説明

防食用接着剤及び防食方法

【課題】強い腐食環境下でも優れた防食効果を示し、かつ金属と被覆樹脂との優れた接着性を有する防食用接着剤、及びこれを用いた金属の防食方法を提供する。
【解決手段】Huckel則において芳香族性を示す置換基を2個以上、10個以下含み、かつ2個以上、10個以下の窒素原子を有する含窒素有機化合物を含有する事を特徴とする防食用接着剤であり、芳香族性を示す置換基の少なくとも1個がベンゼン環であり、さらにドーパントを含有する防食用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属の腐蝕を防止する防食用接着剤および防食方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の腐食を防止するための防食方法のひとつとして、樹脂などにより表面を被覆する方法がある。具体的には、化学的に安定なポリエチレンやポリウレタン被覆や、エポキシ樹脂のコーティングが行われている。これらの樹脂によって被覆する方法は、金属表面を高分子化合物で被覆し金属材料を腐食環境から隔離する方法である。この方法は簡易な方法であるが、単に腐蝕環境と金属表面を遮断する効果しかなく、塗膜のピンホール等から腐食が生ずるという問題点があり、必ずしもその防食効果は満足できるものではなかった。
【0003】
さらにこれらの樹脂と金属は接着剤により接着されるが、海水や塩水等の電解質を含む環境や湿潤土壌中に浸漬すると、常温近傍の温度下で短期的に接着強度の低下を起こし、金属と樹脂の間に錆が発生する。
【0004】
このような課題に対して、例えば特開昭61−35942号広報で提案されたシリコン樹脂、エポキシ樹脂及び変性アミンを主成分とする樹脂と含水ケイ酸マグネシウム及び金属亜鉛粒を主成分とする無機顔料からなる複合塗料塗膜は、1年程度の地熱還元熱水環境、温泉水環境あるいは塩水環境での使用では、ブリスタ、錆、塗膜剥離等の外観上の劣化は見られない。
【0005】
この技術は金属粉等により塩素を反応もしくはトラップすることにより、腐食性物質の金属面への到達を阻止するものである。しかしながら、この複合塗膜と金属との間の密着力が長時間の使用によって徐々に低下し、塗膜剥離を起こして防食性が損なわれる欠点がある。
【0006】
また、塩水等の電解質を遮断することも一般的な方法であり、塗料組成物中にガラスフレーク、雲母、グラファイト等の塩素非反応性燐片状顔料を添加する方法が行われている。この方法は燐片状顔料にて塩素等の腐食性物質の金属面への到達時間を遅延させることにより、防食をはかるものである。しかしながら、この効果は塗覆装金属のブリスター発生時間を、同じ膜厚の添加剤を含まない塗覆装系に比べ、たかだか数倍延長させる程度である。
【0007】
さらに特許文献1においては、シランカップリング剤を添加したエポキシ樹脂組成物が開示されている。これは基材との付着性、耐水性、防食性に優れた防食皮膜が形成されるが、基材がステンレスに限られており、その防食性及び接着性は充分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−15572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前記の問題を解決し、強い腐食環境下でも優れた防食効果を示し、かつ金属と被覆樹脂との優れた接着性を有する防食用接着剤、及びこれを用いた金属の防食方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、種々検討の結果、上記問題点を解決した全く新しい防食用接着剤及びこれを用いた金属の防食方法を見出し、すなわち、本発明を完成するに至った。本願発明は以下の構成を有するものである。
【0011】
1). Huckel則において芳香族性を示す置換基を2個以上、10個以下含み、かつ2個以上、10個以下の窒素原子を有する含窒素有機化合物を含有する事を特徴とする防食用接着剤。
【0012】
2). 芳香族性を示す置換基の少なくとも1個がベンゼン環であることを特徴とする1)に記載の防食用接着剤。
【0013】
3). 芳香族性を示す置換基が全てベンゼン環であり、含窒素有機化合物の分子量が184以上である事を特徴とする2)に記載の防食用接着剤。
【0014】
4). ドーパントを含有することを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の防食用接着剤。
【0015】
