説明

限外濾過装置

【課題】 連続循環濾過を続けることができ、濾液として排出した量と同量の希釈液で供給しつつ、撹拌しながら、異物の混入なしに定量的な濾過精製を連続かつ自動的に行う装置を提供する。
【解決の手段】 これまで不確実であった限外濾過や透析作業であったが、密閉環境で被濾過液を繰り返し濾過しながら、希釈液を適量供給するのが理想であることは分かっていた。本発明ではこの理想を実現すべく、系全体を密閉回路とし、被濾過液の濾過膜部への送り出し循環をポンプで行い、その撹拌と希釈液の供給を気体の圧力と自動弁の操作でおこなうようにし、被濾過液を電子秤で常時計量し、その信号により希釈液の供給を自動制御したことで、完全自動連続限外濾過を実現したから、長時間を要するこれらの作業を無人で連続して行えるようになったばかりか、装置を一体とし、コンパクトで故障の少ない装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限外濾過装置及び透析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、限外濾過装置は、被濾過液を機械式ポンプ等で濾過膜に接触経由して1方向に他の容器へ送る方法であるが、この方法では、濾過は1回しか行われないから、濾過精製は不十分であり、容器の送り側、受け側を交換しつつこの作業を何度も繰り返し行う必要があるが、何回行えば精製が充分か尺度も無い。
【0003】
これでは作業があまりにも煩雑であるので、被濾過液をポンプにより循環させ、繰り返し濾過を行うようにすることも出来るが、溶液と低分子量成分が濾液として外部に排出され、被濾過液は減少し、粘度の上昇が生じ、液の循環に支障をきたすので、水等の希釈液を補充し撹拌しなければならないが、これらの作業は開放状態で、都度手作業でおこなわざるを得ない。
【0004】
濾過精製は繰り返し長時間行うべき作業であるにもかかわらず、手作業が必要であるので、夜間、休日は事実上作業が不可能で休止放置され、濾過精製を完了するまでに多くの日数を要し、開放作業による細菌の混入等で、カビの発生、腐敗等を生じ貴重な合成液を捨てざるを得ないことも稀ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、高分子化学合成に係わる一連の作業の中で、不純物を除去する濾過精製作業は目的の合成物を得るために重要な工程であるが、上述のように、限外濾過は容器の交換と希釈液の補充、更に撹拌を開放状態での手作業でおこなわざるを得ず、定量的な処理を目的精度まで計画的に行うべき処理にはなり難いばかりか、不純物を除去しようとする作業の目的に反し、空中の浮遊異物、特にカビの胞子、細菌などの混入は避けられず、完了までに長時間を要することと共に、その後の処理に大きな影響を与え目的の合成の成否に大きな災いとなるものである。
【0006】
このように、限外濾過は問題が多いため、透析により精製を行うケースも多いのであるが、透析にもより多くの問題があり目的を達しているとは言い難く、以下のようである。
【0007】
透析では被濾過液を半透膜の袋に封入し、希釈液に相当する低浸透圧の液に浸漬し、被濾過液の低分子量成分が半透膜を通過し、浸漬された希釈液に透出されるが、希釈液も同様に半透膜を通過し被濾過液を希釈する形で浸透する。しかし長時間連続おこなう透析では夜間、休日等の監視はできないので、希釈液の浸透の圧力によりで、半透膜の袋が破けたりする事故は珍しくないばかりか、どれ程低分子量成分が透出したかは計量の方法が無く、不明確、不確定であったりで、定量的な処理とは言い難いものであった。
【0008】
このように、透析では事故が多いこと、定量的な処理とは言い難いことから、設備や装置があれば、限外濾過をすべきところであるが、以上に述べたように限外濾過にも問題が多く完全なものではないことから、普及の障害になっていたが、仮に、作業が連続、密閉でおこなえれば、夜間、休日連続作業が可能となり著しく短時間で濾過精製が可能となるばかりか、時間短縮と密閉作業の相乗効果でカビの発生、腐敗の可能性も激減するから、これが理想的な濾過精製の形である事は分かっていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、より精製度の高い処理を可能にする限外濾過装置に関するものであるが、容器の交換作業を不要とすべく、被濾過液が濾過膜に接触経由して、もとの容器に戻るようにポンプを設け、循環回路を形成するように配管する。
【0010】
この循環で、被濾過液の一部は濾過膜を通過して濾液として排出されるが、その排出量を被濾過液容器の重量を電子秤で計量することで感知し、この信号で自動弁を操作し同量の希釈液を別設置の加圧タンクから気体の圧力により補充供給することで、被濾過液の粘度上を昇防止し、総量を確保しつつ密閉回路での連続自動の限外濾過を行うようにした。
【0011】
更に、希釈液タンク加圧用の気体の一部を、被濾過液容器に導き、底部から泡として吐出させることで、容器内の被濾過液の撹拌も特別に機械的な器具を用いなくとも同時に行うようにした。
【発明の効果】
【0012】
本考案は以上詳述した如くに構成したから、下記の効果を奏する。
1)容器ごと被濾過液の重量を電子秤で計量することで、濾液の排出量を常時電気的に計量し、その信号により希釈液を自動補給するようにしたから、容器の交換や、被濾過液の補充などのこれまでの頻繁な作業を不要とし、限外濾過の連続自動化を実現し、無人化と完了までの時間を短縮した。
2)希釈液の供給に圧縮気体を用い、それで被濾過液の撹拌も行う事ができるようにしたから、希釈液供給ポンプ、撹拌機など機械的動きを要する部分が不要となり構造が簡単で故障が少ない装置とした。
3)被濾過液の循環回路と希釈液自動供給を密閉回路で構成したことで、取り扱い処理中の異物の混入を完全に防止できるようにした。
