説明

防音構造

【課題】エンジンからの振動による破損を防止するとともに、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができるようにする。
【解決手段】防音構造1は、エンジンガード14に取り付けられ、エンジンルーム13がエンジンガード14により閉じられた際に、マフラー16の胴体16aの少なくとも一部を覆うマフラカバー2を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のエンジンルーム内に設置される防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械においては、エンジンルームを覆うエンジンガードを設けて、エンジンから発生する騒音が周囲に放射されるのを防止している。エンジン前方には、エンジンを冷却するラジエータ等の熱交換器を空冷する冷却ファンが設置されているので、この冷却ファンの空気流路を確保するために、エンジンガードには排気開口部が設けられている。冷却ファンがエンジンルーム内の主要な音源となることから、騒音を防止するために、エンジンガードの排気開口部を、冷却ファンから離れた位置に設置する場合が多い。一般に、エンジン後方位置にはマフラーが設置されるので、排気開口部はマフラーの周辺位置に設置されることになる。
【0003】
ここで、エンジンからの高音圧の排ガスがマフラーの内部を通過することにより、マフラーの胴体表面が振動する。また、大音圧がマフラーの胴体表面を透過することから、マフラーの胴体表面が騒音源となって、エンジンガードの排気開口部を通過した騒音が周辺に放射されることになる。
【0004】
また、マフラーの胴体に立設され、エンジンガードを貫通するマフラーテールパイプとエンジンガードとの間に、干渉防止のための隙間(開口部)を設ける場合が多く、この隙間からも騒音が放射される場合が多い。
【0005】
特許文献1には、マフラー胴体の側方と上方とに近接配置されたプレートの内面および外面に接着された吸音部材により、マフラーの胴体表面から発生する騒音およびエンジンルーム内の騒音を吸収するとともに、マフラーテールパイプの外周部に巻装された吸音部材により、マフラーテールパイプから発生する騒音を吸収するエンジンルーム防音装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、重量バランスをとるための重量のあるカウンタウェイトに、マフラーの後部側を覆うマフラカバーを取り付けることで、エンジン等からの振動がマフラカバーに伝わるのを防止した建設機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−335708号公報
【特許文献2】特開2002−70075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の吸音部材は、いずれもエンジンに固設されたブラケットに取り付けられて、片持ち支持されているため、エンジンからの振動を受けて破損しやすい。また、特許文献2のマフラカバーは、マフラー全体を覆っていないので、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができない。
【0009】
本発明の目的は、エンジンからの振動による破損を防止するとともに、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることが可能な防音構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明における防音構造は、少なくともエンジンおよびマフラーが内設されており、開口部を有するエンジンガードにより開閉されるエンジンルーム内に設けられた防音構造であって、前記エンジンガードに取り付けられ、前記エンジンルームが前記エンジンガードにより閉じられた際に、前記マフラーの胴体の少なくとも一部を覆うマフラカバーを有することを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、マフラカバーでマフラーの胴体の少なくとも一部を覆うことで、マフラーの胴体表面からの放射音がエンジンガードの開口部から直接的に放射されることが防止される。よって、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができる。また、マフラカバーはエンジン側ではなく、エンジンガードに取り付けられているので、エンジンからの振動がマフラカバーに直接伝播しない。よって、マフラカバーを薄板で形成したとしても、エンジンからの振動による破損を防止することができる。
【0012】
また、本発明における防音構造において、前記マフラーの胴体には、マフラーテールパイプが立設されており、前記エンジンガードには、前記マフラーテールパイプが貫通する他の開口部が設けられており、前記マフラカバーは、前記エンジンルームが前記エンジンガードにより閉じられた際に、前記マフラーテールパイプの一部を覆ってよい。上記の構成によれば、マフラカバーがマフラーテールパイプの一部を覆うことで、マフラーの胴体表面からの放射音が、マフラーテールパイプとエンジンガードとの隙間から放射されることが防止される。これにより、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができる。
