説明

降下搬送装置

【課題】物品を迅速に搬送すると共に停止時の振動や衝撃をなくし、物品が安定した状態で静かに搬送される、重力を利用した降下搬送装置を提供する。
【解決手段】降下搬送装置1は、枠体10の上部及び下部に対をなす輪体21、22と、輪体21、22に張架される無端条体30と、無端条体30に保持される搬送台40を備え、また、供給位置91において搬送台40の動きをロック及びロック解除するロック装置を備えている。ロック装置は、搬送台40の荷重に応じたトルクを受けるロータリーダンパーを備え、物品が前記搬送台に載置されたときに、ロータリーダンパーに働くトルクが所定値以上となって回転を始めることによりロック解除となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重力を利用して物品を上方から下方に搬送する降下搬送装置に関し、特に、迅速に搬送すると共に停止時の振動や衝撃をなくし、搬送する物品が安定した状態で静かに搬送される降下搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、物品を所定の高さに位置するベルトコンベアから、これより一段低い位置のベルトコンベアに搬送することがあり、この場合には上位コンベアと下位コンベアとの間に降下搬送装置を設けることになる。そして、特許文献1には、重力をエネルギー源として用いる降下搬送装置が紹介されている。
【0003】
すなわち、図6に示すように特許文献1に記載された降下搬送装置101は、床上に立設される枠体110の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体121、122と、両輪体121、122間に張架されて往復走行する一対の無端条体130と、無端条体130に保持される搬送台140とを備え、物品を上方の供給位置191から下方の排出位置192へ重力により搬送するものである。
【0004】
搬送台140は、無端条体130に1個のみ取り付けられており、供給位置191と排出位置192との間を往復走行するようになっている。図7では、便宜的に2つの搬送台140が示されているが、供給位置191に停止している状態と排出位置192に停止している状態とを示すためであり、2つの搬送台140が取り付けられているわけではない。
【0005】
無端条体130の搬送台140と対向する側には、カウンタウエート150が取り付けられている。そして、搬送台140が空の場合は、搬送台140よりもカウンタウエート150の方が重いので、搬送台140は供給位置191へ向かって上昇する。搬送する物品が搬送台140の上に載置されると、搬送台140の側がカウンタウエート150よりも重くなるので、搬送台140は排出位置192へ向かって降下する。
【0006】
図8に示すように、搬送台140は、物品が載置される載置部141と無端条体130に取り付けられる保持部142とを備えている。保持部142は、入口側と出口側との中心部において、両サイドに突出したピン145を備え、これによって無端条体130に取り付けられる。両サイドには、上下にローラー146、146も取り付けられている。そして、枠体110に取り付けられたガイドレール111が、ローラー146、146を拘束することにより、載置部141の上面が水平となるように姿勢を強制することができる。
【0007】
載置部141は、物品の移動を容易にするために複数のローラー143を備えると共に、その出口側に設けられたヒンジ機構144によって保持部142に対して回動可能に形成されている。すなわち、ヒンジ機構144を支点として、搬送台140の入口側において、載置部141が保持部142に対して接離自在となっている。そして、排出位置192では、載置部141の入口側が出口側よりも少し高くなるように離間させることにより、載置された物品を容易に排出することができる。
【0008】
以上のような構成により、搬送台140は、供給位置191では載置部141を水平にして物品を受け取り、排出位置192では載置部141を傾斜させることにより物品を払い出すことができる。そして、電力等の動力を使用することなく、物品を上位コンベアから下位コンベアに移載することができる。しかし、降下搬送装置101には、次のような解決すべき課題が残されている。
【0009】
第1の課題は、搬送台140が供給位置191で物品を受け取る際に、移載の途中で搬送台140が沈み込みを起こし、物品が転倒することである。つまり、供給位置191で搬送台140が固定されていないために、荷受するには不安定な状態にあることである。そして、搬送台140を自動的に固定したり、自動的に固定を解除したりすることは困難な問題である。
【0010】
