説明

限定された保護流体を使用することによって有機蒸気ジェット堆積の方位分解能を増加させる方法

有機材料を堆積する方法が提供される。有機材料が基板に堆積されるように、有機材料を搬送するキャリアガスは、そのキャリアガスの熱運動速度の少なくとも10%である流速でノズルから噴出される。ある実施形態では、そのキャリアガスを囲う、ノズルと基板との間の領域における動態的圧力は、噴出中、少なくとも1Torrであり、より好ましくは10Torrである。ある実施形態では、保護流体がキャリアガスの周囲に供給される。ある実施形態では、バックグラウンド圧力は、少なくとも約10−2Torrであり、より好ましくは約0.1Torrであり、より好ましくは約1Torrであり、より好ましくは約10Torrであり、より好ましくは約100Torrであり、最も好ましくは約760Torrである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を堆積するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を使用するオプトエレクトロニクス素子は、多くの理由で価値が増大してきている。そのような素子を形成する多くの材料は比較的安価であり、そのため、有機オプトエレクトロニクス素子は、コスト優位性において無機材料より可能性がある。さらに、柔軟性(フレキシビリティ)のような有機材料の特有の特性は、フレキシブル基板における製造のような特定の用途に非常に適している。有機オプトエレクトロニクス素子の例には、有機発光素子(OLED)、有機フォトトランジスタ、有機光電池、有機光検知器などが含まれる。OLEDにおいて、有機材料は、通常の材料より性能面で優位性がある。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般的に適切なドーパントで容易に調整されることができる。
【0003】
薄膜トランジスタ(TFT)、発光ダイオード(LED)、光電池(PV)のような有機オプトエレクトニクス素子は、この10年間に研究者のかなりの注目を集めている。有機半導体は、様々な基板上に堆積されることができ、それは、無機半導体に比べた場合、潜在的に簡素化し、製造コストを低減する。しかしながら、有機半導体の独特のプロセス要求は、それらの用途を限定することもある。例えば、発光素子と光電池は、典型的には導電電極間に挟まれた共役ポリマーまたはモノマーの薄膜(100nm未満)からなる。フルカラーディスプレイやマルチトランジスタ回路では、有機活性層自体が横方向にもパターン化されなければならない。しかしながら、その有機層は典型的には非常に脆いので、フォトリソグラフィ、プラズマ処理または反応性イオンエッチングのような通常の半導体処理方法に耐えることができない。したがって、多くの製造技術またはパターニング技術は、処理の容易さ及び低コスト化に第1に重点をおいて、これらの特有の要求を解決するために開発された。
【0004】
ここで使用される「有機」という用語は、有機オプトエレクトロニクス素子を製造するために使用されることができる低分子有機材料だけではなく高分子材料も含む。「低分子」は、高分子ではない、あらゆる有機材料を示すものであり、「低分子」は実際には非常に大きくてもよい。低分子は、場合によっては繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、その「低分子」の分類からその分子を排除するものではない。低分子は、例えば、高分子骨格上の側基として、または、その骨格上の一部として、高分子に組み込まれていてもよい。低分子は、コア部上に築かれた一連の化学シェルからなるデンドリマーのコア部としての役割も果たす。デンドリマーのコア部分は、蛍光性またはリン光性の低分子エミッターであってもよい。デンドリマーは「低分子」であってもよく、現在、OLEDの分野で使用される全てのデンドリマーは、低分子であると考えられる。
【0005】
有機材料をパターニングする以前の方法は、マスクを通した有機材料の堆積を必要としていた。参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、2003年7月22日に特許となった米国特許第6,596,443号に開示されているように、有機材料は、製造される素子の基板に取り付けられた統合マスクを通して堆積されることができる。あるいは、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、2001年4月10日に特許となった米国特許第6,214,631号に開示されているように、有機材料は、基板に一体に取り付けられていないシャドーマスクを通して堆積されることができる。しかしながら、そのようなマスクを用いて達成される解像度は、正確に製造されたマスクに対する解像度、マスクへの有機材料の積層、マスクと基板との間に堆積される有機材料の拡散を含む、多くの要因のために制限される。
【0006】
ここで使用される「上部」とは基板から最も遠いことを意味し、一方「下部」とは基板に最も近いことを意味する。例えば、2つの電極を有する素子において、下部電極は、基板に最も近い電極であり、通常、製造される第1の電極である。下部電極には、2つの表面、すなわち、基板に最も近い下部表面と、基板から最も遠い上部表面とがある。ここで、第1の層が第2層の「上に配置される」と記述される場合、第1の層は基板からより遠く配置される。第1の層は第2の層と「物理的に接触している」と明記されていない限り、第1の層と第2の層との間に他の層があってもよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードを覆って配置されるように記述されることができる。
【0007】
ここで使用される「溶解処理可能」という用語は、溶解、分散、沈積、及び/又は、溶液または懸濁液状のどちらかの液状媒質から堆積することが可能であることを意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、有機材料を堆積する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、有機材料を堆積する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
