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防錆皮膜形成用組成物およびそれを用いた防錆皮膜形成方法および防錆処理金属
説明

防錆皮膜形成用組成物およびそれを用いた防錆皮膜形成方法および防錆処理金属

【課題】6価クロムなどの有害薬品を使用することなく、金属基体の表面に優れた防錆性を有するとともに、自己修復作用を備えた皮膜形成用組成物、皮膜形成方法および防錆処理金属の提供。
【解決手段】金属基体2の表面を処理するための防錆皮膜形成用組成物であって、1)V換算で濃度0.1〜20g/lのバナジン酸イオン、バナジンイオン、バナジルイオンから選択されるイオン、2)Ti換算で濃度0.1〜50g/lのチタン酸イオン、フルオロチタン酸、チタンイオンから選択されるイオン、3)Si換算で濃度0.1〜50g/lの珪酸イオンおよび/またはコロイダルシリカ、4)NHNO,KNO,NaNO,LiNO,Ca(NOから選ばれる硝酸塩の1種または2種以上の混合物から供給される濃度9.0〜300g/lの硝酸イオンを必須成分として含み、pHが0.1〜5.5の範囲に調製された防錆皮膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基体の表面に優れた防錆性を有する防錆皮膜を形成するための防錆皮膜形成用組成物およびそれを用いた防錆皮膜形成方法および防錆処理金属に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属基体の表面を保護し、錆の発生を防ぎ、機能性や装飾性などを向上させるために、6価クロムを含む処理液で化成皮膜処理を行うか、あるいはめっき処理を施してから6価クロムを含む処理液で表面処理する方法が、多く行われている。
【0003】
この6価クロムは防錆性に優れており、処理作業も比較的容易であり、また、6価クロムによって生成された防錆皮膜は、金属基体の表面に傷などの損傷ができても皮膜が再生されていわゆる自己修復性の作用があるが、6価クロムは非常に毒性が強く環境に与える影響が大きい。
【0004】
そのため6価クロムを含まない処理液で処理する方法として、例えば、タンニン酸を含有する処理液あるいはタンニン酸およびそれ以外の成分を含有する処理液を使用した有機防錆皮膜処理が提案されている(特許文献1〜5参照)。
また6価クロムの代替金属を使用した表面処理が提案されているが(特許文献6〜9参照)、従来行われていた6価クロムを含んだ表面処理に比べ、耐食性が十分とは言えず、また、皮膜に傷などが発生しても自己修復性が見られないためほとんど実用化に至っていないのが、現状である。
【0005】
また、金属表面をリン酸塩を含有する組成物に接触させて処理する工程と、この接触処理表面を、耐食性及び耐湿性を付与するに充分な植物性タンニンを含有する組成物に接触させる工程からなる金属表面処理方法(特許文献10参照)が提案されているが、防錆性すなわち耐食性の向上は十分とは言えず、また、6価クロムのような自己修復作用がないため金属基体の表面の傷などの防錆効果が得られないことから、ほとんど使用するのに至っていないのが、現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭48−27936号公報
【特許文献2】特開昭51−71233号公報
【特許文献3】特開昭57−16177号公報
【特許文献4】特開昭58−197285号公報
【特許文献5】特開昭59−116381号公報
【特許文献6】特開昭56−43384号公報
【特許文献7】特開昭52−92836号公報
【特許文献8】特開昭57−145987号公報
【特許文献9】特開平9−53192号公報
【特許文献10】特開昭49−47224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の目的は、環境に影響を与える有害な6価クロムなどの化学薬品を使用することなく、6価クロムに匹敵する金属基体の表面に優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成できる防錆皮膜形成用組成物を提供することである。
本発明の第2の目的は、本発明の防錆皮膜形成用組成物を用いて金属基体の表面を処理して、容易に経済的に、金属基体の表面に密着して優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成できる防錆皮膜形成方法を提供することである。
本発明の第3の目的は、本発明の防錆皮膜形成方法を用いて金属基体の表面を処理して優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成した防錆処理金属を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、従来技術の問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、例えば、バナジン酸イオン、チタン酸イオン、珪酸イオンおよび硝酸イオンをそれぞれ特定の濃度範囲で含有し、かつ特定のpHの範囲に調製された水溶液からなる防錆皮膜形成用組成物を用いて金属基体の表面を処理することによって本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0009】
本発明の請求項1記載の発明は、金属基体の表面を処理するための防錆皮膜形成用組成物であって、
(1)V換算で濃度0.1〜20g/lのバナジン酸イオン、バナジンイオン、バナジルイオンから選択されるイオン、
(2)Ti換算で濃度0.1〜50g/lのチタン酸イオン、フルオロチタン酸、チタンイオンから選択されるイオン、
(3)Si換算で濃度0.1〜50g/lの珪酸イオンおよび/またはコロイダルシリカ、
(4)NHNO,KNO,NaNO,LiNO,Ca(NO)から選ばれる硝酸塩の1種または2種以上の混合物から供給される濃度9.0〜300g/lの硝酸イオンを必須成分として含み、pHが0.1〜5.5の範囲に調製された水溶液あるいは水分散液からなることを特徴とする防錆皮膜形成用組成物である。
