説明

降温用噴霧システム

【課題】 人体や衣服に付着しても問題とならないミストを、常に放出可能な降温用噴霧システムを提供する。
【解決手段】 水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下する降温用噴霧システムにおいて、水を加圧して送り出すポンプと、上記ポンプに元弁を介して接続されるとともに、水をミストとして噴霧する噴霧ヘッドとを連通する配水管と、上記ポンプおよび上記元弁を制御するミスト制御盤と、を備え、上記ミスト制御盤は、所定の時刻に所定時間の事前噴霧を行うことを特徴とし、早朝など、日中の暑い盛りに放出される前に、所定時間の事前噴霧を行うことで、配水管内の残水を放出することができ、日中の気象状況に応じて自動噴霧する際には、清浄な水で放水することができる。また、タンクを利用する際に、タンクの水を入れ替えることで、常に清浄な状態とすることできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水を噴霧したミストの蒸散による潜熱による冷却作用を用い、周囲の気温を降下させる降温用噴霧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下させる降温用噴霧システムにおいて、水を加圧して送り出すポンプと、上記ポンプに元弁を介して接続される主配水管と、上記主配水管に選択弁を介して接続され、上記主配水管と水をミストとして噴霧する噴霧ヘッドとを連通する子配水管と、上記主配水管に排水弁を介して接続され、上記主排水管内の水を排水する排水配管と、上記ポンプ、上記元弁、上記選択弁および上記排水弁を制御するミスト制御盤と、を備え、上記ミスト制御盤は、噴霧を始めるとき、上記元弁と上記排水弁とを開放したのち上記ポンプを作動し、その後、上記排水弁を閉じ、しかるのち、上記選択弁を開放して水を上記噴霧ヘッドに配水する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような噴霧システムでは、主配水管内の水圧を所望の値に一旦安定したのち、子配水管に給水することにより、噴霧ノズルに給水される加圧水の水圧が短時間で噴霧水圧に達するので、水圧が低い状態で噴霧されたときにみられる大きな粒径のミストが殆ど噴霧されることがない。
【特許文献1】特開2006−177577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような噴霧システムでは、大きな粒子が発生しないので、ノズルから放出されたミストは降下中に全て蒸散してしまうが、噴霧ノズルにごみが付着した場合など、必ずしも所望のミスト噴霧が行われると限らず、また、利用者がいたずらにミストに触れることが考える。このような場合、ミストが人体や衣服に付着することとなってしまう。
【0005】
通常、このような噴霧システムでは、ミスト噴霧する水として清浄な水道水を用いており、異臭や色の着いたような水源を用いないようにしている。
【0006】
しかし、この降温用噴霧システムは、外気の気象条件に応じて稼動するため、天候によっては連日放水せず、配管の形状によってその配管内に水が滞留したままとなることがある。その結果、この水の滞留によって水が腐敗するおそれがある。
【0007】
この発明の目的は、人体や衣服に付着しても問題とならないミストを、常に放出可能な降温用噴霧システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わる降温用噴霧システムは、水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下する降温用噴霧システムにおいて、水を加圧して送り出すポンプと、上記ポンプに元弁を介して接続されるとともに、水をミストとして噴霧する噴霧ヘッドとを連通する配水管と、上記ポンプおよび上記元弁を制御するミスト制御盤と、を備え、上記ミスト制御盤は、所定の時刻に所定時間の事前噴霧または事前排水を行うことを特徴とする。
【0009】
