説明

防音システム及び防音制御システム

【課題】コールセンタやオフィスなどの環境で、簡易なパーティションを用いて秘守性の高いハンズフリー通話システムを実現することのできる技術を提供する。
【解決手段】吸音パネル1と防音壁2で構成されたパーティション3によって区切られた各空間内に平面スピーカ付端末機4と指向性収音器5が取り付けられている。このシステムの利用者Sは、パーティション3で区切られた各空間内において平面スピーカ付端末機4と指向性収音器5を用いて音声通話を行う。平面スピーカ付端末機4は、図中の矢印A方向に放音する平面スピーカSPを備えている。吸音パネル1は、平面スピーカSPの放音方向に対して離間した位置に設けられ、平面スピーカSPからの放音を吸音する。防音壁2は、平面スピーカSPと吸音パネル1との間の空間を囲む位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音システム及び防音制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コールセンタやオフィスなどで通話する場合において、通話内容の秘守性を高めるための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、簡易的な防音フードで、電話の通話に十分な防音性能を得ると共に、通話が外部に漏れないアクティブ防音フード装置が提案されている。特許文献1に記載のアクティブ防音フード装置は、電話器の設置場所に防音フードを設け、この上部に制御スピーカを下向きに、マスキングスピーカを上向きに取り付ける。また防音フードの天面に騒音検出器を取り付けるとともに、くりぬき部の左右に誤差検出器をそれぞれ取り付ける。外来騒音が大きい場合、この騒音は騒音検出器で検出され、ANC制御部に与えられる。ANC制御部は騒音と概ね逆位相の消音制御信号を生成し、制御スピーカに与える。こうすると通話者には外来騒音が聞こえず、電話器から明瞭度の高い音声を聞くことができる。又周囲が静かな場合、マスキング音がマスキングスピーカから外部に放射され、通話者の会話の守秘性が高まる。
【特許文献1】特開平08−296335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、外部にマスキング音を出力するため、周囲がうるさくなるという問題があった。
本発明は上述した背景に鑑みてなされたものであり、コールセンタやオフィスなどの環境で、簡易なパーティションを用いて秘守性の高いハンズフリー通話システムを実現することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明は、予め定められた方向に放音する平面スピーカと、前記平面スピーカの放音方向に対して離間した位置に設けられ、前記平面スピーカからの放音を吸音する吸音パネルと、前記平面スピーカと前記吸音パネルとの間の空間に位置する発話者の発話位置に対して指向性を有する収音手段とを具備することを特徴とする防音システムを提供する。
【0005】
本発明の好ましい態様において、前記平面スピーカの設置位置に対して該平面スピーカの放音方向と逆方向の位置に設けられ、前記空間を囲う第2の吸音パネルを更に具備してもよい。
【0006】
また、本発明の更に好ましい態様において、前記平面スピーカと前記吸音パネルの間の空間を囲む位置に設けられた1又は複数の防音壁を具備してもよい。
また、本発明の更に好ましい態様において、前記空間から外部への漏話を検出する漏話検出手段と、前記漏話検出手段の検出結果に基づいてノイズキャンセル処理を行うノイズキャンセル手段とを具備してもよい。
【0007】
また、本発明は、上述の防音システムが列状に複数配置され、各防音システムの前記吸音パネルが、該防音システムの前記放音方向に配置された他の防音システムの前記第2の吸音パネルを兼ねることを特徴とする防音制御システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コールセンタやオフィスなどの環境で、簡易なパーティションを用いて秘守性の高いハンズフリー通話システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<構成>
図1及び図2は、この発明の一実施形態であるシステムの構成の一例を示す図である。このシステムは、コールセンタやオフィスなどの環境で用いられるハンズフリー通話システムである。このシステムは、図示のように、複数の吸音パネル1a,1b,1cと、複数の防音壁2a,2b,…,2fが設置されて構成される。なお、以下の説明では、吸音パネル1a,1b,1cを各々区別する必要がない場合には、これらを「吸音パネル1」と称して説明する。同様に、防音壁2a,2b,…,2fを各々区別する必要がない場合には、これらを「防音壁2」と称して説明する。なお、図1に示す例では、3つの吸音パネル及び6つの防音壁2を図示しているが、吸音パネル1及び防音壁2の数はこれに限らず、これより多くても少なくてもよい。
【0010】
図1に示すように、吸音パネル1によって図中x軸方向の空間が区切られているとともに、防音壁2によって図中y軸方向の空間が区切られている。以下の説明では、説明の便宜上、吸音パネル1と防音壁2によって囲まれる個々の空間を「ブース」と称して説明する。図1に示す例では、複数の吸音パネル1と複数の防音壁2によって、複数のブースB1,B2,B3,B4が形成されている。なお、以下の説明では、説明の便宜上、ブースB1,B2,B3,B4を各々区別する必要がない場合には、これらを「ブースB」と称して説明する。