有機材料を堆積する方法が提供される。有機材料が基板に堆積されるように、有機材料を搬送するキャリアガスは、そのキャリアガスの熱運動速度の少なくとも10%である流速でノズルから噴出される。ある実施形態では、そのキャリアガスを囲う、ノズルと基板との間の領域における動態的圧力は、噴出中、少なくとも1Torrであり、より好ましくは10Torrである。ある実施形態では、保護流体がキャリアガスの周囲に供給される。ある実施形態では、バックグラウンド圧力は、少なくとも約10−2Torrであり、より好ましくは約0.1Torrであり、より好ましくは約1Torrであり、より好ましくは約10Torrであり、より好ましくは約100Torrであり、最も好ましくは約760Torrである。装置が提供される。その装置はノズルを有し、そのノズルは、第1排気口と第1ガス注入口とを有するノズルチューブと、そのノズルチューブを囲うカバー部(ジャケット)とを有し、そのカバー部は、第2排気口と第2ガス注入口とを有する。その第2排気口は、その第1チューブ開口を完全に囲う。キャリアガス源と有機源容器は第1ガス注入口に接続されることができる。保護流体ガス源は、第2ガス注入口に接続されることができる。その装置は、多数のノズルを有していてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
有機蒸気ジェットプリンティング(Organic Vapor Jet Printing; OVJP)は、有機分子半導体薄膜の成長中におけるダイレクトパターニングに導入される。熱い内部キャリアガスは、有機分子の蒸気を搬送し、微細ノズルを通って膨張し、完全に平行化された噴流となる。その噴流は低温の基板に衝突し、有機分子の選択的物理吸着を生じさせるが、キャリアガスの選択的物理吸着は生じさせない。OVJPの非平衡状態は、100%に近い効率の高解像度の有機半導体パターンや有機半導体素子のダイレクトプリンティングをもたらす。その堆積速度は非常に速く、例えば、1000Å/sないしはそれ以上である。ノズルの直径と、ノズルと基板との間隔によって部分的に決定されるパターン解像度を例示説明する。例えば、20μmの直径のオリフィスを使用すると、直径で25μm以下のパターンが得られた(1000ドット/インチ)。さらに、700Å/sの薄膜堆積速度で典型的なペンタセンチャンネル薄膜トランジスタを印刷したところ、(真空堆積装置で達成される性能に匹敵する)0.25cm/V・sの正孔移動度と7×10の電流オン/オフ比が得られた。スケーリング解析を用いて、プリンティング解像度とプリンティング速度における処理条件の影響は決定された。組み合わされたプリンティング実験と直接シュミレーションモンテカルロモデルは、その解析に使用される。OVJPによる有機分子半導体のプリンティングは、小規模電気回路と大規模電気回路の両方の高速製造を可能にする。その処理は、ノズルのサイズと個数に依存する上流−下流圧力傾斜の範囲で実行されるが、下流圧力は0.1Torrから1000Torrの範囲であることが好ましい。OVJPの高度に局所化された方向特性のために、本発明の形態は、直接有機薄膜パターニングが実質的に任意の大きさと形状の基板において適用することを可能にする。有機エレクトロニクス素子用に加え、OVJPの方法は、付加的で新しい程度のフィルムと結晶のモルフォロジーの制御を有する、高度に局在化された過熱(ハイパーサーマル)有機ビームを用いた新規な膜成長レジームへの手段を提供する。
【0011】
有機蒸気ジェットプリンティング(OVJP)の実施例で、熱い内部キャリアガスは、有機分子の蒸気を搬送し、微細ノズルを通って膨張する。結果として得られる平行化された気体噴流(ジェット)は、低温の基板に衝突し、有機分子の選択的で局所的な吸着を生じさせるが、キャリアガスの選択的で局所的な吸着は生じさせない。OVJPは液体溶剤を使用しないので、インクジェットプリンティングのような他の処理に比べ、基板の材料や形状の選択において自由度があり、それによって、多くの種類の有機半導体や有機構造物が堆積されることを可能にする。有機素子に使用される分子は、通常、分解と350〜450℃までの熱分解とに対して安定であり、数ミリバール以下の蒸気圧を有し、実際の高い堆積速度での使用を可能にする。
【0012】
OVLPの1つの独特の側面は、非常により軽いキャリアガスの流れによって有機種が過熱(ハイパーサーマル)速度まで加速されることができるということである。このことは、より高密度で、より配列された薄膜をもたらし、素子用の高品質薄膜の超高速成長におけるプロセスウィンドーを潜在的に広げる。この加速は、OVJPの瞬間的な局所堆積速度が他の広領域堆積法の速度を越えることをもたらし、結果として、大規模エレクトロニクスの高速プリンティングにおいて競争上の優位性となる。典型的なOLEDへテロ構造物は、2000Å以下の厚さである。1000Å/sで、それぞれがそのピクセル幅に対応する直径を有する直線状に配列されたノズルを用いて、1000ピクセル幅のディスプレイは30分以内でプリントすることができる。ここで検討された実験における成長速度は、有機分子エレクトロニクス素子の製造において報告されている一般的な速度より桁違いに大きく、それらはさらに増加されることができ、ソース温度を10℃上げる毎に蒸発速度が約2倍になる。低分子有機材料は、高堆積速度を可能にするのに適した温度で十分な蒸気圧を有するので、OVJPは、好ましくは低分子有機材料を堆積するために使用されることができる。しかしながら、OVJPは、ポリマーのような他の材料への用途も有する。
【0013】
OVJPの実施形態は、キャリアガスは使用されるが「噴流」ではない、OVPD(有機蒸気気相堆積)のような他の技術を除外して、通常、ノズルから噴出されるガスの「噴流」を含む。ノズルを通る流速が、縦揺れしている分子を有する流れ(フロー)の無いガスの異方性速度に相当する異方性の流速分布をもたらすほど十分に大きいとき、「噴流」は発生する。噴流が生じることを定義する1つの方法は、キャリアガスの流速がそのキャリアガス分子の熱速度の少なくとも10%になることである。
【0014】
(装置説明)