【0013】
また、本発明における防音構造において、前記マフラカバーは、前記エンジンルームが前記エンジンガードにより閉じられた際に、前記マフラーの胴体の長手方向の両端面を覆ってよい。上記の構成によれば、マフラーの胴体の長手方向の両端面が平板で構成されている場合、剛性が低いために、両端面が大きな騒音を発生させる部位となる場合があるが、両端面をマフラカバーで覆うことで、両端面からの放射音が、エンジンガードの開口部から直接的に放射されることが防止される。これにより、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができる。
【0014】
また、本発明における防音構造において、前記マフラカバーには、複数の微細孔が設けられていてよい。上記の構成によれば、マフラカバーに複数の微細孔が設けられていると、微細孔を通過する空気に粘性抵抗による減衰作用と動圧損失による減衰作用とが生じるので、微細孔を通過した音波は吸音される。これにより、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができる。
【0015】
また、本発明における防音構造においては、前記マフラカバーと前記エンジンガードとの間の空間を前記エンジンルーム内の他の空間から仕切る仕切り部材を更に有していてよい。上記の構成によれば、マフラカバーとエンジンガードとの間の空間をエンジンルーム内の他の空間から仕切ると、微細孔の上流に位置する空気にヘルムホルツ共鳴原理による消音作用が生じるので、微細孔の上流に位置する空気に含まれる共鳴周波数の音波は消音される。これにより、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができる。
【0016】
また、本発明における防音構造においては、前記マフラカバーと前記エンジンガードと前記仕切り部材とで仕切られた空間内に設けられた吸音材を更に有していてよい。上記の構成によれば、吸音材により、マフラーの胴体表面からの放射音が吸音される。これにより、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができる。
【0017】
また、本発明における防音構造において、前記複数の微細孔の開口率が1〜10%であってよい。上記の構成によれば、複数の微細孔の開口率が1〜10%であると、粘性抵抗による減衰作用と動圧損失による減衰作用とが顕著になる。これにより、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができる。
【0018】
また、本発明における防音構造においては、ヘルムホルツ共鳴型消音器を更に有していてよい。上記の構成によれば、ヘルムホルツ共鳴型消音器により、マフラーの胴体表面からの放射音が消音される。これにより、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができる。
【0019】
また、本発明における防音構造において、前記エンジンルーム内には、油圧ポンプと前記エンジンを冷却する冷却ファンとが内設されており、前記油圧ポンプの油が前記マフラーに飛散するのを防止するとともに、前記冷却ファンが前記エンジンを冷却した空気を前記開口部にガイドする流路を形成する防火カバーと、前記流路の下流側に設けられた吸音材と、を更に有していてよい。上記の構成によれば、エンジンを冷却した空気を開口部にガイドし、この空気に含まれる騒音を吸音材で吸音することで、冷却ファンおよびエンジンからの騒音を低減させることができる。
【0020】
また、本発明における防音構造において、前記エンジンルーム内には、油圧ポンプが内設されており、前記マフラカバーは、前記油圧ポンプと前記マフラーとの間に位置して、前記油圧ポンプの油が前記マフラーに飛散するのを防止する延長部を有していてよい。上記の構成によれば、マフラカバーの延長部で、油圧ポンプの油がマフラーに飛散するのを防止することで、別途防火カバーを設ける必要がない。これにより、部品点数の増加が回避されるから、コストの上昇を抑制することができる。
【0021】
また、本発明における防音構造において、前記エンジンルーム内には、前記エンジンを冷却する冷却ファンが内設されており、前記エンジンガードに取り付けられ、前記マフラカバーを覆う外側カバーと、前記エンジンガードにおける前記マフラカバーの取付位置と前記外側カバーの取付位置との間に設けられた第3の開口部と、前記マフラカバーにおける前記外側カバーに対向する面および前記外側カバーにおける前記マフラカバーに対向する面の少なくとも一方、および、前記マフラカバーにおける前記マフラーの胴体および前記マフラーテールパイプに対向する面に設けられた吸音材と、を更に有していてよい。上記の構成によれば、冷却ファンがエンジンを冷却した空気の一部は、マフラカバーとマフラーテールパイプとの間を通って他の開口部から排気される。このとき、マフラカバーにおけるマフラーの胴体およびマフラーテールパイプに対向する面に設けられた吸音材が他の開口部からの排気に含まれる騒音を吸音する。また、冷却ファンがエンジンを冷却した空気の一部は、マフラカバーと外側カバーとの間を通って第3の開口部から排気される。このとき、マフラカバーにおける外側カバーに対向する面および外側カバーにおけるマフラカバーに対向する面の少なくとも一方に設けられた吸音材が第3の開口部からの排気に含まれる騒音を吸音する。よって、冷却ファンおよびエンジンからの騒音を低減させることができる。
