説明

除湿用シート状物

【課題】本発明の課題は、高い割合で水分吸着剤を含有させても、粉落ちが少なく、水分吸着特性、加工適性に優れた除湿用シート状物を提供することである。
【解決手段】水分吸着剤を含有してなる除湿用シート状物において、(A)剪断力を加えて幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化リヨセル繊維、(B)剪断力を加えて繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維から選ばれる少なくとも1種のフィブリル化リヨセル繊維と有機繊維とを含有することを特徴とする除湿用シート状物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸放湿性能のある除湿用シート状物に関する。
【背景技術】
【0002】
水分吸着剤を含有してなる除湿用シート状物は、周囲の環境を一定の相対湿度に保持することを目的として、美術品、電気製品、工芸品、衣類等の保存時や輸送時における包装材料、住宅用内装材、押入の吸湿剤等として用いられている。また、室内の空気の除湿・加湿を行う空調機器や除湿素子、排気と吸気との間で温度(熱)と湿度(水分)の交換を行いながら、室内の換気を行う全熱交換素子においても、吸放湿性のあるシート状物が利用されている。空調機器、全熱交換素子等では、シート状物をコルゲート加工したものの積層体や、シート状物をロータ状に巻回したものが除湿素子、熱交換素子として使用されている。
【0003】
水分吸着剤を含有する除湿用シート状物の利用分野の一つであるデシカント空調とは、水分吸着剤によって、空気中の水分を直接除去し、室内に供給する空気を快適な温湿度に調整する空調システムである。一般に、高温多湿の環境下では、人は不快に感じるが、相対湿度50%以下になると、同じ温度の環境でも、快適さは格段に向上する。一般的なデシカント空調システムは、水分吸着剤を含有する除湿ロータを回転させ、吸着ゾーンにて外気などの高湿な空気を除湿ロータに通過させ、水分を吸着させることにより低湿な空気をつくる。一方、水分を吸着した除湿ロータは再生ゾーンにて、高温の再生空気を通過させ、除湿ロータ内の水分を放湿させて、再度、水分吸着可能な状態に再生される。水分吸着剤としては活性炭も用いられているが、その吸着量が少ないために、多孔質金属酸化物がより優れた材料として広く用いられている。
【0004】
デシカント空調システムにおいては、吸放湿性能を高めるために、より高温の再生空気を除湿ロータに通過させることがある。そのため、除湿ロータを構成する水分吸着剤を含有する除湿用シート状物は、不燃又は難燃性を要求されることが多いため、無機繊維を用いたものが多い。その製造方法としては、例えば、無機繊維紙をハニカム状に成形加工した後に高温焼成して有機物を除去し、水分吸着剤を含有する塗布液中に含浸した後、高温乾燥する方法(例えば、特許文献1参照)や、セラミック繊維紙に水ガラスを含浸して、シリカゲルを生成させる方法(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。これらの無機繊維を用いたシート状物は、硬くて脆いために耐衝撃性に乏しかったり、水分吸着剤の粉落ちが多いという課題を有している。また、無機繊維を用いたシート状物では、減量を目的として高温焼成を行うため、有機系の水分吸着剤は使用できず、また、無機系の水分吸着剤であっても高温で結晶構造等の物性が変化するものは使用できないという水分吸着剤選定上の制約があった。
【0005】
耐衝撃性や水分吸着剤選定上の制約を解決するために、水分吸着剤と有機繊維を含有してなるシート状物が提案されている。例えば、水分吸着剤、製紙用繊維、熱融着性物質からなる全熱交換器用紙(例えば、特許文献3参照)、水分吸着剤、製紙用繊維、ミクロフィブリル化セルロースからなる全熱交換器用紙(例えば、特許文献4参照)、セルロース繊維と水分吸着剤からなる調湿性シート(例えば、特許文献5参照)、水分吸着剤と有機繊維からなる基材(例えば、特許文献6参照)、難燃性合成パルプ、ポリビニルアルコール系バインダー及び水分吸着剤を含む吸着エレメント(例えば、特許文献7参照)が提案されている。これらの有機繊維を用いたシート状物は、衝撃によって壊れることが少なく、高温焼成工程がないため、水分吸着剤の選定上の制約は減少する。しかしながら、シート状物をコルゲート加工したり、ロータ状に巻回したりして加工物を製造する際や、シート状物を包装材料、空調機器等で使用している最中に、水分吸着剤の粉落ちが発生するという課題は完全に解決できておらず、特に、シート状物の吸湿量を稼ぐために水分吸着剤の含有割合を30質量%以上にまで増やした場合の粉落ちが多い。粉落ちを防ぐために、水分吸着剤の含有割合を減らすと、目的とする相対湿度を得るために、シート状物の使用量を増やさなければならず、空調機器、全熱交換素子が大型化してしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−226037号公報
