説明

除振装置

【課題】サージングの発生防止と固有振動数の低減化の実現により、除振性能の向上が効果的に図られ得る除振装置を提供する。
【解決手段】発泡ポリウレタンエラストマからなるエラストマパッド11の厚さよりも大きな自由長を有する圧縮コイルスプリング20と、固有振動数がエラストマパッド11よりも低い値となる圧縮量で、圧縮コイルスプリング20を予圧縮すると共に、かかる予圧縮状態を維持する予圧縮手段16,18とを含んでなるスプリングユニット12を、エラストマパッド11に設けた収容孔14内に収容し、また、そのような収容下で、スプリングユニット12の支持面44が外部に露出し、且つ圧縮コイルスプリング20が、振動入力時に、収容孔14の内周面と接触するように、スプリングユニット12を配置して、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除振装置に係り、特に、除振又は制振されるべき機器とそれが設置されるベースとの間に介装されて、それらの間における振動の伝達を抑制乃至は阻止するようにした除振装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、精密な機器類を所定の設置テーブル等のベースに設置する場合には、床を通して伝達されてくる外来の振動が機器類に伝わらないように、機器類を、除振装置を介して、ベースに設置するようにした構造が、一般に採用されている。特に、精密な測定機器類や制御装置を始め、コンピュータや通信機器に用いられる電子デバイスの回路パターンを形成するIC露光機や、回路パターンを読み取る画像測定器等のように、1μm以下の精度が問題となる機器類においては、自励振動や外来の振動の影響を阻止する必要性が高く、そのために、床から機器類に伝えられる振動を減衰する除振装置の性能が、機器類の性能を左右する重要な要素となっている。
【0003】
ところで、そのような機器類とベースとの間に介装される除振装置には、各種の構造のものがあり、その中の一種として、例えば、特開平8−121532号公報(特許文献1)等に記載されるような圧縮コイルスプリングの弾性変形を利用して、除振乃至は防振作用を発揮するようにした除振装置(防振装置)が、広く知られている。このような除振装置においては、十分に低い固有振動数を有する圧縮コイルスプリングを用いることによって、除振効果のある周波数領域を広げることが可能となると共に、所定の周波数での振動伝達率を低下させることができ、以て、より優れた除振性能を確保することが可能となる。しかしながら、その一方で、圧縮コイルスプリングを用いた除振装置には、圧縮コイルスプリングに伝わる外力振動数が圧縮コイルスプリングの固有振動数以外の高い所定の周波数に近づくと振幅が増大する、所謂サージングが発生して、除振性能が低下するといった問題が内在していた。
【0004】
一方、特開2000−61973号公報(特許文献2)等には、主に、鉄道のレールと枕木との間に挿入される防振材等として利用される、発泡ポリウレタンエラストマからなるエラストマパッドが明らかにされている。このエラストマパッドは、サージングを生じないことで知られている。そこで、そのようなエラストマパッドを、機器類とベースとの間に介装される除振材として利用することが考えられ、近年において、実際に、一部で使用されている。ところが、エラストマパッドの固有振動数の低減化には限界がある。そのため、そのようなエラストマパッドでは、上記の如き精密な機器類に伝えられる振動を減衰する除振材等に適用するに際して、より優れた除振性能を得るべく、固有振動数を更に低下させることが難しかったのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−121532号公報
【特許文献2】特開2000−61973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、サージングの発生防止と固有振動数の低減化の実現により、除振性能の向上が効果的に図られ得る除振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明者は、上記した課題を解決するために種々検討を重ねた。その結果、発泡ポリウレタンエラストマからなるエラストマパッドを圧縮コイルスプリングのサージング防止材として利用することができ、また、そのようなエラストマパッドと圧縮コイルスプリングとを組み合わせることによって、エラストマパッドだけでは到底得られない低い固有振動数が得られることを見出したのである。
【0008】
すなわち、本発明は、上記の如き知見に基づいて更に鋭意研究を重ねた結果、完成されたものであって、その要旨とするところは、除振又は制振されるべき機器とそれが設置されるベースとの間に介装されて、それらの間における振動の伝達を抑制乃至は阻止するようにした除振装置であって、前記機器と前記ベースとの間に配されて、該機器からの荷重を弾性的に支持する、発泡ポリウレタンエラストマからなるエラストマパッドと、該エラストマパッドに対して、その厚さ方向に延びるように形成された少なくとも一つの収容孔内にそれぞれ収容された状態で、該機器と該ベースとの間に配されて、該機器からの荷重を該エラストマパッドと共に弾性的に支持するスプリングユニットとを有すると共に、該スプリングユニットが、前記収容孔内において前記機器と前記ベースとの間に延びるように配置された、前記エラストマパッドの厚さよりも大きな自由長を有する圧縮コイルスプリングと、該圧縮コイルスプリングを保持した状態で、該圧縮コイルスプリングの固有振動数を該エラストマパッドの固有振動数よりも低い値とする圧縮量において、該圧縮コイルスプリングを自由長から予圧縮せしめると共に、該圧縮コイルスプリングの該予圧縮状態からの更なる圧縮は許容するものの、該圧縮コイルスプリングの該予圧縮状態からの復元を阻止する予圧縮手段とを含んで構成され、そして、かかるスプリングユニットの前記圧縮コイルスプリングが、前記予圧縮手段にて予圧縮された状態で、該スプリングユニットが前記収容孔内に収容されていると共に、該スプリングユニットの該収容孔内への収容状態下で、該スプリングユニットにおける前記機器の支持面が、該収容孔における前記機器側の開口部から外部に露出し、且つ該圧縮コイルスプリングが、振動入力時に、該収容孔の内周面と接触し得るように配置されていることを特徴とする除振装置にある。