OVJP装置の一形態は、図1に概略的に示される。装置100は、第1有機ソース室110、第2有機ソース室120、希釈路130、混合室140、ノズル150、及び、発熱体160を有する。有機ソース室110、120は、基板170に堆積するための有機材料を含む。それぞれの有機ソース室は、異なる有機材料または有機材料を組み合わせたものを含むことができる。キャリアガスソース105は、矢印で模式的に示されるが、有機ソース室110、120、及び、希釈路130にキャリアガス流を供給する。バルブまたは他の機構は、有機ソース室110、120、及び、希釈路130のそれぞれにキャリアガスをどれくらい流すかを決定するために使用することができる。キャリアガスが有機ソース室に流れると、そこに含まれる有機材料は昇華され、その後キャリアガスによって搬送される。それから、その有機材料とキャリアガスは、希釈路または他の有機ソース室から進入してきた他のキャリアガス及び/又は有機材料と共に混合室内で混合される。希釈路130は、希釈路なしで可能な濃度より低い有機材料濃度において、より正確な制御を達成するために使用されることができる。それから1つ又はそれ以上の有機材料とキャリアガスとの混合物は、ノズル150を通して基板170の方に排出される。発熱体160は、装置100内のキャリアガスと有機材料の温度を制御するために使用されることができる。ここに説明されるように、流速と他のパラメータとを制御することによって、排出される材料のフローシステムは、平行化された噴流155を形成するために制御される。基板170は、冷却水路190を含む基板ホルダー180上に配置される。基板170と装置100との相対位置を制御するために、如何なる適切な位置調整機構も使用することができる。冷却水路190は、冷却源に連結されることができ、基板ホルダー180と基板170との温度を制御するために使用されることができる。それから、有機材料は基板170上に堆積され、キャリアガスはその側方に流れていく。
【0015】
装置100は、あらゆる適切な材料から形成されることができる。ステンレス鋼は、その耐久性と熱伝導率のために適切である。明確性のために、2つの有機ソース室110、120のみが示されているが、それ以上、又はそれ以下の有機ソース室を使用されることができる。望ましくは、発熱体160は、装置100の均一加熱を達成することができる。望ましくは、有機蒸気の移送速度を調整するために、個別に定量されたキャリアガス蒸気をそれぞれのソース室に流す。装置100は、「メイクアップガス」と「プッシャーガス」が希釈路130を通って流れることを可能にする。メイクアップガス流は、ソース温度に加えて有機蒸気の濃度を調整するために使用することができる。プッシャーガス流は、蒸気の逆拡散を防止する補助をする。図1の形態では、メイクアップとプッシャーの機能は、希釈路130を通して達成される。基板170の動作は、望ましくは3次元に沿って行われ、コンピュータ制御される。
【0016】
OVJP装置の他の形態は、図2に概略的に図示されている。ノズル200は、ノズルチューブ210とカバー部220とを有する。ノズルチューブ210は、ノズルチューブ壁217で限定される。カバー部220は、ノズル210に隣接して配置され、ノズルチューブ壁217とカバー壁227で限定される。ノズルチューブ210は、第1気体注入口212と第1排気口215とを有する。カバー部220は、第2気体注入口222と第2排気口225とを有する。キャリアガスソース230は、有機材料を第1気体注入口212に搬送するためのキャリアガス流を提供する。保護流体源240は、第2気体注入口222に保護流体のフローを供給する。キャリアガスは、堆積される材料を搬送するが、第1排気口215から流れ出る。保護流体ガスは、第2排気口225から流れ出る。図2のガスソースは、一般的に記載されるものであり、チューブ、バルブ、ガスシリンダー、温度制御装置及び他の構成要素のように、制御されたガス流をノズルに供給するために使われる如何なる構成要素を含むことができる。
【0017】
加熱式の形態において、熱は、種々の方法で提供されることができる。好ましくは、キャリアガスソースは、堆積される適切な濃度の分子を昇華するための適切な温度までソース室で加熱される。他の熱源は、ソース室の外側や上方のような、ノズルや他の場所(堆積が望まれる基板以外の場所)にその分子が堆積することを防止するために要求されることもできる。望ましくは、保護流体ソースは、加熱された保護流体ガスを供給し、それから、それは、ノズルチューブ壁217を加熱する。他の加熱式の形態は、ノズルチューブ壁217及び/又はカバー壁227のようなノズル200の部分を直接加熱するRFまたは他の加熱機構を使用して達成されることができる。
【0018】
適切な保護流体は、キャリアガスと堆積される分子を限定することができ、それらが広がることを防止することができる。従って、所望の鋭い又は高い解像度が達成される。望ましくは、保護流体は、キャリアガスに比べて相対的に重いガスを含む。望ましくは、保護流体ガスは、キャリアガスの分子量より重く、保護流体がキャリアガスをより効率的に含むことを可能にする。
【0019】
その堆積は大気雰囲気中で実施することができるが、下流圧力Pは、物質移行を促進するためにいくつかの実施形態では0.1−10Torrに下げられる。25μmほど堆積されるパターンにおいて端部精度を維持するために、ノズル−基板間隔sは、体積圧力において分子の平均自由工程λのオーダーに維持される(例えば、0.1Torr<P<10Torrにおいて、100μm>λ>1μm)。端部の鋭さは、ある形態では望まれるが、必ずしも必要なものではない。λが装置寸法(s、ノズル半径a、ノズル長Lのいずれかを利用できる)のオーダーにあるとき、その流れ(フロー)は、連続流レジームから自由分子流レジームへの移行を受けると考えられる。典型的なOVJP条件は、そのような移行レジームフローをもたらす。
【0020】
(モデリング)
遷移流の物理図の詳細は、実験と直接シュミレーションモンテカルロ(DSMC)技術から導かれる。本願明細書は、高解像度有機薄膜パターン及び素子のOVJPを実施説明することに加え、プロセス条件が成長速度やパターン解像度にどれほど影響を与えるかを調べる。スケーリングモデルは開発され、DSMCシミュレーションとOVJP実験と比較される。
【0021】
ソース室(7)内の有機種の物質収支(マスバランス)は、ソース室に存在する有機種の蒸気圧において以下の式(1)を与える。
【0022】
【数1】

【0023】
式(1)は、ソース温度に加えてキャリアガスの流速を示し、堆積される膜中のドーパントの濃度を調整するための要件である有機蒸気のフラックスを調整する。
【0024】