【0022】
また、本発明における防音構造においては、前記マフラーテールパイプの軸方向に沿って設けられ、前記マフラカバーと前記外側カバーとを接続する接続部材を更に有していてよい。上記の構成によれば、マフラカバーと外側カバーとを接続部材で接続することによって、マフラカバーと外側カバーとが一体化するから、構造的な強度を向上させることができる。
【0023】
また、本発明における防音構造において、前記エンジンルーム内には、前記エンジンを冷却する冷却ファンが内設されており、前記マフラカバーと前記エンジンガードとの間に設けられ、前記冷却ファンが前記エンジンを冷却した空気を前記開口部に導くダクトと、前記ダクト内に設けられた吸音材と、を更に有していてよい。上記の構成によれば、エンジンを冷却した空気をダクトで開口部に導き、この空気に含まれる騒音をダクト内の吸音材で吸音することで、冷却ファンおよびエンジンからの騒音を低減させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の防音構造によると、マフラカバーでマフラーの胴体の少なくとも一部を覆うことで、マフラーの胴体表面からの放射音を低減させることができる。また、マフラカバーはエンジン側ではなく、エンジンガードに取り付けられているので、エンジンからの振動による破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】建設機械を示す概略斜視図である。
【図2】エンジンルームおよびエンジンガードの概略斜視図である。
【図3】図2を矢印A方向にみた断面図である。
【図4】図3を矢印B方向にみた断面図である。
【図5】図2を矢印A方向にみた断面図である。
【図6】垂直入射吸音率の計算結果を示す図である。
【図7】図2を矢印A方向にみた断面図である。
【図8】図2を矢印A方向にみた断面図である。
【図9】図2を矢印A方向にみた断面図である。
【図10】図9を矢印B方向にみた断面図である。
【図11】図2を矢印A方向にみた断面図である。
【図12】図2を矢印A方向にみた断面図である。
【図13】図2を矢印A方向にみた断面図である。
【図14】図2を矢印A方向にみた断面図である。
【図15】図14のC−C断面図である。
【図16】吸音材による吸音効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
[第1実施形態]
(建設機械の構成)
本実施形態による防音構造は、図1に示すように、油圧ショベル等の建設機械11に設けられている。建設機械11の上部旋回体12には、エンジンルーム13が設けられており、エンジンルーム13には、エンジン15、マフラー16、マフラーテールパイプ17等が内設されている。
【0028】
図2に示すように、エンジンガード14は、上部旋回体12の右方寄りに設置されたヒンジ18を介してエンジンルーム13を開閉可能に設置されており、エンジンルーム13は、エンジンガード14により開閉される。上部旋回体12とエンジンガード14との間には、エンジンガード14を開いた状態に保持するステー19が設置されており、エンジン15の保守点検は、エンジンガード14を開方向に操作し、ステー19によりエンジンガード14を支持した状態で行う。また、エンジンガード14には、冷却ファン21からの空気が排気される開口部(図示せず)と、マフラー16の胴体に立設されたマフラーテールパイプ17が貫通する他の開口部14bと、が設けられている。
【0029】
(防音構造の構成)
図2を矢印A方向にみた断面図である図3に示すように、エンジンルーム13内には、エンジン15、エンジン15の上方に設けられたマフラー16、マフラー16の円柱状の胴体16aに立設されたマフラーテールパイプ17、エンジン15の側方に設けられた油圧ポンプ20等が配置されている。エンジンガード14には、冷却ファン21(図2参照)からの空気が排気される開口部14aと、マフラーテールパイプ17が貫通する他の開口部14bと、が設けられている。
【0030】
また、エンジンルーム13内には、防音構造1が設けられている。防音構造1は、エンジンガード14に取り付けられ、エンジンルーム13がエンジンガード14により閉じられた際に、マフラー16の胴体16aの上半分と、マフラーテールパイプ17の一部とを覆うマフラカバー2を有している。マフラカバー2は、マフラー16の胴体16aの上半分を覆う円弧状の胴体部2aと、マフラーテールパイプ17の一部を覆う円筒状の円筒部2bとを有している。このマフラカバー2により、エンジンガード14の開口部14aおよび他の開口部14bからマフラー16を直視することができないようにされている。
【0031】
図3を矢印B方向にみた断面図である図4に示すように、マフラカバー2は、円筒部2bと、支持部2d,2eとで、エンジンガード14に取り付けられている。また、マフラー16の胴体16aの長手方向の両端面16bは平面で構成されており、マフラカバー2は、エンジンルーム13がエンジンガード14により閉じられた際に、マフラー16の両端面16bの各々を覆う端部2cを有している。
【0032】