また、上記ポンプがタンクの水を加圧して送り出すものであって、上記事前噴霧または事前排水の前に上記タンクの水を一旦排水してから再度充水することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明の噴霧システムの効果は、早朝など、日中の暑い盛りにミストが放出される前に、所定時間の事前噴霧を行うことで、配水管内の残水を放出することができ、日中の気象状況に応じて本噴霧する際には、清浄な水で放水することができるという効果がある。
【0011】
また、タンクを利用する際に、タンクの水を入れ替えることで、常に清浄な状態とすることできる。
【0012】
この結果、日中に自動噴霧されるミストに人体や衣服が触れても、異臭や着色等の問題は発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる降温用噴霧システムの構成図である。図2は、実施の形態1に係わる噴霧ヘッドの平面図である。図3は、実施の形態1に係わる噴霧ヘッドの断面図である。図4は、実施の形態1に係わる噴霧ノズルの中心軸に沿った断面図である。図5は、加圧水供給装置の構成図である。図6は、ミスト制御盤の機能ブロック図である。図7は、ミストの噴霧のタイミングチャートである。なお、図2は、噴霧ヘッドを図3のBB断面から下方に見た一部断面図である。また、図3は、噴霧ヘッドを図2のAA断面から水平方向に見た断面図である。
【0014】
実施の形態1に係わる降温用噴霧システム1は、図1に示すように、地上から縦立された2本の柱2の先端にそれぞれ設けられた噴霧ヘッド3、噴霧ヘッド3に供給される加圧水が配水される子配水管4、子配水管4を介して加圧水を供給する加圧水供給装置5、周囲の温度と湿度を測定して加圧水供給装置5に送信する温湿度計6が備えられている。加圧水供給装置5に水道7から水が供給されている。なお、2本の柱2を例に挙げて説明するが、冷却する施設の大きさに従って適宜柱2の本数を定めればよい。
また、噴霧ヘッド3は、地上から縦立されている柱の先端に設けられたことを記載したが、天井から吊り下げられていてもよい。
【0015】
噴霧ヘッド3は、図2に示すように、子配水管4を介して配水された加圧水を6個の噴霧ノズル10に均等に圧力が掛かるよう分配する噴霧ヘッダ11、噴霧ヘッダ11から噴霧ノズル10を所定の距離離すために設けられる6本の延長配管12、加圧水をミストにして噴霧する6個の噴霧ノズル10から構成されている。そして、噴霧ノズル10の設置高度は、4mである。なお、噴霧ノズル10の設置高度は、ミストの平均粒径および最大粒径に依存して定めることができる。
【0016】
ここで、6個の噴霧ノズル10を噴霧ヘッド3に設けることを記載したが、これに限定されず、噴霧ノズル10は1個からN個であればよい。
【0017】
噴霧ヘッダ11は、図2、図3に示すように、中心軸が鉛直方向に配された6角柱状の空洞15が内部に形成されている6角柱である。そして、6角柱の下側の端面の中心に子配水管4が連結される孔16が設けられ、子配水管4と6角柱状の空洞15とが連通されている。また、6角柱の各側面の中心に延長配管12が連結される孔17が設けられ、延長配管12と6角柱状の空洞15とが連通されている。加圧水は片方の端面の孔16から注水され、6個の側面の孔17から延長配管12に給水されていく。噴霧ヘッダ11は、ステンレスからできている。
【0018】
延長配管12は、図3に示すように、円筒管であり、噴霧ヘッダ11の側面に垂直に一方の端部が取り付けられ、長手方向に下向きに彎曲し、他方の端部では、噴霧ヘッダ11の下側の端面を含む水平面から円筒管の中心軸が22.5度お辞儀するように傾いている。延長配管12は、ステンレスからできている。その延長配管12の他方の端部には、直管18が取り付けられ、そこに噴霧ノズル10が嵌合されている。また、直管18は、ステンレスからできている。このように直管18に嵌合された噴霧ノズル10の中心軸は、噴霧ヘッダ11の下側の端面を含む水平面から22.5度下方に傾いている。
【0019】