5). 1)〜5)のいずれかに記載の防食用接着剤により樹脂層と金属を接着することを特徴とする金属の防食方法。
【0016】
7). 6)に記載の方法にて作製されたシート。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防食用接着剤で処理された樹脂被覆金属材料は、食塩や塩酸等を含む強い腐食環境下でも優れた防食効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において防食に用いられる金属に特に限定はないが一般には鉄、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、真鍮、銀が用いられる。また、それらに各種表面処理がなされていてもよい。表面処理としては各種金属あるいは合金メッキ、酸化処理、酸または/および金属塩水溶液による化成処理、クロメート処理、有機マトリックス樹脂に防錆剤・防食剤を添加した処理液による塗布処理が例示できる。
【0019】
金属の形態は一般にはフィルム状、シート状、線状、管状、H型形状など種々の形状のものさらにはこれらをもちいて形成された部品、製品などであってもかまわない。フィルム状、シート状の場合には金属薄膜の形で高分子フィルムと張り合わされた形状でも良い。
【0020】
本発明の防食用接着剤に用いられる含窒素有機化合物は、Huckel則において芳香族性を示す置換基を2個以上、10個以下含み、かつ2個以上、10個以下の窒素原子を有する含窒素有機化合物である。
【0021】
Huckel則とは芳香族性の有無を示す法則であり、例えば「大学院講義 有機化学I」(41ページ 東京化学同人)などに詳細が述べられている。すなわち、平面または平面に近い単環性共役電子系が(4n+2)個のπ電子をもつとき、結合性軌道がすべて電子で満たされた安定な閉殻構造となり芳香族性を有すると定義される。具体的には一般式(1〜21)で示される様な含窒素有機化合物を例示する事が出来る。無論、本発明の有機低分子はこれらの例示分子に限定されるものではない事は言うまでもない。
【0022】
例えば、ここに示した含窒素有機化合物の各種異性体は本発明の範囲に含まれる。また、これらの分子におけるN位の水素原子、ベンゼン環の水素原子はいかなる置換基によって置換されていてもよい。ここでいう置換基としては、特に限定されるものではないが、具体的には、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ニトロ基、アミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、スルホン酸基、アルコキシスルホン酸基などが挙げられる。下記式(1)で示される有機分子は分子量184であり、本発明の含窒素有機化合物の範疇にはいる最も分子量の小さな分子の例の一つである。
【0023】
これらの分子はいずれも導電性高分子(ポリアニリン)のドープ・脱ドープ反応に相当する酸化・還元反応を示し、これらの分子を塗料中に添加することでその塗料は著しい防食効果を示す事が可能となる。
【0024】
また本願の含窒素有機化合物は良好な溶媒溶解性を有するので、これら含窒素有機化合物は接着剤中に分子状に分散させる事も出来る。粒子状にしか分散できない導電性高分子と比較してその防食効果をさらに高める事ができる。
【0025】
よってこれらの含窒素有機化合物はそのままで、あるいは酸化状態(ドーピングされた状態)で接着剤中に添加することができる。
【0026】
本願発明で用いることの出来る含窒素有機化合物としては、Huckel則において芳香族性を示す置換基の少なくとも1個がベンゼン環であるものが好ましく、さらには少なくとも3個がベンゼン環であるものが好ましい。特に好ましくはHuckel則において芳香族性を示す置換基が全てベンゼン環、中でも3個以上のベンゼン環を有するものが好ましい。
【0027】
合成の容易さおよび原料入手の容易さの観点からは、下記式(1〜21)で示される含窒素有機化合物、その中でも下記式(9〜21)の含窒素有機化合物が好ましい具体的化合物として例示できる。
【0028】
【化1】

【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
一般式(22)で示されるアニリン重合体は防食塗料として用いられる事は良く知られているが、重合度(n)が8以下のオリゴマーはHuckel則において芳香族性を示す置換基を2個以上、10個以下含み、かつ2個以上、10個以下の窒素原子を有するという要件を満たし本発明の含窒素化合物に含まれる。
