説明

防錆板紙及び防錆段ボール

【課題】
硫化水素ガスの吸収力と吸収速度に優れ、かつコルゲーター貼合特性も有する板紙を、抄紙機オフマシン塗工ではなく、抄紙機オンマシン塗工で作成する。
【解決手段】
板紙には、表層と中層と裏層の少なくとも3層抄き以上の板紙において、表層には粉末活性炭及び/又は表層に酸化亜鉛系金属酸化物を対パルプ比0.1〜2%内添配合し、中層を構成する少なくとも1層以上に粉末活性炭を対パルプ比3〜35%内添配合し、表層の表面にカレンダーにてポリビニルアルコールを塗工することで解決する。必要に応じて、オンマシン塗工するポリビニルアルコールに硫酸塩系化合物を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅及び/又は銀等の金属部品及び家電部品等の包装に使用する防錆板紙及び防錆段ボールに関するものである。
更に詳しくは、本発明は、抄紙機にてパルプに硫化水素吸収剤を内添配合した防錆板紙及び防錆段ボールを製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅及び/又は銀等の金属部品及び家電部品への錆発生については、段ボール原紙中に存在する還元性硫黄が水と反応し、硫化水素となり、この硫化水素が、銀等の金属表面と反応して金属の硫化物となり、錆が発生すると考えられている。
【0003】
銅及び/又は銀等の金属は、家電製品の接続端子等に多く使用されているが、錆(硫化物)が発生すると、その発生箇所の電気抵抗等が変化(増加)し、家電接続端子として、致命的な不良発生になることがあり、このような錆が発生しない機能を有する防錆板紙と防錆段ボールが銅及び/又は銀等の金属部品及び家電部品の包装に使用されている。
【0004】
このような機能を有する防錆板紙としては、ライナーの原料であるパルプに還元性硫黄(硫化水素の発生原因)をほとんど含まない特別な製造方法で作成したパルプを使用した板紙がある。
しかしながら、還元性硫黄をほとんど含有しないパルプのみを使用している板紙は、現時点での生産量は小である。
また、ライナーの原料であるパルプには、還元性硫黄含有の一般のパルプ(古紙パルプも含む)を使用して通常のライナーを製造した後に、そのライナーの抄紙工程後のオフの塗工機にて、硫化水素を吸収する薬剤を塗工した板紙がある。
【0005】
また、抄紙機にて、3層抄き以上の多層抄きの紙の中層に、パルプに硫化水素吸収剤を内添配合する技術として、汚染ガス除去紙の技術として、特許文献1がある。
しかしながら、特許文献1は、段ボール原紙である板紙の技術でないため、硫化水素吸収剤の配合量が多すぎて、原紙強度が低下する問題とその表層に硫化水素吸収剤を配合しないため、原紙表層付近の硫化水素を吸収する時間が若干長くなる問題があった。
【0006】
近年の傾向としては、抄紙機以外の塗工機にて、通常のライナーに硫化水素を吸収する薬剤を塗工した板紙(オフマシン塗工方式)が、ライナーの原料であるパルプに特別な製造方法で作成したパルプ(還元性硫黄が存在しないもの)に限定する必要がないため、広く普及している。
オフマシン塗工方式は、その原紙表面に硫化水素吸収剤を含んだ塗料を塗工するため、3層抄き以上の板紙で、中層のみに硫化水素吸収剤を配合したもの(特許文献1等)より、原紙表層付近の硫化水素の吸収は速くなる。
【0007】
硫化水素を吸収する薬剤を抄紙機以外の塗工機にて、オフマシン塗工する従来技術としては、特許文献2、特許文献3がある。同文献は抄紙機にて一旦巻取りにした板紙に、別装置にて硫化水素吸収剤を塗工乾燥するため、抄紙機にてパルプ層に硫化水素吸収剤を内添する方式に比較して、製造工程が2工程になる問題と、硫化水素吸収剤を塗工した塗工層が、段ボールを製造するコルゲーターにて、熱板及び熱ロールに付着する問題、そして、作成した段ボール(梱包前)を倉庫に長時間積重ねて保管すると、塗工面同士がブロッキングする問題があった。
