラインドでの分散の必要がない。したがって、分散樹脂A100部に対して脱イオン交換水15部、タンニン酸50部をディスパーにて混合して、タンニン酸分散ペーストを得た。
【0086】
製造例6:没食子酸分散ペーストの製造
比較物質の没食子酸(和光純薬工業株式会社製)については、水溶性であるため、サンドグラインドでの分散の必要がない。したがって、分散樹脂A100部に対して脱イオン交換水15部、没食子酸50部をディスパーにて混合し、没食子酸分散ペーストを得た。
【0087】
<塗料組成物>
A.水性塗料
比較例A1:アミノ基含有エポキシ樹脂1の作製
撹拌機、冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応槽に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂702部、ビスフェノールA269部、ダイマー酸108部、MIBK190部を仕込み、ベンジルジメチルアミン1部存在下、エポキシ当量1270になるまで117℃で反応させた。その後、アミノエチルエタノールアミンのケチミン化合物(固形分73質量%)255部を加え、117℃で1時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分75%になるまで希釈し、アミン当量1184のアミノ基含有エポキシ樹脂1を得た。
【0088】
得られたアミノ基含有エポキシ樹脂1に、酢酸を加え、中和率20.0%(樹脂のアミン基に対する中和率)となるようにし、イオン交換水を加え希釈した。その後、固形分が40質量%となるまで減圧下でMIBK及び水の混合物を除去し、アミノ基含有エポキシ樹脂エマルション1を調製した。
【0089】
サンドグラインドミルに、分散用樹脂Disperbyk190(ビックケミー社製)を35部、炭酸カルシウム170部、酸化チタン195部、脱イオン交換水100部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分60%)。
【0090】
アミノ基含有エポキシ樹脂として、上記のごとく得られたエマルション1を2960部、ディスパーで撹拌しながら、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル118部を加えた後、さらに、ディスパー撹拌しながら、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製 AT−20E)392部、上記のごとく得られた顔料分散ペースト500部を加え、10分間撹拌し、水性塗料1を得た。
【0091】
比較例A2:
撹拌機、冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応槽に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂742部、ビスフェノールA336部、MIBK190部を仕込み、ベンジルジメチルアミン1部存在下、エポキシ当量1270になるまで170℃で反応させた。その後、ジエチレントリアミンのケチミン化合物(固形分73質量%)350部を加え、1170℃で1時間反応させた。その後、イオン交換水27部、ネオデカン酸グリシジルエステル(カージュラE10一P)188部を仕込み、1000Cで2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分75%になるまで希釈し、アミン当量947のアミノ基含有エポキシ樹脂2を得た。
【0092】
得られたアミノ基含有エポキシ樹脂をエマルション1と同様の方法でエマルション2を作製した。そして、上記のごとく得られたエマルション2を2960部、ディスパーで撹拌しながら、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル118部を加えた後、さらに、ディスパー撹拌しながら、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製 AT−20E)468部、上記のごとく得られた顔料分散ペースト500部を加え、10分間撹拌し、水性塗料2を得た。
【0093】
実施例A1
比較例A1で得られた水性塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が0.1%になるように添加して、水性塗料3を得た。
【0094】
実施例A2
比較例A1で得られた水性塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が0.3%になるように添加して、水性塗料4を得た。
【0095】
実施例A3
比較例A1で得られた水性塗料1に、製造例3で得られたニトロフミン酸分散ペーストを塗料中のニトロフミン酸の固形分比が0.3%になるように添加して、水性塗料5を得た。
【0096】
実施例A4
比較例A1で得られた水性塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が3.0%になるように添加して、水性塗料6を得た。
【0097】
実施例A5
比較例A1で得られた水性塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が6.0%になるように添加して、水性塗料7を得た。