【特許文献2】特開平5−115737号公報
【特許文献3】特開平10−212691号公報
【特許文献4】特開平11−189999号公報
【特許文献5】特開2004−68188号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2002/0070002号明細書
【特許文献7】特開2004−268020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高い割合で水分吸着剤を含有させても、粉落ちが少なく、水分吸着特性、加工適性に優れた除湿用シート状物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、
(1)水分吸着剤を含有してなる除湿用シート状物において、(A)剪断力を加えて幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化リヨセル繊維、(B)剪断力を加えて繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維から選ばれる少なくとも1種のフィブリル化リヨセル繊維と有機繊維とを含有することを特徴とする除湿用シート状物、
(2)有機繊維の少なくとも一部が熱融着性バインダー繊維である上記(1)記載の除湿用シート状物、
を見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の除湿用シート状物は、高い割合で水分吸着剤を含有させても、粉落ちが少なく、製造工程においても水分吸着剤の保持率(粉体歩留まり)が向上する。さらに、シート化による水分吸着剤の吸着性能の低下が少ないため、吸放湿性能の優れた除湿用シート状物となる。また、適度な柔軟性を持っているため、加工適性に優れている。そのため、例えば、本発明の除湿用シート状物をデシカント空調用の除湿ロータに適用した場合、耐衝撃性が高く、扱いが容易で吸放湿性能に優れた高性能なデシカント空調用の除湿ロータとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、水分吸着剤としては、珪素、チタン、アルミニウム、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等から選ばれる少なくとも1種の金属原子の酸化物を含有してなり、その形態としては、多数の細孔を有する粒状体、一次粒子径が数nmの単独粒子が複数凝集してなる複合粒子、管状体、繊維状金属酸化物の凝集体等が挙げられる。より具体的には、非晶質アルミニウム珪酸塩、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、繊維状又は管状のアルミニウム珪酸塩、繊維状又は管状の酸化チタン、珪藻土等を挙げることができる。
【0011】
本発明の除湿用シート状物における水分吸着剤の含有量は特に限定しないが、10〜90質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましく、50〜75質量%がさらに好ましい。水分吸着剤の含有量が10質量%未満であると、除湿用シート状物としては水分吸着量が少なすぎる場合があり、90質量%を超えると、湿式抄造法で製造する場合、除湿用シート状物の骨格を形成する繊維分が相対的に少なくなるため、シート化が困難であったり、加工適性が低下する場合がある。また、相対的にフィブリル化リヨセル繊維の含有量が低下する場合もあり、粉体歩留まりが低下したり、粉落ちが多くなる可能性がある。
【0012】
本発明において、「リヨセル」とは、ISO規格及びJIS規格に定める繊維用語で「誘導体を経ずに、直接、セルロースを有機溶剤に溶解させて紡糸して得られるセルロース繊維」とされている。リヨセル繊維の特徴としては、湿潤強度に優れていること、フィブリル化しやすいこと、セルロース繊維由来の水素結合によりシート化した時の強度が得やすいこと等が挙げられる。
【0013】
リヨセル繊維は、通常のパルプ繊維と同様に、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル等の叩解、分散設備でフィブリル化可能である。リヨセル繊維はセルロース繊維が原料であることから、フィブリル化した後も水素結合による強度向上が望めるという特徴を有している。
【0014】
本発明の除湿用シート状物に含有するフィブリル化リヨセル繊維は、水分吸着剤同士や、水分吸着剤とシート状物を構成する他の繊維と絡み合い、水分吸着剤を保持する役割を果たす。リヨセル繊維の特徴を最大限に発揮させ、水分吸着剤の吸着性能を損なうことなく、製造工程上においては粉体歩留まりを向上させ、シート化した後には粉落ちしにくい除湿用シート状物を作製するためには、最適なフィブリル化条件を見出すことが重要である。(A)剪断力を加えて幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化リヨセル繊維、(B)剪断力を加えて繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維の両方、もしくはいずれか一方のフィブリル化リヨセル繊維を含有する必要がある。