【0008】
つまり、オフマシン塗工する塗液(水溶液)には、硫化水素吸収剤を水分散するための分散剤と硫化水素吸収剤を板紙表面に定着するためのバインダーを配合するが、その分散剤とバインダーがコルゲーターでの加熱(熱板温度=約180℃)にて軟化し、熱板及び熱ロールに付着する問題が有った。
【0009】
【特許文献1】特開2006−51416号公報
【特許文献2】特開昭63−99399号公報
【特許文献3】特開2006−52501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、抄紙機にて、3層抄き以上の多層抄きの板紙に、硫化水素吸収剤を内添配合する技術であり、従来技術の板紙強度が低下する問題と硫化水素の吸収に時間が掛かる問題を解消するものであり、かつ、オフマシン塗工の従来技術の塗工層がコルゲーターの熱板及び熱ロールに付着する問題を解消するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の(1)〜(6)の構成を採る。
(1)表層と中層と裏層の少なくとも3層抄き以上からなる板紙において、中層を構成する少なくとも1層以上に、平均粒径100μm以下の粉末活性炭を、対パルプ質量比3〜35%内添配合し、表層に該活性炭及び/又は酸化亜鉛系金属酸化物を対パルプ質量比0.1〜2%内添配合し、かつ、その表層の表面にポリビニルアルコールを塗工した段ボール用の防錆板紙である。
(2)粉末活性炭に、硫化水素を酸化して硫酸の状態で吸収するための触媒として、ハロゲン化金属化合物を活性炭質量比0.01〜3.0%添着した(1)項に記載の段ボール用の防錆板紙である。
(3)粉末活性炭に、銀化合物及び/又は銅化合物を活性炭質量比0.01〜5.0%添着した(1)項に記載の段ボール用の防錆板紙である。
(4)表層に内添配合する酸化亜鉛系金属酸化物の構成が式(1)M2+1−X3+XσO(式中、M2+はZn又はZnを必須成分とする2価金属を示し、M3+はAl、Fe、Ce、Ti等の3価金属を示し、xは0<x≦0.5の範囲の数を示し、σはカチオン格子欠陥を示す)で表される(1)項に記載の段ボール用の防錆板紙である。
(5)表層へのポリビニルアルコールの塗工は、抄紙機に設置されている塗工機にて、ポリビニルアルコールの水溶液をオンマシン塗工し、該ポリビニルアルコール水溶液に、硫酸塩系の化合物を0.1〜3%配合する(1)〜(4)項のいずれかに記載の段ボール用の防錆板紙である。
(6)段ボールを構成するライナー部の少なくとも1つに、(1)〜(5)項のいずれかに記載の防錆板紙を使用することを特徴とする段ボールである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、3層抄き以上からなる板紙において、その中層の少なくとも1層以上に、平均粒径100μm以下の粉末活性炭を、従来技術(特開2006−51416号)より少ない量を内添配合し、かつ、その表層にも活性炭及び/又は酸化亜鉛系金属酸化物を内添配合するものであり、硫化水素の吸収能力は十分であり、従来技術(特開2006−51416号)の問題であるライナーとしての強度低下を解消し、硫化水素の吸収速度も、オフマシン塗工並までに向上させるものである。
【0013】
本発明は、その表層の活性炭及び/又は酸化亜鉛系金属酸化物の内添量が2%以下と少ないため、コルゲーターでの脱落はほとんど起きないものである。加えて、本発明は、その表層の表面にポリビニルアルコール(PVA)を塗工しているため、活性炭と酸化亜鉛系金属酸化物のコルゲーター工程での脱落と、オフマシン塗工技術の問題であるコルゲーターでの熱板及び熱ロールへの付着トラブルと、長期在庫時のブロッキング問題を解消するものである。
