説明

除湿用シート状物

【課題】水分吸着剤として多孔質金属酸化物を含有してなる除湿用シート状物において、水分吸着剤の吸着特性を維持したまま、除湿用シート状物を難燃化する技術を提供することである。
【解決手段】
水分吸着剤として多孔質金属酸化物を含有してなる除湿用シート状物において、ポリリン酸系化合物が含有されてなることを特徴とする除湿用シート状物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤として多孔質金属酸化物を含む除湿用シート状物に関する。
【背景技術】
【0002】
デシカント空調は、水分吸着剤によって低湿度の空気を作り出すことを目的とする空調機器である。高温多湿条件下において、人体は快適性を感じることができないが、相対湿度を50%以下に抑えることができれば、同じ温度条件下においても快適性は格段に向上する。デシカント空調機においては、水分吸着剤を含有する除湿ローターを回転させ、処理空気は水分を吸着させる吸着ゾーンに、水分吸着剤の再生には、高温の再生空気を通し放湿を行う再生ゾーンを通すことにより室内を低湿条件に保つことができる。水分吸着剤としては活性炭も用いられるが、その水分吸着量が少ないため、多孔質金属酸化物の方が選りすぐれた材料として一般的に用いられている。
【0003】
デシカント空調機は、放湿を行うために80℃以上の高温空気を流すことがあるため、除湿ローターには不燃または難燃仕様が重要となる。水分吸着剤をガラス繊維及びセルロース繊維で構成されるローター素子に添着させ、素子の焼結により水分吸着剤をローター内に添着担持させる焼結型除湿ローターにおいては、素子自体に高い不燃性が保持されており、ローターの不燃性が確保されるが、水分吸着剤と有機物とを含有してなる除湿用シート状物により作製される除湿ローターは、燃焼性の高い有機物が多分に含有されているため、難燃性を高める必要がある。
【0004】
難燃剤は有機系難燃剤と無機系難燃剤に大別される。また、水溶性難燃剤と難溶性難燃剤に分類される。また、水分吸着剤と有機物とを含有してなる除湿用シート状物に難燃剤を含有させる方法としては、難燃剤を除湿用シート状物に塗布する方法、有機繊維と難燃剤を混ぜ込んで、湿式抄造法によりシート化する方法、難燃剤を結合性樹脂と共に混合して、除湿用シート状物に塗布する方法等がある。
【0005】
例えば、シート基材の両面に、活性炭とアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物の少なくとも一方とを含んでなるガス吸着層を形成してなるオゾンガス吸着用シートにおいて、活性炭のオゾン分解活性点が減少する問題を解決するために、難燃剤として難溶性難燃剤を使用することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、シリカのメソ多孔体と合成樹脂とからなる合成樹脂組成物を織布、編物、不織布に塗布するシート状物において、難燃剤として、アンチモン系化合物、リン系化合物、塩素系化合物、臭素系化合物、グアジニン系化合物、ホウ素化合物、アンモニウム化合物、臭素系ジアリールオキサイド、臭素化アレン等の難燃剤を合成樹脂組成物に含有させることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、金属酸化物を含有してなる除湿用シート状物において、リン系難燃剤、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、窒素系難燃剤、珪素系難燃剤、無機系難燃剤、ポリマー型難燃剤等を含有させることが記載されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
除湿用シート状物に難燃剤を含有させる場合、難燃剤が水分吸着剤の吸着特性に悪影響を及ぼすことがあってはならない。特許文献1に記載されているように、活性炭においては、活性点を減少させないようにする検討がなされている。しかしながら、水分吸着剤として一般的な多孔質金属酸化物においては、吸着特性を低下させないという観点から難燃剤を選択することは検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−157827号公報
【特許文献2】特開平9−309970号公報
【特許文献3】国際公開第2008/004703号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、水分吸着剤として多孔質金属酸化物を含有してなる除湿用シート状物において、水分吸着剤の吸着特性を維持したまま、除湿用シート状物を難燃化する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述された課題を解決するために、水分吸着剤として多孔質金属酸化物を含有してなる除湿用シート状物において、除湿用シート状物に適合し得る難燃剤について検討した結果、ポリリン酸系化合物によって、課題を解決できることを見出した。また、ポリリン酸系化合物がポリリン酸メラミンであることが好ましく、ポリリン酸系化合物が合成樹脂で除湿用シート状物に添着されてなることがより好ましいことを見出した。