【0011】
複数のブースBのそれぞれには、椅子10と机11が設置されており、机11には平面スピーカ付端末機4及び指向性収音器5が取り付けられている。このシステム利用者Sは、ブースB内に設置された椅子10に座り、机11に設置された平面スピーカ付端末機4と指向性収音器5とを用いて音声通話を行う。
【0012】
平面スピーカ付端末機4は、音声通話を行うための機能を備えた通信端末である。この平面スピーカ付端末機4は、図中の矢印A方向に放音する平面スピーカSPを備えている。各利用者S,S,…の通話相手の音声がこの平面スピーカSPから放音される。指向性収音器5は、各ブースBに位置する発話者(利用者)Sの発話位置に対して指向性を有する収音手段である。指向性収音器5は、指向性マイクロホンやマイクロホンアレーなどの指向性のある収音器である。発話者Sの音声がこの指向性収音器5によって収音される。このシステムでは、指向性のある収音器を用いることで、収音器から発話者Sまでの距離が大きい場合や、発話者Sが小さな声で話す場合であっても、発話者Sの音声をより好適に収音することができる。また、小さい音量でも通話可能であるため、隣のブースBへの回折音を少なくすることができる。指向性収音器5によって収音された音声は音声信号に変換されて平面スピーカ付端末機4に供給される。平面スピーカ付端末機4は、指向性収音器5から供給される音声信号を通話相手端末へ送信するとともに、通話相手端末から受信されてくる音声信号を平面スピーカSPに供給して放音させる。これにより音声通話が実現される。
【0013】
吸音パネル1は、平面スピーカSPの放音方向に対して離間した位置に設けられ、平面スピーカSPからの放音を吸音する。このシステムにおいては、平面スピーカSPから出力される音波は平面波であるため強い指向性を持って放射され、回折音を生じずにパーティション3の吸音パネル1に吸収される。吸音パネル1は平面スピーカSPから到着する平面波を十分に吸音できるよう高さ・厚さを備えている。
【0014】
防音壁2は、図1に示すように、平面スピーカSPと吸音パネル1との間の空間を囲む位置に設けられている。防音壁2は、各ブースBの発話者Sが発する音声や平面スピーカSPから放音される音声が隣接する他のブースBへの回折を防ぐ。
【0015】
図1に示す例では、上述したように、吸音パネル1によって図中x軸方向の空間が区切られているとともに、防音壁2によって図中y軸方向の空間が区切られ、吸音パネル1と防音壁2とで区切られた空間(ブースB)が面状に複数形成されている。各ブースBの矢印A方向の位置(平面スピーカSPの設置位置に対して平面スピーカSPの放音方向の位置)には、吸音パネル1が設置されている。また、各ブースBの矢印A方向と逆方向(以下「正面方向」という)の位置(平面スピーカSPの設置位置に対して平面スピーカSPの放音方向と逆方向の位置)にも、吸音パネル1が設置されている。具体的には、図1において、ブースB1の矢印A方向の位置には吸音パネル1bが設置されているとともに、ブースB1の正面方向の位置には吸音パネル1aが設置されている。同様に、ブースB3の矢印A方向には吸音パネル1cが設けられているとともに、ブースB3の正面方向には吸音パネル1bが設置されている。このとき、図1に示すように、ブースB1に設置された平面スピーカSPからの放音を吸音する吸音パネル1bは、ブースB3の正面方向の位置に設けられ、ブースB3の正面方向の部分を囲う吸音パネルを兼ねている。各ブースBの正面方向に設置された吸音パネル1によって、各ブースBの正面方向からくる音声が吸音される。
【0016】
次に、図2に示す漏話検出器6は、各ブースBから外部への漏話を検出する漏話検出手段である。漏話検出器6は、図2に示すように、防音壁2の上部に設けられている。ANC制御部9は、漏話検出器6の検出結果に基づいてノイズキャンセル処理を行うノイズキャンセル手段である。より具体的には、ANC制御部9は、漏話検出器6によって検出された信号と概ね逆位相の消音信号を生成し、生成した消音信号を制御スピーカ8に供給する。制御スピーカ8は、ANC制御部9から供給される信号に応じて放音する。制御スピーカ8から放音される音波によって、各ブースBから外部へのもれる音声が相殺され、漏話が防止される。誤差検出器7は、漏話検出器6によって検出される漏話音と制御スピーカ8から放出される制御音との消し残り音を検出する検出器である。この誤差検出器7は防音壁2の上部に設けられている。ANC制御部9は誤差検出器7より出力される誤差信号に基づき、誤差信号がゼロになるように制御スピーカ8へ消音制御信号を発生する回路である。ここでの消音制御信号は、例えばFIRフィルタのような遅延器、乗算器、加算器等で構成されるデジタル信号処理回路を用いることによって生成される。漏話検出器6、誤差検出器7、制御スピーカ8及びANC制御部9は、防音壁2に内蔵されていてもよく、また、防音壁2に外付けされる構成であってもよい。また、ここでは、ノイズキャンセル手段としてANC制御部を用いたが、漏話を防止する手段はANC制御に限らず、外部への漏話を防止するものであればどのようなものであってもよい。
【0017】
図1及び図2に示すシステムにおいて、各ブースB内において利用者Sが音声通話を行うと、利用者Sの音声が指向性収音器5によって収音されるとともに、通話相手の音声が平面スピーカSPから放音される。このとき、平面スピーカSPから出力される音波は平面波であるため、強い指向性を持って放射され、回折音を生じずに後方の吸音パネル1に吸収される。また、発話者Sの発話音声は、防音壁2によって他のブースへの回折を防止される。また、各ブースの上部から外部へ漏れる音声は、制御スピーカ8から出力される消音制御信号によって相殺され、外部への漏話が防止される。
