説明

降雨装置

【課題】様々な降雨量を再現できると共に、対象物に対する降雨量や雨滴粒径を精度良く調整できる降雨装置を提供すること。
【解決手段】噴霧装置5により霧状の流体が結露部7の上方に噴霧されると、結露部7に結露が生じ、結露部7の下面に流下した結露水は滴下部8を伝って滴下されるので、滴下部8から滴下された雨滴が、噴霧された霧状の流体中の水分を吸収することを防止できる。その結果、対象物101に対する降雨量や雨滴粒径を精度良く調整できる。さらに、霧状の流体の供給量や気液の混合比率を調整することで、連続して降り続く通常の降雨程度から豪雨までの様々な降雨量を容易に再現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人為的に降雨を再現する降雨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
対象物の上方より水滴を滴下させ人為的に降雨を再現する降雨装置として、特許文献1に開示される技術が知られている。特許文献1に開示される第1の降雨装置は、浸透性の結露盤と、その結露盤から下方に向かって伸びる複数の端子と、結露盤の上面に水を供給する配水管と、を備えるものである。第1の降雨装置では、配水管から供給された水は、結露盤を浸透して端子から雨滴として滴下される。配水管から結露盤に供給する水の圧力を調整することにより降雨量や雨滴の粒径(降雨粒径)が調整される。
【0003】
特許文献1に開示される第2の降雨装置は、非浸透性の結露盤と、その結露盤から下方に向かって伸びる複数の端子と、結露盤の下方から結露盤に向かって水と空気との混合流体を噴霧する配水管と、を備えるものである。第2の降雨装置では、結露盤の下面に結露が発生し、その結露した水が端子を伝って端子から雨滴として滴下される。結露盤に向かって噴霧する混合流体の供給量や水と空気との混合比率を調整することにより降雨量が調整される。また、結露盤の温度を調整することにより降雨粒径が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−138067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)特許文献1に開示される第1の降雨装置では、結露盤に供給する水の圧力を調整して降雨量や降雨粒径を調整することはできるものの、連続して降り続く通常の降雨程度の降雨量を再現するには、マイクロポンプレベル程度の低い圧力に調整しなければならなかった。しかし、水の圧力がこれほど低くなると、流量が小さすぎて滴下できなくなる。このように再現できる降雨量が限られていた。
(2)特許文献1に開示される第2の降雨装置は、結露盤の下方から水と空気との混合流体を噴霧し、結露盤の下面に結露を生じさせて雨滴を滴下するものなので、雨滴は、混合流体を噴霧する配水管が位置する方向に落下する。そのため、滴下された雨滴は、対象物に到達するまでに、噴霧された混合流体中の水分を吸収して粒径が大きくなる。その結果、落下開始直後の雨滴と対象物に落ちる雨滴とは、量や粒径が異なってしまう。従って、対象物に対する降雨量や雨滴粒径を精度良く調整することが極めて困難であった。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、様々な降雨量を再現できると共に、対象物に対する降雨量や雨滴粒径を精度良く調整できる降雨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために本発明の降雨装置は、以下の構成を有している。
請求項1記載の降雨装置は、対象物の上方より水滴を滴下させる降雨装置であって、前記対象物に対向して前記対象物の上方に配設される面状の結露部と、前記結露部の上面から下面に亘って貫通形成された貫通孔と、前記結露部の下面から下方に向かって垂設された針状の滴下部と、前記結露部の上方に気液が混合された霧状の流体が吐出される過飽和室と、前記霧状の流体を噴霧吐出する噴霧装置と、を備えた構成を有している。
この構成により以下のような作用が得られる。
(1)噴霧装置により霧状の流体が結露部の上方に噴霧されると、結露部に結露が生じる。発生した結露は貫通孔を通って結露部の下面に流下する。結露部の下面に流下した結露水は、結露部の下面から下方に向かって垂設された滴下部を伝って滴下され、雨滴が生ずる。雨滴は結露部の下面から生ずるのに対し、霧状の流体は結露部の上方に噴霧される。このように、霧状の流体が噴霧される結露部の反対側に雨滴が生じるので、滴下された雨滴が、噴霧された霧状の流体中の水分を吸収することを防止できる。その結果、滴下部に生じる雨滴の量や粒径を調整することで、対象物に対する降雨量や雨滴粒径を調整できる。滴下部に生じる雨滴の量や粒径の調整は、結露部に生じる結露の量を調整することにより達成できるので、対象物に対する降雨量や雨滴粒径を精度良く調整できる。