第2の課題は、搬送台140の運動が重力を利用するものであるために、常に加速運動となり、停止させるときに大きな衝撃力となることである。特許文献2には、モータにより回転されるウォームホイールを用いて、最高スピードを制限する方法が記載されている。しかしながら、この方法は、搬送能力を低下させる上に結局はブレーキを必要とする。また、電源も必要となる。
【0011】
第3の課題は、ブレーキを用いる場合に、完全に停止するまでブレーキを掛け続けると停止位置が一定とならず、また、完全に停止する前にブレーキを緩めると停止時の衝撃を完全に除けないことである。したがって、停止時の衝撃を完全に吸収するような手段が望まれている。
【0012】
第4の課題は、搬送台140の載置部141に備えられた複数のローラー143は、小さな傾斜角で物品を排出できるように転がり抵抗の小さいものが選ばれるが、ローラー143が転がりやすくなると、荷受の際も降下中も、物品の安定性が失われ、載置部141の上で不必要な動きをすることである。
【特許文献1】特開2007−290805号公報
【特許文献2】特開2007−238265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、前記第1〜第4の課題を解決することである。すなわち、搬送台が供給位置で自動的にロックされ、物品を受け取るまでは動かず、物品を受け取った後自動的にロックが解除されて速やかに降下することである。また、搬送台の運動は、重力によって速やかに加速されると共に、停止する少し前にブレーキが掛かり、停止時には衝撃が完全に吸収されることである。さらに、搬送される物品が、搬送台へ安定した状態で載置されることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る降下搬送装置は、床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて往復走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送するという基本的手段を採用し、かつ、前記供給位置において前記搬送台の動きをロック及びロック解除させるロック装置を備え、前記ロック装置は、前記搬送台の荷重に応じたトルクを受けるロータリーダンパーを備え、前記物品が前記搬送台に載置されたときに、前記ロータリーダンパーに働くトルクが所定値以上となって回転を始めることにより、ロック解除となる手段を採用している。また、本発明の請求項2に係る降下搬送装置は、請求項1に記載の降下搬送装置であって、前記ロータリーダンパーが、ワンウエイクラッチを内蔵している手段を採用している。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る降下搬送装置は、前記基本的手段を採用し、かつ、前記上部に配設される輪体の回転軸及び/又は前記下部に配設される輪体の回転軸にディスクを備えるディスクブレーキが形成され、前記搬送台が走行する所定の区間で減速する手段を採用している。また、請求項4に係る降下搬送装置は、請求項3に記載の降下搬送装置であって、前記ディスクが、前記輪体の回転軸にワンウエイクラッチを介して取り付けられている手段を採用している。さらに、請求項5に係る降下搬送装置は、請求項3又は4に記載の降下搬送装置であって、前記減速区間が、前記搬送台の上昇時における前記供給位置の近傍及び/又は前記搬送台の降下時における前記排出位置の近傍である手段を採用している。
【0016】
また、本発明の請求項6に係る降下搬送装置は、前記基本的手段を採用し、かつ、停止時の衝撃を緩衝するために、ロータリーダンパーを用いた緩衝器を備えている手段を採用している。また、本発明の請求項7に係る降下搬送装置は、請求項6に記載の降下搬送装置であって、前記ロータリーダンパーが、ワンウエイクラッチを内蔵している手段を採用している。さらに、本発明の請求項8に係る降下搬送装置は、請求項6又は7に記載の降下搬送装置であって、前記無端条体が、前記搬送台に対するカウンタウエートを備え、前記緩衝器が、前記搬送台の停止位置及び/又は前記カウンタウエートの停止位置に取り付けられている手段を採用している。
【0017】
また、本発明の請求項9に係る降下搬送装置は、前記基本的手段を採用し、かつ、前記搬送台が、物品が載置される載置部と前記無端条体に固定される保持部とを備え、前記載置部は、物品の移動を容易にする複数のローラーを備えると共にその出口側に設けられたヒンジ機構により前記保持部に対して回動可能に形成され、前記保持部は、前記ローラーの回転を阻止する摩擦部材を備え、前記ローラーは、搬送時には前記摩擦部材に密着して回転が阻止され、排出時には前記摩擦部材から離間して回転自在となる手段を採用している。
【発明の効果】
【0018】
本発明の降下搬送装置は、上記の手段を採用することにより、前述の課題を解決することができる。すなわち、請求項1及び2に記載のロック装置を備えることにより、搬送台が供給位置で自動的にロックされ、物品を受け取った後自動的にロック解除されて速やかに降下することができる。
