説明

防音体

【課題】一定の遮音性能を有しつつ、風による荷重負荷を緩和することができ、なお且つ、簡単な構造とすることで安全性の確保及びコストの低減を達成できる防音体の提供。
【解決手段】防音体10は、シート体11と、シート体11を回転可能に支持する軸12とからなる。シート体11の軸12から離れた位置である下端部には、磁性体11aが設けられている。この第1の実施形態の防音体10は、支持体1の上に設置され、支持体1のシート体11と接する上端部には、磁性体1aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の沿線等に設置される防音体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の運行により発生する騒音としては、車輪やレールの振動から発生する転動音、パンタグラフから発生する集電騒音、車体と空気流との作用から発生する車体空力音、高架橋等の構造物の振動から発生する構造物音等が主要なものとして挙げられる。なかでも、転動音、集電騒音、車体空力音等の吸収や遮蔽を目的として、鉄道の沿線には防音体が設置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、高架橋、橋梁等の構造物上に防音体を設置し、該防音壁に対して台風と同等の30m/秒の風荷重を加えたものと想定して荷重計算を行うと、該防音体及び構造物基部に作用する転倒モーメントが大きくなり、強固な構造の防音体や構造物でなければ風荷重による負荷に耐え得ないおそれがある。そのため、防音体としては例えば既設の構造物上に防音壁を設置する場合、構造物の補強や、構造物の根本的な再構築が必要となり、莫大なコストや時間がかかることとなる。そこで、一定の遮音性能を有しつつ、防音体や構造物への風荷重を緩和できる種々の防音体が提案されている。
例えば、特許文献2には、間隔をおいて立設された支持材間に、複数の防音部材が上下に所定間隔をおいてほぼ水平に配置され、防音部材間に遮音部材が開閉可能に配置され、所定の風圧以上になれば遮音部材が倒れ、防音部材間が開放されるとともに所定の風圧以下になれば遮音部材が復元し、防音部材間が閉塞されるようになされた防音壁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−121599号公報
【特許文献2】特開平9−209316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に示される防音壁は、遮音部材、防音部材、回転軸、支持腕等の多数の部材からなるものであり、その構造は非常に複雑なものとなっている。防音体は、鉄道の沿線等に設置されるものであるため、風荷重や天災等を受けた際にも安全性が確保できることが必要であるが、上記のように複雑な構造でありながら、安全性を追求した場合、敷設や整備にかかるコストが高くなるという問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、一定の遮音性能を有しつつ、風による荷重負荷を緩和することができ、なお且つ、簡単な構造とすることで安全性の確保及びコストの低減を達成できる防音体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の防音体は、空気の通路と交差する方向に配置された軸と、前記軸を中心に回転可能に支持されて前記通路を開閉するシート体と、前記シート体の前記軸から離れた位置に設けられて、前記シート体を他の部材に固定する磁性体と、を有することを特徴とする。
本発明の防音体は鉄道の沿線等に設けられ、シート体が空気の通路を遮蔽した状態となることで、通過する鉄道の運行等により発生する騒音を遮断することができるとともに、シート体が空気の通路を開放した状態となることで、防音体の一方の面の側で受ける風の一部を他方の面の側へ通過させて逃がすことができるので、防音体及び構造物への風による荷重負荷を緩和することができる。また、シート体は、磁性体により他の部材に固定されているため、防音体に加わる風圧が所定の圧力よりも小さい場合には、シート体と他の部材との磁着により空気の通路が遮蔽され、高い遮音性能を示すことができる。
【0007】
また、本発明の防音体において、前記軸は、互いに平行に複数配置されることが好ましい。