(2)結露部に生じた結露が滴下部を伝って雨滴が生じ、その雨滴の量(降雨量)は、噴霧する霧状の流体の供給量や気液の混合比率を調整することにより調整される。霧状の流体の供給量や気液の混合比率を調整することで、連続して降り続くしとしと雨から通常の降雨程度乃至豪雨までの様々な降雨量を容易に再現できる。
【0008】
ここで、結露部としては、合成樹脂製や金属製等の非浸透性の材料で作製された網体やパンチングメタル、格子が好適に用いられる。非浸透性であると、噴霧された霧状の流体が接触して生じる結露を、無駄なく雨滴として得ることができ、降雨量や降雨粒径の調整精度を向上できるからである。
結露部の大きさとしては、対象物の大きさに応じて、例えば0.1■〜数■のものが1
乃至複数組合せて用いられる。また、雨滴の大小に合わせて取り換えることもできる。
貫通孔としては、結露部の上面から下面に亘って形成される。貫通孔により結露部や貫通孔に生じた結露が結露部の下面に垂設された滴下部に付着する。
貫通孔の大きさとしては、0.5〜7mm、好ましくは1〜5mmが良い。周囲の温度にもよるが、水滴が効率よく生成されるためである。尚、霧雨のような細かい雨滴の場合は、0.1〜0.5mmの径の貫通孔が用いられる。貫通孔間の間隙は0.1mm〜5mmに形成される。
滴下部としては、針状に形成されたものが用いられる。滴下部は基部から長手方向の先端に亘って同一太さに形成されたものでも良いし、先端に向かって細くなるものでも良いが、先端に向かって細くなるものが好ましい。滴下部に付着した結露が滴下され易くなるからである。貫通孔や滴下部のピッチを小さくすることで雨滴の間隔を小さくすることができ、実際の降雨の状態に近付けて再現できる。
滴下部の長さとしては、5mm〜1000mmの長さが用いられる。また、その径としては、0.1mm〜5mmの径が用いられる。材質としては、ステンレス等の金属製やポリエチレン等の合成樹脂製の材質が用いられる。滴下部の間隔は、目標とする雨滴径よりも大きく形成される。目標とする雨滴径よりも小さいと雨滴同士が合体して大粒になるので好ましくない。また、雹や大粒の雨を降らすときは滴下部の間隔を狭め雨滴を合体させると良い。
噴霧装置としては、気液(特に水と空気)とが任意の割合で混合された霧状の流体を噴霧するものが用いられる。遠心噴霧式、超音波噴霧式等の霧吹きや加湿器が好適に用いられる。霧状の流体としては、過飽和状態の水蒸気や霧状の水滴が好適である。結露を生じ易くするためである。
噴霧装置は、噴霧量に応じて、過飽和室の前記流体の密度差が生じないように1か所以上に配置される。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の降雨装置であって、前記霧状の流体が噴霧される過飽和室の上部および側部を閉塞する上面および側面を有すると共に、下部が開放された筐体を備え、前記結露部は、前記筐体の下部に配設される構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)下部が開放された筐体により筐体内の霧状の流体の拡散を安定にできる。その結果、結露部に結露を均等に生じさせることができると共に、生じる結露の量を精度良く調整できる。
【0010】
ここで、筐体としては、上面および側面が平面の角柱状、上面が平面で側面が曲面の円筒状、上面および側面が曲面のドーム状など、いずれの形状も採用することが可能である。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の降雨装置であって、前記結露部は、網目状又は格子状に形成された構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)結露部を網目状に形成することにより、結露部の面積に対する網目(貫通孔)の面積の割合を大きくすることができる。その結果、結露部に生じた結露は貫通孔を通過して滴下部に付着され易く、雨滴が容易に生成される。
(2)結露部を網目状や格子状に形成することにより結露部を軽量化することができ、ひいては降雨装置を軽量化できる。
【0012】
