説明

防食液組成物

【課題】加工中の金属素材や加工後の製品、部品の表面に防食性、防錆性に優れた薄膜を容易に作成し、結果として生産効率を高め、コストダウンや作業環境の改善を図る。
【解決手段】沸点が250℃以下の揮発性液体を30〜95重量%、チアジアゾ−ル化合物を含有する鉱油あるいは合成系の油成分を1〜70重量%、及びアミド基を有する化合物を0.1〜50重量%含有する防食液組成物であり、チアジアゾ−ル化合物は次の一般式(1);


(式中、R1、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基を示し、x、yはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す。)で表わされ、油成分が該チアジアゾ−ル化合物を油成分全量基準で0.1〜20重量%含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で液状の防食液組成物に関し、具体的には加工中や加工後の金属素材や部品を浸せきし、引き上げた後に乾燥させるだけで、防食性、防錆性に優れる薄膜を容易に表面に作成することができる防食液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種産業は生産性のさらなる効率化、コストダウンが求められている。金属系の加工素材は、目的となる形状とするために様々な加工方法がとられている。例えば、プレス、鍛造、切削、研削、研磨などが加工方法として知られている。しかし、国内外のあまり環境の良くない工業地帯等、特には海外でSOx濃度が高い悪環境の地域や石炭産出地域において、加工前の金属素材や加工後の製品、部品はそのまま保管すると硫化腐食のように表面が腐食したり、加工直後の金属表面は活性が高くそのままでも容易に錆を発生し、一部使い物にならなくなり、生産効率、コストの面で課題があった。
一般的な、さび、腐食防止の液体としては、鉱油や溶剤を基油とし、さび止め添加剤としてスルホン酸やエステルなどが配合されているものが知られている。これらの成分が金属表面に皮膜を形成することで腐食性因子を遮断し、その効果を発揮する。しかし、皮膜の内部に腐食性因子が存在した場合、従来のさび止め油では十分な効果が得られないことがある。
【0003】
亜鉛めっき鋼板用防錆潤滑剤としては「プレス成形加工性」及び「防錆性」を向上させるものとして、脂肪族アルコールにN−〔トリス(ヒドロキシメチル)メチル〕アルキルアミド化合物を含有させたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−97588号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「防食管理」Vol.53、No.2、2009年、P.15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、加工中の金属素材や加工後の製品、部品の表面に防食性、防錆性に優れた薄膜を容易に作成し、結果として生産効率を高め、コストダウンや作業環境の改善を図るものである。特には、硫化腐食を起こしやすい環境で防食性に優れる防食液組成物に関するものである。さらには、潤滑摺動部品の表面に薄膜を形成し、潤滑性の向上を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、揮発性を有する液体に、防食被膜の素となる特定の成分を溶解させ、この液状組成物に加工素材や部品を浸せきしたり、あるいは液状組成物を塗布、吹きかけて、加工素材や部品の表面を覆い、その後に乾燥させて揮発性成分を除去し、加工素材や製品、部品の表面に、上記課題を解決するのに有効な薄膜を容易に形成できることを見出した。かかる知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次のとおりの防食液組成物及びこれらを用いた防食方法である。
(1)沸点が250℃以下の揮発性液体を30〜95重量%、チアジアゾ−ル化合物を含有する鉱油あるいは合成系の油成分を1〜70重量%、及びアミド基を有する化合物を0.1〜50重量%含有することを特徴とする防食液組成物。
【0009】
(2)好ましくは、チアジアゾ−ル化合物が次の一般式(1);
【化1】

(式中、R1、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基を示し、x、yはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す。)で表わされ、油成分が該チアジアゾ−ル化合物を油成分全量基準で0.1〜20重量%含有する上記防食液組成物。