【0032】
また、重合度8以下の各種アニリンオリゴマーの誘導体、例えば、トルイジンオリゴマー(一般式23)、アニシジンオリゴマー(一般式24)なども本発明の含窒素化合物に含まれる。これらのオリゴマ-はいずれも優れたドープ、脱ドープ機能を示し本発明の目的に好ましく用いられる。このうち、接着剤との混合性が良好であることから、重合度(n)は8以下が好ましい。
【0033】
合成の容易さおよび溶解度の観点からは、n=2であるアニリン4量体が特に好ましいアニリンオリゴマーとして挙げられる。勿論、アニリン4量体は、ベンゼン環上および窒素原子上にいかなる置換基を有していてもよい。
【0034】
【化4】

【0035】
本発明の範疇に属するこれら有機低分子化合物に対して、例えば(一般式25、26)に示されるような有機低分子はベンゼン環を2個以上、あるいは窒素原子を2個以上と言う要件を満たしておらず、本発明の含窒素化合物に属さない。興味深いことにこれらの分子はドープ、脱ドープ反応に相当する酸化・還元反応を示さず、従って防食用接着剤として用いてもその効果は小さい。
【0036】
【化5】

【0037】
本発明で用いる含窒素化合物は、導電性高分子のドープ・脱ドープ作用に相当する酸化・還元機能を示しその事が防食効果にを大きくしているので、ドーパントを含んだ状態で使用される事でその防食効果を著しく高くする事が出来る。本発明で用いるドーパントは、一般に用いられるアクセプター性のドーパントを用いることができる。
【0038】
ドーパントとしては、ハロゲン、プロトン酸、その塩またはそのアニオン、ルイス酸、遷移金属ハロゲン化物、カルボン酸、スルホン酸およびその塩またはそのアニオンをあげることができる。
【0039】
具体的には、ハロゲンとしては塩素、臭素またはヨウ素等を、
プロトン酸、その塩またはそのアニオンとしては塩酸、硫酸、過塩素酸、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、ヘキサフルオロリン酸またはヘキサフルオロリン酸アンモニウム等を、
ルイス酸としては五フッ化リン、五フッ化ヒ素または三フッ化ホウ素等を、
遷移金属ハロゲン化物としては四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、五フッ化モリブデンまたは塩化第二鉄等を、
カルボン酸としては安息香酸、フタル酸またはクエン酸等を、
スルホン酸およびその塩またはそのアニオンとしてはベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、ナフタレンスルホン酸トリメチルアンモニウムまたはポリスチレンスルホン酸アンモニウム等をあげることができる。
【0040】
ドーパントの使用量としては、特に限定されるものではないが、含窒素有機化合物の理論ドープ量を添加することが好ましく、例えば含窒素有機化合物(9)の場合、ドーパントは含窒素有機化合物(9)に対して2倍モル量添加することが好ましい。
【0041】
本発明は、Huckel則において芳香族性を示す置換基を2個以上、10個以下含み、かつ2個以上、10個以下の窒素原子を有する含窒素有機化合物を含有する事を特徴とする防食用接着剤であるが、含窒素化合物を公知の接着剤に配合することで本願発明の防食用接着剤となすことができる。接着剤は、一般にはその基材となる合成樹脂の種類により区別されている。
【0042】
本願発明に用いることができる接着剤としては、例えばポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマーまたはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂、メラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤などが挙げられる。
【0043】
これらの接着剤のなかでも、金属との接着性の点においてエポキシ系あるいはポリウレタン系接着剤が好ましい。
【0044】
本発明に用いることができる樹脂層としては、金属の防食被覆材として用いられる樹脂であれば特に制限はなく、従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、エポキシ樹脂などの樹脂を挙げることができる。本発明の防食方法は、金属と上述の樹脂からなる樹脂層を本発明の防食用接着剤を用いて接着することにより得られる。このため、本発明の金属の防食方法は、金属表面での腐食を極端に抑制することができる。
