説明

降温用噴霧装置の制御方法及びその装置並びにマルチ降温システム

【課題】温室等の太陽光が入射する施設内の気温を低下させるための、ミストを発生させる降温用噴霧装置の好適な制御方法を提供する。
【解決手段】温室内の気温又は気温及び湿度のみならず、温室内へ入射する太陽光の強さに応じてミストの噴霧量を調整する。降温用噴霧装置10,20は、加圧ポンプ11,21とこれから供給される加圧水を噴出してミストを形成する噴霧ノズル14,24と、を備えてなり、該降温用噴霧装置を施設内に少なくとも2セット配置して、第1の降温用噴霧装置10の稼働を施設内の気温、又は施設内の気温及び湿度に基づき制御し、第2の前記降温用噴霧装置20の稼働を施設内に入射する太陽光の強さに基づき制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は降温用噴霧装置の制御方法及びその装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
降温用噴霧装置が特許文献1に開示されている。この降温用噴霧装置(以下、単に「噴霧装置」ということがある)はミストを噴霧し、ミストの蒸発に伴う潜熱吸収により効率良く雰囲気気温を降温する。
特許文献1に開示の降温用噴霧装置は2MPa〜10MPaの水圧を発生する加圧ポンプと、所定構造の噴霧ノズル、ポンプとノズルを繋ぐ配水管及び配水管に配設される制水弁を備えてなる。
この降温用噴霧装置は、例えば愛・地球博での利用にみられるように、専ら屋外で用いられていた。
なお、本件発明に関連する文献として、非特許文献1も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−177575号公報
【非特許文献1】原田昌幸,杉山剛,園芸施設におけるドライミスト技術に関する研究 その1 ライン型ユニット(h=2,000)による気温変動特性と熱収支,日本建築学会東海支部研究報告集,第49号,pp.317−320,2011年2月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この噴霧装置の一つの特性は、加圧水のみを噴霧ノズルへ供給してミストを形成するので、稼働に要するエネルギー(電力)が極めて小さくなることにある。
本発明者は、かかる特性に注目してこの降温用噴霧装置を温室の冷却に適用することを検討してきた。
温室は、その内部環境を園芸物等に適した気温に保つためのものであり、冬季におけるエネルギー効率の見地からまた園芸物の光合成を促進するために、太陽光を取り込んでいる。しかしながら太陽光を取り込む結果、夏場の日中においては園芸物の生育適温を超えて内部気温が高くなるので、その気温を強制的に降温しなければならない。
【0005】
この降温手段として、既述の噴霧装置を適用しようとしたとき、次の課題に当面した。
噴霧装置の降温原理はミストの気化に伴う潜熱吸収にあるので、一般的には降温対象空間の気温及び必要に応じて湿度を測定し、測定した結果に応じてミストの噴霧量が制御される。そして噴霧されたミストが蒸発し降温対象空間の気温を下げるのであるが、開放された屋外においては降温対象空間の大気は常に入れ替わるので、降温対象空間の気温及び湿度はほぼ一定の範囲となる。
これに対し、換気はされるものの半密閉空間である温室においては、温室内の気温が太陽光の入射如何により変化する。太陽光の入射量と温室内昇温/降温との間は一定のタイムラグがあるので、更には、ミストの噴霧とその対象空間の降温にも一定のライムラグあるので、温室内の気温や湿度に基づいてミストの噴霧量を制御しても十分な降温効果を得られない場合がある。また、噴霧量が過剰となると、未蒸発のミストを発生させて温室内を濡らすおそれがある。温室内の園芸物の濡れは、病害虫の発生や奇形などの品質低下の原因となることがあり、避けなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、降温用噴霧装置を温室等の太陽光が差し込む施設内(以下、施設を単に「温室」ということがある)で使用したときに生じる、本発明者が今回新たに見出した上記の課題を解決すべくなされたものであり、その第1の局面は次のように規定される。
太陽光が入射する施設内に配置される降温用噴霧装置の制御方法であって、前記施設内の気温又は気温及び湿度、並びに前記施設内に入射する太陽光の強さに応じて前記噴霧装置から噴霧されるミストの量を制御する、降温用噴霧装置の制御方法。
このように規定される第1の局面の降温用噴霧装置の制御方法によれば、施設内の気温又は気温及び湿度のみならず、施設内へ入射する太陽光の強さに応じてミストの噴霧量を調整するので、施設内の気温の制御が正確かつ容易になる。
ここで施設とは、壁、屋根、床、窓及びドア等で外界と区画された空間を有する建築物であって、その一部又は全部が透光性の材料で形成され、該透光性材料部分を太陽光が透過し、その内部空間の気温に影響を与えるものを指す。この施設の代表例が温室である。
太陽光の強さは、日射量(熱量)、日照量(光量)などで評価することができる。また、ソーラパネルを介して太陽光を電力に変換し、当該電力に基づき太陽光の強さを評価することもできる。この発明において評価されるべき太陽光の強弱は施設内の気温に影響を与えるか否かである。施設内の気温を上昇させる太陽光の強さを、その強弱を評価するための、基準とすることができる。勿論、太陽光の入射時間長さも施設内の気温上昇又は降下に影響するので、太陽光の強さの基準を入射時間長さと関連付けて定めることもできる。
ミストとは例えば平均粒径が40μm以下の水滴を指し、特許文献1に記載の装置で噴霧されるもの(いわゆるドライミスト(登録商標))を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0007】