本発明の防音体では、例えば、平行に配置された複数の軸にそれぞれ支持された、複数のシート体を備えることができ、複数のシート体がそれぞれ空気の通路を開閉することができるため、防音体に受ける風をより効率的に逃がすことができ、防音体及び構造物への風による荷重負荷を効率的に緩和することができる。
【0008】
また、本発明の防音体において、前記シート体の基端部は軸に支持されることが好ましい。
本発明では、シート体が軸より垂下するので、防音体に加わる風圧が所定の圧力よりも小さい場合、空気の通路と交差する方向に垂下した該シート体が、空気の通路を好適に遮蔽することができる。また、防音体に加わる風圧が所定の圧力よりも大きい場合には、例えば、垂下したシート体の下部が風圧により押し上げられ、空気の通路が開放された状態となることで、防音体及び構造物への風による荷重負荷を緩和することができる。
【0009】
また、本発明の防音体において、前記シート体の中央部は軸に支持されることが好ましい。
本発明では、防音体に加わる風圧が所定の圧力よりも小さい場合、シート体は空気の通路と交差する方向に配されたシート体が、空気の通路を好適に遮蔽することができる。また、防音体に加わる風圧が所定の圧力よりも大きい場合には、例えば、中心部を軸に支持されたシート体は、風圧により該軸を回転軸として回転し、空気の通路が開放された状態となることで、防音体及び構造物への風による荷重負荷を緩和することができる。
【0010】
さらに、本発明の防音体において、前記シート体は、他のシート体の一部に、磁力で固定されることが好ましい。
本発明では、例えば、複数のシート体を備えた防音体の場合に、シート体が相互に磁着することにより、高い遮音性能を示しつつ、荷重負荷を効率的に緩和することができる。
【0011】
また、本発明の防音体において、前記シート体は、風圧に応じて磁力を発生又は停止する機構を備えていてもよい。
本発明では、風圧を感知して磁力を発生又は停止させることにより、シート体による空気の通路の開閉を制御するため、風圧が所定値以上の場合には、より正確且つ効率的に、防音体の一方の面の側で受ける風圧の一部を他方の面の側へ通過させて逃がすことができ、防音体及び構造物への風による荷重負荷を効果的に緩和することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防音体によれば、軸を中心に回転可能に支持されて前記通路を開閉するシート体を有することで、シート体が空気の通路を遮蔽した状態となった場合に、通過する鉄道の運行等により発生する騒音を遮断することができるとともに、シート体が空気の通路を開放した状態となった場合に、防音体の一方の面で受ける風の一部を他方の平面側へ通過させて逃がし、防音体及び構造物への風による荷重負荷を緩和することができる。さらに、シート体は、磁性体により他の部材に固定されているため、防音体に加わる風圧が所定の圧力よりも小さい場合には、シート体と他の部材との磁着により空気の通路が遮蔽され、高い遮音性能を示すことができる。さらに、本発明の防音体は、構成部材が少ない簡単な構造とすることで、安全性の確保及びコストの低減を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態による、軸がシート体の基端部を支持した防音体の概略側面図であって、(a)は空気の通路が遮蔽された状態を示し、(b)、(c)は空気の通路が開放された状態を示す。
【図2】本発明の第1の実施形態による、軸がシート体の中央部を支持した防音体の概略側面図であって、(a)は空気の通路が遮蔽された状態を示し、(b)、(c)は空気の通路が開放された状態を示す。
【図3】本発明の第2の実施形態による防音体の概略側面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態による防音体の概略側面図である。
【図5】本発明の第4の実施形態による、風力センサを用いた防音体の概略側面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態による、ひずみゲージを用いた防音体の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による防音体の第1の実施形態について、図1、図2に基づいて説明する。
図1、図2は、本発明の第1の実施形態による防音体の概略側面図である。
図1に示す防音体10は、シート体11と、シート体11を、基端部において回転可能に支持する軸12とからなる。シート体11の軸12から離れた位置である下端部には、磁性体11aが設けられている。この第1の実施形態の防音体10は、支持体1の上に設置され、支持体1のシート体11と接する上端部には、磁性体1aが設けられている。