【0010】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の防錆皮膜形成用組成物において、珪酸イオンおよび/またはコロイダルシリカを0.2〜10g/l含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1記載の防錆皮膜形成用組成物において、Mo,Co,Ni,Mn,Mg,Sr,Al,Ca,Zr,Ce,Wから選ばれる1種または2種以上の混合物からなる金属イオンをさらに添加したことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の防錆皮膜形成用組成物において、金属基体の表面が、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、銅、鉄およびそれらの合金からなる群から選ばれる表面であることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防錆皮膜形成用組成物で金属基体の表面を処理して防錆皮膜を形成して水洗後、乾燥することを特徴とする防錆皮膜形成方法である。
【0014】
本発明の請求項6記載の発明は、請求項5記載の防錆皮膜形成方法において、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防錆皮膜形成用組成物で金属基体の表面を処理して防錆皮膜を形成後、水洗するか、あるいは防錆皮膜を形成後、乾燥するか、あるいは防錆皮膜を形成後、水洗し、乾燥した後に、前記防錆皮膜の上層部に珪酸塩を主として含有する水溶液で処理して珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜を形成するか、あるいは前記防錆皮膜の上層部にポリマーを主として含有する処理液で処理してポリマーを主として含有する第2防錆皮膜を形成するか、あるいは前記防錆皮膜の上層部に珪酸塩を主として含有する水溶液で処理して珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜を形成した後に、第2防錆皮膜の上層部にポリマーを主として含有する処理液で処理してポリマーを主として含有する第3防錆皮膜を形成した後、必要に応じて水洗し、乾燥することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7記載の発明は、請求項5あるいは請求項6記載の防錆皮膜形成方法を用いて金属基体の表面に密着して形成された防錆皮膜を備えるか、もしくは前記防錆皮膜の上層部に密着して形成された珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜をさらに備えるか、あるいは前記防錆皮膜の上層部に密着して形成されたポリマーを主として含有する第2防錆皮膜をさらに備えるか、あるいは珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜の上層部に密着して形成されたポリマーを主として含有する第3防錆皮膜をさらに備えたことを特徴とする防錆処理金属である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1の発明は、金属基体の表面を処理するための防錆皮膜形成用組成物であって、(1)V換算で濃度0.1〜20g/lのバナジン酸イオン、バナジンイオン、バナジルイオンから選択されるイオン、
(2)Ti換算で濃度0.1〜50g/lのチタン酸イオン、フルオロチタン酸、チタンイオンから選択されるイオン、
(3)Si換算で濃度0.1〜50g/lの珪酸イオンおよび/またはコロイダルシリカ、
(4)NHNO,KNO,NaNO,LiNO,Ca(NO)から選ばれる硝酸塩の1種または2種以上の混合物から供給される濃度9.0〜300g/lの硝酸イオンを必須成分として含み、pHが0.1〜5.5の範囲に調製された水溶液あるいは水分散液からなることを特徴とする防錆皮膜形成用組成物であり、
環境に影響を与える有害な6価クロムなどの化学薬品を使用することなく、6価クロムに匹敵する金属基体の表面に優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成できるという顕著な効果を奏す。
【0017】
本発明の請求項2の発明は、請求項1記載の防錆皮膜形成用組成物において、珪酸イオンおよび/またはコロイダルシリカを0.2〜10g/l含むことを特徴とするものであり、
より優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成できるというさらなる顕著な効果を奏す。
【0018】
本発明の請求項3の発明は、請求項1記載の防錆皮膜形成用組成物において、さらにMo,Co,Ni,Mn,Mg,Sr,Al,Ca,Zr,Ce,Wから選ばれる1種または2種以上の混合物からなる金属イオンをさらに添加したことを特徴とするものであり、
優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成できるというさらなる顕著な効果を奏す。
【0019】
本発明の請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の防錆皮膜形成用組成物において、金属基体の表面が、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、銅、鉄およびそれらの合金からなる群から選ばれる表面であることを特徴とするものであり、
各種の金属基体の表面に優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成できるというさらなる顕著な効果を奏す。
【0020】
本発明の請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防錆皮膜形成用組成物で金属基体の表面を処理して防錆皮膜を形成して水洗後、乾燥することを特徴とする防錆皮膜形成方法であり、
本発明の防錆皮膜形成用組成物を用いて金属基体の表面を処理して、容易に経済的に、金属基体の表面に密着して6価クロムに匹敵する優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成できるという顕著な効果を奏す。
【0021】
本発明の請求項6の発明は、請求項5記載の防錆皮膜形成方法において、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防錆皮膜形成用組成物で金属基体の表面を処理して防錆皮膜を形成後、水洗するか、あるいは防錆皮膜を形成後、乾燥するか、あるいは防錆皮膜を形成後、水洗し、乾燥した後に、前記防錆皮膜の上層部に珪酸塩を主として含有する水溶液で処理して珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜を形成するか、あるいは前記防錆皮膜の上層部にポリマーを主として含有する処理液で処理してポリマーを主として含有する第2防錆皮膜を形成するか、あるいは前記防錆皮膜の上層部に珪酸塩を主として含有する水溶液で処理して珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜を形成した後に、第2防錆皮膜の上層部にポリマーを主として含有する処理液で処理してポリマーを主として含有する第3防錆皮膜を形成した後、必要に応じて水洗し、乾燥することを特徴とするものであり、