ここで、網目状等の結露部としては、網目が連続して形成されていれば良く、網目構造は、2次元的に網目が連なった2次元網目構造、3次元的に網目が連なった3次元網目構造のいずれでも良い。網目等の形状も特に制限がなく、方形状、矩形状、6角形状等を適宜選択できる。例えば、市販されている猫よけマット〔キャットカットもしくはトゲネット〕等を使用することもできる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1に記載の降雨装置であって、前記滴下部は、前記結露部の網目や格子の節部から垂設される構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3のいずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)節部には複数の網目が集合しているので、結露部に生じた結露は節部に集められる。これにより、滴下部に結露を集め雨滴を効率良く作ることができる。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1に記載の降雨装置であって、 前記結露部の温度を調節する温度調節装置を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)温度調節装置により結露部の温度を調整し、結露部の温度と霧状の流体の温度とに所定の温度差を作ることができる。その温度差により結露部に生じる結露の粒径を調節することができるので、雨滴粒径の調節機能を向上させることができる。
なお、温度調節装置としては、結露部の電気抵抗を利用して結露部の温度を直接的に調節するもの、結露部に接触して結露部の温度を調節するもの、空間を介して結露部の温度を調節するもの等いずれも用いることが可能である。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5の内いずれか1に記載の降雨装置であって、前記結露部の下部に配設された緩衝部材を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至5の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)対象物の上方に配設された緩衝部材により、緩衝部材間の空隙を通過させた雨滴を対象物に降らせることにより、雨滴を分散させて自然の降雨に近づけることができる。
【0016】
ここで、緩衝部材としては、砕石、砂利、煉瓦屑、ガラス屑、貝殻屑、陶器屑、合成樹脂製の玉状物等の対象物に敷設又は籠等に収納されて結露部に吊設されることによって粒子間に連続した空隙が形成される部材を用いることができる。また、メッシュ(網体)、不織布等のように連続した空隙が形成されたシート状の部材を用いることもできる。これらのシート状の部材を複数枚重ねて用いることも可能である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)噴霧された霧状の流体中の水分を滴下された雨滴が吸収することを防止でき、結露部に生じる結露の量を調整することにより滴下部に生じる雨滴の量や粒径を調整し、対象物に対する降雨量や雨滴粒径を精度良く調整できる降雨装置を提供できる。
(2)霧状の流体の供給量や気液の混合比率を調整することで、連続して降り続く通常の降雨程度から豪雨までの様々な降雨量を容易に再現できる降雨装置を提供できる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)筐体で霧状の流体の雰囲気を安定にできるので、結露部に結露を均等に生じさせることができると共に、生じる結露の量を精度良く調整できる降雨装置を提供できる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)結露部に生じた結露が貫通孔(網目)を通過して滴下部に付着され易く、雨滴が容易に生成される降雨装置を提供できる。
(2)結露部を軽量化することができ、軽量の降雨装置を提供できる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、請求項3の効果に加え、
(1)結露部に生じた結露は節部に集まり易いため、滴下部に結露を集め雨滴を効率良く作ることができる降雨装置を提供できる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至4の内いずれか1の効果に加え、
(1)温度調節装置により結露部の温度を調整し、結露部の温度と霧状の流体の温度との温度差を調整することにより結露部に生じる結露の粒径を調節できるので、雨滴粒径の調節機能を向上できる降雨装置を提供できる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至5の内いずれか1の効果に加え、
(1)緩衝部材により空隙を通過した雨滴を対象物に降下させることができ、雨滴を分散させて雨滴の固定化を防止できる降雨装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1における降雨装置を模式的に示す模式図
【図2】結露部の要部を拡大して模式的に示す模式図
【図3】実施の形態1における降雨装置を模式的に示す模式図
【図4】結露部の要部を拡大して模式的に示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における降雨装置1について、図面を参照しながら説明する。図1は実施の形態1における降雨装置1を模式的に示す模式図である。
