説明

防食粒子

本発明は、多価金属カチオンで変性され、場合によっては無機又は有機性であってよい弱酸のアニオン及びそれらの共役種を含むシリカ又はアルミナのような無機酸化物生成物をベースとする防食粒子に関する。特に、本発明は、1種類よりも多い酸化物を含む無機酸化物の混合物全体の平均の平均細孔径が2nmより大きく、平均細孔容積が0.2mL/gより大きいようなメソ多孔性及び/又はマクロ多孔性を示す無機酸化物又は無機酸化物の混合物を含む防食顔料粒子に関する。本発明はまた、かかる粒子の製造方法、及びこれらを用いて製造される防食組成物にも関する。本発明は更に、防食組成物を適用した物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、多価金属カチオンで変性され、場合によっては無機又は有機性であってよい弱酸のアニオン及びそれらの共役種を含むシリカ又はアルミナのような無機酸化物生成物をベースとする防食粒子に関する。本発明はまた、かかる粒子の製造方法、及びこれらを用いて製造される防食組成物にも関する。本発明は更に、防食組成物を適用した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]幾つかのカチオン及びアニオンが腐食抑制特性を有し、これらを含む化合物を、金属表面及び構造体に接着及び腐食抑制特性を与えることを目的とする防食組成物中に含ませることができることは公知である。代表例としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、マンガン、亜鉛、鉛、クロム、セリウム、及び他の希土類元素のカチオンが、シリケート、メタボレート、ボレート、ボロシリケート、クロメート、モリブデート、ニトロフタレート、ホスフェート、ハイドロジェンホスフェート、ホスファイト、ポリホスフェート、ホスホシリケート、ホスホネート、及びホスホノカルボキシレートのようなアニオンと共に挙げられる。
【0003】
[0003]カチオンをアニオンと組み合わせて僅かに可溶性の金属塩を形成させることができる。また、カチオン又はアニオンを、シリカ又はアルミナをベースとするもののような無機酸化物と化合させてイオン変性防食化合物を製造することもできる。更に、それらの酸化物の形態の鉛及び亜鉛のような幾つかの金属のカチオンは、防食組成物の防食特性を向上させることができる。代表例は、一酸化鉛、鉛丹、及び酸化亜鉛である。
【0004】
[0004]勿論、鉛化合物及びクロメートをベースとする伝統的な抑制剤は、環境及び健康並びに安全性の問題が付きものであり、概して徐々に廃止されているが、航空機用途のための防食被覆、及びガルバリュームのような外装用の建築又は金属基材を処理するコイル塗装の範囲の特定の用途のようなクロメートを使用し続ける用途が未だ存在し、このために防食の分野における更なる開発に対する継続した動機付けが与えられる。
【0005】
[0005]しかしながら、鉛及びクロムベースの化合物に対する代替物の多くは、実際には亜鉛のような他の重金属に基づいており、健康及び安全性並びに環境に関する更なる問題が引き起こされる。セリウムのような希土類元素は、クロムをベースとするものよりも問題の少ない顔料を与えると考えられるが、一方でカルシウム及びマグネシウムとは異なり、ストロンチウム及びバリウム化合物を考えると、これらは第IIA族元素として重金属とはみなされないが問題が未だ存在する。
【0006】
[0006]上述したように、抑制化合物は難水溶性の塩の形態であってよく、例えば好適な条件下における必要なカチオン及びアニオンの存在下でのスラリー又は溶液からの粒子の成長及び沈殿のプロセスによって製造することができる。難溶性塩をベースとする鉛及びクロメートを含まない抑制化合物、及びそれらを製造する方法の代表例は、米国特許4,247,526、4,139,599、4,294,621、4,294,808、4,337,092、5,024,825、5,108,728、5,126,074、5,665,149、6,083,308、及び7,220,297、並びに米国特許出願2007/0012220、2007/0012220、及び2004/0168614、並びに英国特許825,976、914,707、915,512、1,089,245、ドイツ特許2,849,712、2,840,820、及び1,567,609、並びにヨーロッパ特許522,678(これらの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)において見ることができるか、或いはこれらによって参照されている。
【0007】
[0007]抑制化合物はまた、更なる抑制カチオン及びアニオンを含むシリカ、シリケート、アルミナ、及びアルミノシリケートのような無機酸化物の粒子の形態であってもよい。これらの抑制化合物は、例えば好適な条件下における必要なカチオン及びアニオンの存在下での酸化物の沈殿又はゲル化のプロセスによって製造することができる。かかる抑制化合物及びこれらを製造する方法の代表例は、US−4,849,297及びGB−918,802(これらの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)において見ることができる。GB−918,802は、1:1より大きく、通常は2:1〜5:1の間であるSiO:CaOの比を有する沈降ケイ酸カルシウムに関する。US−4,849,297は、低い表面積及び吸油量、並びにCaOとして表して6〜9重量%のカルシウム含量を有するアモルファスカルシウム含有シリカの沈殿に関する。
【0008】
[0008]或いは、無機酸化物をベースとする抑制化合物は、ここでも好適な条件下で酸化物を必要な抑制カチオン及びアニオンを含む溶液と接触させることによって、予め形成した酸化物の表面プロトン及びヒドロキシル基を置換するイオン交換方法によって製造することができる。かかる交換酸化物を製造する方法は、米国特許5,405,493、4,687,595、4,643,769、4,419,137、4,474,607、及び5,041,241、並びにEP−0412686(これらの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)において見ることができるか、或いはこれらによって参照されている。優先的には、シリカゲルのような参照されている酸化物は、約2nmの平均細孔径を有するミクロ多孔質のものである。US−5,041,241は、カルシウム含有ミクロ多孔質シリカの2成分ブレンドに関する。イオン交換アルミノシリケート化合物に関する他の例は、US−6,139,616及びUS−2004/0091963(これらの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)である。
【0009】
[0009]勿論、上記の記載から、難溶性塩をベースとする抑制化合物及び無機酸化物をベースとするものの組合せは、それから抑制化合物を製造する溶液又はスラリーの組成、及び処理経路に応じて種々の方法で同時に製造することができ、原則としてこれによって得られる抑制化合物によって示される広範囲の特性を得ることが可能である。
【0010】
[0010]多くの場合においては、防食において用いる膜及び被覆は水に対して幾らかの透過性を有しており、上述の防食化合物によって与えられる腐食抑制のメカニズムは、化合物が水中に徐々に溶解して活性抑制剤としてイオンを放出することを伴うと考えられる。かかるシステムが長期間にわたって有効であるためには、化合物の可溶性が特に重要である。化合物が過度に可溶性であると、被覆の膨れ(blistering)が起こる可能性があり、化合物は迅速に消耗する。化合物が十分に可溶性でない場合には、化合物は効果がなくなる。抑制化合物が難溶性塩であるか、或いは無機酸化物をベースとするものであるか、或いは2つの幾つかの組合せであるかどうかに関係なく、膜及び被覆において用いるために好適なかかる化合物の通常の可溶性によって、約10−5M〜10−2Mの水性媒体中の抑制イオン濃度が得られる。
【0011】
[0011]無機酸化物をベースとする抑制化合物に関しては、無機酸化物はそれ自体、その中で腐食抑制粒子を用いる雰囲気の性質にしたがって抑制物質の提供に関して特定の溶解度を有することができる。例えばシリカの場合には、ケイ酸は約10−3Mのバックグラウンド溶解度を有し、シリケートの濃度はpH依存性であり、例えば約10.5のpHにおいて10−2Mの値を有する。
【0012】
[0012]しかしながら、時には、これらのタイプの腐食抑制粒子は、溶解に基づくメカニズムに対する追加又は代わりの作用メカニズムとして、その雰囲気中に存在する攻撃性イオンによるイオン交換によって溶液中に抑制カチオン及びアニオンを放出するように作用させることができると考えられる。次に、腐食抑制イオンの放出速度は、透過水性雰囲気中への抑制イオンの溶解に加えてか又はこれよりも、膜又は被覆の交換イオンに対する透過性によって影響を受ける。腐食抑制イオンは、この場合においては、無機酸化物から、被覆の所望のバリヤ特性が最も弱い領域中により大きく放出され、これによって向上した性能特性が導かれる。
【0013】
[0013]上記で示した防食化合物は、通常は、追加の処理工程として必要な洗浄、乾燥、及び粉砕操作を用いて乾燥粉末の形態で利用できるようにされ、粉末の平均粒径は、通常は約1〜2ミクロン又はそれ以上であるが、1ミクロン未満であってもよい。
【0014】
[0014]被覆配合物のような多くの実際の防食系においては、鉛及びクロメートを含まない配合物の開発において、他の重金属含有顔料を含んでいてもよく又は含んでいなくてもよい防食顔料の組合せが用いられている。性能を最適化することは別として、かかる組合せによって、幾つかの場合においては配合物の重金属含量を減少させることもできる。かかる組合せの代表例は、米国特許6,485,549、6,890,648、7,033,678、7,244,780、及び米国特許出願2002/0031679、2004/0224170、2005/0148832、2007/0048550、及び2007/0088111、並びにEP−1172420、EP−1291,453、及びEP−1475226、並びにWO−2000022054(これらの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)において見ることができる。
【0015】
[0015]しかしながら、より問題の少ない顔料から得ることができる性能及び特性は、一般的には常に、伝統的な鉛及びクロメート含有系に付随するレベルではなく、他の重金属含有顔料に関しては、それらの使用を低下又は排除する試みは性能に関する更なる妥協が導入される可能性があり、伝統的に用いられている顔料に対する改良された代替物を見出す動機付けが継続して与えられる状況になっている。増加するエネルギーコスト、及び処理の容易さ、並びにその中に顔料を含ませる最終的な防食系のコスト有効性に関係する原材料コストに起因する顔料の製造に関係するコストも高まる懸念材料である。本発明は、これらの種々の問題を扱うことを試みるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許4,247,526
【特許文献2】米国特許4,139,599
【特許文献3】米国特許4,294,621
【特許文献4】米国特許4,294,808
【特許文献5】米国特許4,337,092
【特許文献6】米国特許5,024,825
【特許文献7】米国特許5,108,728
【特許文献8】米国特許5,126,074
【特許文献9】米国特許5,665,149
【特許文献10】米国特許6,083,308
【特許文献11】米国特許7,220,297
【特許文献12】米国特許出願2007/0012220
【特許文献13】米国特許出願2007/0012220
【特許文献14】米国特許出願2004/0168614
【特許文献15】英国特許825,976
【特許文献16】英国特許914,707
【特許文献17】英国特許915,512
【特許文献18】英国特許1,089,245
【特許文献19】ドイツ特許2,849,712
【特許文献20】ドイツ特許2,840,820
【特許文献21】ドイツ特許1,567,609
【特許文献22】ヨーロッパ特許522,678
【特許文献23】US−4,849,297
【特許文献24】GB−918,802
【特許文献25】米国特許5,405,493
【特許文献26】米国特許4,687,595
【特許文献27】米国特許4,643,769
【特許文献28】米国特許4,419,137
【特許文献29】米国特許4,474,607
【特許文献30】米国特許5,041,241
【特許文献31】EP−0412686
【特許文献32】US−6,139,616
【特許文献33】US−2004/0091963
【特許文献34】米国特許6,485,549
【特許文献35】米国特許6,890,648
【特許文献36】米国特許7,033,678
【特許文献37】米国特許7,244,780
【特許文献38】米国特許出願2002/0031679
【特許文献39】米国特許出願2004/0224170
【特許文献40】米国特許出願2005/0148832
【特許文献41】米国特許出願2007/0048550
【特許文献42】米国特許出願2007/0088111
【特許文献43】EP−1172420
【特許文献44】EP−1291,453
【特許文献45】EP−1475226
【特許文献46】WO−2000022054
【発明の概要】
【0017】
[0016]本発明は、多価金属カチオンで変性され、場合によっては無機又は有機性であってよい弱酸のアニオン及びそれらの共役種を含むシリカ又はアルミナのような無機酸化物生成物をベースとする防食粒子に関する。無機酸化物の混合物を含ませることができ、多価金属カチオンと弱酸のアニオンの混合物も同様である。
【0018】
[0017]想定する組成物に関しては、i番目のカチオン、アニオン、又は酸化物のモル数は、それぞれ記号
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
及び
【0022】
【化3】

