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防錆顔料組成物及び防錆塗料組成物
説明

防錆顔料組成物及び防錆塗料組成物

【課題】鉛や、クロム等の有害重金属元素を含有しておらず、かつ防錆性や貯蔵安定性が優れた防錆顔料組成物及び該防錆顔料組成物を含有する防錆塗料組成物を提供することである。
【解決手段】縮合リン酸カルシウムを含む防錆顔料組成物であり、防錆顔料組成物:ZnO=10質量部:3質量部の比率で混合してCuKα線により測定した粉末X線回折によるブラッグ角(2θ)における28.5±0.3°と31.8±0.3°の回折ピークの強度比28.5°/31.8°が0.09〜1.00の範囲である防錆顔料組成物、及び該防錆顔料組成物を含有する防錆塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、防錆塗料に配合することのできる防錆顔料組成物に関し、特に、鉛や、クロムの有害重金属を全く含まず、かつ各種防錆塗料や防錆油等に適用可能であり、汎用性に富み、しかも、防錆効果に優れた防錆顔料組成物及び該防錆顔料組成物を含有する防錆塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、防錆顔料としては、鉛丹や、シアナミド鉛、亜酸化鉛等の鉛系防錆顔料や、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート等のクロム酸塩系防錆顔料が広範囲に使用されてきた。
【0003】
しかしながら、これらの鉛系防錆顔料やクロム酸塩系防錆顔料は優れた防錆性を有するものの、人の健康を損なう恐れがあるなど、安全衛生面や、公害・環境面等から次第にその使用が規制されるに至っている。
【0004】
一方、これに代わる防錆顔料として、リン酸塩系や、モリブデン酸塩系、有機ホスホン酸塩系、ホウ酸塩系等の顔料が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらは安全衛生面での問題は少ないものの、鉛系や、クロム酸塩系防錆顔料と比べると、防錆性は一般に劣る。更に、製造コストの高騰や、顔料物性、分散性又は貯蔵安定性が悪化する等の課題がある。
【0006】
一般に、防錆顔料は、主成分として溶出し易い固体酸を用いているので、その酸性分の過剰な溶出を抑えて、なおかつ塗膜を中性に保つために副成分として固体塩基を含有している。
【0007】
例えば、特許文献1には、トリポリリン酸ナトリウムと、水可溶性アルカリ土類金属化合物とを、湿式で反応させた沈殿物から防錆顔料組成物を得る方法を提案しているが、このようにして得られる防錆顔料組成物では、水可溶性のイオン、例えば、NaやNO3−、Cl等が多く混在するため、長期に渡る防錆性は得られない。
【0008】
その現状を鑑みて本発明者らは、カルシウム成分とリン成分とからなり、かつその両成分中のカルシウムとリンとのモル比率(Ca/P=m)が0.60<m<0.80である混合物を、180〜350℃で焼成してなる縮合リン酸カルシウムを含む防錆顔料が優れた防錆性を有することを見出した(例えば、特許文献2)。しかしながら、この顔料は焼成条件によっては未焼結成分が多く、水溶出成分が多過ぎるため塗膜ふくれの要因になることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−113482号公報
【特許文献2】国際公開番号2005/089071号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、鉛や、クロム等の有害重金属元素を含有しておらず、かつ塗膜ふくれ等での防錆性や貯蔵安定性が優れた防錆顔料組成物及び該防錆顔料組成物を含有する防錆塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、下記構成により、上記課題を達成することを見出し、本発明に到達したものである。
【0012】
本発明に従って、縮合リン酸カルシウムを含む防錆顔料組成物であり、防錆顔料組成物:ZnO=10質量部:3質量部の比率で混合してCuKα線により測定した粉末X線回折によるブラッグ角(2θ)における28.5±0.3°と31.8±0.3°の回折ピークの強度比28.5°/31.8°が0.09〜1.00の範囲であることを特徴とする防錆顔料組成物が提供される。
【0013】