【0019】
また、請求項3乃至5に記載のディスクブレーキを備えることにより、停止する少し前に所定の位置でブレーキが掛かり減速することができる。また、請求項6乃至8に記載の緩衝器を備えることにより停止時の衝撃を完全に吸収することができる。さらに、請求項9に記載の搬送台を備えることにより、物品が搬送台に安定した状態で載置されて搬送されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図に示す実施例により説明するが、これらの図は本願発明を何ら限定するものではない。
本発明の降下搬送装置1は、図1に示すように、床上に立設される枠体10の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体21、22と、輪体21、22間に張架されて往復走行する一対の無端条体30と、無端条体30に保持される搬送台40とを備え、物品を上方の供給位置91から下方の排出位置92へ重力により搬送するものである。なお、図1において、物品の供給口と排出口とは、枠体10に対して反対側となっているが、同じ側に設けることもできる。以上が本発明の基本的要素である。
【0021】
そして、本発明の降下搬送装置1は、供給位置91において搬送台40の動きを自動的に固定したり、その固定を自動的に解除したりできる、すなわち、ロック及びロック解除が可能なロック装置60を備えている。図2はその一例を示すものであり、(a)はロック装置60の取り付け状態を、(b)は搬送台40がロックされた状態を、(c)はロックが解除された直後の状態を示している。図2(b)及び(c)に示すように、搬送台40には、ロック装置60に係合するロック棒48が取り付けられ、その先端には鉤状部49を備えている。
【0022】
ロック装置60は、ロック棒48に係合する係合部61とロータリーダンパー66を備えるダンパー部62で構成されている。搬送台40のロック棒48は、係合部61の係止片63と係合し、係合部61のロックアーム64が、ダンパー部62の係止片67と係合するようになっている。
【0023】
ロック装置60は、図2(b)の姿勢で搬送台40を待ち受け、このとき係止片63はバネ等の付勢により定位置に位置している。搬送台40が到着すると、係止片63はロック棒48の鉤状部49に押されて一旦スライドし、鉤状部49の通過と共に定位置に復帰して係合するようになっている。これにより、搬送台40は、供給位置91でロックされた状態となる。
【0024】
係合部61には、搬送台40の荷重が係止片63に掛るので、回転軸65を中心とするトルクが働いている。このトルクは、ロックアーム64及び係止片67を経由してロータリーダンパー66を回転させようとする回転力となっている。
したがって、ロータリーダンパー66は、搬送台40の荷重に応じたトルクを受けている。しかし、ロータリーダンパー66は所定の値以下のトルクでは回転しないので、搬送台40が空の状態では、トルクが小さいのでロータリーダンパー66を回転させることができない。すなわち、搬送台40の動きがロックされた状態となり、物品が載置される過程で沈み込みを起こさない状態となっている。
【0025】
物品が搬送台40に載置されるときに、物品の重量が搬送台40へ掛る様子を詳しく調べると、物品の一部が載置された状態では、物品の重量の二分の一までの力しか働かない。そして、物品の全部が載置されると、その瞬間に物品の全重力の力が働くことになる。したがって、搬送台40に働く物品の力は、全重力の半分の力が瞬間的に増加することになり、本発明のロック装置60はこの特性を利用している。
【0026】
すなわち、搬送台40に物品の全部が載置された瞬間に、ロータリーダンパー66に所定の値以上のトルクが働いてダンパー部62が回転し、図2(c)に示す状態となる。これによって、ロックアーム64が係止片67による拘束を解かれ、係合部61が回転軸65を中心として回転可能となり、図2(c)に示す状態となる。この結果、搬送台40のロック棒48が係止片63による拘束を解かれ、搬送台40は重力により降下することになる。
【0027】
搬送台40が、ロック装置60の拘束を解かれると、搬送台40によるトルクがなくなり、係合部61にはバネ69の力によって復帰するトルクが働き、ダンパー部62には復帰荷重68によって復帰するトルクが働く。したがって、ロック装置60は、速やかに図2(b)の状態へ復帰することになる。ロータリーダンパー66が、ワンウエイクラッチを内蔵するものである場合には、復帰するときに無抵抗となって、速やかに復帰することができる。
【0028】
搬送台40は、物品の全部が載置されるまではロック装置60によりロックされているので、移載の途中で沈み込みを起こさず、物品が転倒することもない。そして、物品の全部が載置された瞬間にロックが解除されて降下する。このようにして、本発明の降下搬送装置1は、供給位置91において、搬送台40を自動的にロックし、自動的にロック解除することができる。