【0009】
なお、本発明の有利な態様の一つによれば、前記スプリングユニットにおける前記機器の支持面が、前記収容孔における前記機器側の開口部から外部に突出して、配置されることとなる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様の一つによれば、前記スプリングユニットの前記予圧縮手段が、(a)前記エラストマパッドの前記収容孔内に上下方向に延びるように収容された前記圧縮コイルスプリングの下側端面に係合した状態で、該収容孔内において、前記ベース上での下方への移動が不能に、且つ該収容孔の内周面に対する該圧縮コイルスプリングの接触を許容し得るように配置されて、該圧縮コイルスプリングを保持する保持部材と、(b)前記機器を支持する支持面を有し、且つ該圧縮コイルスプリングの上側端面に係合した状態で、該収容孔内において、該圧縮コイルスプリングの軸方向に移動し得るように配置されて、下方への移動により、該圧縮コイルスプリングを圧縮させる支持部材と、(c)該支持部材の下方への移動により、該圧縮コイルスプリングの固有振動数を前記エラストマパッドの固有振動数よりも低い値とする圧縮量において、該圧縮コイルスプリングを自由長から予圧縮せしめた該支持部材の移動位置において、該支持部材の下方への更なる移動は許容するものの、該圧縮コイルスプリングの予圧縮状態からの復元力に基づく該支持部材の移動が阻止されるように、該支持部材を前記保持部材に係止させる係止機構とを含んで構成される。
【0011】
さらに、本発明の望ましい態様の一つによれば、前記保持部材が、前記圧縮コイルスプリングの内側空間内に、該圧縮コイルスプリングの下側開口部から挿入された、軸方向に延びる第一の挿入部と、該第一の挿入部の下端部に設けられて、該圧縮コイルスプリングの下側端面に係合する第一の係合部とを有して構成される一方、前記支持部材が、該圧縮コイルスプリングの内側空間内に、該圧縮コイルスプリングの上側開口部から挿入されて、軸方向に移動可能とされた、軸方向に延びる第二の挿入部と、該第二の挿入部の上端部に設けられた、前記支持面を有する支持部、及び該圧縮コイルスプリングの上側端面に係合する第二の係合部とを有して構成され、更に、前記係止機構が、前記第一の挿入部に設けられた第一の係止部と、前記第二の挿入部に設けられた、該第一の係止部に係止可能な第二の係止部とからなり、且つ該支持部材が、前記圧縮コイルスプリングの固有振動数を前記エラストマパッドの固有振動数よりも低い値とする圧縮量において、該圧縮コイルスプリングを予圧縮させる位置まで移動したときに、該第二の係止部が該第一の係止部に係止することにより、該圧縮コイルスプリングを更に圧縮させる方向への該支持部材の移動が許容される一方、該圧縮コイルスプリングの予圧縮状態からの復元力に基づく該支持部材の移動が阻止されるように構成される。
【0012】
また、本発明の好適な態様の一つによれば、前記第一の挿入部と前記第二の挿入部のうちの何れか一方が、筒状体からなる一方、それらのうちの他方が、該筒状体の内孔内に挿入可能な軸体からなり、更に、該筒状体の内周面に、前記第一の係止部と前記第二の係止部のうちの何れか一方が形成される一方、該軸体の外周面に、それらのうちの何れか他方が形成される。
【発明の効果】
【0013】
すなわち、本発明に従う除振装置にあっては、エラストマパッドに設けられた少なくとも一つの収容孔内に、エラストマパッドよりも低い固有振動数を有する圧縮コイルスプリングがそれぞれ収容されている。これによって、除振装置全体としての固有振動数が、エラストマパッドのみからなる除振材の固有振動数よりも有利に低くされている。また、エラストマパッドと圧縮コイルスプリングの振動入力に伴う弾性変形時に、圧縮コイルスプリングが、エラストマパッドの収容孔の内周面と接触し、その接触抵抗によって、圧縮コイルスプリングでのサージングの発生が効果的に防止され得る。
【0014】
そして、本発明に係る除振装置においては、圧縮コイルスプリングが予圧縮手段にて所定の圧縮量だけ予圧縮されることによって、圧縮コイルスプリングの固有振動数が、エラストマパッドの固有振動数よりも低い値にチューニングされている。それ故、かかる本発明装置では、装置全体の固有振動数を変更する場合に、例えば、エラストマパッド又は圧縮コイルスプリングを、ばね定数が異なる、即ち、ばねの材質やコイルの線形、巻数等が異なる、全く別異の種類のもの等に何等変更することなく、圧縮コイルスプリングを、何等変更することなく、或いはばね定数が同じ同一種類のもので、自然長のみが異なるものに変更して、単に、圧縮コイルスプリングの予圧縮量を変更するだけで済む。これによって、装置全体の固有振動数、ひいては装置全体の除振性能の変更が、より簡単に且つより低コストに実現され得ることとなる。
【0015】
従って、かくの如き本発明に従う除振装置にあっては、サージングの発生防止と固有振動数の低減化とによる除振性能の向上が効果的に図られ得ると共に、そのような除振性能の向上が、極めて容易に且つ十分に低いコストで達成され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従う除振装置の一実施形態を示す斜視説明図である。
【図2】図1におけるII−II断面説明図である。
【図3】図1に示された除振装置を構成するスプリングユニットの保持部材の平面説明図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面説明図である。