また、本発明に従って、上記防錆顔料組成物を含有することを特徴とする防錆塗料組成物が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防錆顔料組成物及び防錆塗料組成物は、鉛や、クロム等の有害重金属元素を含まず、塗膜ふくれ等での防錆性や貯蔵安定性で優れた効果を発揮する。この防錆顔料組成物は、各種樹脂系の塗料に配合することができ、各種金属の防錆塗料用顔料として極めて有用である。また、他の防錆用材料としての使用方法、例えば、防錆油への添加やインヒビター的な使用方法等、防錆顔料の各種使用用途と同様な利用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0016】
本発明の防錆顔料組成物における縮合リン酸カルシウムの防錆作用に関する詳細な機構は不明であるが、縮合リン酸カルシウムが、腐食雰囲気下において水にわずかに溶解し、金属に対するキレート力が非常に強いため、鉄表面に不動態皮膜を形成し、錆の発生を防止するものと考えられる。本発明においては、縮合リン酸カルシウムとして特にトリポリリン酸カルシウムCa(P10が優れた防錆性を示すことが判った。
【0017】
本発明の防錆顔料組成物における縮合リン酸カルシウムは、体積平均粒子径が約1〜30μm程度の縮合リン酸カルシウム10質量部に基準物質として同程度の平均粒子径を有する酸化亜鉛ZnO質量部を混合してCuKα線により測定した粉末X線回折によるブラッグ角(2θ)で、トリポリリン酸カルシウムCa(P10に由来する回折ピーク28.5±0.3°と酸化亜鉛ZnOに由来する回折ピーク31.8±0.3°の回折ピークの強度比28.5°/31.8°が0.09〜1.00の範囲であるとき、優れた防錆性を示す。好ましくは0.03〜1.00の範囲である。回折ピークの強度比が0.09未満になると優れた防錆作用を発揮するトリポリリン酸カルシウムCa(P10の溶出量が少なく、不動態皮膜の形成が不十分となるので防錆効果が乏しくなる。
【0018】
本発明の防錆顔料組成物における縮合リン酸カルシウムは、カルシウム成分とリン成分とからなり、かつその両成分中のカルシウムとリンとのモル比率(Ca/P=m)が、0.60<m<0.80の範囲にあることが好ましい。混合物中のカルシウムとリンとのモル比率(Ca/P=m)が、m≦0.60の場合には、縮合リン酸イオンの溶出量が過剰となり、塗膜の膨れが生じ、防錆効果を低下させるため、好ましくない。また、そのモル比率mが、m≧0.80の場合には、不動態皮膜形成に必要な縮合リン酸イオンの溶出量が低過ぎるため、好ましくない。
【0019】
また、本発明の防錆顔料組成物の構成成分である縮合リン酸カルシウムは、カルシウムとリンとのモル比率(Ca/P=m)が、0.60<m<0.80の範囲にある混合物の物温を、サンプル中の未焼結部分を減らすために縮合リン酸カルシウムの生成温度域より高い350〜450℃にまで昇温することを特徴とする。例えば、180〜350℃の温度で2〜8時間焼成した後に350〜450℃の温度で1〜2時間焼成する方法、約350〜450℃の温度で1〜10時間焼成する方法、室温から約450℃まで徐々に温度勾配をかけて焼成させる方法等が挙げられる。
【0020】
焼成条件により異なるが、通常、焼成温度が180℃より低いと、リン酸の縮合が起こらず、縮合リン酸カルシウムは得られないため、ピーク強度比28.5°/31.8°が0.09より低い値になる。
【0021】
また、前記縮合リン酸カルシウムはメタリン酸カルシウムCa(POの回折ピーク25.5°、又はピロリン酸カルシウムCaに由来する回折ピーク30.7°のX線回折ピーク強度比が、25.5°/31.8°は0.4以下、ピーク強度比30.7°/31.8°は0.1以下であると優れた防錆効果を示すため好ましい。
【0022】
本発明の防錆顔料組成物の構成成分である縮合リン酸カルシウムは、10wt%水分散液の電気伝導度が0.01〜2.00mS/cmのとき、優れた防錆性を示す。より好ましくは0.01〜1.00mS/cmである。電気伝導度は、縮合リン酸カルシウムの最終的な焼成温度が高いほど低くなり易い。また、固体塩基の添加量により調整できる。電気伝導度が0.01mS/cmより低い場合は、不動態皮膜形成に必要な縮合リン酸イオンの溶出量が低過ぎるため、防錆性が低下し好ましくない。また、電気伝導度が2.00mS/cmを超える場合は、塗膜のふくれの不具合が生じ易くなるので好ましくない。
【0023】