【0029】
また、本発明の降下搬送装置1は、枠体10の上部で対をなして配設される輪体21の回転軸23及び/又は枠体10の下部で対をなして配設される輪体22の回転軸24にディスク71を備えるディスクブレーキ70が形成され、搬送台40が走行する所定の区間で減速するようにしている。
【0030】
図3は、ディスクブレーキ70の一例を示す説明図であり、(a)はディスクブレーキ70の構成を、(b)はディスクブレーキ70を下部の回転軸24に取り付けた場合の状態を示している。回転軸24にはディスク71が設けられていると共に、回転軸24の回転が、アイドルギア72を介して、ブレーキギア73及びその回転軸74を回転するようになっている。
【0031】
ディスク71は、一対のブレーキロッド75によって制動される。一対のブレーキロッド75は、その中央部がピン76で連結され、ブレーキロッド75の一端側77を相互に接近させると他端側78が相互に離間し、一端側77を相互に離間させると他端側78が相互に接近するようになっている。また、ブレーキロッド75の一端側77は、回転軸74に螺合されており、回転軸74の回転によって接離するように構成されている。さらに、ブレーキロッド75の他端側78はブレーキシューとしてディスク71を挟持するように構成されている。
【0032】
ここで、回転軸24は、搬送台40の往復走行(上昇及び下降)に伴って、往復回転するものである。そして、回転軸74は、アイドルギア72及びブレーキギア73によって回転軸24と連結されている。したがって、回転軸24の往復回転に伴って、回転軸74も往復回転し、さらに、これに伴ってブレーキロッド75の一端側77が軸方向に往復移動することになる。したがって、回転軸74とブレーキロッド75との螺合位置を調節することにより、搬送台40が走行する任意の場所でディスクブレーキ70が働くようにすることができる。
【0033】
ディスクブレーキ70の制動を解除する方法は種々考えられるが、ディスク71を回転軸24に取り付けるときに、ワンウエイクラッチ79を介して取り付けることにより簡単に解除を行うことができる。例えば、搬送台40の上昇時における供給位置91の近傍で減速するようにディスクブレーキ70を設定した場合に、停止位置では制動が働いた状態となっている。
【0034】
このとき、ディスク71と回転軸24とが、ワンウエイクラッチ79を介して取り付けられていると、回転軸24は、搬送台40が降下する方向には自由に回転することができる。この結果、物品が載置された搬送台40は、ディスク71が制動された状態であっても自由に降下することができる。そして、回転軸24の回転に伴って回転軸74も回転するので、ブレーキロッド75の一端側77が軸方向に移動して制動が解除されることになる。
【0035】
同様にして、搬送台40の降下時における排出位置92の近傍で減速するようなディスクブレーキ70を設定することもできる。そして、上昇時と降下時との両方でブレーキが働くように、2つのディスクブレーキ70を備えることが実際的であり、好ましい。この場合、上部の回転軸23と下部の回転軸24に、夫々ディスクブレーキ70を設けても良いし、回転軸23又は回転軸24の何れか一方に、両方のディスクブレーキ70を設けることも可能である。図3(b)は、下部の回転軸24に、2つのディスクブレーキ70、70を設けた例を示している。
【0036】
本発明のディスクブレーキ70は、搬送台40の上昇時における停止位置となる供給位置91の近傍、及び搬送台40の降下時における停止位置となる排出位置92の近傍で制動が働くようにすることができる。搬送台40は、その他の位置では重力による加速運動を行うことになる。したがって、搬送台40は、走行過程の必要な区間で加速運動を行い、必要な区間で減速運動を行うことが可能であり、迅速な運動を行うことができる。
【0037】
また、本発明の降下搬送装置1は、停止時の衝撃を緩和するために、ロータリーダンパー81を用いた緩衝器80を備えている。図4(a)及び(b)は緩衝器80の一例を示す説明図であり、図4(c)は、緩衝器80を排出位置92付近に取り付けた例を示す説明図である。
【0038】
図4(a)及び(b)に示すように、緩衝器80は、ロータリーダンパー81を主体として、係止片82及び復帰荷重83等と共に一体化して形成され、枠体10に取り付けられる。また、搬送台40には、係止片82と係合可能な緩衝部材85が設けられている。そして、供給位置91及び/又は排出位置92において、緩衝器80の係止片82と搬送台40の緩衝部材85が係合するように設置する。
【0039】