ソース室からの下流、OVJPは、気相堆積やインクジェットプリンティングとは大きく異なる。気相体積とは違って、OVJPは基板付近に限定された拡散ではなく、インクジェットプリンティングとは違ってOVJPは液相で起こらない。ノズルを通るガスの流速Qは、圧力駆動力とノズルの伝導性の結果である。
【0025】
【数2】

【0026】
ここで、駆動力は、上流圧力と下流圧力(P、P)では異なり、伝導率Cは、以下式(3)のように記述される。
【0027】
【数3】

【0028】
ここで、第1ブラケットの量は運動論から計算され、それから、異なるガスの混合物及び条件における実験的因子によって修正される。OVJPで使用される有機種とキャリアガス種の分子量の大きな相違のため、式(3)は、ノズルの内部壁付近のサーマルスリップを反映してさらに補正される。
【0029】
軽いキャリアガス種は基板によって放射状に強く散乱されるが、より重い有機種は、より多くのそれらの軸モーメント(キャリアガスの質量に対する有機分子の質量との比M/Mに比例して)を維持する。この機構は、図4、5に示すように、DSMCの結果によって確認される。間隔sは、基板の付近でλのオーダーである場合、有機分子は、ノズル−基板のギャップ内で衝突を受けない。有機部分がノズル内部でバルク流速に達したと仮定すれば、z軸におけるそれらの運搬量uは、式(5)となる。
【0030】
【数4】

【0031】
有機分子がノズルから外側に分散する場合の平均速度は、以下の式(6)のように表現される。
【0032】
【数5】

【0033】
ここで、χはノズルから現れた後における移動したラジアル距離であり、mとmは、それぞれキャリアガスと有機分子の分子量であり、νは、有機粒子の純拡散率(pure diffusivity)から寄与度である。この(等方性の)拡散寄与は、以下の式(7)によって近似される。
【0034】
【数6】

【0035】
ここで、Dとtは、それぞれ、有機種のガス拡散率と基板に到達するまでにかかる時間である。
【0036】
ノズルの内側で完全に発達された流れ、低濃度(<1モル%)の有機種、非圧縮性の流れ、キャリアガス相の質量保存を仮定すると、有機分子は、ノズル内のそれらの元の位置から急速に外側に距離χほど移動するということが見られる。
【0037】
【数7】

【0038】
式(8)の初項は、発散するキャリアガスを有する衝突から有機分子への水平モーメント移動(トランスファー)を表し、第2項は、基板に対する弾道輸送率標準に対する放射状拡散率のスケールを表す。
【0039】
式(8)は、正確な堆積形状を予測しないけれども、堆積されるパターン精度における処理条件の相対的影響を示す。特に、λ=kT/(√2)σPが与えられ、ここで、図3に示されるように、σはその分子の断面であり、分散はPのある値において最小となる。最大解像度に相当するPの値は、典型的なOVJP条件において1−50Torrの範囲である。式(8)は、パターン定義が、より軽いキャリアガス(例えば、Nの代わりにHe)を使用して高められることを提案する。実際には、ノズル内の平均流速は、ノズル内の有機分子の総フラックスによって、所望の堆積速度によって固定される。したがって、与えられたノズル半径aにおいて、残っている調整可能なパラメータは“s”と“P”である。したがって、最大パターン解像度における操作条件は、プロセスダイアグラム(図4)上にプロットされることができ、ここで、操作線は、あらゆる与えられた“P”における“s”の値に示す。例えば、大きな間隔sにおいてさえも高いパターン解像度を維持するために、下流圧力Pは低減されることができる。その操作線上の領域は拡散律側プリンティングを表し、下部の領域は伝達律速操作に相当する。最後に、ノズルと基板との間の領域における局所動態的圧力は、通常、Pより大きく“s”とは逆のスケールである。これは、Pを有するパターン分散曲線における最小値が実際のOVJP条件で観察されないように、「動態的圧力線」によって示されるように、効率的なPLに低い制限を生じさせる。
【0040】
単一ノズル膨張の共通機能は、実質的に全ての上流又は下流条件においても中心にドーム状のフラックスプロファイルを作り出すということである。したがって、平坦な上部堆積を達成するために、そのノズルは、ある領域にわたってラスターされることができる。あるいは、ノズルの束または小型化された“シャワーヘッド”は同様の効果を得るために使用されることができる。ノズルスケールの伝導率はa(式4参照)に対応するので、そのプリンティング速度は、後のアプローチで最大化されることができる。さらに、式(8)の観点から、相対的に重いガス(例えば、Ar又はSF)の環状の保護流体は、堆積の鋭さを得るために、より軽いガス(例えば、H又はHe)の主なフローとともに使用されることができる。環状の保護流体は、ラスタリングやシャワーヘッドアプローチのような鋭さを増加させる他の方法とともに使用されることができる。その種の放射拡散は、重い内部ガスで構成されている保護流体によって妨げられるが、保護流体とともに、有機種は主なキャリアガス流によって最大に加速され、平行化される。
【0041】
図3は、基板310の周辺にある、中空の円筒構造を有するノズル300を示す概略図である。キャリアガスの流線(黒の実線)と有機分子の予想される曲線(曲がった矢印)は、定性的に示されている。式(1)から(8)のいくつかの変数が同様に示されている。キャリアガス流の領域は、ノズル排出口に対する基板の近接により急激に発散するけれども、相対的に重い有機分子は、キャリアガスよりも大幅に平行化された曲線を得る。ここで検討されるように、ノズルオリフィスにおける拡散プロセス及び対流プロセス間の相互作用は、パターン形状、ノズル半径(a)、ノズル−基板間隔(s)及びノズルからの下流領域における圧力(P)に影響を与える。図3に示すように、そのスケールは、通常、“s”、パターン解像度、Pにおけるその分子の平均自由工程(λ)が同程度であるというものである。実験及び直接シュミレーションモンテカルロ技術は、このタイプの輸送の理解を得るための最良の方法である。
【0042】