(3)好ましくは、揮発性液体が、沸点が60〜250℃である炭化水素化合物、アルコール、エーテル及びケトンから選択される1種又は2種以上である上記防食液組成物。
【0010】
(4)好ましくは、油成分の基油が、鉱油、ポリ−α−オレフィン及びエステルから選択される1種又は2種以上である上記防食液組成物。
(5)好ましくは、アミド基を有する化合物が、融点20〜120℃を有する脂肪酸アミドである上記防食液組成物。
【0011】
(6)上記防食液組成物を金属表面に付着させ、その後、揮発性液体を除去して被膜を形成する金属の防食方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防食液組成物によれば、加工中の素材や加工後の製品、部品などの金属を浸せき、あるいは塗布や吹きかけなどを行った後、乾燥などにより揮発性成分を除去することで防食性、防錆性に優れる被膜が金属表面に形成される。このため、加工中や加工後の金属表面に防食性、防錆性に優れた薄膜を容易に作成することができるから、結果として生産効率を高め、コストダウンや作業環境の改善を図ることができ、さらには、本発明の防食液組成物によって形成された薄膜により潤滑摺動部が円滑に稼働するという格別の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、揮発性液体を30〜95重量%、好ましくは30〜90重量%、チアジアゾ−ル化合物を含有する油成分を1〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、アミド基を有する化合物を0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%含有する防食液組成物である。
【0014】
揮発性液体として、好ましくは沸点が60〜250℃、15℃における動粘度が0.1〜10mm2/sである常温で液体の炭化水素化合物、芳香族化合物、エステル、アルコール、エーテル、ケトンから選択される1種又は2種以上を適宜混合して用いることができる。これら揮発性液体において、沸点は80〜250℃がより好ましく、沸点が60℃以上では常温での揮発が適度となり実用的に使用しやすく、沸点250℃以下では乾燥の際に加温や真空乾燥など操作が要求されることなく、手間が掛かりコストアップとなることがない。また動粘度が0.1mm2/s以上では低粘度過ぎて取り扱いが難しくなることもなく、沸点が低い化合物であり揮発性が高すぎるため、作業環境を悪化させることもない。また動粘度が10mm2/s以下では乾燥除去が容易である。このような物理的性状を有する揮発性液体を適宜用いることができるが、特には、炭化水素化合物、芳香族化合物、アルコール、エーテルなどの汎用溶剤がコスト的に好ましい。
【0015】
揮発性液体として用いられる炭化水素化合物としては、原油から精製蒸留などの工程で得られる揮発性の高い留分が挙げられ、ベンジン、灯油、軽油、精製パラフィンなどがその一例として挙げられる。特には、安価であり、揮発性成分の作業環境上の負荷が小さい点で、炭素数が4〜20までの炭化水素、さらに好ましくは炭素数6〜14の脂肪族炭化水素が望ましい。また、エチレンなどのオレフィンの重合物なども適する液体として用いることができ、化学合成で得られるこれら液状の炭化水素のうち、炭素数が4〜20、さらに好ましくは炭素数6〜14の炭化水素が望ましい。
【0016】
また、芳香族化合物も使用することができ、トルエンなどの汎用溶剤を一例として挙げることができる。またアルコール溶剤も用いることができ、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール、オクタノールなどをその一例として挙げることができる。エーテル溶剤としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルが一例として挙げることができる。ケトン系溶剤としては、アセトン、ジエチルケトンなどを挙げることができる。これら揮発性液体を均一溶解することができる組み合わせにおいて適宜混合使用することも可能である。
【0017】