板紙表層への活性炭と酸化亜鉛系金属酸化物の内添配合量が5%以上になり、かつ、その表面にPVA塗工をしないと、コルゲーターでの内添物の脱落が発生するため、板紙表層への内添配合量は上記の様にするものである。
【0014】
本発明は、オフマシン塗工の塗料に配合するバインダー(板紙表層に硫化水素吸収剤を定着させるための樹脂等)を使用しないため、その樹脂がコルゲーターの熱(約180℃)で軟化して起きる熱板及び熱ロールへの付着トラブルは起きないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、その中層を構成する少なくとも1層以上に、平均粒径100μm以下の粉末活性炭を、対パルプ比3〜35%、好ましくは5〜10%内添配合するものであるため、段ボール原紙(ライナー)から発生する硫化水素を吸収するには十分である。
還元性硫黄を含有する一般ライナー中には、還元性硫黄(J.TAPPI NO.35で測定)が4〜10ppm存在するが、原紙の中層のうち1層に粉末活性炭を5%配合すると、還元性硫黄は測定限界(1ppm)以下になる。
また、本発明は従来技術(特開2006−51416号:活性炭の配合量は40〜80%)に比較し、活性炭の配合量が35%以下と少ないため、原紙特性であるリングクラッシュと層間強度の低下は少なくなり、段ボール用原紙としての十分使用できるものである。
【0016】
更に、本発明は、従来技術(特開2006−51416号)とは異なり、その表層にも活性炭および酸化亜鉛系金属酸化物を少量配合しているため、原紙表面付近に硫化水素ガスが存在した場合に、従来技術に比較して、短時間で吸収できるものである。
つまり、本発明は、段ボール箱内に、何らかの原因で硫化水素ガスが存在した場合に、短時間で吸収し、内容物である銀等の電気部品の錆を防止するものである。
【0017】
本発明の中層と表層に使用する粉末活性炭に、ハロゲン化金属化合物を活性炭重量比0.01〜3.0%触媒として添着することにより、硫化水素ガスの吸着性能を一段と上げることが可能となる。一般の活性炭の硫化水素吸着機構が吸着力の弱い物理吸着であるのに対し、ハロゲン化金属化合物を添着した硫化水素吸着機構は酸化反応により硫化水素が硫酸にまで酸化されて、強力に保持されることによる。
このため、ハロゲン化金属化合物添着の活性炭は、未添着の活性炭に比べて、一度吸着した硫化水素ガスを高温にしても脱着しない脱着阻止作用を有する。
ハロゲン化金属化合物の具体例としては、ヨウ化カリウムが挙げられる。更に、このヨウ化カリウム添着活性炭に重金属、例えばバナジウム系、モリブデン系、スズ系、マンガン系等の化合物を助触媒として添着することにより、性能が一段と向上し触媒寿命が長くなる。
【0018】
本発明において、銅及び/又は銀化合物添着の活性炭は、防錆の対象である銅及び/又は銀等の金属部品が、硫化水素ガス又はそれ以外のガスの影響で、錆が発生する状態になった場合に、先に錆を発生させることで、防錆の対象である銅及び/又は銀等の金属部品を防止するものである。
【0019】
本発明において、その表層に配合する酸化亜鉛系金属酸化物として式(1){構成=M2+1−X3+XσO(式中、M2+はZn又はZnを必須成分とする2価金属を示し、M3+はAl、Fe、Ce、Ti等の3価金属を示し、xは0<x≦0.5の範囲の数を示し、σはカチオン格子欠陥を示す)}は、硫化水素ガスの吸収速度が活性炭より速いため、銀等の電気部品の錆防止に更に有効である。
【0020】
また、表層に配合する酸化亜鉛系金属酸化物の他の例として、特開2006−199659号公報に記載される酸化亜鉛系固溶体(Zn)1−X3+O(但し、式中、M3+はAl、FeおよびCeの、3価の金属の1種以上を示し、xは0<x<0.2の範囲にある)、