【0015】
リヨセル繊維は、叩解することでフィブリル化が進行し、本発明の除湿用シート状物に適した素材となりうるが、最適な叩解条件の見極めが重要となる。フィブリル化リヨセル繊維(A)及びフィブリル化リヨセル繊維(B)の両方、もしくはいずれか一方が適正に存在するフィブリル化状態を確認するためには、フィブリル化した繊維を水等で十分希釈した後に乾燥させて顕微鏡、好ましくは電子顕微鏡で観察する。しかし、最適フィブリル化条件が決定した後は、その都度観察しなくても良い。
【0016】
本発明の除湿用シート状物において、水分吸着剤をより多く保持するためには、(A)幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化リヨセル繊維のアスペクト比(繊維長/繊維径)は、10〜100000が好ましく、100〜50000がより好ましい。また、(B)幹部から枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維において、幹部のアスペクト比は、10〜50000が好ましく、より好ましくは50〜30000である。また、枝部のアスペクト比は、10〜100000が好ましく、より好ましくは100〜50000である。これらのフィブリル化状態は、上記の顕微鏡観察によって確認することができる。
【0017】
本発明の除湿用シート状物において、フィブリル化リヨセル繊維の配合比率は特に限定しないが、除湿用シート状物に対する含有量が0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。フィブリル化リヨセル繊維の含有量が0.5質量%未満では、水分吸着剤を保持するには不十分になる場合があり、除湿用シート状物を製造する際に粉体歩留まりが著しく低下することや、シート化した後に粉落ちが非常に多くなることがある。一方、30質量%を超えると、水分吸着剤の周囲をフィブリル化リヨセル繊維が覆いすぎてしまい、吸放湿性能を低下させてしまう可能性がある。また、例えば、湿式抄造法で製造する際には、濾水性を著しく低下させてしまい、抄造機が限定されてしまう可能性がある。
【0018】
本発明の除湿用シート状物における有機繊維とは、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フラン系樹脂、尿素系樹脂、アニリン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂よりなる合成繊維、木材パルプ、楮、三椏、藁、ケナフ、竹、リンター、バガス、エスパルト、サトウキビ等の植物繊維が挙げられる。また、これらを微細化した繊維は、吸放湿性能を阻害しない範囲で使用することができる。さらに、セルロース再生繊維であるレーヨン繊維、リヨセル繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂繊維、シリコーン系樹脂繊維等も使用することができる。また、断面形状がT型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も吸放湿性能に関わる通気性確保のために使用することができる。なお、加工適性など、本発明の除湿用シート状物の性能を損なわない範囲でステンレスやニッケルウール等の金属繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維等の難燃又は不燃の無機繊維を使用することもできる。
【0019】
本発明の除湿用シート状物は、フィブリル化リヨセル繊維(A)及びフィブリル化リヨセル繊維(B)の両方、もしくはいずれか一方の状態にフィブリル化したリヨセル繊維と水分吸着剤とが程良く絡み合い、凝集物を形成し、さらに、シート状物の骨格となる有機繊維と絡み合って、適度な空間を持った三次元ネットワーク構造を形成する。それにより、高い割合で水分吸着剤を含有させながら、通気性を確保でき、高い吸放湿性能を得ることが可能となる。好ましくは、繊維径の異なる2種類以上の有機繊維を含有させた場合、ネットワークにさらなる空間が生まれ、吸放湿性能が向上する。
【0020】
本発明の除湿用シート状物における有機繊維の繊維径は特に限定しないが、1〜40μmが好ましく、1.5〜30μmがより好ましく、2〜15μmがさらに好ましい。有機繊維の繊維径が1μm未満であると、除湿用シート状物の通気性が損なわれ、吸放湿性能を阻害する可能性がある。また、濾水性を低下させる場合があり、湿式抄造法で製造する際、抄造機が限定されてしまう可能性がある。逆に、有機繊維の繊維径が40μmを超えると、除湿用シート状物を構成する繊維のネットワークの空隙が大きくなりすぎ、水分吸着剤の脱落(粉落ち)が多くなったり、湿式抄造する際には水分吸着剤が構成繊維間や抄紙網をすり抜けてしまい、その保持率(粉体歩留まり)が低下する可能性がある。