既述のように、噴霧装置は2MPa〜10MPaという高圧の水(以下、「加圧水」ということがある)を噴霧ノズルに適した一定圧力で供給し、これから噴出させてミストとする。そのため、加圧ポンプの出力(吐出圧力)は一定となり、その結果、加圧ポンプから吐出される水量を制御することは困難である。他方、加圧ポンプと噴霧ノズルの間に配置される制水弁により噴霧ノズルに供給される加圧水の量を制御することが考えられるが、2MPa〜10MPaという高圧の加圧水の水量を制御する弁は高価なものとなる。
つまり、実用的な噴霧装置によれば、ミストの噴霧量の制御は加圧ポンプのオン・オフに拠らざるをえない。しかしながら、既述のように温室では日射状態の如何に応じてその内部気温が変化する。従って、当該内部気温変化に対応してミスト噴霧量を変化させる必要があるが、加圧ポンプのオン・オフ制御、即ち2段階制御だけではミスト噴霧量の調整に限界がある。
そこで本発明者は、加圧水を供給する加圧給水部と噴霧ノズルとを備える噴霧装置を少なくとも2セット配置して、それぞれを独立して制御することに気がついた。これにより、少なくとも1セットの噴霧装置のオン・オフ制御(即ち、二段階制御)に比べてミスト噴霧量を細かく制御できる。即ち、第1の噴霧装置からのミスト噴出量をA、第2の噴霧装置からのミスト噴霧量をBとすると、温室内へのミスト噴出量は最大で4段階(0、A、B、A+B)に調節できる。同様に、噴霧装置をnセット準備すれば、最大で2段階に調節できることがわかる。
【0008】
上記のように複数の噴霧装置の配置を前提に、第2の局面の発明は次のように規定される。
第1の局面に規定の降温用噴霧装置の制御方法において、前記降温用噴霧装置は、加圧給水部と、該加圧給水部から供給される定圧の加圧水を噴出してミストを形成する噴霧ノズルと、を備えてなり、
該降温用噴霧装置を施設内に少なくとも2セット配置してマルチ降温システムを構成し、
第1の前記降温用噴霧装置の稼働を前記施設内の気温、又は前記施設内の気温及び湿度に基づき制御し、
第2の前記降温用噴霧装置の稼働を前記施設内に入射する前記太陽光の強さに基づき制御する。
【0009】
このように規定される第2の局面によれば、第1の噴霧装置と第2の噴霧装置がそれぞれ独立して、前者は温室内の気温、又はその気温及び湿度に基づきその稼働が制御され、後者は入射する太陽光の強さに基づき制御される。
太陽光の強さは温室の気温を制御する際の外乱要因であるので、当該太陽光の強さの変化に対して個別に制御を掛ける、即ちミスト噴霧量を制御することが好ましい。温室の気温、又は気温及び湿度はそもそもの制御対象であるので、太陽光の強さの如何にかかわらず、これはこれで制御する(即ち、ミスト噴霧量を制御する)。
換言すれば、温室内の気温、又は気温及び湿度は、太陽光の強さの如何により変化するもののその変動幅は比較的小さいのに対し、太陽光の強さは気象状態によって大きく変化する。よって、両者を峻別して測定して、それぞれをミスト噴霧量にフィードバックすることは制御の質の向上の見地から好ましい。
第1及び第2の噴霧装置の稼働制御は、加圧給水部に備えられた加圧ポンプのオン・オフによるものとすることにより、高価な制水弁等の使用を避けて、各噴霧装置を安価に提供可能となる(第3の局面)。
【0010】
第3の局面に規定の制御方法において、前記第1の降温用噴霧装置は前記施設内の気温、又は気温及び湿度が第1の基準条件であってかつ該第1の基準条件が第1の閾値時間以上継続したときにその加圧ポンプをオン又はオフとし、
前記第2の降温用噴霧装置は前記施設内に入射した太陽光の強さが第2の基準条件であってかつ該第2の基準条件が第2の閾値時間以上継続したときにその加圧ポンプをオン又はオフとする。(第4の局面)
第1の基準条件は、例えば、気温DTが32℃未満、又は相対湿度RHが70%超過のとき前記加圧ポンプをオフとし、それ以外の条件で前記加圧ポンプをオンとする。
太陽光の強さに関する第2の基準条件は日射量を用いることができる。日射量としては単位面積当たりの熱量(W/m)を用いることが、潜熱との対比の上から好ましい。そのため第2の基準条件は、例えば、日射量が300(W/m)以上のとき前記加圧ポンプをオンとし、それ以外の条件(300(W/m)未満)では前記加圧ポンプをオフとする。(第5の局面)
【0011】
また、第1の閾値時間及び第2の閾値時間は30秒とすることができる。即ち、第1の基準条件として例えば気温DTが32℃未満、又は相対湿度RHが70%超過の条件が30秒以上継続したときに加圧ポンプはオフされ、この条件に満たない条件が30秒以上継続したときに加圧ポンプをオンとする。同じく、第2の基準条件として、例えば、300(W/m)以上の日射量が30秒以上継続したときに加圧ポンプはオンされ、日射量が300(W/m)に満たない時間が30秒以上継続したときに加圧ポンプをオフとする。
なお、2MPa〜10MPaという加圧ポンプを短時間でオン・オフ制御するとその寿命が短くなるおそれがある。そこで、加圧ポンプのオフ時間及び/又はオン時間は、前記加圧ポンプの負荷を低減可能な第3の閾値時間以上とすることが好ましい(第6の局面)。
この第3の閾値時間は5分とすることができる。勿論、この第3の閾値時間は加圧ポンプに応じて任意に設定可能である。
【0012】
上記において、加圧ポンプをオンする基準とこれをオフする基準とに差を待たせることもできる。即ちこの発明の第7の局面は次のように規定される。
第4の局面に規定の制御方法において、前記第1の基準条件は、下記(A)及び(B)の条件をともに満足する、
(A)前記施設内の気温、又は気温及び湿度が第1−1の基準条件であってかつ第1−1の基準条件が第4の閾値時間以上継続したときにその加圧ポンプをオンとする、
(B)前記施設内の気温、又は気温及び湿度が第1−2の基準条件であってかつ第1−2の基準条件が第5の閾値時間以上継続したときに前記加圧ポンプをオフとする。
