説明

防食材料

コロイド状粒子及び多価金属イオンを含む防食材料を開示する。粒子は好ましくはシリカである。金属イオンは、Al、Ga、Ti、Zr、Hf、Zn、Mg、Ca、Nb、Ta、Fe、Cu、Sn、Co、W、又はCeであってよい。この材料を、転換被覆液に加えるか、ポリマーバインダーと混合するか、又はそのまま用いて被膜を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食組成物を含む防食材料、組成物、配合物、及び防食組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属処理及び被膜産業においては、良好な耐腐食性を有し、接着性、強度、防食特性、薄いフィルム厚さ等のような他の望ましいフィルム特性を保持しながら毒性の金属を含まない防食組成物及び配合物に関する必要性が存在する。また、当該技術においては、防食組成物及び配合物を製造し使用する方法に関する必要性も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、新規な防食組成物、配合物、及びそれから製造されるフィルムを見出すことによって上記で議論した困難性及び問題点の幾つかに対処する。本組成物は、2種類のナノサイズの金属酸化物粒子を、二価及び三価の金属イオンと組み合わせて含む。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの代表的な態様においては、本発明の防食組成物は、溶媒;コロイド状粒子;及び組成物の全重量を基準として少なくとも約0.001重量%乃至約10重量%以下の量で存在する少なくとも1種類の多価金属イオン;を含む。
【0005】
更なる代表的な態様においては、本発明の防食組成物は、溶媒;コロイド状粒子;及び少なくとも1種類の多価金属イオン;を含み、60℃において少なくとも60分間、又は25℃において少なくとも8時間安定状態を保つ。
【0006】
更なる代表的な態様においては、本発明の防食組成物は、溶媒;コロイド状粒子;及び少なくとも1種類の多価金属イオン;を含み、金属酸化物に対する金属イオンの比が約0.001より大きく約0.1以下である。コロイド状粒子に対する多価金属イオンの比は、少なくとも約0.005、好ましくは少なくとも約0.008、より好ましくは少なくとも約0.01、更により好ましくは少なくとも約0.01乃至約0.1であってよい。
【0007】
本発明は更に、代表的な防食組成物を形成する方法に関する。1つの代表的な方法は、40重量%以下の金属酸化物粒子(ここで、重量%は分散液の全重量を基準とするものである)を水に加え;多価金属塩を分散液に加え;次に組成物を混合する;などの工程で、水中のコロイド状金属酸化物粒子の分散液を形成することを含む。得られる分散液は、望ましくは60℃において少なくとも60分間、又は25℃において少なくとも8時間の間安定な粘度を有する。
【0008】
他の代表的な態様においては、本発明の防食配合物は、バインダー;溶媒;コロイド状粒子;及び少なくとも1種類の多価金属イオン;を含み、金属酸化物に対する金属イオンの比が約0.001より大きく約0.1以下である。コロイド状粒子に対する多価金属イオンの比は、少なくとも約0.005、好ましくは少なくとも約0.008、より好ましくは少なくとも約0.01、更により好ましくは少なくとも約0.01乃至約0.1であってよい。
【0009】
防食配合物を用いる更なる代表的な方法においては、かかる方法は、第1の表面を有する基材を提供し;基材の第1の表面上に配合物を被覆し;そして被覆された基材を乾燥する;工程を含む、被覆基材を形成する方法を含む。得られる被膜により、腐食性環境において特に有用な望ましい防食耐性を有する基材が与えられる。
【0010】
1つの代表的な態様においては、本発明の耐腐食性材料は、基材;並びに、コロイド状粒子、及び少なくとも1種類の多価金属イオンを有し、金属酸化物に対する金属イオンの比が約0.001より大きく約0.1以下である、基材上の防食被膜;を含む。コロイド状粒子に対する多価金属イオンの比は、少なくとも約0.005、好ましくは少なくとも約0.008、より好ましくは少なくとも約0.01、更により好ましくは少なくとも約0.01乃至約0.1であってよい。
【0011】