【発明の効果】
【0010】
水分吸着剤である多孔質金属酸化物には、多数の細孔を有する粒状体、一次粒子径が数nmの単独粒子が複数凝集してなる複合粒子、管状体、繊維状金属酸化物の凝集体等がある。本発明における検討において、これらの多孔質金属酸化物を含有してなる除湿用シート状物に難燃剤を含有させた場合、多孔質金属酸化物の細孔や凝集構造が破壊されて、吸着特性が低下することが確認された。しかしながら、難燃剤としてポリリン酸系化合物を使用した場合には、細孔や凝集構造の破壊が抑制され、水分吸着剤の吸着特性を維持したまま、除湿用シート状物を難燃化することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】除湿用シート状物の吸着特性評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の除湿用シート状物は、水分吸着剤として多孔質金属酸化物を含有してなり、さらに、ポリリン酸系化合物を含有している。
【0013】
ポリリン酸系化合物としては、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸エステル等を挙げることができる。このうち、ポリリン酸メラミンを用いた場合、吸着特性を長期間維持することができるので好ましい。ポリリン酸系化合物の含有量は、除湿用シート状物に含まれる燃焼性材料に対して20〜40質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましく、25〜30質量%がさらに好ましい。ポリリン酸系化合物の含有量が20質量%未満になると自己消火性が弱くなる場合がある。ポリリン酸系化合物の含有量が40質量%を超えると吸着特性が低下する場合がある。ここで、燃焼性材料とは、接炎により容易に着火し、炭化が完了するまで燃焼を持続し続ける有機物のことをいう。
【0014】
水分吸着剤である多孔質金属酸化物は、珪素、チタン、アルミニウム、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等から選ばれる少なくとも1種の金属原子の酸化物を含有してなり、その形態としては、多数の細孔を有する粒状体、一次粒子径が数nmの単独粒子が複数凝集してなる複合粒子、管状体、繊維状金属酸化物の凝集体等が挙げられる。より具体的には、非晶質アルミニウム珪酸塩、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、繊維状または管状のアルミニウム珪酸塩、繊維状または管状の酸化チタン等を挙げることができる。
【0015】
特に、珪素の酸化物を含有してなる水分吸着剤は、他の金属酸化物を含有してなる水分吸着剤よりも細孔や凝集構造の破壊が起こりやすいが、ポリリン酸系化合物を難燃剤として使用することによって、水分吸着剤の吸着特性の低下を抑制することができる。また、珪素の酸化物を含有していない水分吸着剤においても、ポリリン酸系化合物は吸着特性に悪影響を及ぼすことが少ない。さらに、珪素の酸化物を含有してなる水分吸着剤と珪素の酸化物を含有していない水分吸着剤とを併用する場合も、ポリリン酸系化合物を難燃剤として優位に使用することができる。
【0016】
本発明の除湿用シート状物を作製する方法としては、(I)難燃剤、水分吸着剤及び有機繊維とを含有するシート状物を作製する方法、(II)水分吸着剤及び有機繊維を含有するウェブを作製した後に、難燃剤を担持させる方法、(III)紙、不織布、フィルム等の基材に、水分吸着剤と難燃剤を同時にまたは別々に担持させる方法がある。
【0017】
方法(I)におけるシート状物及び方法(II)におけるウェブは、カード法、エアレイ法等の乾式法、湿式抄造法で作製することができるが、均一なシート状物またはウェブを得るためには、湿式抄造法が好ましい。湿式抄造法とは、材料を水中に低濃度で分散させて、これを抄き上げる方法で、安価で、均一性が高く、大量製造が可能な手法である。具体的には、シート状物の材料である難燃剤、水分吸着剤及び有機繊維またはウェブの材料である水分吸着剤及び有機繊維を水中に分散させてスラリーを調製し、これに填料、分散剤、増粘剤、消泡剤、紙力増強剤、サイズ剤、凝集剤、着色剤、定着剤等を適宜添加して、抄紙機で湿式抄造する。抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、傾斜型抄紙機、これらの中から同種または異種の抄紙機を組み合わせてなるコンビネーション抄紙機等を用いることができる。エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラムドライヤー、赤外方式ドライヤー等を用いて、抄紙後の湿紙を乾燥し、シート状物またはウェブを得ることができる。
【0018】
方法(II)における難燃剤の担持及び方法(III)における水分吸着剤と難燃剤の担持には、コーティング法を用いる。
【0019】
