説明

限定的通信圏形成システム、限定的通信圏形成方法

【課題】特定の軌道を移動体が通過している時間帯に限定して、当該軌道をカバー(網羅)する移動体専用の通信サービスエリアを形成する。
【解決手段】本発明に係る限定的通信圏形成システムは、既存の通信局が存在する地域内を移動する移動体の特定の軌道に沿って設置され、該特定の軌道を移動する移動体が接近した際に該移動体を検知する接近センサーと、該特定の軌道に沿って設置され、該移動体が通過した際に該移動体を検知する通過センサーと、該接近センサー及び該通過センサーの各々から移動体検知の通知を受信する運用センターと、該特定の軌道に沿って設置され、該移動体の接近に応じて該運用センターから通信開始の指示を受信して該移動体と共に移動する移動局との通信のための機能を起動し、該移動体の通過に応じて該運用センターから通信停止の指示を受信して該移動局との通信のための機能を停止する無線局とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、限定的通信圏形成システムに関し、特に列車内の乗客専用の携帯電話サービスエリア(通信圏)を形成する限定的通信圏形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話・スマートフォン・PHS等の無線機(端末)は、電話網等の公衆通信回線との間で通話/通信を行う際、基地局との間で無線通信を行う。基地局は、公衆通信回線の末端の交換機施設まで専用線で接続されており、各無線機と公衆通信回線との間の通話/通信を中継する。
【0003】
基地局は、移動局(移動中の無線機)と通信するためのトランシーバ(送受信機)とアンテナを有する。基地局の設置について「セル方式(cellular communication system)」が採用されている場合、その基地局の電波が届く通信可能な範囲(携帯電話サービスエリア)を「セル」(cell)と呼ぶ。セルの大きさは、携帯電話においては数百m〜数km程度、PHSにおいては数十〜数百メートル程度が一般的である。携帯電話のセル設計については、設計上では正六角形(ハニカム)による配置が一般的である。指向性アンテナを使って、正六角形によるセルを角度で等分割する構成(セクタ構成)も可能である。但し、電波は建造物や地形の影響を大きく受けるため、実際には正六角形から大きくひずみ、非常に複雑なセル形状となる。
【0004】
通常、1つの基地局(基地1局)につき、通話のために接続可能な移動局の数は、携帯電話では20局程度、PHSでは3〜14局程度とされている。災害時や大規模なイベント等の開催の際に、多数の移動局が小数の基地局に接続しようとすると、各基地局において、基地1局につき接続可能な移動局の数を超えてしまい、過度のトラフィック集中による輻輳と、それに伴う通話等の発信規制が発生する。
【0005】
同じように、過度のトラフィック集中による輻輳と、それに伴う通話等の発信規制が、都市部等の地上を走行する鉄道路線の沿線地域(線路の近傍)の基地局でも発生している。
【0006】
現状では、鉄道路線において、トンネルや地下鉄を除けば鉄道路線専用の基地局は存在せず、鉄道路線の沿線地域の基地局が、鉄道路線を含む周辺地域をカバー(網羅)している。したがって、列車が走行中に沿線地域の基地局のセル内に進入した時点で、当該列車内の移動局(列車内の乗客等が所持する移動局)は、一斉に当該基地局に接続することになる。当該基地局は、セル内を列車が通過している間は、列車内の移動局を一挙に収容し処理しなければならない。
【0007】
上記のような理由から、鉄道路線の沿線地域の基地局においては、セル内を列車が通過する時間帯にのみ、瞬間的に、過度のトラフィック集中による輻輳と、それに伴う通話等の発信規制が発生する。その結果、列車内の移動局の通信は、通信の切断が頻発して通信が不安定となる。また、列車の接近・到着前から当該基地局を使用していた移動局も、列車の接近・到着により、通信品質の劣化等の影響を受けることになる。
【0008】
なお、沿線地域の基地局への過度のトラフィック集中を回避するため、列車内の移動局のため、沿線地域の基地局とは別の基地局を設置することが考えられる。
【0009】
しかし、列車内の移動局のための基地局が必要となるのは、列車の通過中のみであり、それ以外の時間では不要となるため、当該基地局の消費電力の無駄が大きい。
【0010】
上記の問題に関連する技術として、特許文献1(特開2010−245915号公報)に制御装置、基地局、管理装置、無線通信システム、制御方法及びプログラムが開示されている。この関連技術では、通信端末が利用する制御信号(例えば、パイロット信号)の送信を制御する制御装置は、通信状況管理手段と制御手段とを備える。通信状況管理手段は、基地局と通信端末との通信状況を管理する。制御手段は、通信状況管理手段が管理する通信状況に応じて、制御信号の送信を所定の期間停止させる。これにより、基地局の消費電力を低減させる。
【0011】
また、特許文献2(特開2011−55091号公報)に無線通信システムが開示されている。この関連技術では、複数の無線基地局から無線サービスの提供を受ける移動局が、複数の無線基地局から無線基地局と当該移動局との間の接続情報を取得し、当該移動局が接続していた無線基地局以外の無線基地局と接続した際、取得した接続情報と当該移動局の移動方向と無線基地局の配置情報とに基づいて、無線サービスの提供に不要となった無線基地局を特定し、特定した無線基地局へ省電力モードで動作するように指示する。これにより、無線サービスの提供に不要となる無線基地局を特定し、システム全体の効率的な省電力制御を実現する。
【0012】
また、特許文献3(特開平10−285095号公報)にトンネル用中継増幅装置が開示されている。この関連技術では、トンネルの出入口近傍に列車検知用センサー(sensor)を設置し、中継増幅装置親局の上り/下り増幅器の電源と、当該中継増幅装置親局に伝送ケーブルで接続された複数の子局の上り/下り増幅器の電源を、列車が通過する間のみオンとし、他の時間はオフとするような制御を行う。これにより、鉄道トンネル等の不感地対策として設置された携帯電話中継増幅装置の消費電力を低減する。
【0013】
しかし、沿線地域の基地局とは別の基地局を設置するとしても、単純に同一地域に複数の基地局を設置した場合、単なる基地局の増設に過ぎず、無駄にセルの重複(電波の干渉)が発生するため、好ましくない。また、現状では、同一地域に複数の基地局が存在する場合、移動局は、いずれの基地局が列車内の移動局のための基地局であるか判定する方法がない。
【0014】
そのため、列車内の移動局が、列車内の移動局のために設置した基地局に接続するとは限らない。また、列車内の移動局のための基地局に、沿線地域の居住者や通行人の移動局が接続する可能性も高い。
【0015】
したがって、現状では、沿線地域の基地局とは別に、列車内の移動局のための基地局を設置することは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−245915号公報
【特許文献2】特開2011−55091号公報
【特許文献3】特開平10−285095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、ある地点において、特定の軌道を移動している移動体が到着してから通過するまでの間に限定して、当該軌道をカバー(網羅)する移動体専用の通信サービスエリアを形成する限定的通信圏形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る限定的通信圏形成システムは、既存の通信局(沿線地域の基地局)が存在する地域内の特定の軌道(鉄道路線等)上を移動する移動体(列車等)が接近した際に、該移動体の接近を外部に通知する接近報知機器(接近センサー)と、該特定の軌道上を該移動体が通過した際に、該移動体の通過を外部に通知する通過報知機器(通過センサー)と、該接近報知機器及び該通過報知機器の各々からの通知を受信する管理装置(運用センター)と、該特定の軌道に沿って設置され、該移動体の接近に応じて該管理装置から通信開始の指示を受信して該移動体と共に移動する移動局(無線機等)との通信のための機能を起動し、該移動体の通過に応じて該管理装置から通信停止の指示を受信して該移動局との通信のための機能を停止する無線局(基地局)とを含む。
【0019】
本発明に係る限定的通信圏形成方法では、接近報知機器が、既存の通信局が存在する地域内の特定の軌道上を移動する移動体が接近した際に、該移動体の接近を外部に通知することと、管理装置が、該接近報知機器からの通知を受信することと、該特定の軌道に沿って設置された無線局が、該移動体の接近に応じて該管理装置から通信開始の指示を受信して、該移動体と共に移動する移動局との通信のための機能を起動することと、通過報知機器が、該特定の軌道を該移動体が通過した際に、該移動体の通過を外部に通知することと、該管理装置が、該通過報知機器からの通知を受信することと、該無線局が、該移動体の通過に応じて該管理装置から通信停止の指示を受信して、該移動局との通信のための機能を停止することとを含む。
【0020】
本発明に係るプログラムは、上記の限定的通信圏形成方法における処理を、運用センターや無線局に実行させるためのプログラムである。なお、本発明に係るプログラムは、記憶装置や記憶媒体に格納することが可能である。
【発明の効果】
【0021】
鉄道路線の沿線地域の基地局において、過度のトラフィック集中による輻輳と、それに伴う通話等の発信規制の発生を回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る限定的通信圏形成システムの構成例について説明するための図である。
【図2】列車専用の携帯電話サービスエリアの形成/消失の手順について説明するための図である。
【図3】複線における列車検知の例について説明するための図である。
【図4】複線における列車検知通知の受信の詳細について説明するための図である。
【図5】併設鉄道路線上の列車走行確認の詳細について説明するための図である。
【図6】単線における列車検知の例について説明するための図である。
【図7】単線における列車検知通知の受信の詳細について説明するための図である。
【図8】複線をカバーする携帯電話サービスエリアの形成例について説明するための図である。
【図9】複線を路線毎にカバーする携帯電話サービスエリアの形成例について説明するための図である。
【図10】単線をカバーする携帯電話サービスエリアの形成例について説明するための図である。
【図11】本発明に係る限定的通信圏形成システムの具体的な実施例のイメージについて説明するための図である。
【図12A】実施例における携帯電話サービスエリアの形成手順の手順1について説明するための図である。