噴霧ノズル10は、図4に示すように、略円筒状のハウジング19を有している。そして、円筒状のハウジング19の中心軸に沿って、延長配管12を介して供給された加圧水を受ける断面が円形の加圧水受け空洞20、加圧水受け空洞20の下流側に位置し、断面が加圧水受け空洞20の径より小さい円形の空洞21、感圧逆止弁22を収納し、断面が空洞21の径より大きい円形であり、下流側の端面の外縁部が中心方向に突き出されたリブ23により仕切られた弁収納空洞24、駒25を収納し、リブ23の下流側に位置し、断面が加圧水受け空洞20の径と等しい円形の空洞26およびその空洞26に連なる漏斗状の空洞27からなる噴流生成空洞28、漏斗状の空洞27の先端に連なるオリフィス29が連なるようにして設けられている。
【0020】
そして、弁収納空洞24には、空洞21の下流側の開口21aを閉鎖/開放する感圧逆止弁22が挿入されている。感圧逆止弁22は、空洞21の下流側の開口21aに当接したとき、加圧水の流れを遮断する遮断球30、一端が遮断球30に当接し、他端がリブ23に固定され、遮断球30に所定のバネ圧が掛けられるように撓んでいるバネ31から構成されている。
【0021】
そして、空洞21の水圧が所定のバネ圧を越えたとき、遮断球30と空洞21の開口21aとが離反して、その隙間から弁収納空洞24に水が流れ込む。
【0022】
さらに、噴流生成空洞28では、加圧水を旋回噴流として噴出し、漏斗状の空洞27の内側面に衝突させるための駒25が円柱状の空洞26の内側面に接しながら噴霧ノズル10の中心軸方向に摺動しながら移動する。駒25には、側面に螺旋状の溝32が掘られ、その溝32と円柱状の空洞26の内側面とにより加圧水を旋回して噴出する旋回流路が形成される。
【0023】
次に、噴霧ノズル10において加圧水が噴霧される手順について説明する。
【0024】
加圧水受け空洞20に加圧水が注水され、水圧が所定の値に達すると、遮断球30を押して加圧水が弁収納空洞24内に流れ込む。
【0025】
そして、リブ23の中央に形成された孔23aから加圧水が駒25の一方の端面を押して駒25が噴霧ノズル10の中心軸に沿って漏斗状の空洞27の方向に移動され、駒25の側面の溝32を通って加圧水が旋回されながら通過し、溝32の端部から噴流される。
この噴流が漏斗状の空洞27の内側面に衝突して、衝突噴流になりミストとしてオリフィス29から噴霧される。
【0026】
次に、噴霧されたミストについて説明する。この発明におけるミストは、小さな径の水滴を意味し、噴霧ノズル10から噴霧水圧6MPaのときザウター平均粒径が20μmであった。なお、噴霧水圧が2MPa未満であるとミストの平均粒径が大きくなるとともに噴霧量が少なくなり、冷却効果が小さくなってしまう。また、噴霧水圧が高いとミストの平均粒径が小さくなるとともに噴霧流量が多くなるが、噴霧水圧が10MPaを越えると配管などに大きな水撃が加わり、安全上好ましくない。これらの理由から噴霧水圧は、2MPa以上で10MPa以下が好ましい。
【0027】
次に、ミストの噴霧の様子について説明する。ミストは、オリフィス29の近傍では、噴霧ノズル10の中心軸上に中心線を有し、オリフィス29の出口を頂点とする円錐内に噴霧される。この円錐の領域を噴霧領域と称し、円錐の頂角を噴角と称す。また、この噴霧領域の側面を噴霧外縁と称す。
【0028】
この噴霧領域は、オリフィス29の形状を調整することにより噴角を調整することができる。噴角を小さくすると、ミストを遠くまで飛ばすことができるし、噴角を大きくすると、ミストが噴霧ノズル10の近くに漂うことになる。通常、噴角を45度くらいにすることが好ましいが、45度に限るものではない。このように噴角を調整することにより、噴霧領域がオリフィス29を横切る水平面の下方に位置することができる。
【0029】
風が吹いていないとき、ミストが蒸散することにより周囲の空気が冷却され、下降気流が発生するので、噴霧されたミストは、下降気流にともなって降下していく。そして、下降の途中でミストが蒸散しつくす。ミストが蒸散することにより潜熱が空気から奪われ、空気が冷やされる。
【0030】