【図5】図3におけるV−V断面説明図である。
【図6】図1に示された除振装置を構成するスプリングユニットの支持部材の平面説明図である。
【図7】図6におけるVII−VII断面説明図である。
【図8】図6におけるVIII−VIII断面説明図である。
【図9】図1に示された除振装置を構成するスプリングユニットの除振装置への組付前の状態を示す縦断面説明図である。
【図10】図1に示された除振装置を機器とベースとの間に介装させた状態を示す説明図である。
【図11】本発明に従う除振装置の振動周波数と振動伝達率との関係と、従来構造を有する除振装置の振動周波数と振動伝達率との関係とを、それぞれ示すグラフである。
【図12】本発明に従う除振装置の別の実施形態を示す図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0018】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う構造を有する除振装置の一実施形態が、その斜視形態と縦断面形態とにおいて、それぞれ示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態の除振装置10は、エラストマパッド11と複数(ここでは3個)のスプリングユニット12とを有している。
【0019】
より具体的には、エラストマパッド11は、発泡ポリウレタンエラストマにて構成されている。この発泡ポリウレタンエラストマの種類は、特に限定されるものではなく、除振材や防振材、制振材等として、一般的に用いられる各種のものの中から選択されたものが、適宜に用いられる。
【0020】
また、エラストマパッド11は、全体として、所定高さを有する横長矩形のブロック形状を呈し、その幅方向の中央部の長さ方向に一定の間隔を隔てた3箇所に、収容孔14が、それぞれ形成されている。それら3個の収容孔14,14,14は、エラストマパッド11を高さ(厚さ)方向に貫通する円形の貫通孔からなっている。そして、そのような3個の収容孔14,14,14内に、スプリングユニット12が、それぞれ1個ずつ、収容、配置されている。
【0021】
それら3個のスプリングユニット12,12,12は、何れも、樹脂成形体からなる保持部材16及び支持部材18と、エラストマパッド11の高さよりも自然長(図9にLで示される寸法)が大きな圧縮コイルスプリング20とからなる同一の構造を有している。
【0022】
図3乃至図5から明らかなように、保持部材16は、第一の挿入部としての筒部22と、第一の係合部としての外フランジ部24とを、一体的に有している。保持部材16の筒部22は、軸方向両側に開口する内孔26を備えた略円筒形状を呈し、圧縮コイルスプリング20の自然長の略半分程度の高さを有している(図9参照)。この筒部22の内孔26は、それの軸方向一方側の部分が第一内孔部分28とされている一方、軸方向他方側の部分が第二内孔部分30とされている。そして、そのような第一内孔部分28が、略真円状の軸直角断面形状を有し、それの外方への開口部が、円形の第一開口部29とされている。また、第二内孔部分30が、第一内孔部分28の径よりも小さな長軸長さを有する長円状の軸直角断面形状を有し、それの外方への開口部が、長円状の第二開口部31とされている。
【0023】
さらに、かかる筒部22においては、第二内孔部分30の第一内孔部分28側に位置する内周面部分のうちの短軸方向において互いに対向する二箇所に、第一の係止部としての係止凹部32が、それぞれ形成されている。それら各係止凹部32,32は、それぞれの底面が、係止面34,34とされている。また、そのような係止面34は、何れも、内孔26の第一開口部29側から第二開口部31側に向かって、内孔26の中心軸:Pに対して徐々に接近するように傾斜する傾斜面にて、構成されている。
【0024】
外フランジ部24は、筒部22の軸方向一方側の端部の外周面、つまり、筒部22における内孔26の第一開口部29側の端部の外周面に対して、径方向外方に所定高さで突出し且つ周方向に連続して延びるように一体形成されており、全体として、略厚肉の円環板形状を呈している。また、内孔26の第二開口部31側に位置する外フランジ部24の端面には、外フランジ部24の外周部をその内周部よりも薄肉とする円筒状段差面36が形成されている。そして、薄肉とされた外フランジ部24の外周部の第二開口部31側の端面が、円環面形状を呈するばね係合面38とされている。
【0025】
一方、支持部材18は、図6乃至図8に示されるように、支持部40と、第二の挿入部としての軸部42とを一体的に有している。支持部40は、大径で厚肉の円環板形状を有している。そして、この支持部40の厚さ方向一方側の面が、円形の平坦面からなる支持面44とされている。また、支持部40の支持面44側とは反対側の面には、支持部40の外周部を薄肉とする円筒状段差面46が形成されている。そして、薄肉とされた支持部40の外周部の支持面44側とは反対側面部分が、円環面形状を呈する、第二の係合部としてのばね係合面48とされている。
【0026】
軸部42は、細長い円柱形状を呈し、前記保持部材16の筒部22の第二内孔部分30の延出長さよりも十分に大きく、且つ圧縮コイルスプリング20の自然長の略半分程度とされた軸方向長さと、かかる第二内孔部分30の短軸長さ(図4にTで示される寸法)よりも小さな外径とを有している(図2及び図9参照)。そして、この軸部42は、支持部40の支持面44側とは反対側の面の中心部に対して、一体的に突設されているのである。
【0027】