第1−1の基準条件は、例えば、気温DTが34℃以上、且つ相対湿度RHが60%以下のとき前記加圧ポンプをオンとし、第1−2の基準条件は、例えば、気温DTが32℃未満、又は相対湿度RHが70%超過のとき前記加圧ポンプをオフとすることができる。
この第7の局面の制御方法では、気温又は気温及び湿度に関する基準条件のみについて、加圧ポンプのオン条件とオフ条件に差を設けているが、同様に、太陽光の強さに関する基準条件においても加圧ポンプのオン条件とオフ条件に差を設けることができる。
上記において、第4の閾値時間及び第5の閾値時間は30秒とすることができる。
【0013】
その稼働がオン・オフ制御される噴霧装置を複数セット配置することにより、温室内の気温制御をより多段に実行できることは既述の通りであり、第2の局面では第1の噴霧装置を温室の気温、又は気温及び湿度に基づき制御し、第2の噴霧装置を太陽光の強さにより制御している。
温室内の気温をより精緻に制御する見地からすれば、第1及び第2の噴霧装置をそれぞれ異なる基準に基づき制御すればよい。
そこでこの発明の第8の局面は次のように規定される。
太陽光が入射する施設内に配置される降温用噴霧装置の制御方法であって、
加圧ポンプを備える加圧給水部と、該加圧給水部から供給される定圧の加圧水を噴出してミストを形成する噴霧ノズルと、を備えてなる降温用噴霧装置を施設内に少なくとも2セット配置してマルチ降温システムを構成し、
第1の前記降温用噴霧装置の前記加圧ポンプのオン・オフを前記施設内における第3の基準条件に基づき制御し、
第2の前記降温用噴霧装置の前記加圧ポンプのオン・オフを前記施設内における第4の基準条件に基づき制御する、降温用噴霧装置の制御方法。
【0014】
ここで第3の基準条件と第4の基準条件としてそれぞれ異なる気温及び湿度を用いることができ、下記の第9の局面のように規定できる。即ち、
第8の局面に規定の制御方法において、前記第3の基準条件として前記施設内の気温が第1の気温以上でありかつその湿度が第1の湿度以下のとき、前記加圧ポンプをオンとし(それ以外の条件でオフし)、
前記第4の基準条件として前記施設内の気温が第2の気温以上でありかつその湿度が第2の湿度以下のとき前記加圧ポンプをオンとする(それ以外の条件でオフとする)。
ここに、第1の気温は気温DT:32℃とし、第1の湿度は相対湿度RH:70%とし、第2の気温は気温DT:34℃とし、第2の湿度は相対湿度RH:60%とすることができる(第10の局面)。
【0015】
この発明の第11の局面は次のように規定される。
加圧給水部から供給される定圧の加圧水を噴霧ノズルから噴出してミストを形成するミスト形成部と、
降温対象空間の雰囲気の気温、又は気温及び湿度を検出する第1の検出部と、
太陽光の強さを検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部並びに第2の検出部の検出結果に基づき前記噴霧ノズルから噴出されるミストの量を調節するミスト量調整部と、を備えてなる降温用噴霧装置。
このように規定される第11の局面の降温用噴霧装置によれば、第1の局面で規定の制御方法が実行できる。
【0016】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
第1の加圧ポンプ及び第1の噴霧ノズルを備えてなる第1の降温用噴霧装置と、第2の加圧ポンプ及び第2の噴霧ノズルを備えてなる第2の降温用噴霧装置と、を組み合わせてなるマルチ降温システムであって、
降温対象空間の雰囲気の気温、又は気温及び湿度を検出する第1の検出部と、
太陽光の強さを検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部並びに第2の検出部の検出結果に基づき、前記第1及び/又は第2の加圧ポンプのオン・オフ制御をするミスト量調整部を備えるマルチ降温システム。
このように規定される第12の局面のマルチ降温システムによれば、降温用噴霧装置が2セット備えられるので、温室内に対するミスト噴出量をより細かく制御できる。また、このように規定される第12の局面のマルチ降温システムによれば、第3の局面で規定の制御方法を実行できる。
【0017】
この発明の第13の局面は次のように規定される。即ち、
第12の局面で規定のマルチ降温システムにおいて、前記ミスト量調整部は前記第1の検出部の検出結果に基づき前記第1の加圧ポンプのオン・オフを制御する第1の調整部と、前記第2の検出部の検出結果に基づき前記第2の加圧ポンプのオン・オフを制御する第2の調整部とを備える。
このように規定される第13の局面のマルチ降温システムによれば、第3の局面で規定の制御方法を実行できる。
【0018】
この発明の第14の局面は次のように規定される。即ち、
第12又は13の局面で規定のマルチ降温システムにおいて、前記第1の加圧ポンプと前記第2の加圧ポンプは同一の定格であり、並びに前記第1の噴霧ノズルと第2の噴霧ノズルも同一の定格である。
これにより、部品の共通化が図られて、製造コスト及びメンテナンスコストの低いマルチ降温システムの提供が可能となる。
【0019】
この発明の第15の局面は次のように規定される。即ち、
第12又は13の局面に規定のマルチ降温システムにおいて、前記第1の検出部の検出結果に基づき、前記降温対象空間の気温、又は気温及び湿度が前記第1の基準条件であってかつ該第1の基準条件が第1の閾値時間以上継続したときに前記ミスト量調整部は前記第1の加圧ポンプをオン又はオフとする信号を出力し、
前記第2の検出部の検出結果に基づき、前記降温対象空間へ入射した太陽光の強さが第2の基準条件であってかつ該第2の基準条件が第2の閾値時間以上継続したときに前記ミスト量調整部は前記第2の加圧ポンプをオン又はオフとする信号を出力する。