【0023】
によって表すことができる。次に、それぞれの成分、即ちカチオン、アニオン、及び酸化物の合計モル数は、任意の特定の組成物において用いられる全てのカチオン、アニオン、及び酸化物全体の合計によって与えられ、表記における便宜上、1より多いカチオン、アニオン、又は酸化物を顔料組成物中に含ませることができることを示すために上線を用いる。したがって、
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
及び
【0029】
【化7】

【0030】
はそれぞれカチオン、アニオン、及び酸化物の合計モル数である)。同様に、
【0031】
【化8】

【0032】
及び
【0033】
【化9】

【0034】
は、それぞれアニオン及び酸化物と会合しているカチオンの合計モル数である。カチオン、アニオン、及び酸化物の合計数のフラクションとしてのi番目のカチオン、アニオン、及び酸化物の割合は、所望の組成にしたがって割り当てられた値c、a、及びoである。したがって、
【0035】
【化10】

【0036】
[0018]生成物を構成する多価金属カチオン
【0037】
【化11】

【0038】
無機酸化物
【0039】
【化12】

【0040】
及びアニオン
【0041】
【化13】

【0042】
の合計数(モルで表す)は、以下の式の組によって決定される。ここで、記号s及びnは酸化物1gあたりの表面積、及び酸化物1nmあたりの表面ヒドロキシル基の数を指し、1種類より多い酸化物が含まれる場合には平均値として求められる:
【0043】
【化14】

【0044】
ここで、
【0045】
【化15】

【0046】
及び
【0047】
【化16】

【0048】
であり、ここで、記号b及びcを用いてそれぞれの式における種々の項を表し、また次の関係式によって酸化物に対するアニオンの所望の比rを表し;
【0049】
【化17】

【0050】
また、基礎として次の制約を用いる。
【0051】
【化18】

【0052】
記号fはカチオンによる処理に関与する表面ヒドロキシル基の理論的割合を与え、記号sはカチオンとアニオンとの間の化学量論比を決定する。記号
【0053】
【化19】

【0054】
及び
【0055】
【化20】

【0056】
は、組成物を構成するカチオン及びアニオンの平均価数を表し、それぞれの場合において下式によって決定される。
【0057】
【化21】

【0058】
ここで、z及びuは、i番目のカチオン又はアニオンの価数、及びカチオン又はアニオンの合計数のフラクションとしての割合、即ちc及びaである。上記において、或いはモル数を重量に変換する際には、M、M、及びMは、カチオン、アニオン、及び酸化物の分子量であり、又は必要に応じて平均値を表す。Nはアボガドロ数である。上記の式の組は、c、a、o、f、s、及びrに割り当てられる値と一緒に、本発明によって想定する組成物を定義する。
【0059】
[0019]特に、本発明は、1種類より多い酸化物が含まれる場合には無機酸化物の混合物全体の平均で、平均細孔径が2nmより大きく、平均細孔容積が0.2mg/Lより大きいようなメソ多孔性及び/又はマクロ多孔性を示す無機酸化物又は無機酸化物の混合物を含む防食顔料粒子に関する。一般に、1種類より多い無機酸化物を含む場合には、少なくとも1種類の無機酸化物はメソ又はマクロ孔を含む。本発明の防食粒子は、約3〜11の範囲のpHを有し、溶解度は通常は選択される実際の組成によって約10−5〜10−2Mの範囲内である。
【0060】
[0020]公知の顔料と比べて、本発明の材料は驚くべきことに、改良された防食性能を与え、流動及び膜硬化プロセスに関連するもののような他の被覆特性に対する影響を少ししか有しない。更に、顔料の製造中において減少した粘度を得ることができ、これによってより高い濃度の活性材料を処理することが可能である。また、顔料のデザインも、発熱反応中により良好な温度制御を実現することができ、これによって温度感受性相構造をより容易に製造することが可能であるようなものである。
【0061】
[0021]本発明はまた、かかる粒子を製造する方法、及びそれを用いて製造される防食組成物にも関する。本防食組成物は、金属表面及び構造体に接着及び腐食抑制特性を与えることを意図し、防食特性の改良が求められている、水性、非水性、又は無溶媒の保護膜、プライマー、被覆、接着剤、シーラント、金属予備処理剤、及び他の表面処理膜であってよい。ここに記載するように、これらの用途分野の全てが単一の用語「被覆」によって包含される。
【発明を実施するための形態】
【0062】
[0022]本発明は、多価金属カチオンで変性され、場合によっては無機又は有機性であってよい弱酸のアニオン及びそれらの共役種を含むシリカ又はアルミナのような無機酸化物生成物をベースとする防食粒子に関する。無機酸化物の混合物を含ませることができ、多価金属カチオン及び弱酸のアニオンの混合物も同様である。
【0063】
[0023]ここで定義するように、「無機酸化物」という用語は金属又はメタロイドの酸化物を意味する。金属としては、周期律表上のホウ素からポロニウムへ引いた対角線の左側の元素が挙げられる。メタロイド又は半金属としては、この線上の元素が挙げられ、ケイ素も含まれる。無機酸化物の例としては、シリカ、シリケート、アルミナ、アルミノシリケート、チタニア、ジルコニア、セリアなど、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
[0024]無機酸化物は、球状から任意の非球状形状までの任意の形状であってよく、ゲル、沈殿物、ゾル(コロイド)、ヒューム状、又は当該技術において容易に認識される他の通常の形態であってよい。かかる酸化物粒子は、例えば米国特許5,336,794、5,231,201、4,939,115、4,734,226、及び4,629,588、並びにDE−1,000,793、GB−1,263,945、DE−1,767,332、US−5,123,964、US−5,827,363、US−5,968,470、US−6,403,526、US−7,442,290、US2004/0249049、US2005/0228106、及びWO−1993017967(これらの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)に示されているか又はこれらによって参照されている方法にしたがって製造することができる。また、シリカ及び他の酸化物粒子の製造方法及びそれらの特性に関する詳細は、R.K. Ilerによる"The Chemistry of Silica", John Wiley & Sons, 1979、C.J. Brinker及びG.W. Schererによる"Sol-Gel Science", Academic Press, 1990、J.E. Otterstedt及びD.A. Brandrethによる"Small Particles Technology", Springer, 1998、G. Eritl, H. Knoezinger及びJ. Weitkampによる"Preparation of Solid Catalysts", Wiley-VCH, 1999、及びA.T. Hubbardによる"Encyclopedia of Surface and Colloid Science", CRC Press, 2002(これらの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)のような教科書においても見ることができる。これらの種類の粒子は、また、例えばW.R. Grace & Co.-Conn.からSYLOID(登録商標)、PERKASIL(登録商標)、又はLUDOX(登録商標)の商品名などで商業的に入手することもできる。
【0065】
[0025]本明細書及び特許請求の範囲において用いる単数形「a」、「and」、及び「the」は、記載が他に明確に示さない限り複数の指示物を包含することに注意すべきである。したがって、例えば「酸化物(an oxide)」という記載は複数のかかる酸化物を包含し、「酸化物(oxide)」という記載は1種類以上の酸化物及び当業者に公知のその均等物などの記載を包含する。
【0066】
[0026]例えば本発明の幾つかの態様の説明において用いる組成物中の成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、回収率又は収率、流速、及び同様の値、並びにその範囲を修飾する「約」は、例えば通常の測定及び取り扱い手順を通して、これらの手順における偶然のエラーを通して、方法を行うために用いる成分における差を通して起こる可能性のある数量の変動;並びに同様の近似考慮事項を指す。「約」という用語はまた、特定の初期濃度を有する配合物又は混合物の熟成によって相違する量、並びに特定の初期濃度を有する配合物又は混合物の混合又は処理によって相違する量も包含する。「約」という用語によって修飾されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲はこれらの量の均等範囲を包含する。
【0067】
[0027]想定する組成物に関しては、i番目のカチオン、アニオン、又は酸化物のモル数は、それぞれ記号
【0068】
【化22】