コーティング液としては、水分吸着剤と難燃剤を、単独または混合で含有する溶液または分散液を使用する。媒体としては、水、アルコール、ケトン等を単独または混合して使用することができる。コーティングには、ディップコーター、サイズプレス、ゲートロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、コンマコーター、バーコーター、グラビアコーター、キスコーター等の含浸または塗工装置を使用することができる。
【0020】
水分吸着剤または難燃剤をウェブまたは基材に強く担持させるために、コーティング液に合成樹脂を添加することが好ましい。合成樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、芳香族ビニル化合物等の重合体、スチレン−ブタジエンゴム系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の少なくとも1種または2種以上を用いることができる。カルボニル基等の強い活性基を持つ合成樹脂では、水分吸着剤の表面に合成樹脂が吸着して、吸着特性を低下させることがあるため、ポリビニルアルコール系樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
方法(III)で用いられる基材は、有機物を含有してなり、紙、多孔質フィルム、織布、乾式不織布、湿式不織布、編物、フィルム、板状物等の形態をとることができる。このうち、不織布は空隙率が高く、また、繊維構成によってコーティング液の塗工性・浸透性も向上させることができるため、特に適した基材である。また、これらの形態を単独で用いてもよいし、貼り合わせ等によって積層複合化して用いてもよい。
【0022】
本発明の除湿用シート状物に用いることができる有機繊維としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フラン系樹脂、尿素系樹脂、アニリン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂よりなる繊維が挙げられる。また、木材パルプ、楮、三椏、藁、ケナフ、竹、リンター、バガス、エスパルト、サトウキビ等の植物繊維、あるいはこれらを微細化したものを用いることができる。さらに、セルロース再生繊維であるレーヨン繊維、リヨセル繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂繊維、シリコーン系樹脂系繊維等を使用することもできる。なお、本発明の除湿用シート状物には、ステンレスやニッケルウール等の金属繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維等の難燃または不燃の無機繊維を添加することもできる。
【0023】
フィルム、多孔質フィルム、板状物を構成する有機物である樹脂としては、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フラン系樹脂、尿素系樹脂、アニリン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等を用いることができる。
【0024】
本発明の除湿用シート状物は、パンチングメタルシート、発泡金属シート、無機粒子の凝集体フィルムといった無機多孔質フィルムや金属箔、金属板等、無機繊維のみで構成された織布、乾式不織布、湿式不織布、編物等を貼り合わせ等によって積層複合化して用いてもよい。
【0025】
本発明の除湿用シート状物は、そのままで使用してもよいし、プリーツ加工、コルゲート加工、積層加工、ロールコア加工、ドーナツ加工等の2次加工を施して使用してもよい。また、その用途は、包装材料、除湿シート、内装材料、フィルター、調湿素子、熱交換素子等が挙げられる。調湿素子、熱交換素子の具体例として、除湿ローター素子、ビル空調気化式加湿用素子、燃料電池用加湿用素子、除湿器用除湿素子、自動販売機等の吸水蒸散素子、冷却用吸水蒸散素子、デシカント空調の除湿ローター素子等を挙げることができる。
【実施例】
【0026】
(水分吸着剤)
実施例及び比較例で使用した水分吸着剤を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
水分吸着剤6は、以下の方法で調製した。ゾルゲル法によって得られたアナターゼ酸化チタン粒子に、20mol/kg濃度の水酸化カリウム水溶液を加え、温度120℃で24時間加熱して得られたスラリー状物を繰り返し水洗し、さらに、酢酸で中和し、再度充分に水洗して、余剰のイオン成分を除去した後、遠心分離器によって、濃度20質量%の網状に凝集した繊維状酸化チタン分散液を得た。これの一部を乾燥させて、粉末を取り出し、BET法による比表面積を測定したところ、350m/gであった。
【0029】