係止片82と緩衝部材85が係合すると、ロータリーダンパー81はトルクを受けて回転することになる。ロータリーダンパー81はトルクに対して抵抗力を発するので、係止片82を介して搬送台40に制動力が働くことになり、停止時の衝撃を緩和することができる。図4(a)の緩衝器80は、搬送台40が降下した後停止する排出位置92で使用するものであり、図4(b)の緩衝器80は、搬送台40が上昇した後停止する供給位置91で使用するものである。
【0040】
ロータリーダンパー81を使用する緩衝器80は、スプリングを用いた緩衝器等と違って、停止時に反動を生じないことが特徴である。緩衝部材85との係合によって、緩衝器80の係止片82が回転する角度は、90度程度である。停止した搬送台40が発進して停止位置から離れると、復帰荷重83によって係止片82が逆転し、元の状態に復帰する。また、ワンウエイクラッチを内臓したロータリーダンパー81を使用することにより、速やかに復帰することができる。
【0041】
緩衝器80は、搬送台40の上下両方の停止位置に設置することが好ましい。また、搬送台40と同様に、カウンタウエート50についても、上下両方の停止位置に緩衝器80を備えることが好ましい。搬送台40とカウンタウエート50の両方に緩衝器80を備えることにより、無端条体30に余分な張力が働くこともなく、搬送台40の停止位置におけるバウンドを解消することができる。
【0042】
さらに、前述のディスクブレーキ70と併用することが好ましい。緩衝器80で速やかに減速し、停止の直前でディスクブレーキ70が働くようにする。これによって、衝撃力が完全に吸収されて短時間で静かに停止することができる。なお、図4(c)は、枠体10の下部において、搬送台40及びカウンタウエート50についての緩衝器80、80を便宜的に示しているが、実際には、搬送台40とカウンタウエート50が図のように位置することはない。
【0043】
また、緩衝器80及びディスクブレーキ70と共に、搬送台40がロック装置60によってロックされる際に、ショックアブソーバー(図示せず)を併用することも好ましい。例えば、供給位置91に接近した搬送台40は、緩衝器80により減速され、ディスクブレーキ70によってさらに減速するが停止位置を僅かに通過し、ショックアブソーバーによって最終的に停止する。搬送台40が停止位置を僅かに通過することにより、ロック棒48の鉤状部49とロック装置60の係止片63との係合が、一層確実に行われることになる。
【0044】
図5に示すように、搬送台40は、物品が載置される載置部41と無端条体30に取り付けられる保持部42とを備えている。載置部41は、物品の移動を容易にするために複数のローラー43を備えると共に、その出口側に設けられたヒンジ機構44によって保持部42に対して回動可能に形成されている。すなわち、ヒンジ機構44を支点として、搬送台40の入口側において、載置部41が保持部42に対して接離自在となっている。そして、排出位置92では、載置部41の入口側が出口側よりも少し高くなるように離間させることにより、載置された物品を容易に排出することができる。
【0045】
このような構成により、搬送台40は、供給位置91では載置部41を水平にして物品を受け取り、排出位置92では載置部41を傾斜させることにより物品を払い出すことができる。そして、電力等の動力を使用することなく、物品を上位コンベアから下位コンベアに移載することができる。
【0046】
さらに、本発明における搬送台40は、保持部42にローラー43の回転を阻止する摩擦部材47を備えている。そして、載置部41が水平であるときには、摩擦部材47がローラー43に密着し、載置部41がヒンジ機構44を支点として回動して傾斜しているときには、摩擦部材47がローラー43から離間するようになっている。
【0047】
この結果、載置部41が水平状態で物品を搬送しているときは、摩擦部材47によってローラー43の回転が阻止され、載置された物品を安定して搬送することができる。また、搬送台40が排出位置92に位置するときは、載置部41が傾斜すると共に、ローラー43が摩擦部材47による拘束を解かれるので自由に回転し、物品は速やかに排出されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の降下搬送装置の一例を示す概略全体図である。
【図2】本発明のロック装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明のディスクブレーキの一例を示す概略図である。
【図4】本発明の緩衝器の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の搬送台の一例を示す概略図である。
【図6】従来の降下搬送装置を示す概略全体図である。
【図7】従来の搬送台を示す概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1、101 降下搬送装置
10、110 枠体
21、22、121、122 輪体