【0069】
【化23】

【0070】
及び
【0071】
【化24】

【0072】
によって表すことができる。次に、それぞれの成分、即ちカチオン、アニオン、及び酸化物の合計モル数は、任意の特定の組成物において用いられる全てのカチオン、アニオン、及び酸化物全体の合計によって与えられ、表記における便宜上、1より多いカチオン、アニオン、又は酸化物を顔料組成物中に含ませることができることを示すために上線を用いる。したがって、
【0073】
【化25】

【0074】
(式中、
【0075】
【化26】

【0076】
【化27】

【0077】
及び
【0078】
【化28】

【0079】
はそれぞれカチオン、アニオン、及び酸化物の合計モル数である)。同様に、
【0080】
【化29】

【0081】
及び
【0082】
【化30】

【0083】
は、それぞれアニオン及び酸化物と会合しているカチオンの合計モル数である。カチオン、アニオン、及び酸化物の合計数のフラクションとしてのi番目のカチオン、アニオン、及び酸化物の割合は、所望の組成にしたがって割り当てられた値c、a、及びoである。したがって、
【0084】
【化31】

【0085】
[0028]生成物を構成する多価金属カチオン
【0086】
【化32】

【0087】
無機酸化物
【0088】
【化33】

【0089】
及びアニオン
【0090】
【化34】

【0091】
の合計数(モルで表す)は、以下の式の組によって決定される。ここで、記号s及びnは酸化物1gあたりの表面積、及び酸化物1nmあたりの表面ヒドロキシル基の数を指し、1種類より多い酸化物が含まれる場合には平均値として求められる:
【0092】
【化35】

【0093】
ここで、
【0094】
【化36】

【0095】
及び
【0096】
【化37】

【0097】
であり、ここで、記号b及びcを用いてそれぞれの式における種々の項を表し、また次の関係式によって酸化物に対するアニオンの所望の比rを表し;
【0098】
【化38】

【0099】
また、基礎として次の制約を用いる。
【0100】
【化39】

【0101】
記号fはカチオンによる処理に関与する表面ヒドロキシル基の理論的割合を与え、記号sはカチオンとアニオンとの間の化学量論比を決定する。記号
【0102】
【化40】

【0103】
及び
【0104】
【化41】

【0105】
は、組成物を構成するカチオン及びアニオンの平均価数を表し、それぞれの場合において下式によって決定される。
【0106】
【化42】

【0107】
ここで、z及びuは、i番目のカチオン又はアニオンの価数、及びカチオン又はアニオンの合計数のフラクションとしての割合、即ちc及びaである。上記において、或いはモル数を重量に変換する際には、M、M、及びMは、カチオン、アニオン、及び酸化物の分子量であり、又は必要に応じて平均値を表す。Nはアボガドロ数である。上記の式の組は、c、a、o、f、s、及びrに割り当てられる値と一緒に、本発明によって想定する組成物を定義する。
【0108】
[0029]特に、本発明は、1種類より多い酸化物が含まれる場合には無機酸化物の混合物全体の平均で、平均細孔径が2nmより大きく、平均細孔容積が0.2mg/Lより大きいようなメソ多孔性及び/又はマクロ多孔性を示す無機酸化物又は無機酸化物の混合物を含む防食顔料粒子に関する。一般に、1種類より多い無機酸化物を含む場合には、少なくとも1種類の無機酸化物はメソ又はマクロ孔を含む。
【0109】
[0030]本発明の無機酸化物の性質を考察するにあたっては、細孔は通常は寸法によって分類する。したがって、0.7nm未満の幅を有する細孔は超ミクロ孔と呼び、これに対して約2nm未満の幅を有するものはミクロ孔と呼ぶ。約2nm〜50nmの範囲の細孔はメソ孔と名付け、約50nmよりも大きいものはマクロ孔とする。
【0110】
[0031]数多くの周知の技術を用いて、単位重量あたりの細孔容積で表される細孔容積、全粒子体積に対する空隙容積の比を意味する多孔度、細孔径及び細孔径分布を求めることができる。主要な技術は、吸着等温線及び細孔内凝縮を圧力の関数として調べる通常は窒素による気体吸着/脱着、及び水銀を細孔中に送り込むのに必要な圧力を求める水銀ポロシメトリーに基づく。
【0111】
[0032]気体吸着は、一般に約2〜50nmの範囲の細孔に関して最も好適であるとみなされている。ミクロ孔の存在によって、非常に低い値の減圧(飽和蒸気圧に対する気体圧力の割合)における細孔内凝縮が引き起こされる可能性があり、これに対して、メソ孔範囲の上限且つマクロ孔領域中に向かって、毛管凝縮は、起こったとしても、正確に測定することができるためには近接しすぎている減圧の値においてのみ起こる。ヘリウム又はアルゴンのような他の気体は、ミクロ孔領域を研究するために有用である可能性がある。気体吸着を用い、利用しやすい細孔径範囲を基準として細孔容積を求める。水銀及びヘリウム比重測定法は、全細孔容積及び多孔度を評価するために有用である。
【0112】
[0033]水銀ポロシメトリーは、メソ孔範囲の上部領域における気体吸着に対する有用な補完手段とすることができ、マクロ孔範囲においては必要である。原則としてメソ孔領域の下部範囲の細孔径を利用可能にするために圧力を適用することができるが、粒子の圧縮がこれらの条件下で次第に複雑なファクターになる。
【0113】
[0034]一般に、これらの技術又はかかる技術の組合せによって所定の多孔質固体に関する細孔径分布を見積もることができ、それから平均細孔径を求めることができる。これらの標準的な方法の詳細は、基礎をなす理論と共に、S.J. Gregg及びK.S. W Singによる"Adsorption, Surface Area and Porosity", 第2版, 1982, Academic Press, London、及びS. Lowell, J.E. Shields, M.A. Thomas、及びM. Thommesによる"Characterisation of Porous Solids and Powders: Surface Area, Pore Size and Density", 2004, Springer(これらの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)のような教科書において見ることができる。US−6,380,265(その全ての内容は参照として本明細書中に包含する)に報告されているもののような細孔容積を見積もるレオロジー法もまた公知である。
【0114】
[0035]本発明の防食粒子の平均細孔径は、一般に約2nm〜約100nmの範囲である。より好ましくは、平均細孔径は、約3nm〜約80nmの間、約3〜約70nmの間、約3nm〜約60nmの間、最も好ましくは約4nm〜約50nmの間である。
【0115】
[0036]本発明の防食粒子の平均細孔容積は、一般に約0.2mL/g〜約3mL/gの範囲である。より好ましくは、平均細孔容積は、約0.3mL/g〜約2mL/gの間、約0.3mL/g〜約1.8mL/gの間、約0.3mL/g〜約1.5mL/gの間、最も好ましくは約0.4mL/g〜約1.2mL/gの間である。
【0116】
[0037]高範囲の膜及び被覆系中に腐食抑制剤を導入する能力、並びに耐腐食性に関する好適さに関連する理由のために、防食粒子の水性スラリーのpHは、殆どの場合において通常は約3〜11の範囲であるが、問題の被覆又は膜の実際の化学的性質及び金属基材の性質によってはより低いか又はより高い値が好適である可能性がある。幾つかの理由のために、溶解度は、通常は約10−5〜約10−2Mの範囲である。これらの特性は、選択する実際の組成によって調節することができる。
【0117】
[0038]カチオン、アニオン、及び酸化物成分の選択、カチオン、アニオン、及び酸化物の合計数のフラクションとしてのそれぞれのカチオン、アニオン、及び酸化物の割合、アニオンに対するカチオンの比、及び酸化物に対するカチオンの比の割り当て、そして式7〜11の組からのそれぞれの成分タイプの割合の決定によって、組成を変化させることができる。例えば、モル比=85:10:5のカルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、及びアルミニウム(Al3+)イオンの混合物、200m/gの表面積を有するタイプのメソ多孔質シリカ(酸化物1nmあたりの表面ヒドロキシル基の数nは、シリカ表面に関して通常は4.5nm−2である)、並びにリン酸及び亜リン酸の等モル混合物を用いる場合には、
【0118】
【化43】