リン成分としては、例えば、正リン酸や、ポリリン酸、亜リン酸、五酸化二燐等が好適に挙げられる。また、カルシウム成分としては、例えば、カルシウム単体や、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム等が好適に挙げられる。なお、硝酸カルシウムや、酢酸カルシウム、塩化カルシウムは、焼成物中に水可溶性のイオンが残存し、顔料の防錆性が低下する傾向にある。
【0024】
本発明に用いられる縮合リン酸カルシウムとしては、CaHや、Ca、Ca(P、Ca(P10、Ca(POやCaHPO4、Ca19等が代表的なものであり、これら群から選択される複数の組成式であることが望ましい。特にトリポリリン酸カルシウムCa(P10が優れた防錆性を示すことから、Ca(P10を主成分とする組成物であることが好ましい。
【0025】
このような縮合リン酸カルシウムは、主にX線回折法を用い、X線回折装置(XRD)によって得られるブラッグ角の回折ピークにより、同定することができる。
【0026】
次に、本発明者らは、縮合リン酸カルシウムと組み合わせる固体塩基の探索を行った結果、アルカリ土類金属化合物が良好な防錆性を向上させる効果を示すことを見出した。アルカリ土類金属化合物としては、カルシウムや、マグネシウム、ストロンチウム等の酸化物や、水酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩等が挙げられ、いずれも良好な防錆性を示すが、特にマグネシウムの化合物を用いるのが望ましい。
【0027】
アルカリ土類金属化合物の量は、防錆顔料組成物全体に対して、0.1〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%である。従って、この場合、縮合リン酸カルシウムの量は、防錆顔料組成物全体に対して、40〜99.9質量%が好ましい。特にアルカリ土類金属化合物として塩基性の強い酸化物や、水酸化物を用いる場合は、防錆顔料組成物全体に対して、アルカリ土類金属化合物は、0.5〜20質量%であることが望ましい。また、このアルカリ土類金属化合物は、1種又は2種以上で使用してもよい。
【0028】
防錆顔料組成物全体に対する縮合リン酸カルシウムの混合比率が、上記範囲より少ないときは、防錆作用を発揮する要因となる縮合リン酸イオンの溶出量が少なくなり、防錆効果が不十分となる傾向にあり、またその比率が上記範囲より多くなると、アルカリ土類金属化合物の減少により、縮合リン酸カルシウムが有する固体酸性を中性化することができなくなるため、縮合リン酸カルシウムに基づく防錆効果が低下する傾向にある。
【0029】
アルカリ土類金属化合物は、縮合リン酸カルシウムと混合して、又はその混合物を焼成して、使用することができる。
【0030】
本発明の防錆顔料組成物は、塗膜の硬化性向上や防錆被膜の緻密化の観点から、アルミニウム、鉄、亜鉛、チタン、バナジウム、ビスマス等の金属酸化物を含有することが好ましい。含有量としては0.1〜50質量%が好ましい。
【0031】
本発明の防錆顔料組成物は、上述の縮合リン酸カルシウム及び、それとアルカリ土類金属化合物との混合物に、更にケイ素化合物を混合してもよい。ケイ素化合物を混合すると、素地金属の腐食生成物を固定化でき、防錆効果の向上のため好ましい。ケイ素化合物としては、一般にコロイダルシリカ、湿式法や気相法で合成されたシリカ、また、二酸化ケイ素の形でシリカを含有するカオリン、マイカ、タルク等の天然鉱物等も使用可能であり、特に限定されない。使用するケイ素化合物の量は、防錆顔料組成物全体に対して、一般に、0〜80質量%、好ましくは、0.5〜50質量%であることが適当である。
【0032】
本発明の防錆顔料組成物は、上述の縮合リン酸カルシウムの単独使用、又はアルカリ土類金属化合物との併用で十分な防錆効果を発揮するものであるが、更にキレート能を有する有機ホスホン酸、有機カルボン酸、又はそれらの中和塩からなる群から選択されるキレート化化合物を含有させると相乗効果が現れ、防錆効果は更に優れたものになる。
【0033】