特開2006−223645号公報に記載されている複合金属ケイ酸塩mM2+O・M3+・nSiO・pHO(但し、式中、M2+はZnおよび/またはCuを、M3+はAlおよび/またはFeをそれぞれ示し、m、nおよびpはそれぞれ、1<m<20、1<n<100、0<pの範囲を示す)、
特開平8−337768号広報に記載されている亜鉛化合物(Zn2+1−X3+1+X/2(但し、式中、M2+はMg、Ca、NiおよびCuよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を示し、M3+はAlおよびFeよりなる群から選ばれた少なくとも1種の金属を示し、x、yおよびzはそれぞれ式0.2<x≦0.4、(y+z)=1、および0≦z≦0.75を満足する値を有する)が挙げられる。
【0021】
本発明は、その表層に内添する活性炭及び/又は酸化亜鉛系金属酸化物は2%以下であり、かつ、その原紙表面をPVA塗工することで、コルゲーター貼合時における原紙表面から活性炭及び酸化亜鉛系金属酸化物が脱落を防止することができるものである。
そして、PVA塗工が、オフマシン塗工の従来技術で問題となるコルゲーターでの熱板等での付着トラブルと長期保管時のブロッキングトラブルを防止するものである。
オフマシン塗工においても、硫化水素吸収剤とバインダーの混合層の表面にPVAを塗工する工程を追加塗工すると、コルゲーターでの熱板等での付着トラブルと長期保管時のブロッキングトラブルは防止することもできるが、塗工が2段階となる問題があり、通常はPVA塗工を行わない為、上記問題が起きるものである。
これに対し、本発明は、抄紙機での内添配合と抄紙機設置の塗工機によるオンマシン塗工のため、オフマシン塗工のように、作業工程を追加する必要がなく、生産コストも優位である。
【0022】
本発明において、更に硫化水素ガスの吸収速度を更に速める必要がある場合は、PVAの0.1〜1%水溶液に0.1〜3%の硫酸塩系の化合物を追加配合する。
本発明で追加配合する硫酸塩系の化合物は、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、ポリ硫酸鉄、硫酸銅等である。
硫酸塩系の化合物の塗工量は、上記水溶液をオンマシンにて、混合の水溶液を10〜40g/m塗工するため、PVAは0.01〜0.4g/m、硫酸塩は0.01〜0.12g/m塗工するものである。
本発明において、硫酸塩系化合物、特に硫酸鉄又は硫酸銅をPVAに追加配合すると、その理由は良く分からないが、硫化水素ガスの吸収速度が更に速やめるものである。
なお、本発明で使用するオンマシン塗工機としては、チャンピオンコーター、バーコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、サイズプレス、ゲートロールなど汎用コーターが例示される。またカレンダー塗工も可能で、目標塗工量に応じて、適宜選択される。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例に従って説明する。
<実施例1>
抄紙機マシンにて、表層=70g/m、表下の中層=70g/m、その下の中層=70g/m、裏層=70g/mからなる4層抄きの板紙を抄造した。
この場合に、表層には、式(1)の酸化亜鉛系金属酸化物(大和化学工業社「ザオバタックDB」)を対パルプ固形分比1%配合し、その表面にはPVA(鈴川化学社「ベルコートHG−500」)を固形分として0.05g/mをカレンダー塗工した。
更に、表下の中層には、粉末活性炭(クラレケミカル社[PK]平均粒径=100μ以下)を対パルプ固形分比10%配合し、その下の中層と裏層には活性炭を配合しないものとした防錆板紙を得た。
【0024】
<実施例2>
実施例1で表下の中層に使用した粉末活性炭にハロゲン化金属化合物を添着した活性炭(アイダッシュ社「スーパーヨウ素炭:i−DAC」)にかえたこと以外は、実施例1同様に行った。
【0025】