また、軸部42の支持部40からの突出先端部には、第二の係止部たる2個の係止突起50,50が、軸部42の径方向両側に突出するように一体形成されている。それら各係止突起50,50は、軸部42の径と同一の幅寸法を有し、且つ軸部42からの突出高さが互いに同一とされた略矩形板状の小片からなっている。そして、ここでは、そのような2個の係止突起50,50のうちの一方のものの突出先端から他方のものの突出先端までの寸法(図7にKで示される寸法)が、前記保持部材16の筒部22における第一内孔部分28の径(図4にDで示される寸法)よりも小さな寸法とされているものの、第二内孔部分30の短軸長さよりも大きな寸法とされている。これにより、後述するように、係止突起50,50が設けられた軸部42の先端部を、保持部材16の筒部22の第二内孔部分30内に挿入する際に、軸部42の周方向の向きが、各係止突起50,50を第二内孔部分30の長軸方向に突出させる向きとされた状態でしか、軸部42の先端部が、第二内孔部分30内に挿入され得ないようになっている。
【0028】
また、そのような2個の係止突起50,50にあっては、それぞれの突出先端面が、係止面52,52とされている。それらの係止面52,52は、何れも、軸部42の先端側から基部側に向かって、軸部42の軸心:Qに対して徐々に接近するように傾斜する傾斜面にて、構成されている。また、各係止面52,52の傾斜角度は、保持部材16の筒部22の第二内孔部分30の内周面に設けられた前記係止凹部32,32の各係止面34,34の傾斜角度と同一の大きさとされている。即ち、ここでは、軸部42の各係止突起50,50のそれぞれの係止面52,52が、保持部材16の筒部22に設けられた各係止凹部32,32のそれぞれの係止面34,34と対応した傾斜面形態を有しているのである。
【0029】
そして、図9に示されるように、上記の如き構造とされた保持部材16の筒部22が、内孔26の第一開口部29を下方に向かって開口させた向きで、圧縮コイルスプリング20の下側開口部から、圧縮コイルスプリング20の内側空間の下側略半分の部分内に同軸的に挿入されている。そのような状態下で、圧縮コイルスプリング20の下端部が、その内周面において、保持部材16の外フランジ部24の円筒状段差面36に外嵌し、且つその下端面において、外フランジ部24のばね係合面38に係合している。
【0030】
一方、支持部材18の軸部42は、支持面44を上側とした向きで、圧縮コイルスプリング20の上側開口部から、圧縮コイルスプリング20の内側空間の上側略半分の部分内に同軸的に挿入されている。そのような状態下で、圧縮コイルスプリング20の上端部が、その内周面において、支持部材18の円筒状段差面46に外嵌し、且つその上端面において、支持部材18のばね係合面48に係合している。また、圧縮コイルスプリング20内に挿入された軸部42の先端部が、保持部材16の筒部22の第二内孔部分30内に、第二開口部31を通じて同軸的に挿入されている。なお、このような軸部42の先端部の第二内孔部分30内への挿入状態下(圧縮コイルスプリング20の圧縮前の状態下)では、支持部材18の周方向の向きが、軸部42の先端部に設けられた2個の係止突起50,50を、横断面長円形状とされた第二内孔部分30の長軸方向に突出させる向きとされている。
【0031】
かくして、圧縮コイルスプリング20が保持部材16にて保持され、また、保持部材16と支持部材18とが、筒部22と軸部42とを同軸的に位置させた状態で、圧縮コイルスプリング20を介して相互に組み付けられている。これによって、スプリングユニット12が、保持部材16と支持部材18と圧縮コイルスプリング20の一体組付品として構成されているのである。
【0032】
そして、このスプリングユニット12においては、支持部材18と保持部材16との相対変位によって、圧縮コイルスプリング20が予圧縮されるようになっており、また、圧縮コイルスプリング20の予圧縮状態下で、支持部材18に設けられた係止突起50,50と保持部材16に設けられた係止凹部32,32とを互いに係止させることにより、かかる圧縮コイルスプリングの予圧縮状態が維持されるようになっている。
【0033】
すなわち、図9に二点鎖線で示される如く、支持部材18の支持部40を保持部材16の外フランジ部24に接近させるように、支持部材18を押し下げて、支持部材18の軸部42の先端部を、保持部材16の筒部22の第二内孔部分30側から第一内孔部分28側に向かって移動させることにより、圧縮コイルスプリング20が自然長から予圧縮されるようになっている。また、係止突起50,50が設けられた軸部42の先端部が第二内孔部分30内から第一内孔部分28内に突入する位置まで、支持部材18を押し下げた状態で、支持部材18を90度だけ回転させて、支持部材18の周方向の向きを、係止突起50,50が第二内孔部分30の短軸方向に突出する向きとしてから、支持部材18に対する押し下げ力を解消することによって、図2に示されるように、支持部材18の軸部42の先端部に設けられた係止突起50,50が、保持部材16の筒部22の第二内孔部分30の内周面に設けられた係止凹部32,32内に嵌入して、係止突起50,50の係止面52,52と係止凹部32,32の係止面34,34とが、互いに係止させられるようになっている。このような係止突起50,50と係止凹部32,32との係止状態では、支持部材18の下方への移動は許容されるものの、それの上方への移動が阻止されるようになる。
【0034】
これによって、圧縮コイルスプリング20の予圧縮状態からの更なる圧縮は許容されるものの、かかる予圧縮状態からの圧縮コイルスプリング20の復元が阻止されるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、支持部材18の係止突起50,50と保持部材16の係止凹部32,32とにて、係止機構が構成されている。また、そのような係止機構と支持部材18と保持部材16とによって、予圧縮手段が構成されているのである。
【0035】