これにより、第4の局面と同様な作用及び効果がえられる。
【0020】
この発明の第16の局面は次のように規定される。即ち、
第12又は13の局面に規定のマルチ降温システムにおいて、前記ミスト量調整部には、前記第1の加圧ポンプ及び前記第2の加圧ポンプのオフ時間及び/又はオン時間を第3の閾値時間維持する加圧ポンプ制御装置が更に備えられている。
これにより、第6の局面と同様な作用及び効果が得られる。
【0021】
この発明の第17の局面は次のように規定される。即ち、
第15の局面に規定のマルチ降温システムにおいて、前記第1の基準条件は、下記(ア)及び(イ)の条件をともに満足する、
(ア)前記降温対象空間の気温、又は気温及び湿度が第1−1の基準条件であってかつ該第1−1の基準条件が第4の閾値時間以上継続したときに前記ミスト量調整部は前記第1の加圧ポンプをオンとする、
(イ)前記降温対象空間の気温、又は気温及び湿度が第1−2の基準条件であってかつ該第1−2の基準条件が第5の基準値時間以上継続したときに前記第1の加圧ポンプをオフとする。
これにより、第7の局面と同様な作用及び効果が得られる。
【0022】
この発明の第18の局面は次のように規定される。即ち、
第1の加圧ポンプ、第1の配水管及び該第1の配水管に取り付けられる複数の第1の噴霧ノズルを備えてなる第1の降温用噴霧装置と、第2の加圧ポンプ、第2の配水管及び該第2の配水管に取り付けられる複数の第2の噴霧ノズルを備えてなる第2の降温用噴霧装置とが施設内に配置され、
前記第1の噴霧ノズルと前記第2の噴霧ノズルとがそれぞれ前記施設内において均等に分布するように分配され、
前記第1の噴霧ノズルから噴霧されるミスト量は前記第1の加圧ポンプのオン・オフで制御され、
前記第2の噴霧ノズルから噴霧されるミスト量は前記第2の加圧ポンプのオン・オフで制御される、マルチ降温システム。
このように規定されるマルチ降温システムによれば、第1の降温用噴霧装置と第2の降温用噴霧装置の各噴霧ノズルを施設内に均等に分配しているので、第1及び第2の降温用噴霧装置をそれぞれ独立して稼働させることにより、施設内において均等にかつより多段にミスト量を調節できる。
制水弁等を使用して噴霧ノズルからのミスト噴霧量をリニアに制御できれば、施設内において第1の降温用噴霧装置の担当区域と第2の降温用噴霧装置の担当区域を仕分けることができる。この場合、各装置の噴霧ノズルは担当区域のみに設置されるので、配管の長さや設置コストの上昇を抑制できる。しかしながら、当該制水弁の使用は費用の見地から現実的ではなく、加圧ポンプのオン・オフによりミスト噴霧量を制御せざるを得ない。この場合、設置のためのコストアップに敢えて抗して、各降温用噴霧装置の配水管、ひいては噴霧ノズルをそれぞれ施設内に均等に分配することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施の形態の降温用噴霧装置を示す模式図である。
【図2】同じく降温用噴霧装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】同じく第1の加圧ポンプの稼働制御を示すフローチャートである。
【図4】同じく第2の加圧ポンプの稼働制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明を実施の形態に基づいて更に詳細に説明する。
図1は、この発明の実施の形態の代表的な例であるマルチ降温システム1を示す。このマルチ降温システム1は第1の降温用噴霧装置10と第2の降温用噴霧装置20とを備える。
第1の降温用噴霧装置10は加圧ポンプ11、配水管12、配水管12に取り付けられる複数の噴霧ノズル14及び制水弁15を備えてなる。噴霧ノズル14の構造、加圧ポンプに要求される水圧及びそのオン・オフのタイミング、その他制御弁15の開閉タイミングは例えば特許文献1の記載に基づく。
第2の降温用噴霧装置20も加圧ポンプ21、配水管22、配水管22に取り付けられる複数の噴霧ノズル24及び制水弁25を備えており、少なくとも加圧ポンプ21と噴霧ノズル24は第1の降温用噴霧装置10の要素11、14と同一のものとした。これにより、部品の共通化が図れ、装置の製造コストを低減できる。
勿論、第1の降温用噴霧装置10から放出されるミストと第2の降温用噴霧装置20から放出されるミストの量に差を設けることもできる。
【0025】
噴霧ノズル14は温室内において均等に分布するように配置される。それに応じて配水管12も温室内に均等に分布するように配置され、同様に噴霧ノズル24及び配水管22も温室内に均等に分布するように配置される。その結果、配水管12と配水管22とは温室内で交差することがある。
第1の降温用噴霧装置10の噴霧ノズル14を均等に分布させることにより、当該第1の降温用噴霧装置において加圧ポンプ11をオン・オフ制御したとき、その影響、即ちミスト量の調整が温室全域にわたるからである。同様に、第2の降温用噴霧装置20の噴霧ノズル24を均等に分布させることにより、当該第2の降温用噴霧装置において加圧ポンプ21をオン・オフ制御したとき、その影響、即ちミスト量の調整が温室全域にわたる。
ここに噴霧ノズルを均等に分布させるとは噴霧ノズル間の距離を均一にすることを意味するが、温室内の気流、障害物等を考慮して、温室内全体へ均等にミストを行き渡らせるべく噴霧ノズルを位置調整することも含む。
図中符号31は温湿度センサ(第1の検出部)であり、温室内の気温及び湿度を検出して検出結果をミスト量調整部40の第1の調整部41へ送る。同様に日射センサ(第2の検出部)32は太陽光の強さ(日射量)を検出してその検出結果を第2の調整部42へ送る。
第1の調整部41は温湿度センサ31から送られてきた結果に基づき、第1の加圧ポンプ11のオン・オフを制御する。同様に、第2の調整部42は日射センサ32から送られてきた結果に基づき、第2の加圧ポンプ21のオン・オフを制御する。