図1において、1は土槽100に覆設された降雨装置、101は土槽100に収容された土壌等の対象物、102は対象物101の上面に敷設された緩衝部材である。緩衝部材102は、砕石、砂利、煉瓦屑、ガラス屑、貝殻屑、陶器屑等の粒子で構成され、対象物101に敷設されることによって粒子間に空隙が形成されている。
本実施の形態では粒径が5〜10mmの豆砂利を層厚50mmに均して用いた。
【0025】
2は土槽100に覆設されると共に、上部および側部が上面および側面で閉塞され下部が開放された角柱状の筐体、3は水が貯留された給水タンク、4は給水タンク3の下部に連設する給水管、5は給水管4から供給された水を空気と混合して霧状の流体を作り、筐体2の側面に貫設された噴霧管6から筐体2内に噴霧する加湿器からなる噴霧装置、7は開放された筐体2の下部に対象物101と対向して配設された合成樹脂製のメッシュ体で形成された面状の結露部、8は結露部7の下面から下方(対象物101の方向)に向かって垂設された長さ20mmの針状の滴下部である。本実施の形態においては、結露部7は網目状に形成され、節部に針状突起が一体に形成された市販の「猫よけマット」を使用した。また、結露部7は筐体2の下部の内側に支持部材(図示せず)により脱着自在に支持されている。
【0026】
次に、図2を参照して、結露部7及び滴下部8について詳述する。図2は結露部7の要部を拡大して模式的に示す模式図である。
図2において、7aは網目状の結露部7の網目が集合する節部であり、節部7aから針状の形成された滴下部8が垂設されている。7bは結露部7の上面から下面に亘って貫通形成された貫通孔である。
【0027】
以上のように構成された実施の形態1における降雨装置1では、給水タンク3に貯留された水を、給水管4を通して噴霧装置5に供給する。噴霧装置5では供給された水を空気と混合して霧状の流体を作り、噴霧管6から筐体2内に噴霧する。筐体2内は上部および側部が閉塞されているので、過飽和状態の水蒸気雰囲気となる。筐体2は下部が開放され、そこに網目状の結露部7が配設されているので、結露部7と接触した水蒸気は結露を生じ、結露は貫通孔7bを通して滴下部8に付着する。滴下部8に付着した結露は、重力により対象物101に向かって落下し雨滴となる。雨滴は、まず緩衝部材102に衝突して分散され、緩衝部材102に形成された空隙を流下して対象物101に雨滴(水滴)として注がれる。
【0028】
以上のように構成された実施の形態1における降雨装置1によれば、以下の作用が得られる。
(1)噴霧装置5により霧状の流体が結露部7の上方に噴霧されると、結露部7に結露が生じる。結露部7に発生した結露は貫通孔7bを通って結露部7の下面に流下する。結露部7の下面に流下した結露水は、結露部7の下面から下方に向かって垂設された滴下部8を伝って滴下され、雨滴が生ずる。霧状の流体が噴霧されるのは結露部7の上方であり、その反対側の下面に雨滴が生じるので、滴下部8から滴下された雨滴が、噴霧された霧状の流体中の水分を吸収することを防止できる。その結果、滴下部8に生じる雨滴の量や粒径を調整することで、対象物101に対する降雨量や雨滴粒径を調整できる。結露部7に生じる結露の量を調整することにより滴下部8に生じる雨滴の量や粒径を調整できるので、対象物101に対する降雨量や雨滴粒径を精度良く調整できる。
(2)結露部7に生じた結露が滴下部8を伝って雨滴が生じ、その雨滴の量(降雨量)は、噴霧装置5が噴霧する霧状の流体の供給量や気液の混合比率を調整することにより調整される。霧状の流体の供給量や気液の混合比率を調整することで、霧雨や連続して降り続く通常の降雨程度から豪雨までの様々な降雨量を容易に再現できる。
【0029】
(3)下部が開放された筐体2により筐体2内の霧状の流体の雰囲気を安定にできる。その結果、結露部7に結露を均等に生じさせることができると共に、生じる結露の量を精度良く調整できる。
(4)結露部7を網目状に形成することにより、結露部7の面積に対する網目(貫通孔7b)の面積の割合を大きくすることができる。その結果、結露部7に生じた結露は貫通孔7bを通過して滴下部8に付着され易く、雨滴が容易に生成される。
(5)結露部7を網目状に形成することにより結露部7を軽量化することができ、ひいては降雨装置1を軽量化できる。
(6)結露部7を網目状に形成することにより、結露部7の面積に対する網目(貫通孔7b)の面積の割合を大きくすることができる。その結果、網目(貫通孔7b)が目詰まりし難く、滴下部8の全体から降雨を均等に生じさせることができる。
【0030】
(7)節部7aには複数の網目が集合しているので、結露部7に生じた結露は節部7aに集められる。その節部7aから滴下部8が垂設されているので、滴下部8に結露を集め雨滴を効率良く作ることができる。