金属基体の表面を処理して、容易に経済的に、金属基体の表面に密着してより優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるためにより防錆性が維持される防錆皮膜を形成できるというさらなる顕著な効果を奏す。
【0022】
本発明の請求項7の発明は、請求項5あるいは請求項6記載の防錆皮膜形成方法を用いて金属基体の表面に密着して形成された防錆皮膜を備えるか、もしくは前記防錆皮膜の上層部に密着して形成された珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜をさらに備えるか、あるいは前記防錆皮膜の上層部に密着して形成されたポリマーを主として含有する第2防錆皮膜をさらに備えるか、あるいは珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜の上層部に密着して形成されたポリマーを主として含有する第3防錆皮膜をさらに備えたことを特徴とする防錆処理金属であり、
環境に影響を与える有害な6価クロムなどの化学薬品を使用することなく、6価クロムに匹敵する金属基体の表面に優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を備えているので、優れた防錆性および自己修復作用を有するという顕著な効果を奏す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の防錆処理金属の一実施形態の断面を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の防錆処理金属の他の例の断面を模式的に説明する説明図である。
【図3】本発明の防錆処理金属の他の例の断面を模式的に説明する説明図である。
【図4】本発明の防錆処理金属の他の例の断面を模式的に説明する説明図である。
【図5】バナジン酸イオン濃度をV換算でおよそ0.01g/lから20g/lを超える範囲で変化させ防錆性および自己修復性を評価した結果を示すグラフである。
【図6】チタン酸イオン濃度をTi換算でおよそ0.01g/lから50g/lを超える範囲で変化させた場合の防錆性および自己修復性を評価した結果を示すグラフである。
【図7】珪酸イオン濃度をSi換算でおよそ0.01g/lから50g/lを超える範囲で変化させた場合の防錆性および自己修復性を評価した結果を示すグラフである。
【図8】硝酸イオン濃度をおよそ1g/lから300g/lを超える範囲で変化させた場合の防錆性および自己修復性を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の防錆処理金属の一実施形態の断面を模式的に示す説明図である。
図1に示したように、本発明の防錆処理金属1は、金属基体2の表面にメッキなどの手法により形成された金属被膜3の表面に密着して形成された防錆被膜4を備えている。防錆被膜4は防錆性に優れるとともに、防錆被膜4に金属被膜3や金属基体2の表面に達するような傷がついても自己修復性が高いので防錆性が維持される。
【0025】
図2は、本発明の防錆処理金属の他の例の断面を模式的に説明する説明図である。本発明の防錆処理金属1Aは、図1に示した防錆処理金属1の防錆皮膜4の上にさらに珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜5が形成されているので、防錆処理金属1と同様な効果を有する上、防錆性がさらに向上する。
【0026】
図3は、本発明の防錆処理金属の他の例の断面を模式的に説明する説明図である。本発明の防錆処理金属1Bは、図1に示した防錆処理金属1の防錆皮膜4の上にさらにポリマーを主として含有する第2防錆皮膜6が形成されているので、防錆処理金属1と同様な効果を有する上、防錆性がさらに向上する。
【0027】
図4は、本発明の防錆処理金属の他の例の断面を模式的に説明する説明図である。本発明の防錆処理金属1Cは、図1に示した防錆処理金属1の防錆皮膜4の上にさらに珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜5が形成されており、珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜5の上にさらにポリマーを主として含有する第3防錆皮膜6が形成されているので、防錆処理金属1と同様な効果を有する上、防錆性がさらに向上する。
【0028】
図5〜8に示すように、バナジン酸イオン、チタン酸イオン、珪酸イオン、硝酸イオンの濃度が所定の範囲内にあると優れた防錆性および自己修復性が得られることが判る。
【0029】
本発明で用いる金属基体の表面の材質には特に限定されないが、具体的には、例えば、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、銅、鉄およびそれらの合金からなる群から選ばれる金属を挙げることができる。金属基体はこれらの金属自体で形成されたものでも、あるいは、金属基体の本体は金属やセラミックやプラスチックスなどの材料から形成されているが、表面に電気メッキ、化学メッキ、真空蒸着などの手法や積層法などの手法によりこれらの金属の層が形成されているものでも、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0030】
本発明の金属基体の表面を処理するための防錆皮膜形成用組成物は、下記の組成範囲およびpH範囲を有する水溶液あるいはコロイダルシリカを用いた場合は水分散液であることが肝要である。
(1)バナジン酸イオン、バナジンイオン、バナジルイオンから選択されるイオンはV換算で濃度0.1〜20g/lの範囲であり、好ましくは0.2〜15g/l、さらに好ましくは、1〜10g/lである。0.1g/l未満では、十分な防錆性および自己修復性が得られなく、20g/lを超えてもそれ以上の防錆性および自己修復性が得られず不経済となる恐れがある。
【0031】
前記水溶液のバナジン酸イオン源としては、例えば、(メタ)バナジン酸アンモニウム、(メタ)バナジン酸カリウム、(メタ)バナジン酸ナトリウム、(メタ)バナジン酸リチウム、オルトバナジン酸などの水溶性バナジン酸塩、硫酸バナジル、VClなどが使用でき、これらの一種または二種以上を混合して使用することができる。
