説明

除塵用布帛の製造方法

【課題】絨毯などに押さえ付けながら往復して移動させることで、容易にゴミを取り除くことができる除塵用布帛を得る。
【解決手段】一方向に傾斜したパイル2を有するパイル織物1を円筒ドラム3の円周面に前記パイル2の傾斜の向きに巻き付け、円周面の長さ方向に延びる所定幅のスリット5を複数設けた円筒金型4を、前記円筒ドラム3に前記パイル2を押さえ付けながら被せる。その後、円筒金型4をパイル2の傾斜の向きと反対方向に所定距離スライドさせ、その円筒金型4をパイル2の傾斜させた際の処理温度以上でヒートセットして、円筒金型4を冷却する。これにより、前記スリット5の幅W毎にその傾斜の向きが交互に反対向きとなる状態に形成された除塵用布帛6が得られる。この除塵用布帛6を絨毯などに押さえ付けながら往復して移動させることでゴミを取り除くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、絨毯や衣服などに付着した埃や塵を取り除く除塵用布帛の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絨毯や衣服などに付着した埃や塵を取り除く除塵用布帛は、モケット織機などの織機で織られたパイル織物のパイルを傾斜させることで製造される。このパイルを傾斜させる方法として、従来から、パイル織物をヒートロールに通してそのパイルを押さえつけて傾斜させる方法や、パイル織物を円筒ドラムに巻き付けて高速回転させながらヒートセットし、その後、低速回転下で前記円筒ドラムの上方から水をかけて、回転方向になびくパイルを寝かせてコーミングし、再度ヒートセットしてパイルを傾斜させる方法などが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭64−61564号公報
【0003】
上記の方法により製造された除塵用布帛は、一方向にパイルが傾斜したものであり、これを絨毯や衣服などに押さえつけ、そのパイルの傾斜の向きに逆らって移動させる。これにより、そのパイルが絨毯などに付着した埃、塵、ペットの毛や髪の毛などのゴミを掻き取るとともにそのゴミを絡め取り、絨毯などに付着したゴミを容易に取り除くことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記除塵用布帛は、これを絨毯などに押さえ付けながらパイルの傾斜の向きに逆らって移動させた後、絨毯などから離し元の位置に戻して、再度、押さえ付けながらパイルの傾斜に逆らう向きに移動させる作業を何度か繰り返してゴミを取り除く必要があり、この作業が手間のかかるものであった。
【0005】
また、一方向に傾斜したパイルが表面の全面に形成されているので、上記除塵用布帛を絨毯などに押し付けてパイルの傾斜の向きに逆らって移動させると、その抵抗が大きくなるという問題もあった。
【0006】
そこで、絨毯や衣服などに押さえ付けながら往復して移動させることで、これらの表面に付着したゴミを容易に取り除くことができる除塵用布帛を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明にかかる除塵用布帛の製造方法は、一方向に傾斜したパイルを有するパイル織物を円筒ドラムの円周面に前記パイルの傾斜方向に巻き付ける工程と、円周面の長さ方向に延びる所定幅のスリットを複数設けた円筒金型を前記円筒ドラムに前記パイルを押さえ付けながら被せる工程と、前記円筒金型を前記パイルの傾斜の向きと反対向きに所定距離スライドする工程と、この円筒金型を前記パイルの傾斜させた際の処理温度以上でヒートセットする工程と、前記円筒金型を冷却する工程とを順次実施するようにしたものである。
【0008】
この構成によると、パイル織物の上記円筒金型のスリット間で押さえ付けられた部分のパイルの傾斜の向きが、あらかじめ傾斜していた向きと反対向きに形成される。これにより、傾斜の向きが互いに反対向きとなるパイルがそれぞれ異なる幅で形成された除塵用布帛を得ることができる。
【0009】
また、上記構成において、上記円筒金型のスリットが、その幅と等しい間隔で複数設けられた構成とすることができる。これにより、スリットの幅毎でパイルの傾斜の向きが交互に反対向きとなる除塵用布帛を得ることができる。
【0010】
