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防食材
説明

防食材

【課題】 犠牲防食性等が一層向上した亜鉛粉入りの防食材を提供すること。
【解決手段】 本発明の防食材は、亜鉛粉45〜80質量%と、亜鉛に対して不活性な樹脂5〜25質量%と、酸化物の粒子0.03〜1質量%と、有機溶剤5〜30質量%とを含有する。亜鉛粉は、形状の異なる少なくとも3種の亜鉛粉を含む。3種の亜鉛粉は、紡錘状の亜鉛粉、球状の亜鉛粉、及び鱗片状の亜鉛粉を含む。亜鉛粉の全量に対して、紡錘状の亜鉛粉が60〜98質量%、球状の亜鉛粉が0.5〜25質量%、鱗片状の亜鉛粉1〜15質量%含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛よりも貴な金属の腐食を防止するための防食材に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、防食用亜鉛入り塗布充填剤を提案した(特許文献1参照)。この塗布充填剤は、粒径が70〜150μmの大きさの粒子が80%以上である亜鉛粉と、酸を含有していない粘着剤と、溶剤とからなり、溶剤を除き亜鉛粉80〜95質量%、粘着剤固形分5〜20質量%の比率で混合されてなるものである。かかる塗布充填剤を、大気腐食環境下にある屋外鉄鋼構造物に塗布することにより、該構造物の腐食を防止することができる。
【0003】
しかし、高温高湿でかつ塩分濃度が高く、降雨量の多い環境下など、腐食に関して過酷な環境下にある屋外鉄鋼構造においては、犠牲防食に起因する亜鉛の酸化が進行しやすい。また塗膜にブリスターが発生する可能性があり、それに起因して犠牲防食性が低下する傾向にある。
【0004】
また、前記の防食用亜鉛入り塗布充填剤をハケ塗りする場合、1回塗りではハケの種類によっては塗りむらを生じることがあった。塗りムラとは亜鉛末がない部分が生じることである。塗りむらが生じると、それに起因して赤サビが早く発生することがあった。
【0005】
【特許文献1】特開平2−294370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、前述した従来技術よりも各種性能が向上した亜鉛粉入り防食材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、亜鉛粉45〜80質量%と、亜鉛に対して不活性な樹脂5〜25質量%と、Si、Al及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物の粒子0.03〜1質量%と、有機溶剤5〜30質量%とを含有する防食材であって、
前記亜鉛粉は、形状の異なる少なくとも3種の亜鉛粉を含み、該3種の亜鉛粉は、紡錘状の亜鉛粉、球状の亜鉛粉、及び鱗片状の亜鉛粉を含み、
亜鉛粉の全量に対して、前記紡錘状の亜鉛粉が60〜98質量%、前記球状の亜鉛粉が0.5〜25質量%、前記鱗片状の亜鉛粉1〜15質量%含まれる防食材を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、形状の異なる亜鉛粉を組み合わせて用いることで、犠牲防食性が向上する。また酸化物の粒子を配合することで、塗膜にブリスターが発生しづらくなり、これによっても犠牲防食性が向上する。更に、酸化物の粒子を配合することで、保存中に亜鉛粉が硬沈降しづらくなり、撹拌を行いやすくなり、施工の準備が行いやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の防食材は、その構成成分として(a)亜鉛粉、(b)亜鉛に対して不活性な樹脂、(c)酸化物の粒子、(d)有機溶剤を含有する組成物からなる。以下、これらの成分についてそれぞれ説明する。
【0010】
亜鉛粉としては、形状の異なる少なくとの3種のものを用いる。この3種の亜鉛粉は、(イ)紡錘状の亜鉛粉、(ロ)球状の亜鉛粉、及び(ハ)鱗片状の亜鉛粉である。これら形状の異なる亜鉛粉を組み合わせて用いることで、本発明の防食材はその犠牲防食性が向上する。詳細には、亜鉛粉の形状が異なることで、塗膜中において亜鉛粉間の隙間が埋まり、亜鉛粉どうしの電気的接触が良好になり、塗膜全体の電子伝導性が高まる。その結果、亜鉛粉の消耗が均一に起こるようになり、犠牲防食性が向上する。更に塗膜全体としてみたときの亜鉛粉の表面積が高まり、それによっても亜鉛粉の消耗が起こりやすくなり、犠牲防食性が向上する。塗膜中において亜鉛粉間の隙間が埋まることで、本発明の防食材をはけ塗りしたときに、塗りむらが生じにくくなり、施工性が向上するという利点もある。更に、塗膜の粒状感が低下して、平滑性が向上するという利点もある。