【0021】
本発明の除湿用シート状物における有機繊維の繊維長は特に限定しないが、1〜20mmが好ましく、1.5〜15mmがより好ましく、2〜10mmがさらに好ましい。有機繊維の繊維長が1mm未満であると、除湿用シート状物の骨格を形成するためには不十分な場合があり、加工適性が低下する可能性がある。また、有機繊維の繊維長が20mmを超えると、湿式抄造法で製造する際、繊維分散性が悪くなり、除湿用シート状物の地合が悪くなる場合があり、性能の安定した除湿用シート状物を得ることが難しくなる可能性がある。
【0022】
本発明の除湿用シート状物における有機繊維の含有量は特に限定しないが、9〜89質量%が好ましく、19〜69質量%がより好ましく、24〜49質量%がさらに好ましい。有機繊維の含有量が9質量%未満になると、湿式抄造法で製造する際、除湿用シート状物は骨格を形成しにくくなる場合があり、シート化が困難になったり、加工適性が低下する可能性がある。また、89質量%を超えると、水分吸着剤及び/又はフィブリル化リヨセル繊維の含有量が相対的に減少するため、除湿用シート状物の水分吸着量が低下したり、粉落ちが多くなったりする可能性がある。
【0023】
本発明の除湿用シート状物において、有機繊維の一部又は全てに熱融着性バインダー繊維を用いることができる。除湿用シート状物の製造工程において、熱融着性バインダー繊維の溶融温度以上に除湿用シート状物の温度を上げることにより、機械的強度が向上する。例えば、除湿用シート状物を湿式抄造法で製造する場合、抄造後の乾燥工程で、熱融着性バインダー繊維を溶融させることにより、高い強度を持った除湿用シート状物となる。
【0024】
本発明の除湿用シート状物における熱融着性バインダー繊維としては、単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は皮膜を形成しにくいので、除湿用シート状物の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。熱融着性バインダー繊維としては、例えば、ポリプロピレンの単繊維、未延伸ポリエステルの単繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ等が挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール系繊維のような熱水可溶性バインダーは、皮膜を形成しやすいが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。
【0025】
本発明の除湿用シート状物は、吸湿性能向上を目的に吸湿性塩を含有させることができる。吸湿性塩としては、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等のハロゲン化金属塩、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛等の金属硫酸塩、酢酸カリウム等の金属酢酸塩、塩酸ジメチルアミン等のアミン塩類、オルトリン酸等のリン酸化合物、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン等のグアニジン塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等が挙げられる。特に、ハロゲン化金属塩、グアニジン塩を使用することにより、吸湿量と放湿速度を効率的に高めることができる。
【0026】
本発明の除湿用シート状物は、必要に応じて、その特性を阻害しない範囲で難燃化剤を付与することができる。難燃化剤としては、リン系難燃化剤、臭素系難燃化剤、塩素系難燃化剤、窒素系難燃化剤、珪素系難燃化剤、無機系難燃化剤等を用いることができる。また、塩化ビニル−エチレン共重合体のようなポリマー型の難燃化剤等も使用することができる。無機系難燃化剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、メタチタン酸等金属水酸化物がある。難燃化剤の付与方法としては、除湿用シート状物を湿式抄造法で製造する際、その原料中に添加する方法や、シート化した後に含浸、噴霧、塗布する方法等が挙げられる。
【0027】
本発明の除湿用シート状物は、水分吸着剤の含有量と吸放湿性能のバランスから、湿式抄造法で製造することが好ましい。その製造方法は、水分吸着剤とフィブリル化リヨセル繊維を水中に分散混合し、凝集剤を添加することにより、水分吸着剤はフィブリル化リヨセル繊維を巻き込みながら、成長し、凝集体を形成する。さらに、そこに有機繊維を少なくとも1種以上、分散混合することにより、抄紙原料となる分散スラリーが作製される。
【0028】
一般に、シート状物中における水分吸着剤の含有割合を引き上げようとすると、抄造時に、水分吸着剤が構成繊維間や抄紙網をすり抜けてしまい、実質的にシート状物に含有される割合(粉体歩留まり)が低下する。しかし、本発明の除湿用シート状物は、フィブリル化リヨセル繊維(A)、フィブリル化リヨセル繊維(B)の両方、もしくはいずれか一方を含有しているために、粉体歩留まりが高くなる。