また、この発明にかかる除塵用布帛は、表面に形成されたパイルが経糸方向に傾斜したパイル織物からなる除塵用布帛において、前記パイルが経糸方向の所定長さ毎にその傾斜の向きが交互に反対向きに形成された構成を採用することができる。
【0011】
この構成によると、この除塵用布帛は、絨毯などのゴミを取り除く際に、これを押さえ付けながら移動させた後、絨毯などから離して元の位置に戻し、再度移動させる必要がなく、前記除塵用布帛を絨毯などに押さえ付けながら往復して移動させることでゴミを取り除くことができる。
【0012】
また、除塵用布帛を絨毯などに押し付けて移動させた際に、絨毯などの起毛に入り込んで、その起毛に絡みながら移動するパイルと、絨毯などの表面をなでるように移動するパイルとが存在することとなる。このため、一方向に傾斜したパイルを全面に形成した除塵用布帛と比較して、絨毯などに押し付けて移動させる際の抵抗を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明は、絨毯などに押さえ付けながら往復して移動させることでゴミを取り除くことのできる除塵用布帛を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を添付図面図1から図7に基づいて説明する。
モケット織機などの織機により織られたパイルが表面に形成されたパイル織物を、140℃〜160℃の処理温度で、公知の方法によりそのパイル2を一方向に傾斜させる。これにより、図1(a)、(b)に示すように、一方向に傾斜したパイル2が表面に形成されたパイル織物1が得られる。
【0015】
この発明の実施形態の除塵用布帛の製造方法は、まず、図2に示すように、一方向に傾斜したパイル2を有する上記パイル織物1を、そのパイル2の傾斜方向が円筒ドラム3の周方向と一致させた状態で、円筒ドラム3の円周面に巻き付ける工程を実施する。
【0016】
次に、上記パイル織物1を巻き付けた円筒ドラム3に、図4に示すように、スリット5を複数設けた円筒金型4を被せる工程を実施する。前記円筒金型4は、図3に示すように、その円周面の長さ方向に延びる所定幅Wのスリット5が、その幅Wと等しい間隔で複数設けられたものである。これにより、円筒金型4のスリット5の間の部分でパイル2が押さえ付けられた状態となる(図6(a)参照)。なお、前記円筒金型4の各スリット5の間隔を、その幅Wよりも短く、または長く形成してもよい。この円筒金型4を用いて、除塵用布帛を製造すると、傾斜の向きが互いに反対向きとなるパイル2がそれぞれ異なる幅をもってストライプ状に形成された除塵用布帛を得ることができる。
【0017】
上記円筒金型4を被せる工程に続いて、上記円筒金型4を、円筒ドラム3に巻き付けられたパイル織物1のパイル2の傾斜の向きと反対向きに回転してスライドさせる工程を実施する。円筒金型4を回転してスライドさせると、前記パイル2が、各スリット5の開口縁に当たって、その傾斜の向きが反対向きとなるようにしごかれ、スリット5の間の部分で押し付けられる。これにより、円筒ドラム3に巻き付ける前のパイル織物1のパイル2の傾斜の向き(当初の傾斜の向き)に対して反対向きに傾斜した状態で押し付けられることとなる(図6(b)参照)。このとき、スリット5の開口部分に位置するパイル2は、当初の傾斜の向きを保った状態となっている。
【0018】
なお、上記円筒金型4の回転させるスライド距離は、少なくとも円筒金型4のスリット5の幅Wよりも長い距離を回転してスライドさせればよく、要は、各スリット5の間の部分で、パイル2bが当初の傾斜の向きに対して反対向きに傾斜させられた状態で押し付けられていればよい。
【0019】
上記円筒金型4をスライドする工程後、この円筒金型4を240℃の雰囲気中でヒートセットする工程を実施する。このヒートセット工程は、あらかじめ一方向に傾斜したパイル2を熱により柔らかくして、その傾斜の向きに対して反対向きに傾斜する状態に形付けるために実施する。そのため、円筒ドラム3に巻きつけたパイル織物1のパイル2を一方向に傾斜させた際の処理温度以上で行う必要がある。これにより、円筒金型4の各スリット5の間の部分で押し付けられたパイル2bが、当初の傾斜の向きに対して反対向きに傾斜した状態に形付けられる。
【0020】