【0011】
(イ)の紡錘状の亜鉛粉における「紡錘状」とは長軸及びそれに直交する短軸を有する細長い形状のものを包含する概念であり、狭義の紡錘形のみならず針状などの細長い形状も含まれる。
【0012】
紡錘状の亜鉛粉は、その平均粒径、即ち平均長軸長が30〜500μm、特に30〜400μm、とりわけ70〜300μmであることが、亜鉛粉が過度に消耗することを防止でき、また亜鉛粉どうしの隙間が過度に開きすぎることに起因する防食性能の低下を防止し得き、適正な防食性能を長期間にわたり継続的に維持し且つ発揮し得る点から好ましい。平均粒径は例えばレーザー回折散乱法によって測定される。以下の説明において平均粒径というときは、この方法によって測定された値をいう。
【0013】
紡錘状の亜鉛粉は、亜鉛粉全体に占める割合が3種の亜鉛粉のなかで最も高く、具体的には、亜鉛粉全量に対して60〜98質量%、好ましくは80〜98質量%配合される。配合量がこの範囲内であれば、適正な防食性能を長期間にわたり継続して維持し且つ発揮させることができ、また十分な電子伝導性を確保することができる。
【0014】
(ロ)の球状の亜鉛粉は、主として、前記の(イ)の紡錘状の亜鉛粉間の隙間に入り込み、本発明の防食材の展延性を向上させ、防食材をはけ塗りしたときに、塗りむらを生じにくくする作用を主として有する。また、(ロ)の球状の亜鉛粉は、後述する(ハ)の鱗片状の亜鉛粉との相乗作用によって、亜鉛粉の表面積を高め、犠牲防食性を向上させる作用も有する。
【0015】
球状の亜鉛粉は、紡錘状の亜鉛粉よりも小粒のものであることが好ましい。これによって、紡錘状の亜鉛粉間の隙間に、球状の亜鉛粉が入り込みやすくなるからである。この観点から球状の亜鉛粉は、その平均粒径が1〜20μm、特に3.5〜10μmであることが好ましい。
【0016】
球状の亜鉛粉は、紡錘状の亜鉛粉間の隙間を埋めるものであるから、その使用量は、紡錘状の亜鉛粉よりも少ないことが好ましい。この観点から、球状の亜鉛粉は、亜鉛粉全量に対して0.5〜25質量%配合し、好ましくは0.5〜10質量%配合する。
【0017】
(ハ)の鱗片状の亜鉛粉は、前記の(ロ)の球状の亜鉛粉との相乗作用によって、亜鉛粉の表面積を高め、犠牲防食性を向上させる作用を主として有する。また、前記の(イ)の紡錘状の亜鉛粉間の隙間に入り込み、亜鉛粉どうしの電気的接触を高める作用も有する。なお、鱗片状とは、平面方向を有し、且つ該平面方向に直交する方向に厚みを有する形状のものを包含する概念であり、狭義の鱗片状のみならず、板状なども含まれる。
【0018】
鱗片状の亜鉛粉は、その平均粒径、即ち平面方向の長さが5〜30μm、特に8〜18μmであることが、亜鉛粉の表面積を高め、犠牲防食性を向上させる点から好ましい。鱗片状の亜鉛粉が、平面方向に長軸及び短軸を有する場合、平面方向の長さとは、長軸方向の長さをいう。一方、鱗片状の亜鉛粉が、平面方向に異方性の少ない形状、例えば円盤状ないしそれに近い形状を有する場合には、平面方向の長さとは、直径又は円相当直径をいう。
【0019】
鱗片状の亜鉛粉は、前記の球状の亜鉛粉と共に、紡錘状の亜鉛粉間の隙間を埋めるものであるから、その使用量は、紡錘状の亜鉛粉よりも少ないことが好ましい。この観点から、球状の亜鉛粉は、亜鉛粉全量に対して1〜15質量%配合し、好ましくは3〜7質量%配合する。
【0020】
これら形状の異なる3種の亜鉛粉の合計量は、本発明の防食材に対して45〜80質量%とし、好ましくは55〜75質量%とする。この範囲内であれば、十分な犠牲防食性が発現する。
【0021】
本発明の防食材に含まれる樹脂は、先に述べた通り亜鉛に対して不活性なものである。この樹脂は、本発明の防食材から形成される塗膜を塗布面に密着させると共に、亜鉛粉を分散させるためのマトリックスである。また、この樹脂は、この塗膜により防食される屋外鉄鋼構造物などの表面を保護する被覆材でもある。この目的のために、樹脂は、防食対象物の表面に対して密着性がよく、また防食対象物が熱膨張したときに追随性よく変形するものであることが好ましい。そのような樹脂としては、例えばゴム弾性を有する樹脂が挙げられる。
【0022】
