防食被覆材とコンクリート部材およびそれらの製造方法
【課題】コンクリート部材の表面を被覆する面部とコンクリート部材内に埋設されるアンカー部の双方が溶着された構成の防食被覆材と、この防食被覆材を射出成形の場合に比して格段に安価に製造することのできる防食被覆材の製造方法、さらにはコンクリート部材とその製造方法を提供すること。
【解決手段】防食被覆材10は、熱可塑性樹脂からなる面部S2と、面部S2と溶着される底部S1c1、および、該底部S1c1の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部S1c2であって双方の突部S1c2,S1c2間の幅が徐々に広がっている突部S1c2、から構成され、底部S1c1および突部S1c2,S1c2が熱可塑性樹脂からなるアンカー部S1cと、からなり、コンクリート部材の内部にアンカー部S1cが埋設され、該コンクリート部材の表面を被覆してその防食に供される。
【解決手段】防食被覆材10は、熱可塑性樹脂からなる面部S2と、面部S2と溶着される底部S1c1、および、該底部S1c1の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部S1c2であって双方の突部S1c2,S1c2間の幅が徐々に広がっている突部S1c2、から構成され、底部S1c1および突部S1c2,S1c2が熱可塑性樹脂からなるアンカー部S1cと、からなり、コンクリート部材の内部にアンカー部S1cが埋設され、該コンクリート部材の表面を被覆してその防食に供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種コンクリート部材の表面に設けられてコンクリート部材の劣化防止に供される防食被覆材とその製造方法、および防食被覆材で被覆されたコンクリート部材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば下水道施設等を構成するコンクリート構造物である、シールドトンネルや沈砂池、マンホールや汚泥貯留槽などが下水道施設等から生成される硫化水素などによって早期に劣化するのを防止するために、コンクリート部材の表面を樹脂製(プラスチック製)の防食材で被覆してその機能維持を図り、耐久性を向上させることがおこなわれている。
【0003】
上記樹脂製の防食材は、硫化水素のみならず、各種の酸やアルカリによるコンクリート部材の劣化や、流水によるキャビテーションや流水中の砂による浸食からコンクリート部材を防護してその耐久性の向上に供されることから、耐薬品性や物理的衝撃に強い樹脂製の防食被覆材が適用されている。
【0004】
ところで、コンクリート部材の表面に防食被覆材を設けるに当たり、単にコンクリート部材表面に相補的な平面状もしくは湾曲状の防食被覆材を接着させるのみではその剥がれや脱落が危惧されることから、平面状もしくは湾曲状の樹脂製の板材の裏面に逆テーパー状で樹脂製のアンカーが設けられたセグメント用樹脂部材と、このセグメント用樹脂部材を備えたセグメントの製造方法が特許文献1に開示されている。
【0005】
この樹脂部材は、セグメントの内面を覆うとともに円周方向に沿って湾曲した湾曲樹脂部材と、この湾曲樹脂部材の外面側においてシールドトンネルの軸方向に沿って連続的に突出する複数個のリブ部材が射出成形によって一体成形され、射出成形されたリブ部材をカッターによって逆テーパー状に切削して製造されるものである。
【0006】
逆テーパー状のアンカーが湾曲部材表面に設けられることから、成形型の型開きや成形品の脱型を可能とする必要があることに鑑みて、まず、成形型内で射出成形にて湾曲部材とリブ部材を一体に成形した後にNCマシンを使用してリブ部材を逆テーパー状に切削加工することとしている。
【0007】
この製造方法では、射出成形用の大掛かりな、しかも型閉め姿勢において高い気密性や液密性が要求される成形型を要し、さらにこの射出成形のための高圧高速射出設備を要することから製造コストが高価なものとなってしまう。
【0008】
したがって、コンクリート部材の表面を被覆する面部とこの面部に取り付けられたアンカー部とからなる防食被覆材に関し、射出成形ではない製造方法で製造され、面部とアンカー部が溶着された構成の防食被覆材と、この防食被覆材を射出成形の場合に比して格段に安価に製造することのできる防食被覆材の製造方法の開発が当該技術分野で切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−220994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、射出成形ではない製造方法で製造され、面部とアンカー部が溶着された構成の防食被覆材と、この防食被覆材を射出成形の場合に比して格段に安価に製造することのできる防食被覆材の製造方法と、この防食被覆材にてその表面が被覆されたコンクリート部材とこのコンクリート部材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による防食被覆材は、熱可塑性樹脂からなる面部と、前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成され、底部および突部が熱可塑性樹脂からなるアンカー部と、からなり、コンクリート部材の内部にアンカー部が埋設され、該コンクリート部材の表面を被覆してその防食に供されるものである。
【0012】
本発明の防食被覆材は、防食対象となるコンクリート部材の表面を被覆する面部と、この面部に溶着されてコンクリート部材内に埋設されるアンカー部とから形成されたものであり、このアンカー部は、面部と溶着される底部と、この底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部と、から構成されるものであり、面部同様に熱可塑性樹脂からなるものである。
【0013】
すなわち、面部とアンカー部は射出成形にて一体とされるものではなく、双方が溶着されて一体とされたものであり、その製造コストは射出成形による場合に比して格段に廉価となる。
【0014】
アンカー部を縦断面で切断した際の形状としては、コの字型や、面部から突出する方向(外側)に向かってコの字が開いた型(U型もしくは略U型)など挙げることができ、アンカー部の面部に溶着される箇所は面部との溶着性を保証するべく、面部と相補的な直線領域もしくは湾曲領域を備えているのが好ましい。
【0015】
また、面部とアンカー部はともに樹脂の中でも熱可塑性樹脂から形成されており、高温雰囲気の型内で双方が容易にキャビティ形状に応じた形状に軟化もしくは溶融され、双方の一部同士が溶着されて一体化され、クーリングされて所望形状の防食被覆材をなすものであり、豊富な形状バリエーションの面部およびアンカー部が高い接着強度の溶着部で一体化された防食被覆材となる。
【0016】
熱可塑性樹脂の「軟化もしくは溶融」とは、熱可塑性樹脂が非結晶性プラスチックからなる場合は、そのガラス転移点Tgを越えた状態に対して「軟化」が適用され、熱可塑性樹脂が結晶性プラスチックの場合はその融点Tmを超えた状態に対して「溶融」が適用されるものである。
【0017】
結晶化度が極めて低いか、結晶化状態になり得ない非結晶性プラスチックとしては、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ABS樹脂、熱可塑性エポキシなどを挙げることができる。一方、分子鎖が規則正しく配列された結晶領域の量の比率が高いもの、すなわち結晶化度の高い結晶性プラスチックとしては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(PA:ナイロン6、ナイロン66など)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを挙げることができる。特に、真空成形性が良好で耐薬品性等の防食性に優れている、アクリル変性高耐衝撃性塩化ビニル樹脂製プレートが好ましく、当該プレートとして積水化学工業株式会社製の「KYDEX(カイデックス(登録商標))プレート」を挙げることができる。
【0018】
既述するように、面部の形状は防食対象のコンクリート部材の表面形状に応じた任意の形状であるが、たとえば二次元的な平面、傾斜した2以上の平面からなる三次元的な平面、一つの曲率を有する湾曲面、2以上の曲率からなる湾曲面、平面と湾曲面からなる三次元形状などを挙げることができる。
【0019】
本発明はコンクリート部材にも及ぶものであり、このコンクリート部材は、防食被覆材を構成するアンカー部がその内部に埋設され、面部がその表面を被覆するものである。
【0020】
コンクリート部材内に上記する各アンカー部を構成する突部が、テーパー状に立ち上がり、かつ突部間の幅が徐々に広がっている形態であることから、間隔を置いてコンクリート部材内に埋設されている2つのアンカー部双方の突部で囲まれたコンクリート領域は、その幅が徐々に狭まるものとなり、このコンクリート領域が当該隣接するアンカー部双方の突部によってアンカー効果(もしくは抜け防止効果)を奏することになる。
【0021】
本発明の防食被覆材によって被覆されたコンクリート部材としては、シールドトンネルを構成するコンクリート製セグメントや、沈砂池やマンホール、汚泥貯留槽などを構成するコンクリート製の床や壁、柱などを挙げることができる。
【0022】