そして、図2に示されるように、本実施形態の除振装置10においては、支持部材18の係止突起50,50と保持部材16の係止凹部32,32との係止により、圧縮コイルスプリング20の予圧縮が維持乃至は保持された状態で、スプリングユニット12が、エラストマパッド11の収容孔14内に収容されている。また、そのようなスプリングユニット12の収容孔14内への収容下において、支持部材18と保持部材16とが、上側と下側とにそれぞれ位置するように配置されている。更に、スプリングユニット12が収容孔14内に収容されて、保持部材16の筒部22における第一開口部29側の端面が、エラストマパッド11の下面と面一となる位置に配置された状態下において、支持部材18の支持部40における支持面44を含む厚さ方向一方側の部分が、収容孔14の上側開口部から上方に突出している。これによって、支持面44が、収容孔14の上側開口部から外部に露出して、配置されている。
【0036】
ところで、公知の如く、圧縮コイルスプリングの固有振動数fは、その静撓み(圧縮量)を基に、下記の式によって求められる。
【0037】
【数1】

【0038】
すなわち、圧縮コイルスプリングの固有振動数fは、その圧縮量が大きい程、低い値となる。従って、本実施形態の除振装置10では、それを利用して、スプリングユニット12の圧縮コイルスプリング20の固有振動数がエラストマパッド11の固有振動数よりも低い値となるように、支持部材18と保持部材16との係止により維持される圧縮コイルスプリング20の予圧縮量が設定されている。そうして、除振装置10全体の固有振動数が、圧縮コイルスプリング20の固有振動数よりは、多少、高くなるものの、エラストマパッド11の固有振動数よりも効果的に低くされているのである。
【0039】
そして、かくの如き構造とされた本実施形態の除振装置10にあっては、例えば、図10に示されるように、設置テーブル等のベース54と、それに載置される各種の精密機器56との間に介装された状態で使用される。
【0040】
すなわち、除振装置10を使用する際には、エラストマパッド11が、ベース54の上面上に載置されると共に、エラストマパッド11の各収容孔14内にそれぞれ収容されたスプリングユニット12の保持部材16の筒部22が、第一開口部29側の端面において、ベース54の上面上に載置されるように、除振装置10の全体が、ベース54上に載置される。これによって、保持部材16、ひいてはスプリングユニット12全体の下方への移動が阻止されている。そして、精密機器56が、エラストマパッド11の上面と各スプリングユニット12の支持部材18の支持面44の両方にて支持されるように、ベース54上の防振装置10に載置される。かくして、精密機器56からの荷重が、各スプリングユニット12とエラストマパッド11とにて、弾性的に支持されるようになっているのである。
【0041】
なお、前述したように、スプリングユニット12は、支持部材18の支持面44を、エラストマパッド11の収容孔14の上側開口部から上方に突出させて、外部に露出させた状態で、収容孔14内に収容されている。それ故、例えば、支持部材18の支持面44が、収容孔14の内部に配置される場合とは異なって、たとえ精密機器56の重量が小さくとも、除振装置10に載置された精密機器56が、エラストマパッド11の上面よりも先に支持部材18の支持面44に接触して、載置されるようになる。これによって、除振装置10では、精密機器56の重量に拘わらず、精密機器56からの荷重が、各スプリングユニット12にて確実に弾性支持されるようになっている。
【0042】
また、精密機器56からの荷重が各スプリングユニット12とエラストマパッド11とにて弾性支持されたときには、各スプリングユニット12の圧縮コイルスプリング20が予圧縮状態から更に圧縮させられると共に、エラストマパッド11も圧縮変形する。そして、そのようなエラストマパッド11の圧縮変形により、各収容孔14の内周面が、収容孔14の内側に膨出させられ、以て、膨出した各収容孔14の内周面が、各収容孔14内に収容されるスプリングユニット12の圧縮コイルスプリング20に接触するようになる。
【0043】
かくして、除振装置10による精密機器56の支持状態下において、例えば、図示しない床等から、極微細な振幅の振動荷重がベース54に入力されると、かかる振動荷重が、除振装置10のエラストマパッド11と各スプリングユニット12の圧縮コイルスプリング20の弾性変形作用によって吸収されるようになっている。
【0044】
そして、除振装置10においては、各スプリングユニット12を構成する圧縮コイルスプリング20の固有振動数が、エラストマパッド11の固有振動数よりも低くされて、除振装置10全体での固有振動数が、エラストマパッド11よりも低く設定されている。これによって、エラストマパッド11のみからなる除振材等に比して、除振効果のある周波数領域が有利に広げられて、より優れた除振性能が発揮され得る。
【0045】
従って、このような本実施形態の除振装置10にあっては、床を通して伝達されてくる外来の振動荷重の精密機器56への伝達が、より広い周波数域に亘って、極めて効果的に防止され得るのである。
【0046】
また、かかる除振装置10では、上記したように、たとえ精密機器56の重量が小さくとも、精密機器56からの荷重が、各スプリングユニット12にて確実に弾性支持されるため、床等からの振動荷重が、少なくとも、固有振動数の低い圧縮コイルスプリング20の弾性変形作用によって有利に吸収され得る。それ故、除振乃至は制振されるべき精密機器56からの荷重の大きさに拘わらず、優れた除振効果が、極めて有効に発揮され得るのである。
【0047】
そして、本実施形態の除振装置10においては、精密機器56を弾性支持した状態下で、エラストマパッド11の各収容孔14の内周面が、各スプリングユニット12の圧縮コイルスプリング20と接触している。それ故、除振装置10への振動入力に伴う圧縮コイルスプリング20の弾性変形時に、圧縮コイルスプリング20と各収容孔14の内周面との間で生ずる接触抵抗によって、圧縮コイルスプリング20のサージングの発生が効果的に抑制乃至は阻止され得る。その結果、そのようなサージングの発生に起因した除振性能の低下が未然に防止されて、更に優れた除振効果が有効に確保され得るのである。
【0048】