また、第1の実施形態の別の態様である図2に示す防音体20は、図1に示す防音体10と同様に、シート体21と、シート体21を、中央部において回転可能に支持する軸22とからなる。シート体21の軸22から離れた位置である下端部には、磁性体21aが設けられている。この第1の実施形態の防音体20は、支持体1の上に設置され、支持体1のシート体21と接する上端部には、磁性体1aが設けられている。
【0015】
次に、上述のように構成される第1の実施形態による防音体10、20の作用について図面に基づいて詳しく説明する。
図1(a)、図2(a)に示すように、風圧を受けていない通常状態では、シート体11、21が空気の通路kを遮蔽し、シート体11、21の一方の面の側から他方の面の側へ空気が通過しないため、防音体10、20は遮音性能を奏することができる。
その上、図1(a)、図2(a)では、シート体11、21の下端部に設けられた磁性体11a、21aと、支持体1の上端部に設けられた磁性体1aとが磁着するため、防音体10、20に加わる風圧が所定の圧力よりも小さい場合には、シート体は空気の通路kを遮蔽した状態を保つことができるため、さらに高い遮音性能を発揮することができる。
また、図1(b)、(c)、図2(b)、(c)に示すように、防音体10、20に所定以上の風圧Kが加わった場合には、シート体11、21が軸12、22を回転軸として回動し、風圧Kに応じた開度の空気の通路kが開放され、防音体10、20の一方の面の側で受ける風圧Kの一部を他方の面の側へ通過させて逃がすことができるので、防音体10、20及び構造物への風による荷重負荷を緩和することができる。
【0016】
シート体11、21の原材料としては、該シート体11、21を用いて空気の通路kを遮蔽することにより、遮音性能を発揮することができるものであれば、特に限定されるものではなく、弾性材料であっても、剛性材料であってもよい。
弾性材料としては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、ポリノルボルネンゴム、アクリルゴム等のゴム材料;ウレタン、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレン等の発泡材料;スチレン系、オレフィンゴム系、塩化ビニル系のTPE(熱可塑エラストマ)、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂等の熱可塑性樹脂材料;シリコン等のゲル材料;酢酸ビニル系、EVA系、アクリル樹脂系等のエマルジョン材料;ゴムラテックス等が挙げられる。
剛性材料としては、例えば、鋼やアルミ等の金属材料;エポキシ樹脂やポリエステル樹脂等の樹脂材料、並びにそれらを繊維強化した繊維強化プラスチック材料(FRP);木材材料等が挙げられる。
なかでも、本発明のシート体11、21の原材料としては、弾性材料であることが好ましく、ゴム材料であることがより好ましい。シート体11、21が弾性材料であることにより、加わる風圧が所定の圧力よりも小さい場合には回動しづらく、所定以上の風圧が加わった場合には回動しやすいシート体11、21を得ることができる。
【0017】
シート体11、21の形状、並びに大きさは、該シート体11、21を用いて空気の通路kを好適に遮蔽できるものであれば、特に限定されるものではなく、防音体11、21を設置する環境条件等に応じて適宜決定することができる。ただし、現実のコストや耐久性等の制約も考慮すると、シート体11、21の厚さは、好ましくは3〜500mmの範囲内、より好ましくは5〜100mmの範囲内である。シート体11の高さは、好ましくは10〜5000mmの範囲内、より好ましくは500〜3000mmの範囲内である。
また、シート体11、21の、他の部材に近接する端部(図1(a)におけるシート体11、21の下端部)と、他の部材の端部(図1における支持体1の上端部)とは、好適に空気の通路kを遮蔽し得る程度に近接していればよく、シート体11、21の端部が、他の部材の端部に重なっていてもよい。これらの近接する距離によって、防音体10、20が開閉する所定の風圧を決定することも可能であるため、所定の風圧や、後述する磁性体11a、21aの磁力吸着力に応じて、適宜決定することができる。