図4は、下流圧力Pに対するパターン分散の定性的な依存性(χ/α)のプロットと、ノズル半径、ノズル/基板間隔及び下流圧力の関係を示す関連したプロットとを示す。プロット410は、下流圧力Pに対するパターン分散の定性的な依存性(χ/α)を示す。その分散は、対流的で拡散性の運搬量の平衡に反するために、与えられたPの値で最小化される。プロット410の円によって定義された領域において、プロット420は、ノズル半径、ノズル/基板間隔、下流圧力の間の関係を示す。最も高いパターン解像度(最小の分散)における状況は、最適な操作線を与えるようにプロットされる。この線の上または下で動作することはパターン解像度を低下させる。“s”と“P”を増加させることは、制御された輸送の拡散をもたらし、“s”と“P”を減少させることは、制御された輸送の対流をもたらす。実際の“動態的圧力”すなわちジェットを囲うノズルと基板との間の圧力は、ジェットと周囲の圧力(常圧)の相互作用のために、周囲の(あるいは、バックグラウンド)圧力Pより高くすることができる。したがって、“動態的圧力”線は、より低く、実際の動作レジームをセットする。動態的圧力下の網掛け領域によって表された動作レジームは、いくつかの形態によっては得難い。本発明が動作する如何なる理論に限定されることなく、ジェット流は、基板付近で減速され、ジェット流の運動エネルギーの一部は、ジェット流を直接囲う領域の高い圧力の形態でポテンシャルエネルギーに変換される。
【0043】
バックグラウンド圧力や流速などのような様々な関係のあるパラメータの関数として動態的圧力を直接的に決定する単純な定性的関係はないが、保護流体なしでノズルから排出される噴流の場合には、OVJP用に適した速度では、動態的圧力は通常バックグラウンド圧力の10倍を超えず、ノズル−基板間隔は、ノズル半径と同程度の大きさであると考えられる。ほとんどの場合、動態的圧力は周囲の圧力の2倍を超えない。動態的圧力を決定するために必要とされるシミュレーションは、ここに開示された内容に基づく当業者によく知られている。
【0044】
DSMCによって計算されたフローの詳細は、図5に示されている。プロット510は、気流場の垂直速度要素である。キャリアガスと有機分子(この場合、トリス−(8−ヒドロキシキノリン、または、Alq)に対応する曲線は、プロット520で示されている。速度マップは、ノズルの出口では、200m/s以下の速度に達する、ノズルを通ったフローの加速を示し、基板表面上の直ぐ手前での停滞を示し、ここで、動態的圧力は、通常、ノズルから離れた領域では周囲の圧力(常圧)Pを越える。速度は、プロット510上において影のように示されており、ノズル内で最大の速度を有し、ノズルから離れたところで最小の速度を有する。しかしながら、重い有機分子の曲線は、キャリアガス流線を横切り、境界がはっきりした堆積をもたらす。望ましくは、有機曲線とキャリアガス曲線との間でこの発散を達成するために、有機材料の分子量はキャリアガスの分子量より大きい。
【0045】
異なるプリンティング条件でDSMCから得られた堆積プロファイルは、図6及び図7にプロットされており、ここで、“s”と“P”の増加のために堆積が広がることは、明白である。第一にパターン幅がPに連れてゆっくり変化するが、それから急速に増加し、その状況は分散最小値になるが示され、動態的圧力はPを越すことが示される。
【0046】
堆積される材料のプロファイルは、少なくとも1Torrの動態的圧力によって有利に影響を受け、より望ましくは、少なくとも10Torrである動態的圧力によって影響を受けることが考えられる。
【0047】
(実験)
素子は、図1の装置100と同様の外観を有する有機蒸気ジェットプリンターを用いて製造された。有機蒸気ジェットプリンターは、ステンレス鋼からなり、5つのチャンバーを有し、約40mmの直径を有し、60mmの長さを有し、加熱壁を有する。ソース室は、5mm×10mmの中空のステンレス鋼製の円筒体である。ソース材料は、ペンタセンとトリス(8−ヒドロキシキノリン)−アルミニウム(Alq)であり、それぞれ、有機TFT及びLED製品で広く採用されている。両方の材料は、「vacuum train sublimation」法によって2度プレ精製され、それぞれの室に詰め込まれ、2つの小さな石英ウールプラグ(quartz wool plugs)の間に挟まれた。その特定の実験では、5つのソース室の1つ又はそれ以上が使用されない。窒素がキャリアガスとして使用された。コンピュータ制御され、xyz移動ステージで動作され、冷却された基板上にコリメーティングノズルを通して蒸気と窒素は供給された。堆積チャンバー内のバックグラウンドガス圧は、荒引きポンプとスロットルバルブを用いて0.1から1000Torrの間に維持された。堆積されたパターンは、光学電子顕微鏡と走査電子顕微鏡を用いて撮像された。TFT堆積に使用された基板は、ゲート絶縁体として厚さ210nmを有するドライサーマルSiOの高導電性シリコンウェハである。ペンタセンを堆積する前に、基板は洗浄され、真空中において室温で15分間オクタデシルトリクロロシラン(OTS)の飽和蒸気に晒された。洗浄処理は、せっけん水、脱イオン水、アセトン、トリクロロエチレン(2回)、アセトン(2回)、イソプロピルアルコール(2回)中でのSiOコーティング基板の超音波処理からなり、その後、紫外オゾンチャンバー内での10分間の露光が行われた。金のソース接点とドレイン接点は、ペンタセンのプリンティングの後、真空熱蒸着によって堆積された。ヒューレット−パッカードモデル4155(Hewlett-Packard Model 4155)パラメータ分析器は、暗室において金属製の隔離箱(アイソレーションボックス)内で所定の条件で試験され、TFTの電流−電圧伝達特性を得るために使用された。
【0048】
図8は、いくつかの異なるスケールでOVJPによってプリントされた画像である。画像810は、ペニーに重ね焼きした画像である。画像820は、1.5mmスケールラインを有する画像である。画像830は、100ミクロンスケールラインを有する画像である。その画像は、AlqのOVJPによって作り出された(フローチャネル直径a=20μm、壁の厚さL=100μm、基板とノズルの間隔s=20∀10μm、各ピクセル位置上で2秒の滞留時間、0.2秒未満のピクセル間の移動時間、430Torrの上流圧力、0.24Torrの下流圧力、Alqソース室温度=270℃、基板温度=15℃、堆積速度rdep=約1300Å/s)。有機材料を損傷することなく、堆積速度は、ソース温度を300℃まで増加することによって8000Å/s以上に増加することができる。この成長速度においては、800本のノズルのアレイは、一分足らずで、SVGAの解像度ディスプレイ(600×800のOLEDピクセル)をプリントすることができる。この速度は、500本を越えるノズルを含むプリントヘッドを使用する現在の最先端のインクジェットプリンターに相当する。フラットトッププロファイルを有するピクセルを得るために、そのノズルは、成長中、ラスターされ、横方向にディザーされ、あるいは、多数の密集したノズルは、ディザーされる単一ノズルに置き換えられる。
