説明

除湿器

【課題】良好な除湿性能の維持、小型化、維持管理の簡単化を可能とした除湿器を提供する。
【解決手段】除湿器1Aは、ガスの流入口21、流出口22を有する筒状体23内の流入口21、流出口22間に第1フランジ部24、第2フランジ部25を突出させて形成されたケーシング11と、除湿・再生可能な吸着材からなり、ケーシング11内に収容され、第1、第2フランジ部24,25間に位置し、一方の端面が第1フランジ部24に当接し、これにより支持された吸着部材12と、ケーシング11の内壁に摺接するシール部材26を介してケーシング11内にこの軸方向に移動可能に嵌挿され、第2フランジ部25、吸着部材12間に位置するとともに、吸着部材12の他方の端面に当接する環状部材13と、環状部材13、第2フランジ部25間に介設され、環状部材13を介して吸着部材12を第1フランジ部24に向けて押圧する弾性手段14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧縮機から吐出された圧縮ガスから水分を除去するために用いられる除湿器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、除湿・再生可能な吸着部材を用いた除湿器は公知である(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平6−31131号公報
【特許文献2】特開2000−279747号公報(図2)
【0003】
特許文献1には、円柱形状に成形されたハニカム構造の吸着材からなる吸着部材を容器内に回転可能に収容するとともに、容器内の吸着部材の両端面のそれぞれに対向する容器内の空間を径方向に延びた隔壁により仕切ることにより、吸着ロータの両側に除湿ゾーン、再生ゾーン及び冷却ゾーンを形成した回転吸着タイプの除湿器が開示されている。
【0004】
特許文献2には、二塔切り換え式除湿器が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の除湿器の場合、除湿性能を維持するためには、再生ガスと除湿ガスの相互の隔離が確実に行われなければならない。しかし、上記吸着部材(即ち、特許文献1の吸着ロータ2)が回転する一方、吸着部材及び上記隔壁の摺接する面の平坦度の確保が困難で、使用時間の経過とともにシール部品が摩耗してゆくため、上記隔壁部でのシール性が不十分となる。この結果、高温多湿の再生ガスが除湿後のガスに混入し、除湿性能が大幅に悪化するという問題がある。
【0006】
特許文献2に記載の二塔切り換え式除湿器の場合、球状に成形された吸着材を用いるため、一粒当たりの表面積の小さいこの吸着材が多量に必要となり、この結果機器が大型化するという問題がある。また、除湿器の容器に多量の吸着材が充填されているため、この容器内をガスが流れることにより、吸着材同士がこすれ合い、微細粉となり、後流側に流出するため、微細粉除去のためのフィルタ設備が必要になるのに加え、例えば定期的に吸着材の補給或いは交換等のための人手を要するという問題もある。
【0007】
本発明は、斯かる従来の問題をなくすことを課題としてなされたもので、良好な除湿性能を維持でき、小型化、維持管理の簡単化を可能とした除湿器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1発明は、ガスの流入口及び流出口を有する筒状体の内部の上記流入口と上記流出口との間に第1フランジ部及び第2フランジ部を突出させて形成されたケーシングと、吸着材からなり、上記ケーシング内に収容され、上記第1、第2フランジ部間に位置するとともに、一方の端面が上記第1フランジ部に当接し、これにより支持された吸着部材と、上記ケーシングの内壁に摺接するシール部材を介して上記ケーシング内にこの軸方向に移動可能に嵌挿され、上記第2フランジ部と上記吸着部材との間に位置するとともに、上記吸着部材の他方の端面に当接する環状部材と、この環状部材と上記第2フランジ部との間に介設され、上記環状部材を介して上記吸着部材を上記第1フランジ部に向けて押圧する弾性手段とを備えた構成とした。
【0009】
第2発明は、第1発明の構成に加えて、上記吸着部材が、上記ケーシングの軸方向に複数段並ぶように分割されている構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る除湿器によれば、吸着部材は不動の状態で定位置に保持されており、吸着部材及びこれに接する部材での摩耗はなく、良好な除湿性能を維持することができるという効果を奏する。また、ハニカム構造の吸着部材を採用することができ、この場合には、良好な除湿性能を維持しつつ、除湿器を小型化でき、かつ吸着材同士の擦れ合いもなく、フィルタ設備を設ける必要がないため、吸着部材の寿命が長く、メンテナンスサイクルを長くすることが可能になる。
【0011】
さらに、上記吸着部材が、上記ケーシングの軸方向に複数段並ぶように分割されている構成とすることにより、除湿処理する湿りガスの流量に応じて吸着部材を構成する吸着部材片の数を調整できるとともに、各段の吸着部材片の種類を適宜選択して除湿能力の調整も可能になる等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る除湿器1Aを示し、この除湿器1Aはケーシング11と吸着部材12と環状部材13と弾性手段14とを備えている。
【0013】
ケーシング11は、ガスの流入口21及び流出口22を有する筒状体23の内部の流入口21、流出口22間に第1フランジ部24及び第2フランジ部25を突出させて形成されている。
【0014】
吸着部材12は、除湿・再生可能な吸着材をハニカム形に成形して形成され、ケーシング11の軸方向に多数の微細な流体流路を有している。そして、ケーシング11内に遊嵌され、第1、第2フランジ部24,25間に位置するとともに、一方の端面が第1フランジ部24に当接し、これにより支持されている。従って、ケーシング11内において、吸着部材12の周囲に空隙部が形成されている。