なかでも、本発明のシート体11、21の端部(図1(a)におけるシート体11、21の下端部)と、他の部材の端部(図1における支持体1の上端部)とは、重なっていることが好ましく、その重なる距離としては、0.1mm〜1mであることが好ましく、5mm〜50mmであることが好ましい。
【0018】
磁性体11a、21aとしては、磁性を有するものであれば特に限定されるものではなく、鉄、フェライト等の強磁性材料を、常法により着磁したものを用いることができる。
磁性体11a、21aは、シート体11、21の少なくとも軸12、22から離れた位置に設けられるが、さらにシート体11、21のその他の位置に設けてもよく、シート体11、21の全体に設けてもよい。磁性体をシート体11、21のその他の位置や、シート体11、21の全体に設けた場合、例えば、該磁性体を用いて、他の吸音部材をシート体11、21の表面に磁着させる等の利用が可能となる。しかしながらこの場合、該磁性体が鉄道の走行により発生する鉄粉や埃を吸着し、外観の美麗さを保つためには定期的な清掃等が必要となるという問題もある。これらの事情を鑑み、磁性体を設ける位置、磁性体を設ける面積は適宜決定することが好ましい。
【0019】
磁性体11a、21aをシート体11、21に設ける方法としては、特に限定されるものではなく、磁性体11a、21aを、シート体11、21と一体形成してもよく、磁性体11a、21aを、形成したシート体11、21の表面に、溶着、縫合、接着等の公知の方法により付着してもよい。
防音体10、20が多数の部材からなる場合、安全性や整備コスト等の問題が発生するおそれがあるため、なかでも、磁性体11a、21aとしては、シート体11、21と一体形成されていることが好ましく、具体的には、上記したようなシート体原材料を形成する際に磁性材料を分散し、シート体11、21形成後に着磁して形成されていることがより好ましい。
【0020】
磁性体11a、21aの有する磁力吸着力や、シート体11、21中に磁性材料を分散させて磁性体11a、21aを形成した際の磁性材料含有量は、特に限定されるものではなく、所定の風圧を境としてシート体11、21が開閉するように決定すればよい。具体的には、ゴム材料に磁性体11a、21aを予め分散させた磁性ゴムを、先端のみ着磁してシート体11、21として用いる場合、その磁性体含量は、ゴム100容積部に対して10〜90容積部であることが好ましく、30〜60容積部であることがより好ましい。また、着磁パターンは、縞状にN極とS極とが交互となることが好ましく、着磁ピッチは、1〜10mmの範囲であることが好ましい。
【0021】
軸12、22としては、シート体11、21を支持することのできるものであれば特に限定されるものではない。
軸12、22は、図1に示す防音体10のように、軸12がシート体11の基端部を支持していてもよく、図2に示す防音体20のように、軸22がシート体21の中央部を支持していてもよい。
なお、防音体20においては、図2(b)、(c)のように空気の通路kが開放された後、図2(a)のようにシート体21が垂直に復元する際、シート体21が上下反転することを防ぐため、例えば、磁性体を有する端部(図2(a)におけるシート体21の下端部)とは反対の端部寄りの中央部において、軸22がシート体21を支持する;シート体21の磁性体を有する端部(図2(a)におけるシート体21の下端部)に重み付けをしておく、等の方法をとることが好ましい。
【0022】
防音体10、20の設置方法は、特に限定されるものではなく、図1(a)〜(c)、図2(a)〜(c)に示すように、支持体1の上に設置してもよく、鉄道用軌道等の設置された地面に直接設置してもよい。支持体1としては、既設の防音壁であってもよく、高架橋等の欄干であってもよく、本発明の防音体10、20を設置するために新たに設置した支持体であってもよい。ここで、防音体10、20の磁性体を有する部位が近接する他の部材、例えば上記既設防音壁、欄干、支持体1、地面等は、磁性体11a、21aを介してシート体11、21を固定するものでなければならない。上記他の部材が磁性体11a、21aを介してシート体11、21を固定する方法としては特に限定されるものではなく、常法により他の部材に磁性体を設置する方法、常法により他の部材に電磁石を設置する方法、等の方法により行うことができる。
【0023】
本発明の第1の実施形態において、シート体11、21は、風圧Kが所定の値以下、すなわち通常時においては、シート体11、21に設けられた磁性体11a、21aを介した磁力吸着力により閉じており、風圧Kが所定の値以上の場合には、シート体11、21が風圧Kにより押し開けられる機構となっている。