【図12B】実施例における携帯電話サービスエリアの形成手順の手順2について説明するための図である。
【図12C】実施例における携帯電話サービスエリアの形成手順の手順3について説明するための図である。
【図12D】実施例における携帯電話サービスエリアの形成手順の手順4について説明するための図である。
【図13】列車センサーの構成の例について説明するための図である。
【図14】運用センターの構成の例について説明するための図である。
【図15】基地局の構成の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0024】
[システム構成]
図1に示すように、本発明に係る限定的通信圏形成システムは、列車センサー(sensor)10と、運用センター20と、基地局30を含む。
【0025】
列車センサー10は、鉄道路線の線路沿いや線路上のように、鉄道路線の線路の近傍に一定間隔で設置され、当該線路上を走行する列車を検知(感知)する。列車センサー10は、当該線路上を走行する列車を検知できる位置に設置されていれば良い。列車センサー10が列車を検知する手段/方法については問わない。これにより、列車センサー10は、列車の「接近」と「通過」を検知する。すなわち、列車センサー10は、列車の「接近報知機器」や「通過報知機器」として機能する。
【0026】
運用センター20は、列車センサー10から、列車を検知した旨の通知を受信し、当該通知に応じて、携帯電話サービスエリアを形成する必要がある基地局を特定する。運用センター20には、通信事業者(キャリア)の交換機施設や計算機が設置されているものとする。なお、運用センター20は、通信事業者に限らず、鉄道事業者その他の組織が運営していても良い。すなわち、運用センター20は、本システム全体の「管理装置」として機能する。
【0027】
基地局30は、運用センター20から、電波の送信(発信)/停止(停波)の指示を受信し、当該指示に応じて、電波の送信(発信)/停止(停波)を行い、鉄道路線をカバー(網羅)する携帯電話サービスエリアを形成/解消する。基地局30は、鉄道路線の沿線地域(線路の近傍)の基地局とは別に設置された基地局であり、鉄道路線専用の基地局である。すなわち、基地局30は、列車と共に移動する移動局と通信する「無線局」として機能する。
【0028】
列車センサー10、運用センター20、及び基地局30の各々は、電気通信回線を介して接続されている。電気通信回線は、有線/無線を問わない。なお、電気通信回線は、伝送路の一例に過ぎない。実際には、光通信回線等でも良い。
【0029】
ここでは、列車センサー10として、列車センサー「A」、列車センサー「B」、列車センサー「C」、列車センサー「D」の4つを示す。なお、列車センサーの数を4つとしているのは一例に過ぎない。実際には、列車センサーの数は任意である。
【0030】
[広義の鉄道路線]
本実施形態における「鉄道路線」は、鉄道車両が鉄道路線を走行して旅客や貨物を輸送する交通機関に限らず、懸垂式・跨座式のモノレール、案内軌条式の新交通システム、鋼索鉄道(ケーブルカー等)、浮上式鉄道(リニアモーターカー等)、或いは、索条(空中に渡したロープ)により搬器(輸送機器)を吊り下げている普通索道(ロープウェー・ゴンドラリフト等)でも良い。
【0031】
[列車専用の携帯電話サービスエリアの形成/消失の手順]
図2を参照して、本実施形態における列車専用の携帯電話サービスエリアの形成/消失の手順について説明する。
【0032】
(1)ステップS1
運用センター20は、事前設定を行い、基地局30と連携する列車センサー10として、列車センサー「A」、列車センサー「B」、列車センサー「C」、列車センサー「D」を予め設定しておく。
【0033】
(2)ステップS2
列車センサー10は、列車センサー「A」、列車センサー「B」、列車センサー「C」、列車センサー「D」のいずれかにおいて列車を検知した際に、列車を検知した旨を示す情報を運用センター20に送信する。
【0034】
(3)ステップS3
運用センター20は、列車センサー「A」、列車センサー「B」、列車センサー「C」、列車センサー「D」のいずれかの列車センサーから列車を検知した旨を示す情報を受信した場合、受信した情報を分析し、当該列車センサーと連携する基地局30の現在の稼働状況を確認し、基地局30が携帯電話サービスエリアを形成しているか否か判定する。
【0035】
(4)ステップS4
運用センター20は、基地局30が未だ携帯電話サービスエリアを形成していない状況であれば、基地局30に対して、電波の送信(発信)を指示する。
【0036】
(5)ステップS5
基地局30は、アンテナから電波を送信(発信)して、鉄道路線をカバーする携帯電話サービスエリアを形成する。このとき、基地局30は、沿線地域の基地局から送信される電波よりも強い電波を送信(発信)すると好適である。例えば、基地局30において、予め、基地局30の電波の電界強度(電波強度)を沿線地域の基地局の電波の電界強度よりも高めに設定しておくか、沿線地域の基地局よりも送信出力の大きいアンテナを設置しておく。或いは、運用センター20が、電波の送信(発信)の指示の際に、基地局30に対して、沿線地域の基地局から送信される電波よりも強い電波を送信(発信)するように指示しても良い。これにより、列車内の移動局(列車内の乗客等が所持する移動局)は、沿線地域の基地局よりも、基地局30に優先的に接続することができる。
【0037】
(6)ステップS6
また、運用センター20は、基地局30が既に携帯電話サービスエリアを形成している状況であれば、基地局30に対して、電波の送信の停止(停波)を指示する。
【0038】
(7)ステップS7
基地局30は、運用センター20からの指示/事前設定により、徐々に電波を弱くする(経時的・段階的に電波の電界強度を低下・減衰させる)。例えば、最近の携帯電話は、ハンドオーバ時の瞬断を防止するため、常に複数の基地局と交信し、一番感度の高い基地局(最も電波の電界強度の高い基地局)と通信するようになっている。基地局30は、徐々に電波を弱くすることで、列車内の移動局に、次に接続すべき基地局30への接続を促すことができる。
【0039】
(8)ステップS8
基地局30は、最終的に電波を完全に停止(停波)し、待機状態(スタンバイ状態、休止状態)になる。
【0040】
[複線における列車検知の例]
図3を参照して、複線における列車検知の例について説明する。
【0041】
ここでは、鉄道路線1と鉄道路線2が並行に敷設(配線)されているものとする。
【0042】
鉄道路線1の近傍(線路沿い)には、列車センサー「A」と列車センサー「B」が設置されている。列車センサー「A」及び列車センサー「B」は、鉄道路線1を走行する列車を検知するための列車センサーである。列車センサー「A」は、鉄道路線1の線路上を対象とする自機の列車検知対象範囲(Aの列車検知対象範囲)に列車が進入した際に、列車を検知する。列車センサー「B」は、鉄道路線1の線路上を対象とする自機の列車検知対象範囲(Bの列車検知対象範囲)に列車が進入した際に、列車を検知する。鉄道路線1を走行する列車は、列車センサー「A」側から、列車センサー「B」側に向かって走行するものとする。すなわち、鉄道路線1における列車の進行方向は、列車センサー「A」側から列車センサー「B」側に向かう方向である。したがって、列車センサー「A」は、列車の「接近」を検知する。列車センサー「B」は、列車の「通過」を検知する。このとき、列車センサー「B」は、次の区間における列車センサー「A」となる。
【0043】
鉄道路線2の近傍(線路沿い)には、列車センサー「C」と列車センサー「D」が設置されている。列車センサー「C」及び列車センサー「D」は、鉄道路線2を走行する列車を検知するための列車センサーである。列車センサー「C」は、鉄道路線2の線路上を対象とする自機の列車検知対象範囲(Cの列車検知対象範囲)に列車が進入した際に、列車を検知する。列車センサー「D」は、鉄道路線2の線路上を対象とする自機の列車検知対象範囲(Dの列車検知対象範囲)に列車が進入した際に、列車を検知する。鉄道路線2を走行する列車は、列車センサー「C」側から、列車センサー「D」側に向かって走行するものとする。すなわち、鉄道路線2における列車の進行方向は、列車センサー「C」側から列車センサー「D」側に向かう方向である。したがって、列車センサー「C」は、列車の「接近」を検知する。列車センサー「D」は、列車の「通過」を検知する。このとき、列車センサー「D」は、次の区間における列車センサー「C」となる。
【0044】
なお、複々線(単一方向に対して複数の鉄道路線を敷設したもの)についても、上記と同様である。例えば、複数の鉄道路線のうち、上記の鉄道路線1に相当する全ての鉄道路線において、上記の鉄道路線1と同様の構成、手順で列車検知を行う。また、上記の鉄道路線2に相当する全ての鉄道路線において、上記の鉄道路線2と同様の構成、手順で列車検知を行う。
【0045】
[複線における列車検知通知の受信の詳細]
図4を参照して、複線における列車検知通知の受信(図2のステップS3)の詳細について説明する。
【0046】
(1)ステップS301
運用センター20は、列車センサー「A」、列車センサー「C」の「いずれか一方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信した場合、受信した情報を分析し、既に「他方の列車センサー」(列車センサー「A」に対しては列車センサー「C」、列車センサー「C」に対しては列車センサー「A」)から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信しているか否か確認する。例えば、運用センター20は、列車センサー「A」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信した場合、既に列車センサー「C」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信しているか確認する。
【0047】
(2)ステップS302
運用センター20は、既に「他方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信している場合、基地局30が既に携帯電話サービスエリアを形成している状況であるため、基地局30に対する電波の送信(発信)の指示は不要であると判断し、当該列車センサーからの列車検知情報受信済みを示す情報を記憶し、現在の状況を維持する。
【0048】
(3)ステップS303