【0119】
及び
【0120】
【化44】

【0121】
は、それぞれ2.05及び2.5である。fには0.1の値を割り当てることができ、sには、酸塩が所望の場合には1又は1未満の値、或いは過塩基性塩が所望の場合には1より大きい値を割り当てることができ、rには等量のアニオン及び酸化物が所望の場合には約2の値を割り当てることができる。
【0122】
[0039]式10中のrの値は0となるように選択することができる。0でないように選択する場合には、この値は、通常は無機酸化物又は多価カチオンで処理した無機酸化物成分が防食粒子の少なくとも5重量%の量で存在するようなものである。より好ましくは、この量は少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、最も好ましくは少なくとも30重量%である。
【0123】
[0040]好ましいカチオンは、カルシウム(Ca2+)、マグネシウム(Mg2+)、亜鉛(Zn2+)、マンガン(Mn2+)のもの、及びセリウム(Ce3+/Ce4+)カチオンのような希土類元素のカチオンであるが、他の好適なカチオンは、コバルト(Co2+)、鉛(Pb2+)、ストロンチウム(Sr2+)、リチウム(Li)、バリウム(Ba2+)、及びアルミニウム(Al3+)であってよい。より通常的な態様においては、多価金属イオンとしては、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、及びセリウムのような希土類元素のものが挙げられる。
【0124】
[0041]アニオン成分としては、種々のリン物質及びリンを含まない物質が挙げられる。リン含有物質の例としては、亜リン酸、ハイドロジェンホスフェート、ホスフェート、リン酸、ホスファイト、ホスホシリケート、トリ及びポリリン酸、分子あたり1つのホスホン酸基を含む有機ホスホン酸、例えば2−ヒドロキシホスホノ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、マレイン酸及びアクリル酸のホスホン化オリゴマー及びポリマー並びにこれらのコオリゴマー及びコポリマーが挙げられる。他の例としては、ジホスホン酸のような分子あたり2つ以上のホスホン酸基を含む有機ホスホン酸、例えばアルキル基が置換されていても非置換であってもよく、1〜12個の炭素原子を含むアルキルメタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、例えばメチル−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、又はプロピル−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸が挙げられる。また、分子あたり2つ以上のN−アルキレンホスホン酸基を含むアミノ化合物、例えばアルキルアミノ−ジ(アルキレンホスホン酸)(ここで、アルキル基は置換されていても非置換であってもよく、1〜12個の炭素原子を有し、例えばプロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、又は2−ヒドロキシエチルであってよく、アルキレン基は1〜5個の炭素原子を有していてよい)、並びにアミノ−トリ(アルキレンホスホン酸)、例えばニトリロ−トリス−(メチレンホスホン酸)、及びニトリロ−トリス−(プロピレンホスホン酸)もまた好適である。アミノ化合物からの他の好適なアミノ誘導体は、アルキレンジアミン−テトラ(アルキレンホスホン酸)、例えば、エチレンジアミン−テトラ(メチレンホスホン酸)、ジアルキレントリアミン−ペンタ(アルキレンホスホン酸)、例えばジエチレントリアミン−ペンタ(メチレンホスホン酸)などである。
【0125】
[0042]リンを含まない物質としては、シリケート、ボレート、ボロシリケート、メタボレート、モリブデート、ニトロフタレート、ペルマンガネート、マンガネート、バナデート、タングステート、分子あたり1つ以上のカルボン酸基、及び2〜24の炭素鎖長を有する脂肪族及び芳香族カルボン酸及びカルボキシレート、例えば酢酸、ラウリル酸、ステアリン酸、シュウ酸、アゼライン酸、及びテトラデカン二酸、並びに1以上のヒドロキシル基を有するモノカルボン酸であってよいヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、乳酸、マンデル酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、及び3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1以上のヒドロキシル基を有するジカルボン酸、例えば酒石酸、及び1以上のヒドロキシル基を有するトリカルボン酸、例えばクエン酸が挙げられる。
【0126】
[0043]また、リンを含まない物質としては、メタクリル酸、アクリル酸、及び無水マレイン酸又はマレイン酸のポリマー、並びにこれらのコポリマー、例えばアクリレート−アクリル酸コポリマー、オレフィン−無水マレイン酸コポリマー、例えばイソブチレン−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマー、及びビニルアルキルエーテル−マレイン酸コポリマー、例えばポリ(ビニルメチルエーテル−co−マレイン酸)も挙げられる。
【0127】
[0044]リンを含まない酸性物質としては、更に、2以上のヘテロ原子を含むアゾール及びそれらの誘導体、例えば1,2,4−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5−フェニル−ベンゾトリアゾール、5−ニトロ−ベンゾトリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1−アミノ−5−メチル−1,2,3−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−イソプロピル−1,2,4−トリアゾール、ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、イミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、5−アミノ−テトラゾール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、及び(2−ベンゾチアゾリルチオ)コハク酸が挙げられる。
【0128】
[0045]防食粒子を変性するために有用である可能性がある物質としては、アミン及びアルカノールアミンのような塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としてはアルカノールアミンが挙げられ、これらはモノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミンであってよく、これらは主として、エタノールアミン及びそれらのN−アルキル化誘導体、1−アミノ−2−プロパノール及びそれらのN−アルキル化誘導体、2−アミノ−1−プロパノール及びそれらのN−アルキル化誘導体、及び3−アミノ−1−プロパノール及びそれらのN−アルキル化誘導体、或いはこれらの混合物である。好適なモノアルカノールアミンの例としては、2−アミノエタノール(エタノールアミン)、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、2−(ブチルアミノ)エタノール、1−メチルエタノールアミン(イソプロパノールアミン)、1−エチルエタノールアミン、1−(メ)エチルイソプロパノールアミン、n−ブチルエタノールアミン、シクロヘキサノールアミン、シクロヘキシルイソプロパノールアミン、n−ブチルイソプロパノールアミン、1−(2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、及び2−アミノ−1−プロパノールが挙げられる。好適なジアルカノールアミンの例は、ジエタノールアミン、(2,2’−イミノジエタノール)、3−アミノ−1,2,−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、ジイソブタノールアミン(ビス−2−ヒドロキシ−1−ブチル)アミン)、ジシクロヘキサノールアミン、及びジイソプロパノールアミン(ビス−2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミン)である。好適なトリアルカノールアミンの例はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである。また、モルホリン、ピペラジン、及びそれらのN−アルキル誘導体のような環式脂肪族アミン、並びに脂肪族アミンを用いることもできる。上記の任意のリン含有、リン非含有、又はアミン物質の混合物もまた好適である。また、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールのようなアミン官能基を有するアゾール誘導体も含まれる。
【0129】
[0046]他の好適な変性剤としては、当該技術において周知で、一般式:RSi(OR(式中、Rは通常は炭素原子数約1〜20の脂肪族又はアリール有機基、例えばブチル、ヘキシル、フェニルなどであり、Rはまた、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、イソシアネートなどのような官能基の形態で窒素又はイオウのようなヘテロ原子を含んでいてもよく、Rは、通常は炭素原子数1〜約7の低級アルキル、例えばメチル、エチル、又はプロピルなどである)を有する有機官能性シランが挙げられる。ジ及びモノアルコキシシランを用いることもできる。代表例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ(アミノプロピル)トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びトリス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートが挙げられる。
【0130】
[0047]アルミニウムヒドロキシクロリド又はアルミン酸ナトリウムのようなアルミニウム化合物もまた好適な変性剤である。他の価値のある変性剤は、一般式:(RO)PO(式中、R基は、同一であっても異なっていてもよく、通常は1〜20個の炭素原子を有し、窒素、イオウ、又は酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよい)のアルキル又はアリールホスフェートエステルである。R基の2つ又は1つがそれぞれHであるモノ及びジアルキル又はアリールホスフェートエステルもまた好適な変性剤である。
【0131】
[0048]好ましいアニオン成分は、亜リン酸、ハイドロジェンホスエート、ホスフェート、リン酸、トリ及びポリリン酸、ボレート、及び分子あたり1以上の有機ホスホン酸基を含む有機ホスホン酸、例えば2−ヒドロキシホスホノ酢酸、並びにアゾール誘導体、例えば1,2,3−ベンゾトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、及び(2−ベンゾチアゾリルチオ)コハク酸である。上記記載の成分に関しては、遊離酸形態、又は任意の他の部分的に中和若しくは完全に中和されている形態、即ち共役種を、任意の特定の場合において必要に応じて用いることができることが理解される。
【0132】
[0049]本発明はまた、防食粒子を製造する方法にも関する。本発明の防食粒子は、上記で議論した式によって決定される量の、必要な多価カチオン、無機酸化物、及びアニオン成分の好適な源を接触させることによって製造される。
【0133】
[0050]多価カチオンの好適な源は、選択された条件下で無機酸化物及び/又はアニオン成分と反応することができるカチオンの任意の不溶性、部分的に可溶性、又は可溶性の化合物若しくは塩であり、酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、乳酸塩、炭酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
【0134】
[0051]アニオンの好適な源は、選択された条件下で無機酸化物及び/又はカチオン成分と反応することができるアニオンの任意の不溶性、部分的に可溶性、又は可溶性の化合物若しくは塩である。これとしては、リン酸のような遊離酸形態、又はリン酸の場合にはジハイドロジェンホスフェート、ハイドロジェンホスフェート、又はホスフェートのようなその種々の共役種が挙げられる。共役種は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、アルミニウム、及びマグネシウムのもののような一価又は多価カチオン化合物若しくは塩の形態であってよい。
【0135】
[0052]無機酸化物成分は予め形成することができ、或いはケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルキル、例えばテトラエチルオルトシリケート、塩化アルミニウム、アルミニウムヒドロキシクロリド、又はアルミン酸ナトリウムのような無機酸化物への前駆体を用いて、防食粒子の製造中に酸化物又はイオン変性酸化物の形成を起こすことができる。
【0136】
[0053]上記に与える式10において数rが0であるように選択される場合に対応する幾つかの場合においては、アニオンを防食粒子の製造において用いなくてもよい。例えば、カチオン処理無機酸化物の場合においては、これらは必要なカチオンの存在下での酸化物の沈殿又はゲル化のプロセスによって製造することができる。これらはまた、予め形成された酸化物を必要な抑制性カチオンを含む溶液と接触させることによって製造することもできる。一例として、酸化物を、通常は室温及び計測器によって監視されているpHにおいて水中で撹拌することができる。次に、カチオン又は複数のカチオンの源(例えば水酸化カルシウム又は塩基性炭酸亜鉛)を、pHを過度に(例えばシリカに関しては10.5より高く、アルミナに関しては12より高く)上昇させないようにしてゆっくりと加える。pHは、プロトンを除去するのに十分に高いが、無機酸化物が溶解するほどには高くないことが必要である。吸収量は、塩基を加えた後の時間経過に伴うpHの下降を観察することによって追跡することができる。pHがもはや下降しなくなったら、交換が完了している。この場合には、多価カチオンの割合は式8によって与えられる。
【0137】
[0054]式10におけるrが0であり、防食粒子が1種より多い無機酸化物から構成される場合には、必要に応じて予め形成した無機酸化物及びイオン変性無機酸化物を混合することによって製造を行うことができる。また、無機酸化物及びイオン変性酸化物を同時に形成することによって製造を行うこともできる。
【0138】
[0055]式10におけるrが0でなく、防食粒子の製造においてアニオンを用いる場合には、予め形成した物質、例えば難溶性の塩、無機酸化物、及びイオン変性無機酸化物を混合することによって防食粒子を製造することができる。また、必要に応じて、無機酸化物及びイオン変性無機酸化物を、抑制性カチオン及びアニオンの適当な源と混合して、無機酸化物の存在下で難溶性塩の粒子成長及び沈殿を起こすようにすることによって粒子を製造することもできる。この場合においては、多価カチオンの割合は式7、8、及び9によって決定され、無機酸化物に対するアニオンの割合は式11を前提として式10におけるrに割り当てられる値によって決定される。
【0139】
[0056]式10におけるrが0でない場合には、防食粒子は、難溶性抑制性塩を、シリカ、アルミナ、及びアルミノシリケートの場合にはケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルキル、例えばテトラエチルオルトシリケート、塩化アルミニウム、アルミニウムヒドロキシクロリド、又はアルミン酸ナトリウムのような無機酸化物への前駆体と配合して、抑制性カチオン及びアニオンと密接に関連して無機酸化物の沈殿又はゲル化、或いは単純な形成が起こるようにするプロセスによって製造することもできる。ここでも、成分の相対割合は式7〜11の組によって決定される。
【0140】
[0057]同様に、カチオン及びアニオンの源並びに無機酸化物への前駆体の混合物を製造して、難溶性化合物及び酸化物の粒子成長、沈殿、及び/又はゲル化を、同時に、互いに密接に関連して起こすことができる。
【0141】
[0058]多くの場合において、上記に示す反応は、最も好都合には水のような好適な溶媒中で行う。他の場合においては、防食粒子の製造は、乾燥粉末混合、同時空気粉砕、又は同時蒸気粉砕、並びに熱誘導固体状態反応のような技術を用いて、多価カチオン、アニオン、及び無機酸化物の源を混合するか、又は予め形成した固体状態の粒子の成分を混合することによってより好都合になる。
【0142】
[0059]それによって防食粒子を製造する方法、並びに与えられた成分の組に関するカチオン、アニオン、及び無機酸化物成分の源の特定の性質は、製造する粒子のタイプ、及び処理を行うことができる容易性を制御する能力に大きな影響を与える可能性がある。
【0143】
[0060]例えば、カルシウム、ホスフェート、及び予め形成したシリカから構成される防食粒子の製造においては、反応混合物の粘度及び粒子の化学相は、成分を結合させる方法によって定まる。反応を水性相中で行う場合には、与えられた固体含量におけるシリカ成分によって与えられる粘度は、pHによって定まり、一般に酸性又はアルカリ性条件下において最も低い。pHは、部分的にホスフェートの源によって決定し、リン酸を用いる場合にはより酸性、或いはトリナトリウムホスフェートを用いる場合にはよりアルカリ性にすることができる。
【0144】
[0061]同様に、カルシウムイオンの源、例えば水酸化カルシウムを、シリカ及びリン酸のスラリーに、式9における
【0145】
【化45】