【0098】
比較例A3
比較例A1で得られた水性塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が12.0%になるように添加して、水性塗料8を得た。
【0099】
比較例A4
比較例A1で得られた水性塗料1に、製造例5で得られたタンニン酸分散ペーストを塗料中のタンニン酸の固形分比が0.3%になるように添加して、水性塗料9を得た。
【0100】
比較例A5
比較例A1で得られた水性塗料1に、製造例6で得られた没食子酸分散ペーストを塗料中の没食子酸の固形分比が0.3%になるように添加して、水性塗料10を得た。
【0101】
実施例A6
比較例A2で得られた水性塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が3.0%になるように添加して、水性塗料11を得た。
【0102】
B.カチオン電着塗料の製造
比較例B1
反応容器にエピコート828(油化シェルエポキシ(株);ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量188)752.0部、メタノール77.0部、MIBK200.3部およびジラウリン酸ジブチルスズ0.3部を貯え室温で撹拌し均一溶液とし、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート80/20(重量比)混合物174.2部を50分間かけて滴下すると発熱により系内の温度が70℃に達した。IRスペクトルはイソシアネートに基づく2280cm−1の吸収の消失およびウレタンのカルボニル基に基づく1730cm−1の吸収を示した。
【0103】
N,N−ジメチルベンジルアミン2.7部を加えた後、系内を120℃まで昇温し、副生するメタノールをデカンターを用いて留去させながらエポキシ当量が463に達するまで反応を行った。IRスペクトルはウレタンのカルボニル基に基づく1730cm−1の吸収の消失およびオキサゾリドン環のカルボニル基に基づく1750cm−1の吸収の出現を示した。
【0104】
p−ノニルフェノール220.0部およびMIBK83.3部を加え125℃の温度を保持しながらエポキシ当量が1146に達するまで反応を行った。系内の温度が110℃になるまで冷却し、アミノエチルエタノールアミンのケチミン(固形分79質量%)47.2部、ジエタノールアミン42.0部、N−メチルエタノールアミン30.0部およびMIBK17.3部を加えた後、昇温し、120℃で2時間反応させた。
【0105】
こうして、アミノ基含有エポキシ樹脂(固形分80.0%、アミン当量1040g/mol)を得た。
【0106】
クルードのジフェニルメタンジイソシアネート1330部およびMIBK585.6部を反応容器に仕込み、これを85〜95℃まで加熱した後、ジエチレングリコールモノブチルエーテル486部を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、一時間保温した。その後MIBK194.8部を投入し50℃まで冷却し、プロピレングリコール532部を滴下した。滴下完了後60℃に加温し、一時間保温した。ジブチル錫ラウレートを0.4部投入した後昇温し、70℃にて1時間保温した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、ブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0107】
サンドグラインドミルに、製造例1で得られた顔料分散用樹脂を106.9部、カーボンブラック1.6部、カオリン40部、二酸化チタン58.4部、脱イオン交換水13部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分60%)。
【0108】
上記アミノ基含有エポキシ樹脂と上記ブロックイソシアネート硬化剤を固形分比で70/30で均一になるよう混合した。さらに2−エチルヘキシルグリコールを樹脂固形分に対し3質量%添加したものに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が27になるよう氷酢酸で中和し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のバインダー樹脂のエマルションを得た。
【0109】
このエマルション1730部および上記顔料分散ペースト295部と、脱イオン交換水1970部およびジブチル錫オキサイド10部とを混合して、固形分20%のカチオン電着塗料組成物(カチオン電着塗料1)を得た。
【0110】
実施例B1
比較例B1で得られたカチオン電着塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が0.1%になるように添加して、カチオン電着塗料2を得た。
【0111】
実施例B2
比較例B1で得られたカチオン電着塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が0.3%になるように添加して、カチオン電着塗料3を得た。
【0112】
実施例B3