更に、必須ではないが、運用センター20は、当該列車センサーと連携する基地局30の現在の稼働状況を確認し、基地局30が正常に稼働しているか否か確認するようにしても良い。既に「他方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信していても、基地局30の不具合(起動失敗、アンテナ異常等)や、運用センター20と基地局30との間の通信障害の発生等により、基地局30が正常に携帯電話サービスエリアを形成していない場合が考えられる。
【0049】
(4)ステップS304
運用センター20は、基地局30が正常に稼働している場合、基地局30に対する電波の送信(発信)の指示は不要であると判断し、現在の状況を維持する。
【0050】
(5)ステップS305
運用センター20は、未だ「他方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信していない場合、又は、基地局30が正常に稼働していない場合、基地局30が未だ携帯電話サービスエリアを形成していない状況であるため、基地局30に対する電波の送信(発信)の指示が必要であると判断し、当該列車センサーからの列車検知情報受信済みを示す情報を記憶し、電波の送信(発信)の指示を決定(図2のステップS4に移行)する。
【0051】
(6)ステップS306
また、運用センター20は、列車センサー「B」、列車センサー「D」の「いずれか一方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信した場合、受信した情報を分析し、当該列車センサーが設置されている鉄道路線と並行に敷設(配線)されている鉄道路線(併設鉄道路線)上を列車が走行しているか否か確認する。
【0052】
(7)ステップS307
運用センター20は、併設鉄道路線上を列車が走行している場合、基地局30に対する電波の送信の停止(停波)の指示は不要であると判断し、当該列車センサーからの列車検知情報受信済みを示す情報を記憶し、現在の状況を維持する。
【0053】
(8)ステップS308
運用センター20は、併設鉄道路線上を列車が走行していない場合、基地局30に対する電波の送信の停止(停波)の指示が必要であると判断し、電波の送信の停止(停波)の指示を決定(図2のステップS6に移行)する。このとき、運用センター20は、列車センサーからの列車検知情報受信済みを示す情報を全て消去して初期化する。すなわち、運用センター20は、列車センサー「A」、列車センサー「B」、列車センサー「C」、列車センサー「D」の全ての列車センサーから(いずれの列車センサーからも)列車を検知した旨を示す情報を受信していない状態(対象となる全路線で列車が接近も通過もしていない状態)にする。
【0054】
[併設鉄道路線上の列車走行確認の詳細]
図5を参照して、併設鉄道路線上の列車走行確認(図4のステップS306)の詳細について説明する。
【0055】
(1)ステップS3061
運用センター20は、列車センサー「B」、列車センサー「D」の「いずれか一方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信した場合、受信した情報を分析し、「当該列車センサーと同一の鉄道路線の列車センサー」(列車センサー「B」に対しては列車センサー「A」、列車センサー「D」に対しては列車センサー「C」)から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信してから、当該列車センサーから列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信するまでの間に、「他方の列車センサー」(列車センサー「B」に対しては列車センサー「D」、列車センサー「D」に対しては列車センサー「B」)から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信しているか否か確認する。
【0056】
(2)ステップS3062
運用センター20は、「他方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信していない場合、「他方の列車センサーと同一の鉄道路線の列車センサー」(列車センサー「B」に対しては列車センサー「C」、列車センサー「D」に対しては列車センサー「A」)から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信しているか否か確認する。
【0057】
(3)ステップS3063
運用センター20は、「他方の列車センサーと同一の鉄道路線の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信している場合、当該列車センサーが設置されている鉄道路線と並行に敷設(配線)されている鉄道路線(併設鉄道路線)上を列車が走行していると判断し、基地局30に対する電波の送信の停止(停波)の指示は不要であると判断(図4のステップS307に移行)する。
【0058】
(4)ステップS3064
運用センター20は、「他方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信している場合、又は、「他方の列車センサー」及び「他方の列車センサーと同一の鉄道路線の列車センサー」のいずれからも列車を検知した旨を示す情報を受信していない場合(他方の鉄道路線で列車が接近も通過もしていない場合)、当該列車センサーが設置されている鉄道路線と並行に敷設(配線)されている鉄道路線(併設鉄道路線)上を列車が走行していないと判断し、基地局30に対する電波の送信の停止(停波)の指示が必要であると判断(図4のステップS308に移行)する。
【0059】
例えば、運用センター20は、列車センサー「B」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信した場合、受信した情報を分析し、列車センサー「A」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信してから、列車センサー「B」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信するまでの間に、列車センサー「D」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信しているか否か確認する(ステップS3061)。
【0060】
運用センター20は、列車センサー「D」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信していない場合、列車センサー「C」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信しているか否か確認する(ステップS3062)。
【0061】
運用センター20は、列車センサー「C」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信している場合、鉄道路線1と並行に敷設(配線)されている鉄道路線2上を列車が走行していると判断し、基地局30に対する電波の送信の停止(停波)の指示は不要であると判断する(ステップS3063)。
【0062】
運用センター20は、列車センサー「D」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信している場合、又は列車センサー「C」と列車センサー「D」の両方から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信している場合、鉄道路線1と並行に敷設(配線)されている鉄道路線2上を列車が走行していないと判断し、基地局30に対する電波の送信の停止(停波)の指示が必要であると判断する(ステップS3064)。
【0063】
[単線における列車検知の例]
図6を参照して、単線における列車検知の例について説明する。
【0064】
ここでは、列車が同一の鉄道路線上で両方向に走行(往復)するものとする。但し、実際には、列車が同一の鉄道路線上で一方向のみに走行するもの(一方向のみの環状路線等)でも良い。
【0065】
鉄道路線の近傍(線路沿い)には、列車センサー「A」と列車センサー「B」が設置されている。列車センサー「A」及び列車センサー「B」は、鉄道路線を走行する列車を検知するための列車センサーである。列車センサー「A」は、鉄道路線の線路上を対象とする自機の列車検知対象範囲(Aの列車検知対象範囲)に列車が進入した際に、列車を検知する。列車センサー「B」は、鉄道路線の線路上を対象とする自機の列車検知対象範囲(Bの列車検知対象範囲)に列車が進入した際に、列車を検知する。
【0066】
鉄道路線における列車の進行方向が、列車センサー「A」側から列車センサー「B」側に向かう方向である場合、列車センサー「A」が列車の「接近」を検知し、列車センサー「B」が列車の「通過」を検知する。このとき、列車センサー「B」は、次の区間における列車センサー「A」となる。
【0067】
反対に、鉄道路線における列車の進行方向が、列車センサー「B」側から列車センサー「A」側に向かう方向である場合、列車センサー「B」が列車の「接近」を検知し、列車センサー「A」が列車の「通過」を検知する。このとき、列車センサー「A」は、次の区間における列車センサー「B」となる。
【0068】
なお、列車の行き違い(列車交換)を行うために駅(交換駅)や信号場に設けられた待避設備においては、当該箇所のみ複線となるため、上記の「複線における列車検知の例」と同様の構成、手順で列車検知を行うこともできる。
【0069】
[単線における列車検知通知の受信の詳細]
図7を参照して、単線における列車検知通知の受信(図2のステップS3)の詳細について説明する。
【0070】
(1)ステップS311
運用センター20は、列車センサー「A」、列車センサー「B」の「いずれか一方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信した場合、受信した情報を分析し、所定の時間内に「他方の列車センサー」(列車センサー「B」に対しては列車センサー「A」、列車センサー「A」に対しては列車センサー「B」)から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を既に受信しているか否か確認する。すなわち、運用センター20は、所定の時間内に同一の鉄道路線上で列車の検知及び再検知の両方が行われたか否か確認する。例えば、運用センター20は、列車センサー「A」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信した場合、所定の時間内に列車センサー「B」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を既に受信しているか確認する。ここで、所定の時間内であるか否かを条件としたのは、当該列車の直前に通過した列車を検知した旨を示す情報を除外するためである。したがって、所定の時間内とは、当該列車自体が列車センサー「A」と列車センサー「B」との間を走行するのに要する時間程度であり、当該列車の直前に通過した列車と当該列車との運行間隔であってはならない。