【0146】
即ちアニオンと会合するカチオンの全モル数が1:1の割合である、即ちsが2/3であるような量で加えると、ジカルシウムホスフェート相が通常はブルシャイトとして形成される。また、同時にアニオン及びカチオン成分を無機酸化物又はシリカ成分に加えると、pHが約5〜7を超えないならばジカルシウムホスフェート相が形成される。しかしながら、式10におけるrの値を十分に高く選択すると、粒子製造中の温度上昇が起こる可能性があり、ブルシャイトの代わりにモネタイトのような他の相が形成される。
【0147】
[0062]他方において、3級ホスフェート相、例えばトリカルシウムホスフェート又はヒドロキシアパタイトが所望の場合には、これは、反応を行うpHを上昇させるか、カチオンとアニオンとの比を1:1、通常はおそらくは1.5:1より大きく増加させるか、酸成分をカチオン成分に加えるか、或いはアニオン及びカチオン成分を同時に無機酸化物又はシリカ成分に加える(但し、pHを約5〜7より高くする)ことによるか、或いはこれらのアプローチの幾つかの組合せによって行うことができる。
【0148】
[0063]所望の場合には、反応混合物を、通常は95℃以下、例えば約20℃〜95℃の温度に、24時間以下の時間加熱することができる。反応混合物の混合及び均一性は、単純な混合又は高剪断混合又はこれらの技術の組合せのような種々の通常の手段によって達成することができる。種々の反応及びプロセスは、バッチ式又は連続的に行うことができる。
【0149】
[0064]防食粒子の製造は、必要に応じて又は所望に応じて、通常の洗浄、濾過、粉砕、及び乾燥技術によって完了させることができる。例えば、噴霧乾燥、フラッシュ乾燥、湿式粉砕、空気粉砕、及び蒸気粉砕は、全て必要に応じて単独か又は組み合わせて用いることができる技術である。
【0150】
[0065]所望の場合には、酸化物又はイオン変性酸化物を、有機官能性シラン、例えば3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン、又は3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アルミニウム種、例えばアルミニウムヒドロキシクロリド、又はアルミン酸ナトリウム、並びにホスフェートエステル、例えばリン酸オクチルによって、予め形成した酸化物への処理としてか又は無機酸化物への前駆体と共に用いて更に変性することができる。これは、防食性能、及びその中へ防食粒子を導入する媒体との適合性を向上させるのに有益である可能性がある。この手順はまた、特性を向上させ、粒子を製造し用いる容易性に影響を与え、例えば水性又は溶媒ベースの媒体中における粘度を低下させるのにも有益である可能性がある。
【0151】
[0066]変性剤は、上記の製造手順における任意の段階において加えることができるが、通常は粒子の形成の後に加える。用いる場合には、変性剤は、通常は粒子の重量を基準として15重量%以下、しかしながらより好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下の量で加える。
【0152】
[0067]湿式粉砕は水性相中で行うことができるが、非水性相中で行うこともできる。非水性態様に関しては、好適な溶媒は、被覆用途において通常的に用いられる任意の公知の溶媒、例えば、アルコール、エステル、ケトン、グリコールエーテル、芳香族及び脂肪族炭化水素、並びに非プロトン性溶媒、例えばN−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドであってよい。粒子が好適に小さい粒子として、しかしながら上記に記載する態様に包含される状況である粒子の形成及びその相中での成長の結果としてか或いは水性相中でより大きな粒子を粉砕する結果のいずれかとして水性相中に既に存在する場合に関しては、無機酸化物を、従来技術において公知の技術によって上記の任意の種類の溶媒に移動させることができる。例は、the Journal of Colloidal & Interface Science, 197, 360-369, 1988, A. Kasseh及びE. Keh, "Transfers of Colloidal Silica from water into organic solvents of intermediate polarities"、及びthe Journal of Colloidal & Interface Science,208, 162-166, 1998, A. Kasseh及びE. Keh, "Surfactant mediated transfer of Colloidal Silica from water into an immiscible weakly polar solvent"において議論されているか、或いは米国特許2,657,149、2,692,863、2,974,105、5,651,921、6,025,455、6,051,672、6,376,559、及びGB特許988,330(これらの全ての内容は参照として本明細書中に包含する)において記載されているものである。多価カチオンの導入、成分の変性、及び/又は難溶性塩との配合は、溶媒移動の前、又は溶媒移動の後に行うことができる。
【0153】
[0068]本発明の防食粒子の平均粒径は、約50ミクロン未満、約20ミクロン、約10ミクロン、約9ミクロン、約8ミクロン、約7ミクロン、約6ミクロン、約5ミクロン、約4ミクロン、約3ミクロン、約2ミクロン、或いは約1ミクロン未満にすることができる。
【0154】
[0069]顔料は、接着性及び防食特性の向上が求められている、水性、非水性、又は溶媒を含まない、保護被覆、表面被覆、プライマー、接着促進被覆、接着剤、シーラント、薄膜、金属予備処理剤、及び他の表面処理膜、並びに溶液において有用性を有する。ここに記載するように、これらの用途分野の全ては「被覆」という単一の用語によって包含される。
【0155】
[0070]保護被覆及び接着促進被覆並びに層は、防食において用いる任意の公知のタイプの有機及び無機化学物質、例えば油性、無溶媒、及び水性エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、例えばメラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒド、又はベンゾグアナミン樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、塩素化ラバー又は環化ラバー、熱可塑性、熱硬化性、及び自己架橋性タイプを含むアクリル及びスチレン−アクリル化学物質、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ−エステル、放射線硬化性被覆、シリケートベースの被覆、例えば亜鉛リッチのシリケート、アルキルシリケート及び/又はコロイダルシリカに基づくゾル−ゲル被覆、有機官能性シランから誘導される膜、処理剤、及び被覆、並びに酸性又はアルカリ性金属予備処理溶液、例えばヘキサフルオロシリケート、ヘキサフルオロジルコネート、及びヘキサフルオロチタネート化学物質、コロイダルシリカ化学物質、ゾル−ゲル化学物質、シラン化学物質、及びアクリル化学物質に基づくもの、並びにプライマー−予備処理溶液、例えばポリウレタン化学物質、エポキシ化学物質、又は放射線硬化化学物質に基づくものに基づくものであってよい。
【0156】
[0071]本発明の防食粒子は、被覆のための充填材として作用させることができ、適用する組成物を基準として約40重量%以下、乾燥膜重量を基準として約80重量%以下の比較的多い量で含ませることができる。組成物を基準として約1〜10重量%又はそれ以上の範囲のより少ない量も、被覆の要件及び性質によっては好適である。防食粒子は、また、先に検討されている任意の公知の防食技術と組み合わせて用いることもできる。本発明の防食粒子を含む防食組成物及び被覆は、任意の公知の方法、技術、及びかかる組成物及び被覆において通常用いられる材料化学によって配合及び製造することができる。
【実施例】
【0157】
[0072]以下の実施例は特許請求する発明の具体例として与える。しかしながら、本発明は実施例において示される特定の詳細に限定されないことを理解すべきである。
実施例1
[0073]N吸着によって測定して約1.6mL/gの細孔容積を有する多孔質シリカゲル、ミクロ多孔質シリカゲル、及びシリカ1gあたり1.5ミリモルのカルシウム含量を有するカルシウム処理シリカ(ここで用いたシリカゲルもミクロ多孔質であった)を、2:1:1の重量比で物理的に混合することによって防食顔料を調製した。カルシウム処理シリカの製造は、水酸化カルシウムの30重量%水性スラリーをミクロ多孔質シリカの30重量%水性スラリーにゆっくりと加えることを含んでいた。得られた生成物を90℃において4時間熟成し、その後、濾過、洗浄、乾燥し、所望の粒径に粉砕した。多孔質タイプのシリカ、ミクロ多孔質シリカ、及びカルシウム処理シリカは、SYLOID(登録商標)244、SYLOID(登録商標)AL1、及びSHIELDEX(登録商標)AC3(全てW.R. Grace & Co. Conn.から入手できる)として得られる。
【0158】
実施例2
[0074]シリカ1gあたり0.125ミリモルのカルシウム含量に相当する量の水酸化カルシウムの15重量%水性スラリーをゆっくりと加えることによって、メソ多孔性、及びDBPによって測定して約180の吸油量を有する沈降シリカの20重量%水性スラリーを処理した。得られた生成物を90℃において4時間熟成し、その後、濾過、洗浄、乾燥し、所望の粒径に粉砕した。沈降シリカは、PERKASIL(登録商標)SM604(W.R. Grace & Co. Conn.から入手できる)として得られる。
【0159】
実施例3
[0075]シリカ1gあたり1.5ミリモルのカルシウム含量に相当する量の水酸化カルシウムの30重量%水性スラリーをゆっくりと加えることによって、ミクロ多孔質シリカの30重量%水性スラリーを処理した。得られた生成物を90℃において4時間熟成し、その後、濾過、洗浄、乾燥し、所望の粒径に粉砕した。この生成物を、メソ多孔性、及びDBPによって測定して約180の吸油量を有する沈降シリカと、カルシウム処理シリカ1重量部に対して沈降シリカ11重量部の比で物理的に混合した。沈降シリカはPERKASIL(登録商標)SM604として、カルシウム処理シリカはSHELDEX(登録商標)AC3として得られる(いずれもW.R. Grace & Co. Conn.から入手できる)。
【0160】
[0076]クロムを含まない予備処理剤で処理した、Chemetall GmbH, Frankfurtから入手できるTP10475として知られるSendzimir亜鉛メッキ鋼試験パネルへのポリエステルコイル被覆において、実施例1〜3の材料に関する防食試験を行った。実施例の材料を含むポリエステル−メラミンプライマーを、アプリケーターバーによって約5〜7μmの乾燥膜圧が得られるように試験パネルに適用し、214〜226℃のピーク金属温度に硬化させた。続いて、ポリエステル−メラミン上塗り層を約20〜22μmの乾燥膜圧に施し、その後、232〜241℃のピーク金属温度に硬化させた。用いた配合物を下表1に与える。SHIELDEX(登録商標)C303(W.R. Grace & Co. Conn.から入手できる)は、コイル被覆産業において現在用いられている主要なクロメートを含まない防食顔料であり、対照として用いた。
【0161】
【表1−1】

