説明

除湿器用受け皿

【課題】突端部の残る突起物に透湿性シートが触れることを防ぐ接触防止壁を備えた構造である一方で、略カルデラ状の突端部に潮解性除湿剤が載ったまま留まることなく、滑り落ちるように改良された除湿器用受け皿を提供する。
【解決手段】透水性シート7によって塞がれる上面開口部bを有する容器B内を上部空間Nと下部空間Mに区画する受け皿本体Aの略中央部位において、容器Bの上面開口部bの開口位置より低い高さにて略截頭錐体形状に突出される突出部4の突端部4aに、潮解性除湿剤Cの落下スロープ11を備えたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の湿気を潮解性除湿剤で吸湿して空間の湿度を下げ、湿度を低く保つ、押入れ、タンス、下駄箱その他の収納空間などにおいて使用される除湿器用の受け皿に関する。
【背景技術】
【0002】
除湿器は、上面開口部を有する容器内の中高部位に、多数の滴下孔を有する受け皿を内在させることで、容器内を、粒状の潮解性除湿剤が収容される上部空間と潮解液が貯溜される下部空間とに区画している。容器の上面開口部は、透湿非透水性シートによって塞がれ、さらにこの透湿非透水性シートの上には密封シート(防湿性シート)が剥離可能に貼着されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このように構成されている除湿器の容器内に内在される受け皿は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料を用いた射出成形によって一体に形成されている。その一例を図1および図2に示す。
図1および図2に示されているように、受け皿本体Aは、容器Bの中高部位における横断内周面形状に沿う周囲縁部1を有する平面視形状に形成されている。そして、受け皿本体Aは、図1に示すように、周囲縁部1に沿う平坦な第1の支持面部2と、この第1の支持面部2の内側に一段高い段状に設けられる第2の支持面部3と、さらに内側の中央部位において容器Bの上部開口部bの開口位置より低い高さにて略截頭錐体形状に突設される突出部4とからなり、それら各部には滴下孔5が多数設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3290106号公報(段落番号0016、および図1、図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、受け皿本体Aは、容器Bの上部空間Nに収容されている潮解性除湿剤Cの潮解液が、受け皿本体Aの上に滞留することなく、容器Bの下部空間M側に速やかに滴下されるように、容器Bの内周面に沿う周囲縁部1から中央部位に至るにしたがって高くなる第1の支持面部2、第2の支持面部3、突出部4から全体が縦断面視で略山形形状に形成され、それにより、滴下孔5の開口個数を増やす。つまり、滴下孔5の開口面積をできる限り確保するなどの工夫がなされている。
【0006】
そして、このように略山形形状の受け皿本体Aが射出成形によって形成されるときには、湯(樹脂溶解液)の流れ性や成形型からの脱型性などから、湯口ゲートが、突出部4の突端部4aとなして型内に湯が充填(注湯)されるように設計されている。
そのために、突端部4aには、図1に示されているように、型から脱型された後に湯口ゲート痕が略円錐状の突起物6となって残り、この突起物6に容器Bの上部開口部bを塞ぐ透湿非透水性シート7が触れて傷が付いたり、破けるおそれがある。
そこで、従来では、図1および図2に示すように、突端部4aの周囲に、突起物6より高く、該突起物6を囲繞するようにシート接触防止壁8を設けることで、透湿非透水性シート7が突起物6に触れないようにしている。つまり、シート接触防止壁8を設けることで、突端部4aを略カルデラ状としている。
【0007】
しかしながら、透湿非透水性シートの突起物への接触を防ぐことができた一方で、図2に示されているように、カルデラ状の突端部に粒状の潮解性除湿剤が載り、該潮解性除湿剤が透湿非透水性シートに触れるなどの新たな問題が引き起こされる要因となり、その改善が望まれていた。
ちなみに、潮解性除湿剤が突端部に載った場合、湿気を吸湿(吸収)すると膨張する特性を有する潮解性除湿剤の粒径が徐々に大きくなって、図2に示されている透湿非透水性シートとの間にわずかに存在している空間を埋め、透水性シートに触れる。また、潮解性除湿剤は、球形のものから異形なものなどがあり、角がある異形の潮解性除湿剤が突端部に載った場合には透湿非透水性シートに触れて傷を付けるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、前記課題を解消するために創案されたものであり、突端部の残る突起物に透湿性シートが触れることを防ぐ接触防止壁を備えた構造である一方で、略カルデラ状の突端部に潮解性除湿剤が載ったまま留まることなく、滑り落ちるように改良された除湿器用受け皿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明では、透湿非透水性シートによって少なくとも塞がれる上面開口部を有する容器内の中高部位に内在されて、該容器内を上部空間と下部空間に区画する除湿器用の受け皿であって、受け皿本体は、周囲縁部が前記容器の内周面に係止されて前記上部空間に収容される粒状の潮解性除湿剤を受ける支持面部と、略中央部位において前記支持面部から適宜の高さの略截頭錐体形状に突出される突出部と、を少なくとも備え、前記突出部のシート接触防止壁を有する突端部に、前記潮解性除湿剤の落下スロープを備えたことを特徴とする。
ここで、前記落下スロープは、前記潮解性除湿剤の粒径よりも幅広にて前記突端部から前記突出部の突出外側に向けた外向き傾斜状に形成されていることが好適なものとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の除湿器用の受け皿は、以上のように構成されていることで、カルデラ状の突端部に潮解性除湿剤が載ったまま留まることなく、落下スロープから滑り落ちる。これにより、潮解性除湿剤が突端部に留まることによる透湿非透水性シートへの接触を防いで、緒問題を解決することができる。