(8)対象物101の上方に配設される緩衝部材102の空隙を通過した雨滴を対象物101に流下させることができ、雨滴を分散させて大粒化するのを防止できる。
【0031】
(実施の形態2)
次に、図3を参照しながら、実施の形態2について説明する。図3は実施の形態2における降雨装置11を模式的に示す模式図である。なお、図面を簡略化するため、実施の形態1で説明した土槽100、対象物101、緩衝部材102の図示は省略する。また、実施の形態1と同一の部分は、同じ符号を付して説明を省略する。
図3において、11は実施の形態2における降雨装置、12は温度調節を行う温度調節装置、13は温度調節装置12により温度が調節される伝熱部である。伝熱部13は結露部17に接触しているので、伝熱部13の温度が調節されることにより、伝熱部13及び結露部17の熱伝導により結露部17の温度が調節される。17は開放された筐体2の下部に支持部材(図示せず)により配設された面状の結露部、17cは結露部17の上面の複数箇所に立設された針状の結露補助部、18は結露部17の下面から垂設された針状の滴下部である。本実施の形態においては、結露部17は網目状に形成されている。
【0032】
次に、図4を参照して、結露部17及び滴下部18について詳述する。図4は結露部17の要部を拡大して模式的に示す模式図である。
図4において、17aは網目状の結露部17の網目が集合する節部であり、節部17aから上方(図4上向き)に結露補助部17cが立設されると共に、節部17aから下方(図4下向き)に滴下部18が垂設されている。17bは結露部17の上面から下面に亘って貫通形成された貫通孔である。
【0033】
以上のように構成された実施の形態2における降雨装置11によれば、実施の形態1で得られる作用に加え、以下の作用が得られる。
(1)温度調節装置12により伝熱部13の温度が調整され、それに伴い結露部17の温度が調整される。その結果、結露部17の温度と霧状の流体の温度とに所定の温度差を作ることができる。その温度差により結露部17に生じる結露の粒径を調節することができるので、雨滴粒径の調節機能を向上させることができる。
(2)結露部17の上面に立設された結露補助部17cにより、霧状の流体が接触して結露が生じる表面積を広げられるので、霧状の流体から結露を効率よく生じさせることができる。
(3)節部17aから上方に向かって結露補助部17cが立設され、節部17aから下方に向かって滴下部18が垂設されているので、結露補助部17cに生じた結露を滴下部18から滴下され易くできる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらに実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例は、実施の形態1における降雨装置を適用したものである。
噴霧装置として、市販の加湿器を2台用いて降雨装置を得た。なお、用いた加湿器の1台あたりの能力は、500mL程度の水を5〜6時間かけて噴霧できるものであった。加湿器(噴霧装置)から筐体内に水を噴霧することで、結露部に結露を生じさせて降雨を得た。加湿器(噴霧装置)を1日に連続して14時間作動させることにより、対象物1m2あたり約5〜8mm/日の降雨が得られた。これは通常の降雨の状態を再現できたことになる。
【0035】
ここで、対象物1m2あたり約5mm/日の降雨量を換算すると5L/日、即ち3.5mL/分である。これは小さなマイクロポンプレベルの流量である。細管を用いて水を雨滴として吐出させようとしても、3.5mL/分の流量は小さすぎて吐出させることができない。
一般に、細管から吐出される雨滴の最少量は細管1本あたり500mL/日程度である。1m2の面内に細管を5cmピッチで配列すると400本の細管が並ぶことになり、細管から吐出される雨滴の最少量を考慮すると、降雨量は5L/日を大きく超える。このように対象物1m2あたり約5mm/日の降雨量(通常の降雨)を再現することは困難であった。
このように従来は、少ない雨量の雨を連続的に何時間も降らすことはできなかったので、例えば5L/回の雨量を実現するため、毎日10分間だけ対象物にシャワー状に5L分の水滴を対象物にかけて、間歇的に降らせていた。
これに対し本発明によれば、上述のような極めて簡易な構成によって、対象物1m2あたり約5mm/日の降雨量を実現できた。さらに噴霧能力の大きな噴霧装置を用いたり噴霧装置の台数を増やしたりすることで、降雨量を増やすことができ豪雨も再現できる。
少量の降雨の再現が可能であり、また、加湿器の数量、加湿能力、時間を調整すれば豪雨相当の数十mmの降雨も十分可能である。
雨滴の分布の均一性が極めて高い。
降雨量が安定している。
加湿器や網体等は既成のものを使用できるので従来の降雨装置に比べ、4分の1以下の原価で製造できる。