比較例B1で得られたカチオン電着塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が3.0%になるように添加して、カチオン電着塗料4を得た。
【0113】
比較例B2
比較例B1で得られたカチオン電着塗料1に、製造例2で得られたフミン酸分散ペーストを塗料中のフミン酸の固形分比が10.0%になるように添加して、カチオン電着塗料5を得た。
【0114】
比較例B3
比較例B1で得られたカチオン電着塗料1に、製造例4で得られたリン酸カルシウム分散ペーストを塗料中のリン酸カルシウムの固形分比が3.0%になるように添加して、カチオン電着塗料6を得た。
【0115】
C.アニオン電着塗料の製造
比較例C1
撹拌装置、冷却管、窒素導入管、温度調整機に連結した温度計を整備した2Lの反応容器にイソプロピルアルコール700部を仕込み、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。反応容器に、メタクリル酸メチル210部、アクリル酸ブチル196部、スチレン140部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル84部、アクリル酸70部、アゾビスジメチルバレロニトリル7部の混合溶液を3時間かけて等速滴下し、その後、2時間80℃で保持することにより、固形分50%、酸価78mgKOH/g、水酸基価52mgKOH/g、重量平均分子量28000の顔料分散用アクリル共重合体樹脂(アニオン性顔料分散用樹脂)を得た。
【0116】
上記のアニオン性顔料分散用樹脂100部、酸化チタン(石原産業社製、タイペークCR−95)120部を加え、さらにトリエチルアミン5部、脱イオン交換水115部を加えて、固形分50%のアニオン性顔料分散ペーストを得た。
【0117】
撹拌装置、冷却管、窒素導入管、温度調整機に連結した温度計を装備した2Lの反応容器にイソプロピルアルコール700部を仕込み、窒素雰囲気下で80℃に加熱し、メタクリル酸メチル322部、アクリル酸ブチル140部、スチレン105部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル84部、アクリル酸49部、アゾビスジメチルバレロニトリル7部の混合溶液を3時間で等速滴下し、その後、2時間80℃で保持することにより、酸価55mgKOH/g、水酸基価52mgKOH/g、重量平均分子量30000のアクリル共重合体樹脂を得た。
【0118】
上記のアクリル共重合体樹脂313部、硬化剤としてメラミン樹脂であるサイメル285−100(サイテック社製)86部、トリエチルアミン11部を混合撹拌しながら、上記のアニオン性顔料分散ペーストに対して、含まれる顔料に対して2質量%となる量のヘプタン酸を加えたもの255部を加えて混合撹拌し、さらに脱イオン交換水3035部を加え、さらに、アニオン性電着塗料組成物を調製した。得られたアニオン電着塗料組成物の固形分は10%であった。これをアニオン電着塗料1とする。
【0119】
実施例C1
得られたアニオン電着塗料組成物1に、トリエタノールアミンで中和し、pHを8〜9に調整したフミン酸1%水溶液を1.0%添加して、塗料中のフミン酸の固形分比が0.1%となるアニオン電着塗料2を得た。
【0120】
実施例C2
得られたアニオン電着塗料組成物1に、トリエタノールアミンで中和し、pHを8〜9に調整したフミン酸1%水溶液を2.0%添加して、塗料中のフミン酸の固形分比が0.2%となるアニオン電着塗料3を得た。
【0121】
実施例C3
得られたアニオン電着塗料組成物1に、トリエタノールアミンで中和し、pHを8〜9に調整したフミン酸1%水溶液を5.0%添加して、塗料中のフミン酸の固形分比が0.5%となるアニオン電着塗料4を得た。
【0122】
比較例C2
得られたアニオン電着塗料組成物1に、トリエタノールアミンで中和し、pHを8〜9に調整したタンニン酸1%水溶液を5.0%添加して、塗料中のタンニン酸の固形分比が0.5%となるアニオン電着塗料5を得た。
【0123】
D.有機溶剤系塗料の製造
[主剤1〜4の作製]
アクリルポリオール樹脂(DIC社製 ACRYDIC A−871、分子量8,000、水酸基価29±3%)、フミン酸、チタン顔料(石原産業社製 CR−95)、消泡剤(ビックケミー社製 BYK063)、ダレ止め剤(楠本化成社製 ディスパロン 6810−20X)、分散剤(ビックケミー社製 R−95)および溶剤としてミネラルスピリットを、表1に示す配合量にて混合し、サンドグラインドミルで分散し、粒度10μm以下まで粉砕し、主剤1〜4を得た。
【0124】
【表1】

【0125】
[硬化剤の作製]
イソシアネート樹脂(旭化成社製 デュラートTSA100、分子量700±300、NCO含有量21%)6.2部、および溶剤としてミネラルスピリット3.8部を混合して、硬化剤を得た。
【0126】
比較例D1
90部の主剤1および10部の硬化剤を混合して、OH基/NCO基=1/1の2液型防錆塗料(有機溶剤系塗料1)を得た。
【0127】
実施例D1
主剤1に代えて、主剤2を用いた以外は、比較例D1と同様にして有機溶剤系塗料2を得た。
【0128】
実施例D2
主剤1に代えて、主剤3を用いた以外は、比較例D1と同様にして有機溶剤系塗料3を得た。