チアジアゾ−ル化合物を含有する油成分の基油としては、潤滑油留分の鉱物油、合成油などが使用できる。鉱物油の基油として具体的には、原油を常圧蒸留して、あるいは常圧蒸留残渣を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化精製、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、白土処理等の公知の潤滑油精製手段を適宜組み合わせて処理した精製潤滑油基油を好適に用いることができる。各種の原料油と各種の精製手段との組み合わせから得られた性状の異なる精製潤滑油留分を油成分の基油として単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、化学的に合成した合成油としては、ポリ−α−オレフィンオリゴマー、ナフタレン系炭化水素、脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、ポリフェニルエーテルなどを挙げることができる。これらの鉱物油及び合成油は、特に沸点や動粘度の制限はないが、本発明の防食液組成物を用いて加工中の素材や加工後の製品、部品の表面に防食性、防錆性に優れる薄膜を形成する際に、薄膜の構成成分として残留しても防食性や薄膜形成能に悪影響を及ぼさないことが必要である。これらの鉱物油及び合成油は、常温において揮発することなく、安定な液体であることが必要であり、また取り扱い上40℃における動粘度は5〜600mm2/s、特には15〜500mm2/sが好ましい。
【0018】
チアジアゾ−ル化合物の好ましい構造を次の一般式(1)として示す。
【化2】

式(1)において、R1、R2は炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜18のアルキル基、さらに好ましくは炭素数4〜8のアルキル基である。R1、R2のアルキル基の炭素数は同じであっても、それぞれ異なっていてもよい。x、yは1〜10の整数であり、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは2〜4である。xとyとは、同じでも異なってもよい。チアジアゾ−ル化合物の油成分への配合量は0.1〜20重量%であり、好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは3〜12重量である。
【0019】
本発明で用いるアミド基を有する化合物として、融点20〜120℃、特には30〜90℃を有する脂肪酸アミドが好ましく、特に好ましくは、次の一般式(2)で表わされるモノアミドである。
【化3】

式(2)において、R3は、炭素数5〜25の飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基であり、R4は、水素、もしくは炭素数5〜25の飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基である。特には、R3は炭素数12〜20のアルケニル基、R4は炭素数12〜20のアルケニル基又はアルキル基が好ましい。R3及びR4を構成する水素の一部は水酸基で置換されていてもよい。これらのうちで、R3がアルキル基又はアルケニル基であり、R4が水素である脂肪酸モノアミド、又はR3とR4がそれぞれアルキル基及び/又はアルケニル基のいずれかで構成される置換アミドが好適である。これらのモノアミドは単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
【0020】
モノアミド化合物として、具体的には、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド、及びステアリルステアリン酸アミド、オレイルオレイン酸アミド、オレイルステアリン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミド等の飽和又は不飽和の長鎖脂肪酸と長鎖アミンによる置換アミド類などが挙げられる。これらのモノアミド化合物の中でも、融点が100℃以下のラウリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ラウリルラウリン酸アミド、パルミチルパルミチン酸アミド、ステアリルステアリン酸アミド、オレイルオレイン酸アミド、ステアリルオレイン酸アミド、オレイルステアリン酸アミド、ステアリルエルカ酸アミド、オレイルパルミチン酸アミド、オレイル12ヒドロキシステアリン酸アミドなどが好適なアミド化合物として挙げられ、特にはオレイルオレイン酸アミドが融点35℃で容易に揮発性液体に溶解させることができるので好ましい。
【0021】
これら防食液組成物を金属表面に付着させ、その後、揮発性液体を除去して被膜を形成することで金属の防食を行うことができる。金属としては、薄板、棒などの金属素材あるいは加工後の製品、部品を対象とすることができ、プラスチックなどの非金属素材の表面に形成された膜状の金属も対象とすることができる。
防食液組成物を付着させる方法としては、塗布したり、噴霧状、あるいは液体状で吹きかけたりすることによって、金属表面に防食液組成物を接触して付着させる。金属表面の全体に付着させることが好ましい。