上記ヒートセット工程後、上記円筒金型4を冷却する工程を実施する。これにより、円筒金型4の各スリット5の間の部分で押し付けられたパイル2bを、当初の傾斜の向きの反対向きに傾斜させた状態に維持させることができる。
【0021】
上記円筒金型4を円筒ドラム3から取り外し、パイル織物1を外して乾燥させると、前記円筒金型4のスリット5の開口部分に位置していたパイル2aと、各スリットの間の部分で押し付けられていたパイル2bとが、上記スリット5の幅毎にその傾斜の向きが交互に反対向きとなる状態に形成された除塵用布帛6が得られる(図6(c)参照)。
【0022】
次に、この発明の第2実施形態の除塵用布帛を図7に基づいて説明する。
この除塵用布帛6は、図7に示すように、パイル2a、2bが、経糸方向の所定の長さ毎に、その経糸方向の傾斜の向きが交互に反対向きに形成されたものである。そのため、絨毯などに押さえ付けながら往復して移動させることで、互いに反対向きに傾斜したパイル2a、2bのうちいずれかのパイルが、絨毯などに付着した塵やほこりなどのゴミを掻き取るとともに絡め取って、そのゴミを取り除くことができる。
【0023】
また、上記除塵用布帛6を絨毯などに押し付けながら移動させると、経糸方向の所定長さ毎にその傾斜の向きが反対向きに形成されたパイル2a(2b)が、絨毯などの起毛に入り込んでその起毛に絡みながら移動するパイル2aと、絨毯などの表面をなでるように移動するパイル2bとに分かれることとなる。これにより、傾斜したパイル2を表面の全面に形成した除塵用布帛6と比較して、絨毯などに押し付けた状態で移動させる際の抵抗を小さくすることができ、絨毯などのゴミを容易に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)第1実施形態の除塵用布帛の製造方法の一方向に傾斜したパイルを有するパイル織物の平面図、(b)同上のパイル織物の断面図
【図2】(a)同上のパイル織物を円筒ドラムに巻き付けた状態を示す側面図、(b)図2(a)に示すb−b線の断面図
【図3】同上の円筒金型を示す斜視図
【図4】同上の円筒金型を円筒ドラムに被せた状態を示す斜視図
【図5】図4に示すV−V線の断面図
【図6】(a)同上の円筒ドラムに円筒金型を被せた状態を示す簡略作用図、(b)同上の円筒金型をスライドさせた状態を示す簡略作用図、(c)同上のヒートセット後の状態を示す簡略作用図
【図7】(a)第2実施形態の除塵用布帛を示す平面図、(b)図7(a)に示すb−b線の断面図
【符号の説明】
【0025】
1 パイル織物
2 パイル
3 円筒ドラム
4 円筒金型
5 スリット
6 除塵用布帛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に傾斜したパイル(2)を有するパイル織物(1)を円筒ドラム(3)の円周面に前記パイル(2)の傾斜方向に巻き付ける工程と、円周面の長さ方向に延びる所定幅のスリット(5)を複数設けた円筒金型(4)を前記円筒ドラム(3)に前記パイル(2)を押さえ付けながら被せる工程と、前記円筒金型(4)を前記パイル(2)の傾斜の向きと反対向きに所定距離スライドする工程と、この円筒金型(4)を前記パイル(2)の傾斜させた際の処理温度以上でヒートセットする工程と、前記円筒金型(4)を冷却する工程とを順次実施する除塵用布帛の製造方法。
【請求項2】
上記円筒金型(4)のスリット(5)が、その幅と等しい間隔で複数設けられたことを特徴とする請求項1に記載の除塵用布帛の製造方法。
【請求項3】
表面に形成されたパイル(2)が経糸方向に傾斜したパイル織物からなる除塵用布帛において、前記パイル(2)が、経糸方向の所定長さ毎にその傾斜の向きが交互に反対向きに形成されたことを特徴とする除塵用布帛。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−186808(P2007−186808A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4601(P2006−4601)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(503059312)オオトエイブルズ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】