【0011】
また、落下スロープ間に残されているシート接触防止壁によって、突起物への透湿非透水性シートの接触を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来例の受け皿を示す斜視図である。
【図2】同受け皿が適用されている従来例の除湿器を示す縦断面図である。
【図3】本実施形態に係る受け皿を適用させた除湿器を示す縦断面図である。
【図4】同受け皿を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る受け皿を適用させた除湿器を示す縦断面図である。
【0014】
≪除湿器の構成≫
除湿器は、図3に示すように、上面開口部bを有する容器Bと、この容器B内の中高部位に内在されて容器B内を上部空間Nと下部空間Mに区画する簀の子状の受け皿本体Aと、上面開口部bを塞ぐ透湿非透水性シート(以後、単に「透湿性シート」と称する)7および密封シート9とを備えて構成されている。また、除湿器は、透湿性シート7および密封シート9を保護する蓋体10を着脱自在に備えている。
【0015】
このように構成されている除湿器は、図3に示すように、容器B内の上部空間Nに粒状の潮解性除湿剤Cが収容され、消費者(使用者)が使用するときに、蓋体10を容器Bから取り外し、密封シート9を透湿性シート7の上から取り剥がすことで、空気中の湿気が透湿性シート7を通過して容器B内に流入し、潮解性除湿剤Cに吸湿されるようになっている。
ちなみに、潮解性除湿剤Cは、例えば、顆粒状の塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、塩化ナトリウムなどから粒状と成して、空気中の湿気を吸湿して潮解液(水溶液)へと変化されるものである。
【0016】
≪受け皿本体の構成≫
図4は、本実施形態に係る受け皿を示す斜視図である。ここでは、図3を適宜参照しながら説明する。
受け皿本体Aは、前記の背景技術の欄において詳述したように、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂材料を用いた射出成形によって、容器の内周面に沿う周囲縁部1から中央部位に至るにしたがって高くなる全体が縦断面視で略山形形状に形成されている。
すなわち、受け皿本体Aは、図3および図4に示すように、容器Bの中高部位における横断内周面形状に沿う周囲縁部1を有する平面視形状に形成されている。そして、受け皿本体Aは、周囲縁部1に沿う平坦な第1の支持面部2と、この第1の支持面部2の内側において一段高い段状に設けられる第2の支持面部3と、さらに内側の中央部位において容器Bの上部開口部bの開口位置より低い高さにて略截頭錐体形状に突出される突出部4とからなり、それら各部には滴下孔5が多数設けられている。
【0017】
そして、このように形成されている受け皿本体Aは、図3および図4に示すように、シート接触防止壁8が備えられている突出部4の突端部4aに潮解性除湿剤Cの落下スロープ11を備えている。
【0018】
≪落下スロープの構成≫
落下スロープ11は、シート接触防止壁8によって囲繞されて略カルデラ状となす突出部4の突端部4aに潮解性除湿剤Cが載った場合に、突端部4aに停滞させることなく、突端部4aから潮解性除湿剤Cを速やかに排除させるためのものである。
この落下スロープ11は、潮解性除湿剤Cの粒径より幅広の傾斜幅にて、図3および図4に示すように、突端部4aからシート接触防止壁8を突っ切って突出部4の突出外面方向に至る平面視で三方方向の外向き傾斜状に形成されている。
【0019】
[作用説明]
以上のように構成されている受け皿本体Aによれば、カルデラ状の突端部4aに潮解性除湿剤Cが載ったまま留まることなく、落下スロープ11から速やかに滑り落ちて突端部4aから除かれる。
また、図3および図4に示すように、落下スロープ11間に残されているシート接触防止壁8によって、突起物6への透水性シート7の接触を防ぐことができる。
【0020】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した実施形態に限られるものではなく、請求項1に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれるものである。
例えば、受け皿本体Aは、第1の支持面部2と、この第1の支持面部2の中央部位において該第1の支持面部2から前記の実施例形態詳述の高さにて略截頭錐体形状に突設される突出部4とから形成することができる。
【符号の説明】
【0021】
A 受け皿本体
1 周囲縁部
2 第1の支持面部
3 第2の支持面部
4 突出部
4a 突端部
5 滴下孔
6 突起物
7 透湿非透水性シート
8 シート接触防止壁
11 落下スロープ
B 容器
b 上面開口部
C 潮解性除湿剤
M 下部空間
N 上部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿非透水性シートによって少なくとも塞がれる上面開口部を有する容器内の中高部位に内在されて、該容器内を上部空間と下部空間に区画する除湿器用の受け皿であって、
受け皿本体は、周囲縁部が前記容器の内周面に係止されて前記上部空間に収容される粒状の潮解性除湿剤を受ける支持面部と、略中央部位において前記支持面部から適宜の高さの略截頭錐体形状に突設される突出部と、を備え、
前記突出部のシート接触防止壁を有する突端部に、前記潮解性除湿剤の落下スロープを備えたことを特徴とする除湿器用受け皿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−78864(P2011−78864A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230841(P2009−230841)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】