【0162】
上記の配合物において、DBEは二塩基性エステル溶媒であり、DAAはジアセトンアルコールであり、EBPA及びEDBSAはそれぞれ以下に示すエポキシでブロックされたリン酸及びスルホン酸触媒である。
【0163】
【表1−2】

【0164】
【表1−3】

【0165】
【表1−4】

【0166】
[0077]膜の硬化の指標として、1つの組の試験パネル上での溶媒(メチルエチルケトン)に対する抵抗性を用いた。ここでは、約1kgの負荷下でMEK中に浸漬した布帛を用いて、丁度被覆を除去し下層の金属を曝露させるMEKダブルラビングの数を求めた。次に、金属及び切り口まで斜めのスクライブを導入することによって、残りの被覆パネルを耐腐食性及び耐化学薬品性試験のために整えた。また、160インチ・ポンドの負荷下において、Gardener衝撃試験器(Erichsen Test Equipmentから得られる)を用いて、試験パネルの裏面から衝撃損傷の領域を導入した。透明なPVCホイルによってパネルの裏面を保護した後、パネルの幾つかをASTM−B117にしたがう塩噴霧に1000時間かけた。アルカリへの抵抗性を評価するために、試験パネルの更なる組をpH12のアルカリ性浴中に7日間浸漬した。いずれの場合においても、試験の完了後にパネルを取り出し、簡単にすすぎ、乾燥し、30分以内に評価した。
【0167】
[0078]塩噴霧後の評価は、衝撃損傷の領域及びスクライビングした領域において形成した腐食の量を等級付けすることを含んでいた。等級付けは0〜10のスケールで与えた。ここで、0は破損がなかったことを示し、10は完全に破損したことを示す。更に、ナイフ及びセロテープ(登録商標)を用いて軽く付着している塗料を除去することによって、測定したスクライブにおけるスクライブからの接着損失の量(mm)を評価し、切り口における端部変形又は膨れの形成の程度をmmで測定した。アルカリ性溶液への曝露後の試験パネルに対して、破損の程度についての視覚的評価を与えた。ここで等級付けは同様に0〜10のスケールで行った。SHIELDEX(登録商標)C303に対する実施例1〜3の結果を下表2に示す。
【0168】
実施例4:
[0079]対照顔料に対する実施例1〜3についての試験結果を表2に与える。
【0169】
【表2】

【0170】
[0080]本発明の実施例は、対照の顔料よりも改良されたスクライブ接着性、耐アルカリ性、及び高いレベルの硬化を示すことが分かる。
実施例5(比較例)
[0081]リン酸の50%溶液260gを容器に充填した。温度及びpHを制御しながら、水酸化カルシウムの5重量%水性スラリー1963gをゆっくりと加えた。添加中に到達した最高温度は70℃であり、得られた生成物は約6のpHを有していた。得られた生成物を洗浄し、乾燥し、所望の粒径に粉砕した。X線分析によって材料がモネタイトであることが示された。
【0171】
実施例6
[0082]メソ多孔性及びDBPによって測定して約180の吸油量を有する沈降シリカの20重量%水性スラリー475.3gを容器に充填し、リン酸の50%溶液110.33gを加えた。酸を加えることによって、粘度が大きく減少し、したがってより容易な取扱い性が得られた。温度及びpHを制御しながら、水酸化カルシウムの5重量%水性スラリー941.9gをゆっくりと加えた。到達した最高温度は30℃であり、得られた生成物は約7のpHを有していた。得られた生成物を洗浄し、乾燥し、所望の粒径に粉砕した。X線分析によって、ホスフェート相がブルシャイトであることが示された。沈降シリカは、PERKASIL(登録商標)SM604として得られるものであり、W.R. Grace & Co. Conn.から入手できる。
【0172】
実施例7
[0083]メソ多孔性及びDBPによって測定して約180の吸油量を有する沈降シリカの20重量%水性スラリー475.3gを容器に充填し、リン酸の50%溶液110.33gを加えた。酸を加えることによって、粘度が大きく減少し、したがってより容易な取扱い性が得られた。温度及びpHを制御しながら、85:15のカルシウム:マグネシウムのモル比の水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムの5重量%水性スラリー915.42gをゆっくりと加えた。到達した最高温度は30℃であり、得られた生成物は約7のpHを有していた。得られた生成物を洗浄し、乾燥し、所望の粒径に粉砕した。X線分析によって、主ホスフェート相がブルシャイトであることが示された。沈降シリカは、PERKASIL(登録商標)SM604として得られるものであり、W.R. Grace & Co. Conn.から入手できる。
【0173】
実施例8
[0084]リン酸の50%溶液84.44gを容器に充填し、N吸着によって測定して約1.6mL/gの細孔容積を有する75gの多孔質シリカゲルを加えて30%のスラリー濃度を生成させた。酸を用いないので、僅か約10%のスラリー濃度が適当であった。温度及びpHを制御しながら、85:15のカルシウム:マグネシウムのモル比の水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムの5重量%水性スラリー700.58gをゆっくりと加えた。到達した最高温度は30℃であり、得られた生成物は約7のpHを有していた。得られた生成物を洗浄し、乾燥し、所望の粒径に粉砕した。X線分析によって、主ホスフェート相がブルシャイトであることが示された。シリカゲルは、SYLOID(登録商標)244として得られるものであり、W.R. Grace & Co. Conn.から入手できる。
【0174】
実施例9
[0085]95:5のモル比で2−ヒドロキシホスホン酢酸と組み合わせたリン酸の50%溶液57gを容器に充填し、N吸着によって測定して約1.6mL/gの細孔容積を有する48.5gの多孔質シリカゲルを加えて30%のスラリー濃度を生成させた。温度及びpHを制御しながら、85:15のカルシウム:マグネシウムのモル比の水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムの5重量%水性スラリー460.2gをゆっくりと加えた。到達した最高温度は30℃であり、得られた生成物は約7のpHを有していた。得られた生成物を洗浄し、乾燥し、所望の粒径に粉砕した。X線分析によって、主ホスフェート相がブルシャイトであることが示された。シリカゲルは、SYLOID(登録商標)244として得られるものであり、W.R. Grace & Co. Conn.から入手できる。
【0175】
[0086]実施例6〜9の材料について防食試験も行った。この場合においては、試験媒体として水性アクリル分散液を用い、基材として冷間圧延鋼を用いた。実施例の材料を含む被覆をアプリケーターバーによって、約40μmの乾燥膜圧が得られるように試験パネル(Q-Panel. Co.から入手できるQ-Panel S-412)に施した。乾燥は室温において数日間行った。実施例6〜9の材料は亜鉛を含んでおらず、水性アクリル被覆において通常用いられている代表的な商業的に入手できる亜鉛ベースの防食顔料であるHeucophos(登録商標)ZPO(Heubach GmbHから入手できる)に対して比較した。また、商業的に入手できる亜鉛を含まない防食顔料であるSHIELDEX(登録商標)AC5(W.R. Grace & Co. Conn.から入手できる)及びHeucophos(登録商標)CHP(Heubach GmbHから入手できる)も対照試料として含ませた。また、実施例5を、実施例6〜9と同様であるが無機酸化物を用いない顔料を示す対照例として用いた。用いた配合物を下表3に与える。
【0176】
【表3】