【0071】
(2)ステップS312
運用センター20は、所定の時間内に「他方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信していない場合、基地局30が未だ携帯電話サービスエリアを形成していない状況であるため、基地局30に対する電波の送信(発信)の指示が必要であると判断し、当該列車センサーからの列車検知情報受信済みを示す情報を記憶し、電波の送信(発信)の指示を決定(図2のステップS4に移行)する。例えば、運用センター20は、所定の時間内に列車センサー「B」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信していない場合、鉄道路線における列車の進行方向が列車センサー「A」側から列車センサー「B」側に向かう方向であると判断し、基地局30が未だ携帯電話サービスエリアを形成していない状況であるため、基地局30に対する電波の送信(発信)の指示が必要であると判断し、当該列車センサーからの列車検知情報受信済みを示す情報を記憶し、電波の送信(発信)の指示を決定する。
【0072】
(3)ステップS313
更に、必須ではないが、運用センター20は、当該列車センサーと連携する基地局30の現在の稼働状況を確認し、基地局30が正常に稼働しているか否か確認するようにしても良い。基地局30に電波の送信(発信)を指示しても、基地局30の不具合(起動失敗、アンテナ異常等)や、運用センター20と基地局30との間の通信障害の発生等により、基地局30が正常に携帯電話サービスエリアを形成しない場合が考えられる。
【0073】
(4)ステップS314
運用センター20は、基地局30が正常に稼働していない場合、基地局30が未だ携帯電話サービスエリアを形成していない状況であるため、基地局30に対する電波の送信(発信)の指示が必要であると判断し、電波の送信(発信)の指示を決定する。
【0074】
(5)ステップS315
運用センター20は、基地局30が正常に稼働している場合、基地局30に対する電波の送信(発信)の指示は不要であると判断し、現在の状況を維持する。
【0075】
(6)ステップS316
運用センター20は、所定の時間内に「他方の列車センサー」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信している場合、基地局30が既に携帯電話サービスエリアを形成している状況であるため、基地局30に対する電波の送信の停止(停波)の指示が必要であると判断し、当該列車センサーからの列車検知情報受信済みを示す情報を記憶し、電波の送信の停止(停波)の指示を決定(図2のステップS6に移行)する。例えば、運用センター20は、所定の時間内に列車センサー「B」から列車を検知した旨(列車が通過した旨)を示す情報を受信している場合、鉄道路線における列車の進行方向が列車センサー「B」側から列車センサー「A」側に向かう方向であると判断し、基地局30が既に携帯電話サービスエリアを形成している状況であるため、基地局30に対する電波の送信(発信)の指示は不要であると判断し、列車センサー「A」から列車を検知した旨(列車が接近・到着した旨)を示す情報を受信した旨を示す情報を記憶し、電波の送信の停止(停波)の指示を決定する。
【0076】
[同一の軌道で上下に敷設(配線)されている鉄道路線]
同一の軌道(同一の位置・空間)で複数の鉄道路線が上下に並列に敷設(配線)されている場合も、「複線」とみなすことができる。
【0077】
[立体交差する鉄道路線]
単線同士が立体交差する鉄道路線については、鉄道路線が重複しない箇所は「単線」に相当し、鉄道路線が重複する箇所は「複線」に相当する。
【0078】
例えば、鉄道路線が重複しない箇所では、鉄道路線毎に独立して列車を検知して携帯電話サービスエリアを形成する。一方、鉄道路線が重複する箇所では、先にいずれかの鉄道路線において携帯電話サービスエリアを形成した場合は、他の鉄道路線において携帯電話サービスエリアを形成しないようにする。
【0079】
複線同士が立体交差する鉄道路線については、鉄道路線が重複しない箇所は「通常の複線」として扱う。一方、鉄道路線が重複する箇所は、並行に敷設(配線)されている鉄道路線を擬似的に1つの鉄道路線(鉄道路線群)とみなし、「鉄道路線群の複線」として扱う。
【0080】
鉄道路線が重複する箇所を複数の列車が通過する場合は、基地局30は、列車センサー10において、最初の列車の到着が検知されたときから、最後の列車の通過が検知されるときまで、携帯電話サービスエリアを形成し続ける。
【0081】
[平面交差する鉄道路線]
数は少ないが、複数の異なる鉄道路線が同一平面上で「平面交差」する鉄道路線もある。平面交差の場合には、鉄道路線が重複する箇所に同時期に複数の列車が到着した際に、一方の鉄道路線の列車が、他方の鉄道路線の列車が通過するまで待機するという点を除けば、基本的に、立体交差の場合と同じである。
【0082】
[携帯電話サービスエリアの形成例]
以下に、鉄道路線をカバーする携帯電話サービスエリアの形成例について説明する。
【0083】
ここでは、基地局30は、複数の指向性アンテナ31を有し、複数の指向性アンテナ31の各々の方向を調節して、鉄道路線をカバーする携帯電話サービスエリアを形成する。
【0084】
鉄道路線が複線の場合、図8に示すように、基地局30は、並行に敷設(配線)されている複数の鉄道路線のいずれか1本の鉄道路線の近傍に設置され、各指向性アンテナ31の方向を調節して、並行に敷設(配線)されている複数の鉄道路線をまとめてカバーする携帯電話サービスエリアを形成すると好適である。
【0085】
但し、実際には、図9に示すように、基地局30は、並行に敷設(配線)されている複数の鉄道路線の路線毎に、各路線の近傍に設置され、各指向性アンテナ31の方向を調節して、並行に敷設(配線)されている複数の鉄道路線の各々を個別にカバーする携帯電話サービスエリアを形成しても良い。
【0086】
鉄道路線が単線の場合、図10に示すように、基地局30は、1本の鉄道路線の近傍に設置され、各指向性アンテナ31の方向を調節して、当該1本の鉄道路線をカバーする携帯電話サービスエリアを形成すると好適である。
【0087】
[実施例のイメージ]
図11を参照して、本発明に係る限定的通信圏形成システムの具体的な実施例のイメージについて説明する。
【0088】
本実施例では、駅Xと駅Yとの間に、複数の列車センサー10が設置されている。複数の列車センサー10の各々の間には、基地局30が設置されている。列車センサー10及び基地局30は、運用センター20に接続されている。
【0089】
ここでは、駅Xから駅Yに向かう方向に、鉄道路線1に沿って、駅Xから駅Yに向かう方向に、列車センサー10に相当する列車センサー「s11」、「s12」、「s13」、「s14」、「s15」、「s16」が設置されている。
【0090】
鉄道路線1に沿って設置された各列車センサーの間には、基地局30に相当する基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」が設置されている。
【0091】
列車センサー「s11」と列車センサー「s12」との間には、基地局「b1」が設置されている。列車センサー「s12」と列車センサー「s13」との間には、基地局「b2」が設置されている。列車センサー「s13」と列車センサー「s14」との間には、基地局「b3」が設置されている。列車センサー「s14」と列車センサー「s15」との間には、基地局「b4」が設置されている。列車センサー「s15」と列車センサー「s16」との間には、基地局「b5」が設置されている。
【0092】
また、駅Yから駅Xに向かう方向に、鉄道路線2に沿って、列車センサー10に相当する列車センサー「s21」、「s22」、「s23」、「s24」、「s25」、「s26」が設置されている。
【0093】
図示していないが、実際には、鉄道路線1側と同様に、鉄道路線2に沿って設置された各列車センサーの間に、基地局30に相当する基地局が設置されていても良い。
【0094】
列車センサー間の距離や、列車センサーと基地局との間の距離については問わない。本発明を実施する上で支障のない距離であれば良い。
【0095】
「実施例における携帯電話サービスエリアの形成手順」
図12A〜図12Dを参照して、本発明に係る限定的通信圏形成システムの具体的な実施例における携帯電話サービスエリアの形成手順について説明する。
【0096】
図示しないが、乗客が駅Xから列車に乗車する場合、駅Xに接近・到着した移動局は、駅Xをカバーする携帯電話サービスエリアを形成する基地局(駅Xの基地局)に接続するものとする。駅Xの基地局は、駅Xの構内に存在する移動局及び駅Xに停車している列車内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、駅Xの構内に存在する移動局及び駅Xに停車している列車内の移動局が次に接続すべき基地局として基地局「b1」を指定する。
【0097】
なお、実際には、駅Xの基地局は、上記の各移動局のハンドオーバパラメータ等に、上記の各移動局が次に接続すべき基地局として、基地局「b1」と共に、沿線地域の基地局40を指定するようにしても良い。この場合、基地局「b1」の優先順位(優先度)を沿線地域の基地局40よりも高く設定することで、上記の各移動局が基地局「b1」を優先的に選択して接続するようにする。上記の各移動局は、基地局「b1」に接続できない場合には、沿線地域の基地局40との接続を試みることになる。
【0098】
まず、図12Aに示すように、列車センサー「s11」は、列車を検知した際に、列車を検知した旨を示す情報を運用センター20に送信する。運用センター20は、列車センサー「s11」と列車センサー「s12」との間に設置されている基地局「b1」に対して、電波の送信(発信)を指示する。基地局「b1」は、アンテナから電波を送信(発信)して、鉄道路線をカバーする携帯電話サービスエリアを形成する。一例として、基地局「b1」は、列車センサー「s11」、「s12」、「s25」、「s26」で囲まれた領域をカバーする携帯電話サービスエリアを形成するものとする。
【0099】
このとき、列車は、基地局「b1」が形成する携帯電話サービスエリアに侵入することになる。列車内の移動局は、ハンドオーバパラメータ等において指定された基地局「b1」を接続先として選択し、基地局「b1」から基地局「b1」にハンドオーバし、基地局「b1」に接続する。基地局「b1」は、列車内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、列車内の移動局が次に接続すべき基地局として基地局「b2」を指定する。