このように、マフラカバー2でマフラー16の胴体16aの上半分を覆うことで、マフラー16の胴体16a表面からの放射音がエンジンガード14の開口部14a,14bから直接的に放射されることが防止される。よって、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。また、マフラカバー2はエンジン15側ではなく、エンジンガード14に取り付けられているので、エンジン15からの振動がマフラカバー2に直接伝播しない。よって、マフラカバー2を薄板で形成したとしても、エンジン15からの振動による破損を防止することができる。
【0033】
また、マフラカバー2がマフラーテールパイプ17の一部を覆うことで、マフラー16の胴体16a表面からの放射音が、マフラーテールパイプ17とエンジンガード14との隙間から放射されることが防止される。これにより、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0034】
また、マフラー16の胴体16aの長手方向の両端面16bが平板で構成されている場合、剛性が低いために、両端面16bが大きな騒音を発生させる部位となる場合があるが、両端面16bをマフラカバー2で覆うことで、両端面16bからの放射音が、エンジンガード14の開口部14a,14bから直接的に放射されることが防止される。これにより、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0035】
[第2実施形態]
(防音構造の構成)
次に、本発明の第2実施形態について、図5、図6を用いて説明する。図2を矢印A方向にみた断面図である図5に示すように、本実施形態の防音構造31は、マフラー16の胴体16aの上半分、および、マフラーテールパイプ17の一部を覆うマフラカバー32に複数の微細孔35が設けられている点と、マフラカバー32とエンジンガード14との間の空間34をエンジンルーム13内の他の空間から仕切る仕切り部材33を有している点で、第1実施形態の防音構造1と異なっている。マフラカバー32および仕切り部材33により、エンジンガード14の開口部14aおよび他の開口部14bからマフラー16を直視することができないようにされている。
【0036】
マフラカバー32の円弧状の胴体部32aおよび円筒状の円筒部32bには、複数の微細孔35が設けられている。複数の微細孔35の開口率は、1〜10%である。このように、マフラカバー32に複数の微細孔35が設けられていると、微細孔35を通過する空気に粘性抵抗による減衰作用と動圧損失による減衰作用とが生じるので、微細孔35を通過した音波は吸音される。これにより、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0037】
また、マフラカバー32とエンジンガード14との間の空間34をエンジンルーム13内の他の空間から仕切ると、微細孔35の上流に位置する空気(マフラカバー32とマフラー16およびマフラーテールパイプ17との間に位置する空気)にヘルムホルツ共鳴原理による消音作用が生じる。具体的には、胴体部32aの上流に位置する空気(胴体部32aとマフラー16との間に位置する空気)と、円筒部32bの上流に位置する空気(円筒部32bとマフラーテールパイプ17との間に位置する空気)とに、ヘルムホルツ共鳴原理による消音作用が生じる。これにより、微細孔35の上流に位置する空気に含まれる共鳴周波数の音波は消音されるので、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0038】
図6は、垂直入射吸音率の計算結果を示している。ここで、マフラカバー32の厚さは1mm、微細孔35の直径は2mm、マフラカバー32における微細孔35の開口率は5.5%、マフラカバー32の密度は2.4kg/m、音速は422m/s、空間34の空気層厚Lは10mm又は20mm、騒音レベルは160dBである。
【0039】
このように、複数の微細孔35の開口率が1〜10%であると、粘性抵抗による減衰作用と動圧損失による減衰作用とが顕著になる。また、ヘルムホルツ共鳴原理による消音作用が顕著になる。これにより、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0040】
その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0041】
[第3実施形態]
(防音構造の構成)
次に、本発明の第3実施形態について、図7を用いて説明する。図2を矢印A方向にみた断面図である図7に示すように、本実施形態の防音構造41は、マフラカバー32とエンジンガード14と仕切り部材33とで仕切られた空間34内に吸音材42が設けられている点と、油圧ポンプ20の油がマフラー16に飛散するのを防止する防火カバー43、および、流路45の下流側に設けられた吸音材44を有している点で、第2実施形態の防音構造31と異なっている。
【0042】
エンジンルーム13には、冷却ファン21が内設されている(図2参照)。この冷却ファン21は、エンジン15を冷却する。防火カバー43は、油圧ポンプ20とエンジンガード14との間に配置されて、エンジン15を冷却した空気を開口部14aにガイドする流路45を形成している。そのため、エンジン15を冷却した空気は流路45に沿って流れる。流路45の下流側に設けられた吸音材44は、流路45に沿って流れる空気に含まれる騒音を吸音する。よって、冷却ファン21およびエンジン15からの騒音を低減させることができる。
【0043】
また、微細孔35を通って空間34内に侵入したマフラー16の胴体16a表面からの放射音は、吸音材42により吸音される。これにより、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0044】
その他の構成は、第1実施形態および第2実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0045】
[第4実施形態]
(防音構造の構成)
次に、本発明の第4実施形態について、図8を用いて説明する。図2を矢印A方向にみた断面図である図8に示すように、本実施形態の防音構造51は、マフラカバー32が、油圧ポンプ20とマフラー16との間に位置して、油圧ポンプ20の油がマフラー16に飛散するのを防止する延長部32fを有している点で、第3実施形態の防音構造41と異なっている。マフラカバー32および延長部32fにより、エンジンガード14の開口部14aおよび他の開口部14bからマフラー16を直視することができないようにされている。
【0046】
このように、マフラカバー32の延長部32fで、油圧ポンプ20の油がマフラー16に飛散するのを防止することで、別途防火カバーを設ける必要がない。これにより、部品点数の増加が回避されるから、コストの上昇を抑制することができる。
【0047】
その他の構成は、第1実施形態、第2実施形態、および、第3実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0048】
[第5実施形態]
(防音構造の構成)
次に、本発明の第5実施形態について、図9、図10を用いて説明する。図2を矢印A方向にみた断面図である図9に示すように、本実施形態の防音構造61は、マフラカバー2とエンジンガード14との間に設けられ、冷却ファン21(図2参照)がエンジン15を冷却した空気を開口部14aに導くダクト62と、ダクト62内に設けられた吸音材63と、を有している点で、第1実施形態の防音構造1と異なっている。
【0049】
図9を矢印B方向にみた断面図である図10に示すように、断面形状が矩形のダクト62は、マフラカバー2、エンジンガード14、マフラカバー2の円筒部2b、および、マフラカバー2の支持部2eとで囲まれた空間に設けられており、その内周面には、グラスウール等の吸音材63が取り付けられている。冷却ファン21がエンジン15を冷却した空気は、ダクト62内を通過して、エンジンガード14の開口部14aから排気される。その際、冷却ファン21がエンジン15を冷却した空気に含まれる騒音をダクト62内の吸音材63で吸音することで、冷却ファン21およびエンジン15からの騒音を低減させることができる。
【0050】
また、図9に示すように、ダクト62の内部空間と開口部14aとが連通されている。これにより、開口部14aからマフラー16を直視することができないようにされている。よって、ダクト62により、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0051】
その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0052】
[第6実施形態]
(防音構造の構成)
次に、本発明の第6実施形態について、図11、図12、図13を用いて説明する。図2を矢印A方向にみた断面図である図11に示すように、本実施形態の防音構造71は、マフラカバー2の円筒部2bにヘルムホルツ共鳴型消音器36が設けられている点で、第1実施形態の防音構造1と異なっている。
【0053】
ヘルムホルツ共鳴型消音器36の管路長さLは、消音対象である周波数の1/4波長の長さである。ヘルムホルツ共鳴型消音器36により、マフラー16の胴体16a表面からの放射音が消音される。これにより、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0054】
また、図2を矢印A方向にみた断面図である図12に示すように、本実施形態の防音構造81は、マフラカバー2を覆う外側カバー37がエンジンガード14に取り付けられており、マフラカバー2と外側カバー37とでヘルムホルツ共鳴型消音器38が形成されている点で、第1実施形態の防音構造1と異なっている。
【0055】
ヘルムホルツ共鳴型消音器38の管路長さLは、消音対象である周波数の1/4波長の長さである。ヘルムホルツ共鳴型消音器38により、マフラー16の胴体16a表面からの放射音が消音される。これにより、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0056】
また、図2を矢印A方向にみた断面図である図13に示すように、本実施形態の防音構造91は、マフラカバー2を備えておらず、第2実施形態の仕切り部材33と、仕切り部材33で囲まれた空間に水平に設けられた複数の仕切り材39とで、ヘルムホルツ共鳴型消音器40が形成されている点で、第1実施形態の防音構造1と異なっている。仕切り部材33および複数の仕切り材39により、エンジンガード14の開口部14aおよび他の開口部14bからマフラー16を直視することができないようにされている。複数の仕切り材39は、マフラー16の胴体16aの上半分、および、マフラーテールパイプ17の一部を覆うマフラカバー2の役割を果たしている。なお、防音構造91は、図5で説明した微細孔35を有するマフラカバー32を有していてもよい。
