説明

防鼠性樹脂組成物及びそれを用いた被覆電線

【課題】従来に比べて防鼠効果が向上した防鼠性樹脂組成物及び該防鼠性樹脂組成物を用いた被覆電線を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂に防鼠剤としてカプサイシン(分子式C18H27NO3)とピペリン(カプサイシンの異性体)を配合した防鼠性樹脂組成物。ポリ塩化ビニル系樹脂に防鼠剤としてカプサイシンとピペリンを配合した防鼠性樹脂組成物。樹脂100質量部に対するカプサイシンとピペリンの配合量は、それぞれ2〜10質量部、1〜5質量部が好ましい。導体と、上記防鼠性樹脂組成物とを含む被覆電線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防鼠性樹脂組成物及びそれを用いた被覆電線に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、塩化ビニル樹脂系組成物やポリオレフィン系樹脂組成物によって被覆された絶縁電線、ケーブル等は、屋内外に布設され、常時外界と接した状態となっている。このため、塩化ビニル樹脂組成物の被覆された絶縁電線、ケーブル等のシースは、合成樹脂等を齧る鼠によって噛み傷を受ける場合がある。特に、絶縁電線、ケーブル等における導体を被覆している塩化ビニル樹脂組成物やポリオレフィン系樹脂組成物は、導体間の絶縁、大地との絶縁を図り地絡の防止をするために重要なものであり、鼠による絶縁電線・ケーブル等の絶縁体やシースへの損傷は、絶縁電線・ケーブル等に重大な影響を与えている。
防鼠用電線ケーブルには、金属テープを巻くことで対応できるが、柔軟性に劣り作業性が悪いことで、忌避効果のある防鼠剤を用いて対処している。
特許文献1には、塩化ビニル系樹脂にカプサイシンとシクロヘキシミドを配合して構成した防鼠性塩化ビニル樹脂組成物が記載されている。特許文献2には、可塑剤、安定剤、その他必要とする充填剤を配合してなる塩化ビニル系樹脂に防鼠剤及び耐微生物剤を配合した防鼠性樹脂組成物とし、樹脂組成物表面に微生物が付着するのを防止し、樹脂組成物の防鼠効果を長期間に渡って持続できる旨の記載がある。
しかしながら、従来の防鼠性樹脂組成物は、防鼠効果が必ずしも十分であるとは言えず、更なる防鼠効果の向上が望まれている。
【特許文献1】特開平5−298941号公報
【特許文献2】特開2001−229734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来に比べて防鼠効果が向上した防鼠性樹脂組成物及びそれを含む被覆電線を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の防鼠性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂にカプサイシンとピペリンを配合したものである。
本発明において、ピペリン(分子式:C1719NO)は、その異性体のカビシンを含む。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、カプサイシンとピペリンを併用したことにより辛さが増大し、従来に比べて防鼠効果が向上した防鼠性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の防鼠性樹脂組成物に用いられるポリオレフィン系樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂について説明する。
ポリオレフィン系樹脂には、オレフィン単独重合体、またはオレフィンとの共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンとハロゲン化オレフィンとを併用することもできるし、他の共重合可能なモノマーとの共重合体とすることもできる。他の共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート、酢酸ビニル、等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体のいずれか1種または2種以上の混合物構成したものが含まれる。
本発明の防鼠性樹脂組成物に用いられるポリ塩化ビニル系樹脂について説明する。
ポリ塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィンの内少なくとも塩化ビニルをモノマーとして含むハロゲン化オレフィンからなる単独または共重合体である。
【0007】
ポリオレフィン系樹脂またはポリ塩化ビニル系樹脂は、上記ポリマーのみで構成し得るが、通常、種々の公知の添加剤が含まれる樹脂組成物である。可塑剤としては、フタル酸系エステル、アジピン酸系ポリエステル等が挙げられる。安定剤としては、Pb系安定剤、カルシウム亜鉛系安定剤等が挙げられる。充填剤としては、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、難燃剤としては、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))等がある。上記以外の公知の添加剤、例えば、酸化防止剤等も用いることができ、これら添加剤は、いずれか1種又は2種以上で構成してもよい。
【0008】
本発明では、防鼠剤として、カプサイシン(分子式:C1827NO)を用いる。本発明においてカプサイシンとは、その異性体、あるいは辛味を有するそれらの誘導体も包含するものとする。また、防鼠剤のピペリンもカプサイシンと同様にその異性体、あるいは辛味を有するそれらの誘導体も包含するものとする。
本発明の防鼠性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂組成物100質量部に対し、カプサイシンが2〜10質量部、ピペリンが1〜5質量部配合されることが好ましく、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物100質量部に対し、カプサイシンが2〜10質量部、ピペリンが1〜5質量部配合されることが好ましい。防鼠剤を上記範囲で用いることにより、大きな防鼠効果を得ることができる。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の防鼠性樹脂組成物を用いた具体的実施例について比較例と比較して説明する。なお、実施例、比較例におけるポリ塩化ビニル系樹脂組成物には、可塑剤、安定剤、その他必要とする充填剤が配合されている。
【0010】
実施例1〜4、比較例1〜4
ポリ塩化ビニル系樹脂組成物、防鼠剤のカプサイシン、ピペリンを表1に記載の量(質量部)用いて、混合して作製した防鼠性樹脂組成物の防鼠効果を以下により評価した。
図1に示すような導体2、絶縁体3、及び外装シース4からなるケーブル1の外装シースに防鼠性樹脂組成物を用いた。このケーブルを以下、サンプルという。
試験方法
サンプルは、夏期に建築物の床下に3ヶ月放置し、さらに恒温恒室槽(30℃×85%RH×30日)に放置した後、このサンプルを48時間絶食させたラットを収容したケージ(40cm×22cm×18cm)内に各2個ずつ設置し、30分後、1時間後、4時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、の咬害の有無と咬害の程度を観察し、以下により評価した。結果を表1に示した。
0:無傷又は試し傷、
1〜3:咬害の程度、1:試し咬み、2:広範囲に咬み跡あり、3:絶縁体が広範囲に露出
【0011】
【表1】

【0012】
上表から、本発明の防鼠性樹脂組成物の防鼠効果は比較例に比べて格段に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例において、サンプルとして用いたケーブルの断面を示す。
【符号の説明】
【0014】
1:ケーブル、2:導体、3:絶縁体、4:外装シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂にカプサイシンとピペリンを配合した防鼠性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリ塩化ビニル系樹脂にカプサイシンとピペリンを配合した防鼠性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂またはポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、カプサイシンが2〜10質量部、ピペリンが1〜5質量部配合される請求項1または2に記載の防鼠性樹脂組成物。
【請求項4】
導体と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防鼠性樹脂組成物とを含む被覆電線。

【図1】
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【公開番号】特開2010−31147(P2010−31147A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195000(P2008−195000)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】