本発明のこれらの及び他の特徴並びに有利性は、開示された態様の以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を検討すれば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の防食材料を含む少なくとも1つの層を含む本発明の代表的な物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の原理の理解を促進するために、以下において本発明の特定の態様を説明し、特定の用語を用いて特定の態様を説明する。しかしながら、特定の用語を用いることによって本発明の範囲を限定する意図はないことが理解されよう。議論される本発明の原理の変更、更なる修正、及びかかる更なる適用は、本発明が属する技術の当業者が通常的に想到するものであると考えられる。
【0014】
本発明は、防食被膜、並びに防食被膜を形成するのに好適な配合物及び分散液に関する。本発明は更に、防食材料を製造する方法、並びにかかる材料を使用する方法に関する。代表的な防食材料、被膜、防食材料を形成するための配合物及び分散液、並びに防食材料、被膜、配合物、及び分散液の製造方法の説明を以下に与える。
【0015】
本発明の防食組成物及び配合物は、良好な耐腐食性を有し、接着性、強度、薄いフィルム厚さ、防食特性等のような他の望ましいフィルム特性を未だ保持しながら毒性の金属を含まない。
【0016】
代表的な態様においては、本発明の防食組成物は、溶媒;コロイド状粒子;及び組成物の全重量を基準として少なくとも約0.001重量%乃至約5重量%以下の量で存在する少なくとも1種類の多価金属イオン;を含む。多価金属イオンは、20〜40%の固形分を含む組成物の全重量を基準として約0.1重量%乃至約4重量%以下、好ましくは約0.1重量%乃至約3重量%以下、より好ましくは約0.1重量%乃至約2重量%以下、更により好ましくは約0.1重量乃至約1重量%以下の量で組成物中に存在させることができる。固形分含量によって、組成物中の多価金属イオンの上記記載の量は、固形分含量が増加又は減少するにつれてそれぞれ増加又は減少させることができる。
【0017】
更なる代表的な態様においては、本発明の防食組成物は、溶媒;コロイド状粒子;及び少なくとも1種類の多価金属イオン;を含み、コロイド状粒子に対する金属イオンの比は約0.001より大きく約0.1以下であってよい。コロイド状粒子に対する多価金属イオンの比は、少なくとも約0.005、好ましくは少なくとも約0.008、より好ましくは少なくとも約0.01、更により好ましくは少なくとも約0.01乃至約0.1であってよい。
【0018】
粒子は、金属の酸化物、硫化物、水酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩等から構成することができるが、好ましくは金属酸化物である。ここで用いる「金属酸化物」とは、金属がカチオンであり酸化物がアニオンである二元酸素化合物として定義される。金属にはメタロイドも包含することができる。金属としては、周期律表上のホウ素からポロニウムへ引かれる対角線の左側の元素が挙げられる。メタロイド又は半金属としては、この線上の元素が挙げられる。金属酸化物の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等、及びこれらの混合物が挙げられる。粒子は、鎖状、棒状、又は木片状などの種々の異なる対称、非対称、又は不規則形状であってよい。粒子は、アモルファス又は結晶質などの異なる構造を有していてよく、ゲル状、ゾル状、沈殿状、ヒューム状等のような種々の形態であってよい。粒子は、異なる組成、寸法、形状、又は物理構造を有するか、或いは異なる表面処理以外は同じものであってもよい粒子の混合物を包含することができる。好ましくは、金属酸化物粒子は、例えばコロイド状シリカのようにアモルファスである。
【0019】
「コロイド状粒子」又は「コロイド状ゾル」という用語は、粒子が比較的長時間にわたって分散液から沈降しない分散液又はゾルを由来とする粒子を意味する。かかる粒子は、典型的には1ミクロンより小さい寸法である。約1〜約300ナノメートルの範囲の平均粒径を有するコロイド状ゾル及びその製造方法は、当該技術において周知である。米国特許2,244,325;2,574,902;2,577,484;2,577,485;2,631,134;2,750,345;2,892,797;3,012,972;及び3,440,174(これらの内容は参照として本明細書中に包含する)を参照。5〜100ナノメートルの範囲の平均粒径を有するコロイド状ゾルが本発明のためにより好ましい。コロイド状ゾルは、9〜約2700m/g−SiOの範囲の比表面積(BET窒素吸着によって測定)を有していてよい。