【0057】
ヘルムホルツ共鳴型消音器40の管路長さLは、消音対象である周波数の1/4波長の長さである。ヘルムホルツ共鳴型消音器40により、マフラー16の胴体16a表面からの放射音が消音される。これにより、マフラー16の胴体16a表面からの放射音を低減させることができる。
【0058】
その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0059】
[第7実施形態]
(防音構造の構成)
次に、本発明の第7実施形態について、図14、図15、図16を用いて説明する。図2を矢印A方向にみた断面図である図14に示すように、本実施形態の防音構造101は、エンジンガード14に取り付けられ、マフラカバー2を覆う外側カバー37と、エンジンガード14におけるマフラカバー2の取付位置と外側カバー37の取付位置との間に設けられた第3の開口部14cと、マフラカバー2におけるマフラー16の胴体16aおよびマフラーテールパイプ17に対向する面に設けられた吸音材72と、マフラカバー2における外側カバー37に対向する面に設けられた吸音材73と、外側カバー37におけるマフラカバー2に対向する面に設けられた吸音材74と、を更に有している点で、第1実施形態の防音構造1と異なっている。
【0060】
冷却ファン21(図2参照)がエンジン15を冷却した空気の一部は、マフラー16およびマフラーテールパイプ17と、マフラカバー2との間を通って他の開口部14bから排気される。このとき、吸音材72が他の開口部14bからの排気に含まれる騒音を吸音する。また、冷却ファン21がエンジン15を冷却した空気の一部は、マフラカバー2と外側カバー37との間を通って第3の開口部14cから排気される。このとき、吸音材73,74が第3の開口部14cからの排気に含まれる騒音を吸音する。よって、冷却ファン21およびエンジン15からの騒音を低減させることができる。
【0061】
なお、第3の開口部14cからの排気に含まれる騒音を吸音する吸音材として、吸音材73と吸音材74とを設けたが、どちらか一方のみを設ける構成であってもよい。
【0062】
図14のC−C断面図である図15に示すように、マフラカバー2と外側カバー37とは、接続部材75によって接続されている。接続部材75は、マフラーテールパイプ17の軸方向に沿って設けられているので、第3の開口部14cから排気される風の流れを阻害することがない。そして、マフラカバー2と外側カバー37とを接続部材75で接続することによって、マフラカバー2と外側カバー37とが一体化するから、構造的な強度を向上させることができる。
【0063】
吸音材72,73,74による吸音効果を図16に示す。Case1は図3に示した第1実施形態の防音構造1であり、Case2は図14に示す本実施形態の防音構造101であって、吸音材74を使用せずに吸音材72と吸音材73とを使用したものである。また、Case3は図14に示す本実施形態の防音構造101であって、吸音材73を使用せずに吸音材72と吸音材74とを使用したものであり、Case4は図14に示す本実施形態の防音構造101であって、吸音材72、吸音材73、および、吸音材74を全て使用したものである。Case2〜4の防音構造101のように、マフラカバー2と外側カバー37とによる2重構造とし、吸音材73および吸音材74の少なくとも一方と、吸音材72とを設けると、第3の開口部14cを設けることによって開口面積が増加したとしても、吸音材72、吸音材73、および、吸音材74を全て有しないCase1の防音構造1よりも騒音が低減することがわかる。
【0064】
その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0065】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0066】
例えば、第5実施形態の吸音材63を有するダクト62が、他のすべての実施形態の防音構造に設けられていてもよい。また、第6実施形態のヘルムホルツ共鳴型消音器36,38,40が、第3〜5実施形態の防音構造に設けられていてもよい。また、第3実施形態の防火カバー43および吸音材44が、第5〜7実施形態の防音構造に設けられていてもよい。また、第4実施形態の延長部32fが、第5,6実施形態の防音構造に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,31,41,51,61,71,81,91,101 防音構造
2,32 マフラカバー
2a,32a 胴体部
2b,32b 円筒部
2c 端部
11 建設機械
13 エンジンルーム
14 エンジンガード
14a 開口部
14b 他の開口部
14c 第3の開口部
15 エンジン
16 マフラー
16a 胴体
17 マフラーテールパイプ
20 油圧ポンプ
21 冷却ファン
32f 延長部
33 仕切り部材
34 空間
35 微細孔
36,38,40 ヘルムホルツ共鳴型消音器
37 外側カバー
42,44,63,72,73,74 吸音材
43 防火カバー
45 流路
62 ダクト