【0049】
図9は、基板からの距離s=30μmにある40μm×250μm(a×L)ノズル排出口を用いて、Si上に印刷されたペンタセンドットの列の光学顕微鏡写真である。基板と堆積表面とから反射される干渉縞は、周知の技術を用いて堆積形状が決定されることを可能にする。ドットの各々の列は、異なるチャンバー圧力(P=1.33、P=0.9、P=0.5、P=0.17Torr)で堆積され、上流圧力は、Phigh=240Torrで一定に維持された。この組み合わせの堆積は、OVJPレジームを示すが、ここで、パターン解像度はチャンバー圧力を増加することによって高められる。より高いチャンバー圧力がチャンバー内のガス分子の分散をもたらすことが予想されるので、この結果は、少し直感に反し、高いチャンバー圧力では低下した解像度をもたらす。それどころか、より高いチャンバー圧力が解像度を高めることが発見された。本発明が動作する如何なる理論に限定されることなく、OVJPのフローレジームでは、より高いチャンバー圧力は、ガスジェットを制限するということが考えられる。
【0050】
これらの結果に基づくと、OVJPは、予想されていたよりも、より高いバックグラウンド圧力で実行されるということが考えられる。実際、より高い圧力では、堆積の形状において有利な効果がある。この有利な効果は、0.1Torrのバックグラウンド圧力で現れ、1Torr、10Torr、100Torrのような、より高い圧力でより顕著になる。ここに実施説明されたように、素子は、大気雰囲気(760Torr)で製造され、それは、素子の製造における高価で主要な設備の必要性を大幅に低減させる。有利な効果は、10−2Torrほどの低さのバックグラウンド圧力で現われるが、顕著ではなく、ここに実施説明したほど明らかではない。さらに、より高いその圧力(0.1Torr又はそれ以上)は、それほど高性能の真空装置を用いずに達成されることができ、そのため、以前に可能であると考えられていたものより高いバックグラウンド圧力で動作するためにコストの視点から大きな利点がある。
【0051】
図10は、20μm×100μmのノズルを用いて、Phigh=240Torr、Plow=0.24Torrで、シリコン基板上にプリントされたトリス−(8−ヒドロキシキノリン)−アルミニウム(Alq)ドットの光学顕微鏡写真である。ノズル排出口から基板までの距離sは、S1=25、S6=167μmで、(25、53.4、81.8、110.2、138.2、167)∀10ミクロンで変化された。各ドット位置における滞留時間は、60秒であった。
【0052】
図11は、図10の干渉縞パターンから計算された厚さのプロファイルを示す。十分な厚さの堆積のため、光の干渉縞は、その堆積プロファイルが決定されることを可能にする。
【0053】
式(8)は、パターン分散χがs1/2のスケールであるべきことを予想する。図12は、(FWHM)は、式(8)に従ってsに連れて線形的に増加するということ示す。標準化の後、図11の厚さのプロファイルから得られた半値幅(FWHM)は、χの尺度として用いられる。
【0054】
図13は、300Å/sより大きい局所堆積速度と、s=35∀15μmとを有する、SiOにプリントされたペンタセンラインの走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。画像1310は、500ミクロンスケールラインを有するペンタセンラインであり、一方、画像1320は、1ミクロンスケールラインを有する、高い倍率における同様のペンタセンラインである。その画像は、傾斜したナノピラーの形状にペンタセンが成長することを明らかにする。ガスは、ノズルの方に傾斜したジェット中心の左側に位置したナノピラーと、その軸の方に傾斜したジェット中心の右側に位置したナノピラーとから流れる。この影響は、OVPDで生じるように拡散律速の成長で観測されず、OVJP処理中に高度にその結晶のディレクショナルフィード中に、ペンタセン結晶の自己遮蔽によって引き起こされる。この方向性は、ガス状のジェット中の非異方性の分子速度分布に起因する。同様の結集成長モードは、金属の視射角堆積中で観察されている。速い流れのキャリア蒸気中で有機分子を供給することは、熱流速付近から超熱流速までが吸着剤によって達成されることを許容し、結果的に、入射運動エネルギーを調整する。このことは、表面温度からフィルム結晶化力学を切り離し、比較的低温の基板においてでさえも高度に配列されたフィルムをもたらす。この効果は、多結晶チャンネルTFTのような素子の性能を改善することにおいて重要な意味を有する。
【0055】
素子用途における非常に大きな局所堆積速度の実現可能性を実例説明するために、OVJPはペンタセンチャンネルTFTをプリントするために使用される。ペンタセンチャンネルは、5mm×5mmの基板領域上に狭いジェットをラスターすることによって、6mm×6mmの均一に充填された正方形の形態でプリントされる。TFTチャンネルは、ペンタセンのプリントの直ぐ後に真空中で堆積される金製のドレイン−ソース電極によって定義される。そのプリントは、350μmの直径のノズルを採用し、s=1000μm、Tsource=220℃、Tsubstrate=20℃、Qsource=5sccm、Qdilution=5sccm、Phigh=20Torr、Plow=0.165Torrであり、局所ペンタセン成長速度は700Å/s以下となった。
【0056】
アクティブペンタセンチャンネルは、1000/45(±5)μmのゲート幅/長さ比を有し、200nm未満の平均粒径を有する5000Åの厚さのペンタセンフィルムからなっていた。その素子の電圧(VDS)に対するドレイン−ソース電流(IDS)特性は、図14にプロットされ、以前に真空中でOVPD成長されたペンタセンTFTで見られたものと同様のドレイン−ソース電流飽和挙動を示す。その特性は、VDS=−40Vでドレイン−ソース電流飽和レジームから得られた。TFTは、示されたように、VGSの順方向と逆方向において+10から+17Vまでスレッショルド電圧をシフトしたところ、IDS対VGS挙動においてあるヒステリシスを示した。ゲートバイアス(VGS)に対するIDSは、図15にプロットされており、7×10のIDSオン/オフ比と、飽和レジームにおいてμeff=0.25±0.05cm/V・sのチャンネル電界効果正孔移動度とを明らかにした。熱蒸発を介して堆積された真空堆積制御TFTの正孔移動度は同様であるが、チャンネル領域のペンタセン希釈剤のために、小さなソース−ドレインオフ電流を示した。