【0029】
本発明の除湿用シート状物を湿式抄造法で製造する際には、水分吸着剤とフィブリル化リヨセル繊維からなる凝集体を適度な大きさにコントロールし、構造を安定化させるために凝集剤が用いられる。凝集剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の塩基性又は両性金属水酸化物、アルミナ、シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等の無機含水酸化物、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アニオン又はカチオン変性ポリアクリルアミド、同じくポリエチレンオキサイド系ポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸含有共重合物等の水溶性重合体、アルギン酸又はポリビニルリン酸及びこれらのアルカリ性塩、アンモニア、ジエチルアミン及びエチレンジアミン等のアルキルアミン、エタノールアミン等のアルカノールアミン、ピリジン、モルホリン、含アクリロイルモルホリン重合物などが挙げられる。特に、アニオン又はカチオン変性水溶性ポリマー凝集剤等が挙げられる。このうち、ポリマー中にカチオン単位とアニオン単位の双方を有する両性凝集剤は優れた効果を発揮する。
【0030】
本発明の除湿用シート状物は、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機等の一般紙や湿式不織布を製造するための抄紙機単独で、あるいは、同種又は異種の2機以上の抄紙機がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等により製造される。これらの抄紙機で形成された湿紙は、ドライヤーで乾燥され、除湿用シート状物となる。その後、必要に応じ、吸湿性塩等を含有させ、ドライヤーで乾燥させる。該ドライヤーとしては、エアドライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等が用いられる。
【0031】
本発明の除湿用シート状物は、必要に応じて、プリーツ加工、コルゲート加工、ハニカム加工、積層加工、ロールコア加工、ドーナツ加工等の2次加工を施して使用することができる。その用途としては、包装材料、除湿シート、内装材料、フィルター、調湿素子、熱交換素子等が挙げられる。調湿素子、熱交換素子としては、デシカント空調システム等の除湿ロータ素子、全熱交換素子、ビル空調気化式加湿用素子、燃料電池用加湿用素子、除湿器用除湿素子、自動販売機等の吸水蒸散素子、冷却用吸水蒸散素子等を挙げることができる。
【0032】
本発明の除湿用シート状物を用いて、ハニカム状構造体に成形することにより、デシカント空調システム等で使用される除湿ロータを作製することができる。ハニカム状構造体とは、開口を有するセル壁からなる構造体であって、具体的には、JIS Z1516に記載の「外装用段ボール」に準拠して作製される片面段ボールからなるコルゲートハニカム状構造体、六角形セルからなるヘキサゴンハニカム状構造体、正方形セルからなるハニカム状構造体、三角形セルからなるハニカム状構造体、及び中空円筒状セルを集合してなるハニカム状構造体等が挙げられる。
【0033】
本発明の除湿用シート状物を用いてなる除湿ロータの作製方法は、該ハニカム状構造体を型抜き等の方法で円盤状に切り抜いて作製する方法、該片面段ボールを渦巻き状に巻き上げて作製する方法等が挙げられる。
【0034】
ハニカム状構造体を持つ除湿ロータは、開口率が高く、通気性に優れているばかりでなく、大きな表面積を有しているので、本発明の除湿用シート状物からなる除湿ロータは、大容量の吸湿性能を有する高性能な除湿ロータとなる。また、従来の無機系材料からなる除湿ロータが持つ、耐衝撃性に乏しい、水分吸着剤の脱離(粉落ち)が多い、高温焼成するために水分吸着剤の選定に制約があるといった諸問題を解決することが可能である。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特にことわりのない場合、部数、百分率は質量基準である。
【0036】
実施例及び比較例で使用した水分吸着剤、繊維を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
(水分吸着剤の調製)
水分吸着剤(D4)は、以下の方法にて調製した。ゾルゲル法によって得られたアナターゼ酸化チタン粒子に20mol/kg濃度の水酸化カリウム水溶液を加え、温度120℃で24時間加熱して得られたスラリー状物を繰り返し水洗し、さらに、酢酸で中和し、再度十分に水洗して、余剰のイオン成分を除去した後、遠心分離器によって、濃度20質量%の網状に凝集した繊維状酸化チタン分散液を得た。該分散液の一部を乾燥させて、粉末を取り出し、BET法による比表面積を測定したところ、350m/gであった。