緩和層は特に必要ないが、この層を設けることによって、土壌に対しては自然降雨とほぼ同様の現象が再現できる。また、空間への降雨の場合は、針状目メッシュよりさらに小さいメッシュ状のシートを挿入することで、雨滴の数量をさらに密にすることができる。また、この層を設けることで雨滴の落下による土壌面の雨滴穴の発生を防ぐことができる。
【0036】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
上記実施の形態では、滴下部8,18から重力による自然滴下により雨滴が滴下される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、結露部7,17を加振させることによって滴下させることも可能である。結露部7,17の加振は、例えば、水平加振、垂直加振、軸加振、バイブレータ加振等が挙げられる。水平加振は、結露部7,17を水平方向に往復移動させるものである。垂直加振は、結露部7,17を鉛直方向に往復移動させるものである。軸加振は、中心に回転軸を設けた結露部7,17を回転軸を中心に回動させて往復移動させるものである。バイブレータ加振は、結露部7,17にバイブレータの振動を与えるものである。結露部7,17を加振させることにより、重力で自然滴下する雨滴粒径より小さな粒径の雨滴を得ることができる。
上記実施の形態では説明を省略したが、滴下部8,18の下方にブロアを設け、降雨に対して当てるブロアからの風速を変化させることにより、対象物101に対する降雨角度を可変にすることも可能である。
【0037】
上記実施の形態では、緩衝部材102として砂利等の粒子を敷設した場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、不織布やメッシュ等の連続する空隙が形成された部材を設けることも可能である。
上記実施の形態では、温度調節装置12が伝熱部13からの熱伝導により結露部7,17の温度を調整する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。温度調節装置12から冷風や温風が発生されるようにして、温度調節装置12から発生される冷風や温風で結露部7,17の温度を調整することも可能である。この場合は、伝熱部13からの熱伝導により結露部7,17の温度を調整する場合と比べて、結露部7,17の温度をムラなく調整できるため、雨滴粒径の調整精度をさらに向上できる。
上記実施の形態では説明を省略したが、給水タンク3に貯留される水のpHを調整することで、降雨のpHを調整することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、人為的に降雨を再現する降雨装置に関し、様々な降雨量を再現できると共に、対象物に対する降雨量や雨滴粒径を精度良く調整できる降雨装置を提供できる。
【符号の説明】
【0039】
1,11 降雨装置
2 筐体
3 給水タンク
4 給水管
5 噴霧装置
6 噴霧管
7,17 結露部
7a,17a 節部
7b,17b 貫通孔
17c 結露補助部
8,18 滴下部
12 温度調節装置
13 伝熱部
100 土槽
101 対象物
102 緩衝部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の上方より水滴を滴下させる降雨装置であって、
前記対象物に対向して前記対象物の上方に配設される面状の結露部と、
前記結露部の上面から下面に亘って貫通形成された貫通孔と、
前記結露部の下面から下方に向かって垂設された針状の滴下部と、
前記結露部の上方に気液が混合された霧状の流体を噴霧する噴霧装置と、を備えていることを特徴とする降雨装置。
【請求項2】
上部および側部を閉塞する上面および側面を有すると共に、下部が開放された筐体を備え、
前記結露部は、前記筐体の下部に配設されていることを特徴とする請求項1記載の降雨装置。
【請求項3】
前記結露部は、網目状又は格子状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の降雨装置。
【請求項4】
前記滴下部は、前記結露部の網目や格子の節部から垂設されていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の降雨装置。
【請求項5】
前記結露部の温度を調節する温度調節装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1に記載の降雨装置。
【請求項6】
前記結露部の下部に配設された緩衝部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1に記載の降雨装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate