説明

院内感染を減らす方法

院内感染、特に挿管された患者の院内感染が、挿管前に、消毒綿塗布器またはスプレー塗布器によって、粘膜に液体殺菌剤が直接適用されることによって減少される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類患者の院内感染を減らす方法に関する。
【0002】
別の態様において、本発明は、すすいだり、うがいをしたり、または、他の自律的管理法によって、粘膜気管に殺菌剤を適用することができない、または、適用することを嫌がる患者に用いることができるような方法に関している。
【0003】
本発明の、これらおよび他の、さらなる特別な特徴は、以下の記載から、当業者にとって明瞭となるであろう。
【背景技術】
【0004】
大抵の院内感染は、医療機器の汚染により、深刻な院内感染を引き起こす。院内の肺炎は、第二の最も一般的な院内感染であり、最も高く寄与する死亡率および疾病率に関連している。最近のデータは、院内肺炎の少なくとも300,000発現が、アメリカ合衆国内で毎年発生することを示している。感染の寄与する死亡率は33%−50%であり、それゆえ、約100,000人の患者が院内肺炎によって毎年死亡している。院内肺炎の危険は、機械空調を用いることから、6倍から20倍、増加している。
【0005】
気管内チューブは、院内肺炎に導く定着/汚染のための共通の乗物と考えられている。気管内チューブは、口腔咽頭環境を殺菌気管支肺胞の空間に連結し、重要なことに、院内肺炎の危険を増加させる。
【0006】
院内感染の原因となる、有害なバクテリアによって犯された別の部位は、内耳および鼻の通路を含んでいる。
【0007】
先行技術
院内感染の発生を減らす先の試みは、装置の表面を覆う殺菌剤を適用すること(US 20030078242 Al)、および保存タンスのような外科手術で用いられる周辺機器を殺菌すること(US 20040135967 Al)、手術用手袋(US 20040151919 Al)などにより、装置を殺菌するための方法を提供する。典型的な殺菌剤の使用に関する他の方法は、例えばクロロヘキサジングルコン酸塩のような殺菌剤を含有する液体を患者がうがいすることによって、挿管法の前に、口と口腔咽頭空洞の表面に適用される(Houston et at., Am.J.Crit.Care, Nov. 2002, 11 No.6)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
患者に液体殺菌剤をうがいさせることによって、挿管された患者において、院内肺炎を著しく減少させるけれども、患者が殺菌剤をうがいしたり自己適用行動をとったりすることを、嫌がったりできないときには、殺菌剤を適用することに大きな問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
簡単に言うと、出願人は、自分で殺菌剤を適用することを嫌がる、または、適用することができない哺乳類の患者の院内感染を減らす方法を、殺菌剤を噴霧することによって、または、殺菌剤を含む消毒綿を用いることによって、患者の粘膜に殺菌剤を適用することで、提供する。
【0010】
本発明の現状で好ましい実施の形態において、殺菌剤は、クロロヘキサジン誘導体、最も好ましくはクロロヘキサジングルコン酸塩、の溶液である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および図2は、参照番号20で示され、本発明の方法の好ましい実施の形態を実行するときに用いられる消毒綿塗布器を示し、当該実施の形態においては、複数の図面で、同様の参照番号が同じ要素を示している。消毒綿塗布器20は、中空円筒ハンドル部10からなり、当該ハンドル部10は、ハンドル10の遠位端12で略平坦な形状の多孔性スポンジ11を支持している。遠位端12はスポンジ11内部の壊れやすい先端13として形成され、当該先端13は、矢印Aの方向で下方および外方に押圧することによって、開かれ、先端13が、分割線14で、ハンドル10の遠位端12から分離する。中空ハンドル10は液体殺菌剤で満たされ、そして、ハンドル10の上端15は熱融着部16によって閉じられている。
【0012】
図2に示されているように、スポンジ11の遠位端部12は側部22およびスポンジ11の遠位端23で内方に先細になっており、患者のほおと歯茎の間の、例えば口内空洞や口腔咽頭空洞内の狭い空間内での消毒綿の操作を容易にする。大人の患者に対して、平らなスポンジ11は、約1イチンチ(25.4mm)の幅と長さであり、約1/4インチ(6.35mm)の厚みである。液体の殺菌剤を鼻の通路や内耳のような他の粘膜面に適用するために、スポンジの形状は、これらの狭い通路内に殺菌剤を適用するために消毒綿を適合させるよう変形される。
【0013】
図3は、液体殺菌剤(図示せず)によって満たされ、矢印Bの方向で下方に押圧されることによって駆動される霧化バルブ31を有するスプレー塗布缶30を示している。殺菌剤の噴霧は、無毒ガスを有する缶30を押圧するかポンプタイプの霧化バルブ32を用いることによって、バルブ32のポート31を通過して放出される。殺菌液体を、口や口腔咽頭の表面、鼻洞や耳のような粘膜領域に向けるときに助けるために、挿入されたとき、パイプ32の遠位端から殺菌液体が噴霧されるよう、近位端33がポート31内に挿入される外形の大きさを有している円筒パイプ32が設けられている。
【0014】
消毒綿塗布器20およびスプレー塗布缶30は、本発明によって意図されるよう、殺菌液体を投薬および適用するために、単独でも組み合わせでも用いることができる。殺菌剤の適用および粘膜表面での保持を容易にするために、殺菌剤の液体溶媒の粘性は、例えばヒドロキシプロピル、セルロース、界面活性剤といった増粘剤のような粘性修正剤を盛り込むことによって調整することができる。取り扱われる患者や粘膜の位置に従って、殺菌剤の粘性は、とても低い粘性のアルコール溶媒から半固体ムースまで変化させることができる。
【0015】
本発明の方法は、獣医の診療にも用いることができ、この場合には、消毒綿塗布器またはスプレー塗布器の大きさおよび/または形状を大きくまたは小さくしたり、殺菌剤の粘性を適正に調整したりすることが好ましい。
【0016】
以下の実施例は、本技術分野の当業者が本発明を理解および実施することができ、本発明の現在の好ましい実施の形態を示すよう、示されている。これらの説明に役立つ実施例は、本発明の範囲を示す意図はなく、本発明の範囲は添付された請求項によってのみ定義づけられる。
【0017】
実施例1
図1−図2の消毒綿塗布器は、挿管法を必要とする外科手術に先立って麻酔される人の患者に、アルコールクロロヘキサジン(chlorhexadine)グルコン酸塩殺菌剤の液体を適用するために用いられる。この殺菌剤は、アメリカ合衆国のアリゾナ州のフェニックスのZila Pharmaceuticals, Incから登録商標PERIDEXのもとで、商業的には手に入る。
【0018】
挿管法の前に、消毒綿塗布器のハンドルは、下方かつ側方に押圧され、ハンドルの分割線で壊れやすい先端が分離され、殺菌剤液体がスポンジ内に流入し、スポンジに染み込む。
【0019】
消毒綿を自由に、歯肉、ほおの粘膜、口底、硬口蓋および軟口蓋、並びに、舌背、舌縁および舌腹に適用させ、曝された口腔咽頭表面に殺菌剤液体が適用される。そして、患者は、殺菌気管内チューブで挿管される。
【0020】
実施例2
実施例1の消毒綿塗布器の代わりに図3の加圧型スプレー塗布器が用いられる以外は、実施例1の方法が繰り返され、実施例1の解決法が患者の鼻の通路の粘膜に適用される。
【0021】
当業者が理解し実施できるような表現において本発明により記載され、その好ましい実施の形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】口腔咽頭空洞を殺菌するための本発明の好ましい方法を実施するときに用いられる消毒綿塗布器。
【図2】断面線2−2に沿って取られた、図1の消毒綿の断面図。
【図3】本発明を実施するときに用いるのに適したスプレー塗布器の斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自分で殺菌剤を適用することを嫌がる、または、適用することができない哺乳類の患者の院内感染を減らす方法において、
殺菌剤を噴霧することによって、または、殺菌剤を含む消毒綿を用いることによって、液体殺菌剤を患者の粘膜に適用することを備えた方法。
【請求項2】
前記液体殺菌剤は、噴霧することによって適用される、請求項1の方法。
【請求項3】
前記液体殺菌剤は、殺菌剤を含む消毒綿を用いることによって適用される、請求項1の方法。
【請求項4】
前記液体殺菌剤は、クロロヘキサジン(chlohexadine)誘導体を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
前記誘導体は、クロロヘキサジングルコン酸塩である、請求項1の方法。
【請求項6】
請求項1の方法による使用方法のために、殺菌剤を製剤するときに、クロロヘキサジングルコン酸を用いる使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−518004(P2008−518004A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538875(P2007−538875)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/036362
【国際公開番号】WO2006/049620
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(507290283)スリー、エム、イノベイティブ、プロパティーズ、カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】3M INNOVATIVE PROPERTIES COMPANY
【Fターム(参考)】