ゴム弾性を有する樹脂としては、プロピレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴムなどのように、脂肪族不飽和炭化水素から形成されたゴム弾性を有する樹脂;SEBS、SEPSのようにスチレンとα−オレフインとからなるスチレン系弾性樹脂;アクリル系弾性樹脂;天然ゴム;変性シリコーン系弾性樹脂などを挙げることができる。これらの弾性樹脂は単独であるいは組み合わせて使用することができる。特に本発明では、ブタジエンのように共役ジエンから形成された脂肪族不飽和炭化水素系弾性樹脂を使用することが好ましい。このような弾性樹脂は、後述する溶剤との親和性が良好だからである。
【0023】
樹脂は、本発明の防食材中に固形分換算で5〜25質量%、特に10〜20質量%配合されることが、塗膜の密着性の向上や、防食対象物表面の十分な保護の観点から好ましい。
【0024】
本発明の防食材に含まれる酸化物の粒子は、防食材から形成される塗膜にブリスターが発生することを防止する作用を主として有する。本発明者らの検討によれば、ブリスターは、亜鉛の酸化等に起因して塗膜の内部に発生した水素等のガスによって発生するものと考えられる。本発明においては、酸化物の粒子を防食材に配合することで、塗膜の表面に微細なクラックを多数形成させ、そのクラックを通じてガスが外部に放出されるようにして、ブリスターの発生を抑制している。また、形成されたクラックを通じて雨水が塗膜内に浸入することで、犠牲防食性が一層向上するという利点もある。
【0025】
酸化物の粒子は、増粘作用を有していることも好ましい。これによって、本発明の防食材の保管中に亜鉛粉が硬沈降することを効果的に防止することができる。亜鉛粉の硬沈降が防止されると撹拌を行いやすくなる。その結果、例えば施工前の準備として行う攪拌が容易となり、施工時における防食材の均一性が一層確保されやすくなる。
【0026】
以上のことを勘案して、本発明においては酸化物の粒子として、Si、Al及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含むものを用いている。特に、シリカ(SiO)、アルミナ、タルクなどを用いることが好ましい。これらの粒子は、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
塗膜に微細なクラックを多数形成させ、また亜鉛粉の硬沈降を防止する観点から、酸化物の粒子は微粒であることが好ましい。具体的には、一次粒子径が5〜50nm、特に10〜30nmであることが好ましい。
【0028】
本発明の防食材における酸化物の粒子の配合量は、0.03〜1質量%、特に0.05〜0.5質量%であることが、ブリスターの発生及び亜鉛粉の硬沈降を防止する観点から好ましい。先に述べた通り、酸化物の粒子は、増粘作用を有しているから、その配合量が多くなるほど防食材の粘度が上昇する。本発明の防食材を例えばコーキング剤として用いる場合には、前記の範囲内において酸化物の粒子の配合量を高めに設定して、防食材の粘度を高めることが好ましい。具体的には、酸化物の粒子の配合量を0.2〜2質量%、特に0.3〜1質量%とすることが好ましい。一方、本発明の防食材をはけ塗りする場合には、前記の範囲内において酸化物の粒子の配合量を低めに設定し、防食材の粘度を低め、塗りむらが生じないようにすることが好ましい。
【0029】
本発明の防食材に配合される有機溶剤としては、当該技術分野において通常用いられているものと同様のものを用いることができる。例えば、トルエンやキシレンなどの芳香族系炭化水素を用いることができる。
【0030】
特に有機溶剤が沸点140〜240℃、特に140〜220℃の脂肪族炭化水素系溶剤を含むことが好ましい。このような範囲の沸点を有する溶剤を用いることで、塗布に好適な初期濃度を有する防食材を得ることができる。そのような溶剤としては、ナフサ系のもの、特に炭素数が8〜11の範囲内にある脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。とりわけ、初留点が140℃以上であり、終点が240℃以下である石油留分を用いることが好ましい。このような溶剤は、先に述べた樹脂に対して良好な溶媒であると共に、このような溶剤と樹脂とを組み合わせて用いることで、防食材の経時的な粘度上昇を抑制させやすくなる。
【0031】
先に述べた樹脂は、一般に溶剤に溶解又は分散された状態で入手される。従って、本発明の防食材には、樹脂に由来する溶剤と、沸点が140〜240℃の脂肪族炭化水素系溶剤とが含有されている場合がある。溶剤全体に対する沸点が140〜240℃の脂肪族炭化水素系溶剤の割合は、20〜45質量%であることが好ましい。この範囲とすることによって、本発明の防食材の粘度変化が、樹脂に含まれる溶剤によって影響されにくくなり、防食材の粘度制御が容易になるからである。