【0057】
有機蒸気ジェットプリンティングは、大気圧において窒素中でペンタセンTFTをプリントするためにも使用され、そのTFTはμeff=0.2cm/V・sを示した。真空堆積制御TFTの正孔移動度は、P=0.2TorrでOVJPによって得られた値の実験誤差の範囲内であった。装置と回路製造のコストは、窒素グローブボックスのような周囲の条件で低分子有機トランジスタをプリントする能力によって、大幅に減少されることができる。
【0058】
ポンプダウンするために時間がかかる、高価で扱い難い真空装置を使用することなくOVJPを使用することの実現可能性を実例説明するため、大気圧中で動作する装置の堆積は特に重要である。例えば、大気圧で堆積するための能力は、大規模アセンブリラインにおける有機材料の堆積を促進する。窒素ガスのような不活性ガスで満たされたグローブボックス内のように、不純物を避けるために制御された雰囲気で堆積することが望まれるが、そのような制御された雰囲気は、非常に安くて、容易で、真空装置に比べて供給するのが速い。周囲の雰囲気から不純物を制御するもう1つの方法は、図2によって示される装置によって提供されるように、保護流体を使用することである。
【0059】
より一般的に、本発明の形態は、以前にノズルと基板との間の領域で可能であると考えられていたよりも高い圧力でパターン化された蒸気相堆積を可能にする。明らかに、この「ノズルと基板との間の領域」は、ノズルから基板まで流れるキャリアガスのジェットを囲う領域であり、それは、噴流と相互作用を引き起こす。この領域の圧力を制御する1つの方法は、バックグラウンド圧力を介することであり、それは、室内、真空チャンバー、または、堆積が起こる他の領域の圧力であり、例えば、真空チャンバー内で堆積が起こる。この圧力を制御する他の方法は、図2に示されるように保護流体を使用することである。保護流体は、あらゆる存在する不純物の影響を軽くするために、真空チャンバーのような圧力制御環境でさえも望まれる。
【0060】
ここで使用される「周囲」という用語は、パラメータの初期状態を意味し、家屋またはオフィスビルに使用される正常努力を超えてパラメータの制御をしないことを示す。例えば、周囲雰囲気は、空気の通常の化学組成を有する1atm(又は、高度に依存するがその付近)であり、周囲温度は、室温あるいは約25℃(又は、その付近)である。「バックグラウンド」圧力は、チャンバー内(真空、又は、非真空)の圧力であり、例えば、OVJP噴流によって引き起こされるあらゆる影響から分離して測定される圧力である。
【0061】
本発明は特定の例および好ましい形態について記述されたが、本発明はこれらの例や形態に限定されないことは理解される。特許請求の範囲に記載された本発明は、ここに記載された特定の例および好ましい形態から当業者にとって明らかな変形例を含む。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】複数のソースセルを有するOVJP装置の一形態を示す図である。
【図2】保護流体を生成できるOVLPノズルの一形態を示す図である。
【図3】キャリアガスと有機分子の軌道を説明するOVJPノズルの概略図である。
【図4】標準化した堆積幅に対する下流圧力の定性的依存性のプロットと、ノズル半径、ノズル/基板間隔、及び下流圧力間の定性的関係の関連したプロットを示す図である。
【図5】ノズルから噴射された粒子において予測される速度と動線を示す図である。
【図6】様々な下流圧力において予測される厚さプロファイルを示す図である。
【図7】様々なノズル−基板間隔において予測される厚さプロファイルを示す図である。
【図8】OVJPで印刷されたイメージを示す図である。
【図9】OVJPで印刷されたペンタセンのドットの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図10】OVJPで印刷されたAlqのドットの光学顕微鏡写真を示す図である。
【図11】図7のドットにおける厚さプロファイルを示す図である。
【図12】ノズル−基板間隔の平方根に対する図9の厚さプロファイルの半値幅のプロットを示す図である。
【図13】OVJPで堆積されたペンタセンのラインの走査電子顕微鏡写真を示す図である。
【図14】OVJPで堆積されたTFTにおける、ドレイン−ソース電圧に対するドレイン−ソース電流を示す図である。
【図15】OVJPで堆積されたTFTにおける、ゲート−ソースバイアスに対するドレイン−ソース電流を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
100 装置
105 キャリアガスソース
110 第1有機ソース室
120 第2有機ソース室
130 希釈路
140 混合室
150 ノズル
155 噴流
160 発熱体
170 基板
180 基板ホルダー
190 冷却水路
210 ノズルチューブ
212 第1気体注入口
215 第1排気口
220 カバー部
222 第2気体注入口
225 第2排気口
230 キャリアガスソース
240 保護流体源
300 ノズル
310 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料が基板上に堆積されるように、前記有機材料を搬送するキャリアガスを該キャリアガスの熱運動速度の少なくとも10%の流速でノズルから噴出することを含む有機材料の堆積方法であり、
前記キャリアガスを囲う、前記ノズルと前記基板との間の領域における動態的圧力は、少なくとも1Torrである堆積方法。
【請求項2】