【0020】
本発明の防食組成物において多くのタイプのコロイド状ゾルを用いることができるが、代表的なコロイド状シリカゾルを以下に説明する。殆どのコロイド状シリカゾルは、シリカ粒子を凝集又はゲル化から安定化させるアルカリを含む。アルカリは通常はアルカリ金属水酸化物であり、アルカリ金属は周期律表の第IA族からのものである(リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物)。殆どの商業的に入手できるコロイド状シリカゾルは、少なくとも部分的にコロイド状シリカを製造するのに用いるケイ酸ナトリウムを由来とするナトリウムを含むが、水酸化ナトリウムを加えてゾルをゲル化に対して安定化させることもできる。幾つかのアルカリ性コロイド状シリカゾルは水性アンモニアによって安定化する。かかるアルカリ性コロイド状シリカゾルは本発明には不適である。本発明に好適な殆どの多価金属イオンは、アルカリ性溶液中で不溶の金属水酸化物を形成し、これによって防食配合物の処理が制限される。アルカリ性コロイド状シリカゾルを例えば無機又は有機酸で酸性化することは、得られるアルカリ金属塩がコロイド状シリカゾル及び本発明の防食組成物の安定性を減少させ、更に被膜の防食特性に有害である可能性があるので不利である。
【0021】
脱イオンしたコロイド状シリカゾルは本発明のために好適である。「脱イオンした」とは、全ての金属イオン、例えばナトリウムのようなアルカリ金属イオンがコロイド状シリカ溶液相から実質的に除去され、ヒドロニウム(HO又はH+)或いは酸イオンで置換されたことを意味する。アルカリ金属イオンを除去する方法は周知であり、好適なイオン交換樹脂によるイオン交換(米国特許2,577,484及び2,577,485)、透析(米国特許2,773,028)、及び電気透析(米国特許3,969,266)が挙げられる。
【0022】
酸性pHにおけるゲル化に対するコロイド状シリカゾルの安定性を付与するためには、米国特許2,892,797(その内容は参照として本明細書中に包含する)に記載されているように粒子をアルミニウムで表面変性し、次に変性したシリカを脱イオンすることもできる。
【0023】
ここで定義する「多価金属イオン」という用語は、2又は3の価数を有する金属イオンを意味する。多価金属イオンの例としては、Al、Ga、Ti、Zr、Hf、Zn、Mg、Ca、Nb、Ta、Fe、Cu、Sn、Co、W、Ce、Ba、Mn、Mo、Vなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の代表的な態様においては、防食組成物の固形分含量(又はコロイド状粒子の量)は、組成物の全重量を基準として約1〜約40重量%、好ましくは約1〜約30重量%、より好ましくは約1〜約25重量%、更に好ましくは約1〜約20重量%の範囲である。
【0025】
更なる代表的な態様においては、本発明の防食組成物は、溶媒;コロイド状粒子;及び少なくとも1種類の多価金属イオン;を含み、60℃において少なくとも60分間、又は60℃において少なくとも120分間安定状態を保つ。組成物は、典型的には60℃において少なくとも約3時間、好ましくは60℃において少なくとも約6時間、より好ましくは60℃において少なくとも約12時間、更により好ましくは60℃において少なくとも24時間安定状態を保つことができる。組成物は、典型的には25℃において少なくとも約24時間、好ましくは25℃において少なくとも約2日間、より好ましくは25℃において少なくとも約4日間、更により好ましくは25℃において少なくとも約8日間安定状態を保つことができる。ここで定義する「安定」という用語は、時間経過後にゲル化しない粒子の分散液を意味する。
【0026】