【0032】
本発明の防食材における有機溶剤全体の配合量は、5〜30質量%、特に12〜30質量%、とりわけ15〜28質量%であることが、防食材の粘度を適切な範囲に調整し得る点から好ましい。
【0033】
粘度に関し、本発明の防食材は、25℃における初期粘度が5000〜12000mPa・s(cP)であることが好ましい。この範囲の粘度とすることで、本発明の防食材をはけ塗りする場合、一回の塗布によって厚い塗膜を形成することができる。また本発明の防食材は、25℃で8時間放置した後の粘度の変化が初期粘度に対して小さいことが好ましい。具体的には、25℃で8時間放置した後の粘度の上昇率が初期粘度に対して110〜150%、110〜145%であることが好ましい。防食材の粘度変化を小さくするためには、例えば溶剤として、先に述べた沸点140〜240℃の脂肪族炭化水素系溶剤を用いることが有利である。粘度変化が小さいことは、施工中に防食材の粘度調整を行う必要がなくなる点から好ましい。このことは、特に送電用鉄塔の施工といった高所作業を行う場合や、夏場など溶剤の揮発しやすい環境下に施工を行う場合に特に有利である。
【0034】
初期粘度は、各成分を配合して調製された防食材を密封状態で25℃に保存した状態で測定される。25℃で8時間放置した後の粘度は、防食材を容器に入れて蓋を開けたまま、25℃で8時間放置した後に測定された粘度である。粘度は、JIS K5400で規定される回転粘度計を用いて測定される。粘度の上昇率は、次式から算出される。
粘度上昇率(%)=25℃で8時間放置した後の粘度/初期粘度×100
【0035】
以上、説明した通り、本発明の防食材は、亜鉛粉、樹脂、酸化物の粒子、及び溶剤を含有する。本発明の防食材には、更にその他の成分を配合することもできる。例えば、得られる防食被膜の耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤などの樹脂安定剤を配合することができる。更に、本発明の防食材には、亜鉛粉の犠牲防食性を阻害しないことを条件として、亜鉛粉以外の充填材を配合することもできる。そのような充填材の例としては、炭酸カルシウムなどを挙げることができる。これらの充填材を配合することにより、本発明の防食材の流動性を調整することができる。
【0036】
本発明の防食材はペースト状であり、缶に充填され、塗料として防食対象物にはけ塗りされる。或いは、先端に注出ノズルを有する円筒形のカートリッジに充填され、コーキング剤として使用される。防食対象物としては、例えば間欠的に又は常時水没するような環境下にある構造物、水が溜まりやすい天蓋部、腐食の進んだ構造物、鋼製ポールの地際、機器類架台の地際、フランジ、ボルト、ナット、パイプなどが挙げられる。
【0037】
本発明の防食材により形成された防食塗膜は、それに多量に含有される亜鉛粉によって電気的な導通が確保され導電性を示す。特に、亜鉛粉として形状の異なる少なくとも3種のものを組み合わせ用いることによって導電性が高くなる。従って、例えば鉄などの防食対象面にこの防食塗膜を形成すると、防食対象物と防食塗膜とは電気的に導通することになる。その結果、防食塗膜に含有される亜鉛粉が犠牲電極となって防食対象物よりも先に酸化されるので、防食対象物である鉄の酸化腐食が効果的に防止される。
【0038】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず種々の変更が可能である。例えば、亜鉛粉としては、先に述べた形状の異なる3種のものを用いるが、これに加えて別の形状の亜鉛粉を更に用いて、本発明の防食材の各種性能を高めるようにしてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0040】
〔実施例1〕
亜鉛粉と、溶剤を含むブチルゴム(コニシ(株)製、商品名:GK3800)と、SiO(日本アエロジル製、平均粒径12nm)と、沸点が154℃から195℃の範囲内にある脂肪族炭化水素系溶剤とを、回転羽を有する撹拌装置で混合してペースト状の防食材を調製した。各成分の配合量は表1に示す通りである。また、亜鉛粉の詳細は表2に示す通りである。
【0041】
沸点が154℃から195℃の範囲内にある前記の脂肪族炭化水素系溶剤は、炭素数8〜11の脂肪族炭化水素系溶剤の混合物であり、この脂肪族炭化水素系溶剤は、主として直鎖状脂肪族炭化水素からなる。前記の弾性樹脂には、ブチルゴムなど固形分が60%、トルエン、ナフサ、低沸点脂肪族炭化水素溶剤が合計で40%含有されている。