本発明の防錆顔料組成物に使用されるキレート能を有する有機ホスホン酸として、例えば、ニトリロトリスメチレンホスホン酸や、ニトリロトリスエチレンホスホン酸、ニトリロトリスプロピレンホスホン酸、ニトリロトリスジエチルメチレンホスホン酸等のアミノアルキレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラエチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラプロピレンホスホン酸等のエチレンジアミンテトラアルキレンホスホン酸、メタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、プロパン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸等のアルキルメタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、2−ヒドキシホスホノ酢酸等が挙げられる。
【0034】
また、キレート能を有する有機カルボン酸として、例えば、クエン酸や、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸、マレイン酸、グリコール酸、メルカプト酢酸、チオグリコール酸、サリチル酸、スルフォサリチル酸、アントラニル酸、N−メチルアントラニル酸、3−アミノ−2−ナフトエ酸、1−アミノ−2−ナフトエ酸、2−アミノ−1−ナフトエ酸、1−アミノアントラキノン−2−カルボン酸、タンニン酸、没食子酸等が挙げられる。
【0035】
また、それらの中和塩としては、上記化合物のアルカリ金属塩や、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウムイオン塩(窒素原子で置換された一級、二級、三級又は四級アンモニウムイオン等を含む)等で全部又は一部中和されたものが挙げられる。
【0036】
なお、有機ホスホン酸有機カルボン酸又はそれらの中和塩からなるキレート化化合物の量は、特に限定されないが、好ましくは、防錆顔料組成物全体に対して、一般に0〜20質量%、好ましくは、2〜15質量%であることが適当である。
【0037】
上記縮合リン酸カルシウムと、アルカリ土類金属化合物、金属酸化物、有機ホスホン酸、有機カルボン酸又はその中和塩からなるキレート化化合物との混合に際しては、乾式混合や、湿式混合のいずれも採用することができる。特に、防錆顔料組成物を防錆塗料に適用する場合、アルカリ土類金属化合物によるアルカリ成分が樹脂と反応し、ゲル化や増粘するおそれがあるときには、湿式混合法でこれらの成分を予め湿式反応させておき、その乾燥物を焼成あるいは粉砕等により使用してもよい。
【0038】
本発明の防錆顔料組成物は、縮合リン酸カルシウムを主成分とする防錆顔料粒子の分散性あるいは防錆塗料に適用する場合のビヒクルとの混和性を考慮して、必要に応じ表面処理を施してもよい。表面処理方法は、前記目的を達成するために行われる常法を用いることができ、例えば、高級脂肪酸若しくはその誘導体、酸性リン酸エステル若しくはその誘導体、ロジン酸若しくはその誘導体、又はシランカップリング剤から選ばれた1種又は2種以上で表面処理されたものであってもよい。
【0039】
高級脂肪酸若しくはその誘導体としては、例えば、カプリン酸や、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸若しくはそれらの金属塩又はアミド等、
酸性リン酸エステル若しくはその誘導体としては、例えば、モノメチルアシドホスフェート、ジメチルアシドホスフェート、ジエチルアシドホスフェート、メチルエチルアシドホスフェート、n−プロピルアシドホスフェート、イソプロピルアシドホスフェート、n−ブチルアシドホスフェート、イソブチルアシドホスフェート等、
ロジン酸若しくはその誘導体としては、例えば、ロジン酸、天然ロジン又はその金属塩又はアミド等、
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等
が挙げられる。
【0040】
本発明の防錆顔料組成物を、防錆塗料に配合して使用する場合、その塗料としては、従来からの溶剤系塗料に対してはもちろんのこと、最近の環境問題との関連で注目されている水系塗料(水溶性樹脂系、ディスパージョン系、エマルジョン系等)や、粉体塗料に対しても適用可能である。また、使用する塗料用バインダーとしては、特に制限されることなく各種の樹脂を用いることができ、例えば、ボイル油や、油性ワニス、フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂等の各種塗料用合成樹脂、塩化ゴム、環化ゴム等のゴム誘導体、その他繊維素誘導体等を、単独又は併用して使用することができる。また、前記塗料用樹脂に分散させる場合、本発明の防錆顔料組成物は、縮合リン酸カルシウムと、アルカリ土類金属化合物や、金属酸化物、有機ホスホン酸、有機カルボン酸又はその中和塩とを予め混合することなく、それらを別々に前記塗料用樹脂に添加して、塗料中でそれらを混練させても、防錆効果に優れた防錆塗料を製造することが可能である。