【0100】
なお、実際には、基地局「b1」は、列車内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、列車内の移動局が次に接続すべき基地局として、基地局「b2」と共に、沿線地域の基地局40を指定するようにしても良い。この場合、基地局「b2」の優先順位(優先度)を沿線地域の基地局40よりも高く設定することで、列車内の移動局が基地局「b2」を優先的に選択して接続するようにする。列車内の移動局は、基地局「b2」に接続できない場合には、沿線地域の基地局40との接続を試みることになる。
【0101】
次に、図12Bに示すように、列車センサー「s12」は、列車を検知した際に、列車を検知した旨を示す情報を運用センター20に送信する。運用センター20は、列車センサー「s11」と列車センサー「s12」との間に設置されている基地局「b1」に対して、電波の送信の停止(停波)を指示し、列車センサー「s11」と列車センサー「s12」との間に設置されている基地局「b2」に対して、電波の送信(発信)を指示する。基地局「b1」は、徐々に電波を弱くして、最終的に電波を完全に停止(停波)し、待機状態(スタンバイ状態、休止状態)になる。一方、基地局「b2」は、アンテナから電波を送信(発信)して、鉄道路線をカバーする携帯電話サービスエリアを形成する。一例として、基地局「b2」は、列車センサー「s12」、「s13」、「s24」、「s25」で囲まれた領域をカバーする携帯電話サービスエリアを形成するものとする。また、沿線地域の基地局40が形成する携帯電話サービスエリアの一部は、基地局「b2」が形成する携帯電話サービスエリアと重複する。
【0102】
このとき、列車は、基地局「b2」が形成する携帯電話サービスエリアのみならず、沿線地域の基地局40が形成する携帯電話サービスエリアにも侵入することになる。列車内の移動局は、ハンドオーバパラメータ等において指定された基地局「b2」を接続先として選択し、基地局「b1」から基地局「b2」にハンドオーバし、基地局「b2」に接続する。基地局「b2」は、列車内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、列車内の移動局が次に接続すべき基地局として基地局「b3」を指定する。
【0103】
なお、実際には、基地局「b2」は、列車内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、列車内の移動局が次に接続すべき基地局として、基地局「b3」と共に、沿線地域の基地局40を指定するようにしても良い。この場合、基地局「b3」の優先順位(優先度)を沿線地域の基地局40よりも高く設定することで、列車内の移動局が基地局「b3」を優先的に選択して接続するようにする。列車内の移動局は、基地局「b3」に接続できない場合には、沿線地域の基地局40との接続を試みることになる。
【0104】
次に、図12Cに示すように、列車センサー「s13」は、列車を検知した際に、列車を検知した旨を示す情報を運用センター20に送信する。運用センター20は、列車センサー「s12」と列車センサー「s13」との間に設置されている基地局「b2」に対して、電波の送信の停止(停波)を指示し、列車センサー「s13」と列車センサー「s14」との間に設置されている基地局「b3」に対して、電波の送信(発信)を指示する。基地局「b2」は、徐々に電波を弱くして、最終的に電波を完全に停止(停波)し、待機状態(スタンバイ状態、休止状態)になる。一方、基地局「b3」は、アンテナから電波を送信(発信)して、鉄道路線をカバーする携帯電話サービスエリアを形成する。一例として、基地局「b3」は、列車センサー「s13」、「s14」、「s23」、「s24」で囲まれた領域をカバーする携帯電話サービスエリアを形成するものとする。また、沿線地域の基地局40が形成する携帯電話サービスエリアの一部は、基地局「b3」が形成する携帯電話サービスエリアと重複する。
【0105】
このとき、列車は、基地局「b3」が形成する携帯電話サービスエリアのみならず、沿線地域の基地局40が形成する携帯電話サービスエリアにも侵入することになる。列車内の移動局は、ハンドオーバパラメータ等において指定された基地局「b3」を接続先として選択し、基地局「b2」から基地局「b3」にハンドオーバし、基地局「b3」に接続する。基地局「b3」は、列車内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、列車内の移動局が次に接続すべき基地局として基地局「b4」を指定する。
【0106】
なお、実際には、基地局「b3」は、列車内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、列車内の移動局が次に接続すべき基地局として、基地局「b4」と共に、沿線地域の基地局40を指定するようにしても良い。この場合、基地局「b4」の優先順位(優先度)を沿線地域の基地局40よりも高く設定することで、列車内の移動局が基地局「b4」を優先的に選択して接続するようにする。列車内の移動局は、基地局「b4」に接続できない場合には、沿線地域の基地局40との接続を試みることになる。
【0107】
次に、図12Dに示すように、列車センサー「s14」は、列車を検知した際に、列車を検知した旨を示す情報を運用センター20に送信する。運用センター20は、列車センサー「s13」と列車センサー「s14」との間に設置されている基地局「b3」に対して、電波の送信の停止(停波)を指示し、列車センサー「s14」と列車センサー「s15」との間に設置されている基地局「b4」に対して、電波の送信(発信)を指示する。基地局「b2」は、徐々に電波を弱くして、最終的に電波を完全に停止(停波)し、待機状態(スタンバイ状態、休止状態)になる。一方、基地局「b4」は、アンテナから電波を送信(発信)して、鉄道路線をカバーする携帯電話サービスエリアを形成する。一例として、基地局「b4」は、列車センサー「s14」、「s15」、「s22」、「s23」で囲まれた領域をカバーする携帯電話サービスエリアを形成するものとする。
【0108】
このとき、列車は、基地局「b3」が形成する携帯電話サービスエリアや、沿線地域の基地局40が形成する携帯電話サービスエリアから退出し、基地局「b4」が形成する携帯電話サービスエリアや、別の基地局40が形成する携帯電話サービスエリアに侵入することになる。列車内の移動局は、ハンドオーバパラメータ等において指定された基地局「b4」を接続先として選択し、基地局「b3」から基地局「b4」にハンドオーバし、基地局「b4」に接続する。基地局「b4」は、列車内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、列車内の移動局が次に接続すべき基地局として基地局「b5」を指定する。
【0109】
なお、実際には、基地局「b4」は、列車内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、列車内の移動局が次に接続すべき基地局として、基地局「b5」と共に、沿線地域の基地局40を指定するようにしても良い。この場合、基地局「b5」の優先順位(優先度)を沿線地域の基地局40よりも高く設定することで、列車内の移動局が基地局「b5」を優先的に選択して接続するようにする。列車内の移動局は、基地局「b5」に接続できない場合には、沿線地域の基地局40との接続を試みることになる。
【0110】
鉄道路線の始発駅から終着駅まで、上記と同様の処理を継続する。
【0111】
[進行方向にある通過予定地域の基地局への指示]
上記の実施例では、列車を検知した列車センサー10の近傍の基地局30が携帯電話サービスエリアを形成するようにしているが、実際には、携帯電話サービスエリアを形成する基地局30は、列車を検知した列車センサー10の近傍の基地局に限らない。
【0112】
列車の移動速度(走行速度)によっては、列車センサー10が列車を検知した際に、当該列車センサー10の近傍の基地局30が携帯電話サービスエリアを形成しても間に合わないことも考えられる。そのため、運用センター20は、基地局30に対して電波の送信(発信)を指示する際、当該基地局30の近傍の列車センサー10よりもいくつか手前にある列車センサー10が列車を検知した際に、当該基地局30に対して電波の送信(発信)を指示するようにして、進行方向にある通過予定地域の基地局30が携帯電話サービスエリアを形成するようにしても良い。
【0113】
例えば、図12Aにおいて、運用センター20は、列車センサー「s11」から、列車を検知した旨を示す情報を受信した際、基地局「b1」ではなく、進行方向にある通過予定地域の基地局「b2」に対して、電波の送信(発信)を指示するようにしても良い。
【0114】
[連続する複数の基地局への指示]
上記の実施例では、列車センサー10が列車を検知した際に、当該列車センサー10の近傍の1つの基地局30(基地1局)のみ携帯電話サービスエリアを形成するようにしているが、実際には、対象となる基地局30と共に、次の基地局30も携帯電話サービスエリアを形成するようにしても良い。
【0115】
例えば、図12Aにおいて、運用センター20は、列車センサー「s11」から、列車を検知した旨を示す情報を受信した際、基地局「b1」と基地局「b2」の両方に対して、電波の送信(発信)を指示するようにしても良い。
【0116】
[移動局が沿線地域の基地局と接続した場合]
上記の実施例において、列車内の移動局は、何らかの事情により、基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」に正常に接続できない場合には、沿線地域の基地局40と接続することになる。この場合、列車内の移動局は、沿線地域の基地局40から基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」に復帰することができなくなる。
【0117】
この問題を解消するために、鉄道路線の沿線地域に限って、沿線地域の基地局40は、自身の携帯電話サービスエリア内の移動局のハンドオーバパラメータ等に、当該移動局が次に接続すべき基地局として、隣接する基地局40と共に、近くに設置された基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」のうち少なくとも1つの基地局を指定するようにしても良い。この場合、基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」の優先順位(優先度)を沿線地域の基地局40よりも高く設定することで、列車内の移動局が基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」のいずれかを優先的に選択して接続するようにする。