また、本発明は防食被覆材の製造方法にも及ぶものであり、この製造方法の一実施の形態は、熱可塑性樹脂からなる第1、第2のシートのそれぞれの両端を一対のクランプで把持し、対をなす第1、第2の金型が第1、第2のシートを挟む位置に位置決めされる第1のステップ、第1の金型は真空引き用孔を具備し、かつシートに対向するキャビティ面が凹凸状を呈しており、第2の金型も真空引き用孔を具備しており、双方の金型を高温雰囲気として第1、第2のシートを軟化もしくは溶融させ、前記真空引き孔から真空吸引し、中空針を第1、第2の金型のいずれか一方を貫通させ、さらに第1、第2のシートのいずれか一方を貫通させて第1、第2のシートの間に臨ませて圧力流体を提供することにより、第1のシートを凹凸状に加工してその凹部を第2のシートに溶着させ、その凸部が第2のシートから突出した中間体を製造する第2のステップ、連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第3のステップ、からなるものである。
【0023】
本発明の製造方法は、二枚のシートを同時成形する熱成形法(熱可塑性樹脂シートを加熱し、軟化もしくは溶融させて双方のシートを対応する金型に密着させて成形品を得る方法)である、いわゆるツインコンポジット成形法を適用したものである(ツインコンポジットは登録商標)。
【0024】
第1、第2のステップでは上記ツインコンポジット成形法を適用し、一方の熱可塑性樹脂シート(第2のシート)からなる面部の表面に、凹部と凸部が連続した他方の熱可塑性樹脂シート(第1のシート)のうちの当該凹部が熱溶着してなる中間体が製造される。なお、面部を形成する第2のシートと第1のシートの間に凸部の間には中空空間が形成される。この凸部にある中空空間は、第1、第2の金型それぞれの真空引き用孔からの真空吸引によって第1のシートを凹凸状に加工するとともに第2のシートをたとえば平面状に加工し、さらに、中空針をいずれか一方の金型およびいずれか一方のシートを貫通させて第1、第2のシート間に臨ませ、ここに圧力流体(圧力エア等)を提供することで第1のシートの凸部と第2のシートの間に形成されるものである。
【0025】
この中間体においては、未だ底部とこの底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部とからなるアンカー部は形成されていない。
【0026】
この中間体を金型から脱型し、間隔を置いて連続する複数の凸部をそれらの途中位置でたとえばNC切断機で切断することにより、凸部(の中空空間)が外側に開放されて、底部とこの底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部とからなるアンカー部が形成される(第3のステップ)。
【0027】
本発明の製造方法によれば、いわゆるツインコンポジット成形法を適用することにより、高い気密性もしくは液密性を要する成形型や高圧かつ高速の射出設備を要してその設備コストが極めて高価な射出成形に比して製造コストを格段に廉価とできる。すなわち、ツインコンポジット成形法で適用される第1、第2の金型は、たとえば金属板を切削して製作することができ、型の大型化に応じてそのコストメリットは一層顕著となる。なお、射出成形以外の代表的な成形法の一つである押し出し成形では、たとえば1.2m程度×3m程度の大型の板からなる面部を有する防食被覆材を製造することは極めて困難であり、幅の小さな部材をジョイントで組み付けて所望する大型寸法の面部を形成することになり、加工手間がかかるものである。
【0028】
また、NC切断機による凸部の切断の際には、必要となる孔開け加工や面部外周の精密切断加工などもおこなうことで、精緻に所望する平面輪郭の面部を有する防食被覆材を製造することができる。
【0029】
また、本発明による防食被覆材の製造方法の他の実施の形態は、熱可塑性樹脂からなり、凹凸状をなす第1のシートを真空成形にて用意し、かつ、熱可塑性樹脂からなる第2のシートを用意する第1のステップ、対をなす第1、第2の金型のうち、第1の金型はそのシートに対向するキャビティ面が凹凸状を呈しており、第1のシートと第2のシートを積層して積層体を形成し、双方の金型を高温雰囲気として第1、第2のシートを軟化もしくは溶融させ、第1のシートの凸部が第1の金型の凹部に遊嵌するようにして該積層体を第1、第2の金型のキャビティ内で加圧することにより、第1のシートの凹部を第2のシートに溶着させ、その凸部が第2のシートから突出した中間体を製造する第2のステップ、連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第3のステップ、からなるものである。
【0030】
本実施の形態は、真空成形法を適用して第1のシートを予め凹凸状に成形しておき、別途の金型内で第1、第2のシート同士を溶着して中間体を製造するものである。この方法によっても、比較例安価な製造コストにて防食被覆材を製造することができる。
【0031】
また、本発明による防食被覆材の製造方法の他の実施の形態は、凹凸状をなすキャビティ面と平面状のキャビティ面を有する金型内に熱可塑性樹脂を押し出してパリソンを形成し、パリソン内に圧力流体を提供して膨らまし、パリソンをキャビティ面に押し付け、第1、第2の金型を型閉めして加圧することにより、連続する積層姿勢のシートであって、平面状のシート部分に凹凸状のシート部分の凹部が溶着し、凸部が平面状のシート部分から突出した中間体を製造する第1のステップ、連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第2のステップ、からなるものである。
【0032】
本実施の形態は、ブロー成形を適用して連続するシートを膨らませながら凹凸状のシート部分と平面状のシート部分を成形してこれらの積層体を形成し、さらに双方を溶着して中間体を製造するものである。この方法によっても、比較例安価な製造コストにて防食被覆材を製造することができる。
【0033】
さらに本発明によるコンクリート部材の製造方法は、前記製造方法で製造された防食被覆材を型枠とともにセットし、型枠内にコンクリートを充填し、脱型することにより、その内部に防食被覆材のアンカー部が埋設され、その表面に防食被覆材の面部が被覆してなるコンクリート部材を製造するものである。
【0034】
たとえばコンクリート製セグメントを製造する場合は、防食被覆材をセグメント用型枠内へ配設しておき、型枠内に配筋を施してコンクリートを充填し、それが硬化することで、防食被覆材のアンカー部が内部に埋設され、防食被覆材の面部にて表面が防護されたセグメントを製造することができる。
【0035】
なお、セグメントのように湾曲面を有するコンクリート部材に対しては、防食被覆材を構成する面部がシート状の熱可塑性樹脂から形成されていることから、容易に変形して所望する湾曲形状をなすことができる。
【発明の効果】
【0036】
以上の説明から理解できるように、本発明の防食被覆材とコンクリート部材およびそれらの製造方法によれば、防食被覆材を構成する面部とアンカー部が射出成形によることなく、双方が安価な金型内で熱成形され、溶着されて一体化されていることから、防食被覆材やコンクリート部材の製造コストを射出成形による従来製法の場合に比して格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の防食被覆材の製造方法の一実施の形態の第1のステップを説明した模式図である。
【図2】図1に次いで、第2のステップを説明した模式図である。
【図3】図2に次いで、さらに第2のステップを説明した模式図である。
【図4】(a)は第2のステップで製造された中間体の縦断面図であり、(b)は(a)のb矢視図(平面図)である。
【図5】(a)は図3,4に次いで、第3のステップを説明するとともに製造された防食被覆材の一実施の形態を示す模式図であり、(b)は(a)のb矢視図(平面図)である。
【図6】(a)、(b)はともに、防食被覆材の他の実施の形態を示す模式図である。
【図7】(a)、(b)は順に、防食被覆材の製造方法の他の実施の形態の第1、第2のステップを説明した模式図である。
【図8】(a)、(b)は順に、防食被覆材の製造方法のさらに他の実施の形態の第1、第2のステップを説明した模式図である。
【図9】(a)はコンクリート部材の製造方法の一実施の形態を示す説明図であり、(b)は(a)の製造方法で製造されたコンクリート部材の一実施の形態を示す縦断面図である。
【図10】図9のX部を拡大した図であって、隣接するアンカー部それぞれの突部によって囲まれるコンクリート領域でアンカー効果が発揮されることを説明した模式図である。
【図11】本発明のコンクリート部材の他の実施の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の防食被覆材とコンクリート部材やそれらの製造方法の実施の形態を説明する。
【0039】
(製造方法の実施の形態1)
図1〜図5は順に、本発明の防食被覆材の製造方法の実施の形態1を説明したフロー図となっている。具体的には、図1は本発明の防食被覆材の製造方法の第1のステップを説明した模式図であり、図2,3は順に第2のステップを説明した模式図であり、図4は第2のステップで製造された中間体を説明する図であり、図5は第3のステップを説明するとともに製造された防食被覆材の一実施の形態を示す模式図である。
【0040】
図示する製造方法は、二枚のシートを同時成形する熱成形法である、いわゆるツインコンポジット成形法を適用したものである。
【0041】
2枚の熱可塑性樹脂からなる第1、第2のシートS1,S2を一対のクランプ3,3で把持固定し、対をなす第1、第2の金型1,2を第1、第2のシートS1,S2を挟む位置で位置決めする(第1のステップ)。