前記動態的圧力は、少なくとも10Torrである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バックグラウンド雰囲気は、少なくとも5Torrである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ノズルから保護流体を噴出することを含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記バックグラウンド雰囲気は、約760Torrの雰囲気である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも10Torrの前記動態的圧力は、前記ノズルから噴出する保護流体によって影響を受ける請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記バックグラウンド圧力は、真空チャンバーのベース圧力であり、約0.1Torr未満である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機材料の分子量は、前記キャリアガスの分子量より大きい請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記保護流体は第1ガスを含み、前記キャリアガスは第2ガスを含み、前記第1ガスの分子量は前記第2ガスの分子量より大きい請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記動態的圧力は、少なくとも約760Torrである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
有機材料が基板上に堆積されるように、前記有機材料を搬送するキャリアガスを該キャリアガスの熱運動速度の少なくとも10%の流速でノズルから噴出し、
前記キャリアガスの周囲に保護流体を供給することを含む有機材料の堆積方法。
【請求項12】
前記方法は、少なくとも760Torrのバックグラウンド圧力で実施される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、真空装置の使用なしにグローブボックス内で実施される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
有機材料が基板上に堆積されるように、前記有機材料を搬送するキャリアガスを該キャリアガスの熱運動速度の少なくとも10%の流速でノズルから噴出することを含む有機材料の堆積方法であり、
前記バックグラウンド圧力は、少なくとも約10−2Torrである堆積方法。
【請求項15】
前記バックグラウンド圧力は、少なくとも0.1Torrである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記バックグラウンド圧力は、少なくとも1Torrである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記バックグラウンド圧力は、少なくとも10Torrである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記バックグラウンド圧力は、少なくとも760Torrである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも約760Torrの前記バックグラウンド圧力は、真空装置の使用なしにグローブボックスで提供される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記バックグラウンド圧力は、真空装置の使用なしに達成される請求項14に記載の方法。
【請求項21】
ノズルを含む装置であり、
前記ノズルは、第1排気口と第1気体注入口とを有するノズルチューブと、該ノズルチューブを囲うカバー部と、を有し、
前記カバー部は、第2排気口と第2気体注入口とを有し、
前記第2排気口は、第1チューブ開口を完全に囲い、
キャリアガス源と有機源容器は、前記第1気体注入口に接続され、
保護流体気体源は、前記第2気体注入口に接続された装置。
【請求項22】
前記保護流体気体源に連結された熱源をさらに含む請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記熱源は、前記保護流体を前記ノズルに搬送するチューブに導電的に連結される請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記ノズルチューブに導電的に連結される熱源をさらに含む請求項21に記載の装置。
【請求項25】
ノズルアセンブリを含む装置であり、
前記ノズルアセンブリは複数のノズルを含み、
前記各ノズルは、第1排気口と第1気体注入口とを有するノズルチューブと、該ノズルチューブを囲うカバー部と、を有し、
前記カバー部は、第2排気口と第2気体注入口とを有し、
前記第2排気口は、第1チューブ開口を完全に囲い、
キャリアガス源と有機源容器は、前記各ノズルの第1気体注入口に接続され、
保護流体気体源は、前記各ノズルの第2気体注入口に接続された装置。
【請求項26】
前記各ノズルの保護流体気体源に連結された熱源をさらに含む請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記各ノズルチューブに導電的に連結された熱源をさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項28】
共通の保護流体気体源は、前記各ノズルの第2気体注入口に連結される請求項25に記載の装置。
【請求項29】
共通のキャリアガス源と有機源容器は、前記各ノズルの第1注入口に連結される請求項25に記載の装置。
【請求項30】
少なくとも3つの異なる有機源容器は、異なるノズルの異なる第1気体注入口に連結される請求項25に記載の装置。
【請求項31】
前記複数のノズルは、一列に配置される請求項25に記載の装置。
【請求項32】
前記複数のノズルは、二次元配列される請求項25に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−520854(P2007−520854A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536807(P2006−536807)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/034974
【国際公開番号】WO2005/043641
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【Fターム(参考)】