23、24、65、74 回転軸
30、130 無端条体
40、140 搬送台
41、141 載置部
42、142 保持部
43、143、146 ローラー
44、144 ヒンジ機構
47 摩擦部材
48 ロック棒
49 鉤状部
50、150 カウンタウエート
60 ロック装置
61 係合部
62 ダンパー部
63、67、82 係止片
64 ロックアーム
66、81 ロータリーダンパー
68 復帰荷重
69 バネ
70 ディスクブレーキ
71 ディスク
72 アイドルギア
73 ブレーキギア
75 ブレーキロッド
76 ピン
77 一端側
78 他端側
79 ワンウエイクラッチ
80 緩衝器
83 復帰荷重
85 緩衝部材
91、191 供給位置
92、192 排出位置
111 ガイドレール
145 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて往復走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送装置であって、
前記供給位置において前記搬送台の動きをロック及びロック解除させるロック装置を備え、
前記ロック装置は、前記搬送台の荷重に応じたトルクを受けるロータリーダンパーを備え、前記物品が前記搬送台に載置されたときに、前記ロータリーダンパーに働くトルクが所定値以上となって回転を始めることにより、ロック解除となることを特徴とする降下搬送装置。
【請求項2】
前記ロータリーダンパーが、ワンウエイクラッチを内蔵していることを特徴とする請求項1に記載の降下搬送装置。
【請求項3】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて往復走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送装置であって、
前記上部に配設される輪体の回転軸及び/又は前記下部に配設される輪体の回転軸にディスクを備えるディスクブレーキが形成され、前記搬送台が走行する所定の区間で減速するようにしたことを特徴とする降下搬送装置。
【請求項4】
前記ディスクが、前記輪体の回転軸にワンウエイクラッチを介して取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の降下搬送装置。
【請求項5】
前記減速区間が、前記搬送台の上昇時における前記供給位置の近傍及び/又は前記搬送台の降下時における前記排出位置の近傍であることを特徴とする請求項3又は4に記載の降下搬送装置。
【請求項6】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて往復走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送装置であって、
停止時の衝撃を緩衝するために、ロータリーダンパーを用いた緩衝器を備えていることを特徴とする降下搬送装置。
【請求項7】
前記ロータリーダンパーが、ワンウエイクラッチを内蔵していることを特徴とする請求項6に記載の降下搬送装置。
【請求項8】
前記無端条体が、前記搬送台に対するカウンタウエートを備え、前記緩衝器が、前記搬送台の停止位置及び/又は前記カウンタウエートの停止位置に取り付けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の降下搬送装置。
【請求項9】
床上に立設される枠体の上部及び下部にそれぞれ対をなして回転自在に配設される輪体と、前記輪体間に張架されて往復走行する一対の無端条体と、前記無端条体に保持される搬送台とを備え、物品を上方の供給位置から下方の排出位置へ重力により搬送する降下搬送装置であって、
前記搬送台が、物品が載置される載置部と前記無端条体に固定される保持部とを備え、前記載置部は、物品の移動を容易にする複数のローラーを備えると共にその出口側に設けられたヒンジ機構により前記保持部に対して回動可能に形成され、前記保持部は、前記ローラーの回転を阻止する摩擦部材を備え、前記ローラーは、搬送時には前記摩擦部材に密着して回転が阻止され、排出時には前記摩擦部材から離間して回転自在となることを特徴とする降下搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−89945(P2010−89945A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263906(P2008−263906)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成20年9月9〜12日 社団法人日本ロジスティクスシステム協会、社団法人日本能率協会他が主催の「国際物流総合展 2008」に出品
【出願人】(392024909)ホクショー株式会社 (16)