加圧水供給装置5は、図5に示すように、水道7に接続されて内部にタンク49を備える高圧ポンプ40、高圧ポンプ40の下流側に配設された元弁41、主配水管42内の水を排水する流路を開閉する排水弁43、各噴霧ヘッド3への加圧水の供給を選択する選択弁44、高圧ポンプ40および各種弁を制御するミスト制御盤45から構成されている。選択弁44は、子配水管4がそれぞれ接続されている。ミスト制御盤45に、温湿度計6で計測された乾球温度および湿球温度が入力される。
【0031】
そして、元弁41と選択弁44とは、主配水管42で連通され、主配水管42の途中から分岐する排水配管46により排水弁43が主配水管42に連通されている。主配水管42、排水配管46、子配水管4はそれぞれステンレスからできている。また、高圧ポンプ40と元弁41とは、ゴム製のブレードホース47により連通され、容積式の高圧ポンプ40により発生する脈動を平滑化している。
【0032】
また、加圧水中に含まれる塵埃を取り除くために、高圧ポンプ40の出口に図示しない20μm角開口のフィルタが介在されている。
【0033】
また、主配水管42、子配水管4、噴霧ヘッド3にスケールが沈積しないように、金属イオンの少ない加圧水を供給するために、図示しない軟水器により、高圧ポンプ40のタンク49内に軟水化された水道水が供給されている。
【0034】
ミスト制御盤45は、図6に示すように、温湿度計6により計測された乾球温度および湿球温度に基づいて噴霧の可否を判断する噴霧判断手段50、噴霧可の場合、噴霧量を算出して、高圧ポンプ40からの給水量を制御する給水量制御手段51、高圧ポンプ40および各種弁を制御する噴霧シーケンス制御手段52、湿り空気線図が記憶されている空気線図データベース53を有している。このミスト制御盤45は、CPU、RAM、ROM、インタフェース回路を有するコンピュータから構成されている。
【0035】
次に、加圧水を高圧ポンプ40から供給するシーケンスについて図7を参照して説明する。
【0036】
ミスト制御盤45の噴霧シーケンス制御手段52は、まず元弁41を開放する。同時に排水弁43を開放する。
【0037】
次に、噴霧シーケンス制御手段52は、高圧ポンプ40の作動を開始して、加圧水をブレードホース47から主配水管42に送水する。そうすると、主配水管42内が均一な水圧が掛かるようになる。
【0038】
次に、噴霧シーケンス制御手段52は、排水弁43を閉じる。それにより、主配水管42内の水圧が所望の水圧、例えば、6MPaに達する。
【0039】
次に、噴霧シーケンス制御手段52は、噴霧を行う噴霧ヘッド3に連なる選択弁44を開放して、加圧水が子配水管4を経由して上昇圧力波として伝搬し、噴霧ヘッド3に水が供給される。このときの加圧水受け空洞20に注水されて加わる水圧は4秒の間にほぼ0MPaから6MPaに達する。このように水圧が1MPa以上になると、噴霧ノズル10の感圧逆止弁22が開放されてミストの噴霧が開始される。
【0040】
逆に、ミストの噴霧を終了するときには、噴霧シーケンス制御手段52は、排水弁43を開放することにより下降圧力波が子配水管4内を伝搬され、噴霧ノズル10の加圧水受け空洞内の水圧が1MPa以下に低下するので、感圧逆止弁22が閉まり、ミストの噴霧が停止される。
【0041】
そして、排水弁43が開放されてから約3秒経過後高圧ポンプ40の作動を停止し、選択弁44を閉じる。その後、元弁41と排水弁43とを閉じる。
【0042】
このように、主配水管42内の水圧を所望の値に一旦安定したのち、子配水管4に給水することにより、噴霧ノズル10に給水される加圧水の水圧が数秒の間で0MPaから6MPaに変化することができる。そして、感圧逆止弁22が急激に開放され、水圧の低い状態で噴霧される時間を短くすることができるので、水圧が低い状態で噴霧されたときにみられる大きな粒径のミストが殆ど噴霧されることがない。
【0043】
また、排水弁43を開放すると主配水管42内の水圧が急激に低下し、感圧逆止弁22が急激に閉められ、水圧の低い状態で噴霧される時間が短くすることができるので、水圧が低い状態で噴霧されたときにみられる大きな粒径のミストが殆ど噴霧されることがない。
【0044】