本発明の防食組成物は、コロイド状粒子を溶媒及び塩の形態の多価金属イオンと混合することによって製造することができる。溶媒は、コロイド状粒子及び多価金属イオン塩と相溶性の任意の溶媒であってよい。水が好ましい溶媒であるが、水と水混和性有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン等)との混合物を用いることができる。有用な多価金属イオン塩は、多価金属イオン及び多価可溶性アニオンを有するものである。好ましくは、アニオンは金属腐食を促進させない。かかるアニオンの例としては、硝酸塩、亜硝酸塩、乳酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩、モリブデン酸塩、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
混合は、実験プロセス又は工業プロセスに共通の通常の混合及びブレンド装置によって行うことができる。高剪断ミキサーを用いることができるが、必須ではない。多価金属イオン塩溶液の濃溶液は接触することによってコロイド状粒子のゲル化を引き起こす可能性があるので、多価金属イオン塩溶液は可能な限り希釈して、目標とするコロイド状粒子に対する金属イオンの比及び防食配合物の全固形分レベルを達成しなければならない。これは典型的には、0.1〜1モル/Lの多価金属イオン、好ましくは0.1〜0.5モル/Lの多価金属イオンを含む溶液によって達成することができる。
【0028】
防食配合物を用いる更なる代表的な方法においては、この方法は、第1の表面を有する基材を提供し;基材の第1の表面上に配合物を被覆し;そして被覆した基材を乾燥する;工程を含む、被覆基材を形成する方法を含む。得られる被膜によって、特に腐食性環境において有用な望ましい防食耐性を有する基材が提供される。分散液を用いて、金属基材、表面処理金属基材、その上に予備処理層又は他の層を有する金属基材、金属複合体基材、又は耐腐食性を必要とする任意の他の基材、並びにこれらの組み合わせなど(しかしながらこれらに限定されない)の種々の基材の表面を被覆することができる。得られる被覆基材は、化成用途、直接塗布用途など(しかしながらこれらに限定されない)の数多くの用途において用いることができる。
【0029】
他の代表的な態様においては、本発明の防食組成物はバインダーを含む。この態様においては、バインダーを用いて、基材に適用することによって望ましいフィルム特性を与える。
【0030】
防食組成物は、防食被膜を形成する従来の被覆バインダー中に含ませることができる。バインダーは、コロイド状粒子を結合させてフィルムを形成するように作用するだけでなく、被膜と基材との間の界面、又は防食被膜と基材との間の任意の中間層に接着性も与える。
【0031】
ラテックスのような水溶性又は水混和性のバインダーが本発明において特に好適であり、これは例えば、エポキシ、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリルシリコーン、ポリウレタン、ポリアミン、アクリルエマルジョン、ポリビニルブチラール等であってよい。他の好適なバインダーとしては、酸化デンプン、エーテル化デンプン、又はホスフェートデンプンのようなデンプン誘導体;カルボキシメチルセルロース又はヒドロキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク質、ポリビニルアルコール、又はこれらの誘導体;ポリアクリレート;ビニルアルコール/アクリルアミドコポリマー;セルロースポリマー;デンプンポリマー;イソブチレン/無水マレイン酸コポリマー;ビニルアルコール/アクリル酸コポリマー;ポリエチレンオキシド変性生成物;ジメチルアンモニウムポリジアリレート;及び第4級アンモニウムポリアクリレート;ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、又はスチレン−ブタジエンコポリマー又はメチルメタクリレート−ブタジエンコポリマーのような共役ジエンタイプのコポリマーラテックス;アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのポリマー又はコポリマーのようなアクリルポリマーラテックス;エチレン−酢酸ビニルコポリマーのようなビニルタイプのポリマーラテックス;カルボキシル基のような官能基を含むモノマーによる種々のポリマーのような官能基変性ポリマーラテックス;或いはこれらの混合物が挙げられる。メラミン樹脂又は尿素樹脂のような熱硬化性合成樹脂;ポリメチルメタクリレートのようなアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのポリマー又はコポリマー樹脂;或いはポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、又はアルキド樹脂のような合成樹脂タイプのバインダー;或いはこれらの混合物のような水性接着剤も用いることができる。