75 接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエンジンおよびマフラーが内設されており、開口部を有するエンジンガードにより開閉されるエンジンルーム内に設けられた防音構造であって、
前記エンジンガードに取り付けられ、前記エンジンルームが前記エンジンガードにより閉じられた際に、前記マフラーの胴体の少なくとも一部を覆うマフラカバーを有することを特徴とする防音構造。
【請求項2】
前記マフラーの胴体には、マフラーテールパイプが立設されており、
前記エンジンガードには、前記マフラーテールパイプが貫通する他の開口部が設けられており、
前記マフラカバーは、前記エンジンルームが前記エンジンガードにより閉じられた際に、前記マフラーテールパイプの一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載の防音構造。
【請求項3】
前記マフラカバーは、前記エンジンルームが前記エンジンガードにより閉じられた際に、前記マフラーの胴体の長手方向の両端面を覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載の防音構造。
【請求項4】
前記マフラカバーには、複数の微細孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項5】
前記マフラカバーと前記エンジンガードとの間の空間を前記エンジンルーム内の他の空間から仕切る仕切り部材を更に有することを特徴とする請求項4に記載の防音構造。
【請求項6】
前記マフラカバーと前記エンジンガードと前記仕切り部材とで仕切られた空間内に設けられた吸音材を更に有することを特徴とする請求項5に記載の防音構造。
【請求項7】
前記複数の微細孔の開口率が1〜10%であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項8】
ヘルムホルツ共鳴型消音器を更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項9】
前記エンジンルーム内には、油圧ポンプと前記エンジンを冷却する冷却ファンとが内設されており、
前記油圧ポンプの油が前記マフラーに飛散するのを防止するとともに、前記冷却ファンが前記エンジンを冷却した空気を前記開口部にガイドする流路を形成する防火カバーと、
前記流路の下流側に設けられた吸音材と、
を更に有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項10】
前記エンジンルーム内には、油圧ポンプが内設されており、
前記マフラカバーは、前記油圧ポンプと前記マフラーとの間に位置して、前記油圧ポンプの油が前記マフラーに飛散するのを防止する延長部を有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項11】
前記エンジンルーム内には、前記エンジンを冷却する冷却ファンが内設されており、
前記エンジンガードに取り付けられ、前記マフラカバーを覆う外側カバーと、
前記エンジンガードにおける前記マフラカバーの取付位置と前記外側カバーの取付位置との間に設けられた第3の開口部と、
前記マフラカバーにおける前記外側カバーに対向する面および前記外側カバーにおける前記マフラカバーに対向する面の少なくとも一方、および、前記マフラカバーにおける前記マフラーの胴体および前記マフラーテールパイプに対向する面に設けられた吸音材と、
を更に有することを特徴とする請求項2に記載の防音構造。
【請求項12】
前記マフラーテールパイプの軸方向に沿って設けられ、前記マフラカバーと前記外側カバーとを接続する接続部材を更に有することを特徴とする請求項11に記載の防音構造。
【請求項13】
前記マフラカバーは、前記エンジンルームが前記エンジンガードにより閉じられた際に、前記マフラーの胴体の長手方向の両端面を覆うことを特徴とする請求項11又は12に記載の防音構造。
【請求項14】
前記エンジンルーム内には、油圧ポンプが内設されており、
前記油圧ポンプの油が前記マフラーに飛散するのを防止するとともに、前記冷却ファンが前記エンジンを冷却した空気を前記開口部にガイドする流路を形成する防火カバーと、
前記流路の下流側に設けられた吸音材と、
を更に有することを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の防音構造。
【請求項15】
前記エンジンルーム内には、前記エンジンを冷却する冷却ファンが内設されており、
前記マフラカバーと前記エンジンガードとの間に設けられ、前記冷却ファンが前記エンジンを冷却した空気を前記開口部に導くダクトと、
前記ダクト内に設けられた吸音材と、
を更に有していることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の防音構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−226251(P2011−226251A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65426(P2011−65426)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】