なお、主配水管42に複数の子配水管4が接続されているとき、全ての子配水管4を同時に連通して、全ての噴霧ヘッド3に水を配水してもよいが、好ましくは、図7に示すように、1つの選択弁44をまず開放してそれに連なった噴霧ヘッド3から噴霧を開始し、次に、他の選択弁44を開放することにより、同時に選択弁44を開放するときより、噴霧ノズル10に加わる水圧が急激に噴霧水圧に達し、水圧の低い時間が短く、径の大きな水滴が落下することを防ぐことができる。
【0045】
次に、前述のような気象条件に基づく自動噴霧とは別に、早朝などに行う事前噴霧のシーケンスについて説明する。この事前噴霧の目的は、高圧ポンプ40内のタンク49の水を新鮮な水道水に置き換えるとともに、主配管42および子配管4内に残った前日の水を全て新しい水道水に置き換えることである。
【0046】
ミスト制御盤45の噴霧シーケンス制御手段52は、開始時刻になると事前噴霧を開始する。まずタンク49の水をタンク用排水弁49bを所定の時間開放して排水し、再度水道7より給水させる。この所定の時間は、タンク49の容量等によって設定され、タンク49内の水が完全に排水できる時間が設定される。同様に、給水に必要な時間も水道7からの給水能力に従って設定される。なお、高圧ポンプ40にタンク49を用いず、水道水を直接加圧する場合には、この動作は当然不要である。
【0047】
次に、図7と同様にシーケンスによって、噴霧ノズル10から配管内の水を放出させる。すなわち、噴霧シーケンス制御手段52は、まず元弁41を開放する。同時に排水弁43を開放する。次に、高圧ポンプ40の作動を開始して、加圧水を主配水管42に送水し、主配水管42内が均一な水圧が掛かるようになる。次に、排水弁43を閉じる。それにより、主配水管42内の水圧が所望の水圧に達する。
【0048】
次に、噴霧シーケンス制御手段52は、噴霧ノズル10に連なる各選択弁44を前述の如く順次開放して、各子配管4内が水圧が1MPa以上になると、噴霧ノズル10の感圧逆止弁22が開放されてミストの噴霧が開始され、それぞれ子配管4内の水が放出されるように所定の時間継続する。
【0049】
その後、ミストの噴霧を終了するには、噴霧シーケンス制御手段52は、排水弁43を開放することにより下降圧力波が子配水管4内を伝搬され、噴霧ノズル10の加圧水受け空洞内の水圧が1MPa以下に低下するので、感圧逆止弁22が閉まり、ミストの噴霧が停止される。そして、排水弁43が開放されてから高圧ポンプ40の作動を停止し、選択弁44を閉じ、その後、元弁41と排水弁43とを閉じる。
【0050】
このように、事前噴霧においては、主配管42および各子配管4内に前日の水が残っているが、その容量は個々の配管でそれぞれであり、放出にかかる所定の時間はそれぞれの配管ごとに設定される。
【0051】
次に、ミストの噴霧量の設定方法について説明する。なお、前提として噴霧されたミストは少なくとも1分間で蒸散される。
【0052】
噴霧判断手段50は、温湿度計6から入力される乾球温度(℃)および湿球温度(℃)から湿り空気線図に基づき相対湿度(%)を算出する。次に、噴霧判断手段50は、相対湿度RHが75%以上の場合、ミストを噴霧しても相対湿度が高すぎることになるため感覚温度が下がったと感じられないので、ミストの噴霧を行わない。逆に、相対湿度RHが75%未満の場合、ミストを噴射することにより感覚温度が下がったと感じられるのでミストの噴霧を行う。
【0053】
次に、給水量制御手段51は、温湿度計6の乾球温度が暑い閾値または少し暑い閾値以上であるか否かを判断し、噴霧量を求める。すなわち、乾球温度が予め定められた少し暑い閾値以上の場合、例えば、ミストの噴霧量は、0.0005kgとする。そして、1分間に1m3当たり0.0005kgのミストを噴霧することにより1℃冷却することができる。また、乾球温度が予め定められた暑い閾値以上の場合、例えば、ミストの噴霧量は、0.001kgとする。そして、1分間に1m3当たり0.001kgのミストを噴霧することにより2℃冷却することができる。
【0054】
このような降温用噴霧システム1は、主配水管42内の水圧を所望の値に一旦安定したのち、子配水管4に給水することにより、噴霧ノズル10に給水される加圧水の水圧が短時間で噴霧水圧に達するので、水圧が低い状態で噴霧されたときにみられる大きな粒径のミストが殆ど噴霧されることがない。