また、かかる除振装置10にあっては、その固有振動数が、各スプリングユニット12の圧縮コイルスプリング20の予圧縮量に基づいて設定されている。それ故、除振装置10の固有振動数を変更する場合には、エラストマパッド11や圧縮コイルスプリング20を、ばね定数が異なる、全く別異の種類のもの等に何等変更することなく、圧縮コイルスプリング20を、何等変更することなく、或いは単に、自然長のみが異なるものに変更して、圧縮コイルスプリング20の予圧縮量を変更するだけで済む。これによって、除振装置10全体の固有振動数、ひいては除振装置10の除振性能の変更が、より簡単に且つより低コストに実現され得るのである。
【0049】
ここにおいて、本実施形態の除振装置10が上記の如き優れた特徴を発揮するものであることを確認するために本発明者によって実施された試験について、以下に詳述する。
【0050】
すなわち、先ず、エラストマパッドとして、市販の発泡ポリウレタンエラストマパッド[商品名:シロマー、ゲッツナー(株)製]を準備した。また、市販の圧縮コイルスプリングを用いて、図9に示される如き構造を有するスプリングユニットを3個作製した。そして、図1及び図2に示されるように、準備されたエラストマパッドに3個の収容孔を設けて、それら3個の収容孔内に、作製したスプリングユニットをそれぞれ収容して、除振装置を作製した。かくして作製した除振装置を供試品1とした。また、比較のために、実施例1の作製に使用されたエラストマパッドと同じエラストマパッドを、何等の加工もしない状態で用いた。これを供試品2とした。
【0051】
次いで、上記のようにして得られた供試品1及び2の2種類の除振装置を用いて、それら各除振装置の振動周波数と振動伝達率との関係を、公知の手法によって求めた。その結果を図11に併せて示した。
【0052】
図11のグラフから明らかなように、本発明に従う構造を有する供試品1の除振装置の共振周波数(固有振動数)が、エラストマパッドのみからなる従来構造を備えた供試品2の除振装置の共振周波数(固有振動数)に比して、明らかに低い値となっている。そして、振動伝達率が0以下となる振動周波数の最低値も、供試品1の除振装置の方が供試品2の除振装置よりも低い値となっている。これによって、本発明に従う構造を有する除振装置が、エラストマパッドのみからなる従来構造を有する除振装置よりも、優れた除振性能を有していることが、明確に認識できるのである。
【0053】
次に、図12には、前記第一の実施形態とはスプリングユニットの構造が異なる別の実施形態が示されている。なお、本実施形態の除振装置57に関しては、前記実施形態の除振装置10と同様な構造とされた部材及び部位について、図2と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図12に示されるように、本実施形態の除振装置57が有するスプリングユニット62は、上方に向かって開口する片側有底筒状の保持部材58と、下方に向かって開口する片側有底筒状の支持部材60と、圧縮コイルスプリング20とを含んで構成されている。
【0055】
より詳細には、圧縮コイルスプリング20は、保持部材58や支持部材60、更にはエラストマパッド11のそれぞれの高さよりも長い自然長と、保持部材58と支持部材60のそれぞれの外径よりも大きな内径とを有している。
【0056】
保持部材58は、第一の挿入部としての筒部64と、この筒部64の下側開口部を閉塞する下側底部66とを一体的に有している。そして、筒部64の軸方向中間部の内周面には、三角形状の縦断面形状を呈し、上方(開口側)に向かって徐々に大径化するテーパ状の摺動面68を備えた内側係止爪70が、一体的に周設されている。また、下側底部66の外周面には、第一の係合部としての外フランジ部24が一体形成され、かかる外フランジ部24には、円筒状段差面36とばね係合面38とが設けられている。
【0057】
支持部材60は、圧縮コイルスプリング20よりも小径で且つ保持部材58よりも小径の外径を備えた、第二の挿入部としての可撓性の筒部74と、この筒部74の上側開口部を閉塞する、支持部としての上側底部76とを有している。そして、筒部74の周上の複数箇所には、軸方向に延びるスリット78がそれぞれ設けられている。これによって、筒部74が、径方向内側に撓み変形可能とされている。また、筒部74の下端部の外周面には、三角形状の縦断面形状を呈し、保持部材58の筒部64に設けられた内側係止爪70の摺動面68のテーパ形状とは逆テーパ形状となる摺動面80を備えた外側係止爪82が、一体的に周設されている。更に、上側底部76の外周面には、第二の係合部としての外フランジ部24が一体形成され、この外フランジ部24には、円筒状段差面46とばね係合面48とが設けられている。また、かかる上側底部76の上面が、平坦な支持面84とされている。
【0058】
そして、保持部材58の筒部64が、圧縮コイルスプリング20の内側空間内に、その下側開口部から同軸的に挿入されている。また、そのような挿入下で、圧縮コイルスプリング20の下端部が、保持部材58の下側底部66の円筒状段差面36に外嵌されていると共に、かかる下側底部66のばね係合面38に係合されている。
【0059】
一方、支持部材60の筒部74は、圧縮コイルスプリング20の内側空間内に、その上側開口部から同軸的に挿入されて、下端部が、保持部材58の筒部64の内孔内に挿入配置されている。また、そのような状態下で、圧縮コイルスプリング20の上端部が、支持部材60の上側底部76の円筒状段差面46に外嵌されていると共に、かかる上側底部76のばね係合面48に係合されている。
【0060】
これにより、圧縮コイルスプリング20が、保持部材58の下側底部66と支持部材60の上側底部76とにて保持されており、以て、保持部材58と支持部材60とが、圧縮コイルスプリング20を介して組み付けられている。かくして、スプリングユニット62が、保持部材58と支持部材60と圧縮コイルスプリング20との一体組付品として構成されているのである。