水分吸着剤7は、以下の方法で調製した。Si濃度が383mmol/Lになるように、純水で希釈したオルトケイ酸ナトリウム水溶液400mlを調製した。また、これとは別に、塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が450mmol/Lの水溶液400mlを調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を混合し、マグネティックスターラーで撹拌した。この時のSi/Al比は0.85であった。さらに、この混合溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液18mlを滴下し、pHを7とした。この溶液から遠心分離により前駆体を回収し、4Lの純水中に分散させた。室温下で1時間撹拌した後、4Lの密閉容器に移し替え、恒温槽にて98℃で2日間加熱を行った。冷却後、遠心分離により3回洗浄後、60℃で乾燥を行い、水分吸着剤7を得た。透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡で、水分吸着剤7を観察したところ、一次粒子径は2〜5nmの粒子からなる粒子径2〜40nmの複合粒子が0.1〜100μmの凝集構造体を構成していて、該凝集構造体に2〜20nmの細孔があった。
【0030】
(水分吸着剤含有ウェブの作製)
表1記載の水分吸着剤1〜8を固形分にて、それぞれ50質量部、ポリエチレンテレフタレート繊維(商品名:テピルス、帝人ファイバー(株)製、0.11dtex×3mm)26質量部、セルロース系フィブリル化繊維(商品名:セリッシュKY−100G、ダイセル化学工業(株)製)7質量部、ポリエステル熱融着性芯鞘繊維(商品名:メルティ、ユニチカ(株)製、1.1dtex×3mm)17質量部を含有してなるスラリー(固形分濃度2質量%)を調製した。得られたスラリーに凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)を固形分に対して0.2質量%添加し、円網型抄紙機で坪量50g/mに抄紙し、水分吸着剤と有機繊維とを含有するウェブを得た。
【0031】
(積層シートの作製)
次に、25μm厚のポリエチレンフィルムを中央にして、両面からウェブを貼り合わせ、熱カレンダー処理によって、目付123g/m、厚み180μmの3層構造の積層シート1〜8を作製した。
【0032】
(実施例1〜8)
下記配合のコーティング液1(難燃剤固形分濃度:20質量%)を調製した。
ポリリン酸メラミン(商品名:MPP−B、(株)三和ケミカル製) 20質量部
エチレン−酢酸ビニルエマルジョン
(商品名:リカボンドBEF9857、中央理化工業(株)製) 2質量部
水 78質量部
【0033】
積層シート1〜8をコーティング液1に含浸した後、90℃で30分乾燥させ、実施例1〜8の除湿用シート状物を得た。
【0034】
(実施例9〜16)
下記配合のコーティング液2(難燃剤固形分濃度:20質量%)を調製した。
ポリリン酸アンモニウムを主成分とする難燃剤
(商品名:FCP770、(株)鈴裕化学製) 20質量部
エチレン−酢酸ビニルエマルジョン
(商品名:リカボンドBEF9857、中央理化工業(株)製) 2質量部
水 78質量部
【0035】
積層シート1〜8をコーティング液2に含浸した後、90℃で30分乾燥させ、実施例9〜16の除湿用シート状物を得た。
【0036】
(実施例17〜24)
下記配合のコーティング液3(難燃剤固形分濃度:20質量%)を調製した。
ポリリン酸メラミン(商品名:MPP−B、三和ケミカル(株)製) 20質量部
水 80質量部
【0037】
積層シート1〜8をコーティング液3に含浸した後、90℃で30分乾燥させ、実施例17〜24の除湿用シート状物を得た。
【0038】
(比較例1〜8)
下記配合のコーティング液4(難燃剤固形分濃度:12質量%)を調製した。
スルファミン酸塩類誘導体を主成分とする難燃剤
(商品名:サンフレームNF−6、サンノプコ(株)製) 20質量部
水 80質量部
【0039】
積層シート1〜8をコーティング液4に含浸した後、90℃で30分乾燥させ、比較例1〜8の除湿用シート状物を得た。
【0040】
(比較例9〜16)
下記配合のコーティング液5(難燃剤固形分濃度:11.5質量%)を調製した。
ポリホウ酸ナトリウム難燃剤
(商品名:ファイアレスBリキッド、(株)トラストライフ製) 50質量部
水 50質量部
【0041】
積層シート1〜8をコーティング液5に含浸した後、90℃で30分乾燥させ、比較例9〜16の除湿用シート状物を得た。
【0042】
(比較例17〜24)
積層シート1〜8を比較例17〜24の除湿用シート状物とした。
【0043】
<難燃剤含有量の測定>
積層シート1〜8について、温風乾燥機にて90℃、120分の条件にて乾燥させたときの質量を絶乾質量Wとした。積層シート1〜8に含有される水分吸着剤の配合比をW(質量%)とし、固形分濃度C(質量%)のコーティング液1〜5に含浸したときの含水質量Wを計測し、下記の式より、燃焼性部材に対する難燃剤含有量(質量%)を得た。結果を表2に示した。
【0044】
難燃剤含有量(質量%)=[(W−W)×C/100]/[W×(100−W)/100]×100
【0045】
<吸着特性>
除湿用シート状物の吸着特性評価は、水分吸着による質量変化を測定する平衡吸着測定により行った。200mm×150mmの除湿用シート状物を、温風乾燥機にて、温度90℃、120分の条件にて乾燥させたときの質量を絶乾質量WD1とした。乾燥させた除湿用シート状物を温度25℃、相対湿度80%の条件下に調整した恒温恒湿槽内に少なくとも120分以上静置したときを吸着平衡とみなし、その時の質量を吸着質量WA1とし、水分吸着剤1gに対する水分吸着量W(g)を下記の式より得た。結果を表2及び図1に示した。
【0046】
水分吸着量W(g)=[(WA1−WD1)/WD1]/(W/100)
【0047】
<耐久性試験>
除湿用シート状物に対する耐久性試験は下記方法にて行った。200mm×150mmの除湿用シート状物をガラス容器に充填し、サンプルと接触しないように容器の底面に水を満たして密閉した。それを60℃で一定にした恒温槽に設置し、飽和水蒸気下で7日間静置した。その後、除湿用シート状物を取り出し、90℃に設定した温風乾燥機で120分乾燥させたときの質量WD2を測定した。乾燥させた除湿用シート状物を温度25℃、相対湿度80%の条件下に調整した恒温恒湿槽内に少なくとも120分以上静置したときの質量WA2を測定し、下記式より水分吸着剤1gに対する水分吸着量Wを得た。
【0048】
水分吸着量W(g)=[(WA2−WD2)/WD2]/(W/100)
【0049】
水分吸着量の維持率[W/W×100(%)]を下記基準で評価し、結果を表2に示した。
【0050】
○:維持率が80%以上であった。
△:維持率が60%以上80%未満であった。
×:維持率が60%未満であった。
【0051】
<難燃性>
日本空気洗浄協会の規定する「空気洗浄用ろ材燃焼性試験方法」に準じた方法にて、難燃性を評価した。長さ150mm、幅50mmの除湿用シート状物の長さ方向に、25mm、60mm、125mmの3点の標線を記入した。除湿用シート状物は温風乾燥機にて、温度90℃、120分で乾燥させた。乾燥後10分以内に、支持金網に水平に除湿用シート状物をセットし、試験片の下側にバーナーにより接炎を60秒以上行った。接炎から60mm標線までを燃焼の経過時間(秒/60mm)とし、25mm標線から125mm標線までを燃焼時間(秒/100mm)とし、25mm標線から残じんまでの燃焼距離(cm)を調べ記録した。結果を表2に示した。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例及び比較例の結果から、難燃剤を含有してなる実施例1〜24、比較例1〜16の除湿用シート状物は、クラスIIIの燃焼クラスを達成した。そして、ポリリン酸系化合物を難燃剤として含有してなる実施例1〜24の除湿用シート状物は、比較例1〜16の除湿用シート状物と比較して、吸着特性が低下しにくく、耐久性が高くなる傾向を示した。特に、珪素の酸化物を含有してなる水分吸着剤1〜5を用いた除湿用シート状物において、この傾向は顕著であった。また、ポリリン酸メラミンを難燃剤として含有してなる実施例1〜8の除湿用シート状物は、ポリリン酸アンモニウムを含有してなる実施例9〜16の除湿用シート状物よりも耐久性が高くなる傾向を示し、特に、珪素の酸化物を含有してなる水分吸着剤1〜5を用いた除湿用シート状物において、この傾向は顕著であった。
【0054】
実施例1〜8と実施例17〜24との比較から、ポリリン酸系化合物が合成樹脂で除湿用シート状物に添着されてなる場合、その添着強度に明らかな差が認められる。実施例1〜8のように、ポリリン酸系化合物は、バインダー能力を持つ合成樹脂が介在することにより、有機繊維との接着性が向上し、優れた難燃性を示した。合成樹脂を使用していない実施例17〜24では、難燃性試験におけるカットシート作製時に、その切断の衝撃により粉落ちが確認され、実施例1〜8と比較して、着火性が上昇し、難燃性の低下が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の除湿用シート状物は、除湿用フィルター材に使用できるほか、包装材料、押入やタンス用の除湿シート、壁紙や床材等の内装材料等に使用することができる。また、除湿用フィルター材としては、例えば、調湿素子や熱交換素子として使用することができる。調湿素子、熱交換素子の具体例として、ビル空調気化式加湿用素子、燃料電池用加湿用素子、除湿器用除湿素子、自動販売機等の吸水蒸散素子、冷却用吸水蒸散素子、デシカント空調機の除湿ローター、全熱交換素子等を挙げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分吸着剤として多孔質金属酸化物を含有してなる除湿用シート状物において、ポリリン酸系化合物が含有されてなることを特徴とする除湿用シート状物。
【請求項2】
ポリリン酸系化合物がポリリン酸メラミンである請求項1記載の除湿用シート状物。
【請求項3】
ポリリン酸系化合物が合成樹脂で除湿用シート状物に添着されてなる請求項1または2記載の除湿用シート状物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−110495(P2011−110495A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269046(P2009−269046)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】