【0032】
(2)チタン酸イオン、フルオロチタン酸イオン、チタンイオンから選択されるイオンはTi換算で濃度0.1〜50g/lの範囲である。好ましくは0.2〜45g/l、さらに好ましくは、1〜30g/lである。0.1g/l未満では、十分な防錆性および自己修復性が得られなく、50g/lを超えてもそれ以上の防錆性および自己修復性が得られず不経済となる恐れがある。
【0033】
チタン酸イオン、フルオロチタン酸イオンおよびチタンイオン源としては、例えば、チタン酸化合物、フルオロチタン酸カリウム、フルオロチタン酸ナトリウム、フルオロチタン酸アンモニウムなどの化合物、硫酸チタンなどが使用でき、これらの一種または二種以上を混合して使用することができる。
【0034】
(3)珪酸イオンおよび/またはコロイダルシリカは、Si換算で濃度0.1〜50g/lの範囲である。好ましくは0.1〜45g/l、さらに好ましくは、1〜30g/lである。0.1g/l未満では、十分な防錆性および自己修復性が得られなく、50g/lを超えてもそれ以上の防錆性および自己修復性が得られず不経済となる恐れがある。
【0035】
珪酸イオン源としては、例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどの珪酸塩またはコロイダルシリカや珪フッ化物などを使用でき、これらの一種または二種以上を混合して使用することができる。
【0036】
本発明においては、前記V、Ti、Si以外に、Mo,Co,Ni,Mn,Mg,Sr,Al,Ca,Zr,Ce,Wから選ばれる1種または2種以上の混合物からなる金属イオンをさらに添加して使用できる。これらの金属イオン源としては、例えば、これらの金属の硝酸塩、フッ化塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、酢酸塩、有機酸塩などを用いることができる。
これらの塩の具体例としては、具体的には、例えば、モリブデン酸化合物、チタン酸化合物、タングステン酸化合物、ジルコン酸化合物などの金属化合物、前記金属を含む金属酸化物、前記金属を含むフッ素金属化合物の1種または、2種以上の混合物からなる金属化合物を挙げることができる。
前記モリブデン酸化合物としては、例えば、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムなどが使用できる。
前記タングステン酸化合物としては、例えば、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウムなどが使用できる
前記ジルコン酸化合物については、例えば、同様に各種アルカリ金属塩などのほかにハロゲン化合物も使用できる。
マンガン化合物やセリウム化合物としては、具体的には、例えば、過マンガン酸、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、リン酸二水素マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、フツ化マンガン、酢酸マンガン、炭酸マンガン、酢酸セリウム、硝酸セリウム、塩化セリウムなどを挙げることができる。
ジルコニウム化合物としては、具体的には、例えば、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウムなど、ジルコニウム酸化物などを挙げることができる。
アルミニウム化合物としては、具体的には、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどを挙げることができる。
コバルト化合物やニッケル化合物としては、具体的には、例えば、硝酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、硫酸コバルト、酢酸コバルト、蓚酸コバルト、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、蓚酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、アミド硫酸ニッケルなどを挙げることができる。
マグネシウム化合物やカルシウム化合物としては、具体的には、例えば、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、フツ化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、蓚酸カルシウムなどを挙げることができる。
ストロンチウム化合物としては、具体的には、例えば、硝酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、炭酸ストロンチウムなどを挙げることができる。
これらの金属化合物の1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0037】
(4)硝酸イオンの供給源として各種の硝酸塩を使用できるが、NHNO,KNO,NaNO,LiNO,Ca(NO)から選ばれる硝酸塩の1種または2種以上の混合物を使用すると防錆性および自己修復性に優れた防錆被膜が得られるので好ましい。
硝酸イオンの濃度は、9〜300g/lの範囲である。好ましくは15〜200g/l、さらに好ましくは、20〜100g/lである。9g/l未満では、十分な防錆性および自己修復性が得られなく、300g/lを超えると溶解しない場合が生じる恐れがある。
【0038】
pHは0.1〜5.5の範囲である。好ましくは1〜5、さらに好ましくは、1〜4である。0.1未満では、金属基体が腐食する恐れがあり、また防錆性が低下する恐れがある。5.5を超えると、茶褐色になるなど着色する恐れがあり、また5.5を超えてもそれ以上の防錆性および自己修復性が得られず不経済となる恐れがある。
【0039】
pHは、酸性物質やアルカリ性物質を用いて調整するのが良い。pH調整用のアルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水、各種アルキルアミンおよびそれらの2種以上の混合物などが挙げられる。酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、弗化水素酸、蟻酸、酢酸、有機酸、有機カルボン酸およびそれらの2種以上の混合物などを挙げることができるが、これらの中でも硝酸が好ましい。
【0040】