【0042】
ここで、第1、第2のシートS1,S2の形成素材である熱可塑性樹脂は、結晶化度が極めて低いか、結晶化状態になり得ない非結晶性プラスチックであっても、分子鎖が規則正しく配列された結晶領域の量の比率が高いもの、すなわち結晶化度の高い結晶性プラスチックであってもよい。非結晶性プラスチックの場合には、たとえばポリスチレン(PS)やポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ABS樹脂、熱可塑性エポキシなどを適用することができ、結晶性プラスチックの場合には、たとえばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(PA:ナイロン6、ナイロン66など)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを適用できる。特に、真空成形性が良好で耐薬品性等の防食性に優れている、アクリル変性高耐衝撃性塩化ビニル樹脂製プレートが好ましく、当該プレートとして積水化学工業株式会社製の「KYDEX(カイデックス)プレート」を挙げることができる。
【0043】
第1のシートS1に対応する第1の金型1には、キャビティ内を真空引きするための真空引き用孔1dが開設されており、さらに第1のシートS1に対向するキャビティ面1aは凹凸状を呈している(凹面1b、凸面1c)。
【0044】
一方、第2の金型2のキャビティ面2aはフラットであり、キャビティ内を真空引きするための真空引き用孔2bが開設されている。
【0045】
第1、第2の金型1,2は、射出成形用の金型のようにキャビティの高い密閉性(気密性や液密性)が要求される高価な金型でなく、たとえば金属板を切削してこれらを製作することができ、小型のものから大型のものまで、安価でかつ短時間に対応する金型1,2を用意することができるものである。
【0046】
また、第1、第2の金型1,2の双方もしくはいずれか一方は上下に移動自在な不図示の昇降機構によって、それらの型閉めや型開きが自動制御できるようになっているのがよい。
【0047】
一対のクランプ3,3で熱可塑性樹脂(たとえばカイデックスプレート)からなる第1、第2のシートS1,S2が把持され、これらを第1、第2の金型1,2が挟んで位置決めされたら、次に、第1、第2の金型1,2の双方を不図示の加熱手段(金型内に内蔵された加熱ヒータなど)で加熱しながら、図2に示すように、第1、第2の金型1,2をそれぞれ第1、第2のシートS1,S2に密着させる(X1方向、X2方向)。
【0048】
特に、第1の金型1においては、その真空引き用孔1dを介して、第1の金型1が加熱されることによる高温雰囲気下で軟化もしくは溶融している第1のシートS1とキャビティ面1aの間を真空引きして(Y1方向)、第1のシートS1をキャビティ面1aをなす凹面1bと凸面1cに密着させ、第1のシートS1を凸部S1a、凹部S1bが交互に連続した形状に変形させる。また、これと同時に、第2の金型2の真空引き用孔2bから第2のシートS2とキャビティ面2aの間を真空引きして(Y2方向)双方を密着させる。
【0049】
ここで、「軟化もしくは溶融」とは、第1、第2のシートS1,S2が非結晶性プラスチックからなる場合に、そのガラス転移点Tgを越えた状態が「軟化」であり、熱可塑性樹脂が結晶性プラスチックの場合はその融点Tmを超えた状態が「溶融」であり、ともに高温雰囲気下で第1、第2のシートS1,S2が密着できる状態となっていることを示すものである。
【0050】
次いで、第1、第2の金型1,2のいずれか一方もしくは双方を相互に近づくように昇降させ、さらに第1の金型1の中空針挿通部1eを介し、さらに第1のシートS1を介して中空針Nを第1、第2のシートS1,S2の間に貫通させ、中空針Nから圧力エアを提供することにより(Y3方向)、図3で示すように、第1のシートS1の凹部S1bが第2のシートS2と溶着し(溶着部M)、かつ第1のシートS1の凸部S1aと第2のシートS2の間に中空空間Pが形成される。なお、第1、第2のシートS1,S2がツインコンボジット成形される際に使用する中空針Nから吹き込まれる圧力エアは、図3で中空針Nが挿通されている凸部S1aに隣接する別途の凸部S1aとの間、さらに、別途の凸部S1aとこれに隣接するさらに別途の凸部S1aとの間に成形の際に不図示の連通孔ができて凸部S1a、S1a間が相互に連通しているために、この連通孔を介して他の凸部S1aに行き渡ることになる。
【0051】
軟化もしくは溶融した第1、第2のシートS1,S2が硬化したら、第1、第2の金型1,2を型開きし、第1、第2のシートS1,S2の密着端部を切断してクランプ3,3から開放することで、図4aの縦断面図や図4bの斜視図(図4aのb矢視図)で示す防食被覆材の中間体10’が製造される(第2のステップ)。
【0052】
ここで、図4aで示すように、凸部S1aの側面(後述するテーパー状の突起S1c2に相当)が傾斜していることで、第1の金型1から第1のシートS1を脱型する際に、破れる等することなく極めてスムーズに、第1の金型1のキャビティ面から第1のシートS1を剥がすことができることが本発明者等によって実証されている。なお、本発明者等によれば、仮に凸部の側面が垂直面である場合(よって金型のキャビティ面も垂直)は、脱型時に金型のキャビティ面から凸部の側面が剥がれ難く、破け易くなることも特定されている。
【0053】
次に、図4aで示す複数の凸部S1aの任意の高さレベルに設定されたラインLに沿ってNC切断機で切断することにより、図5aの縦断面図や図5bの斜視図(図5aのb矢視図)で示すように、底部S1c1、および、その両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部S1c2,S1c2からなり、断面視が略U型をなすアンカー部S1cと、このアンカー部S1cの底部S1c1が溶着された第2のシートS2からなる面部から構成された防食被覆材10が製造される(第3のステップ)。切断方法の一例をより具体的に説明するに、NC切断機(旋盤)に鉛直姿勢で取り付けられた回転軸とその先端にとり付けられた回転切断カッターによって凸部S1aの上面を切削する方法において、この切削の順序として、回転切断カッターが凸部S1aの一山づつを順次移動しながら切削する方法を挙げることができる。
【0054】
なお、図5aで示すように、防食被覆材10を構成する複数のアンカー部S1c、…が不図示のコンクリート部材内に埋設された際には、各アンカー部S1c、…を構成する突部S1c2が、テーパー状に立ち上がり、かつ突部S1c2,S1c2間の幅が徐々に広がっている形態であることから、間隔を置いてコンクリート部材内に埋設されている2つのアンカー部S1c,S1c双方の突部S1c2,S1c2で囲まれたコンクリート領域Qは、その幅が徐々に狭まるものとなり、このコンクリート領域Qが当該隣接するアンカー部S1c,S1c双方の突部S1c2,S1c2によってアンカー効果(もしくは抜け防止効果)を奏することになる。このことは、図10を参照して後述する。
【0055】
図示するツインコンポジット成形法を適用した防食被覆材の製法方法によれば、従来の射出成形法で防食被覆材を製造する場合に比して、金型製作コストが格段に廉価となり、また、射出成形法の際に要する高圧高速射出設備も不要となることから、防食被覆材の製造コストは格段に低減される。
【0056】
また、NC切断機による凸部S1aの切断の際には、必要となる孔開け加工や面部外周の精密切断加工などもおこなうことで、精緻に所望する平面輪郭の面部を有する防食被覆材を製造することができる。
【0057】
面部とアンカー部からなる防食被覆材には、たとえば図6a,bで示すような他の実施の形態がある。
【0058】
図6aで示す防食被覆材10Aは、平面状の面部S2に複数条の凸部が形成された防食被覆材10に代わり、上下左右に間隔を置いて断面視が方形の多数の凸部が設けられ、隣接する2つの凸部から断面視U型のアンカー部S1c’が形成されるものである。
【0059】
一方、図6bで示す防食被覆材10Bは、湾曲状の面部S2”に複数条の凸部が形成され、隣接する2つの凸部から図5aで示すような断面視U型のアンカー部S1cが形成されるものである。これは、たとえばコンクリート部材が湾曲面を具備するセグメントからなる場合に、その内面の防食に供される防食被覆材である。なお、このように湾曲した防食被覆材10Bは、常温にて図示する湾曲状を呈するもののほかに、面部S2”が比較的可撓性に富む熱可塑性樹脂から形成されていることより、面部S2”を常温にて平面状となるように製作しておき、コンクリート製のセグメントを型枠内で製作する際に面部S2”湾曲させて図示のごとき姿勢変更をおこなってもよい。
【0060】
また、断面視U型もしくは略U型のアンカー部の断面視形状としては、図5,6で示すような3つの直線部(第2のシートS2と溶着する直線部と、この直線部からテーパー状に広がる2つの直線部)からなる形状形態(図7aで示すアンカー部S1c)のほか、図7bで示すアンカー部S1c”のように、断面視円形の途中レベルで切断された形状形態などであってもよく、アンカー部によるアンカー効果の期待できる多様な形状形態が適用できる。
【0061】
(製造方法の実施の形態2)
図7a、bはこの順で、防食被覆材の製造方法の他の実施の形態の第1、第2のステップを説明したものである。なお、本実施の形態の第3のステップは、図5で示す実施の形態1の第3のステップと同様であるため、その説明は省略する。
【0062】