【0045】
樹脂層はこれら樹脂を予めシートあるいはフィルムとなしたものを本願発明の接着剤を用いて接着しても良いし、シートあるいはフィルムとして成形してまだ冷却されていない状態で本願発明の接着剤を用いて接着しても構わない。
【0046】
本発明の含窒素有機化合物の有する防食効果を最大限に発揮させるためには、前記含窒素有機化合物と接着剤の含有量の重量比を最適比にする事が好ましい。その重量比とは例えば、接着剤中の合成樹脂100重量部あたり、含窒素化合物1〜70重量部、さらには2〜45重量部、特には2.5〜35重量部が好ましい。また、当該接着剤の硬化剤等の配合剤を当該接着剤の使用と同様に用いることは何ら差し支えないし、好ましくは硬化剤等の配合剤を配合することが好ましい。
【0047】
具体的には例えばエポキシ系接着剤の場合、エポキシ樹脂100重量部に、含窒素有機化合物が好ましくは1〜70重量部、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤が好ましくは8〜45重量部を含むことで高い防食性と接着性を兼ね備えた防食用接着剤を実現することができる例としてあげることができる。含窒素有機化合物の含量がこれら範囲にあることにより、防食性、密着性、加工性が良好となる。含窒素有機化合物の含量がこれら範囲より小さいと防食性の面で、また逆により大きくなると密着性,加工性の面で好ましくない。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により示すが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
(入手先および合成法)
本発明において、実施例として用いた含窒素有機化合物の合成法または入手先について述べる。
【0050】
含窒素有機化合物(1)(PPDA):アルドリッチより購入した。
【0051】
含窒素有機化合物(9)(NNDP):東京化成より購入した。
【0052】
含窒素有機化合物(13)(NNDB):アルドリッチより購入した。
【0053】
含窒素有機化合物(14)(Me−NNDB)
窒素雰囲気下、p-メチルアニリン(1.18g、11mmol)、ジブロモジフェニレン(1.56g、5mmol)、 2,2`-Bis(diphenylphosphino)1.1`-binaphthyl (0.0235g、0.037mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(0.0115g、0.0125mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(0.66g)を加え室温で10分間真空乾燥させた後に、THF(5ml)を加え65℃にて19.5時間還流させた。THFを減圧下、留去した後に、蒸留水20mlとジエチルエーテル20mlを加えよく攪拌し、続いてジエチルエーテル層を抽出した。
【0054】
続いてジエチルエーテルを減圧下、留去した後に、得られた固体を室温にて15時間真空乾燥させ0.46gの淡黄色粉末を回収した。続いてカラムクロマトグラフィーにて精製を行い(トルエン:ヘキサン=4:1)0.34gの淡黄色粉末を得た。(収率17%)
1H NMR(DMSO、300MHz)δ2.23(s、6H)、7.01−8.06(m、16H)。
【0055】
含窒素化有機合物(15)(tBu−NNDB)
p−メチルアニリンの代わりに4−tert−ブチルアニリンを用いた他はMe−NNDBと同様に合成を行い淡黄色粉末を得た。(収率45%)
1H NMR(DMSO、300MHz)δ1.36(s、18H)、7.03−8.20(m、16H)。
【0056】
含窒素有機化合物(16)(o,p−Me−NNDB)
p−メチルアニリンの代わりに2,4,6−トリメチルアニリンを用いた他はMe−NNDBと同様に合成を行い淡赤色粉末を得た。(収率53%)
1H NMR(DMSO、300MHz)δ2.19(s、12H)、2.33(s、6H)、6.40−7.40(12H)。
【0057】
含窒素有機化合物(10)(Me−NNDP)