【0041】
本発明の防錆顔料組成物を防錆塗料に使用する場合、本発明の防錆顔料組成物を単独で用いるのが望ましいが、他の種類の防錆顔料と併用してもよい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例及び比較例により、具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、これらの実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における濃度や含有量を示す、「%」や「部」は、特に断らない限り、「質量%」や「質量部」である。
【0043】
「1.縮合リン酸カルシウムAの合成」
炭酸カルシウム100gと、市販の85%リン酸154gと(Ca/Pのモル比率は、0.75)をフラスコに採り、攪拌しながら80℃で3時間反応させた。この反応液を放冷後、温度を300℃に設定した乾燥機にて、2時間焼成した後に450℃に設定した乾燥機にて4時間焼成して縮合リン酸カルシウムAを合成した。この反応により得られる縮合リン酸カルシウムAの主成分は、Ca、Ca(P10であった。
【0044】
「2.縮合リン酸カルシウムBの合成」
炭酸カルシウム100gと、市販の85%リン酸185gと(Ca/Pのモル比率は、0.63)をフラスコに採り、攪拌しながら80℃で3時間反応させた。この反応液を放冷後、温度を400℃に設定した乾燥機にて、4時間焼成して縮合リン酸カルシウムBを合成した。この反応により得られる縮合リン酸カルシウムBの主成分は、Ca(PO、Ca(P10であった。
【0045】
「3.縮合リン酸カルシウムCの合成」
炭酸カルシウム100gと、市販の85%リン酸173gと(Ca/Pのモル比率は0.67)をフラスコに採り、攪拌しながら特に温度調整をせず3時間反応させた。この反応液を放冷後、温度を280℃に設定した乾燥機にて、30時間焼成した後に、450℃で2時間焼成して縮合リン酸カルシウムCを合成した。この反応により得られる縮合リン酸カルシウムCの主成分は、Ca(P10、Ca(PO、Caであった。
【0046】
「4.縮合リン酸カルシウムDの合成」
炭酸カルシウム100gと、市販の85%リン酸127gと(Ca/Pのモル比率は0.90)をフラスコに採り、攪拌しながら80℃で3時間反応させた。500℃で4時間焼成し縮合リン酸カルシウムDを合成した。この反応により得られる縮合リン酸カルシウムDの主成分は、Ca、Ca(P10であった。
【0047】
「5.縮合リン酸カルシウムEの合成」
炭酸カルシウム100gと、市販の85%リン酸173gと(Ca/Pのモル比率は0.67)をフラスコに採り、攪拌しながら80℃で3時間反応させた。この反応液を放冷後、温度を175℃に設定した乾燥機にて、10時間焼成して縮合リン酸カルシウムEを合成した。この反応により得られる縮合リン酸カルシウムEは、25.5°、28.5°、30.7°にX線回折ピークを有しておらず、粉末X線回折測定によって得られたブラッグ角により同定した結果、CaHPO、CaHを含有する組成物であった。
【0048】
上記のように調製した縮合リン酸カルシウムA〜Eと、アルカリ土類金属化合物を、表1に示す配合比率でそれぞれ混合して作製した防錆顔料の、XRDピーク強度比、電気伝導度を測定した結果を表1に示す。
【0049】
上記の防錆顔料に金属酸化物、有機ホスホン酸、有機カルボン酸又はそれらの中和塩とを表1に示す配合比率でそれぞれ乾式混合して、実施例1〜16、比較例1〜2とした。
【0050】
【表1】

【0051】
更に、
比較例3としてリン酸亜鉛含有トリポリリン酸アルミニウム(テイカ(株)製「K−WHITE AZP500」)、
比較例4としてカルシウム変性トリポリリン酸アルミニウム(テイカ(株)製「K−WHITE Ca650」)、
比較例5として酸化亜鉛変性トリポリリン酸アルミニウム(テイカ(株)製「K−WHITE#105」)、
比較例6としてリン酸亜鉛(堺化学工業(株)製「ZPF」)
をそれぞれ防錆顔料として使用した。なお、比較例3〜6は、縮合リン酸カルシウムを含まない市販の防錆顔料である。
【0052】
<XRD回折ピーク強度比>
