説明

除湿剤容器

【課題】落下などの衝撃が容器本体の側壁部に伝わるようなことがあってもその側壁部の撓みが生じないようにし、側壁部と中皿との間に顆粒状除湿剤が噛み込まれないようにする。
【解決手段】除湿剤容器1の中皿3の外側辺の内、相対向する少なくとも一組の外側辺13,14それぞれに、対応する側壁部7,8の幅方向に亘って接して、且つ外方に向けて凸となる張り出し部15を一体に設けて、張り出し部15との接触により外方に向けて押し出された側壁部7,8の膨出部16を、対向配置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化カルシウムなどの吸湿により潮解する除湿剤を収容して湿気取り製品とするために用いる除湿剤容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から一般家庭で利用できる取り扱い容易な湿気取り製品においては、吸湿性のある薬剤を除湿剤としているものが流通していて、多くは塩化カルシウムなどの顆粒状除湿剤を除湿剤容器に収容し、その除湿剤容器の上面の開放部分を通気性があって液体の透過を不能とするシートで覆った形態をとっている。
【0003】
また、除湿剤として、上記塩化カルシウムのように吸湿により潮解する潮解性のある薬剤が採用されていて、吸湿効率を向上させるために除湿剤を上面の開放部分に近い上部に収納し、使用中に生じる潮解液を下部に収容する除湿剤容器が提案されている。従来の製品にあっては、特許文献1などに示されているように、上面が開放された合成樹脂製の容器本体の内空間において、複数の透孔が開口している合成樹脂製の中皿を、前記容器本体底面部から離れた状態にして位置させていて、上方空間を除湿剤を乗せ置く空間とするとともに、中皿より下の下方空間を除湿剤から生じて中皿の透孔を通過して垂れ落ちる潮解液を溜め受ける空間としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3042828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1にて示されている湿気取り製品の除湿剤容器では、中皿の周辺部を立ち上げてその上周辺部を容器本体の上周辺部側に掛け止めて支持する構成が示されているが、その中皿を成形する樹脂量が多く必要となることから、一般的には、容器本体の底面部側から容器本体の側壁部に沿って立ち上がるリブを一体に設けたり、側壁部に容器本体内に向けて凸となるような段部を形成し、リブの上端や段部の上端に中皿を乗せ置くようにしている。そして、中皿にあっては、中央の突起部を除いた部分が板状とされ、外周辺部にあっては中皿が乗せ置かれた高さ位置で、容器本体の周方向に亘って側壁部の内面に接するようにしていた。
【0006】
ところで、合成樹脂材からなる各種製品が多く流通して使用されているのが現状である。そして、使い捨てとなり易い製品に採用される合成樹脂成形品に対しては、その使用後の廃棄物の増加が自然環境や人の生活環境に悪影響を及ぼす点について懸念されるようになってきており、昨今では成形時に使用する合成樹脂の量を削減することが求められるようになってきている。
【0007】
上述の湿気取り製品についても、除湿剤が無くなると廃棄物として処理しなければならないため、除湿剤容器の樹脂量を削減することが求められている。この点、従来の除湿剤容器が射出成形品であり、容器本体に関してその成形樹脂量を削減することが検討されてきたが、射出成形の方法では容器本体の薄肉化に限界があり、樹脂量の削減が進まないという事情があった。
【0008】
そのため、検討を重ねてきた結果、容器本体を、熱可塑性樹脂シートを真空成形、圧空成形などの手法を用いてなるシート成形品とすることが、除湿剤容器全体での樹脂量を大きく削減する上で有利であることが分かってきた。そして、容器本体自体を、底面部を略四角形とし、その周辺部から四方配置となる側壁部が立ち上がって上面が開放されている基本形状とし、上記中皿については、相対向する配置となる一組の側壁部に容器本体の内方に向けた段部を形成し、その段部の上端に中皿の外周辺を乗せるようにすればよく、中皿の外周形状を容器本体の内空間の平断面形状に対応した略四角形として、外周辺それぞれを対応する側壁部の内面に接しさせるようにすることで、中皿を容器本体に安定的に取り付けられる除湿剤容器となる。
【0009】
上記容器本体を、樹脂量の削減という目的に合致した樹脂量の熱可塑性樹脂シートから成形した場合、成形過程で側壁部となる部分は引き伸ばされる度合いが高くなって薄肉となる。そのため、この側壁部の部分については高い剛性が確保し難く、射出成形品の場合のものと比べると小さく、その側壁部が撓み易いものとなる。そして、シート成形品であるこの容器本体を用いて湿気取り製品の除湿剤容器を構成した際に、次の点が問題視されるようになってきた。