【0039】
水分吸着剤(D5)は、以下の方法で調製した。Si濃度が383mmol/Lになるように、純水で希釈したオルトケイ酸ナトリウム水溶液400mlを調製した。また、これとは別に、塩化アルミニウムを純水に溶解させ、Al濃度が450mmol/Lの水溶液400mlを調製した。次に、塩化アルミニウム水溶液にオルトケイ酸ナトリウム水溶液を混合し、マグネティックスターラーで撹拌した。この時のSi/Al比は0.85であった。さらに、この混合溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液18mlを滴下し、pHを7とした。この溶液から遠心分離により前駆体を回収し、4Lの純水中に分散させた。室温下で1時間撹拌した後、4Lの密閉容器に移し替え、恒温槽にて98℃で2日間加熱を行った。冷却後、遠心分離により3回洗浄し、60℃で乾燥を行い、水分吸着剤(D5)を得た。透過型電子顕微鏡と走査型電子顕微鏡で、水分吸着剤(D5)を観察したところ、一次粒子径は2〜5nmの粒子からなる粒子径2〜40nmの複合粒子が0.1〜100μmの凝集構造体を構成していて、該凝集構造体には2〜20nmの細孔が見られた。
【0040】
(フィブリル化リヨセル繊維の調製)
以下の方法にて、3種類のフィブリル化リヨセル繊維を調製した。
【0041】
フィブリル化していないリヨセル単繊維(1.7dtex×4mm、コートルズ社製)を、ダブルディスクリファイナーを用いて40回繰り返し処理し、幹部から離脱した繊維径0.9μm以下のフィブリル化リヨセル繊維(L1)を調製した。
【0042】
フィブリル化していないリヨセル単繊維(1.7dtex×4mm、コートルズ社製)を、シングルディスクリファイナーを用いて30回繰り返し処理し、繊維径4μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維(L2)を調製した。
【0043】
フィブリル化していないリヨセル単繊維(1.7dtex×4mm、コートルズ社製)を、PFIミルを用いて40000回転処理し、幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化リヨセル繊維と、繊維径4μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維との混合繊維(L3)を調製した。
【0044】
(実施例1)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化リヨセル繊維(L1)、有機繊維(R1)をそれぞれ50:10:40の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、実施例1の除湿用シート状物を得た。
【0045】
(実施例2〜18)
水分吸着剤及びフィブリル化リヨセル繊維を表2のように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜18の除湿用シート状物を得た。
【0046】
(実施例19)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化リヨセル繊維(L1)、有機繊維(R1)、熱融着性バインダー繊維(M1)をそれぞれ50:10:20:20の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、実施例19の除湿用シート状物を得た。
【0047】
(実施例20〜36)
水分吸着剤及びフィブリル化リヨセル繊維を表2のように変更した以外は実施例19と同様にして、実施例20〜36の除湿用シート状物を得た。
【0048】
【表2】

【0049】
(実施例37)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化リヨセル繊維(L1)、有機繊維(R2)、熱融着性バインダー繊維(M2)をそれぞれ80:5:7:8の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、実施例37の除湿用シート状物を得た。
【0050】
(実施例38〜54)
水分吸着剤及びフィブリル化リヨセル繊維を表3のように変更した以外は実施例37と同様にして、実施例38〜54の除湿用シート状物を得た。
【0051】
(実施例55)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化リヨセル繊維(L3)、有機繊維(R1)、熱融着性バインダー繊維(M1)をそれぞれ50:0.5:29.5:20の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、実施例55の除湿用シート状物を得た。
【0052】
(実施例56〜60)
水分吸着剤を表3のように変更した以外は実施例55と同様にして、実施例56〜60の除湿用シート状物を得た。
【0053】