【0177】
[0087]被覆パネルを金属までスクライブし、塩噴霧(ASTM−B117にしたがう)に240時間かけた。続いて、パネルを簡単にすすぎ、乾燥し、塩噴霧室から取り出して30分以内に評価した。
【0178】
[0088]塩噴霧後の評価は、スクライビングした領域において形成された腐食の量、膨れの量、及び試験パネルの表面全体の上に形成された膜通過腐食の量を等級付けすることを含んでいた。等級付けは0〜10のスケールで与えた。ここで、0は破損がなかったことを示し、10は完全に破損したことを示す。更に、ナイフ及びセロテープ(登録商標)を用いて軽く付着している塗料を除去することによって、測定したスクライブにおけるスクライブからの接着損失の量(mm)を評価した。また、クロスハッチ試験を用いてパネルの表面全体の上での接着損失の程度も評価し、クロスハッチ後にセロテープ(登録商標)を用いて軽く接着している塗料を除去した。等級付けは0〜5のスケールで与え、5は完全な接着損失を示す。実施例5、SHIELDEX(登録商標)AC5、Heucophos(登録商標)ZPO、及びHeucophos(登録商標)CHPに対する実施例6〜9に関する結果を下表4に示す。
【0179】
実施例10
[0089]対照試料と比較した実施例6〜9の試験結果を下表4に与える。
【0180】
【表4】

【0181】
[0090]表4における結果は、本発明の実施例が、特にスクライブ発錆性、スクライブ接着性、クロスハッチ接着性、膨れ抵抗、及び膜通過腐食抵抗性に関して、商業的に入手できる重金属及び亜鉛を含まない対照顔料と比較して優れた防食特性を与えることを示す。亜鉛ベースの対照試料と比較すると、本発明の実施例は、ここでもより少ないスクライブ発錆性及び接着損失、並びにより良好なクロスハッチ接着性を示し、膨れ及び膜通過腐食に対する抵抗性においては同等か又は極めて近似して機能した。
【0182】
[0091]本発明を限られた数の態様によって説明したが、これらの特定の態様は本明細書において他に記載され特許請求されている発明の範囲を制限することを意図するものではない。更なる修正及び変更が可能であることは、本明細書中の代表的な態様及び記載を検討することにより当業者に明らかである。実施例及び明細書の残りの部分における全ての部及びパーセントは、他に特定しない限り重量基準である。更に、明細書又は特許請求の範囲において示す全ての数値範囲、例えば特性の特定の組、測定値の単位、条件、物理的状態、又は割合を示すものは、明らかに、言及するか又は他の方法で示すかかる範囲内に含まれる全ての数、並びにそのように示されている任意の範囲内の数の任意の部分集合を文字通り含むものであると意図される。例えば、下限R及び上限Rを有する数値範囲が開示されている場合には常に、この範囲内に含まれる任意の数Rが具体的に開示されている。特に、この範囲内の次式の数R:R=R+k(R−R)(式中、kは1%の増分で1%〜100%の範囲の変数であり、例えばkは、1%、2%、3%、4%、5%、・・・50%、51%、52%、・・・95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である)が具体的に開示されている。更に、上記で算出されるRの任意の二つの値によって表される任意の数値範囲も、具体的に開示されている。本明細書において示し記載したものに加えて、本発明の任意の修正は、上記の記載から当業者に明らかとなろう。かかる修正は、特許請求の範囲内に包含されると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)流体;及び
(b)平均細孔径が少なくとも約2nmであるようなメソ多孔性及び/又はマクロ多孔性、及び少なくとも約0.2mL/gの平均細孔容積を有する無機酸化物を含む防食粒子;
を含む防食粒子の分散液。
【請求項2】
平均細孔径が少なくとも約3nmである、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
平均細孔径が約4nm〜約50nmの間である、請求項1に記載の分散液。
【請求項4】
防食粒子が、カルシウム、亜鉛、マンガン、コバルト、鉛、ストロンチウム、リチウム、バリウム、マグネシウム、セリウム、アルミニウム、又はこれらの混合物などの多価金属イオンを含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項5】
無機酸化物が、シリカ、アルミナ、チタニア、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項6】
無機酸化物粒子が、沈降シリカ、又はその少なくとも1つの成分が沈降シリカである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項7】
無機酸化物粒子が、沈降シリカ、又はその少なくとも10重量%が沈降シリカである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項8】
無機酸化物粒子が、シリカゲル、又はその少なくとも1つの成分がシリカゲルである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項9】
無機酸化物粒子が、シリカゲル、又はその少なくとも10重量%がシリカゲルである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項10】
流体が、水、錯化剤、バインダー、膜形成剤、殺菌剤、又はポリマーを含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項11】
粒子が約10μm未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の分散液。
【請求項12】
粒子が約1μm未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の分散液。
【請求項13】
平均細孔容積が約0.2mL/g〜約3mL/gである、請求項11に記載の分散液。
【請求項14】
平均細孔容積が約0.4mL/g〜約1.2mL/gである、請求項11に記載の分散液。
【請求項15】
粒子が請求項1に記載の粒子の分散液に基づくものである変性された粒子の分散液。
【請求項16】
請求項1に記載の分散液を含む被覆。
【請求項17】
(a)流体;及び
(b)平均細孔径が少なくとも約2nmであるようなメソ多孔性及び/又はマクロ多孔性、及び少なくとも約0.2mL/gの平均細孔容積を有し、多価金属カチオンによって変性されており、場合によっては弱酸の無機又は有機アニオン並びにそれらの共役種を含み、それぞれ記号
【化1】

【化2】

及び
【化3】

によって表されるi番目のカチオン、アニオン、又は酸化物のモル数;用いられる全てのカチオン、アニオン、及び酸化物全体の合計によって与えられるそれぞれの成分の合計モル数(ここで、上線は1より多いカチオン、アニオン、又は酸化物を顔料組成物中に含ませることができることを示す)
【化4】

(式中、
【化5】

【化6】

及び
【化7】

はそれぞれカチオン、アニオン、及び酸化物の合計モル数である);
【化8】

及び
【化9】

即ち、それぞれアニオン及び酸化物と会合しているカチオンの合計モル数;カチオン、アニオン、及び酸化物の合計数のフラクションとしてのi番目のカチオン、アニオン、及び酸化物の割合c、a、及びo
【化10】

以下の式の組によって決定される生成物を構成する多価金属カチオン
【化11】

無機酸化物
【化12】

及びアニオン
【化13】

の合計数(モルで表す)(ここで、記号s及びnは酸化物1gあたりの表面積、及び酸化物1nmあたりの表面ヒドロキシル基の数を指し、1種類より多い酸化物が含まれる場合には平均値として求められる):
【化14】