【0010】
即ち、除湿剤容器に顆粒状除湿剤を収容して通気シートで容器本体の上面を閉じた以降の製造過程や流通過程でこの湿気取り製品が落下して床面に当たるなどした場合に、側壁部が衝撃で弾性変形し、中皿の外周辺部と側壁部との間が瞬間的に開いて顆粒状除湿剤を噛み込むことがあり、一旦、除湿剤の噛み込みが生じると、その噛み込みで変形した側壁部が元に戻ろうとする力で前記除湿剤を中皿側に押え付け続けてしまい、噛み込みが解消できなくなる。
【0011】
そのため、上記除湿剤を噛み込んだ部分で側壁部が外方に向けて尖頭状に凸となってしまう。例えば、製造過程において、商品説明などを記載したラベルを容器本体の外周面に貼り付ける工程で、噛み込みにより側壁部の一部分が点状の凸部となっていると前記ラベルが適正に貼り付けることができないという問題が生じる。また、一般店舗での陳列時に噛み込みが生じていると、商品を外方から見たときに側壁部で尖頭状となって目立ってしまい、商品外観を著しく損なってしまうという問題がある。さらに、噛み込みによりできた隙間から中皿上部の除湿剤が容器下部に落下してしまい、除湿剤が大量に落下してしまうと吸湿効率が悪化してしまうといった問題も生じてしまう。
【0012】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、落下などの衝撃が容器本体の側壁部に伝わるようなことがあってもその側壁部の撓みが生じないようにすることを課題として、側壁部と中皿との間に顆粒状除湿剤が噛み込まれないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、略四角形の底面部の周辺から立ち上げられて四方配置となる側壁部を有して上面が開放されているシート成形品の容器本体と、前記容器本体の内部に配置されて容器本体の内空間を、顆粒状除湿剤を収容する上方空間と潮解液を溜め受ける下方空間とに区切る中皿とからなる除湿剤容器において、
前記中皿の外周形状は、該中皿の外側辺それぞれが容器本体の側壁部の内面に接する略四角形状とされていて、前記外側辺の内の相対向する少なくとも一組の外側辺それぞれには、対応する側壁部の幅方向に亘って接して、且つ外方に向けて凸となる張り出し部が一体に設けられ、前記張り出し部との接触により外方に向けて押し出されてなる側壁部の膨出部が、対向配置されていることを特徴とする除湿剤容器を提供して、上記課題を解消するものである。
そして、本発明において、上記張り出し部は円弧状とすることが良好である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器本体の内包側から中皿の張り出し部で押し出されているので、側壁部に予め張りが生じた状態となって撓み難くなり、よって、除湿剤容器を落下させたような衝撃が側壁部に伝わったとしても側壁部と中皿の張り出し部とが離れずに除湿剤の噛み込みを確実に防止できるようになる。
【0015】
そして、張り出し部が円弧状となるようにすれば、容器本体への中皿の挿入配置するに際して初期時に張り出し部の外方への最先端部分が最初に側壁部の内面に点接触するため、中皿の押し込み配置に抵抗が少なくなる。よって、機械を利用した中皿の容器本体への自動取付も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る除湿剤容器の一例における容器本体を示すもので、上方から見た状態を示す説明図である。
【図2】同じく容器本体を広幅の側壁部側から見た状態で示す説明図である。
【図3】同じく容器本体を狭幅の側壁部側から見た状態で示す説明図である。
【図4】一例における中皿を示すもので、上方から見た状態を示す説明図である。
【図5】同じく中皿を長辺である外側辺側から見た状態で示す説明図である。
【図6】同じく中皿を短辺である外側辺側から見た状態で示す説明図である。
【図7】中皿を容器本体の内空間に配置した状態を示す説明図である。
【図8】中皿と膨出していない状態の容器本体とを示す説明図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに本発明を図1から図8に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図中1は除湿剤容器で、該除湿剤容器1は、熱可塑性樹脂シートを真空成型、圧空成形により成形したシート成形品である容器本体2と、上述のようにこの容器本体2の内空間に挿入配置して内空間を顆粒状除湿剤を収容する上方空間と除湿剤の潮解液を溜め受ける下方空間とに区切る中皿3とからなるものである(図7参照)。なお、前記中皿3は熱可塑性樹脂を素材としており、射出成形により形成されているものであり、中央に上方に凸となる形状部分を有する点や複数の透孔が設けられている点については従来と同様である。