【0118】
このとき、「列車内の移動局」以外の移動局についても考慮する必要があるが、近くの鉄道路線で列車が通過しておらず、基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」が携帯電話サービスエリアを形成していない場合には、「列車内の移動局」以外の移動局は、隣接する基地局40に接続することになる。
【0119】
また、「列車内の移動局」以外の移動局は、基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」のいずれかに接続した場合でも、接続した基地局から、次に接続すべき基地局として、基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」と共に、隣接する基地局40を指定することで、隣接する基地局40に接続する。
【0120】
このとき、基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」の電波を、隣接する基地局40の電波よりも高めに設定することで、「列車内の移動局」以外の移動局は、ハンドオーバ時に、隣接する基地局40よりも基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」に優先的に接続を試みるようになる。
【0121】
「列車内の移動局」以外の移動局は、基地局の電波が弱くなった際に、自動的にハンドオーバ先の基地局を検索することで、基地局「b1」、「b2」、「b3」、「b4」、「b5」が待機状態(スタンバイ状態、休止状態)になるために徐々に電波を弱くしている間に、隣接する基地局40に接続しても良い。例えば、最近の携帯電話は、常に複数の基地局と交信し、一番感度の高い基地局と通信するようになっている。
【0122】
したがって、「列車内の移動局」以外の移動局に対する影響も限定的である。
【0123】
[列車センサーの構成の例]
図13を参照して、列車センサー10の構成の例について説明する。
【0124】
列車センサー10は、列車検知部11と、検知通知部12を備える。
【0125】
列車検知部11は、鉄道路線を通過する列車が、所定の列車検知対象範囲(検知可能な範囲)に侵入した際に、当該列車を検知(感知)する。なお、列車検知部11は、列車と、それ以外の物体とを識別する機能を有していても良い。例えば、列車検知部11は、移動速度の検知や、画像認識、列車の識別情報の認識等により、列車と、それ以外の物体とを識別するようにしても良い。
【0126】
検知通知部12は、運用センター20と接続し、列車を検知した際に、列車を検知した旨の通知を運用センター20に送信する。
【0127】
[運用センターの構成の例]
図14を参照して、運用センター20の構成の例について説明する。
【0128】
運用センター20は、センサー管理部21と、センサー基地局連携部22と、基地局管理部23を備える。
【0129】
センサー管理部21は、個々の列車センサー10と接続し、列車センサー10から、列車を検知した旨の通知を受信する。
【0130】
センサー基地局連携部22は、列車センサー10と基地局30とを関連付けた情報をテーブル形式で保持し、列車センサー10から列車を検知した旨の通知を受信した際、通知元の列車センサー10に対応する基地局30を特定する。
【0131】
基地局管理部23は、個々の基地局30と接続し、通知元の列車センサー10に対応する基地局30に対して、電波の送信(発信)/停止(停波)を指示する。
【0132】
[基地局の構成の例]
図15を参照して、基地局30の構成の例について説明する。
【0133】
基地局30は、指向性アンテナ31と、指示受信部32と、電波制御部33を備える。
【0134】
指向性アンテナ31は、電波を送信(発信)して携帯電話サービスエリアを形成するための指向性アンテナである。指向性アンテナ31から送信(発信)する電波の放射方向や放射強度は、鉄道路線上の特定の範囲をカバーする携帯電話サービスエリアを形成する程度であると好適である。
【0135】
指示受信部32は、運用センター20と接続し、運用センター20から、電波の送信(発信)/停止(停波)に関する指示を受信する。
【0136】
電波制御部33は、運用センター20からの指示の内容に応じて、指向性アンテナ31からの電波の送信(発信)/停止(停波)を決定し、電波の送信(発信)/停止(停波)に関する処理を実行する。また、電波制御部33は、指向性アンテナ31から送信(発信)する電波の放射強度を調節する。
【0137】
[ハードウェアの例示]
以下に、列車センサー10、運用センター20、及び基地局30の各々の内部構成の具体的なハードウェアの例について説明する。
【0138】
図示しないが、列車センサー10、運用センター20、及び基地局30は、プログラムに基づいて駆動し所定の処理を実行するプロセッサと、当該プログラムや各種データを記憶するメモリと、ネットワークとの通信に用いられるインターフェースによって実現されるものでも良い。
【0139】
上記のプロセッサの例として、CPU(Central Processing Unit)、ネットワークプロセッサ(NP:Network Processor)、マイクロプロセッサ(microprocessor)、マイクロコントローラ、或いは、専用の機能を有する半導体集積回路(IC:Integrated Circuit)等が考えられる。
【0140】
上記のメモリの例として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の半導体記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置、又は、DVD(Digital Versatile Disk)等のリムーバブルディスクや、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等の記憶媒体(メディア)等が考えられる。また、バッファ(buffer)やレジスタ(register)でも良い。或いは、DAS(Direct Attached Storage)、FC−SAN(Fibre Channel − Storage Area Network)、NAS(Network Attached Storage)、IP−SAN(IP − Storage Area Network)等を用いたストレージ装置でも良い。
【0141】
なお、上記のプロセッサ及び上記のメモリは、一体化していても良い。例えば、近年では、マイコン等の1チップ化が進んでいる。したがって、電子機器等に搭載される1チップマイコンが、上記のプロセッサ及び上記のメモリを備えている事例が考えられる。
【0142】
上記のインターフェースの例として、ネットワーク通信に対応した基板(マザーボード、I/Oボード)やチップ等の半導体集積回路、NIC(Network Interface Card)等のネットワークアダプタや同様の拡張カード、アンテナ等の通信装置、接続口(コネクタ)等の通信ポート等が考えられる。
【0143】
また、ネットワークの例として、インターネット、LAN(Local Area Network)、無線LAN(Wireless LAN)、WAN(Wide Area Network)、バックボーン(Backbone)、ケーブルテレビ(CATV)回線、固定電話網、携帯電話網、3G(3rd Generation)、WiMAX[Worldwide Interoperability for Microwave Access](IEEE 802.16a)、LTE[Long Term Evolution](Super3G)、専用線(lease line)、IrDA(Infrared Data Association)、Bluetooth(登録商標)、シリアル通信回線、データバス等が考えられる。
【0144】
なお、列車センサー10、運用センター20、及び基地局30の各々の内部構成は、モジュール(module)、コンポーネント(component)、或いは専用デバイス、又はこれらの起動(呼出)プログラムでも良い。
【0145】
但し、実際には、これらの例に限定されない。
【0146】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、鉄道列車が通過している時間帯に限定して、鉄道路線をカバー(網羅)する列車専用の携帯電話サービスエリアを形成する。
【0147】
本実施形態では、列車内の携帯電話専用のサービスエリアを作ることで、列車内及び周辺地域の携帯電話の通信品質が向上する。特に、今後増加が予想されるスマートフォン等では、列車内でデータ通信を行う事例(ケース)も多く、その通信の大幅な増加に対しても安定した通信品質を確保できる。
【0148】
また、本実施形態では、列車内の携帯電話使用者用のサービスエリアは、列車が通過していない時間は停止するので、基地局の使用電力を抑えられ、経済的である。
【0149】
また、本実施形態では、既存の基地局の通信処理性能を向上させるために基地局設備を増強する必要がなくなるため、基地局設備の増強に要する携帯電話事業者の投資を抑制できる。
【0150】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0151】
本発明では、列車専用の携帯電話サービスエリアを形成するか否かについて、時間帯毎に設定することが可能である。すなわち、時間帯によって、本発明に関する機能を有効にするか否かを設定することができる。
【0152】
[混雑時間帯のみ本発明を実施する例]
例えば、朝の通勤・通学ラッシュ時や夕方の帰宅ラッシュ時のように乗客が多い時間帯には、鉄道路線の沿線地域の基地局の負担を軽減するために列車専用の携帯電話サービスエリアを形成するようにして、昼間の閑散時間帯には、移動局の収容を鉄道路線の沿線地域の基地局に任せて列車専用の携帯電話サービスエリアを形成しないようにすることもできる。この例では、基地局30は、混雑時間帯のみ、本発明の第1実施形態で説明した動作を実施し、閑散時間帯には、常に待機状態(スタンバイ状態、休止状態)になる。
【0153】
[閑散時間帯のみ本発明を実施する例]
或いは、列車が絶え間なく通過する時間帯には、列車の通過に関係なく常に列車専用の携帯電話サービスエリアを形成するようにして、列車の本数が少ない時間帯には、列車の通過中にのみ列車専用の携帯電話サービスエリアを形成するようにすることもできる。この例では、基地局30は、混雑時間帯には、既存の基地局と同様に常に稼働し、閑散時間帯には、本発明の第1実施形態で説明した動作を実施する。