ここで、
【化15】

及び
【化16】

であり、ここで、記号b及びcを用いてそれぞれの式における種々の項を表し、また次の関係式によって酸化物に対するアニオンの所望の比rを表し;
【化17】

また、基礎として次の制約を用い
【化18】

ここで記号fはカチオンによる処理に関与する表面ヒドロキシル基の理論的割合を与え、記号sはカチオンとアニオンとの間の化学量論比を決定し、記号
【化19】

及び
【化20】

は、組成物を構成するカチオン及びアニオンの平均価数を表し、それぞれの場合において下式によって決定される:
【化21】

(式中、z及びuは、i番目のカチオン又はアニオンの価数及びカチオン又はアニオンの合計数のフラクションとしての割合、即ちc及びaである)
、M、及びMは、カチオン、アニオン、及び酸化物の分子量であり、又は必要に応じて平均値を表し、Nはアボガドロ数である;
の観点から定義される防食無機酸化物粒子;
を含む防食粒子の分散液。
【請求項18】
平均細孔径が少なくとも約2nmである、請求項17に記載の分散液。
【請求項19】
平均細孔径が少なくとも約3nmである、請求項17に記載の分散液。
【請求項20】
平均細孔径が約4nm〜約50nmの間である、請求項17に記載の分散液。
【請求項21】
多価金属イオンが、カルシウム、亜鉛、マンガン、コバルト、鉛、ストロンチウム、リチウム、バリウム、マグネシウム、セリウム、アルミニウム、又はこれらの混合物を含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項22】
無機酸化物が、シリカ、アルミナ、チタン、又はこれらの混合物を含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項23】
無機酸化物粒子が、沈降シリカ、又はその少なくとも1つの成分が沈降シリカである無機粒子の混合物を含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項24】
無機酸化物粒子が、沈降シリカ、又はその少なくとも10重量%が沈降シリカである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項25】
無機酸化物粒子が、シリカゲル、又はその少なくとも1つの成分がシリカゲルである無機粒子の混合物を含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項26】
無機酸化物粒子が、シリカゲル、又はその少なくとも10重量%がシリカゲルである異なる無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項27】
粒子が約10μm未満の平均粒径を有する、請求項17に記載の分散液。
【請求項28】
粒子が約1μm未満の平均粒径を有する、請求項17に記載の分散液。
【請求項29】
アニオン性成分が、ホスフェート、ハイドロジェンホスフェート、ホスファイト、ポリホスフェート、有機ホスホネート、ボレート、カルボキシレート、ヒドロキシカルボキシレート、及びアゾール化合物から誘導される、請求項17に記載の分散液。
【請求項30】
無機酸化物又は多価カチオンで処理した無機酸化物成分が防食粒子の少なくとも5重量%の量で存在する、請求項17に記載の分散液。
【請求項31】
流体が、水、錯化剤、バインダー、膜形成剤、殺菌剤、又はポリマーを含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項32】
平均細孔容積が約0.2mL/g〜約3mL/gである、請求項17に記載の分散液。
【請求項33】
平均細孔容積が約0.4mL/g〜約1.2mL/gである、請求項17に記載の分散液。
【請求項34】
粒子が請求項17に記載の粒子の分散液に基づくものである変性された粒子の分散液。
【請求項35】
請求項17に記載の分散液を含む被覆。
【請求項36】
(a)平均細孔径が少なくとも約2nmであるようなメソ多孔性及び/又はマクロ多孔性、並びに少なくとも約0.2mL/gの平均細孔容積を有する無機酸化物を含む防食粒子;
を含む防食粒子の粉末。
【請求項37】
平均細孔径が少なくとも約3nmである、請求項36に記載の粉末。
【請求項38】
平均細孔径が約4nm〜約50nmの間である、請求項36に記載の粉末。
【請求項39】
防食粒子が、カルシウム、亜鉛、マンガン、コバルト、鉛、ストロンチウム、リチウム、バリウム、マグネシウム、セリウム、アルミニウム、又はこれらの混合物などの多価金属イオンを含む、請求項36に記載の粉末。
【請求項40】
無機酸化物が、シリカ、アルミナ、チタニア、又はこれらの混合物を含む、請求項36に記載の粉末。
【請求項41】
無機酸化物粒子が、沈降シリカ、又はその少なくとも1つの成分が沈降シリカである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項36に記載の粉末。
【請求項42】
無機酸化物粒子が、沈降シリカ、又はその少なくとも10重量%が沈降シリカである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項36に記載の粉末。
【請求項43】
無機酸化物粒子が、シリカゲル、又はその少なくとも1つの成分がシリカゲルである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項36に記載の粉末。
【請求項44】
無機酸化物粒子が、シリカゲル、又はその少なくとも10重量%がシリカゲルである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項36に記載の粉末。
【請求項45】
粒子が約10μm未満の平均粒径を有する、請求項36に記載の粉末。
【請求項46】
平均細孔容積が約0.2mL/g〜約3mL/gである、請求項36に記載の粉末。
【請求項47】
平均細孔容積が約0.4mL/g〜1.2mL/gである、請求項36に記載の粉末。
【請求項48】
粉末が請求項36に記載の粉末に基づくものである変性粉末。
【請求項49】
請求項36に記載の粉末を含む被覆。
【請求項50】
平均細孔径が少なくとも約2nmであるようなメソ多孔性及び/又はマクロ多孔性、及び少なくとも約0.2mL/gの平均細孔容積を有し、多価金属カチオンによって変性されており、場合によっては弱酸の無機又は有機アニオン並びにそれらの共役種を含み、それぞれ記号
【化22】

【化23】

及び
【化24】

によって表されるi番目のカチオン、アニオン、又は酸化物のモル数;用いられる全てのカチオン、アニオン、及び酸化物全体の合計によって与えられるそれぞれの成分の合計モル数(ここで、上線は1より多いカチオン、アニオン、又は酸化物を顔料組成物中に含ませることができることを示す)
【化25】

(式中、
【化26】

【化27】

及び
【化28】

はそれぞれカチオン、アニオン、及び酸化物の合計モル数である);
【化29】

及び
【化30】

即ち、それぞれアニオン及び酸化物と会合しているカチオンの合計モル数;カチオン、アニオン、及び酸化物の合計数のフラクションとしてのi番目のカチオン、アニオン、及び酸化物の割合:c、a、及びo
【化31】

以下の式の組によって決定される生成物を構成する多価金属カチオン
【化32】

無機酸化物
【化33】

及びアニオン
【化34】

の合計数(モルで表す)(ここで、記号s及びnは酸化物1gあたりの表面積、及び酸化物1nmあたりの表面ヒドロキシル基の数を指し、1種類より多い酸化物が含まれる場合には平均値として求められる):
【化35】

ここで、
【化36】

及び
【化37】

であり、ここで、記号b及びcを用いてそれぞれの式における種々の項を表し、また次の関係式によって酸化物に対するアニオンの所望の比rを表し;
【化38】

また、基礎として次の制約を用い
【化39】

ここで記号fはカチオンによる処理に関与する表面ヒドロキシル基の理論的割合を与え、記号sはカチオンとアニオンとの間の化学量論比を決定し、記号
【化40】

及び
【化41】

は、組成物を構成するカチオン及びアニオンの平均価数を表し、それぞれの場合において下式によって決定される:
【化42】

(式中、z及びuは、i番目のカチオン又はアニオンの価数、及びカチオン又はアニオンの合計数のフラクションとしての割合、即ちc及びaである)
、M、及びMは、カチオン、アニオン、及び酸化物の分子量であり、又は必要に応じて平均値を表し、Nはアボガドロ数である;
の観点から定義される防食無機酸化物粒子;
を含む防食粒子の粉末。
【請求項51】
平均細孔径が少なくとも約2nmである、請求項50に記載の粉末。
【請求項52】
平均細孔径が少なくとも約3nmである、請求項50に記載の粉末。
【請求項53】
平均細孔径が約4nm〜約50nmの間である、請求項50に記載の粉末。
【請求項54】
多価金属イオンが、カルシウム、亜鉛、マンガン、コバルト、鉛、ストロンチウム、リチウム、バリウム、マグネシウム、セリウム、アルミニウム、又はこれらの混合物を含む、請求項50に記載の粉末。
【請求項55】
無機酸化物が、シリカ、アルミナ、チタン、又はこれらの混合物を含む、請求項50に記載の粉末。
【請求項56】
無機酸化物粒子が、沈降シリカ、又はその少なくとも1つの成分が沈降シリカである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項50に記載の粉末。
【請求項57】
無機酸化物粒子が、沈降シリカ、又はその少なくとも10重量%が沈降シリカである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項50に記載の粉末。
【請求項58】
無機酸化物粒子が、シリカゲル、又はその少なくとも1つの成分がシリカゲルである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項50に記載の粉末。
【請求項59】
無機酸化物粒子が、シリカゲル、又はその少なくとも10重量%がシリカゲルである無機酸化物粒子の混合物を含む、請求項50に記載の粉末。
【請求項60】
粒子が約10μm未満の平均粒径を有する、請求項50に記載の粉末。
【請求項61】
アニオン性成分が、ホスフェート、ハイドロジェンホスフェート、ホスファイト、ポリホスフェート、有機ホスホネート、ボレート、カルボキシレート、ヒドロキシカルボキシレート、及びアゾール化合物から誘導される、請求項50に記載の粉末。
【請求項62】
無機酸化物又は多価カチオンで処理した無機酸化物成分が防食粒子の少なくとも5重量%の量で存在する、請求項50に記載の粉末。
【請求項63】
平均細孔容積が約0.2mL/g〜約3mL/gである、請求項50に記載の粉末。
【請求項64】
平均細孔容積が約0.4mL/g〜約1.2mL/gである、請求項50に記載の粉末。
【請求項65】
粉末が請求項50に記載の粉末に基づくものである変性粉末。
【請求項66】
請求項50に記載の粉末を含む被覆。
【請求項67】
無機酸化物成分を加える前にアニオン成分を反応混合物に加える、請求項1、17、36、又は50のいずれかに記載の防食粒子及び防食粒子の分散液を製造する方法。
【請求項68】
無機酸化物成分を加えるのと同時にアニオン成分を反応混合物に加える、請求項1、17、36、又は50のいずれかに記載の防食粒子及び防食粒子の分散液を製造する方法。
【請求項69】
予め形成した無機酸化物又はイオン変性した酸化物を用いる、請求項1、17、36、又は50のいずれかに記載の防食粒子及び防食粒子の分散液を製造する方法。
【請求項70】
無機酸化物への前駆体を用いる、請求項1、17、36、又は50のいずれかに記載の防食粒子及び防食粒子の分散液を製造する方法。
【請求項71】
予め形成したアニオン成分を用いる、請求項1、17、36、又は50のいずれかに記載の防食粒子及び防食粒子の分散液を製造する方法。
【請求項72】
アニオン成分への前駆体を用いる、請求項1、17、36、又は50のいずれかに記載の防食粒子及び防食粒子の分散液を製造する方法。
【請求項73】
複数の成分を混合する、請求項1、17、36、又は50のいずれかに記載の防食粒子及び防食粒子の分散液を製造する方法。

【公表番号】特表2012−511090(P2012−511090A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539945(P2011−539945)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008762
【国際公開番号】WO2010/066403
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(500445446)グレース・ゲーエムベーハー・ウント・コムパニー・カーゲー (12)
【Fターム(参考)】