【0032】
バインダーは、通常のブレンダー及びミキサーを用いて防食組成物と配合することができる。成分は環境条件において配合及び混合することができる。
本発明の代表的な態様においては、防食組成物の固形分含量(又はコロイド状粒子及びバインダーの量)は、組成物の全重量を基準として約1〜約50重量%、好ましくは約1〜約30重量%、より好ましくは約1〜約25重量%、更に好ましくは約1〜約20重量%の範囲である。コロイド状粒子及びバインダーの固形分は、少なくとも1:1、より好ましくは6:4〜4:1(重量基準)の比で被膜配合物中に存在していてよい。この比は9.9:1のような高さであってよい。
【0033】
また、本発明の被覆組成物中に更なる成分を含ませることも望ましい可能性がある。本発明の被膜には、以下のもの:分散剤、増粘剤、流動性向上剤、脱泡剤、発泡抑制剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保存剤、防水剤等の1以上を含ませることができる。
【0034】
1つの代表的な態様においては、本発明の耐腐食性材料は、基材;並びに、コロイド状粒子、及び少なくとも1種類の多価金属イオンを有し、金属酸化物に対する金属イオンの重量比が約0.001より大きく約0.1以下である、基材上の防食被膜;を含む。コロイド状粒子に対する多価金属イオンの比は、少なくとも約0.005、好ましくは少なくとも約0.008、より好ましくは少なくとも約0.01、更により好ましくは少なくとも約0.01乃至約0.1であってよい。代表的な被覆基材を図1に示す。
【0035】
図1に示すように、代表的な被覆基材1は、薄い予備処理層2、プライマリー層3、頂部被膜層4を含む。全ての層に本発明の防食組成物を含ませることができるが、典型的には頂部被膜層4にはこの組成物を含ませない。好ましくは、予備処理層2には本発明の防食組成物を含ませる。薄い予備処理層2を形成するために好適なバインダー材料としては、ポリアクリレート;ビニルアルコール/アクリルアミドコポリマー;セルロースポリマー;デンプンポリマー;イソブチレン/無水マレイン酸コポリマー;ビニルアルコール/アクリル酸コポリマー;ポリエチレンオキシド変性生成物;ジメチルアンモニウムポリジアリレート;及び第4級アンモニウムポリアクリレート;などのような水吸収性材料を挙げることができるが、これらに限定されない。場合によって用いるプライマリー層3を形成するために好適な材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及び他のポリマー材料を挙げることができるが、これらに限定されない。基材1は、任意の金属又はメタロイドのような時間が経つと腐食する種々の材料で構成することができる。
【0036】
本発明の更なる代表的な態様においては、防食組成物は、処理又は被覆された防食材料を製造する方法において用いることができる。1つの代表的な方法においては、この材料を製造する方法は、第1の表面を有する基材を提供し;そして、基材の第1の表面上に防食組成物を適用して、その上に防食被膜層を形成する;工程を含む。次に、被膜層を乾燥して被覆基材を形成することができる。被覆基材を用いて予備処理された耐腐食性基材を形成することができる。本発明の1つの代表的な方法においては、化成被覆及び薄塗り表面処理において防食材料を用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下の実施例によって本発明を更に説明するが、これらはいかなるようにもその範囲に対して限定を与えるように解釈すべきではない。それどころか、本解決手段は種々の他の態様、修正、及びその均等物を有することができ、これらは本明細書中の記載を読んだ後は、本発明の精神及び/又は特許請求の範囲から逸脱することなくそれ自体当業者に示唆される。
【0038】
実施例1:
3種類のコロイド状シリカゾルを調製した。
ゾル1:22nmの粒子;アンモニア安定化;pH〜9。
【0039】
ゾル2:22nmの粒子;ナトリウムイオンを含むアルカリ性(pH〜9)。
ゾル3:22nmの粒子;US−2,892,797に開示されている方法にしたがってアルミン酸塩で安定化させ、pH4まで脱イオン化した。