前記水溶液は前記pH条件下で、イオンを安定して存在させるために、錯化剤としてキレート作用のある有機酸を添加することが好ましい。キレート作用のある有機酸としては、クエン酸、シュウ酸、酒石酸などや、これらをはじめとする有機酸のナトリウム化合物などが挙げられ、これらの中から一種または二種以上使用することができる。
【0041】
前記水溶液の錯化剤濃度は0.5≦錯化剤≦50(g/l)、好ましくは1≦錯化剤≦50(g/l)である。錯化剤濃度が0.5(g/l)未満であると、赤茶色になる恐れがあり、50(g/l)を超えるとスマット(滓)が多発生する恐れがある。
【0042】
前記水溶液による処理温度は、およそ10〜60℃程度、好ましくは、およそ15〜40℃がよい。10℃未満では、反応速度が遅くかつ防錆性および自己修復性が得られない恐れがあり、60℃を超えると処理液の蒸発量が多くなり不経済となる。
さらに、前記水溶液による処理時間は、およそ5〜180秒であり、好ましくは、およそ20〜150秒がよい。5秒未満では短く十分な防錆被膜が得られない恐れがあり、180秒を超えると被膜剥離や着色や色むらが発生する恐れがあり、180秒を超えてもより以上の効果を期待できない。
【0043】
前記水溶液には、さらに安定化剤として酸化剤、還元剤などの公知の添加剤を添加することができる。
【0044】
前記水溶液で処理して得られる防錆皮膜の厚さは特に限定されるものではない。しかし、上記処理条件で処理するとおよそ0.01〜0.5μm程度の厚さの防錆皮膜が得られる。
【0045】
金属基体の表面を処理して防錆皮膜を密着して形成後、水洗するか、あるいは防錆皮膜を形成後、乾燥するか、あるいは防錆皮膜を形成後、水洗し、乾燥した後に、前記防錆皮膜の上層部に珪酸塩を主として含有する水溶液で処理して珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜を密着して形成するか、あるいは前記防錆皮膜の上層部にポリマーを主として含有する処理液で処理してポリマーを主として含有する第2防錆皮膜を密着して形成するか、あるいは前記防錆皮膜の上層部に珪酸塩を主として含有する水溶液で処理して珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜を密着して形成した後に、第2防錆皮膜の上層部にポリマーを主として含有する処理液で処理してポリマーを主として含有する第3防錆皮膜を密着して形成した後、必要に応じて水洗し、乾燥することが防錆性および自己修復性を向上できるので好ましい。
【0046】
硅酸塩を含む水溶液の珪酸塩の濃度、pHは特に限定されないが、珪素換算で好ましくは0.1〜50g/l、さらに好ましくは2〜30g/lの範囲であり、pHは0.5〜5.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0に調整するのがよい。pHがpH0.5未満あるいはpH5.5を超えると生成した硅酸塩皮膜が再溶解しやすくなる。
【0047】
珪素換算で0.1g/l未満であると良好な防食性のある硅酸塩皮膜が得られない恐れがあり、50g/lを超えても処理時間短縮、防錆性能においてより以上の効果を期待できず、不経済となる。
【0048】
また、硅酸塩を含む水溶液の温度は、凡そ10〜50℃が望ましい。10℃未満では、充分な皮膜形成に長時間かかり、50℃を超えると、防錆性のある良好な皮膜になりにくい上、処理液の蒸発が多く不経済となる。更に、処理時間は、凡そ10〜180秒が望ましい。10秒未満では、硅酸塩皮膜の生成が不十分となる恐れがあり、180秒を超えても、処理濃度低減、防錆性能においてより以上の効果を期待できない。
【0049】
硅酸塩を含む水溶液のpH調整は、アルカリ性物質や酸性物質を用いて行うことができる。pH調整用のアルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水などが挙げられ、酸性物質としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、弗化水素酸、蟻酸、酢酸、有機酸、有機カルボン酸などを挙げることができる。
硅酸塩を含む水溶液には処理液中での安定化剤として酸化剤、還元剤、キレート剤などの公知の添加剤を添加することができる。
前記硅酸塩を含む水溶液で処理して得られる防錆皮膜の厚さは特に限定されるものではない。しかし、上記処理条件で処理するとおよそ0.01〜0.5μm程度の厚さの防錆皮膜が得られる。
【0050】
本発明で用いるポリマーは、前記防錆皮膜の上に適用して密着して防錆性に優れた樹脂皮膜を形成できるものであれば、ポリマーは熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でも合成ゴムや天然ゴムあるいはこれらの2つ以上の混合物であってもよい。
本発明で用いる熱硬化性樹脂は、具体的には、例えば、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂あるいはこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
【0051】
エポキシ系樹脂の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ヒダントイン型エポキシ化合物など、これらの2種以上の混合物に、必要に応じて反応性希釈剤を配合し、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトール変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、パラキシレン変性フェノール樹脂などのフェノール樹脂、酸無水物、アミン系化合物などの触媒を配合したものを挙げることができる。
【0052】