まず、熱可塑性樹脂からなり、凹凸状をなす第1のシートS1’を真空成形にて予め製作しておき、これと熱可塑性樹脂からなる平面状の第2のシートS2’を用意する(第1のステップ)。
【0063】
対をなす第1、第2の金型1A,2Aのうち、第1の金型1Aはそのシートに対向するキャビティ面1aが凹凸状を呈しており(凹部1c、凸部1b)、用意された第1のシートS1’と第2のシートS2’を積層して積層体を形成し、双方の金型1A,2Aを高温雰囲気として第1のシートS1’と第2のシートS2’を軟化もしくは溶融させる(図7a参照)。
【0064】
次に、図7bで示すように、第1のシートS1’の凸部S1’aが第1の金型1Aの凹部1cに遊嵌するようにして該積層体を第1、第2の金型のキャビティ内で加圧することにより、第1のシートS1’の凹部S1’bを第2のシートS2’に溶着させ、その凸部S1’aが第2のシートS2’から突出して中空空間Pを備えた中間体を製造するものである(第2のステップ)。
【0065】
図示する製造方法によっても、従来の射出成形法で防食被覆材を製造する場合に比して、金型製作コストが格段に廉価となり、また、射出成形法の際に要する高圧高速射出設備も不要となることから、防食被覆材の製造コストは格段に低減される。
【0066】
(製造方法の実施の形態3)
図8a、bはこの順で、防食被覆材の製造方法のさらに他の実施の形態の第1のステップを説明したものである。なお、本実施の形態の第2のステップは、図5で示す実施の形態1の第3のステップと同様であるため、その説明は省略する。
【0067】
まず、図8aで示すように、凹凸状をなすキャビティ面1aと平面状のキャビティ面2aを有する第1、第2の金型1B,2B内に、押出し機3から熱可塑性樹脂を押し出してパリソンpを形成する。
【0068】
第1、第2の金型1B,2Bを型閉めしてパリソンpを連続一体化させ、かつ、押出し機3に装備された吹込み孔3aから連続一体化したパリソンp内に圧力流体を提供してこれを膨らまし、パリソンpをキャビティ面1a,2aに押し付ける。
【0069】
第1、第2の金型1B,2Bを加圧することにより、2列の連続したパリソンpからなるシート部分S1”とシート部分S2が積層姿勢となり、平面状のシート部分S2に凹凸状のシート部分S1”の凹部S1”bが溶着し、凸部S1”aが平面状のシート部分S2から突出して中空空間Pを備えた中間体を製造するものである(第1のステップ)。
【0070】
図示する製造方法によっても、従来の射出成形法で防食被覆材を製造する場合に比して、金型製作コストが格段に廉価となり、また、射出成形法の際に要する高圧高速射出設備も不要となることから、防食被覆材の製造コストは格段に低減される。
【0071】
次に、図9を参照して本発明のコンクリート部材の製造方法の一実施の形態を概説する。
【0072】
図9aは、下水道施設等を構成するコンクリート製の沈砂池の底版T上にコンクリート部材である側壁を製造(施工)している状況を説明している。
【0073】
この側壁の施工方法(製造方法)は、底版Tを施工後、側壁用の鉄筋R(縦筋や横筋)を配筋し、側壁の内外の型枠K,Kを組み付けるとともに、内側型枠Kの内面に防食被覆材10を組み付けた後、図示するようにフレッシュコンクリートFCを型枠内に充填するものである。
【0074】
フレッシュコンクリートFCの硬化を待って脱型することにより、図9bで示すように、防食被覆材10を構成するアンカー部S1cが側壁内部に埋設され、その内面が防食被覆材10を構成する面部S2で被覆されたコンクリート部材100(側壁)が構築(製造)される。
【0075】
ここで、図10には、図9のX部を拡大した図であって、隣接するアンカー部それぞれの突部によって囲まれるコンクリート領域でアンカー効果が発揮されることを説明した模式図を示している。
【0076】
同図で示すように、防食被覆材10を構成する複数のアンカー部S1c、…がコンクリート部材100内に埋設された際には、各アンカー部S1c、…を構成する突部S1c2が、テーパー状に立ち上がり、かつ突部S1c2,S1c2間の幅が徐々に広がっている形態であることから、間隔を置いてコンクリート部材内に埋設されている2つのアンカー部S1c,S1c双方の突部S1c2,S1c2で囲まれたコンクリート領域Q(図中の斜線エリア)は、その幅が徐々に狭まるものとなり、このコンクリート領域Qが当該隣接するアンカー部S1c,S1c双方の突部S1c2,S1c2によってアンカー効果(もしくは抜け防止効果)を奏することになる。
【0077】
コンクリート部材としては、図9で示すコンクリート部材100以外にも、たとえば図11で示すように、コンクリート製セグメントの内部に防食被覆材10Bを構成するアンカー部S1cが埋設され、防食被覆材10Bを構成する面部S2”がセグメントの内面を被覆してなるコンクリート製セグメント(コンクリート部材100A)を挙げることができる。
【0078】
既述するように、防食被覆材10Bはその面部S2”が可撓性に富む熱可塑性樹脂からなるものであることから、これを型枠内に設置し、鉄筋を配筋してフレッシュコンクリートを充填してコンクリート製セグメントを製作する際に、所望する曲率をもった湾曲状に容易に変形させて型枠内に設置することでコンクリート製のセグメントを製造することが可能となる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,1B…第1の金型、1a…キャビティ面、1b…凹面、1c…凸面、1d…真空引き用孔、1e…中空針挿通部、2,2A,2B…第2の金型、2a…キャビティ面、2b…真空引き用孔、10,10A,10B…防食被覆材、10’…防食被覆材の中間体、100,100A…コンクリート部材、S1,S1’,S1”…第1のシート、S2、S2”…第2のシート(面部)、S1a,S1’a、S1”a…凸部、S1b,S1’b、S1”b…凹部、S1c、S1c’、S1c”…アンカー部、S1c1…底部、S1c2…突部、P…中空空間、N…中空針、p…パリソン
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種コンクリート部材の表面に設けられてコンクリート部材の劣化防止に供される防食被覆材とその製造方法、および防食被覆材で被覆されたコンクリート部材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば下水道施設等を構成するコンクリート構造物である、シールドトンネルや沈砂池、マンホールや汚泥貯留槽などが下水道施設等から生成される硫化水素などによって早期に劣化するのを防止するために、コンクリート部材の表面を樹脂製(プラスチック製)の防食材で被覆してその機能維持を図り、耐久性を向上させることがおこなわれている。
【0003】
上記樹脂製の防食材は、硫化水素のみならず、各種の酸やアルカリによるコンクリート部材の劣化や、流水によるキャビテーションや流水中の砂による浸食からコンクリート部材を防護してその耐久性の向上に供されることから、耐薬品性や物理的衝撃に強い樹脂製の防食被覆材が適用されている。
【0004】
ところで、コンクリート部材の表面に防食被覆材を設けるに当たり、単にコンクリート部材表面に相補的な平面状もしくは湾曲状の防食被覆材を接着させるのみではその剥がれや脱落が危惧されることから、平面状もしくは湾曲状の樹脂製の板材の裏面に逆テーパー状で樹脂製のアンカーが設けられたセグメント用樹脂部材と、このセグメント用樹脂部材を備えたセグメントの製造方法が特許文献1に開示されている。
【0005】
この樹脂部材は、セグメントの内面を覆うとともに円周方向に沿って湾曲した湾曲樹脂部材と、この湾曲樹脂部材の外面側においてシールドトンネルの軸方向に沿って連続的に突出する複数個のリブ部材が射出成形によって一体成形され、射出成形されたリブ部材をカッターによって逆テーパー状に切削して製造されるものである。
【0006】
逆テーパー状のアンカーが湾曲部材表面に設けられることから、成形型の型開きや成形品の脱型を可能とする必要があることに鑑みて、まず、成形型内で射出成形にて湾曲部材とリブ部材を一体に成形した後にNCマシンを使用してリブ部材を逆テーパー状に切削加工することとしている。
【0007】
この製造方法では、射出成形用の大掛かりな、しかも型閉め姿勢において高い気密性や液密性が要求される成形型を要し、さらにこの射出成形のための高圧高速射出設備を要することから製造コストが高価なものとなってしまう。
【0008】
したがって、コンクリート部材の表面を被覆する面部とこの面部に取り付けられたアンカー部とからなる防食被覆材に関し、射出成形ではない製造方法で製造され、面部とアンカー部が溶着された構成の防食被覆材と、この防食被覆材を射出成形の場合に比して格段に安価に製造することのできる防食被覆材の製造方法の開発が当該技術分野で切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−220994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、射出成形ではない製造方法で製造され、面部とアンカー部が溶着された構成の防食被覆材と、この防食被覆材を射出成形の場合に比して格段に安価に製造することのできる防食被覆材の製造方法と、この防食被覆材にてその表面が被覆されたコンクリート部材とこのコンクリート部材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による防食被覆材は、熱可塑性樹脂からなる面部と、前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成され、底部および突部が熱可塑性樹脂からなるアンカー部と、からなり、コンクリート部材の内部にアンカー部が埋設され、該コンクリート部材の表面を被覆してその防食に供されるものである。