【0040】
ゾル4:12nmの粒子;US−2,892,797にしたがってアルミン酸塩で安定化させ、pH4まで脱イオン化した。
0.5MのCa(NO及び水の混合物を、撹拌しながらこれらのゾルのそれぞれに加えて、試料が20%のSiOを含み、Ca/SiOの重量比が0.005、0.01、0.02、及び0.03となるようにした。以下のように、これらの試料を室温において8日間にわたって観察した。
【0041】
ゾル1及びゾル2から製造された試料はほぼ直ちにゲル化し、アルカリ性のゾルは使用できないことが示された。ゾル3から製造された試料は、0.005の比において試験時間中安定であった。他の全てのゾル3の試料は5日後にゲル化した。ゾル4から製造された試料は、0.005及び0.01の比において試験時間中安定であった。0.02の比においては、試料は8日後にゲル化し、0.03の比においては、試料は1日後にゲル化した。これにより、コロイド状粒子の寸法は配合物の安定性に対して重要な役割を果たし、その選択は必要な安定性及び防食特性に基づいて行わなければならないことが示される。
【0042】
実施例2:
乳酸カルシウム(0.57M)溶液を実施例1のゾル4に加えて、0.03のCa/SiOの重量比を有し、20重量%のSiOを含む試料を調製した。この試料は室温において7日後にゲル化した。これにより、このカルシウム化合物を用いることもできることが示される。
【0043】
実施例3:
この実験は、好適に選択された金属イオンがSiOと共に働いて、コロイド状シリカ単独を用いる場合と比較して、亜鉛メッキ鋼及びガルバリウム鋼上の化成被膜においてより良好な耐腐食性を与えることを示す。全ての試料に関して実施例1のゾル3を用い、全てリン酸(HPO)を用いて約1.5〜2のpHに調節した。
【0044】
試料1:ゾル3;20%SiO;リン酸でpH〜2に調節;多価金属イオンを有しない。
試料2:20%のSiOを含み、Ca/SiOの重量比がpH〜2において0.03である、ゾル3、リン酸水素カルシウム(CaHPO)、及びリン酸の混合物。
【0045】
試料3:20%のSiOを含み、V/SiOの重量比がpH〜1.5において0.06である、ゾル3、通常の手段により五酸化バナジウム(V)を還元することによって調製された4+の酸化状態のバナジウム(V4+)、及びリン酸の混合物。
【0046】
試料4:20%のSiOを含み、V/SiOの重量比がpH〜1.5において0.03である、ゾル3、通常の手段により五酸化バナジウム(V)を還元することによって調製された4+の酸化状態のバナジウム(V4+)、及びリン酸の混合物。
【0047】
これらの試料を通常の化成溶液に加えて、処理組成物が1〜5%の固形分を含み、1〜3のpHを示すようにした。50〜80℃の1〜3%のアルカリ性溶液を用いて、亜鉛メッキ基材及びガルバリウム基材を30〜120秒間清浄化し、水洗浄し、次に上記記載の試料1〜4を含み、3〜4.5のpHの化成溶液で30〜90秒間処理した。試料の固形分含量は約1〜5%であった。この処理によって基材上に防食層を堆積させた。表1に示す結果は、本発明の防食組成物(則ち多価金属イオンを有する)で処理した基材は、多価金属イオンを用いないで処理した基材よりも非常に良好に機能することを示す。
【0048】
【表1】

【0049】
本明細書及び特許請求の範囲において用いる単数形「a」、「and」、及び「the」は、記載が他に明確に示さない限り複数の指示物を包含することに注意すべきである。したがって、例えば「酸化物(an oxide)」という記載は複数のかかる酸化物を包含し、「酸化物(oxide)」という記載は1種類以上の酸化物及び当業者に公知のその均等物などの記載を包含する。
【0050】
例えば、本発明の幾つかの態様の説明において用いる組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、回収率又は収率、流速、及び同様の値、並びにその範囲を修飾する「約」は、例えば典型的な測定及び取り扱い手順を通して、これらの手順における偶然のエラーを通して、方法を行うために用いる成分における差を通して起こる可能性のある数量の変動;並びに同様の近似考慮事項を指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度を有する配合物又は混合物の熟成によって相違する量、並びに特定の初期濃度を有する配合物又は混合物の混合又は処理によって相違する量も包含する。「約」という用語によって修飾されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲はこれらの量の均等範囲を包含する。