<実施例3>
表層にハロゲン化金属化合物を添着した活性炭(アイダッシュ社「スーパーヨウ素炭:i−DAC」)を対パルプ固形分比1.0%配合すること以外は、実施例1と同様に行った。
【0026】
<実施例4>
表層の表面に、カレンダーにて、PVAと同時に硫酸第2鉄を固形分として0.05g/m塗工すること以外は、実施例3と同様に行った。
【0027】
<実施例5>
実施例1で表下の中層に使用した粉末活性炭に硝酸銀を添着した活性炭(クラレケミカル社「クラレコールT−SB」)にかえたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0028】
<実施例6>
実施例1で表下の中層に使用した粉末活性炭に銅を対活性炭比4.0%添着した活性炭(クラレケミカル社「クラレコールT−CS」)にかえたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0029】
<比較例1>
抄紙機マシンにて、表層=70g/m、表下の中層=70g/m、その下の中層=70g/m、裏層=70g/mからなる4層抄きの板紙を抄造した。
この4層抄きの板紙の表層表面には、PVAの塗工はないものとした。
【0030】
<比較例2>
抄紙機マシンにて、表層=70g/m、表下の中層=70g/m、その下の中層=70g/m、裏層=70g/mからなる4層抄きの板紙を抄造した。
この場合に、表下の中層には、粉末活性炭(クラレケミカル社「PK」平均粒径=100μm以下)を対パルプ固形分比50%配合し、その下の中層と表層と裏層には活性炭を配合しないものとした。
又、表層表面には、PVAの塗工はないものとした。
【0031】
<比較例3>
抄紙機マシンにて、表層=70g/m、表下の中層=70g/m、その下の中層=70g/m、裏層=70g/mからなる4層抄きの板紙を抄造した。
この場合に、表層には、粉末活性炭(クラレケミカル社「PK」平均粒径=100μm以下)を対パルプ固形分比5%配合し、その表面へのPVA塗工はないものとした。
更に、表下の中層には、同活性炭を対パルプ固形分比10%配合し、その下の中層と裏層には活性炭を配合しないものとした。
【0032】
<比較例4>
抄紙機マシンにて、表層=70g/m、表下の中層=70g/m、その下の中層=70g/m、裏層=70g/mからなる4層抄きの板紙を抄造した。
次に、上記板紙にオフ塗工にて、その表層表面に硫酸銅を0.2g/m塗工し、表面に粉末活性炭とSBRの混合物(活性炭:SBR=1:1)を2g/m塗工した。
【0033】
以上のようにして得られた防錆板紙をコルゲーターのシングルフェーサ(SF)側(段ボール箱になった時の箱の内側になる)に使用し、段ボールシートを作成した。なお、段ボールシートの中芯と表ライナ(ダブルフエーサ(DF)側)は防錆処理していない常用のものであったが、表ライナにも上記防錆板紙を使用してもよい。
【0034】
<結果>
実施例および比較例の結果を表1に示す。
また、硫化水素ガスの除去性能評価試験と脱着阻止評価試験の結果をそれぞれ表2と表3に示す。
【0035】
【表1】

(注*1)リングクラッシュ:JIS P 8126にて測定、434N以上を○、406〜434N未満を△、406N未満を×とする。
(注*2)層間剥離強度:JAPAN TAPPI NO.18−1にて測定、400kPa以上を○、300〜400kPa未満を△、300未満を×とする。
(注*3)コルゲーター脱着性:得られた防錆板紙をコルゲーターのシングルフェーサ(SF)側ライナーに使用し、プレヒータ上に活性炭の脱着が見られないものを○、脱着が見られるものを×とする。
(注*4)コルゲーター粘着性:板紙の表面に180℃に過熱したアイロンを2分間接し、板紙表面が暖かい状態にて、手触りして、粘着性が感じられないものを○、粘着性が感じるものを×とする。