【0129】
実施例D3
主剤1に代えて、主剤4を用いた以外は、比較例D1と同様にして有機溶剤系塗料4を得た。
【0130】
<塗膜の物性評価方法>
以下に塗膜の物性評価方法を記載する。
A.耐水性(水性塗料)
作成した塗板の未塗装部分をシールし、23℃の純水(pH7)に浸漬、120時間後の外観観察を行ない、下記評価基準により評価を行う。
<評価基準>
○:異常なし
×:はがれ、膨れあり
【0131】
B.平滑性(カチオン、アニオン電着塗料)
表面粗さ計(E−30、株式会社東京精密)を用いて、塗膜の表面粗さを測定し、中心線平均表面粗さ(Ra)を算出し、下記基準により評価を行う。
<評価基準>
○:Raが0.35μm未満
×:Raが0.35μm以上
【0132】
C.塩水噴霧試験(SST)−アニオン電着塗料および水性塗料
鋼板基材上に形成した硬化塗膜に、基材に達するようにナイフでクロスカット傷を入れ、塩水噴霧試験(JIS Z 2371)を120時間行う。その後、クロスカット部からの錆およびフクレの発生について、下記評価基準により評価を行う。
<評価基準>
◎:錆またはフクレの最大幅が、クロスカット部より5mm未満(片側)
○:錆またはフクレの最大幅が、クロスカット部より5mm以上10mm未満(片側)
△:錆またはフクレの最大幅が、クロスカット部より10mm以上15mm未満(片側)
×:錆またはフクレの最大幅が、クロスカット部より15mm以上(片側)
【0133】
D.サイクル腐食試験(CCT)−カチオン電着塗料
鋼板基材上に形成した硬化塗膜に、基材に達するようにナイフでクロスカット傷を入れ、JASO M609−941「自動車用材料腐食試験方法」を100サイクル行う。その後、クロスカット部からの錆やフクレの発生について、下記評価基準により評価を行う。
<評価基準>
◎:錆またはフクレの最大幅がカット部より10mm未満(両側)
○:錆またはフクレの最大幅がカット部より10mm以上15mm未満(両側)
×:錆またはフクレの最大幅がカット部より15mm以上(両側)
【0134】
E.サイクル腐食試験(CCT)(有機溶剤系塗料)
鋼板基材上に形成した硬化塗膜に、基材に達するようにナイフでクロスカット傷を入れ、試験片を得た。JIS K5674 7.12.2の試験方法に準じて試験を行い、フクレ幅および錆び幅を測定し、下記評価基準により評価を行う。ただし、複合サイクル試験は36サイクルとした。
<評価基準>
◎:錆フクレ幅が0.5mm未満
○:錆フクレ幅が0.5mm以上かつ1.0mm未満
△:錆フクレ幅が1.0mm以上かつ2.0mm未満
×:錆フクレ幅が2.0mm以上
【0135】
F.塗料の貯蔵安定性
作成した塗料1Lを40℃、1週間、攪拌しながら経時させた後、380メッシュの濾布でろ過、濾過残渣を測定し、下記評価により評価を行う。
<評価基準>
○ :1.0g未満
× :1.0g以上
【0136】
<塗膜の物性評価>
A.水性塗料の塗膜
実施例A1〜A6および比較例A1〜A5で得られた水性塗料1〜11を25℃環境下で、サンドブラスト板に200g/mとなるよう、刷毛で塗布し、20℃で7日間乾燥させることにより、試験片を得た。得られた塗膜の耐水性およびSSTを評価した。結果を表2に示す。
【0137】
【表2】

【0138】
タンニン酸は水溶性が高いため、性能を上げるために配合量を増やすと、耐水性が悪化し、SST性能もあまり高くない。一方、フミン酸は、酸性水溶液、中性水溶液に対して不溶であるため、フミン酸はタンニン酸と比較して、耐水性を維持でき、かつ、少量でSST性能の向上が可能である。
【0139】
B.カチオン電着塗料の塗膜
冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して脱脂処理し、サーフファインGL−1(日本ペイント社製)で表面調整し、次いでリン酸亜鉛化成処理液であるサーフダインSD−5000(日本ペイント社製、リン酸亜鉛化成処理液)中に40℃で2分間浸漬して、リン酸亜鉛化成処理を行った。
【0140】
得られた鋼板を、実施例B1〜B3および比較例B1〜B3で得られたカチオン電着塗料1〜6中に浸漬して、浴温30℃で、硬化電着塗膜の膜厚が15μmとなるように設定した塗装電圧で電着塗装して、被塗物上に未硬化の電着塗膜を析出させた。次いで水洗した後、160℃で20分間焼き付け、硬化電着塗膜を得た。得られた塗膜の平滑性およびCCTを評価した。結果を表3に示す。
【0141】
【表3】

【0142】
比較例B2では平滑性が低下しているが、これは分散樹脂の増加により電導度が上がったためと考えられる。さらに、この平滑性の低下が、CCT性能を低下させたと考えている。比較例B3のリン酸カルシウムは一定のCCT性能は発現するものの、同量を添加したフミン酸より劣り、また、平滑性と安定性が非常に悪いことが確認できた。
【0143】
C.アニオン電着塗料の塗膜
冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD)を、サーフクリーナーEC90(日本ペイント社製)中に50℃で2分間浸漬して脱脂処理した。得られた鋼板を、実施例C1〜C3および比較例C1〜C2で得られたアニオン電着塗料1〜5に、浸漬して、浴温30℃で、硬化電着塗膜の膜厚が15μmとなるように設定した塗装電圧で電着塗装して、被塗物上に未硬化の電着塗膜を析出させた。次いで水洗した後、180℃で30分間焼き付け、硬化電着塗膜を得た。得られた塗膜の平滑性およびSSTを評価した。結果を表4に示す。