【0055】
また、オリフィス29から噴霧されるミストがオリフィス29を横切る水平面よりも下方にあるので、子配水管4などにミストが当たって液滴となり、下方に落下して、子配水管4などの下方にいる人を濡らすことを防止することができる。
【0056】
また、地面から立ち上がった子配水管4が噴霧ヘッダ11に下側の端面において接続され、噴霧されたミストが風に流されても延長配管12により子配水管4から離間されているので、ミストが子配水管4や噴霧ヘッダ11上で結露し、水滴が下方に落ちることがない。
【0057】
また、延長配管12により噴霧ノズル10を広い空間に分散して配設できるので、少ない子配水管4で広い空間に噴霧できる。また、噴霧ヘッダ11に予め延長配管12および噴霧ノズル10を工場で取り付けておき、現地で噴霧ヘッド3を子配水管4に接続すれば良いので、現場での作業を簡略化することができる。
【0058】
なお、延長配管12が同一の長さ、彎曲も同様とした例について説明したが、例えば、長さが長い延長配管12を彎曲の小さいものにし、長さの短い延長配管12を彎曲の大きなものにしてもよい。このようにすると、より均等にミストを噴霧することができる。このように、延長配管12の長さや彎曲の度合いはそれぞれ異なっていても、噴霧領域が噴霧ヘッダ11の下面を含む水平面より下方になるように噴霧ノズル10からの噴角と噴霧ノズル10の中心軸の水平面からの傾きを調整すれば、噴霧ヘッド3にミストが結露して水滴が滴下することを防げる。
【0059】
また、延長配管12が長くすることができる場合、噴霧ノズル10の中心軸の水平面からの傾きを小さくし、延長配管12が長くすることができない場合、噴霧ノズル10の中心軸の水平面からの傾きを大きくしてもよい。すなわち、長さの長い延長配管12、例えば、25cmの場合、噴霧ノズル10の中心軸を水平面から30°傾けることにより、液滴の落下が見られないとき、延長配管12の長さを15cmとすると、噴霧ノズル10の中心軸を水平面から40°傾けることにより、液滴の落下が見られなくなる。
【0060】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係わる降温用噴霧システムは、実施の形態1に係わる降温用噴霧システム1と同じ構成であり、事前噴霧のシーケンスだけが異なる。
【0061】
すなわち、実施の形態1では、各子配管4内の水を噴霧ノズル10から全て放出するのに対して、この実施の形態2では、主配管42の排水弁43を積極的に利用しようとするものである。
【0062】
この実施の形態2では、ミスト制御盤45の噴霧シーケンス制御手段52は、開始時刻になると事前噴霧を開始し、実施の形態1と同様に、まずタンク49の水を入れ換える。
【0063】
次に、主配管42の排水弁43を開放し、各選択弁44を全て開放させる。これにより、主配管42内の水とともに、各子配管4内の水も主配管42側に流れ、排水弁43からほとんど放出される。そして、図7と同様にシーケンスによって、噴霧ノズル10から配管内の水を放出させる。
【0064】
この主配管42および各子配管4内の水のほとんどを、排水弁43から排水するのに必要な所定の時間、排水弁43の開放を継続する。主配管42および各子配管4内の水は、配管の配置を工夫して必要な勾配をつけても全て放水することは不可能なので、少しは残ってしまう。そのため、実施の形態1と同様に制御して、噴霧ノズル10から放水させる。このように、各配管内の水を排水弁42から排水しておくことにより、噴霧ノズル10からの噴霧させる所定の時間は短くすみ、早朝とはいえ、噴霧ノズル10からミストをそれほど放出させたくない場合には有効である。
【0065】
なお、気象条件に基づく動作時に、ミスト放出の当初に残水の放出が短くてすむ場合など、前述の噴霧ノズル10からの放出は省略し、噴霧ではなく排水のみとすることも可能である。
【0066】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係わる降温用噴霧システムは、実施の形態1に係わる降温用噴霧システム1と同じ構成であるが、図示しないが、子配管4の先端部分に第2の排水弁を設置して、子配管4内の水を排水可能とし、その事前噴霧のシーケンスだけが異なる。