【0012】
本発明の防食被覆材は、防食対象となるコンクリート部材の表面を被覆する面部と、この面部に溶着されてコンクリート部材内に埋設されるアンカー部とから形成されたものであり、このアンカー部は、面部と溶着される底部と、この底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部と、から構成されるものであり、面部同様に熱可塑性樹脂からなるものである。
【0013】
すなわち、面部とアンカー部は射出成形にて一体とされるものではなく、双方が溶着されて一体とされたものであり、その製造コストは射出成形による場合に比して格段に廉価となる。
【0014】
アンカー部を縦断面で切断した際の形状としては、コの字型や、面部から突出する方向(外側)に向かってコの字が開いた型(U型もしくは略U型)など挙げることができ、アンカー部の面部に溶着される箇所は面部との溶着性を保証するべく、面部と相補的な直線領域もしくは湾曲領域を備えているのが好ましい。
【0015】
また、面部とアンカー部はともに樹脂の中でも熱可塑性樹脂から形成されており、高温雰囲気の型内で双方が容易にキャビティ形状に応じた形状に軟化もしくは溶融され、双方の一部同士が溶着されて一体化され、クーリングされて所望形状の防食被覆材をなすものであり、豊富な形状バリエーションの面部およびアンカー部が高い接着強度の溶着部で一体化された防食被覆材となる。
【0016】
熱可塑性樹脂の「軟化もしくは溶融」とは、熱可塑性樹脂が非結晶性プラスチックからなる場合は、そのガラス転移点Tgを越えた状態に対して「軟化」が適用され、熱可塑性樹脂が結晶性プラスチックの場合はその融点Tmを超えた状態に対して「溶融」が適用されるものである。
【0017】
結晶化度が極めて低いか、結晶化状態になり得ない非結晶性プラスチックとしては、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ABS樹脂、熱可塑性エポキシなどを挙げることができる。一方、分子鎖が規則正しく配列された結晶領域の量の比率が高いもの、すなわち結晶化度の高い結晶性プラスチックとしては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(PA:ナイロン6、ナイロン66など)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを挙げることができる。特に、真空成形性が良好で耐薬品性等の防食性に優れている、アクリル変性高耐衝撃性塩化ビニル樹脂製プレートが好ましく、当該プレートとして積水化学工業株式会社製の「KYDEX(カイデックス(登録商標))プレート」を挙げることができる。
【0018】
既述するように、面部の形状は防食対象のコンクリート部材の表面形状に応じた任意の形状であるが、たとえば二次元的な平面、傾斜した2以上の平面からなる三次元的な平面、一つの曲率を有する湾曲面、2以上の曲率からなる湾曲面、平面と湾曲面からなる三次元形状などを挙げることができる。
【0019】
本発明はコンクリート部材にも及ぶものであり、このコンクリート部材は、防食被覆材を構成するアンカー部がその内部に埋設され、面部がその表面を被覆するものである。
【0020】
コンクリート部材内に上記する各アンカー部を構成する突部が、テーパー状に立ち上がり、かつ突部間の幅が徐々に広がっている形態であることから、間隔を置いてコンクリート部材内に埋設されている2つのアンカー部双方の突部で囲まれたコンクリート領域は、その幅が徐々に狭まるものとなり、このコンクリート領域が当該隣接するアンカー部双方の突部によってアンカー効果(もしくは抜け防止効果)を奏することになる。
【0021】
本発明の防食被覆材によって被覆されたコンクリート部材としては、シールドトンネルを構成するコンクリート製セグメントや、沈砂池やマンホール、汚泥貯留槽などを構成するコンクリート製の床や壁、柱などを挙げることができる。
【0022】
また、本発明は防食被覆材の製造方法にも及ぶものであり、この製造方法の一実施の形態は、熱可塑性樹脂からなる第1、第2のシートのそれぞれの両端を一対のクランプで把持し、対をなす第1、第2の金型が第1、第2のシートを挟む位置に位置決めされる第1のステップ、第1の金型は真空引き用孔を具備し、かつシートに対向するキャビティ面が凹凸状を呈しており、第2の金型も真空引き用孔を具備しており、双方の金型を高温雰囲気として第1、第2のシートを軟化もしくは溶融させ、前記真空引き孔から真空吸引し、中空針を第1、第2の金型のいずれか一方を貫通させ、さらに第1、第2のシートのいずれか一方を貫通させて第1、第2のシートの間に臨ませて圧力流体を提供することにより、第1のシートを凹凸状に加工してその凹部を第2のシートに溶着させ、その凸部が第2のシートから突出した中間体を製造する第2のステップ、連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第3のステップ、からなるものである。
【0023】
本発明の製造方法は、二枚のシートを同時成形する熱成形法(熱可塑性樹脂シートを加熱し、軟化もしくは溶融させて双方のシートを対応する金型に密着させて成形品を得る方法)である、いわゆるツインコンポジット成形法を適用したものである(ツインコンポジットは登録商標)。
【0024】
第1、第2のステップでは上記ツインコンポジット成形法を適用し、一方の熱可塑性樹脂シート(第2のシート)からなる面部の表面に、凹部と凸部が連続した他方の熱可塑性樹脂シート(第1のシート)のうちの当該凹部が熱溶着してなる中間体が製造される。なお、面部を形成する第2のシートと第1のシートの間に凸部の間には中空空間が形成される。この凸部にある中空空間は、第1、第2の金型それぞれの真空引き用孔からの真空吸引によって第1のシートを凹凸状に加工するとともに第2のシートをたとえば平面状に加工し、さらに、中空針をいずれか一方の金型およびいずれか一方のシートを貫通させて第1、第2のシート間に臨ませ、ここに圧力流体(圧力エア等)を提供することで第1のシートの凸部と第2のシートの間に形成されるものである。
【0025】
この中間体においては、未だ底部とこの底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部とからなるアンカー部は形成されていない。
【0026】
この中間体を金型から脱型し、間隔を置いて連続する複数の凸部をそれらの途中位置でたとえばNC切断機で切断することにより、凸部(の中空空間)が外側に開放されて、底部とこの底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部とからなるアンカー部が形成される(第3のステップ)。
【0027】
本発明の製造方法によれば、いわゆるツインコンポジット成形法を適用することにより、高い気密性もしくは液密性を要する成形型や高圧かつ高速の射出設備を要してその設備コストが極めて高価な射出成形に比して製造コストを格段に廉価とできる。すなわち、ツインコンポジット成形法で適用される第1、第2の金型は、たとえば金属板を切削して製作することができ、型の大型化に応じてそのコストメリットは一層顕著となる。なお、射出成形以外の代表的な成形法の一つである押し出し成形では、たとえば1.2m程度×3m程度の大型の板からなる面部を有する防食被覆材を製造することは極めて困難であり、幅の小さな部材をジョイントで組み付けて所望する大型寸法の面部を形成することになり、加工手間がかかるものである。
【0028】
また、NC切断機による凸部の切断の際には、必要となる孔開け加工や面部外周の精密切断加工などもおこなうことで、精緻に所望する平面輪郭の面部を有する防食被覆材を製造することができる。
【0029】
また、本発明による防食被覆材の製造方法の他の実施の形態は、熱可塑性樹脂からなり、凹凸状をなす第1のシートを真空成形にて用意し、かつ、熱可塑性樹脂からなる第2のシートを用意する第1のステップ、対をなす第1、第2の金型のうち、第1の金型はそのシートに対向するキャビティ面が凹凸状を呈しており、第1のシートと第2のシートを積層して積層体を形成し、双方の金型を高温雰囲気として第1、第2のシートを軟化もしくは溶融させ、第1のシートの凸部が第1の金型の凹部に遊嵌するようにして該積層体を第1、第2の金型のキャビティ内で加圧することにより、第1のシートの凹部を第2のシートに溶着させ、その凸部が第2のシートから突出した中間体を製造する第2のステップ、連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第3のステップ、からなるものである。
【0030】
本実施の形態は、真空成形法を適用して第1のシートを予め凹凸状に成形しておき、別途の金型内で第1、第2のシート同士を溶着して中間体を製造するものである。この方法によっても、比較例安価な製造コストにて防食被覆材を製造することができる。
【0031】