【0018】
このように、本実施形態では、通話システムに平面スピーカSPと吸音パネル1とを用いることで周囲に通話音が漏れることを防止する。また、通話者の声が周囲に漏れることを防ぐため、ANC装置を防音壁に内蔵したパーティションを用いる。このように、本実施形態によれば、吸音パネル1及びANC装置付の防音壁2を用いるため、周囲に音声が漏れるのを防ぐことができる。
【0019】
また、本実施形態では、指向性収音器5を用いていることで、通話者が小さな声で話をしていても十分に収音することができ、隣のブースBへの回折音を減少させることができる。また、防音壁2の上部に漏話検出器6と制御スピーカ8とを設置し、ANC制御を行うことによって、複数人同時に、周囲に通話を漏らさないハンズフリー通話を提供することができる。
また、本実施形態によれば、スピーカ出力が平面波であるため、広い範囲を制御可能である。また、本実施形態によれば、ハンズフリーであるため、快適な通話を提供できる。
【0020】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその例を示す。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態では、図1に例示したように、3つの吸音パネル1と6つの防音壁2によって4つのブースBが面状に設けられる場合について説明したが、用いられる吸音パネル1と防音壁2の数や配置態様はこれに限らない。例えば、吸音パネル1と防音壁2とによって複数のブースBが列状に複数形成されるように吸音パネル1と防音壁2とを配置するようにしてもよい。また、ブースBの数は複数に限らず、1つのブースBが構成されていてもよい。
【0021】
(2)上述の実施形態では、吸音パネル1と防音壁2とで構成されたパーティション3によってブースBを形成するようにしたが、防音壁2を用いる構成とせず、吸音パネル1のみを用いてブースを形成するようにしてもよい。例えば、複数のブースBを形成せずにひとつのブースBを形成する場合に、平面スピーカの放音方向に対して離間した位置に吸音パネルを設け、防音壁2を設置しないようにしてもよい。この場合も、平面スピーカの出力は平面波であるために強い指向性を持って放射されるから、回折音を生じずに後部の吸音パネル1に吸音される。
【0022】
(3)上述の実施形態では、ブースBの正面方向(平面スピーカSPの設置位置に対して該平面スピーカの放音方向と逆方向)の位置にも吸音パネル1を設ける構成としたが、正面方向に吸音パネル1を設けずに、後方(平面スピーカの放音方向)にのみ吸音パネルを設ける構成としてもよい。この場合も、平面スピーカの出力は平面波であるために強い指向性を持って放音されるから、回折音を生じずに後部の吸音パネル1に吸音される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】システムの構成の一例を示す図である。
【図2】システムの構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1…吸音パネル、2…防音壁、3…パーティション、4…平面スピーカ付端末機、5…指向性収音器、6…漏話検出器、7…誤差検出器、8…制御スピーカ、9…ANC制御部、10…椅子、11…机、B…ブース、SP…平面スピーカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた方向に放音する平面スピーカと、
前記平面スピーカの放音方向に対して離間した位置に設けられ、前記平面スピーカからの放音を吸音する吸音パネルと、
前記平面スピーカと前記吸音パネルとの間の空間に位置する発話者の発話位置に対して指向性を有する収音手段と
を具備することを特徴とする防音システム。
【請求項2】
前記平面スピーカの設置位置に対して該平面スピーカの放音方向と逆方向の位置に設けられ、前記空間を囲う第2の吸音パネル
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の防音システム。
【請求項3】
前記平面スピーカと前記吸音パネルの間の空間を囲む位置に設けられた1又は複数の防音壁
を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の防音システム。
【請求項4】
前記空間から外部への漏話を検出する漏話検出手段と、
前記漏話検出手段の検出結果に基づいてノイズキャンセル処理を行うノイズキャンセル手段と
を具備することを特徴とする請求項3に記載の防音システム。
【請求項5】
請求項2に記載の防音システムが列状に複数配置され、各防音システムの前記吸音パネルが、該防音システムの前記放音方向に配置された他の防音システムの前記第2の吸音パネルを兼ねる
ことを特徴とする防音制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−91777(P2010−91777A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261500(P2008−261500)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】