【0051】
本発明を限られた数の態様によって説明したが、これらの特定の態様は本明細書において他に記載され特許請求されている発明の範囲を制限することを意図するものではない。更なる修正、均等物、及び変更が可能であることは、本明細書中の代表的な態様を検討することにより当業者に明らかである。実施例及び明細書の残りの部分における全ての部及びパーセントは、他に特定しない限り重量基準である。更に、明細書又は特許請求の範囲において示す全ての数値範囲、例えば特性の特定の組、測定値の単位、条件、物理的状態、又は割合を示すものは、明らかに、言及するか又は他の方法で示すかかる範囲内に含まれる全ての数、並びにそのように示されている任意の範囲内の数の任意の部分集合を文字通り含むものであると意図される。例えば、下限R及び上限Rを有する数値範囲が開示されている場合には常に、この範囲内に含まれる任意の数Rが具体的に開示されている。特に、この範囲内の次式の数R:R=R+k(R−R)(式中、kは1%の増分で1%〜100%の範囲の変数であり、例えばkは、1%、2%、3%、4%、5%、・・・50%、51%、52%、・・・95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である)が具体的に開示されている。更に、上記で算出されるRの任意の二つの値によって表される任意の数値範囲も、具体的に開示されている。本明細書において示し記載したものに加えて、本発明の任意の修正は、上記の記載及び添付の図面から当業者に明らかとなろう。かかる修正は、特許請求の範囲内に包含されると意図される。ここで引用した全ての公報はその全部を参照として本明細書中に包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒;
コロイド状粒子;及び
少なくとも1種類の多価金属イオン;
を含み、コロイド状粒子に対する金属イオンの重量比が約0.001より大きく約0.1以下である、防食組成物。
【請求項2】
該コロイド状粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項3】
該コロイド状粒子がシリカを含む、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項4】
該多価金属イオンが、Al、Ga、Ti、Zr、Hf、Zn、Mg、Ca、Nb、Ta、Fe、Cu、Sn、Co、W、Ce、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項5】
該多価金属イオンが、Sn、Zn、Ca、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項6】
該重量比が約0.005より大きく約0.08以下である、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項7】
該重量比が約0.01より大きく約0.05以下である、請求項1に記載の防食組成物。
【請求項8】
溶媒;
コロイド状粒子;及び
組成物の全重量を基準として少なくとも約0.001重量%乃至約4重量%以下の量で存在する少なくとも1種類の多価金属イオン;
を含む防食組成物。
【請求項9】
該コロイド状粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの混合物を含む、請求項8に記載の防食組成物。
【請求項10】
該コロイド状粒子がシリカを含む、請求項8に記載の防食組成物。
【請求項11】
該多価金属イオンが、Al、Ga、Ti、Zr、Hf、Zn、Mg、Ca、Nb、Ta、Fe、Cu、Sn、Co、W、Ce、又はこれらの混合物を含む、請求項8に記載の防食組成物。
【請求項12】
該多価金属イオンが、Sn、Zn、Ca、又はこれらの混合物を含む、請求項8に記載の防食組成物。
【請求項13】
少なくとも1種類の多価金属イオンが組成物の全重量を基準として少なくとも約0.005重量%乃至約3重量%以下の量で存在する、請求項8に記載の防食組成物。