(実施例61)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化リヨセル繊維(L3)、熱融着性バインダー繊維(M2)をそれぞれ50:30:20の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、実施例61の除湿用シート状物を得た。
【0054】
(実施例62〜66)
水分吸着剤を表3のように変更した以外は実施例61と同様にして、実施例62〜66の除湿用シート状物を得た。
【0055】
【表3】

【0056】
(実施例67)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化リヨセル繊維(L3)、有機繊維(R1)、熱融着性バインダー繊維(M1)をそれぞれ50:0.4:29.6:20の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、実施例67の除湿用シート状物を得た。
【0057】
(実施例68)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化リヨセル繊維(L3)、熱融着性バインダー繊維(M1)をそれぞれ50:31:19の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、実施例68の除湿用シート状物を得た。
【0058】
(比較例1)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化していないリヨセル単繊維(1.7dtex×5mm、コートルズ社製)、有機繊維(R1)、熱融着性バインダー繊維(M1)をそれぞれ50:10:20:20の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、比較例1の除湿用シート状物を得た。
【0059】
(比較例2)
フィブリル化していないリヨセル単繊維(1.7dtex×5mm、コートルズ社製)を顔料等の分散装置であるボールミル(ペイントコンディショナー)に直径2mmのビーズと水と共に投入し、11時間処理した。その結果、リヨセル繊維は過度に叩解され、さらに繊維長方向にも寸断され、フィブリル化ではなく、むしろ粒子状というほど細かく砕かれていた。
【0060】
水分吸着剤(D1)、該リヨセル繊維、有機繊維(R1)、熱融着性バインダー繊維(M1)をそれぞれ50:10:20:20の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、比較例2の除湿用シート状物を得た。
【0061】
(比較例3)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化セルロース繊維(商品名:セリッシュKY−100G、ダイセル化学工業(株)製)、熱融着性バインダー繊維(M1)をそれぞれ50:30:20の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が50g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、表面温度130℃のシリンダードライヤーにて乾燥させ、比較例3の除湿用シート状物を得た。
【0062】
(比較例4)
水分吸着剤(D1)、フィブリル化リヨセル繊維(L1)、ガラス繊維(繊維径9μm、繊維長6mm、旭ファイバーグラス(株)製)をそれぞれ50:10:40の比率で2mのタンクに水と分散混合し、さらに、凝集剤(商品名:パーコール57、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して0.2質量%添加し、固形分濃度2質量%の原料スラリーを得た。該原料スラリーを乾燥質量が45g/mになるように、円網型抄紙機にて抄造し、湿紙ウェブの状態でアクリル系ラテックス(商品名:ボンコートSFC54、大日本インキ化学工業(株)製)を乾燥質量が5g/mになるように付与し、熱風温度130℃のエアドライヤーにて乾燥させ、比較例4の除湿用シート状物を得た。
【0063】
実施例1〜68及び比較例1〜4で得られた除湿用シート状物について、吸着特性、粉体歩留まり、粉落ち、加工適性を以下の方法で評価した。
【0064】
<吸着特性>
除湿用シート状物の吸着特性は、水分吸着による質量変化を測定する平衡吸着測定により行った。除湿用シート状物から200mm×200mmの試験片を採取し、温度90℃の温風乾燥機内に少なくとも120分静置し、乾燥させた時の質量を絶乾質量WDとした。その後、乾燥させた除湿用シート状物を温度25℃、相対湿度80%の条件下に調整した恒温恒湿槽内に少なくとも120分静置した時の状態を吸着平衡状態とみなし、その時の質量を吸着質量WAとした。下記式(1)より、水分吸着量Wを算出した。
【0065】
水分吸着量W=(WA−WD)/WD (1)
【0066】
<粉体歩留まり>