【0018】
図1から図3に上記容器本体2を単体にして示されている。図示されているように平面視形状が略長方形された底面部4の周辺から立ち上げられて四方配置となる側壁部5,6,7,8を有した上面が開放された箱状となっており、前記底面部4から上方にかけてテーパー状に広がっている。四面の側壁部の内、対向する狭幅の側壁部5,6にあっては、内空間側に向けて凸となる段部9が底面部4側に連続して所要高さ位置まで形成されており、その段部9の上端に、中皿3の前記側壁部5,6に相対する外側辺10,11が乗った状態で中皿3を下方から支えるようにしている。なお、側壁部5,6には、段部9の上端に乗って位置した中皿3の抜けを防ぐために、抜け防止リブ12が設けられていて、中皿3を配置するときには、中皿3がこの抜け防止リブ12を外方に押し出すようにしてからその下に入り込むようになる。
【0019】
図4から図6が中皿3を示している。この中皿3の外周形状は、上記外側辺10、11が段部9の上端に乗った状態における容器本体2の高さ位置での断面形状に対応するように設けられており、上述のように狭幅の側壁部5,6に対応する外周辺10,11と、広幅の側壁部7,8に対応する外側辺13,14とで略長方形状とされている。
【0020】
そして、本発明において中皿3の短い方の外側辺10,11は直線状であるが、長い方の外側辺13,14には、外方に向けて凸となって円弧状を呈する張り出し部15が一体に設けられている。このように外方に張り出す形状とされた張り出し部15が対向配置されていて、その最外端間隔Aが、中皿3が位置する高さ位置での側壁部対応位置間隔より大きいものである(図8)。さらに前記張り出し部15は側壁部7,8の幅方向に亘って接していて、この張り出し部15との接触により側壁部13,14それぞれが外方に向けて押し出され、これによって側壁部13,14に膨出部16が形成され、この膨出部16が対向配置されている(図7)。このように容器本体2では広幅の側壁部7,8それぞれに外方に押し出されてなる膨出部16が設けられているので、広幅の側壁部7,8に予め引張力が導入された状態となり、除湿剤容器の落下により衝撃がこの側壁部7,8に伝わっても撓み難くなる。したがって、上述した従来での顆粒状除湿剤の噛み込みを生じさせることがなくなる。なお、短幅の側壁部5,6は横方向の寸法が短いため、落下の衝撃が伝わったとしても顆粒状除湿剤の噛み込みが生じる撓みはないが、必要に応じて、中皿3の外側辺10,11にも同様の張り出し部を形成し、これによって側壁部5,6にも膨出部を設けるようにしてもよい。
【0021】
なお、上記実施の例では、容器本体の平断面形状が略長方形としたが、本発明はこの例に限定されるものではなく、略正方形であってもよい。そして、容器本体の平断面形状が略正方形である場合には、中皿の四辺それぞれに張り出し部を一体に設け、四方の側壁部それぞれに膨出部が形成されるようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略四角形の底面部の周辺から立ち上げられて四方配置となる側壁部を有して上面が開放されているシート成形品の容器本体と、前記容器本体の内部に配置されて容器本体の内空間を、顆粒状除湿剤を収容する上方空間と潮解液を溜め受ける下方空間とに区切る中皿とからなる除湿剤容器において、
前記中皿の外周形状は、該中皿の外側辺それぞれが容器本体の側壁部の内面に接する略四角形状とされていて、前記外側辺の内の相対向する少なくとも一組の外側辺それぞれには、対応する側壁部の幅方向に亘って接して、且つ外方に向けて凸となる張り出し部が一体に設けられ、前記張り出し部との接触により外方に向けて押し出されてなる側壁部の膨出部が、対向配置されていることを特徴とする除湿剤容器。
【請求項2】
上記張り出し部は円弧状である請求項1に記載の除湿剤容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−143675(P2012−143675A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2173(P2011−2173)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】