【0154】
[実施方法の例]
運用センター20に対して、基地局30に電波の送信(発信)や停止(停波)を指示する機能を有効/無効にする時間帯を設定することで、本実施形態を実現することができる。或いは、列車センサー10に対して、検知/通知する時間帯を設定することや、基地局30に対して、起動/携帯電話サービスエリアを形成する時間帯を設定することで、本実施形態を実現することもできる。なお、基地局30に対して設定する場合、決められた時間帯以外は、運用センター20からの指示に従わず、稼働状態/待機状態(スタンバイ状態、休止状態)を継続するように設定しても良い。
【0155】
<第3実施形態>
以下に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0156】
本発明の第1実施形態では、列車センサー10が列車を検知した際に、列車を検知した旨を示す情報を運用センター20に送信することで、運用センター20が基地局30に電波の送信(発信)や停止(停波)を指示している。
【0157】
本実施形態では、列車センサー10を設置せず、センサー機器による列車の検知以外の方法で、運用センター20が指示を行う基地局30を決定し、基地局30に電波の送信(発信)や停止(停波)を指示するタイミングを決める。
【0158】
[列車を利用する例]
「列車」自体や「列車内に常に存在する移動局・固定局」がGPS情報等の位置情報を運用センター20に送信することで、運用センター20が、当該位置情報に応じた基地局30に電波の送信(発信)や停止(停波)を指示する。
【0159】
例えば、「列車」又は「列車内に常に存在する移動局・固定局」は、定期的にGPS情報を取得して運用センター20に送信する。運用センター20は、当該GPS情報を受信した際、当該GPS情報を基に、当該列車の通過予定地域の近傍に設置された基地局30に電波の送信(発信)や停止(停波)を指示する。
【0160】
この場合、「列車」又は「列車内に常に存在する移動局・固定局」が列車センサー10を兼ねている。すなわち、列車や移動局等が「接近報知機器」や「通過報知機器」に相当する。
【0161】
[基地局を利用する例]
個々の「基地局」が「列車」又は「列車内に常に存在する移動局・固定局」と接続した際/通信中に、この基地局の識別情報を運用センター20に通知する。
【0162】
例えば、基地局30は、「列車」又は「列車内に常に存在する移動局・固定局」と接続した際/通信中に、この基地局30の識別情報を運用センター20に送信する。運用センター20は、基地局30の識別情報を受信した際、基地局30の識別情報を基に、次に接続すべき基地局30を特定し、次に接続すべき基地局30に電波の送信(発信)や停止(停波)を指示する。
【0163】
この場合、「基地局」が列車センサー10を兼ねている。すなわち、基地局30が「接近報知機器」や「通過報知機器」に相当する。
【0164】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、列車センサー10として、沿線上に専用の/固定のセンサー機器を設置することや、複数のセンサー機器を設置することが不要となる。
【0165】
また、第1実施形態において、列車センサー10に不具合が発生した際に、本実施形態に切り替えるようにしても良い。例えば、第1実施形態を「主系」のシステムとし、本実施形態を「従系(待機系)」のシステムとすることが考えられる。
【0166】
この場合、運用センター20は、列車センサー10からの「列車を検知した旨の通知」と共に、「列車」又は「列車内に常に存在する移動局・固定局」からの「GPS情報」や、基地局30からの「識別情報」を受信する。
【0167】
或いは、運用センター20は、通常は、列車センサー10から「列車を検知した旨の通知」を受信し、「列車を検知した旨の通知」を受信してから所定の時間、次の「列車を検知した旨の通知」を受信できなかった場合、「列車」又は「列車内に常に存在する移動局・固定局」に対して「GPS情報」を要求したり、基地局30に対して「識別情報」を要求したりするようにしても良い。
【0168】
<第4実施形態>
以下に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0169】
本発明の第1実施形態では、「鉄道路線」を例に説明しているが、実際には、同様の路線を有する交通機関においても実施することができる。
【0170】
[バス・船舶等の移動体]
例えば、大型バス・高速バス等が通行する高速道路、定期的に路線バスが運行している市街地の一般道路、水上バス・遊覧船・連絡船・定期船等が運行している河川・運河・池・湖・沼・近海等の沿岸地域においても、本発明を実施することができると考えられる。
【0171】
この場合、大型バスや水上バス等が第1実施形態における「列車」に相当し、高速道路や河川等が第1実施形態における「鉄道路線」に相当する。
【0172】
[複数台の自動車]
また、複数台の自動車を第1実施形態における「列車」とみなし、複数台の自動車が走行する道路を第1実施形態における「鉄道路線」とみなすこともできる。例えば、同一グループ(集団)のメンバーが複数台の自動車に分乗して同一の目的地に向かう場合、これら複数台の自動車が連なって(直列で)同一の道路を走行すると考えられる。
【0173】
この場合、図2のステップS3において、運用センター20は、列車センサー10から、自動車1台毎に、自動車を検知した旨の通知を受信し、検知された自動車の台数が予め決められた台数(例えば5台)に達した場合に、進行方向にある通過予定地域の基地局30の現在の稼働状況を確認し、当該基地局30が携帯電話サービスエリアを形成しているか否か判定する。
【0174】
[各交通網の位置関係]
なお、本実施形態における河川や道路と、第1実施形態における鉄道路線とが、「複線」の関係になることも考えられる。例えば、河川/道路に沿って鉄道路線が敷設(配線)されている場合や、河川/道路と、鉄道路線とが、同一の軌道(同一の位置・空間)で上下に並列に存在する場合もある。この場合は、河川/道路と、鉄道路線との「複線」とみなすことができる。
【0175】
また、鉄道路線と道路と河川が、「立体交差」の関係になることも考えられる。例えば、高速道路と鉄道路線が立体交差している場合がある。無論、道路同士が立体交差している場合もある。例えば、複数の道路(高速道路・自動車専用道路等)のそれぞれを接続させるためのインターチェンジやジャンクション等が考えられる。このような場合も、基本的に、第1実施形態における鉄道路線の立体交差の場合と同じである。
【0176】
また、鉄道路線と道路と河川/河川同士/道路同士が同一平面上で「平面交差」している場合もある。例えば、一般道路の場合は交差点等が考えられる。平面交差の場合には、路線が重複する箇所に同時期に複数の移動体が到着した際に、一方の路線の移動体が、他方の路線の移動体が通過するまで待機するという点を除けば、基本的に、立体交差の場合と同じである。
【0177】
また、「隣接する複数の路線」が「合流」して「1つの路線」になるような場合には、合流地点の前後で「複線」から「単線」に切り替わることもある。同様に、「1つの路線」が「分岐」して「隣接する複数の路線」になるような場合には、分岐の前後で「単線」から「複線」に切り替わることもある。
【0178】
更に、エレベータ(昇降機)を第1実施形態における「列車」とみなし、エレベータが通過する空間を第1実施形態における「鉄道路線」とみなすこともできる。超高層建築物のエレベータのように移動距離が長距離である場合、エレベータも列車と変わらない。列車の場合は進行方向が地面に対して「水平方向」(横方向、左右方向)であるのに対し、エレベータの場合は進行方向が地面に対して「垂直方向」(縦方向、上下方向)となる。
【0179】
<第5実施形態>
以下に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0180】
本発明の第1実施形態では、「移動局」及び「基地局」として「携帯局」及び「携帯基地局」を例に説明しているが、実際には、他の無線局においても実施することができる。
【0181】
[高速鉄道向け無線LAN]
例えば、高速鉄道向け無線LAN等が考えられる。高速鉄道向け無線LANでは、高速で移動している列車内の移動局(端末や中継装置)が、列車の外部のアクセスポイント(AP:Access Point)との間においてハンドオーバ処理を行う。
【0182】
この場合、アクセスポイントが基地局30に相当する。
【0183】
[送信/受信のみの無線通信方式]
また、ハンドオーバ処理が不要な無線通信方式(無線放送等)において、列車内の移動局が、トランスミッタ(transmitter:送信機)/レシーバ(receiver:受信機)等の固定局との間で、定期的/一時的に、或いは特定の場所で、何らかの情報を送信/受信することが考えられる。
【0184】
この場合においても、第1実施形態と同様に、列車センサー10は、列車を検知した際に、列車を検知した旨を示す情報を運用センター20に送信する。運営センター20は、基地局30に相当する固定局に対して、起動/停止を指示する。当該固定局は、運営センター20からの起動指示に応じて起動し、電波を送信(発信)し、列車内の移動局との間で、無線通信により何らかの情報を送信/受信する。また、当該固定局は、運営センター20からの停止指示に応じて、徐々に電波を弱くして、最終的に電波を完全に停止(停波)し、待機状態(スタンバイ状態、休止状態)になる。
停止する。
【0185】
<各実施形態の関係>
なお、上記の各実施形態は、組み合わせて実施することも可能である。
【0186】
<本発明の特徴>
以上のように、本発明では、移動体と共に移動する移動局のために、移動体が移動する領域に沿ってセンサーと基地局を設置し、センサーが移動体を検知した際に、基地局が携帯電話サービスエリアを形成する。
【0187】
本発明では、移動体がセンサー及び基地局の近傍を通過している時間帯に限定して、上記の移動局専用の携帯電話サービスエリアを形成する(時間的限定)。
【0188】
また、本発明では、移動体が移動する領域のみをカバーするように範囲を絞って、上記の移動局専用の携帯電話サービスエリアを形成する(地域的限定)。
【0189】
<付記>
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載することも可能である。但し、実際には、以下の記載例に限定されない。
【0190】
(付記1)
既存の通信局(沿線地域の基地局)が存在する地域内を移動する移動体(列車等)の特定の軌道(鉄道路線等)に沿って設置され、前記特定の軌道を移動する移動体が接近した際に前記移動体を検知する接近センサーと、