本発明で用いる光硬化性樹脂は、具体的には、例えば、エポキシ樹脂のアクリル酸エステル例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテルジアクリレート、エポキシ樹脂とアクリル酸とメチルテトラヒドロフタル酸無水物との反応生成物、エポキシ樹脂と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物、エポキシ樹脂のジグリシジルエーテルとジアリルアミンとの反応生成物などのエポキシ樹脂系プレポリマーや、グリシジルジアクリレートと無水フタル酸との開環共重合エステル、メタクリル酸二量体とポリオールとのエステル、アクリル酸と無水フタル酸とプロピレンオキシドから得られるポリエステル、ポリエチレングリコールと無水マレイン酸とグリシジルメタクリレートとの反応生成物などのような不飽和ポリエステル系プレポリマーや、ポリビニルアルコールとN−メチロールアクリルアミドとの反応生成物、ポリビニルアルコールを無水コハク酸でエステル化した後、グリシジルメタクリレートを付加させたものなどのようなポリビニルアルコール系プレポリマー、ピロメリット酸二無水物のジアリルエステル化物に、p,p′−ジアミノジフェニルを反応させて得られるプレポリマーのようなポリアミド系プレポリマーや、エチレン−無水マレイン酸共重合体とアリルアミンとの反応生成物、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物又はこれにさらにグリシジルメタクリレートを反応させたものなどのポリアクリル酸又はマレイン酸共重合体系プレポリマーなど、そのほか、ウレタン結合を介してポリオキシアルキレンセグメント又は飽和ポリエステルセグメントあるいはその両方が連結し、両末端にアクリロイル基又はメタクロイル基を有するウレタン系ポリマーなどを挙げることができる。
【0053】
本発明で光硬化性樹脂の硬化に用いる光重合開始剤は、従来公知のもので良く、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド−ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0054】
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、具体的には、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ハロゲン化ポリオレフィン系、ポリイミド系、アクリル系、エチレン・ビニルアルコール共重合体系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリスチレン系、ポリカーボネート系、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系、ポリエーテルスルホン系などを挙げることができる。
本発明で用いるポリマーを主として含有する処理液は、溶剤型、エマルジョン型などでよく、防錆皮膜の上に適用して皮膜を形成しそのままあるいは乾燥して第2防錆皮膜としたり、加熱したり紫外線照射したりして硬化させることができる。
ポリマーを主として含有する処理液で処理して得られる防錆皮膜の厚さは特に限定されるものではない。しかし防錆皮膜との優れた密着性および防錆性を付与できるので凡そ0.1〜100μm程度の厚さが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
SPCC鋼鈑(100×50×1.0mm)にめっき膜厚8〜12μmの亜鉛めっきを施したものを試験片とし、この試験片を本発明の防錆皮膜形成用組成物(NHVO含有量10g/l、Vとして4.3g/l、(NH・TiF含有量2g/l、Tiとして1.08g/l、LiNO含有量150g/l、NOとして172g/l、pH2.0)を用いて25℃で30秒間浸漬して処理した後、水洗し、60℃で10分間乾燥して、本発明の防錆処理金属を得た。
【0057】
その耐食性を評価するためにJIS−Z2371に準拠する塩水噴霧試験を行った。評価の方法は、試験片に白錆が発生するまでの時間および白錆の発生した面積(試験片の全面積に対する白錆の発生した合計面積の割合)が5%を超えるまでの時間で評価した。
【0058】
また、その自己修復性を評価するためにこの試験片にナイフを用いて亜鉛めっきに達するまで防錆被膜にクロスカットの傷を入れ、そして24時間常温、常圧下に放置した後、JIS−Z2371に準拠する塩水噴霧試験を行った。評価の方法は、試験片に白錆が発生するまでの時間および白錆の発生した面積(試験片の全面積に対する白錆の発生した合計面積の割合)が5%を超えるまでの時間で評価した。
表1に、使用した防錆皮膜形成用組成物の成分およびその含有量(g/l)、pHおよび塩水噴霧試験(時間)の結果を示す。
【0059】
(実施例2〜21)
実施例2〜18においては、表1に示した本発明の防錆皮膜形成用組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を処理して、本発明の防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表1に示す。
【0060】
実施例19においては、実施例1と同様にして試験片を処理した後、水洗し、ケイ酸カリウム含有量5g/lの処理液で処理した以外は、実施例1と同様にして試験片を処理して、本発明の防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表1に示す。
【0061】
実施例20においては、実施例2と同様にして試験片を処理した後、水洗し、ケイ酸カリウム含有量5g/lの処理液で処理した以外は、実施例1と同様にして試験片を処理して、本発明の防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表1に示す。
【0062】
実施例21においては、実施例7と同様にして試験片を処理した後、水洗し、乾燥後、市販の油性アクリル系塗料を10μm厚になるように塗装し、100℃で30分熱風乾燥した以外は、実施例1と同様にして試験片を処理して、本発明の防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
(実施例22〜29)
実施例22〜29においては、表2に示したMn,CO,Ce,Mo,Niをさらにそれぞれ所定量含有する本発明の防錆皮膜形成用組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を処理して、本発明の防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
(比較例1〜7)
比較例1〜7においては、各成分を表3に示した量添加した比較のための防錆皮膜形成用組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を処理して、比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表3に示す。
【0067】
(比較例8)
市販の6価クロメート有色剤(日本表面化学(株)製のMC−353)を用いて建浴し、25℃で20秒間処理し、水洗後、70℃で10分間乾燥して、比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表3に示す。
【0068】
(比較例9)