【請求項14】
少なくとも1種類の多価金属イオンが組成物の全重量を基準として少なくとも約0.01重量%乃至約2重量%以下の量で存在する、請求項8に記載の防食組成物。
【請求項15】
溶媒;
コロイド状粒子;及び
少なくとも1種類の多価金属イオン;
を含み、25℃において少なくとも8時間安定状態を保つ防食組成物。
【請求項16】
該コロイド状粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの混合物を含む、請求項15に記載の防食組成物。
【請求項17】
該コロイド状粒子がシリカを含む、請求項15に記載の防食組成物。
【請求項18】
該多価金属イオンが、Al、Ga、Ti、Zr、Hf、Zn、Mg、Ca、Nb、Ta、Fe、Cu、Sn、Co、W、Ce、又はこれらの混合物を含む、請求項15に記載の防食組成物。
【請求項19】
該多価金属イオンが、Sn、Zn、Ca、又はこれらの混合物を含む、請求項15に記載の防食組成物。
【請求項20】
25℃において少なくとも10時間安定状態を保つ、請求項15に記載の防食組成物。
【請求項21】
60℃において少なくとも60分間安定状態を保つ、請求項15に記載の防食組成物。
【請求項22】
バインダー;
溶媒;
コロイド状粒子;及び
少なくとも1種類の多価金属イオン;
を含み、コロイド状粒子に対する金属イオンの比が約0.001より大きく約0.1以下である、防食配合物。
【請求項23】
該コロイド状粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの混合物を含む、請求項22に記載の防食組成物。
【請求項24】
該コロイド状粒子がシリカを含む、請求項22に記載の防食組成物。
【請求項25】
該多価金属イオンが、Al、Ga、Ti、Zr、Hf、Zn、Mg、Ca、Nb、Ta、Fe、Cu、Sn、Co、W、Ce、又はこれらの混合物を含む、請求項22に記載の防食組成物。
【請求項26】
該多価金属イオンが、Sn、Zn、Ca、又はこれらの混合物を含む、請求項22に記載の防食組成物。
【請求項27】
該重量比が約0.005より大きく約0.08以下である、請求項22に記載の防食組成物。
【請求項28】
該重量比が約0.01より大きく約0.05以下である、請求項22に記載の防食組成物。
【請求項29】
基材;及び
コロイド状粒子;及び少なくとも1種類の多価金属イオンを有し;金属酸化物に対する金属イオンの比が約0.001より大きく約0.1以下である、基材上の防食被膜;
を有する耐腐食性材料。
【請求項30】
該コロイド状粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、又はこれらの混合物を含む、請求項29に記載の防食組成物。
【請求項31】
該コロイド状粒子がシリカを含む、請求項29に記載の防食組成物。
【請求項32】
該多価金属イオンが、Al、Ga、Ti、Zr、Hf、Zn、Mg、Ca、Nb、Ta、Fe、Cu、Sn、Co、W、Ce、又はこれらの混合物を含む、請求項29に記載の防食組成物。
【請求項33】
該多価金属イオンが、Sn、Zn、Ca、又はこれらの混合物を含む、請求項29に記載の防食組成物。
【請求項34】
該重量比が約0.005より大きく約0.08以下である、請求項29に記載の防食組成物。
【請求項35】
該重量比が約0.01より大きく約0.05以下である、請求項29に記載の防食組成物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−505499(P2011−505499A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536910(P2010−536910)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/013087
【国際公開番号】WO2009/073112
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(590001706)ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー−コーン (13)
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO−CONN
【Fターム(参考)】