【0015】
環状部材13は、ケーシング11の内壁に摺接するシール部材26を介してケーシング11内にこの軸方向に移動可能に嵌挿され、第2フランジ部25と吸着部材12との間に位置するとともに、吸着部材12の他方の端面に当接している。なお、図示する実施形態では、シール部材26としてOリングが採用されている。
【0016】
弾性手段14は、環状部材13と第2フランジ部25との間に介設され、環状部材13を介して吸着部材12を第1フランジ部24に向けて押圧している。なお、図示する実施形態では、弾性手段14として圧縮ばねが採用されている。
【0017】
上記構成からなる除湿器1Aでは、吸着部材12と第1フランジ部24との間、及び吸着部材12と環状部材13との間に相対的な移動はなく、吸着部材12とこれらとを隙間なく密着させた状態を維持できる故、吸着部材12、第1フランジ部24及び環状部材13の摩耗を防止することができ、除湿性能を向上させることができる。また、球状の吸着材を使用した場合に比し、ハニカム構造の吸着部材12の表面積が大きいため、除湿器1Aの場合には、吸着部材12の体積を小さくすることができ、小型化が可能となり、同一体積で考えれば、除湿能力の向上が可能となる。さらに、吸着部材12の場合、吸着材同士の擦れ合いはなく、後流側にフィルタ設備を設ける必要がないのに加え、擦れ合いがないことから吸着材の寿命が長くなり、メンテナンスサイクルを長くすることができる。
【0018】
なお、図中、矢印は除湿運転時のガスの流動方向を示し、吸着部材12の再生時における高温ガスの流動方向はこの逆となる。
【0019】
図2は、本発明の第2実施形態に係る除湿器1Bを示し、この除湿器1Bにおいて、上述した除湿器1Aと互いに共通する部分については、同一番号を付して説明を省略する。
【0020】
この除湿器1Bでは、吸着部材12はケーシング11の軸方向に複数段並ぶように分割され、図示する実施形態では、三つの吸着部材片12A、12B、12Cにより構成されている。これらの吸着部材片12A、12B、12Cのそれぞれは、除湿器1Aの吸着部材12と同様に、除湿・再生可能な吸着材をハニカム形に成形して形成されている。
【0021】
上記構成からなる除湿器1Bでは、吸着部材片12A、12B、12Cで例示された吸着部材12を構成するこれらの数を除湿処理する湿りガスの流量に応じて吸着部材片の数を調整できるとともに、各段の吸着部材片の種類を適宜選択して除湿能力の調整も可能になる。
【0022】
なお、上述した実施形態では、ガスの流入口21、流出口22を上下に配し、除湿器1A,1Bをいわば縦型としたものを示したが、本発明はこれに限定するものではない。弾性部材14として、例えば、ばね定数が十分大きい圧縮ばねを採用すれば、ガスの流入口21、流出口22を左右に配し、除湿器1A,1Bを横型にすることもでき、本発明には斯かる横型のものも含まれる。
【0023】
また、上述した実施形態では、吸着部材12がケーシング11内に遊嵌状態で収容されたものを示したが、本発明はこれに限定するものでなく、吸着部材12の周囲に必ずしも空隙部を設ける必要はない。即ち、吸着部材12の外径がケーシング11の内径と略同一となるようにし、吸着部材12がケーシング11内に空隙部を生じることなく、嵌挿された状態で収容されたものであってもよい。ただし、吸着材には、その材質の特性上、精度良く成形するのが困難なものが多く、斯かる吸着材からなる吸着部材については、上記実施形態のように、吸着部材12をケーシング11の内径よりも小さめの外径を有するように成形し、ケーシング11内に遊嵌状態で収容すればよい。本発明は、このように、成形上、精度に難点がある吸着材をも採用できるという利点も備えている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、例えば圧縮機用二塔式除湿設備装置に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る除湿器の断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る除湿器の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1A、1B 除湿器
11 ケーシング
12 吸着部材
12A 吸着部材片
12B 吸着部材片
12C 吸着部材片
13 環状部材
14 弾性手段
21 流入口
22 流出口
23 筒状体
24 第1フランジ部
25 第2フランジ部
26 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流入口及び流出口を有する筒状体の内部の上記流入口と上記流出口との間に第1フランジ部及び第2フランジ部を突出させて形成されたケーシングと、
吸着材からなり、上記ケーシング内に収容され、上記第1、第2フランジ部間に位置するとともに、一方の端面が上記第1フランジ部に当接し、これにより支持された吸着部材と、
上記ケーシングの内壁に摺接するシール部材を介して上記ケーシング内にこの軸方向に移動可能に嵌挿され、上記第2フランジ部と上記吸着部材との間に位置するとともに、上記吸着部材の他方の端面に当接する環状部材と、
この環状部材と上記第2フランジ部との間に介設され、上記環状部材を介して上記吸着部材を上記第1フランジ部に向けて押圧する弾性手段とを備えたことを特徴とする除湿器。
【請求項2】
上記吸着部材が、上記ケーシングの軸方向に複数段並ぶように分割されていることを特徴とする請求項1に記載の除湿器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−95368(P2006−95368A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281763(P2004−281763)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】