なお、温室内の気温や湿度如何によっては、第2の加圧ポンプ21の動作を第1の加圧ポンプ11に連動させることが好ましい場合がある。
【0026】
次に、マルチ降温システム1の動作について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップ1では、温湿度センサ31により温室内の気温DTと相対湿度RHを検出する。
ステップ1で得られた検出結果は第1の調整部41において第1の基準条件と比較される(ステップ3)。第1の基準条件として「気温DTが32℃未満、又は相対湿度RHが70%を超過のとき加圧ポンプをオフとし、それ以外の条件で加圧ポンプをオンする」を採用することができる。この条件は、温室内の園芸物に好適な環境等に応じて適宜設定可能である。
温室内の気温と湿度が「気温DTが32℃未満、又は相対湿度RHが70%を超過」に合致したときは第1の加圧ポンプ11及び第2の加圧ポンプ21をオフとして(ステップ5、6)、ミストの発生を止める。気温DTが32℃未満であれば降温不要であり、また相対湿度RHが70%を超える高湿度状態でミストを発生させると、ミストの蒸発が不十分となって温室内を濡らすおそれがあるからである。
他方、気温DTが32℃以上でありかつ相対湿度が70%以下のときはステップ10へ進む。
【0027】
ステップ10の詳細を図3に示す。
ステップ101では、第1の加圧ポンプ11の連続停止時間T1を計測する。例えば、第1の加圧ポンプ11がオフになると図示しないカウンターが始動してオフになった時点からの経過時間を計測し、これを連続停止時間T1とする。
続いて、ステップ102において、ステップ3の条件である「気温DTが32℃未満、又は相対湿度RHが70%を超過」に合致しない条件、即ち気温DTが32℃以上かつ相対湿度が70%以下となった場合、図示しないカウンターが始動して当該条件を満足することとなった時点からの経過時間を計測し、これを連続時間T2とする。
【0028】
ステップ103において、ステップ101で計測している連続停止時間T1が5分未満のときは第1の加圧ポンプ11を始動させない(ステップ110)。
他方、連続停止時間T1が5分以上のときはステップ107へ進む。ステップ107において、ステップ102で計測している連続時間T2が30秒未満のときは第1の加圧ポンプを始動させない(ステップ110)。
他方、連続時間T2が30秒以上のときに第1の加圧ポンプを始動させる(ステップ109)。
【0029】
図3に示す制御を実行することにより、第1の加圧ポンプ11が頻繁にオン・オフされなくなり、その寿命を延ばせる。
図3において、ステップ101及びステップ103又はステップ102及びステップ107の一方を省略することもできる。
【0030】
ステップ11では、日射センサ32により温室内へ入射される太陽光の日射量S1が測定される。
この日射量S1には熱量(W/m)を用いることができる。
ステップ11で得られた検出結果は第2の調整部42に送られて、ここで第2の基準と比較される。この第2の基準条件として「300(W/m)以上のとき加圧ポンプをオンとし、それ以外の条件(300(W/m)未満)では加圧ポンプをオフする」を用いることができる。勿論この第2の基準条件も任意に設定可能である。
検出された日射量S1が300(W/m)未満のとき、第2の加圧ポンプ21はオフとする(ステップ15)。他方、検出された日射量S1が300(W/m)以上のときはステップ20へ進む。
【0031】
このステップ20の詳細を図4に示す。
ステップ201では、第2の加圧ポンプ21の連続停止時間T3を計測する。
例えば、第2の加圧ポンプ21がオフになると図示しないカウンターが始動してオフになった時点からの経過時間を計測し、これを連続停止時間T3とする。続いて、ステップ202において、ステップ13の条件、即ち日射量が300(W/m)以上である条件の連続時間T4を計測する。例えば、かかる条件が満足されると図示しないカウンターが始動して当該条件を満足することとなった時点からの経過時間を計測し、これを連続時間T4とする。
【0032】
ステップ203において、ステップ201で計測している連続停止時間T3が5分未満のときは第2の加圧ポンプ21を始動させない(ステップ210)。
他方、連続停止時間T3が5分以上のときはステップ207へ進む。ステップ207において、ステップ202で計測している連続時間T4が30秒未満のときは第2の加圧ポンプ21を始動させない(ステップ210)。
他方、連続時間T4が30秒以上のときに第2の加圧ポンプ21を始動させる(ステップ209)。
【0033】
図4に示す制御を実行することにより、第2の加圧ポンプ21が頻繁にオン・オフされなくなり、その寿命を延ばせられる。
図4において、ステップ201及びステップ203又はステップ202及びステップ207の一方を省略することもできる。
【0034】
図3及び図4では、加圧ポンプをオンするときの制御を説明したが、同様の制御を加圧ポンプのオフに対しても実行できる。即ち、加圧ポンプの連続稼働(オン)時間が5分に満たないときは、これをオフすることをせず、かつ、オフとすべき気温及び/又は湿度条件や日射条件が30秒以上継続した後にこれをオフとする。
【実施例】
【0035】
以下、この発明の実施例について説明する。
夏季の日中において、ガラス温室などの施設内部は日射を受けるため、換気を行なっても、外気温よりも高くなる。前提として、噴霧したミストが少なくとも1分間で蒸発する。なお、この設定方法では、ミストの噴霧水量を単純化した熱収支式から予測しているが、流体シミュレーションソフトウエアなどを用いて精緻に予測してもよい。
【0036】