【0067】
すなわち、実施の形態1または実施の形態2では、各子配管4内の水を噴霧ノズル10から放出しようとするのに対して、この実施の形態3では、各子配管4の末端部分に第2の排水弁を設けて、事前噴霧ではなく事前排水によってそこから排水しようとするものである。
【0068】
この実施の形態3では、ミスト制御盤45の噴霧シーケンス制御手段52は、開始時刻になると事前噴霧を開始し、実施の形態1と同様に、まずタンク49の水を入れ換える。
【0069】
次に、主配管42の排水弁43を開放し、同時に各子配管4の各選択弁44および図示しない第2の排水弁を全て開放させる。これにより、主配管42内の水とともに、各子配管4内の水もほぼ全部を放出することが可能となる。
【0070】
この主配管42および各子配管4内の水のほとんどを排出した後、図示しない第2の排水弁および選択弁44を閉じ、元弁41を開放する。次に、高圧ポンプ40の作動を開始して、加圧水を主配水管42に送水し、主配水管42内に低圧の水圧が掛かるようにする。次に、排水弁43を閉じ、各選択弁44を前述の如く順次開放して、各子配管4内が水圧が1MPa以上にならないように、それぞれの子配管4内に水を充水していく。
【0071】
終了時には、ポンプを停止し、各選択弁44および元弁41を閉じる。
【0072】
このように、低圧で各配管内の水を充水することで、噴霧ノズル10からミストを放出させることなく、配管内の水を入れ換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる降温用噴霧システムの構成図である。
【図2】この発明の噴霧ヘッドの一部横断面図である。
【図3】この噴霧ヘッドの断面図である。
【図4】噴霧ノズルの中心軸に沿った断面図である。
【図5】実施の形態1に係わる加圧水供給装置の構成図である。
【図6】実施の形態1に係わるミスト制御盤の機能ブロック図である。
【図7】実施の形態1の加圧水供給装置により制御されたミストの噴霧のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1 降温用噴霧システム、2 柱、3噴霧ヘッド、4 子配水管、5 加圧水供給装置、6温湿度計、7 水道、10 噴霧ノズル、11噴霧ヘッダ、12 延長配管、14 圧力変換器、15空洞、16、17 孔、18 直管、19ハウジング、20、21、26、27 空洞、21a 開口、22感圧逆止弁、23 リブ、23 孔、24弁収納空洞、25 駒、28 噴流生成空洞、29オリフィス、30 遮断球、31 バネ、32溝、40 高圧ポンプ、41 元弁、42主配水管、43 排水弁、44 選択弁、45ミスト制御盤、46 排水配管、47 ブレードホース、49 タンク、50噴霧判断手段、51 給水量制御手段、52 噴霧シーケンス制御手段。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水をミストとして噴霧して対象の空間の温度を低下する降温用噴霧システムにおいて、
水を加圧して送り出すポンプと、上記ポンプに元弁を介して接続されるとともに、水をミストとして噴霧する噴霧ヘッドとを連通する配水管と、上記ポンプおよび上記元弁を制御するミスト制御盤と、を備え、
上記ミスト制御盤は、所定の時刻に所定時間の事前噴霧または事前排水を行うことを特徴とする降温用噴霧システム。
【請求項2】
上記ポンプがタンクの水を加圧して送り出すものであって、上記事前噴霧または事前排水の前に、上記タンクの水を一旦排水してから再度充水することを特徴とする請求項1に記載する降温用噴霧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−70007(P2008−70007A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247235(P2006−247235)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】