また、本発明による防食被覆材の製造方法の他の実施の形態は、凹凸状をなすキャビティ面と平面状のキャビティ面を有する金型内に熱可塑性樹脂を押し出してパリソンを形成し、パリソン内に圧力流体を提供して膨らまし、パリソンをキャビティ面に押し付け、第1、第2の金型を型閉めして加圧することにより、連続する積層姿勢のシートであって、平面状のシート部分に凹凸状のシート部分の凹部が溶着し、凸部が平面状のシート部分から突出した中間体を製造する第1のステップ、連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第2のステップ、からなるものである。
【0032】
本実施の形態は、ブロー成形を適用して連続するシートを膨らませながら凹凸状のシート部分と平面状のシート部分を成形してこれらの積層体を形成し、さらに双方を溶着して中間体を製造するものである。この方法によっても、比較例安価な製造コストにて防食被覆材を製造することができる。
【0033】
さらに本発明によるコンクリート部材の製造方法は、前記製造方法で製造された防食被覆材を型枠とともにセットし、型枠内にコンクリートを充填し、脱型することにより、その内部に防食被覆材のアンカー部が埋設され、その表面に防食被覆材の面部が被覆してなるコンクリート部材を製造するものである。
【0034】
たとえばコンクリート製セグメントを製造する場合は、防食被覆材をセグメント用型枠内へ配設しておき、型枠内に配筋を施してコンクリートを充填し、それが硬化することで、防食被覆材のアンカー部が内部に埋設され、防食被覆材の面部にて表面が防護されたセグメントを製造することができる。
【0035】
なお、セグメントのように湾曲面を有するコンクリート部材に対しては、防食被覆材を構成する面部がシート状の熱可塑性樹脂から形成されていることから、容易に変形して所望する湾曲形状をなすことができる。
【発明の効果】
【0036】
以上の説明から理解できるように、本発明の防食被覆材とコンクリート部材およびそれらの製造方法によれば、防食被覆材を構成する面部とアンカー部が射出成形によることなく、双方が安価な金型内で熱成形され、溶着されて一体化されていることから、防食被覆材やコンクリート部材の製造コストを射出成形による従来製法の場合に比して格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の防食被覆材の製造方法の一実施の形態の第1のステップを説明した模式図である。
【図2】図1に次いで、第2のステップを説明した模式図である。
【図3】図2に次いで、さらに第2のステップを説明した模式図である。
【図4】(a)は第2のステップで製造された中間体の縦断面図であり、(b)は(a)のb矢視図(平面図)である。
【図5】(a)は図3,4に次いで、第3のステップを説明するとともに製造された防食被覆材の一実施の形態を示す模式図であり、(b)は(a)のb矢視図(平面図)である。
【図6】(a)、(b)はともに、防食被覆材の他の実施の形態を示す模式図である。
【図7】(a)、(b)は順に、防食被覆材の製造方法の他の実施の形態の第1、第2のステップを説明した模式図である。
【図8】(a)、(b)は順に、防食被覆材の製造方法のさらに他の実施の形態の第1、第2のステップを説明した模式図である。
【図9】(a)はコンクリート部材の製造方法の一実施の形態を示す説明図であり、(b)は(a)の製造方法で製造されたコンクリート部材の一実施の形態を示す縦断面図である。
【図10】図9のX部を拡大した図であって、隣接するアンカー部それぞれの突部によって囲まれるコンクリート領域でアンカー効果が発揮されることを説明した模式図である。
【図11】本発明のコンクリート部材の他の実施の形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の防食被覆材とコンクリート部材やそれらの製造方法の実施の形態を説明する。
【0039】
(製造方法の実施の形態1)
図1〜図5は順に、本発明の防食被覆材の製造方法の実施の形態1を説明したフロー図となっている。具体的には、図1は本発明の防食被覆材の製造方法の第1のステップを説明した模式図であり、図2,3は順に第2のステップを説明した模式図であり、図4は第2のステップで製造された中間体を説明する図であり、図5は第3のステップを説明するとともに製造された防食被覆材の一実施の形態を示す模式図である。
【0040】
図示する製造方法は、二枚のシートを同時成形する熱成形法である、いわゆるツインコンポジット成形法を適用したものである。
【0041】
2枚の熱可塑性樹脂からなる第1、第2のシートS1,S2を一対のクランプ3,3で把持固定し、対をなす第1、第2の金型1,2を第1、第2のシートS1,S2を挟む位置で位置決めする(第1のステップ)。
【0042】
ここで、第1、第2のシートS1,S2の形成素材である熱可塑性樹脂は、結晶化度が極めて低いか、結晶化状態になり得ない非結晶性プラスチックであっても、分子鎖が規則正しく配列された結晶領域の量の比率が高いもの、すなわち結晶化度の高い結晶性プラスチックであってもよい。非結晶性プラスチックの場合には、たとえばポリスチレン(PS)やポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ABS樹脂、熱可塑性エポキシなどを適用することができ、結晶性プラスチックの場合には、たとえばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(PA:ナイロン6、ナイロン66など)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを適用できる。特に、真空成形性が良好で耐薬品性等の防食性に優れている、アクリル変性高耐衝撃性塩化ビニル樹脂製プレートが好ましく、当該プレートとして積水化学工業株式会社製の「KYDEX(カイデックス)プレート」を挙げることができる。
【0043】
第1のシートS1に対応する第1の金型1には、キャビティ内を真空引きするための真空引き用孔1dが開設されており、さらに第1のシートS1に対向するキャビティ面1aは凹凸状を呈している(凹面1b、凸面1c)。
【0044】
一方、第2の金型2のキャビティ面2aはフラットであり、キャビティ内を真空引きするための真空引き用孔2bが開設されている。
【0045】
第1、第2の金型1,2は、射出成形用の金型のようにキャビティの高い密閉性(気密性や液密性)が要求される高価な金型でなく、たとえば金属板を切削してこれらを製作することができ、小型のものから大型のものまで、安価でかつ短時間に対応する金型1,2を用意することができるものである。
【0046】
また、第1、第2の金型1,2の双方もしくはいずれか一方は上下に移動自在な不図示の昇降機構によって、それらの型閉めや型開きが自動制御できるようになっているのがよい。
【0047】
一対のクランプ3,3で熱可塑性樹脂(たとえばカイデックスプレート)からなる第1、第2のシートS1,S2が把持され、これらを第1、第2の金型1,2が挟んで位置決めされたら、次に、第1、第2の金型1,2の双方を不図示の加熱手段(金型内に内蔵された加熱ヒータなど)で加熱しながら、図2に示すように、第1、第2の金型1,2をそれぞれ第1、第2のシートS1,S2に密着させる(X1方向、X2方向)。
【0048】
特に、第1の金型1においては、その真空引き用孔1dを介して、第1の金型1が加熱されることによる高温雰囲気下で軟化もしくは溶融している第1のシートS1とキャビティ面1aの間を真空引きして(Y1方向)、第1のシートS1をキャビティ面1aをなす凹面1bと凸面1cに密着させ、第1のシートS1を凸部S1a、凹部S1bが交互に連続した形状に変形させる。また、これと同時に、第2の金型2の真空引き用孔2bから第2のシートS2とキャビティ面2aの間を真空引きして(Y2方向)双方を密着させる。
【0049】
ここで、「軟化もしくは溶融」とは、第1、第2のシートS1,S2が非結晶性プラスチックからなる場合に、そのガラス転移点Tgを越えた状態が「軟化」であり、熱可塑性樹脂が結晶性プラスチックの場合はその融点Tmを超えた状態が「溶融」であり、ともに高温雰囲気下で第1、第2のシートS1,S2が密着できる状態となっていることを示すものである。
【0050】
次いで、第1、第2の金型1,2のいずれか一方もしくは双方を相互に近づくように昇降させ、さらに第1の金型1の中空針挿通部1eを介し、さらに第1のシートS1を介して中空針Nを第1、第2のシートS1,S2の間に貫通させ、中空針Nから圧力エアを提供することにより(Y3方向)、図3で示すように、第1のシートS1の凹部S1bが第2のシートS2と溶着し(溶着部M)、かつ第1のシートS1の凸部S1aと第2のシートS2の間に中空空間Pが形成される。なお、第1、第2のシートS1,S2がツインコンボジット成形される際に使用する中空針Nから吹き込まれる圧力エアは、図3で中空針Nが挿通されている凸部S1aに隣接する別途の凸部S1aとの間、さらに、別途の凸部S1aとこれに隣接するさらに別途の凸部S1aとの間に成形の際に不図示の連通孔ができて凸部S1a、S1a間が相互に連通しているために、この連通孔を介して他の凸部S1aに行き渡ることになる。
【0051】
軟化もしくは溶融した第1、第2のシートS1,S2が硬化したら、第1、第2の金型1,2を型開きし、第1、第2のシートS1,S2の密着端部を切断してクランプ3,3から開放することで、図4aの縦断面図や図4bの斜視図(図4aのb矢視図)で示す防食被覆材の中間体10’が製造される(第2のステップ)。
【0052】