窒素雰囲気下、50mlの三口フラスコにジブロモフェニレン(1.18g、5mmol)、p-トルイジン(1.18g、5mmol)、Bis(tri-t-butylphosphine)palladium(0) (0.013g、0.025mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(0.66g)を加え、系内を窒素置換した後に、脱水テトラヒドロフラン(5ml)を加え18時間70℃にて加熱還流を行った。テトラヒドロフランを減圧留去した後に、蒸留水20mlとジエチルエーテル20mlを加えよく攪拌し、続いてジエチルエーテル層を抽出した。
【0058】
続いてジエチルエーテルを減圧下留去した後に、得られた固体を室温にて15時間真空乾燥させ0.90gの淡赤色粉末を回収した。続いてカラムクロマトグラフィーにて精製を行い(トルエン:ヘキサン=5:1)0.40gの淡黄色粉末を得た。(収率28%)
1H NMR(DMSO、300MHz)δ2.23(s、6H)、6.83−7.40(m、12H)。
【0059】
含窒素有機化合物(11)(F−NNDP)
窒素雰囲気下、ジアミノベンゼン(0.54g、5mmol)、ブロモフルオ
ロベンゼン(2.19g、12.5mmol)、2,2`-Bis(diphenylphosphino)1.1`-binaphthyl (0.0235g、0.037mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(0.0115g、0.0125mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(0.66g)を加え室温で10分間真空乾燥させた後に、THF(5ml)を加え65℃にて13時間還流させた。テトラヒドロフランを減圧留去した後に、蒸留水20mlとジエチルエーテル20mlを加えよく攪拌し、続いてジエチルエーテル層を抽出した。
【0060】
続いてジエチルエーテルを減圧下留去した後に、得られた固体を室温にて15時間真空乾燥させ0.56gの茶色粉末を回収した。続いてカラムクロマトグラフィーにて精製を行い(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)0.10gの淡茶色粉末を得た。(収率10%)
1H NMR(DMSO、300MHz)δ6.82−7.80(m、12H)
19F NMR(CDCl3、300MHz)δ−114.2(s)。
【0061】
含窒素有機化合物(12)(N−Me−NNDP)
窒素雰囲気下、100mlの丸底フラスコに水素化ナトリウム(0.27g、11.4mmol)を加え系内を窒素置換した後に、脱水THF(40ml)、脱水1.4ジオキサン(50ml)を加えた。つづいてN.N ‘ジフェニル1.4フェニレンジアミン溶液(1.3g/テトラヒドロフラン10ml)とメチルアイオダイド(1.87g、13.9mmol)を加え、70℃、5時間加熱還流を行った。反応液をろ過後、ろ液をクロロホルムと蒸留水にて洗浄し、クロロホルム層を濃縮した後に15時間真空乾燥させ3.3gの茶色粉末を得た。続いてカラムクロマトグラフィーにて精製を行い(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)0.82gの淡黄色粉末を得た。(収率23%)
1H NMR(DMSO、300MHz)δ3.23(s、6H)、6.80−
7.38(m、14H)。
【0062】
アニリン4量体(TANI)
窒素雰囲気下、300mlの丸底フラスコにジフェニルアミン(1.69g、0.01mol)と4,4’−ジアミノジフェニルアミン硫酸(3.50g、0.01mol)を加え系内を窒素置換した後に、ジメチルホルムアミド100ml、蒸留水20ml、濃塩酸15mlを加え、よく攪拌した。続いて反応液を0℃に冷却し、過硫酸アンモニウム溶液(2.28g/1M塩酸50ml)を少量ずつ滴下した。滴下終了後、0℃ 1時間攪拌した後に700mlの蒸留水に反応液を加えた。反応液をろ過し、1M塩酸で洗浄(50mlX3)し得られたろ過物を40℃ 3時間にて真空乾燥させ2.56gの黒色結晶を得た。
【0063】
続いて得られた黒色粉末を25%のアンモニア水溶液中(50ml)で12時間攪拌させ、ろ過後40℃ 3時間にて真空乾燥させて2.42gの黒色粉末を回収した。さらに得られた黒色粉末をヒドラジンハイドライド中(10ml)で12時間攪拌させ、ろ過後、40℃ 3時間真空乾燥させて2.35gの黒色粉末を得た。
【0064】
続いて50℃のエタノールに黒色粉末を溶解させ不溶分をろ別した。続いてエタノールを減圧留去し、得られた固体をクロロホルムに溶解させ不溶分を回収し、5時間真空乾燥させ0.35gの黒色粉末を得た。(収率10%)