防錆顔料組成物:ZnO=10質量部:3質量部の比率となるように、体積平均粒子径を約3μmに調製した防錆顔料を300mgと酸化亜鉛ZnO(関東化学 鹿一級 純度99%以上)90mgを十分に混ぜ合わせた試料を、粉末X線回折測定装置XRD6000(株式会社島津製作所製)で、走査範囲24〜33°、走査ステップ0.01°、走査速度0.3°/分、管電圧40kV、管電流30mA、試料回転速度60rpmの条件でCuKα線によりX線測定を行った。
【0053】
<電気伝導度>
防錆顔料10部をイオン交換水90部に分散させ10wt%水分散液を作製し、90℃で10分間煮沸した後に室温まで放冷した。放冷後の水分散液をろ過し、23℃のろ液の電気伝導度を伝導度計CM−20E(東亜電波工業社製)にて測定した。
【0054】
(試験1:防錆顔料組成物を常乾型エポキシ樹脂系塗料に使用した場合の評価)
実施例1〜16及び比較例1〜6で得られた防錆顔料について、下記エポキシ樹脂系塗料に配合し、防錆効果の確認を行った。その結果を表3に示す。表3に示すように、本発明の防錆顔料組成物(実施例1〜16)は、比較例1や2及び市販の防錆顔料(比較例3〜6)より、優れた防錆効果を有していた。
【0055】
<常乾型エポキシ樹脂系塗料の調製>
上記の各防錆顔料について、各々4部、エポキシ樹脂溶液(三井石油化学(株)製、キシレン75%)26部、酸化チタン5部、タルク15部、炭酸カルシウム25部、タレ止め剤2部、沈降防止剤2部、消泡剤1部、キシレン12部、イソピロルアルコール8部を分散混合して、それぞれの主剤を調製した。また、硬化剤は、ポリアマイド樹脂68部にキシレン32部を加え、十分に混合溶解し、硬化剤を調製した。調製した各主剤80部と硬化剤20部をそれぞれよく混合し、各塗料を調製した。
【0056】
<試験板の作製>
得られた各塗料を、冷間圧延鋼板JISG3141SPCC−SB(日本タクト(株)製、150×70×1.0mm)に刷毛を用いて、乾燥後の膜厚が40μmになるように塗装した。その後、室温で2週間乾燥した。
【0057】
<塩水噴霧試験方法とその評価方法>
このように作製した試験板に、カッターナイフを用いて素地まで達するクロスカットを入れ、35℃に保った塩水噴霧試験機内に静置して、5%塩化ナトリウム水溶液を1時間当たり1kg/cmの量で700時間塗膜に噴霧し、塗膜平面部の錆及びふくれならびにクロスカット部中心線からの腐食幅を観察した。
【0058】
各試験後の塗板の平面部とクロスカット部の両方について、塩水噴霧試験での防錆効果を評価した。
【0059】
平面部については、試験後の錆及びふくれの発生面積から防錆効果を評価し、クロスカット部については、カット部中心線からの錆及びふくれの長さを腐食幅として測定し、防錆効果を評価した。それぞれの防錆効果の評価基準は、表2に示すように評価結果を、0〜5の評点で表した。
【0060】
なお、平面部の錆発生防止効果の評価基準は、ASTMD610−68(1970)に準拠し、ふくれ発生防止効果の評価基準は、ASTMD714−59(1965)に準拠している。表2に示すように、評点が高いほど防錆効果が優れていることを示す。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
(試験2:防錆顔料組成物を常乾型中油アルキッド樹脂塗料に使用した場合の評価)
上記のようにして得られた実施例1〜16及び比較例1〜6の防錆顔料について、それぞれアルキッド樹脂塗料に配合し、防錆効果と貯蔵安定性の確認を行った。その結果を表3に示す。表3に示すように、本発明の防錆顔料組成物(実施例1〜16)は、比較例1や2及び市販の防錆顔料(比較例3〜6)より、優れた防錆効果を有していた。また、塗料の貯蔵安定性については、亜鉛を含有する比較例3、5及び6の防錆顔料は、シーディングが起こるため特に悪かったが、亜鉛を含有しない実施例1〜7、9〜15の防錆顔料は良好であった。また、実施例16は、亜鉛を含有しているが表面処理により貯蔵安定性は良好であった。
【0064】
<常乾型中油アルキッド樹脂塗料の調製>
上記の各防錆顔料について、各々8部、中油アルキッド樹脂溶液(ターペン:50%)30部、タルク11部、炭酸カルシウム40部、タレ止め剤1部、皮張り防止剤0.5部、ドライヤー1部、ミネラルスピリット8.5部を分散混合して、各塗料を調製した。
【0065】
<試験板の作製>