除湿用シート状物から150mm×150mmの試験片を採取し、温度90℃の温風乾燥機内に少なくとも120分静置し、乾燥させた時の質量を絶乾質量WDとした。その後、電気炉にて温度600℃、120分焼成後の質量をWBとした。同様にして、除湿用シート状物に含有される水分吸着剤(粉体)を焼成し、それぞれPD、PBとした。それら質量の値と除湿用シート状物抄造時の水分吸着剤の配合率Cから、下記式(2)より、粉体歩留まりEを算出した。
【0067】
粉体歩留まりE=WB/WD×1/C×PD/PB (2)
【0068】
<粉落ち>
除湿用シート状物から50mm×200mmの試験片を採取した。黒紙の上に試験片を置き、試験片の長辺方向の一端に50mm角で200gの重りを載せた。そして、試験片のもう一端を速度100mm/秒で引き、黒紙上に残る脱離した水分吸着剤を観察し、その状態を下記段階で評価した。◎、○が実用上、問題ないレベルである。
◎:水分吸着剤がほとんど認められないレベル
○:水分吸着剤の脱離が僅かに認められるレベル
△:水分吸着剤の脱離と共に僅かに繊維も脱離しているレベル
×:水分吸着剤と繊維の両方の脱離がかなり認められるレベル
【0069】
<加工適性>
本発明の除湿用シート状物の加工適性を示す一つの指標として、JIS P8115に規定される耐折強さFEを測定した。除湿用シート状物から幅15mm、長さ110mmの試験片を各10枚採取し、MIT試験機を使用して、500g荷重で耐折回数Nを測定した。下記式(3)より、得られた耐折回数Nの値から耐折強さFEを算出し、試験片10枚の平均値を比較した。
【0070】
耐折強さFE=log10N (3)
【0071】
評価結果を表4及び表5に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
実施例1〜68及び比較例1〜3より、本発明の除湿用シート状物は、(A)剪断力を加えて幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化リヨセル繊維、(B)剪断力を加えて繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維から選ばれる少なくとも1種のフィブリル化リヨセル繊維を含有することにより、水分吸着剤が50%以上の高い配合率でありながら、90%以上の高い歩留まりを示している。また、粉落ちも少ないために、水分吸着剤の脱落による性能低下が少なく、周辺を汚すこともない。
【0075】
実施例31、55、61及び実施例67、68より、本発明の除湿用シート状物において、フィブリル化リヨセル繊維の含有量は0.5〜30質量%が好ましい。フィブリル化リヨセル繊維の含有量が0.5質量%未満であると、粉体歩留まりが低下し、除湿用シート状物に含有される水分吸着剤量が減少するため、除湿用シート状物の水分吸着量が低下する傾向が見られた。また、30質量%を超えると、粉体歩留まりは向上するものの、水分吸着剤の表面をフィブリル化リヨセル繊維が覆いすぎてしまうため、水分吸着を阻害し、結果的に除湿用シート状物の水分吸着量が低下する傾向が見られた。
【0076】
実施例1〜68及び比較例4より、本発明の除湿用シート状物は有機繊維を含有しているために柔軟性が向上し、耐折強さが強く、加工適性に優れている。また、実施例1〜18及び19〜68より、該有機繊維の一部又は全てを熱融着性バインダー繊維にすることにより、強度が向上し、さらに加工適性に優れた除湿用シート状物となる。そのため、本発明の除湿用シート状物は、例えば、デシカント空調用の除湿ロータに使用した場合、耐衝撃性に優れ、高い水分吸着特性を持ったデシカント空調用の除湿ロータとなる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の除湿用シート状物は、包装材料、除湿シート、内装材料、フィルター、調湿素子、熱交換素子等に使用することができる。調湿素子、熱交換素子としては、デシカント空調システムなどの除湿ロータ素子、全熱交換素子、ビル空調気化式加湿用素子、燃料電池用加湿用素子、除湿器用除湿素子、自動販売機等の吸水蒸散素子、冷却用吸水蒸散素子等を挙げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分吸着剤を含有してなる除湿用シート状物において、(A)剪断力を加えて幹部から離脱した繊維径1μm以下のフィブリル化リヨセル繊維、(B)剪断力を加えて繊維径2μm以上の幹部から繊維径1μm以下の枝部が発生したフィブリル化リヨセル繊維から選ばれる少なくとも1種のフィブリル化リヨセル繊維と有機繊維とを含有することを特徴とする除湿用シート状物。
【請求項2】
有機繊維の少なくとも一部が熱融着性バインダー繊維である請求項1記載の除湿用シート状物。

【公開番号】特開2011−183326(P2011−183326A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52503(P2010−52503)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】