床面積が300mで、換気量が20(m/s)の施設を対象として、外気温が33.0℃、対象とする施設の内部に入射する日射量が床面積1mあたり500W、太陽が雲に隠れた場合に施設の内部に入射する日射量を床面積1mあたり75Wの気象条件を想定し、ミスト噴霧により噴霧しないときに比べ4℃だけ気温を下げたい場合を例として説明をする。
まず、日射量が床面積1mあたり、500Wのときのミスト噴霧量を求める。ミストを噴霧しない場合、施設内の熱負荷は主として日射負荷である。したがって、この日射負荷が換気に伴って排熱されることによって、施設内の熱収支が釣り合うと考えてよい。
施設内の日射量は300×500(W)で表される。換気で排出される熱量は、この釣り合っているときの施設内の予測気温DT1(℃)、空気の定圧比熱を1.0×10J/(kg・K)、空気の密度を1.2(kg/m)とすると、1.0×10×1.2×(DT1−33.0)×20(W)で表される。この二つが釣り合うので、予測気温DT1は39.25℃となる。
【0037】
次に、ミスト噴霧時の施設内の熱収支は、施設の内部に入射する日射量と、
ミストによる気化熱量と換気に伴い排出される熱量の和と、が釣り合うと考えればよい。
施設内の日射量は300×500(W)で表される。ミストによる気化熱量と換気に伴う排熱量の和は、ミスト噴霧により噴霧しないときより4℃だけ気温を下げるためのミスト噴霧量をmw1(g/s)、ミストの気化熱量を2,447(J/g)とすれば、2477×mw1+1.0×10×1.2×((39.25−4)−33.0)×20(W)で表される。この2つが釣り合うので、ミスト噴霧量mw1は38.8(g/s)となる。
【0038】
次に、日射量が床面積1mあたり、75Wのときのミストの噴霧水量を求める。施設内部の気温が32℃を下回るあたりから、ミストの結露が徐々に発生しやすくなる傾向があることが実験的にわかっているので、施設内の気温を32℃にするためのミスト水量mw2(g/s)を求めることにする。
このとき、施設内の気温は外気温よりも低くなるので、ミスト噴霧時の施設内の熱収支は、ミストによる気化熱量と、施設の内部に入射する日射量と換気に伴って屋外から流入する熱量の和と、が釣り合うと考えればよい。
ミストによる気化熱量は、2477×mw2(W)で表される。施設の内部に入射する日射量と換気に伴って流入熱量の和は、300×75+1.0×10×1.2×(33.0−32)×20(W)で表される。この2つが釣り合うので、ミスト噴霧量mw2は18.8(g/s)となる。
しがたって、2つの降温用噴霧装置10、20うち、日射の変動に係わらず連続的に噴霧する第1の降温用噴霧装置10と、日射が変動する場合に停止させる第2の降温用噴霧装置20の噴霧量は、それぞれ、20.0(g/s)と18.8(g/s)とすればよい。
【0039】
なお、これらの値は厳密である必要はなく、例えば、それぞれ、(20g/s)と19(g/s)としても、大きな支障はない。
なお、対象の施設の床面積が300m、また、換気量を20(m/s)としたが、対象の施設に応じて適切に設定すればよい。
また、夏季の日中の外気温を33.0℃としたが、対象の施設がある地域の夏季の晴天日の日中の気温の代表的な値を用いればよい。
また、施設の内部に入射する日射量を床面積1mあたり500W、太陽が雲に隠れた場合に施設の内部に入射する日射量を床面積1mあたり75Wとしたが、対象の施設における日射量から適切に設定すればよい。
また、ミスト噴霧により噴霧しないときより4℃だけ気温を下げることを前提としたが、3℃でも5℃でもよい。ただし、5℃を超えると徐々に濡れが発生しやすいことが実験的に分かっているため、5℃以下で設定することが望ましい。
【0040】
また、日射の変動に係わらず連続的に噴霧する第1の降温用噴霧装置10、日射が変動する場合に停止させる第2の降温用噴霧装置20の2つの系統で記載したが、例えば、第1の降温用噴霧装置10の噴霧量が20(g/s)、第2の降温用噴霧装置20の噴霧量が40(g/s)のような場合には、第2の降温用噴霧装置20をさらに2系統に分け、合計で3系統に分けることもできる。
ミストの発停の制御条件の設定方法について、日射の変動に係わらず連続的に噴霧する第1の降温用噴霧装置10と、日射が変動する場合に停止させる第2の降温用噴霧装置20の2つの系統の場合を例として、説明する。
日射の変動に係わらず連続的に噴霧する第1の降温用噴霧装置10は、濡れが発生しないように運転すればよい。ミスト量調整部40は、施設内の適切な位置に設置された温湿度センサ31から入力される、気温DT(℃)と相対湿度RH(%)の値をもとに、気温DTが32℃以上、且つ、相対湿度70%以下の場合、ミストの噴霧を行う。また、気温DTが32℃未満または相対湿度が70%を超える場合、ミストの噴霧を停止する。
【0041】
次に、日射が変動する場合に停止させる降温用噴霧装置20は、日射の急激な変動に対応するによう運転する。したがって、実験的に濡れが発生しやすい条件であることがわかっている、気温32℃以上、且つ、相対湿度70%以下に加え、日射センサ32から入力される日射量S1が300(W/m)以上の条件でミストの噴霧を行なう。また、気温DTが32℃未満、または相対湿度が70%を超える、または、日射量S1が300(W/m)未満の場合に、ミストの噴霧を停止する。
なお、例として、日射量の基準に300(W/m)を用いたが、250(W/m)でも350(W/m)でもよい。ただし、大きな値にすると、停止する時間が長くなり、冷却効果が小さくなる可能性がある。反対に、小さな値にすると、ミストが完全に蒸発せず、濡れが発生する可能性が増える。ミスト噴霧量の設定方法で用いた、施設の内部に入射する日射量が床面積1mあたり500Wの7割くらいの値が望ましい。
【0042】