次いで表面を覆って付着した防食液組成物のうち、揮発性成分のみを除去する。常温で静置あるいは送風して、必要に応じて加熱して乾燥させることで揮発性成分のみを除去することができる。その結果、表面には、一様に被膜が形成され、防食、防錆の効果を発揮する。この防食方法は、対象金属が鉄、ニッケル、クロム等を主成分とする鉄鋼、ステンレス鋼、ニッケル基合金などの構造材料、及び銅、アルミニウムを主体とする構造材料又は電極材料であり、本発明は、液体中で不動態化するすべての金属材料に適用可能であり、その種類は、特に限定されない。本発明は、原子レベルで平坦な表面を有する上記金属材料に適用すると極めて効果的であり、特に硫化腐食に対して有効である。なお、ここで「常温」とは室内の普通の温度を意味し、具体的には、50℃以下、より一般的には−10〜30℃程度の温度環境をいう。
【0022】
[防食液組成物の調製]
本発明の常温で液体状である防食液組成物は、特に配合の順序を限定するものではないが、揮発性液体にアミド化合物を配合割合で均一に混合し、さらにチアジアゾ−ル化合物が配合された油成分を均一に混合することによって調製することができる。例えば、揮発性液体、油成分、アミド化合物をそれぞれ所定量計り取り融点以上に加熱して液体状態で均一になるよう攪拌して得ることができる。もしも融点が揮発性液体の沸点よりも高い場合は、油成分にアミド系化合物をまずいったん加熱溶解し、そして溶解混合物を揮発性液体の沸点以下まで冷却した後に、揮発性液体と混合することにより、本発明の常温で液体状である防食液組成物を容易に調製することができる。
【0023】
本発明の防食液組成物には、さらに周知の極圧剤、腐食防止剤、摩耗防止剤、防錆剤、酸化防止剤、及び消泡剤などの添加剤を適宜配合することができる。極圧剤、摩耗防止剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛、硫黄系化合物、リン系化合物など、腐食防止剤としてのベンゾトリアゾールおよびこの誘導体、防錆剤として脂肪酸部分エステル、リン系化合物など、酸化防止剤としてフェノール系、アミン系化合物など、及び消泡剤としてシリコーン系化合物、PMAポリマー、流動点降下剤、粘度指数向上剤としてPMAポリマーなどが挙げられる。また、前記各種の添加剤は、数種が予め混合されたいわゆる添加剤パッケージの形で用いることもできる。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例を用いて本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
次に示す揮発性液体、油成分の基油、チアジアゾ−ル化合物を含む添加剤、アミド化合物を用いて実施例および比較例の防食液組成物を調製した。
(A)揮発性液体
実施例及び比較例用の防食液組成物を調製するために次の2種類の揮発性液体を用いた。
(A1)炭化水素:ノルマルデカン(n−デカン;沸点174℃)
(A2)アルコ−ル:ノルマルオクタノ−ル(n−オクタノ−ル;沸点195℃)
【0026】
(B)油成分の基油
油成分の基油としては次の2種類を用いた。
(B1)パラフィン系鉱物油基油:動粘度(40℃):32mm2/s、粘度指数:106、流動点:−15℃、引火点:230℃
(B2)ポリアルファオレフィン(PAO):動粘度(40℃):400mm2/s、粘度指数:150、流動点:−35℃、引火点280℃
【0027】
(C)添加剤
添加剤としてはチアジアゾ−ル化合物と防錆剤としてのカルシウムスルホネ−トを用いた。
(C1)チアジアゾ−ル−1:一般式(1)で表わされる化合物でR1、R2が2エチルヘキシル基で、x=1、y=1の化合物
(C2)チアジアゾ−ル−2:一般式(1)で表わされる化合物でR1、R2がn−ブチル基で、x=2、y=2の化合物
(C3)カルシウムスルホネ−ト(防錆剤)
【0028】
(D)アミド化合物
薄膜を形成させるために以下のアミド化合物を用いた。
(D1)オレイルオレイン酸アミド:日本化成製、ニッカアマイドO、融点35℃
(D2)ステアリルオレイン酸アミド:日本化成製、ニッカアマイドSO、融点67℃
【0029】
[防食液組成物の調製]
上記揮発性液体、油成分の基油、添加剤、アミド系化合物を用いて表1に示す実施例及び比較例の供試液(防食液組成物)を以下の手順で調製した。
(B1)、(B2)の油成分の基油に(C1)〜(C3)の添加剤を所定量配合し、攪拌混合器で加熱溶解させる。そこに(D1)、(D2)のアミド化合物を加えて、融点以上に昇温して液体の状態で均一に混ざり合うまで攪拌した後、放置により約40℃まで降温し、均一に溶解したことを外観の観察で判断した後、(A1)、(A2)の揮発性液体を所定量加え、40℃で30分攪拌して均一液体を得た。
【0030】
[評価方法]