市販の6価クロメートユニクロ剤(日本表面化学(株)製のMC−372)を用いて建浴し、25℃で20秒間処理し、水洗後、70℃で10分間乾燥して、比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表3に示す。
【0069】
(比較例10)
市販の3価クロム剤(日本表面化学(株)製のTR−175R)50ml/lと市販の3価クロム剤(日本表面化学(株)製のTR−175S)100ml/lとで建浴し、30℃で30秒間処理し、水洗後、70℃で10分間乾燥して、比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表3に示す。
【0070】
(比較例11)
市販の油性アクリル系塗料を10μm厚になるように塗装し、100℃で30分熱風乾燥した以外は、実施例1と同様にして試験片を処理して、比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表3に示す。
【0071】
(比較例12)
SPCC鋼鈑(100×50×1.0mm)にめっき膜厚8〜12μmの亜鉛めっきを施した試験片に防錆処理することなく、そのまま実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
(比較例13〜14)
表4に示したCO,Ce,Mo,Niをそれぞれ所定量含有する比較のための防錆皮膜形成用組成物を用いて、実施例1と同様にして試験片を処理して、比較のための防錆処理金属を得た。実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を表4に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
表1および表2から、実施例1〜29においては、本発明の防錆皮膜形成用組成物を用いて、環境に影響を与える有害な6価クロムなどの化学薬品を使用することなく、金属基体の表面に6価クロムに匹敵するか、あるいは凌駕する優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成できることが判る。
それに対して、表3および表4から、比較例1−7および比較例13−14においては、本発明の範囲外の組成を有する比較のための防錆皮膜形成用組成物を用いたので、防錆性に劣るとともに、自己修復作用にも劣ることが判る。
そして、比較例8の市販の6価クロメート有色剤を用いた場合は、優れた防錆性を有するとともに、優れた自己修復作用があるが、比較例9−12の場合は、防錆性に劣るとともに、自己修復作用にも劣ることが判る。
【0076】
(実施例30)
SPCC鋼鈑(100×50×1.0mm)にめっき膜厚8〜12μmの亜鉛めっきを施したものを試験片とし、この試験片を、((NH・TiFを用いてTi換算で濃度7g/l、LiNOを用いてNOとして濃度50g/l、KSiOを用いてSi換算で濃度4g/l、そしてNHVOを用いてV換算で濃度0.01〜20g/l、pH2.0)に調製した防錆皮膜形成用組成物を用いて25℃で30秒間浸漬して処理した後、水洗し、60℃で10分間乾燥して、防錆処理金属を得た。そして実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を図5に横軸をV換算濃度0.01〜20g/l、縦軸を防錆性および自己修復性として示す。
【0077】
(実施例31)
SPCC鋼鈑(100×50×1.0mm)にめっき膜厚8〜12μmの亜鉛めっきを施したものを試験片とし、この試験片を、(NHVOを用いてV換算で濃度5g/l、KNOを用いてNOとして濃度40g/l、KSiOを用いてSi換算で濃度5g/l、そして(NH・TiFを用いてTi換算で濃度0.01〜50g/l、pH2.0)に調製した防錆皮膜形成用組成物を用いて25℃で30秒間浸漬して処理した後、水洗し、60℃で10分間乾燥して、防錆処理金属を得た。そして実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を図6に横軸をTi換算濃度0.01〜50g/l、縦軸を防錆性および自己修復性として示す。
【0078】
(実施例32)
SPCC鋼鈑(100×50×1.0mm)にめっき膜厚8〜12μmの亜鉛めっきを施したものを試験片とし、この試験片を、(NHVOを用いてV換算で濃度4g/l、KNOを用いてNOとして濃度50g/l、K・TiFを用いてTi換算で濃度6g/l、KSiOを用いてSi換算で濃度0.01〜50g/l、pH2.0)に調製した防錆皮膜形成用組成物を用いて25℃で30秒間浸漬して処理した後、水洗し、60℃で10分間乾燥して、防錆処理金属を得た。そして実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を図7に横軸をSi換算濃度で0.01〜50g/l、縦軸を防錆性および自己修復性として示す。
【0079】
(実施例33)
SPCC鋼鈑(100×50×1.0mm)にめっき膜厚8〜12μmの亜鉛めっきを施したものを試験片とし、この試験片を、(NHVOを用いてV換算で濃度4g/l、(NH・TiFを用いてTi換算で濃度8g/l、KSiOを用いてSi換算で濃度5g/l、NHNOを用いてNOとして濃度1〜500g/l、pH2.0)に調製した防錆皮膜形成用組成物を用いて25℃で30秒間浸漬して処理した後、水洗し、60℃で10分間乾燥して、防錆処理金属を得た。そして実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果を図8に横軸をNOとして濃度1〜500g/l、縦軸を防錆性および自己修復性として示す。
【0080】
図5〜8から、V換算で濃度0.1〜20g/l、Ti換算で濃度0.1〜50g/l、Si換算で濃度0.1〜50g/l、硝酸イオンの濃度9.0〜500g/lを必須成分として含む本発明の防錆皮膜形成用組成物(pH2.0)を用いると、優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持されることが判る。
【0081】
(実施例34)
SPCC鋼鈑(100×50×1.0mm)にめっき膜厚8〜12μmの亜鉛めっきを施したものを試験片とし、この試験片を、(NHVOを用いてV換算で濃度4g/l、K・TiFを用いてTi換算で濃度3g/l、KSiOを用いてSi換算で濃度3g/l、(NH)NOを用いてNOとして濃度40g/l、pH2.0)に調製した本発明の防錆皮膜形成用組成物を用いて25℃で30秒間浸漬して処理した後、水洗し、60℃で10分間乾燥して、本発明の防錆処理金属を得た。そしてこの本発明の防錆処理金属を実施例1と同様にして塩水噴霧試験を行った結果、防錆性が96時間、自己修復性が96時間であった。