【0024】
次に、本発明による防音体の第2の実施形態について、図3に基づいて説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態による防音体の概略側面図である。
図3に示す防音体30は、シート体31、31’と、シート体31の中央部においてシート体31を回転可能に支持する軸32と、シート体31’の基端部においてシート体31’を回転可能に支持する軸32’とからなる。シート体31の軸32から離れた位置である下端と、さらに上端部とには、磁性体31a、31bが設けられている。また、シート体31’の軸32’から離れた位置である下端部には、磁性体31a’が設けられている。この第2の実施形態の防音体30は、支持体1の上に設置され、支持体1のシート体31と接する上端部には、磁性体1aが設けられている。
【0025】
図3に示す防音体30では、互いに平行に複数配置された軸32、32’と、それぞれの軸32、32’に支持された複数のシート体31、31’とを有することで、遮音性能を奏しつつ、防音体30、支持体1、構造物等への風による荷重負荷をより好適に緩和することができる。
【0026】
ここで、シート体31、シート体31’、磁性体31a、31a’、31b、軸32、軸32’は、それぞれ、上記シート体21、シート体11、磁性体11a、21a、軸22、軸12と同様の構成となっている。
【0027】
次に、本発明による防音体の第3の実施形態について、図4に基づいて説明する。
図4は、本発明の第3の実施形態による防音体の概略側面図である。
図4に示す防音体40は、シート体41、41’と、シート体41、41’の基端部においてシート体41、41’を回転可能に支持する軸42、42’とからなる。シート体41の軸42から離れた位置である下端部と、さらに上端部とには、磁性体41a、41bが設けられている。また、シート体41’の軸42’から離れた位置である下端部には、磁性体41a’が設けられている。この第2の実施形態の防音体40は、支持体1の上に設置され、支持体1のシート体41と接する上端部には、磁性体1aが設けられている。
【0028】
図4に示す防音体40では、互いに平行に複数配置された軸42、42’と、それぞれの軸42、42’に支持された複数のシート体41、41’とを有することで、遮音性能を奏しつつ、防音体40、支持体1、構造物等への風による荷重負荷をより好適に緩和することができる。
【0029】
ここで、シート体41、41’、磁性体41a、41a’、41b、軸42、42’は、それぞれ、上記シート体11、磁性体11a、21a、軸12と同様の構成となっている。
【0030】
次に、本発明による防音体の第4の実施形態について、図5、6に基づいて説明する。なお、図5、6において、図1、2に示した防音体10、20と同じ構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図5、6は、本発明の第4の実施形態による防音体の概略側面図である。
図5に示す防音体10は、シート体11と、シート体11を回転可能に支持する軸12と、制御部と、風力センサと、電磁石とを備える。シート体11の軸12から離れた位置である下端部には、磁性体11aが設けられている。この第1の実施形態の防音体10は、支持体1の上に設置され、支持体1のシート体11と接する上端部には、磁性体1aが設けられている。
また、第4の実施形態の別の態様である、図6に示す防音体10は、シート体11と、シート体11を回転可能に支持する軸12と、制御部と、ひずみゲージと、電磁石とを備える。シート体11の軸12から離れた位置である下端部には、磁性体11aが設けられている。この第1の実施形態の防音体10は、支持体1の上に設置され、支持体1のシート体11と接する上端部には、磁性体1aが設けられている。
【0031】
本発明の第4の実施形態において、シート体11は、風圧Kが所定の値以下、すなわち通常時においては、磁力を発生させ、シート体11に設けられた磁性体11aを介した磁力吸着力によりシート体11が閉じた状態となり、また、シート体11は、風圧Kが所定の値以上、すなわち強風時においては、磁力を停止させ、シート体11が開き得る状態となる機構を備える。