得られた各塗料を、冷間圧延鋼板JISG3141SPCC−SB(日本タクト(株)製、150×70×1.0mm)に刷毛を用いて二回塗装し、乾燥後の膜厚が70μmになるように作製した。その後、室温で2週間乾燥した。
【0066】
<塩水噴霧試験とその評価方法>
上記の試験1と同様の方法で塩水噴霧試験を実施し、試験1と同様に表2に示した評価方法及び評価基準で、各試験板の平面部とクロスカット部の両方について、塩水噴霧試験での防錆効果を評価した。
【0067】
<貯蔵安定性試験とその評価方法>
上記のように調製した各塗料を、各々250mlマヨネーズ瓶に入れて密栓し、50℃に保持した恒温室中に30日間保持し、塗料の貯蔵安定性試験を行った。
【0068】
試験終了後と試験前の塗料の粘度をB型粘度計によりそれぞれ測定し、また試験後と試験前の塗料の粒度をつぶゲージによりそれぞれ測定した。
【0069】
評価は、
試験前と試験後の粘度の変化が5%未満で、かつ粒度の変化が10%未満のものを「○」、
粘度の変化が5%以上10%未満で、かつ粒度が10%以上20%未満増大しているものを「△」、
10%以上の粘度変化(増粘)又は粒度が20%以上増大しているものを「×」
とした。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の防錆顔料組成物は、防錆塗料用途以外、例えば、インヒビター的な使用方法として、防錆油へ添加、金属と一体化して使用されるプラスチック製品へ混練等、防錆顔料の使用用途での適用が可能であり、その使用を特定の用途に限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縮合リン酸カルシウムを含む防錆顔料組成物であり、防錆顔料組成物:ZnO=10質量部:3質量部の比率で混合してCuKα線により測定した粉末X線回折によるブラッグ角(2θ)における28.5±0.3°と31.8±0.3°の回折ピークの強度比28.5°/31.8°が0.09〜1.00の範囲であることを特徴とする防錆顔料組成物。
【請求項2】
前記縮合リン酸カルシウムは、Ca(P10、CaH、Ca、Ca(P、Ca(PO及びCa19の群から選択される複数の組成式からなる請求項1に記載の防錆顔料組成物。
【請求項3】
前記縮合リン酸カルシウムはカルシウム成分とリン成分とからなり、かつその両成分中のカルシウムとリンとのモル比率(Ca/P=m)が0.60<m<0.80である請求項1又は2に記載の防錆顔料組成物。
【請求項4】
更に、アルカリ土類金属化合物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の防錆顔料組成物。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属化合物が、防錆顔料組成物の質量に対して、0.1〜60質量%で含有される請求項4に記載の防錆顔料組成物。
【請求項6】
更に、金属酸化物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の防錆顔料組成物。
【請求項7】
10wt%防錆顔料水分散液の電気伝導度が0.01〜2.00mS/cmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防錆顔料組成物。
【請求項8】
更に、有機ホスホン酸、有機カルボン酸及びそれらの中和塩からなる群から選択されるキレート化化合物を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の防錆顔料組成物。
【請求項9】
前記中和塩が、前記有機ホスホン酸並びに有機カルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルミニウム塩及びアンモニウム塩からなる群から選択される請求項8に記載の防錆顔料組成物。
【請求項10】
前記縮合リン酸カルシウムが、表面処理されている請求項1〜9のいずれかに記載の防錆顔料組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の防錆顔料組成物を含有することを特徴とする防錆塗料組成物。

【公開番号】特開2012−51979(P2012−51979A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194031(P2010−194031)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】