前記特定の軌道に沿って設置され、前記移動体が通過した際に前記移動体を検知する通過センサーと、
前記接近センサー及び前記通過センサーの各々から移動体検知の通知を受信する運用センターと、
前記特定の軌道に沿って設置され、前記移動体の接近に応じて前記運用センターから通信開始の指示を受信して前記移動体と共に移動する移動局との通信のための機能を起動し、前記移動体の通過に応じて前記運用センターから通信停止の指示を受信して前記移動局との通信のための機能を停止する無線局と
を含む
限定的通信圏形成システム。
【0191】
(付記2)
付記1に記載の限定的通信圏形成システムであって、
前記接近センサー及び前記通過センサーの各々は、前記特定の軌道として複数の軌道が存在する場合、前記複数の軌道の各々に沿って設置され、前記特定の軌道上における前記無線局の通信可能範囲に基づく領域を監視対象とし、
前記接近センサーは、前記移動体が前記監視対象の領域内に侵入した際に前記移動体を検知し、
前記通過センサーは、前記移動体が前記監視対象の領域を通過した際に前記移動体を検知し、
前記運用センターは、前記接近センサー及び前記通過センサーの各々からの通知を基に、前記監視対象の領域内における移動体の有無を確認し、前記監視対象の領域内に移動体が存在しない状況で移動体が前記監視対象の領域内に侵入した場合に、前記無線局に通信開始の指示を送信し、前記監視対象の領域内に存在した全ての移動体が通過して前記監視対象の領域内に移動体が1台も存在しない状況になった場合に、前記無線局に通信停止の指示を送信し、
前記無線局は、前記複数の軌道のうち少なくとも1つの軌道に沿って設置され、前記運用センターから通信開始の指示を受信して、前記複数の軌道のうち少なくとも1つの軌道上の通信可能範囲における通信のための機能を起動し、前記運用センターから通信停止の指示を受信して、前記通信可能範囲における通信のための機能を停止する
限定的通信圏形成システム。
【0192】
(付記3)
付記2に記載の限定的通信圏形成システムであって、
前記無線局は、前記運用センターから電波の送信の指示を受信して、電波を送信し、前記電波の指向性及び電界強度により前記複数の軌道のうち少なくとも1つの軌道を通信可能範囲とする通信サービスエリアを形成し、前記運用センターから電波の停止の指示を受信して、徐々に電波を弱くして前記通信サービスエリア内に存在する移動局に対してハンドオーバを促し、最終的に電波を完全に停止して前記通信サービスエリアを解消する
限定的通信圏形成システム。
【0193】
(付記4)
既存の通信局が存在する地域内を移動する移動体の特定の軌道に沿って設置された接近センサーが、前記特定の軌道を移動する移動体が接近した際に前記移動体を検知することと、
運用センターが、前記接近センサーから移動体検知の通知を受信することと、
前記特定の軌道に沿って設置された無線局が、前記移動体の接近に応じて前記運用センターから通信開始の指示を受信して、前記移動体と共に移動する移動局との通信のための機能を起動することと、
前記特定の軌道に沿って設置された通過センサーが、前記移動体が通過した際に前記移動体を検知することと、
前記運用センターが、前記通過センサーから移動体検知の通知を受信することと、
前記無線局が、前記移動体の通過に応じて前記運用センターから通信停止の指示を受信して、前記移動局との通信のための機能を停止することと
を含む
限定的通信圏形成方法。
【0194】
<備考>
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0195】
10… 列車センサー(sensor)
11… 列車検知部
12… 検知通知部
20… 運用センター
21… センサー管理部
22… センサー基地局連携部
23… 基地局管理部
30… 基地局
31… 指向性アンテナ
32… 指示受信部
33… 電波制御部
40… 沿線地域の基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の軌道上を移動する移動体が接近した際に、前記移動体の接近を外部に通知する接近報知機器と、
前記特定の軌道上を前記移動体が通過した際に、前記移動体の通過を外部に通知する通過報知機器と、
前記接近報知機器及び前記通過報知機器の各々からの通知を受信する管理装置と、
前記特定の軌道に沿って設置され、前記移動体の接近に応じて前記管理装置から通信開始の指示を受信して前記移動体と共に移動する移動局との通信のための機能を起動し、前記移動体の通過に応じて前記管理装置から通信停止の指示を受信して前記移動局との通信のための機能を停止する無線局と
を含む
限定的通信圏形成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の限定的通信圏形成システムであって、
前記接近報知機器及び前記通過報知機器の各々は、前記特定の軌道として複数の軌道が存在する場合、前記複数の軌道の各軌道上における前記無線局の通信可能範囲に基づく領域を報知対象領域とし、
前記接近報知機器は、前記移動体が前記報知対象領域内に侵入した際に、前記移動体の接近を前記管理装置に通知し、
前記通過報知機器は、前記移動体が前記報知対象領域を通過した際に、前記移動体の通過を前記管理装置に通知し、
前記管理装置は、前記接近報知機器及び前記通過報知機器の各々からの通知を基に、前記報知対象領域内における移動体の有無を確認し、前記報知対象領域内に移動体が存在しない状況で移動体が前記報知対象領域内に侵入した場合に、前記無線局に通信開始の指示を送信し、前記報知対象領域内に存在した全ての移動体が通過して前記報知対象領域内に移動体が1台も存在しない状況になった場合に、前記無線局に通信停止の指示を送信し、
前記無線局は、前記複数の軌道のうち少なくとも1つの軌道に沿って設置され、前記管理装置から通信開始の指示を受信して、前記複数の軌道のうち少なくとも1つの軌道上の通信可能範囲における通信のための機能を起動し、前記管理装置から通信停止の指示を受信して、前記通信可能範囲における通信のための機能を停止する
限定的通信圏形成システム。
【請求項3】
請求項2に記載の限定的通信圏形成システムであって、
前記無線局は、前記管理装置から電波の送信の指示を受信して、電波を送信し、前記電波の指向性及び電界強度により前記複数の軌道のうち少なくとも1つの軌道を通信可能範囲とする通信サービスエリアを形成し、前記管理装置から電波の停止の指示を受信して、徐々に電波を弱くして前記通信サービスエリア内に存在する移動局に対してハンドオーバを促し、最終的に電波を完全に停止して前記通信サービスエリアを解消する
限定的通信圏形成システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の限定的通信圏形成システムで使用される管理装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の限定的通信圏形成システムで使用される無線局。
【請求項6】
接近報知機器が、特定の軌道上を移動する移動体が接近した際に、前記移動体の接近を外部に通知することと、
管理装置が、前記接近報知機器からの通知を受信することと、
前記特定の軌道に沿って設置された無線局が、前記移動体の接近に応じて前記管理装置から通信開始の指示を受信して、前記移動体と共に移動する移動局との通信のための機能を起動することと、
通過報知機器が、前記特定の軌道を前記移動体が通過した際に、前記移動体の通過を外部に通知することと、
前記管理装置が、前記通過報知機器からの通知を受信することと、
前記無線局が、前記移動体の通過に応じて前記管理装置から通信停止の指示を受信して、前記移動局との通信のための機能を停止することと
を含む
限定的通信圏形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載の限定的通信圏形成方法であって、
前記接近報知機器及び前記通過報知機器の各々が、前記特定の軌道として複数の軌道が存在する場合、前記複数の軌道の各軌道上における前記無線局の通信可能範囲に基づく領域を報知対象領域とすることと、
前記接近報知機器が、前記移動体が前記報知対象領域内に侵入した際に、前記移動体の接近を前記管理装置に通知することと、
前記通過報知機器が、前記移動体が前記報知対象領域を通過した際に、前記移動体の通過を前記管理装置に通知することと、
前記管理装置が、前記接近報知機器及び前記通過報知機器の各々からの通知を基に、前記報知対象領域内における移動体の有無を確認することと、
前記報知対象領域内に移動体が存在しない状況で移動体が前記報知対象領域内に侵入した場合、前記管理装置が、前記複数の軌道のうち少なくとも1つの軌道に沿って設置された無線局に通信開始の指示を送信することと、
前記無線局が、前記管理装置から通信開始の指示を受信して、前記複数の軌道のうち少なくとも1つの軌道上の通信可能範囲における通信のための機能を起動することと、
前記報知対象領域内に存在した全ての移動体が通過して前記報知対象領域内に移動体が1台も存在しない状況になった場合、前記管理装置が、前記無線局に通信停止の指示を送信することと、
前記無線局が、前記管理装置から通信停止の指示を受信して、前記通信可能範囲における通信のための機能を停止することと
を更に含む
限定的通信圏形成方法。
【請求項8】
請求項7に記載の限定的通信圏形成方法であって、
前記無線局が、前記管理装置から電波の送信の指示を受信して、電波を送信し、前記電波の指向性及び電界強度により前記複数の軌道のうち少なくとも1つの軌道を通信可能範囲とする通信サービスエリアを形成することと、
前記無線局が、前記管理装置から電波の停止の指示を受信して、徐々に電波を弱くして前記通信サービスエリア内に存在する移動局に対してハンドオーバを促し、最終的に電波を完全に停止して前記通信サービスエリアを解消することと
を更に含む
限定的通信圏形成方法。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の限定的通信圏形成方法を、管理装置に実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の限定的通信圏形成方法を、無線局に実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate

【図12D】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−256981(P2012−256981A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127520(P2011−127520)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】