【0144】
【表4】

【0145】
タンニン酸はフミン酸よりも防錆性能を上げるために、配合量を多くすることが必要であるが、フミン酸に比較して防錆性能は悪い。また、平滑性との両立が困難である。一方、フミン酸はタンニン酸と比較して、平滑性を維持でき、かつ、少量でSST性能の向上が可能である。
【0146】
E.有機溶剤系塗料の塗膜
磨き鋼板SPCC−SBを夏季3か月間(6月〜8月)屋外曝露させ、表面に錆の発生した鋼板(錆板)を得た。
錆板をウエス拭き処理した後、当該錆板に、実施例D1〜D3、比較例D1の2液型有機溶剤系塗料を刷毛塗りにて塗装し、試験片を得た。なお、塗装回数は2回であり、1回当りの塗布量は130g/m、塗り重ね乾燥時間は3時間とした。
得られた試験片を23℃、50%RHに調整した恒温恒湿槽中で7日間乾燥させた後、CCTを評価した。結果を表5に示す。
【0147】
【表5】

【0148】
フミン酸の添加によりCCT性能が向上することが確認できた。
【0149】
以上の実施例から、フミン酸化合物を塗料の固形分100質量部に対して、0.01〜8.0質量部のフミン酸化合物を添加することで、実施例に示したいずれの形態の塗料に対して、今まで通常用いられていた防錆剤と比較して、防錆性能および耐水性、安定性、平滑性などの諸性能が向上することが分かった。この防錆性能の向上は、フミン酸化合物の独自の特性により、アルカリ性雰囲気のカソード側では溶解してpH緩衝して塗膜剥離を防止し、酸性雰囲気のアノード側では不溶化して膜を形成して鉄の溶出を防止することで達成できたと考えている。特に、アミノ基含有樹脂を用いた塗料系では、塗膜中でのアミノ基の作用によりフミン酸化合物が溶出し、塗膜に効果的に析出しやすくなったため、防錆性能もより良い傾向であった。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、フミン酸化合物の添加により、カチオン電着塗料、アニオン電着塗料、水性のエマルション塗料、粉体塗料、ジンクリッチペイント、有機溶剤系塗料を含むいかなる形態の塗料組成物に対しても防錆性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0151】
A・・・溶出したフミン酸化合物
B・・・析出したフミン酸化合物により形成された膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料および、前記塗料の固形分100質量部に対して、0.05〜8.0質量部のフミン酸化合物を含有する防錆塗料組成物。
【請求項2】
前記フミン酸化合物が、土壌フミン酸および石炭系フミン酸よりなる群から選択される天然フミン酸またはその塩である、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
【請求項3】
前記フミン酸化合物が、ニトロフミン酸である再生フミン酸またはその塩である、請求項1に記載の防錆塗料組成物。
【請求項4】
前記塗料が、アミノ基含有樹脂を含む水性塗料である、請求項1〜3いずれかに記載の防錆塗料組成物。
【請求項5】
前記アミノ基含有樹脂がアミノ基含有エポキシ樹脂である、請求項4に記載の防錆塗料組成物。
【請求項6】
前記アミノ基含有エポキシ樹脂のアミン当量が100〜3000(g/mol)である、請求項5に記載の防錆塗料組成物。
【請求項7】
前記塗料が、さらに、分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含み、かつ、前記塗料が常温硬化型の水性塗料である、請求項5または6に記載の防錆塗料組成物。
【請求項8】
前記アミノ基含有エポキシ樹脂の固形分としての含有量が、塗料組成物の全固形分量に対して、10〜90重量%であり、前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の含有量が、塗料組成物の全固形分量に対して、2〜40重量%である、請求項7に記載の防錆塗料組成物。
【請求項9】
前記塗料が、さらに、ブロックイソシアネート硬化剤を含み、かつ、前記塗料がカチオン性電着塗料である、請求項5または6に記載の防錆塗料組成物。
【請求項10】
前記アミノ基含有エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分質量比が、90/10〜50/50である、請求項9に記載の防錆塗料組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の防錆塗料組成物を塗布することによって得られる塗膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−64069(P2013−64069A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203506(P2011−203506)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】