【0042】
このようにして調製された防食材は、25℃における初期粘度が5000mPa・s、25℃で8時間放置した後の粘度が6200mPa・sで、粘度の上昇率は124%であった。
【0043】
〔比較例1〕
実施例1において用いた亜鉛粉に代えて、篩い分けによって70〜150μmに粒度調整した亜鉛粉を用いた。またSiO、及び沸点が154℃から195℃の範囲内にある脂肪族炭化水素系溶剤は用いなかった。これら以外は実施例1と同様にしてペースト状の防食材を調製した。各成分の配合量は表1に示す通りである。
【0044】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた防食材について、塗膜の犠牲防食性、ブリスター防止性及び均一性、並びに防食材の貯蔵安定性を以下の方法によって評価した。結果を表1に示す。
【0045】
〔塗膜の犠牲防食性〕
ブラスト鋼板(1.0mm×70mm×150mm)の一部に防食材をハケ塗りし、2日以上大気養生した。この鋼板全体を水道水に浸漬して1週間静置した。鋼板を水道水から引き上げた後、防食材の塗布面が上を向くように鋼板を横置きし、犠牲防食面積を測定した。犠牲防食面積は、比較例1を1としたときの相対表示とした。
【0046】
〔塗膜のブリスター防止性〕
ブラスト鋼板(1.0mm×70mm×150mm)に防食材をハケ塗りし、2日以上大気養生した。この鋼板に10%塩水を噴霧し、50℃で6時間放置した。その後80℃・80%RHの高温高湿下で6時間放置した。塩水の噴霧から高温高湿下での放置までの操作を1サイクルとし、このサイクルを500回繰り返した。その後、塗膜の外観を目視観察した。
【0047】
〔塗膜の均一性〕
JIS K5400に定める塗布方法に準じて試験片を作製し、亜鉛末の分散性及び膜厚のばらつきから塗膜の均一性を評価した。分散性は目視で判断した。膜厚は電磁式膜厚計で測定した。また、前記の方法で作製した試験片に対して、JIS Z 2371で定める塩水噴霧試験を行い、発錆までの時間を比較した。
【0048】
〔防食材の貯蔵安定性〕
両端がねじ式キャップで密閉できるステンレス製配管製の容器(φ30mm×200mm、内容積140ml)内に防食材を100ml入れ密閉した。40℃の恒温槽内に10日間静置した。その後、容器内の防食材の沈降状態を観察した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の防食材は、比較例の防食材に比較して犠牲防食性が高く、またブリスターの発生が防止されていることが判る。また、実施例の防食材は、比較例の防食材に比較して塗膜に粒状感がなく、平滑であり、また長期間保存しても亜鉛粉の沈降が見られないことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛粉45〜80質量%と、亜鉛に対して不活性な樹脂5〜25質量%と、Si、Al及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物の粒子0.03〜1質量%と、有機溶剤5〜30質量%とを含有する防食材であって、
前記亜鉛粉は、形状の異なる少なくとも3種の亜鉛粉を含み、該3種の亜鉛粉は、紡錘状の亜鉛粉、球状の亜鉛粉、及び鱗片状の亜鉛粉を含み、
亜鉛粉の全量に対して、前記紡錘状の亜鉛粉が60〜98質量%、前記球状の亜鉛粉が0.5〜25質量%、前記鱗片状の亜鉛粉1〜15質量%含まれる防食材。
【請求項2】
前記酸化物の粒子がシリカ、アルミナ又はタルクからなる請求項1記載の防食材。
【請求項3】
前記有機溶剤が、沸点140〜240℃の脂肪族炭化水素系溶剤を含む請求項1又は2記載の防食材。
【請求項4】
前記有機溶剤中の前記脂肪族炭化水素系溶剤の割合が20〜45質量%である請求項3記載の防食材。
【請求項5】
前記樹脂が、ゴム弾性を有するポリオレフィン系樹脂からなる請求項1ないし4の何れかに記載の防食材。
【請求項6】
25℃における初期粘度が5000〜12000mPa・sであり、且つ25℃で8時間放置した後の粘度の上昇率が初期粘度に対して110〜150%の範囲内にある請求項1ないし5の何れかに記載の防食材。

【公開番号】特開2006−282856(P2006−282856A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−104736(P2005−104736)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】