ここで、図4aで示すように、凸部S1aの側面(後述するテーパー状の突起S1c2に相当)が傾斜していることで、第1の金型1から第1のシートS1を脱型する際に、破れる等することなく極めてスムーズに、第1の金型1のキャビティ面から第1のシートS1を剥がすことができることが本発明者等によって実証されている。なお、本発明者等によれば、仮に凸部の側面が垂直面である場合(よって金型のキャビティ面も垂直)は、脱型時に金型のキャビティ面から凸部の側面が剥がれ難く、破け易くなることも特定されている。
【0053】
次に、図4aで示す複数の凸部S1aの任意の高さレベルに設定されたラインLに沿ってNC切断機で切断することにより、図5aの縦断面図や図5bの斜視図(図5aのb矢視図)で示すように、底部S1c1、および、その両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部S1c2,S1c2からなり、断面視が略U型をなすアンカー部S1cと、このアンカー部S1cの底部S1c1が溶着された第2のシートS2からなる面部から構成された防食被覆材10が製造される(第3のステップ)。切断方法の一例をより具体的に説明するに、NC切断機(旋盤)に鉛直姿勢で取り付けられた回転軸とその先端にとり付けられた回転切断カッターによって凸部S1aの上面を切削する方法において、この切削の順序として、回転切断カッターが凸部S1aの一山づつを順次移動しながら切削する方法を挙げることができる。
【0054】
なお、図5aで示すように、防食被覆材10を構成する複数のアンカー部S1c、…が不図示のコンクリート部材内に埋設された際には、各アンカー部S1c、…を構成する突部S1c2が、テーパー状に立ち上がり、かつ突部S1c2,S1c2間の幅が徐々に広がっている形態であることから、間隔を置いてコンクリート部材内に埋設されている2つのアンカー部S1c,S1c双方の突部S1c2,S1c2で囲まれたコンクリート領域Qは、その幅が徐々に狭まるものとなり、このコンクリート領域Qが当該隣接するアンカー部S1c,S1c双方の突部S1c2,S1c2によってアンカー効果(もしくは抜け防止効果)を奏することになる。このことは、図10を参照して後述する。
【0055】
図示するツインコンポジット成形法を適用した防食被覆材の製法方法によれば、従来の射出成形法で防食被覆材を製造する場合に比して、金型製作コストが格段に廉価となり、また、射出成形法の際に要する高圧高速射出設備も不要となることから、防食被覆材の製造コストは格段に低減される。
【0056】
また、NC切断機による凸部S1aの切断の際には、必要となる孔開け加工や面部外周の精密切断加工などもおこなうことで、精緻に所望する平面輪郭の面部を有する防食被覆材を製造することができる。
【0057】
面部とアンカー部からなる防食被覆材には、たとえば図6a,bで示すような他の実施の形態がある。
【0058】
図6aで示す防食被覆材10Aは、平面状の面部S2に複数条の凸部が形成された防食被覆材10に代わり、上下左右に間隔を置いて断面視が方形の多数の凸部が設けられ、隣接する2つの凸部から断面視U型のアンカー部S1c’が形成されるものである。
【0059】
一方、図6bで示す防食被覆材10Bは、湾曲状の面部S2”に複数条の凸部が形成され、隣接する2つの凸部から図5aで示すような断面視U型のアンカー部S1cが形成されるものである。これは、たとえばコンクリート部材が湾曲面を具備するセグメントからなる場合に、その内面の防食に供される防食被覆材である。なお、このように湾曲した防食被覆材10Bは、常温にて図示する湾曲状を呈するもののほかに、面部S2”が比較的可撓性に富む熱可塑性樹脂から形成されていることより、面部S2”を常温にて平面状となるように製作しておき、コンクリート製のセグメントを型枠内で製作する際に面部S2”湾曲させて図示のごとき姿勢変更をおこなってもよい。
【0060】
また、断面視U型もしくは略U型のアンカー部の断面視形状としては、図5,6で示すような3つの直線部(第2のシートS2と溶着する直線部と、この直線部からテーパー状に広がる2つの直線部)からなる形状形態(図7aで示すアンカー部S1c)のほか、図7bで示すアンカー部S1c”のように、断面視円形の途中レベルで切断された形状形態などであってもよく、アンカー部によるアンカー効果の期待できる多様な形状形態が適用できる。
【0061】
(製造方法の実施の形態2)
図7a、bはこの順で、防食被覆材の製造方法の他の実施の形態の第1、第2のステップを説明したものである。なお、本実施の形態の第3のステップは、図5で示す実施の形態1の第3のステップと同様であるため、その説明は省略する。
【0062】
まず、熱可塑性樹脂からなり、凹凸状をなす第1のシートS1’を真空成形にて予め製作しておき、これと熱可塑性樹脂からなる平面状の第2のシートS2’を用意する(第1のステップ)。
【0063】
対をなす第1、第2の金型1A,2Aのうち、第1の金型1Aはそのシートに対向するキャビティ面1aが凹凸状を呈しており(凹部1c、凸部1b)、用意された第1のシートS1’と第2のシートS2’を積層して積層体を形成し、双方の金型1A,2Aを高温雰囲気として第1のシートS1’と第2のシートS2’を軟化もしくは溶融させる(図7a参照)。
【0064】
次に、図7bで示すように、第1のシートS1’の凸部S1’aが第1の金型1Aの凹部1cに遊嵌するようにして該積層体を第1、第2の金型のキャビティ内で加圧することにより、第1のシートS1’の凹部S1’bを第2のシートS2’に溶着させ、その凸部S1’aが第2のシートS2’から突出して中空空間Pを備えた中間体を製造するものである(第2のステップ)。
【0065】
図示する製造方法によっても、従来の射出成形法で防食被覆材を製造する場合に比して、金型製作コストが格段に廉価となり、また、射出成形法の際に要する高圧高速射出設備も不要となることから、防食被覆材の製造コストは格段に低減される。
【0066】
(製造方法の実施の形態3)
図8a、bはこの順で、防食被覆材の製造方法のさらに他の実施の形態の第1のステップを説明したものである。なお、本実施の形態の第2のステップは、図5で示す実施の形態1の第3のステップと同様であるため、その説明は省略する。
【0067】
まず、図8aで示すように、凹凸状をなすキャビティ面1aと平面状のキャビティ面2aを有する第1、第2の金型1B,2B内に、押出し機3から熱可塑性樹脂を押し出してパリソンpを形成する。
【0068】
第1、第2の金型1B,2Bを型閉めしてパリソンpを連続一体化させ、かつ、押出し機3に装備された吹込み孔3aから連続一体化したパリソンp内に圧力流体を提供してこれを膨らまし、パリソンpをキャビティ面1a,2aに押し付ける。
【0069】
第1、第2の金型1B,2Bを加圧することにより、2列の連続したパリソンpからなるシート部分S1”とシート部分S2が積層姿勢となり、平面状のシート部分S2に凹凸状のシート部分S1”の凹部S1”bが溶着し、凸部S1”aが平面状のシート部分S2から突出して中空空間Pを備えた中間体を製造するものである(第1のステップ)。
【0070】
図示する製造方法によっても、従来の射出成形法で防食被覆材を製造する場合に比して、金型製作コストが格段に廉価となり、また、射出成形法の際に要する高圧高速射出設備も不要となることから、防食被覆材の製造コストは格段に低減される。
【0071】
次に、図9を参照して本発明のコンクリート部材の製造方法の一実施の形態を概説する。
【0072】
図9aは、下水道施設等を構成するコンクリート製の沈砂池の底版T上にコンクリート部材である側壁を製造(施工)している状況を説明している。
【0073】
この側壁の施工方法(製造方法)は、底版Tを施工後、側壁用の鉄筋R(縦筋や横筋)を配筋し、側壁の内外の型枠K,Kを組み付けるとともに、内側型枠Kの内面に防食被覆材10を組み付けた後、図示するようにフレッシュコンクリートFCを型枠内に充填するものである。
【0074】
フレッシュコンクリートFCの硬化を待って脱型することにより、図9bで示すように、防食被覆材10を構成するアンカー部S1cが側壁内部に埋設され、その内面が防食被覆材10を構成する面部S2で被覆されたコンクリート部材100(側壁)が構築(製造)される。
【0075】
ここで、図10には、図9のX部を拡大した図であって、隣接するアンカー部それぞれの突部によって囲まれるコンクリート領域でアンカー効果が発揮されることを説明した模式図を示している。
【0076】
同図で示すように、防食被覆材10を構成する複数のアンカー部S1c、…がコンクリート部材100内に埋設された際には、各アンカー部S1c、…を構成する突部S1c2が、テーパー状に立ち上がり、かつ突部S1c2,S1c2間の幅が徐々に広がっている形態であることから、間隔を置いてコンクリート部材内に埋設されている2つのアンカー部S1c,S1c双方の突部S1c2,S1c2で囲まれたコンクリート領域Q(図中の斜線エリア)は、その幅が徐々に狭まるものとなり、このコンクリート領域Qが当該隣接するアンカー部S1c,S1c双方の突部S1c2,S1c2によってアンカー効果(もしくは抜け防止効果)を奏することになる。
【0077】
コンクリート部材としては、図9で示すコンクリート部材100以外にも、たとえば図11で示すように、コンクリート製セグメントの内部に防食被覆材10Bを構成するアンカー部S1cが埋設され、防食被覆材10Bを構成する面部S2”がセグメントの内面を被覆してなるコンクリート製セグメント(コンクリート部材100A)を挙げることができる。
【0078】