上記の例では、温室内部の適切な位置に日射センサ32を設置するとしたが、温室内部に設置が困難な場合は、あらかじめ、施設の日射透過率εを求めておき、屋外の適切な場所に設置した日射センサ32からの日射量S2に施設の日射透過率εを乗じた値を、施設内の日射量S1として用いてもよい。
【0043】
上記の例では、日射量の変動を日射センサ32で計測し、それを噴霧の要不要の判断に用いたが、日射量が変動すると、その結果として、降温対象空間の気温が変動するため、日射量ではなく気温を用いて、噴霧の要不要の判断をすることもできる。例えば、日射量が500(W/m)で第1の降温用噴霧装置10と第2の降温用噴霧装置20が同時に稼働したときの降温対象空間の予測気温35.25℃と、日射量が75(W/m)で第1の降温用噴霧装置10のみが稼働したときの降温対象空間の予測気温32℃の、中間の値に近い、34℃を用いて、第1の降温用噴霧装置10は、気温DTが32℃以上、且つ、相対湿度70%以下の場合、ミストの噴霧、気温DTが32℃未満または相対湿度が70%を超える場合、ミストの噴霧を停止する。
第2の降温用噴霧装置20は、気温DTが34℃以上、且つ、相対湿度60%以下の場合、ミストの噴霧、また、気温DTが34℃未満または相対湿度が60%を超える場合、ミストの噴霧を停止する。
【0044】
上記の例では、温室内の気温及び湿度を測定してその結果に基づき第1の降温用噴霧装置10を制御していた。測定系を簡素化する見地から、温室内の気温のみを測定してその結果に基づき第1の降温用噴霧装置10のオン・オフを制御することもできる。この場合、ミストの噴霧停止の気温条件は、湿度を測定しないときよりも高めに設定し、温室内の濡れを確実に防止することが好ましい。
【0045】
この発明は、ミストを噴霧する噴霧装置を温室に適用する際に、温室内の気温、又は気温及び湿度(第1の条件)に基づきミストの噴霧量を制御すると種々の不具合を引き起こすおそれがあるので、当該第1の条件に加えて温室に入射される太陽光の強さに関する第2の条件に基づき、温室内へ噴射するミスト量を制御しようとする本発明者が見出した新たな知見に基づいている。
既述の例では、噴霧装置の簡素化及び低コスト化を考慮して、ミスト噴霧量を加圧ポンプのオン・オフ制御で行なうこととしている。
勿論、吐出量を変更可能な加圧ポンプや流量を変更可能な制水弁を用いてミスト噴霧量を制御することを何ら禁止するものではない。更には、噴霧ノズルの先端にシャッタを設けて、噴霧ノズルから噴出されるミスト量に変化を持たせることもできる。
【0046】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0047】
1 マルチ降温システム
10 第1の降温用噴霧装置
11,21 加圧ポンプ
12,22 配水管
14,24 噴霧ノズル
15,25 制水弁
20 第2の降温用噴霧装置
31 温湿度センサ
32 日射センサ
40 ミスト量調整部
41 第1の調整部
42 第2の調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光が入射する施設内に配置される降温用噴霧装置の制御方法であって、前記施設内の気温又は気温及び湿度、並びに前記施設内に入射する太陽光の強さに応じて前記噴霧装置から噴霧されるミストの量を制御する、降温用噴霧装置の制御方法。
【請求項2】
前記降温用噴霧装置は、加圧給水部と、該加圧給水部から供給される定圧の加圧水を噴出してミストを形成する噴霧ノズルと、を備えてなり、
該降温用噴霧装置を施設内に少なくとも2セット配置してマルチ降温システムを構成し、
第1の前記降温用噴霧装置の稼働を前記施設内の気温、又は前記施設内の気温及び湿度に基づき制御し、
第2の前記降温用噴霧装置の稼働を前記施設内に入射する前記太陽光の強さに基づき制御する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の降温用噴霧装置の稼働制御は前記加圧給水部に備えられた加圧ポンプのオン・オフによる、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記第1の降温用噴霧装置は前記施設内の気温、又は気温及び湿度が第1の基準条件であってかつ該第1の基準条件が第1の閾値時間以上継続したときにその加圧ポンプをオン又はオフとし、
前記第2の降温用噴霧装置は前記施設内に入射した太陽光の強さが第2の基準条件であってかつ該第2の基準条件が第2の閾値時間以上継続したときにその加圧ポンプをオン又はオフとする、請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記第1の基準条件として気温DTが32℃未満、又は相対温度RHが70%超過のとき前記加圧ポンプをオフとし、それ以外の条件で前記加圧ポンプをオンとし、
前記第2の基準条件として日射量が300(W/m)以上のとき前記加圧ポンプをオンとし、それ以外の条件では前記加圧ポンプをオフとする、特許請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記加圧ポンプのオフ時間及び/又はオン時間は、前記加圧ポンプの負荷を低減可能な第3の閾値時間以上とする、請求項3〜5のいずれかに記載の制御方法。
【請求項7】
前記第1の基準条件は、下記(A)及び(B)の条件をともに満足する、
(A)前記施設内の気温、又は気温及び湿度が第1−1の基準条件であってかつ第1−1の基準条件が第4の閾値時間以上継続したときにその加圧ポンプをオンとする、
(B)前記施設内の気温、又は気温及び湿度が第1−2の基準条件であってかつ第1−2の基準条件が第5の閾値時間以上継続したときに前記加圧ポンプをオフとする、
請求項4に記載の制御方法。
【請求項8】
太陽光が入射する施設内に配置される降温用噴霧装置の制御方法であって、