【0061】
そして、そのようなスプリングユニット62にあっては、図12に二点鎖線で示されるように、圧縮コイルスプリング20が自然長のままで、圧縮されていない状態から、図12に実線で示されるように、支持部材60が下方に押し下げられることにより、圧縮コイルスプリング20が所定量だけ圧縮させられると共に、支持部材60の筒部74が、保持部材58の筒部64内を下方に移動させられて、支持部材60の筒部74に設けられた外側係止爪82が、保持部材58の筒部64に設けられた内側係止爪70に係止されるようになっている。なお、ここでは、支持部材60の筒部74が内側に撓み変形可能とされていると共に、外側係止爪82と内側係止爪70とに対して、互いに対応するテーパ状の摺動面80,68がそれぞれ設けられている。このため、支持部材60の筒部74を押し下げるだけのワンタッチの操作で、外側係止爪82と内側係止爪70との係止が実現されるようになっている。
【0062】
かくして、外側係止爪82と内側係止爪70とが互いに係止されることにより、圧縮コイルスプリング20が所定の圧縮量において予圧縮されると共に、そのような予圧縮状態からの更なる圧縮は許容されるものの、予圧縮状態からの復元が阻止されて、予圧縮状態が維持されるようになっている。また、この圧縮コイルスプリング20の予圧縮量が、圧縮コイルスプリング20の固有振動数を、スプリングユニット62と組み合わされるエラストマパッド11の固有振動数よりも低く為す大きさとされている。これらのことから明らかなように、本実施形態では、外側係止爪82と内側係止爪70とにて、係止機構が構成されており、また、それら外側及び内側係止爪82,70と支持部材60と保持部材58とにて、予圧縮手段が構成されている。
【0063】
そして、かくの如き構造とされたスプリングユニット62が、エラストマパッド11に設けられた収容孔14内に、支持面84を、収容孔14の上側開口部から突出させて、外部に露呈させた状態で収容されている。これにより、除振装置57が、スプリングユニット62とエラストマパッド11との組合せ体として構成されているのである。なお、ここでは、スプリングユニット62とエラストマパッド11とに対して、図示しない精密機器が載置されて、かかる精密機器からの荷重が入力された際に、スプリングユニット62の圧縮コイルスプリング20が、エラストマパッド11の収容孔14の内周面と接触するようになっている。
【0064】
このように、本実施形態の除振装置57にあっては、スプリングユニット62を構成する圧縮コイルスプリング20が予圧縮されていることで、その固有振動数が、エラストマパッド11の固有振動数よりも低くされて、除振装置57全体での固有振動数が、エラストマパッド11よりも低く設定されている。これによって、エラストマパッド11のみからなる除振材等に比して、除振効果のある周波数領域が有利に広げられて、より優れた除振性能が発揮され得るようになっている。また、圧縮コイルスプリング20が、振動入力時に、エラストマパッド11の収容孔14の内周面と接触することで、圧縮コイルスプリング20のサージングの発生が効果的に防止され得るようになっている。
【0065】
従って、かくの如き本実施形態の除振装置57にあっても、前記第一の実施形態に係る除振装置10と同様に、床を通して伝達されてくる外来の振動荷重の精密機器56への伝達が、より広い周波数域に亘って、極めて効果的に防止され得るのである。また、除振装置57全体の固有振動数が、より容易に且つ低コストにチューニングされ得るのである。
【0066】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0067】
例えば、エラストマパッド11と組み合わされるスプリングユニット12,62の個数は、何等限定されるものではなく、エラストマパッド11の大きさや、除振装置10,57に要求される固有振動数の大きさ等に応じて、適宜に変更され得るものである。
【0068】
また、スプリングユニット12,62の具体的構造も、前記第一及び第二の実施形態に示されるものに、特に限定されるものではない。例えば、前記第一及び第二の実施形態における各スプリングユニット12,62を収容孔14内に、上下反転させて配置して、それら各スプリングユニット12,62の保持部材16,58を支持部材として構成すると共に、支持部材18,60を保持部材として構成することも出来る。
【0069】
さらに、保持部材の第一の挿入部と支持部材の第二の挿入部とを、それぞれ軸状部材にて構成しても、何等差し支えない。その場合には、それら軸状部材からなる第一及び第二の挿入部の各外周面に対して、第一の係止部と第二の係止部とが、それぞれ形成されることとなる。
【0070】
更にまた、エラストマパッド11に形成される収容孔14は、スプリングユニット12,62を収容可能であれば、必ずしも、エラストマパッド11を厚さ方向に貫通していなくとも良い。
【0071】
また、スプリングユニット12の圧縮コイルスプリング20は、少なくとも、振動入力による弾性変形時に、収容孔14の内周面に接触するようになっておれば良い。従って、振動が入力される前で、スプリングユニット12が収容孔14内に収容された時点で、圧縮コイルスプリング20が、収容孔14の内周面に接触するようになっていても良い。また、スプリングユニット12が収容孔14内に収容された時点では、圧縮コイルスプリング20が、収容孔14の内周面に接触しておらず、振動入力によって初めて接触するようになっていても、何等差し支えない。
【0072】
加えて、前記実施形態では、本発明を、精密機器とベースとの間に介装されて、使用される除振装置に適用した具体例が示されていたが、本発明は、精密機器以外の各種の機器とベースとの間に介装されて、使用される除振装置に対しても有利に適用され得ることは、勿論である。
【0073】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0074】