4)希釈液の供給を停止した運転を行えば、被濾過液の濃縮も行うことができる装置となった。
5)上述のように一つの容器からの循環で限外濾過の全てが自動化され、一体の装置となり、省スペース、省力化、作業の簡略化を実現したばかりか、精製制度向上に貢献する装置となっている。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は限外濾過、透析に関するものであるが、例えば、高分子合成分野では、合成した物質には副産物として、目的の物質以外にも分子量の違う物質も同時に合成される。
【0014】
バイオ分野では、溶剤を用い動植物体の誘導物から有効成分を抽出することが多いが、この場合も目的の有効成分以外にも分子量に差のある多くの含有物質が溶出、抽出される。
【0015】
製薬、創薬分野でも同様に合成、製造、抽出の過程で目的外の物質が混在して製作されるから、何れの場合も、その目的外の分子量の異なる物質を除去しなければならない。
【0016】
これらの目的外の物質の除去精製の方法には多くの方法があるが、限外濾過、透析は、濾過膜の選定で自由に膜の通過分子量の大きさを選定できるばかりか、加熱したり、吸着剤などを用いたりすること無しに、目的の分子量別の精製が正確に実施できるので、大いに利用されるべきであるが、これまでは作業の煩雑さと、不確実さから積極的に利用されてはいなかった。しかし、本発明により自動連続での閉鎖系での作業が可能になり、本発明により今後は大いに利用され高分子化合物の精製に関わる処理が進展するものと確信する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本案の実施例を図1に基づき詳述する。
図1において、1は被濾過液とその容器であり、2の電子秤の上にセットされ、常時その重量を計量し、その電気信号を発している。
【0018】
被濾過液は、この容器1の底部から配管1aを経由して、循環ポンプ3に接続され、出口側配管1bを経由し、濾過膜部4に接続され、濾過膜5に接して流れ、配管1cから、容器1に戻り循環する回路を繰り返し流れる。
【0019】
この時、被濾過液は濾過膜5に接して流れるから、分子量の小さな物質と溶液の一部が、配管6から容器7へ濾液として排出される。
【0020】
次に、8は希釈液の補充供給と撹拌の動力になるべき圧縮気体供給装置であるが、配管8aにより、フィルター9に接続され、気体中の不純物を除去し、自動弁10から配管11より分かれて、11a,11bに接続され、清浄な圧縮気体が供給されるが、
11aに導かれる気体は、被濾過液容器1の底部から気泡となって容器内部の被濾過液を撹拌するが、排気フィルター12から排気されるので、容器1の内部は加圧される事はない。しかし、11bに導かれた気体は希釈液タンク13の内部を加圧し、希釈液を圧送するために用いられる。
【0021】
この希釈液は、電子秤2で計量されている容器1が濾液を排出し一定量減量したときに、電子秤からの信号で自動弁14が開き、常時は開いている手動弁15を通過し配管13bを経由し、容器1に、この濾液として排出した減量分が供給されるので、常に被濾過液は一定量を確保しつつ連続的に限外濾過を行うことができる。
【0022】
また、希釈液タンク13には、液面スイッチ16が装備されておりタンクが空になったことを、警報として出力し、希釈液の補充が必要であることを要求すると同時にポンプの運転停止、気体用自動弁を閉止し全体の運転を停止する。
【0023】
この限外濾過作業の終了時には、手動弁15を閉じたまま運転することで、希釈液の供給はされず、濾液の排出のみが行われ、被濾過液の最終濃縮を行うことができる。
【0024】
本装置には、しかるべき部分に、ゲージ、絞り弁、減圧弁などの品装置を設け、循環量や濾過速度を任意に確認調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例に係わる限外濾過装置の全体図である。
【符号の説明】
【0026】
1 被濾過液及び容器
2 電子秤
3 循環ポンプ
4 濾過膜部
5 濾過膜
6 濾液排出配管
7 濾液受け容器
8 圧縮気体供給装置
9 気体用フィルター
10 気体用自動弁
11 気体用配管
12 排気フィルター
13 希釈液タンク
14 希釈液供給自動弁
15 希釈液用手動弁
16 液面スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過精製しようとする液(以下、被濾過液という)を、容器からポンプを用い濾過膜に接して圧送し、再度もとの容器に戻る循環回路となるように配管し、この容器を電子秤で計量することで、被濾過液が濾過膜を通過して濾液として排出された減量分を感知し、この電子秤の信号で自動弁を操作し、別に設置した希釈液タンクから、その分と同量の希釈液を補給することで被濾過液の粘度上昇を防止し、総量を確保しつつ、連続的に循環限外濾過を行う限外濾過装置。
【請求項2】
請求項1の限外濾過装置で、希釈液を密閉容器に入れ、この補給を気体の圧力によりおこない、同気体を被濾過液容器底部にパイプ等で導き、液内で開放する事で泡により液の撹拌をおこなう構造とすることで、機械式ポンプを用いずに液の補給を、機械式撹拌機を用いずに撹拌を、おこなうようにした限外濾過装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−160253(P2007−160253A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361796(P2005−361796)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(592239822)
【Fターム(参考)】