説明

防音性織物

【課題】 音波の通路に配置されて吸音効果を得ることのできること。
【解決手段】 音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする120%以内とし、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、スパン糸は高音域で比較的吸音特性が良好とし、音響エネルギを減衰させことができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅騒音、道路騒音、鉄道騒音を吸音または防音する織物に関するもので、詳しくは、吸音性織物、遮音性織物等の防音性織物に関するものである。本発明の吸音性織物及び/または防音性織物は、ステンレス等の金属、木材等の箱体に収容して防音装置とすることができ、また、そのままの状態で天井上または床下に敷設したり、壁内に入れたりして使用することもでき、建材に貼り付けて使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
従来の吸音材として、特許文献1の両面吸音板の技術思想を挙げることができる。即ち、特許文献1の両面吸音板は、矩形板状に成形された吸音材と、吸音材の外周4辺を囲って支持する枠体と、枠体で囲われていない吸音材の両表面から離隔して当該表面を覆い、かつ、前記枠体に着脱可能に取り付けられた多孔板から構成されるものである。
【0003】
両面吸音板において、所定のかさ比重で矩形板状に成形された繊維状吸音材は、厚みが50〜200mmで、それぞれ所定のかさ比重で矩形板状に成形され、複数層積層されて、中間層の繊維状吸音材のかさ比重は、32kg/m3以上とし、両側の繊維状吸音材のかさ比重を32〜64kg/m3とした3層積層構造を呈している。この中間層の繊維状吸音材の厚さは、全体厚さに対する比率を50%以上とすることが好ましい。また、多孔板と繊維状吸音材表面との離隔距離、即ち、空気層の厚みは10〜30mmである。
【0004】
特許文献1の両面吸音板は、ある程度以上の厚さをもつ吸音板の吸音率は高くなるが、2つの吸音材が完全に独立し、それぞれ好ましい厚さの吸音材に設定すると、両面吸音板の厚みが大きくなり、逆に両面吸音板の厚さを抑えると吸音材の厚みが小さくなり吸音性能が低下するという吸音材の厚みの選択に制約があることを明確にしている。
【0005】
しかし、特許文献1では、周波数特性が1000Hzの可聴周波数域での吸音率は、100mmの厚みで0.7程度となり、特許文献1の両面吸音板の機能分析が両面吸音板の厚みにのみ依存しているので、現実的に吸音性能が発揮されているのか、防音性能が発揮されているのか不明であった。
【特許文献1】特開2000−129636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、両面吸音板の機能が繊維の何に依存しているものであるか不明であった。そのため、周波数特性が1000Hzの可聴周波数域での吸音率は、100mmの厚みで0.7程度の値が、繊維によっては必ずしも一義的に決定できなかった。また、上記特許文献1では、吸音特性で説明しているものの、両面吸音板の繊維密度を高くすれば、防音特性が向上すると推定されるが、従来技術では基本的特性が不明であったから、それも明確にできなかった。
【0007】
そこで、本発明は、音波の通路に配置されて防音効果を得ることのできる防音性織物の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1にかかる防音性織物としての音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸としたものである。
【0009】
上記スパン糸は、縦糸及び横糸として織物を形成するもので、糸単位径及び収束糸径及び撚り数、織物密度は、物理的に機械的強度及び音の吸収性能を特定するもので、人為的に判断すると、比較的柔らかい織物である。
【0010】
上記条件と、吸音性との関係は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以下では、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とした場合、機械的強度が弱くなり、かつ、糸相互間で反射を繰返すことによる音響エネルギの減少(吸収)する特性が低下するので好ましくない。また、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とは、機械的強度が土木材料としての仕様及び相互反射によって吸収特性が高くなるものである。そして、推定であるが、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸で、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸は、糸の伝播乗数によって音響エネルギを受けた点から若干離れた点でそれらの振動が相殺されている可能性がある。または、糸の振動となったときに位相ずれが発生し、その振動が相殺される可能性がある。
【0011】
なお、本発明では、本実施の形態の実験に基づいて糸の径をデニール(D)で表現しているが、テックス式(T=D/9)として表現することもでき、規格相互間の換算により、それらを表現することができる。以下、この糸径に関する説明を省略する。
【0012】
請求項2にかかる防音性織物としての音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸としたものである。
【0013】
上記フィラメント糸は、縦糸及び横糸として織物を形成するもので、糸単位径及び収束糸径及び撚り数、織物密度は、物理的に機械的強度及び音の吸収性能を特定するもので、人為的に判断すると、比較的柔らかい織物である。
【0014】
上記条件と、吸音性との関係は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以下では、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とした場合、機械的強度が弱くなり、かつ、糸相互間で反射を繰返すことによる音響エネルギの減少(吸収)する特性が低下するので好ましくない。また、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とは、機械的強度が土木材料としての仕様及び相互反射によって吸収特性が高くなるものである。そして、推定であるが、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸で、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸は、スパン糸と同様、糸の伝播乗数によって音響エネルギを受けた点から若干離れた点でそれらの振動が相殺されている可能性がある。または、糸の振動となったときに位相ずれが発生し、その振動が相殺される可能性がある。
【0015】
請求項3にかかる防音性織物としての音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸及び/またはフィラメント糸とを具備するものである。
【0016】
上記スパン糸とフィラメント糸は、何れを縦糸にしても、横糸にしてもよく、また、上記スパン糸またはフィラメント糸により縦糸、横糸にしてもよい。ここで、糸の種類、糸単位径及び収束糸径及び撚り数、織物密度は、物理的に機械的強度及び音の吸収性能を特定するもので、人為的に判断すると、比較的柔らかい織物である。
【0017】
請求項4にかかる防音性織物としての音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸と、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の範囲の撚りとしたフィラメント糸とを具備するものである。
【0018】
上記スパン糸とフィラメント糸は、何れを縦糸にしても、横糸にしてもよく、ここで、糸の種類、糸単位径及び収束糸径及び撚り数、織物密度は、物理的に機械的強度及び音の吸収性能を特定するもので、人為的に判断すると、比較的柔らかい織物である。
【0019】
請求項5にかかる防音性織物としての重ね合わせた織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸、及び/または糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸による織物からなるものである。
【0020】
上記スパン糸及び/またはフィラメント糸で織った織物は、何れを表にしても、裏にしてもよく、結果的に織物が2または3枚以上の複数毎が重なり合えばよい。ここで、糸の種類、糸単位径及び収束糸径及び撚り数、織物密度は、物理的に機械的強度及び音の吸収性能を特定するものである。
【0021】
請求項6にかかる防音性織物の前記スパン糸及び/またはフィラメント糸は、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dを1本以上混入して糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の撚りとしたものである。
【0022】
このトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dを1本以上の混入は、1本以上の混入を意味し、1本入れることによる特性の変化は、顕著に発生しないものの、複数本入れることにより、特性に変化が確認された。ここで、糸の種類、糸単位径及び収束糸径及び撚り数、織物密度は、物理的に機械的強度及び音の吸収性能を特定するものである。
【0023】
請求項7にかかる防音性織物としての重ね合わせた織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/m撚ってなるスパン糸で形成した織物、及び/または断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の撚りとしたフィラメント糸で形成した織物とを具備するものである。
【0024】
上記スパン糸で織った織物とフィラメント糸で織った織物は、何れを表にしても、裏にしてもよく、結果的に同種または異種の織物が2または3枚以上に複数枚重なり合うように構成すればよい。ここで、糸の種類、糸単位径及び収束糸径及び撚り数、織物密度は、物理的に機械的強度及び音の吸収性能を特定するものである。
【0025】
請求項8にかかる防音性織物の前記フィラメント糸は、インターレスから撚糸加工により収束した糸を用いるものである。
【0026】
上記インターレスから撚糸加工により収束した糸の本数は、基本的に複数本であればよい。
【0027】
請求項9にかかる防音性織物は、音波の通路に吸音効果及び遮音効果を得るために配設される重ね合わせた織物を、請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の防音性織物を重ね合わせたものである。
【0028】
この防音性織物は、音波の通路に吸音効果と遮音効果を得る織物とを重ね合わせることにより、両者間で音を減衰させるものである。
【発明の効果】
【0029】
請求項1にかかる防音性織物は、音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸によって形成したものである。
【0030】
したがって、特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で比較的吸音特性が良好となり、音響エネルギを減衰させことができる。
【0031】
請求項2にかかる防音性織物としての音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって形成したものである。
【0032】
したがって、特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、フィラメント糸は低音域で比較的吸音特性が良好となり、音響エネルギを減衰させことができる。
【0033】
請求項3にかかる防音性織物としての音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸及び/またはフィラメント糸とを具備するものである。
【0034】
したがって、特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。
【0035】
請求項4にかかる防音性織物としての音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸と、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の範囲の撚りとしたフィラメント糸とを具備するものである。
【0036】
したがって、特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。
【0037】
請求項5にかかる防音性織物としての重ね合わせた織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸による織物、及び/または糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸による織物からなるものである。
【0038】
したがって、特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。
【0039】
請求項6にかかる防音性織物の前記スパン糸及び/またはフィラメント糸は、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dを1本以上混入して糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の撚りとしたものである。
【0040】
したがって、異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの糸が、1本以上混入しているから、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸に、当該トライローバルタイプの糸の面で反射した音響を、他の前記スパン糸及び/またはフィラメント糸によって及びその織物として吸音させることにより、特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。
【0041】
請求項7にかかる防音性織物としての重ね合わせた織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/m撚ってなるスパン糸とした織物、及び/または断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の撚りとしたフィラメント糸とした織物とを具備するものである。
【0042】
したがって、両織物は、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる機能を有し、互いの特性により、広い周波数範囲の音響エネルギを減衰させことができる。
【0043】
請求項8にかかる防音性織物の前記フィラメント糸は、インターレスから撚糸加工により収束した糸を用いるものであるから、部分的に撚りがかかっている程度の、柔らかさによって吸音特性を良くし、音響エネルギを減衰させことができる。
【0044】
請求項9にかかる防音性織物は、音波の通路に吸音効果及び遮音効果を得るために配設される重ね合わせた織物を、請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の防音性織物を重ね合わせることにより、音波の吸音効果及び/または遮音効果を得ることにより、織物間で音を大きく減衰させることができる。特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、音響エネルギの伝達を遮断させことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
[実施の形態]
次に、本発明にかかる実施の形態の吸音性及び防音性織物について、特性図を用いて説明する。
【0046】
本発明の吸音性及び防音性織物の実施の形態について、測定した試験条件は、図1に示す試験装置を用いた。
【0047】
図1は本発明にかかる実施の形態の吸音性及び防音性織物の吸音率の測定装置である。
【0048】
図において、スピーカ1は音源とするもので、図示しない周波数発生器2に接続されている。スピーカ1は端部に接続されており、試験箱3の一端から音響が入力するようになっている。当該試験箱3には、試料4が取付けられ、試料4の背後から50mm(a点)、75mm(b点)、100mm(c点)の各点を試料4の測定点としている。また、試料4が取付けられた点から300mmで閉じられている。
【0049】
図2は従来品の土木シート規格に合致した繊維材料による試料4から50mm離れた位置の吸音率の特性図、図3は従来品の土木シート規格に合致した繊維材料による試料4から75mm離れた位置の吸音率の特性図、図4は従来品の土木シート規格に合致した繊維材料による試料4から100mm離れた位置の吸音率の特性図である。
【0050】
図1に示す装置で、土木シート規格に合致した繊維材料の品番T−300(テイジン(商標))、質量310g/m2、厚さ0.5mm、引張強さ310(kgf/3cm)、伸び15(%)、引裂強さ(乾)75×75(kgf)、引裂強さ(湿)85×85(kgf)、透水係数2.0×10−2(cm/sec)、1500デニール(D)を平織りした市販品を、測定装置で測定したものを、試料4の背後から50mm(a点)の空気層で測定した特性図として図2に示し、75mm(b点)で測定した特性図を図3に示し、100mm(c点)で測定した特性図を図4に示す。ここで、従来の市販品においては、最大で0.6程度の吸音率であることがわかる。
【0051】
また、100mm(c点)で測定した図4の特性図で、1750Hz付近で吸音率が低下しているのがわかる。この要因は、試験箱3の一端が閉じており、試料4の背後から100mm(c点)の測定点は、試験箱3の端面から200mmの地点であることから、反射による干渉と推定される。
【0052】
図5は本発明にかかる実施の形態の吸音性織物及び防音性織物に使用した材料糸の説明をする表図である。
【0053】
実施の形態1
図6は本発明にかかる実施の形態1の吸音性織物の周波数特性図である。
【0054】
縦糸(A)及び横糸(A)は、飽和ポリエステル糸からなる糸径、共通式10番双糸(2/10)、即ち、900Dの糸2本を用いて1800Dの糸とし、かつ、それを280回/mの範囲に撚ってなるスパン糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%として120%の密度としたものである。
【0055】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、1100Hzで吸収率1となり、2000Hzで吸収率0.84となり、高い周波数に至るまで高効率で吸収していることがわかる。
【0056】
発明者の試料作成結果によれば、飽和ポリエステル糸からなる糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とすること。更に、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とすれば、同様の結果が得られることが判明した。
【0057】
実施の形態2
図7は本発明にかかる実施の形態2の吸音性織物の周波数特性図である。
【0058】
縦糸(B)及び横糸(B)は、飽和ポリエステル糸からなる糸径150D/36(36本で150D)の糸10本用いて1500Dの糸とし、かつ、それを70回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%として110%以内の密度としたものである。
【0059】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、700Hzで吸収率約1となり、2000Hzで吸収率0.8となり、低い周波数のとき高効率で吸収していることがわかる。
【0060】
発明者の試料作成結果によれば、飽和ポリエステル糸からなる糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とすること。更に、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とすれば、同様の結果が得られることが判明した。
【0061】
ここで特記すべきことは、400Hz以下、600Hzで、繊維単位の影響と推定される反射が発生している。
【0062】
実施の形態3
図8は本発明にかかる実施の形態3の吸音性織物の周波数特性図である。
【0063】
縦糸(C)及び横糸(C)は、飽和ポリエステル糸からなる糸径150D/48(48本で150D)の糸を3本インターレスし、それを4本(12本)撚って1800Dの糸とし、かつ、それを70回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%として110%の密度としたものである。
【0064】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、550Hzで吸収率約1となり、2000Hzで吸収率0.7となり、低い周波数で高効率で吸収しているものの、図7の実施の形態よりも特性が若干低下していることがわかる。
【0065】
発明者の試料作成結果によれば、飽和ポリエステル糸からなる糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とすることは、発明の要件であることが確認された。更に、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とすれば、同様の結果が得られることが判明した。
【0066】
ここで特記すべきことは、500Hz以下で、繊維単位の影響と推定される防音反射が発生している。
【0067】
実施の形態4
図9は本発明にかかる実施の形態4の吸音性織物の周波数特性図である。
【0068】
縦糸(D)及び横糸(D)は、飽和ポリエステル糸からなる糸径150D/48(48本で150D)の糸を10本用いて1500Dの糸とし、かつ、それを70回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%として110%の密度としたものである。
【0069】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、1000Hzで吸収率約0.92となり、2000Hzで吸収率0.75となり、低い周波数で高効率で吸収して図7の実施の形態よりも特性が若干低下し、低周波領域の吸収性が低下していることが明確になる。
【0070】
発明者の試料作成結果によれば、飽和ポリエステル糸からなる糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、更に、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする115%以内とすれば、同様の結果が得られることが判明した。
【0071】
ここで特記すべきことは、500Hz以下で、低周波領域の吸収性が低下していることから、本実施の形態の織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸の収束本数、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸としての撚り数が用件になることが明確である。勿論、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とすることも要件の1つである。
【0072】
実施の形態5
図10は本発明にかかる実施の形態5の吸音性織物の周波数特性図である。
【0073】
縦糸(F)および横糸(F)は、再生飽和ポリエステル糸からなる糸径共通式10番単糸を用いて英式531Dの糸とし、かつ、それを280回/mの範囲に撚ってなるスパン糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%として110%の密度としたものである。
【0074】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、500Hzで吸収率0.95となり、2000Hzで吸収率0.7となっていることがわかる。
【0075】
この織物では、400Hz以下で、低周波領域の吸収性が反射のために大きく変化して折、繊維糸が硬くなると繊維単位の影響と推定される防音反射が発生している。
【0076】
実施の形態6
図11は本発明にかかる実施の形態6の吸音性織物の周波数特性図である。
【0077】
縦糸(A)は、飽和ポリエステル糸からなる糸径、共通式10番双糸(2/10)、即ち、900Dの糸2本を用いて1800Dの糸とし、かつ、それを280回/mの範囲に撚ってなるスパン糸である。
【0078】
横糸(C)は、飽和ポリエステル糸からなる糸径150D/48(48本で150D)の糸を3本インターレスし、それを4本(12本)撚って1800Dの糸とし、かつ、それを70回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸である。
【0079】
両者によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%として110%の密度としたものである。
【0080】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、800Hzで吸収率1となり、2000Hzで吸収率0.88となり、低い周波数から高い周波数に至るまで高効率で吸収していることがわかる。即ち、図6の実施の形態1と図8の実施の形態3との互いの長所が生きていることがわかる。
【0081】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、750Hzで吸収率約1となり、2000Hzで吸収率0.87となり、低い周波数から高い周波数まで高効率で吸収していることがわかる。
【0082】
実施の形態7
図12は本発明にかかる実施の形態7の吸音性織物の周波数特性図である。
【0083】
縦糸(C)は、飽和ポリエステル糸からなる糸径150D/48(48本で150D)の糸を3本インターレスし、それを4本(12本)撚って1800Dの糸とし、かつ、それを70回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸である。
【0084】
横糸(A)は、飽和ポリエステル糸からなる糸径、共通式10番双糸(2/10)、即ち、900Dの糸2本を用いて1800Dの糸とし、かつ、それを280回/mの範囲に撚ってなるスパン糸である。
【0085】
即ち、実施の形態7は実施の形態6の縦糸と横糸とを変更したものである。ここで、縦糸と横糸とを変更しても、殆ど特性に変化がないことが分かる。
【0086】
また、両者によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内の密度としたものである。
【0087】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、800Hzで吸収率1となり、2000Hzで吸収率0.82となり、低い周波数から高い周波数に至るまで高効率で吸収していることがわかる。即ち、図6の実施の形態1と図8の実施の形態3との互いの長所が生きていることがわかる。
【0088】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、800Hzで吸収率約1となり、2000Hzで吸収率0.83となり、低い周波数から高い周波数まで高効率で吸収していることがわかる。
【0089】
実施の形態8
図13は本発明にかかる実施の形態8の吸音性織物の周波数特性図である。
【0090】
縦糸(G)及び横糸(G)は、飽和ポリエステル糸からなる異形断面(6角断面)の糸を糸径1400Dのフィラメント糸によって、撚ることなく、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%として110%の密度とした織物である。
【0091】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、500Hzで吸収率1の付近の値となっているものの、2000Hzで吸収率0.55となり、低い周波数の特定の範囲のみ高効率で吸収していることがわかる。
【0092】
即ち、背後空気層50mm(a点)では、異形の角度による比較的反射が多く発生していることがわかる。
【0093】
実施の形態9
図14は本発明にかかる実施の形態9の吸音性織物の周波数特性図である。
【0094】
縦糸(G)及び横糸(G)は、図13の実施の形態8と同様に、飽和ポリエステル糸からなる異形断面(6角断面)の糸を糸径1400Dのフィラメント糸によって、撚ることなく、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%として110%の密度とした織物である。当該織物を2枚重ね合わせたものである。
【0095】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、500Hzで吸収率0.9の付近の値となっており、2000Hzで吸収率0.73となり、400Hz程度の低い周波数の範囲で高効率の吸収が確認され、しかも、図13の実施の形態8の特性が滑らかに改良されていることがわかる。
【0096】
実施の形態10
図15は本発明にかかる実施の形態10の吸音性織物の周波数特性図である。
【0097】
本実施の形態10の吸音性織物は、図6の実施の形態1の織物、図11の実施の形態6の織物、図12の実施の形態7の織物を3枚重ね合わせたものである。
【0098】
この実施の形態では、400〜2000KHz付近の周波数範囲において、即ち、低音域から高音域まで吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。しかも、複数層に重ねることにより、反対側からの反射も吸音しており、複数枚で使用することが、理想的な使用状態であることがわかる。
【0099】
実施の形態11
図16は本発明にかかる実施の形態11の吸音性織物の周波数特性図である。
【0100】
本実施の形態11の吸音性織物は、図8の実施の形態3の織物及び図6の実施の形態1の織物を2枚重ね合わせたものである。
【0101】
この実施の形態では、300〜2000KHz付近の周波数範囲において、吸収率0.6以上となっている。しかし、低音域から高音域まで吸音特性がフラットになっているが、図15の実施の形態10と異なり、吸収率が低下している。即ち、単純に吸音性織物を重ね合わせれば、吸収率が高くなるものではなく、一部が互いの吸収率の良い特性となり、他の一部の吸収率が低下している。
【0102】
即ち、図8の実施の形態3の織物は、500Hz以下で、繊維単位の影響と推定される防音反射が発生しているが、それに留まらず、500Hzを越える周波数でも繊維単位の影響と推定される防音反射が発生していると推定される。
【0103】
実施の形態12
図17は本発明にかかる実施の形態12の吸音性織物の周波数特性図である。
【0104】
本実施の形態12の吸音性織物は、図6の実施の形態1の織物及び図9の実施の形態4の織物を2枚重ね合わせたものである。
【0105】
この実施の形態では、400〜2000KHz付近の周波数範囲において、吸収率が0.9程度以上となる。即ち、低音域から高音域まで吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。しかも、複数層に重ねることにより、反対側からの反射も吸音しており、複数枚で使用することが、略理想的な使用状態であることがわかる。
【0106】
しかし、図6の実施の形態1の織物を使用していても、図6の実施の形態1の織物の特性よりも吸収率が低くなっていることがわかる。
比較例
図18は比較例としてのラッピング糸の吸音性織物の周波数特性図である。
【0107】
比較例としてのラッピング糸の吸音性織物は、縦糸(E)及び横糸(E)が、飽和ポリエステル糸からなる糸径、6番単糸に飽和ポリエステル糸からなる150Dの糸10本を巻付け1550Dの糸とし、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%として110%の密度とした織物である。
【0108】
ここで、背後空気層50mm(a点)では、約300Hz、400Hzで吸収率1となる点が存在するものの、全体的に低い吸収率であることがわかる。
【0109】
以上、各実施の形態では、吸収率から説明した。それをまとめると、次のようである。
【0110】
上記実施の形態の吸音性織物は、音波の通路に吸音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とするとする±20%の範囲内とすれば、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、スパン糸は高音域で比較的吸音特性が良好とし、音響エネルギを減衰させことができるものである。
【0111】
糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以下では、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とした場合、機械的強度が弱くなり、かつ、糸相互間で反射を繰返して吸収する特性が低下するので好ましくない。また、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とは、機械的強度が土木材料としての仕様及び相互反射によって吸収特性が高くなるものである。そして、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とするのは、発明者の経験則から厳格に121%との間に厳格な境界線を見出したものではないが、ソフト感のものに吸音特性がでるとのことからの選択である。
【0112】
上記実施の形態の吸音性織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とすることができる。
【0113】
したがって、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、フィラメント糸は低音域で比較的吸音特性が良好となり、音響エネルギを減衰させことができる。即ち、スパン糸とフィラメント糸では、同様に吸音性織物が製造できることを示したものである。
【0114】
上記実施の形態の吸音性織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸及び/またはフィラメント糸とを具備し、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とすることができる。
【0115】
したがって、特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。即ち、スパン糸とフィラメント糸では、同様に吸音性織物が製造できることを示したものである。
【0116】
上記実施の形態の吸音性織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸と、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の範囲の撚りとしたフィラメント糸とを具備し、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とすることができる。
【0117】
したがって、特に、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いても、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の範囲の撚りとしたフィラメント糸では、トライローバルタイプの糸が少ないから、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。
【0118】
上記実施の形態の吸音性織物としての重ね合わせた織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とした織物、及び/または糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とした織物とすることができる。
【0119】
したがって、特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。
【0120】
上記実施の形態の吸音性織物の前記スパン糸及び/またはフィラメント糸は、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dを1本以上混入して糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の撚りとすることができる。
【0121】
したがって、異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの糸が、1本以上混入しているから、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸に、当該トライローバルタイプの糸の面で反射した音響を、他の前記スパン糸及び/またはフィラメント糸によって及びその織物として吸音させることにより、特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる。
【0122】
上記実施の形態の吸音性織物としての重ね合わせた織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/m撚ってなるスパン糸で、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とした織物、及び/または断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の撚りとしたフィラメント糸で、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする±20%の範囲内とした織物とすることができる。
【0123】
したがって、両織物は、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる機能を有し、互いの特性により、広い周波数範囲の音響エネルギを減衰させことができる。
【0124】
上記実施の形態の吸音性織物の前記フィラメント糸は、インターレスから撚糸加工により収束した糸を用いることができる。インターレスから撚糸加工により収束した糸では、部分的に撚りがかかっている程度の、柔らかさによって吸音特性を良くし、音響エネルギを減衰させことができる。
【0125】
また、各実施の形態では、吸収率から構成を特定したが、防音性の概念で、みれば、次のように構成することもできる。
【0126】
本発明を実施する場合の防音性織物は、音波の通路に遮音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを500回/m以上水撚りしてなるスパン糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする130〜160%の範囲内とすることもできる。
【0127】
即ち、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を1本以下では、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とした場合、機械的強度が弱くなり、かつ、糸相互間で反射を繰返して吸収する特性が低下するので好ましくない。また、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とは、機械的強度が土木材料としての仕様及び相互反射によって吸収特性が高くするものである。更に、それを500回/m以上撚ることは、繊維の限界まで撚ることにより、繊維を堅固なものとし、同時に反射能力を高めるものである。そして、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする130〜160%の範囲内とするのは、発明者の経験則から厳格に130〜160%との間に厳格な境界線を見出したものではないが、ハード感のものに遮音特性が生ずることからの選択である。
【0128】
したがって、スパン糸によって硬く構成されることにより、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、スパン糸は高音域で防音特性がよく、音響エネルギを遮断させことができ、音波の通路に配置されて防音効果を得ることができる。
【0129】
本発明を実施する場合の防音性織物は、音波の通路に遮音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを500回/m以上水撚りしてなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする130〜160%の範囲内とすることもできる。
【0130】
したがって、フィラメント糸によって硬く構成されることにより、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、フィラメント糸は低音域で防音特性がよく、音響エネルギを遮断させことができる。
【0131】
本発明を実施する場合の防音性織物は、音波の通路に遮音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを500回/m以上水撚りしてなるスパン糸及びフィラメント糸とを具備し、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする130〜160%の範囲内とすることもできる。
【0132】
したがって、上記スパン糸とフィラメント糸は、何れを縦糸にしても、横糸にしても、硬く構成されることにより、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で防音特性がよく、音響エネルギを遮断させことができる。
【0133】
本発明を実施する場合の防音性織物は、音波の通路に遮音効果を得るために配設される織物を、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを500回/m以上水撚りしてなるスパン糸と、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを50回/m以上の撚りとしたフィラメント糸とを具備し、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする130〜160%の範囲内とすることもできる。
【0134】
したがって、スパン糸及びフィラメント糸が硬く構成され、しかも、異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸による反射性を使用でき、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で防音特性がよく、音響エネルギを遮断させことができる。
【0135】
本発明を実施する場合の重ね合わせた各織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを500回/m以上水撚りしてなるスパン糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする130〜160%の範囲内とした織物、及び/または糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを500回/m以上水撚りしてなるフィラメント糸によって、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする130〜160%の範囲内とした織物からなるものである。
【0136】
したがって、スパン糸及びフィラメント糸が硬い織物となり、しかも、異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸による反射性を維持でき、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で防音特性がよく、音響エネルギを遮断させことができる。
【0137】
本発明を実施する場合の防音性織物の前記スパン糸及び/またはフィラメント糸は、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dを1本以上混入して糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを500回/m以上水撚りとすることもできる。
【0138】
したがって、異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの糸が、1本以上混入しているから、糸径300D乃至2000Dの範囲の糸に、当該トライローバルタイプの糸の面で反射した音響を、他の前記スパン糸及び/またはフィラメント糸によって及びその織物による反射性により、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で防音特性がよく、音響エネルギを遮断させことができる。
【0139】
本発明を実施する場合の防音性織物としての重ね合わせた織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを500回/m以上水撚りしてなるスパン糸で、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする130〜160%の範囲内とした織物と、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dを2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを500回/m以上水撚りしてなるフィラメント糸で、1インチ当たりの織物密度が理論値を100%とする130〜160%の範囲内とした織物とを具備するものである。
【0140】
したがって、両織物は、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、特に、スパン糸は高音域で、フィラメント糸は低音域で吸音特性がよく、音響エネルギを減衰させことができる機能を有し、互いの特性により、広い周波数範囲の音響エネルギを減衰させことができる。
【0141】
本発明を実施する場合の防音性織物の前記フィラメント糸は、インターレスから撚糸加工により収束した糸を用いるものであるから、部分的に撚りを強くすることができ、硬さによって、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、防音特性がよく、音響エネルギを遮断させことができる。
【0142】
本発明を実施する場合の防音性織物は、音波の通路に吸音効果及び遮音効果を得るために配設される重ね合わせた織物を、防音性織物と防音性織物とを重ね合わせることにより、音波の吸音効果と遮音効果を得ることにより、織物間で音を大きく減衰させることができる。特に、人の可聴特性のよい500〜1500KHz付近の周波数において、音響エネルギの伝達を遮断させことができる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本実施の形態の吸音性織物及び防音性織物は、通常、縦と横の長さが500〜2000mm、厚みが10〜100mm程度のステンレス等の金属板の箱体、即ち、防音壁に収容され、情報から吊り下げたり、上下及び/または左右に所定のテンションで取り付けられている。この金属板の箱体には、音源側に音を導入する複数の開口が設けられている。そして、この金属板の箱体に導いた音響を吸音性織物及び/または防音性織物で吸音または遮音させるようにしている。
【0144】
しかし、本実施の形態の吸音性織物及び/または防音性織物は、縦と横の長さが500〜2000mm、厚みが10〜100mm程度のステンレス等の木材等の箱体に収容することもできる。また、本実施の形態の吸音性織物及び/または防音性織物は、そのままの状態で天井上または床下に敷設したり、壁内に入れたりして使用することもできるし、建材に貼り付けて使用することもできる。
【0145】
なお、ここでは飽和ポリエステル糸を使用したが、本発明を実施する場合には、飽和ポリエステル糸に限定されるものではなく、他の合成繊維、天然繊維が使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】図1は本発明にかかる実施の形態の吸音性及び防音性織物の吸音率の測定装置である。
【図2】図2は従来品の土木シート規格に合致した繊維材料による試料から50mm離れた位置の吸音率の特性図である。
【図3】図3は従来品の土木シート規格に合致した繊維材料による試料から75mm離れた位置の吸音率の特性図である。
【図4】図4は従来品の土木シート規格に合致した繊維材料による試料から100mm離れた位置の吸音率の特性図である。
【図5】図5は本発明にかかる実施の形態の吸音性織物及び防音性織物に使用した材料糸の説明をする表図である。
【図6】図6は本発明にかかる実施の形態1の吸音性織物の周波数特性図である。
【図7】図7は本発明にかかる実施の形態2の吸音性織物の周波数特性図である。
【図8】図8は本発明にかかる実施の形態3の吸音性織物の周波数特性図である。
【図9】図9は本発明にかかる実施の形態4の吸音性織物の周波数特性図である。
【図10】図10は本発明にかかる実施の形態5の吸音性織物の周波数特性図である。
【図11】図11は本発明にかかる実施の形態6の吸音性織物の周波数特性図である。
【図12】図12は本発明にかかる実施の形態7の吸音性織物の周波数特性図である。
【図13】図13は本発明にかかる実施の形態8の吸音性織物の周波数特性図である。
【図14】図14は本発明にかかる実施の形態9の吸音性織物の周波数特性図である。
【図15】図15は本発明にかかる実施の形態10の吸音性織物の周波数特性図である。
【図16】図16は本発明にかかる実施の形態11の吸音性織物の周波数特性図である。
【図17】図17は本発明にかかる実施の形態12の吸音性織物の周波数特性図である。
【図18】図18は比較例としてのラッピング糸の吸音性織物の周波数特性図である。
【符号の説明】
【0147】
1 スピーカ
2 周波数発生器
3 試験箱
4 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波の通路に防音効果を得るために配設される織物において、
前記織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸によって形成したことを特徴とする防音性織物。
【請求項2】
音波の通路に防音効果を得るために配設される織物において、
前記織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるフィラメント糸によって形成したことを特徴とする防音性織物。
【請求項3】
音波の通路に防音効果を得るために配設される織物において、
糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸及びフィラメント糸と
を具備することを特徴とする防音性織物。
【請求項4】
音波の通路に防音効果を得るために配設される織物において、
糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸と、
断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の範囲の撚りとしたフィラメント糸と
を具備することを特徴とする防音性織物。
【請求項5】
音波の通路に防音効果を得るために配設される重ね合わせた織物において、
前記重ね合わせた各織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/mの範囲に撚ってなるスパン糸及び/またはフィラメント糸によって形成したことを特徴とする防音性織物。
【請求項6】
前記スパン糸及び/またはフィラメント糸は、断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dを1本以上混入して糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の撚りとしたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の防音性織物。
【請求項7】
音波の通路に防音効果を得るために配設される重ね合わせた織物において、
前記重ね合わせた織物は、糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m乃至500回/m撚ってなるスパン糸で形成した織物、
及び/または断面形状を表面積が大きくなるように異形度2.0乃至4.0のトライローバルタイプの糸径20D乃至200Dの範囲の糸を2本以上用いて糸径300D乃至2000Dの範囲の糸とし、かつ、それを30回/m以下の撚りとしたフィラメント糸で形成した織物と
を具備することを特徴とする防音性織物。
【請求項8】
前記フィラメント糸は、インターレスから撚糸加工により収束した糸を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の防音性織物。
【請求項9】
音波の通路に防音効果及び遮音効果を得るために配設される重ね合わせた織物において、請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の防音性織物を重ね合わせたことを特徴とする防音性織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−52479(P2006−52479A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233221(P2004−233221)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(503210441)松山毛織株式会社 (11)
【Fターム(参考)】