この本発明の防錆処理金属の防錆被膜をエネルギー分散形蛍光X線分析により下記の条件で分析した。
分析機器:島津製作所(株)製、EDX−800HS2
雰囲気:真空
コリメータ:10mmφ
スピン:しない
分析結果:
Si:43.014μg/cm
K: 13.902μg/cm
Ti: 9.662μg/cm
V: 4.317μg/cm
【0082】
本発明の防錆処理金属が優れた防錆性および自己修復性を示す理由は明らかでないが、例えば下記のようなメカニズムが考えられる。勿論、この考え方に限定されるものではない。
本発明の防錆処理金属の防錆被膜中のSi、K、Ti、Vなどは、試験片を本発明の防錆皮膜形成用組成物を用いて25℃で30秒間浸漬して処理した後、水洗し、60℃で10分間乾燥するなどの工程を経て、再結合、再配列、縮重合が行なわれ、−O−Si(−O-)2−O−K、O−V(−O−)−O-、−O−Si−O−V−O−、−Si−O−Ti−O−V−O−K、などを含む3次元網目状構造が形成されるため、その結果、優れた防錆性を示すと考えられる。
そして、この試験片にナイフを用いて亜鉛めっきに達するまで防錆被膜にクロスカットの傷を入れ、24時間常温、常圧下に放置すると、その間に前記再結合、再配列、縮重合が行なわれ前記3次元網目状構造が形成され切断面が修復されるため優れた自己修復性を示すと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の防錆皮膜形成用組成物は、環境に影響を与える有害な6価クロムなどの化学薬品を使用することなく、6価クロムに匹敵する金属基体の表面に優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を形成できるという顕著な効果を奏するものであり、
そして本発明の防錆皮膜形成方法を用いて金属基体の表面を処理して金属基体の表面に、優れた防錆性を有するとともに、防錆皮膜に傷などが発生しても自己修復作用があるために防錆性が維持される防錆皮膜を密着して供えた本発明の防錆処理金属を容易に経済的に製造できるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0084】
1、1A、1B、1C 本発明の防錆処理金属
2 金属基体
3 金属被膜
4 防錆被膜
5 第2防錆皮膜
6 第2防錆皮膜あるいは第3防錆皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基体の表面を処理するための防錆皮膜形成用組成物であって、
(1)V換算で濃度0.1〜20g/lのバナジン酸イオン、バナジンイオン、バナジルイオンから選択されるイオン、
(2)Ti換算で濃度0.1〜50g/lのチタン酸イオン、フルオロチタン酸、チタンイオンから選択されるイオン、
(3)Si換算で濃度0.1〜50g/lの珪酸イオンおよび/またはコロイダルシリカ、
(4)NHNO,KNO,NaNO,LiNO,Ca(NO)から選ばれる硝酸塩の1種または2種以上の混合物から供給される濃度9.0〜300g/lの硝酸イオンを必須成分として含み、pHが0.1〜5.5の範囲に調製された水溶液あるいは水分散液からなることを特徴とする防錆皮膜形成用組成物。
【請求項2】
珪酸イオンおよび/またはコロイダルシリカを0.2〜10g/l含むことを特徴とする請求項1記載の防錆皮膜形成用組成物。
【請求項3】
Mo,Co,Ni,Mn,Mg,Sr,Al,Ca,Zr,Ce,Wから選ばれる1種または2種以上の混合物からなる金属イオンをさらに添加したことを特徴とする請求項1記載の防錆皮膜形成用組成物。
【請求項4】
金属基体の表面が、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、銅、鉄およびそれらの合金からなる群から選ばれる表面であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の防錆皮膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防錆皮膜形成用組成物で金属基体の表面を処理して防錆皮膜を形成して水洗後、乾燥することを特徴とする防錆皮膜形成方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の防錆皮膜形成用組成物で金属基体の表面を処理して防錆皮膜を形成後、水洗するか、あるいは防錆皮膜を形成後、乾燥するか、あるいは防錆皮膜を形成後、水洗し、乾燥した後に、前記防錆皮膜の上層部に珪酸塩を主として含有する水溶液で処理して珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜を形成するか、あるいは前記防錆皮膜の上層部にポリマーを主として含有する処理液で処理してポリマーを主として含有する第2防錆皮膜を形成するか、あるいは前記防錆皮膜の上層部に珪酸塩を主として含有する水溶液で処理して珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜を形成した後に、第2防錆皮膜の上層部にポリマーを主として含有する処理液で処理してポリマーを主として含有する第3防錆皮膜を形成した後、必要に応じて水洗し、乾燥することを特徴とする請求項5記載の防錆皮膜形成方法。
【請求項7】
請求項5あるいは請求項6記載の防錆皮膜形成方法を用いて金属基体の表面に密着して形成された防錆皮膜を備えるか、もしくは前記防錆皮膜の上層部に密着して形成された珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜をさらに備えるか、あるいは前記防錆皮膜の上層部に密着して形成されたポリマーを主として含有する第2防錆皮膜をさらに備えるか、あるいは珪酸塩を主として含有する第2防錆皮膜の上層部に密着して形成されたポリマーを主として含有する第3防錆皮膜をさらに備えたことを特徴とする防錆処理金属。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−12668(P2012−12668A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150825(P2010−150825)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(595098103)株式会社サンビックス (3)
【Fターム(参考)】