1H NMR(DMSO、300MHz)δ4.62(s、2H)、6.52(d、2H)、6.75(t、1H)、6.78−7.31(m、15H)、7.41(s、1H)、7.68(s、1H)。
【0065】
(実施例1)
ジシアノアミド(DICY) 8重量部、アミキュアPN−23を5重量部、含窒素有機化合物(9)(NNDP) 5重量部、に、エピコート828を26重量部加え、ペイントロールで平均粒径が20μm以下になるように粉砕した。その後、74重量部のエピコート828を加え、真空攪拌と脱泡を行いサンプル(エポキシ系接着剤)を試作した。
【0066】
次に、試作したエポキシ系接着剤をアルミナ#40で脱錆処理したSS41鋼板(厚さ3mm)にバーコタを用いて厚さ35μmになるよう塗布した。塗布後120℃に加熱して、この接着剤を硬化させ、ついで接着剤面にTダイから溶融ポリエチレンを押出し、鋼板に被覆した。冷却してポリエチレン保護皮膜を形成し、本発明の防食用接着剤による外面防食被覆鋼板を得た。
【0067】
(実施例2)
ジシアノアミド(DICY) 8重量部、アミキュアPN−23 5重量部、含窒素有機化合物(9)(NNDP) 5重量部、ドーパントとしてp-トルエンスルホン酸 10重量部に、エピコート828を26重量部加え、ペイントロールで平均粒径が20μm以下になるように粉砕した。その後、74重量部のエピコート828を加え、真空攪拌と脱泡を行いサンプル(エポキシ系接着剤)を試作した。
【0068】
次に、試作したエポキシ系接着剤をアルミナ#40で脱錆処理したSS41鋼板(厚さ3mm)にバーコタを用いて厚さ35μmになるよう塗布した。塗布後120℃に加熱して、この接着剤を硬化させ、ついで接着剤面にTダイから溶融ポリエチレンを押出し、鋼板に被覆した。冷却してポリエチレン保護皮膜を形成し、本発明の防食用接着剤による外面防食被覆鋼板を得た。
【0069】
(実施例3〜14)(比較例1〜3)
実施例2と同様な方法で含窒素有機化合物及びドーパントとそれらの重量部数を変えて表1の実施例3〜14、及び表2の比較例1〜3に示すエポキシ系接着剤を実施例1と同様にして試作し、ポリエチレン被覆鋼材の試験片を作成した。
【0070】
塩水試験
塩水試験後の接着強さは上記で得られたポリエチレン被覆鋼材を60℃の3%NaCl溶液中に120日浸漬後、ポリエチレン層を基材の鋼板に対して90度の角度で剥離する際の強度を測定(90度剥離試験)して接着強度を判断した。それぞれの結果を表1及び表2にまとめた。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
実施例1〜10と比較例1〜5の結果を比較することにより本発明の含窒素有機化合物含有の防食用接着剤はいずれも防食性・接着性に優れた特性を示す事がわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Huckel則において芳香族性を示す置換基を2個以上、10個以下含み、かつ2個以上、10個以下の窒素原子を有する含窒素有機化合物を含有する事を特徴とする防食用接着剤。
【請求項2】
芳香族性を示す置換基の少なくとも1個がベンゼン環であることを特徴とする請求項1に記載の防食用接着剤。
【請求項3】
芳香族性を示す置換基が全てベンゼン環であり、含窒素有機化合物の分子量が184以上である事を特徴とする請求項2に記載の防食用接着剤。
【請求項4】
ドーパントを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防食用接着剤。
【請求項5】
接着剤がポリウレタン系もしくはエポキシ系であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防食用接着剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の防食用接着剤により樹脂層と金属を接着することを特徴とする金属の防食方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法にて作製されたシート。

【公開番号】特開2011−16917(P2011−16917A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162316(P2009−162316)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】