10,57 除振装置 11 エラストマパッド
12,62 スプリングユニット 14 収容孔
16,58 保持部材 18,60 支持部材
20 圧縮コイルスプリング 22,64,74 筒部
24 外フランジ部 32 係止凹部
38,48 ばね係合面 40 支持部
42 軸部 44,84 支持面
50 係止突起 54 ベース
56 機器 66 下側底部
70 内側係止爪 76 上側底部
82 外側係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除振又は制振されるべき機器とそれが設置されるベースとの間に介装されて、それらの間における振動の伝達を抑制乃至は阻止するようにした除振装置であって、
前記機器と前記ベースとの間に配されて、該機器からの荷重を弾性的に支持する、発泡ポリウレタンエラストマからなるエラストマパッドと、該エラストマパッドに対して、その厚さ方向に延びるように形成された少なくとも一つの収容孔内にそれぞれ収容された状態で、該機器と該ベースとの間に配されて、該機器からの荷重を該エラストマパッドと共に弾性的に支持するスプリングユニットとを有すると共に、
該スプリングユニットが、前記収容孔内において前記機器と前記ベースとの間に延びるように配置された、前記エラストマパッドの厚さよりも大きな自由長を有する圧縮コイルスプリングと、該圧縮コイルスプリングを保持した状態で、該圧縮コイルスプリングの固有振動数を該エラストマパッドの固有振動数よりも低い値とする圧縮量において、該圧縮コイルスプリングを自由長から予圧縮せしめると共に、該圧縮コイルスプリングの該予圧縮状態からの更なる圧縮は許容するものの、該圧縮コイルスプリングの該予圧縮状態からの復元を阻止する予圧縮手段とを含んで構成され、
そして、かかるスプリングユニットの前記圧縮コイルスプリングが、前記予圧縮手段にて予圧縮された状態で、該スプリングユニットが前記収容孔内に収容されていると共に、該スプリングユニットの該収容孔内への収容状態下で、該スプリングユニットにおける前記機器の支持面が、該収容孔における前記機器側の開口部から外部に露出し、且つ該圧縮コイルスプリングが、振動入力時に、該収容孔の内周面と接触し得るように配置されていることを特徴とする除振装置。
【請求項2】
前記スプリングユニットにおける前記機器の支持面が、前記収容孔における前記機器側の開口部から外部に突出して、配置されている請求項1に記載の除振装置。
【請求項3】
前記スプリングユニットの前記予圧縮手段が、(a)前記エラストマパッドの前記収容孔内に上下方向に延びるように収容された前記圧縮コイルスプリングの下側端面に係合した状態で、該収容孔内において、前記ベース上での下方への移動が不能に、且つ該収容孔の内周面に対する該圧縮コイルスプリングの接触を許容し得るように配置されて、該圧縮コイルスプリングを保持する保持部材と、(b)前記機器を支持する支持面を有し、且つ該圧縮コイルスプリングの上側端面に係合した状態で、該収容孔内において、該圧縮コイルスプリングの軸方向に移動し得るように配置されて、下方への移動により、該圧縮コイルスプリングを圧縮させる支持部材と、(c)該支持部材の下方への移動により、該圧縮コイルスプリングの固有振動数を前記エラストマパッドの固有振動数よりも低い値とする圧縮量において、該圧縮コイルスプリングを自由長から予圧縮せしめた該支持部材の移動位置において、該支持部材の下方への更なる移動は許容するものの、該圧縮コイルスプリングの予圧縮状態からの復元力に基づく該支持部材の移動が阻止されるように、該支持部材を前記保持部材に係止させる係止機構とを含んで構成されている請求項1又は請求項2に記載の除振装置。
【請求項4】
前記保持部材が、前記圧縮コイルスプリングの内側空間内に、該圧縮コイルスプリングの下側開口部から挿入された、軸方向に延びる第一の挿入部と、該第一の挿入部の下端部に設けられて、該圧縮コイルスプリングの下側端面に係合する第一の係合部とを有して構成される一方、前記支持部材が、該圧縮コイルスプリングの内側空間内に、該圧縮コイルスプリングの上側開口部から挿入されて、軸方向に移動可能とされた、軸方向に延びる第二の挿入部と、該第二の挿入部の上端部に設けられた、前記支持面を有する支持部、及び該圧縮コイルスプリングの上側端面に係合する第二の係合部とを有して構成され、更に、前記係止機構が、前記第一の挿入部に設けられた第一の係止部と、前記第二の挿入部に設けられた、該第一の係止部に係止可能な第二の係止部とからなり、且つ該支持部材が、前記圧縮コイルスプリングの固有振動数を前記エラストマパッドの固有振動数よりも低い値とする圧縮量において、該圧縮コイルスプリングを予圧縮させる位置まで移動したときに、該第二の係止部が該第一の係止部に係止することにより、該圧縮コイルスプリングを更に圧縮させる方向への該支持部材の移動が許容される一方、該圧縮コイルスプリングの予圧縮状態からの復元力に基づく該支持部材の移動が阻止されるようになっている請求項3に記載の除振装置。
【請求項5】
前記第一の挿入部と前記第二の挿入部のうちの何れか一方が、筒状体からなる一方、それらのうちの他方が、該筒状体の内孔内に挿入可能な軸体からなり、更に、該筒状体の内周面に、前記第一の係止部と前記第二の係止部のうちの何れか一方が形成されている一方、該軸体の外周面に、それらのうちの何れか他方が形成されている請求項4に記載の除振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−247313(P2011−247313A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119268(P2010−119268)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(592063401)株式会社ナベヤ (28)
【Fターム(参考)】