第4の実施形態の防音体は、風圧Kを感知して磁力を停止させることにより、シート体11による空気の通路kの開閉を制御するため、風圧Kが所定値以上の場合には、より正確且つ効率的に、防音体10の一方の面の側で受ける風圧Kの一部を他方の面の側へ通過させて逃がすことができ、防音体10及び構造物への風による荷重負荷を効果的に緩和することができる。
【0032】
ここで、風圧Kを感知する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、図5に示すように、防音体10あるいは当該防音体10の周辺に風力センサを設置し、当該風力センサを介して風圧Kを感知する方法や、図6に示すように、シート体11にひずみゲージを設置し、当該ひずみゲージを用いて風圧Kによるシート体11のひずみを検出する方法等が挙げられる。また、防音体10の周辺あるいは当該防音体10の設けられた構造物の代表観測点に設置された風力計から風圧Kを感知する方法;圧電ゴムにより形成したシート体11が、風圧Kを受けることによって発生する電気分極を検出する方法、等も用いることができる。
また、シート体11の開閉を制御する機構(以下、「シート体開閉制御機構」という。)として、図5、6では電磁石による磁力の発生/停止機構を用いているが、開閉を制御する機構はこれに限定されるものではない。
なお、ここでは第4の実施形態として、第1の実施形態の防音体に、さらに、風力センサ又はひずみゲージを用いたシート体開閉制御機構を形成した例を説明したが、このようなシート体開閉制御機構の形成は、第1の実施形態に限られるものではなく、第2及び第3の実施形態の防音体に応用してもよい。
【0033】
以上、本発明の防音体の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記第2及び第3の実施形態では、防音体30、40が、軸32、32’又は軸42、42’の2本の軸と、シート体31、31’又はシート体41、41’の2つのシート体とを有する構成となっているが、軸の数及びシートの数をさらに増加させてもかまわない。
また、上記第2及び第3の実施形態では、シート体31’、41’は、基端部を軸32’、42’に支持された構成となっているが、シート体31’、41’の中央部が軸32’、42’に支持された構成としてもかまわない。
また、上記第1〜第4の実施形態において、軸12、22、32、42を、シート体11、21、31、41と一体形成されたものとしてなし、シート体11、21、31、41自身が弾性変形して同様の働きをする場合も含むのはもちろんである。
【符号の説明】
【0034】
1 支持体
1a 磁性体
10、20、30、40 防音体
11、21、31、31’、41、41’ シート体
11a、21a、31a、31a’、31b、41a、41a’、41b 磁性体
12、22、32、32’、42、42’ 軸
K 風圧
k 空気の通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の通路と交差する方向に配置された軸と、
前記軸を中心に回転可能に支持されて前記通路を開閉するシート体と、
前記シート体の前記軸から離れた位置に設けられて、前記シート体を他の部材に固定する磁性体と、を有することを特徴とする防音体。
【請求項2】
前記軸が、互いに平行に複数配置されることを特徴とする請求項1に記載の防音体。
【請求項3】
前記シート体の基端部が軸に支持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の防音体。
【請求項4】
前記シート体の中央部が軸に支持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の防音体。
【請求項5】
前記シート体が、他のシート体の一部に、磁力で固定されることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の防音体。
【請求項6】
前記シート体が、風圧に応じて磁力を発生又は停止する機構を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の防音体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−246946(P2011−246946A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120707(P2010−120707)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】