加圧ポンプを備える加圧給水部と、該加圧給水部から供給される定圧の加圧水を噴出してミストを形成する噴霧ノズルと、を備えてなる降温用噴霧装置を施設内に少なくとも2セット配置してマルチ降温システムを構成し、
第1の前記降温用噴霧装置の前記加圧ポンプのオン・オフを前記施設内における第3の基準条件に基づき制御し、
第2の前記降温用噴霧装置の前記加圧ポンプのオン・オフを前記施設内における第4の基準条件に基づき制御する、降温用噴霧装置の制御方法。
【請求項9】
前記第3の基準条件として前記施設内の気温が第1の気温以上でありかつその湿度が第1の湿度以下のとき前記加圧ポンプをオンとし、それ以外の条件で前記加圧ポンプをオフとし、
前記第4の基準条件として前記施設内の気温が第2の気温以上でありかつその湿度が第2の湿度以下のとき前記加圧ポンプをオンとし、それ以外の条件で前記加圧ポンプをオフとする、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記第1の気温は気温DTが32℃でありかつ前記第1の湿度は相対湿度RHが70%であり、前記第2の気温は気温DTが34℃でありかつ前記第2の湿度は相対湿度RHが60%である、請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
加圧給水部から供給される定圧の加圧水のみを噴霧ノズルから噴出してミストを形成するミスト形成部と、
降温対象空間の雰囲気の気温、又は気温及び湿度を検出する第1の検出部と、
太陽光の強さを検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部並びに第2の検出部の検出結果に基づき前記噴霧ノズルから噴出されるミストの量を調節するミスト量調整部と、を備えてなる降温用噴霧装置。
【請求項12】
第1の加圧ポンプ及び第1の噴霧ノズルを備えてなる第1の降温用噴霧装置と、第2の加圧ポンプ及び第2の噴霧ノズルを備えてなる第2の降温用噴霧装置と、組み合わせてなるマルチ降温システムであって、
降温対象空間の雰囲気の気温、又は気温及び湿度を検出する第1の検出部と、
太陽光の強さを検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部並びに第2の検出部の検出結果に基づき、前記第1及び/又は第2の加圧ポンプのオン・オフ制御をするミスト量調整部を備えるマルチ降温システム。
【請求項13】
前記ミスト量調整部は前記第1の検出部の検出結果に基づき前記第1の加圧ポンプのオン・オフを制御する第1の調整部と、前記第2の検出部の検出結果に基づき前記第2の加圧ポンプのオン・オフを制御する第2の調整部とを備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の加圧ポンプと前記第2の加圧ポンプは同一の定格であり、並びに前記第1の噴霧ノズルと第2の噴霧ノズルも同一の定格である、請求項12又は請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1の検出部の検出結果に基づき、前記降温対象空間の気温、又は気温及び湿度が前記第1の基準条件であってかつ該第1の基準条件が第1の閾値時間以上継続したときに前記ミスト量調整部は前記第1の加圧ポンプをオン又はオフとする信号を出力し、
前記第2の検出部の検出結果に基づき、前記降温対象空間へ入射した太陽光の強さが第2の基準条件であってかつ該第2の基準条件が第2の閾値時間以上継続したときに前記ミスト量調整部は前記第2の加圧ポンプをオン又はオフとする信号を出力する、請求項12又は請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記ミスト量調整部には、前記第1の加圧ポンプ及び前記第2の加圧ポンプのオフ時間及び/又はオン時間を第3の閾値時間維持する加圧ポンプ制御装置が更に備えられる、請求項12又は請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1の基準条件は、下記(ア)及び(イ)の条件をともに満足する、
(ア)前記降温対象空間の気温、又は気温及び湿度が第1−1の基準条件であってかつ該第1−1の基準条件が第4の閾値時間以上継続したときに前記ミスト量調整部は前記第1の加圧ポンプをオンとする、
(イ)前記降温対象空間の気温、又は気温及び湿度が第1−2の基準条件であってかつ該第1−2の基準条件が第5の基準値時間以上継続したときに前記第1の加圧ポンプをオフとする、
請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
第1の加圧ポンプ、第1の配水管及び該第1の配水管に取り付けられる複数の第1の噴霧ノズルを備えてなる第1の降温用噴霧装置と、第2の加圧ポンプ、第2の配水管及び該第2の配水管に取り付けられる複数の第2の噴霧ノズルを備えてなる第2の降温用噴霧装置とが施設内に配置され、
前記第1の噴霧ノズルと前記第2の噴霧ノズルとがそれぞれ前記施設内において均等に分布するように配置され、
前記第1の噴霧ノズルから噴霧されるミスト量は前記第1の加圧ポンプのオン・オフで制御され、
前記第2の噴霧ノズルから噴霧されるミスト量は前記第2の加圧ポンプのオン・オフで制御される、マルチ降温システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247106(P2012−247106A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118180(P2011−118180)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(506218664)公立大学法人名古屋市立大学 (48)
【Fターム(参考)】