実施例1〜7及び比較例1〜4の各防食液組成物を用いて得られる被膜を以下に記した方法に従って防食性、防錆性を比較評価した。その結果を表1下部に示す。
【0031】
(1)防食性評価
硫化腐食の評価用雰囲気ガスとして、二酸化硫黄の含有量を100容量ppmに調整した窒素ガスを用意した。評価にはJIS K2246の気化性さび止め性試験方法で規定されている、広口共栓瓶、試験片、グリセリン水溶液(35%)、ゴム栓などを用いた。まず、試験片を規定の方法で研磨、洗浄、乾燥させた後、実施例および比較例の供試液に10分漬けた後、3時間、室温で静置乾燥させ、試験片表面に被膜を形成させた。規定のグリセリン液(10ml)を湿度管理のために入れた広口共栓瓶に、被膜のできた試験片を吊るし(ゴム栓)、コック付きガラス管により、真空ポンプを使っての脱気後、雰囲気を二酸化硫黄(100容量ppm)の窒素ガスに置換した。7日間静置後(室温)の試験片表面を観察して評価した。評価基準は、腐食が全く認めらない場合を「なし」とし、認められた場合を「あり」とした。さらに、「あり」のばあい、次のような基準でランク付けをした。
軽微:試験片の表面に直径1mm以下の腐食のはん点が6個を超えない場合
中度:軽微を超え、試験片表面の5%以下に腐食が認められる場合
高度:試験片表面の5%を超える腐食が認められる場合
【0032】
(2)防錆性評価
防錆性はJIS K2510の潤滑油さび止め性能試験方法(蒸留水)に準じて行った。ただし、供試液が溶剤を含んでおり揮発性があるので昇温せずに、温度は室温とし、24時間後の試験片(鋼製丸棒)の表面を観察して評価した。評価基準は、さびが全く認めらない場合を「なし」とし、認められた場合を「あり」とした。さらに、「あり」のばあい、次のような基準でランク付けをした。
軽微:試験片の表面に直径1mm以下のさびのはん点が6個を超えない場合
中度:軽微を超え、試験片表面の5%以下にさびが認められる場合
高度:試験片表面の5%を超えるさびが認められる場合
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示したように、本発明のチアジアゾ−ル化合物およびアミド化合物を含有する実施例の防食液組成物は、防食性、防錆性とも良好な結果であった。一方、比較例のうち、防錆剤を含む比較例3と4は防錆性の効果はみられるものの、防食性においては、効果がないと言える。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上から明らかなように、本発明による防食液組成物は、加工中の素材や加工後の製品、部品の表面に容易に薄膜を形成し、かつその被膜自体は優れた防食性、防錆性を示す。このような被膜は、金属素材の保管、様々な加工工程、製品、部品の保管、運搬、保守管理に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点が250℃以下の揮発性液体を30〜95重量%、チアジアゾ−ル化合物を含有する鉱油あるいは合成系の油成分を1〜70重量%、及びアミド基を有する化合物を0.1〜50重量%含有することを特徴とする防食液組成物。
【請求項2】
チアジアゾ−ル化合物が次の一般式(1);
【化1】

(式中、R1、R2はそれぞれ独立して炭素数1〜20のアルキル基を示し、x、yはそれぞれ独立して1〜10の整数を示す。)で表わされ、油成分が該チアジアゾ−ル化合物を油成分全量基準で0.1〜20重量%含有する請求項1記載の防食液組成物。
【請求項3】
揮発性液体が、沸点が60〜250℃である炭化水素化合物、アルコール、エーテル及びケトンから選択される1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の防食液組成物。
【請求項4】
油成分の基油が、鉱油、ポリ−α−オレフィン及びエステルから選択される1種又は2種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の防食液組成物。
【請求項5】
アミド基を有する化合物が、融点20〜120℃を有する脂肪酸アミドである請求項1〜4のいずれかに記載の防食液組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の防食液組成物を金属表面に付着させ、その後、揮発性液体を除去して被膜を形成する金属の防食方法。

【公開番号】特開2010−209447(P2010−209447A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59693(P2009−59693)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】