既述するように、防食被覆材10Bはその面部S2”が可撓性に富む熱可塑性樹脂からなるものであることから、これを型枠内に設置し、鉄筋を配筋してフレッシュコンクリートを充填してコンクリート製セグメントを製作する際に、所望する曲率をもった湾曲状に容易に変形させて型枠内に設置することでコンクリート製のセグメントを製造することが可能となる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1,1A,1B…第1の金型、1a…キャビティ面、1b…凹面、1c…凸面、1d…真空引き用孔、1e…中空針挿通部、2,2A,2B…第2の金型、2a…キャビティ面、2b…真空引き用孔、10,10A,10B…防食被覆材、10’…防食被覆材の中間体、100,100A…コンクリート部材、S1,S1’,S1”…第1のシート、S2、S2”…第2のシート(面部)、S1a,S1’a、S1”a…凸部、S1b,S1’b、S1”b…凹部、S1c、S1c’、S1c”…アンカー部、S1c1…底部、S1c2…突部、P…中空空間、N…中空針、p…パリソン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる面部と、
前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成され、底部および突部が熱可塑性樹脂からなるアンカー部と、からなり、
コンクリート部材の内部にアンカー部が埋設され、該コンクリート部材の表面を被覆してその防食に供される防食被覆材。
【請求項2】
前記面材が平面もしくは湾曲面のいずれか一方からなる請求項1に記載の防食被覆材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がアクリル変性塩化ビニル樹脂を主成分とする樹脂からなる請求項1または2に記載の防食被覆材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の防食被覆材を構成するアンカー部がその内部に埋設され、面部がその表面を被覆するコンクリート部材。
【請求項5】
熱可塑性樹脂からなる第1、第2のシートのそれぞれの両端を一対のクランプで把持し、対をなす第1、第2の金型が第1、第2のシートを挟む位置に位置決めされる第1のステップ、
第1の金型は真空引き用孔を具備し、かつシートに対向するキャビティ面が凹凸状を呈しており、第2の金型も真空引き用孔を具備しており、双方の金型を高温雰囲気として第1、第2のシートを軟化もしくは溶融させ、前記真空引き孔から真空吸引し、中空針を第1、第2の金型のいずれか一方を貫通させ、さらに第1、第2のシートのいずれか一方を貫通させて第1、第2のシートの間に臨ませて圧力流体を提供することにより、第1のシートを凹凸状に加工してその凹部を第2のシートに溶着させ、その凸部が第2のシートから突出した中間体を製造する第2のステップ、
連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第3のステップ、からなる防食被覆材の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂からなり、凹凸状をなす第1のシートを真空成形にて用意し、かつ、熱可塑性樹脂からなる第2のシートを用意する第1のステップ、
対をなす第1、第2の金型のうち、第1の金型はそのシートに対向するキャビティ面が凹凸状を呈しており、第1のシートと第2のシートを積層して積層体を形成し、双方の金型を高温雰囲気として第1、第2のシートを軟化もしくは溶融させ、第1のシートの凸部が第1の金型の凹部に遊嵌するようにして該積層体を第1、第2の金型のキャビティ内で加圧することにより、第1のシートの凹部を第2のシートに溶着させ、その凸部が第2のシートから突出した中間体を製造する第2のステップ、
連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第3のステップ、からなる防食被覆材の製造方法。
【請求項7】
凹凸状をなすキャビティ面と平面状のキャビティ面を有する金型内に熱可塑性樹脂を押し出してパリソンを形成し、パリソン内に圧力流体を提供して膨らまし、パリソンをキャビティ面に押し付け、第1、第2の金型を型閉めして加圧することにより、連続する積層姿勢のシートであって、平面状のシート部分に凹凸状のシート部分の凹部が溶着し、凸部が平面状のシート部分から突出した中間体を製造する第1のステップ、
連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第2のステップ、からなる防食被覆材の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかの製造方法で製造された防食被覆材を型枠とともにセットし、型枠内にコンクリートを充填し、脱型することにより、その内部に防食被覆材のアンカー部が埋設され、その表面に防食被覆材の面部が被覆してなるコンクリート部材を製造するコンクリート部材の製造方法。
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる面部と、
前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成され、底部および突部が熱可塑性樹脂からなるアンカー部と、からなり、
コンクリート部材の内部にアンカー部が埋設され、該コンクリート部材の表面を被覆してその防食に供される防食被覆材。
【請求項2】
前記面材が平面もしくは湾曲面のいずれか一方からなる請求項1に記載の防食被覆材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がアクリル変性塩化ビニル樹脂を主成分とする樹脂からなる請求項1または2に記載の防食被覆材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の防食被覆材を構成するアンカー部がその内部に埋設され、面部がその表面を被覆するコンクリート部材。
【請求項5】
熱可塑性樹脂からなる第1、第2のシートのそれぞれの両端を一対のクランプで把持し、対をなす第1、第2の金型が第1、第2のシートを挟む位置に位置決めされる第1のステップ、
第1の金型は真空引き用孔を具備し、かつシートに対向するキャビティ面が凹凸状を呈しており、第2の金型も真空引き用孔を具備しており、双方の金型を高温雰囲気として第1、第2のシートを軟化もしくは溶融させ、前記真空引き孔から真空吸引し、中空針を第1、第2の金型のいずれか一方を貫通させ、さらに第1、第2のシートのいずれか一方を貫通させて第1、第2のシートの間に臨ませて圧力流体を提供することにより、第1のシートを凹凸状に加工してその凹部を第2のシートに溶着させ、その凸部が第2のシートから突出した中間体を製造する第2のステップ、
連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第3のステップ、からなる防食被覆材の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂からなり、凹凸状をなす第1のシートを真空成形にて用意し、かつ、熱可塑性樹脂からなる第2のシートを用意する第1のステップ、
対をなす第1、第2の金型のうち、第1の金型はそのシートに対向するキャビティ面が凹凸状を呈しており、第1のシートと第2のシートを積層して積層体を形成し、双方の金型を高温雰囲気として第1、第2のシートを軟化もしくは溶融させ、第1のシートの凸部が第1の金型の凹部に遊嵌するようにして該積層体を第1、第2の金型のキャビティ内で加圧することにより、第1のシートの凹部を第2のシートに溶着させ、その凸部が第2のシートから突出した中間体を製造する第2のステップ、
連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第3のステップ、からなる防食被覆材の製造方法。
【請求項7】
凹凸状をなすキャビティ面と平面状のキャビティ面を有する金型内に熱可塑性樹脂を押し出してパリソンを形成し、パリソン内に圧力流体を提供して膨らまし、パリソンをキャビティ面に押し付け、第1、第2の金型を型閉めして加圧することにより、連続する積層姿勢のシートであって、平面状のシート部分に凹凸状のシート部分の凹部が溶着し、凸部が平面状のシート部分から突出した中間体を製造する第1のステップ、
連続した凸部をそれらの途中位置で切断することにより、第2のシートから成形された面部の表面に、第1のシートから成形された前記面部と溶着される底部、および、該底部の両端からテーパー状に立ち上がる2つの突部であって双方の突部間の幅が徐々に広がっている突部、から構成された複数のアンカー部が溶着されてなる防食被覆材を製造する第2のステップ、からなる防食被覆材の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかの製造方法で製造された防食被覆材を型枠とともにセットし、型枠内にコンクリートを充填し、脱型することにより、その内部に防食被覆材のアンカー部が埋設され、その表面に防食被覆材の面部が被覆してなるコンクリート部材を製造するコンクリート部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−197624(P2012−197624A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63065(P2011−63065)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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