(注*5)硫化水素吸収力:下記試験方法にて、24時間放置後の硫化水素の濃度を測定し、検出限界(0.1ppm)以下を○、0.1〜10ppmを△、10ppm以上を×とする。
(注*6)硫化水素吸収速度:下記試験方法にて、1時間放置後と3時間放置後の硫化水素ガスの濃度を測定し、1時間後の硫化水素ガス濃度が3ppm以下を◎、15以下を○、
3時間後の硫化水素ガス濃度が3ppm以下を△、3時間後の硫化水素ガス濃度が50ppm以上を×とする。
(注*7)硫化水素脱着阻止力:硫化水素ガスの除去性能評価試験に使用した試料(6.5cm角*3枚)を2リットルのガラス瓶に入れ、150℃に加熱する。
加熱後、ヘッドスペースのガスを採取し、ガスクロマトグラフにて硫化水素の濃度を測定し、5ppb以下を◎、5〜10ppbを○、10〜15ppbを△、15ppb以上を×とする。
(注*8)原紙の製造作業性:抄紙機にて、1度に製造できる原紙をまる、抄紙機にて製造した原紙に、オフ塗工して製造するものを×とする。
【0036】
[硫化水素ガスの除去性能評価試験]
板紙原紙を6.5cm角に3枚断裁し、テドラーバッグ(プラスチックフィルム)に入れる。
次に、テドラーバッグに100ppm濃度の硫化水素ガスを3リットル入れる。
各時間放置後の硫化水素ガスの濃度を測定する。
【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0039】
銅及び/又は銀等の金属部品及び家電部品等の包装に使用する硫化水素吸収型の防錆板紙及び防錆段ボールとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層と中層と裏層の少なくとも3層抄き以上からなる板紙において、中層を構成する少なくとも1層以上に、平均粒径100μm以下の粉末活性炭を、対パルプ質量比3〜35%内添配合し、表層に該活性炭及び/又は酸化亜鉛系金属酸化物を対パルプ質量比0.1〜2%内添配合し、かつ、その表層の表面にポリビニルアルコールを塗工したことを特徴とする段ボール用の防錆板紙。
【請求項2】
粉末活性炭に、硫化水素を酸化して硫酸にした状態で吸収するための触媒として、ハロゲン化金属化合物を活性炭質量比0.01〜3.0%添着したことを特徴とする請求項1に記載の段ボール用の防錆板紙。
【請求項3】
粉末活性炭に、銀化合物及び/又は銅化合物を活性炭質量比0.01〜5.0%添着したことを特徴とする請求項1に記載の段ボール用の防錆板紙。
【請求項4】
表層に内添配合する酸化亜鉛系金属酸化物の組成が式(1)M2+1−X3+XσO(式中、M2+はZn又はZnを必須成分とする2価金属を示し、M3+はAl、Fe、Ce、Ti等の3価金属を示し、xは0<x≦0.5の範囲の数を示し、σはカチオン格子欠陥を示す)で表されることを特徴とする請求項1に記載の段ボール用の防錆板紙。
【請求項5】
表層へのポリビニルアルコールの塗工は、抄紙機に設置されている塗工機にて、ポリビニルアルコールの水溶液をオンマシン塗工し、該ポリビニルアルコール水溶液に、硫酸塩系の化合物を0.1〜3%配合することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の段ボール用の防錆板紙。
【請求項6】
段ボールを構成するライナー部の少なくとも1つに、請求項1〜5のいずれかに記載の防錆板紙を使用することを特徴とする防錆段ボール。

【公開番号】特開2009−52184(P2009−52184A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102327(P2008−102327)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(502356517)王子チヨダコンテナー株式会社 (66)
【Fターム(参考)】